JP6075579B2 - 流体機械のディフューザ構造 - Google Patents

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Description

本発明は、例えばポンプ・ポンプ水車等流体機械のディフューザ(流路)構造に関する。
一般に、ポンプ・ポンプ水車等流体(液体)機械において、ミニフロー(低流量域)運転時には、図8に示す流量-揚程特性曲線において右上がり特性部分(図中のIrで示す領域参照)を持つ場合があることは良く知られている(非特許文献1参照)。
この右上がり特性部分の領域では、ポンプ特性が不安定特性となり、逆流や振動等が生起されてポンプ運転が不可能となる。この右上がり特性部分の原因として、さまざまな要因が考えられるが、その一つにインペラを出た流れの速度ヘッドを有効に圧力ヘッドに変換させるためのディフューザ(特許文献1におけるポンプ水車の場合参照)での失速により損失が急激に増加することが挙げられる。
即ち、図9に示すように、等翼厚の複数枚の翼(ガイドベーン)101がインペラの外周に等ピッチで配列されたディフューザ100において、各翼間流路で均一に剥離が発生する(図中渦巻き形状参照)ため、損失が急激に増加して右上がり特性部分が発生するのである。
特開2004−156587号公報(図1)
機械工学便覧 応用編 B5 流体機械(23頁、図23) 昭和61年7月10日発行 社団法人日本機械学会
従来のディフューザ100にあっては、各翼101が等厚であるため、前述したように低流量特性が悪化するという問題点の他に、ある過渡的じょう乱によりある特定の翼101で失速が発生するとその隣の翼101に影響が伝播していき旋回失速が発生しやすいという問題点や翼厚が厚くなればなるほど衝突損失も増大するという問題点もあった。
そこで、本発明は、低流量特性を簡単な構造変更で効果的に改善することができると共に旋回失速の抑制や衝突損失の低減も併せて図ることができる流体機械のディフューザ構造を提供することを目的とする。
斯かる目的を達成するための本発明に係る流体機械のディフューザ構造は、
偶数枚の翼を等ピッチで有した流体機械のディフューザにおいて、
前記各翼の少なくとも前縁部の翼厚を交互に変化させ、
前記翼厚の厚い翼と前記翼厚の薄い翼とを交互に配置し、
前記各翼の前縁および後縁を流体の流れ方向においてそれぞれ等しい位置とした
ことを特徴とする。
また、
前記各翼は、それぞれ翼高さが等しいことを特徴とする。
また、
前記各翼の翼厚に相当する流路面積減少分を相殺するように各翼の前縁近傍から流路面積を拡大させたことを特徴とする。
また、
前記流路面積は各翼に沿って部分的に拡大させたことを特徴とする。
また、
前記流路面積は各翼の後縁近傍で縮小させたことを特徴とする。
また、
前記各翼の前記前縁から前記後縁までの長さを全て等しくしたことを特徴とする。
本発明に係る流体機械のディフューザ構造によれば、各翼の少なくとも前縁部の翼厚を交互に変化させたので、インシデンス変化に対する感度が大きい翼厚の薄い翼から先に剥離が生じて損失が増大し、一部の流量が翼厚の厚い翼の翼間流路に流入することから、翼厚の厚い翼の剥離が抑制され、損失の発生が緩やかになる。これにより、ポンプ等流体機械全体として右上がり特性部分の発生が抑制され、低流量特性が簡単な構造変更で効果的に改善される。
また、翼厚が異なる場合は予め隣接する翼での分布が大きいため、多少の過渡的じょう乱では旋回失速が誘発されないと共に、翼厚の薄い翼の存在により衝突損失も低減される。
本発明の実施例1を示すディフューザの翼列を二次元的に示した図である。 本発明の実施例2を示すディフューザの翼列を二次元的に示した図である。 本発明の実施例3を示すディフューザの側断面図である。 本発明の実施例4を示すディフューザの説明図であり、同図(a)は側断面図で、同図(b)は正断面図である。 本発明の実施例5を示すディフューザの側断面図である。 遠心ポンプの側断面図である。 軸流ポンプの側断面図である。 ポンプの流量-揚程特性曲線である。 従来のディフューザの翼列を二次元的に示した図である。
以下、本発明に係る流体機械のディフューザ構造を実施例により図面を用いて詳細に説明する。
[実施例1]
図1は本発明の実施例1を示すディフューザの翼列を二次元的に示した図、図6は遠心ポンプの側断面図、図7は軸流ポンプの側断面図である。
本発明のディフューザ構造は、例えば遠心ポンプや軸流ポンプ等の流体(液体)機械のディフューザに適用されるものである。
即ち、遠心ポンプは、図6に示すように、ケーシング10と複数枚の翼(ガイドベーン)11を有したディフューザ12とインペラ(ランナー)13と吸込み管14と回転軸15と電動機16とを備え、電動機16で回転軸15を介してインペラ13回転されると、吸込み管14より流入した水(流体)がインペラ13及びディフューザ12を通り昇圧されてケーシング10より外部へ排出されるようになっている。
また、軸流ポンプは、図7に示すように、ケーシング10と複数枚の翼(ガイドベーン)11を有したディフューザ12とインペラ(ランナー)13と回転軸15と電動機16とを備え、電動機16で回転軸15を介してインペラ13回転されると、ケーシング10内に流入した水(流体)がインペラ13及びディフューザ12を通り昇圧されてケーシング10外へ排出されるようになっている。
そして、本実施例では、図1に示すように、上述した各種ポンプにおいて、偶数枚の翼11を等ピッチで有したディフューザ12において、前記各翼11の全体(少なくとも前縁部でも良い)の翼厚を交互に変化させている。図示例では、6枚の翼11a〜11fの内、1枚目と3枚目と5枚目の翼11a,11c,11eの翼厚が等しく(等しくなくても良い)厚く、2枚目と4枚目と6枚目の翼11b,11d,11fの翼厚が、1枚目と3枚目と5枚目の翼11a,11c,11eよりも等しく(等しくなくても良い)薄いものとなっている。
このように各翼11の翼厚を交互に変化させたので、インシデンス変化に対する感度が大きい翼厚の薄い翼11b,11d,11fから先に剥離が生じて(図中渦巻き形状参照)損失が増大し、一部の流量が翼厚の厚い翼11a,11c,11eの翼間流路に流入する(図中矢印参照)ことから、翼厚の厚い翼11a,11c,11eの剥離が抑制され、損失の発生が緩やかになる。これにより、ポンプ全体として、図8に示す流量-揚程特性曲線において右上がり特性部分(Ir)の発生が抑制され、低流量特性が簡単な構造変更で効果的に改善される。
また、各翼11がすべて等厚の場合、ある過渡的じょう乱によりある特定の翼11で失速が発生するとその隣の翼11に影響が伝播していき旋回失速が発生しやすいが、本実施例のように、翼厚が異なる場合は予め隣接する翼11での分布が大きいため、多少の過渡的じょう乱では旋回失速が誘発されないという利点がある。更に、翼厚の薄い翼11b,11d,11fの存在により衝突損失も低減されるという利点もある。
[実施例2]
図2は本発明の実施例2を示すディフューザの翼列を二次元的に示した図である。
これは、実施例1におけるディフューザ12の各翼11において、翼厚の薄い翼11b,11d,11fの前縁を翼厚の厚い翼11a,11c,11eの前縁より流体流れ(図中矢印参照)の上流側へ配置した例である。その伸び出し量Lは、設計点性能に影響を及ぼさない程度が望ましいため、各翼11のピッチP間距離の5%以内が好適である。また、翼厚の薄い翼11b,11d,11fの後縁と翼厚の厚い翼11a,11c,11eの後縁は、定格運転時のポンプ性能に影響を及ぼさないように一致されている。
この実施例によれば、ディフューザ前縁での翼枚数が減少したことにより、伸び出した翼厚の薄い翼11b,11d,11fの前縁近傍での翼負荷が増加し剥離がより発生しやすくなり、実施例1と同様の作用効果が得られる。また、本実施例は、強度上あまり翼厚を薄くできないような状況下では、翼厚を薄くして剥離を誘起させる場合の補助手段として有効である。
[実施例3]
図3は本発明の実施例3を示すディフューザの側断面図である。
これは、実施例1におけるディフューザ12において、各翼11の翼厚に相当する流路面積減少分を相殺するように各翼11の前縁近傍から流路面積を拡大した例である。即ち、ケーシング10(又はシュラウド)における子午面形状を各翼11の前縁近傍において回転軸15中心からの距離d1を距離d2に拡大して流路拡大部10aを設けたのである。
この実施例によれば、実施例1及び2と同様の作用効果に加えて、ディフューザ前縁での流速の増加(翼のブロッケージによる)を最小限に抑えることができ、衝突損失をより一層低減することができるという利点が得られる。即ち、従来形状では、翼前後の子午面を滑らかに変化させていたため、構造物による流路面積の減少により、翼の前縁近傍で流速が増加され衝突損失が発生していたのであるが、本実施例ではそれが改善されるのである。
[実施例4]
図4は本発明の実施例4を示すディフューザの説明図であり、同図(a)は側断面図で、同図(b)は正断面図である。
これは、実施例3と同様に、翼のブロッケージによる流速増加は、実際には流路全体で生じるのではなく翼近傍で生じる現象であることに鑑み、図中に示すケーシング10における流路拡大部10bと回転軸15における流路拡大部15aのように、ディフューザ12における流路面積を各翼11に沿って部分的に拡大させた例である。
この実施例によれば、実施例1及び2と同様の作用効果に加えて、ディフューザ前縁での流速の増加(翼のブロッケージによる)を最小限に抑えることができ、衝突損失をより一層低減することができるという利点が得られる。
[実施例5]
図5は本発明の実施例5を示すディフューザの側断面図である。
これは、実施例3(及び4)におけるディフューザ12での流路拡大部10a(10b)を各翼11の後縁近傍で、回転軸15中心からの距離d2から距離d1に減少させて縮小した例である。
この実施例によれば、実施例3及び4と同様の作用効果に加えて、ディフューザ後縁では流路面積を減少させることで流速の減少を低減させることができ、混合損失を低減することができるという利点が得られる。
尚、本発明は上記各実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で翼の形状、寸法変更や流路拡大部の形状、寸法変更等各種変更が可能であることはいうまでもない。
本発明に係る流体機械のディフューザ構造は、ポンプ・ポンプ水車に限らず、その他の流体(空気)機械に適用すると好適である。
10 ケーシング
10a,10b 流路拡大部
11,11a〜11f 翼(ガイドベーン)
12 ディフューザ
13 インペラ(ランナー)
14 吸込み管
15 回転軸
15a 流路拡大部
16 電動機

Claims (6)

  1. 偶数枚の翼を等ピッチで有した流体機械のディフューザにおいて、
    前記各翼の少なくとも前縁部の翼厚を交互に変化させ、
    前記翼厚の厚い翼と前記翼厚の薄い翼とを交互に配置し、
    前記各翼の前縁および後縁を流体の流れ方向においてそれぞれ等しい位置とした
    ことを特徴とする流体機械のディフューザ構造。
  2. 前記各翼は、それぞれ翼高さが等しいことを特徴とする請求項1に記載の流体機械のディフューザ構造。
  3. 前記各翼の翼厚に相当する流路面積減少分を相殺するように各翼の前縁近傍から流路面積を拡大させたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の流体機械のディフューザ構造。
  4. 前記流路面積は各翼に沿って部分的に拡大させたことを特徴とする請求項3に記載の流体機械のディフューザ構造。
  5. 前記流路面積は各翼の後縁近傍で縮小させたことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の流体機械のディフューザ構造
  6. 前記各翼の前記前縁から前記後縁までの長さを全て等しくした
    ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の流体機械のディフューザ構造。
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