JP6073581B2 - きな粉様風味を有する米および米粉 - Google Patents

きな粉様風味を有する米および米粉 Download PDF

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Description

本発明は、概してきな粉風味を有する食品等に関する。より詳細には、本発明は、きな粉を使用しない、きな粉様風味を有する食品(特に、米および米粉)等に関する。
米は古来より日本人の主食であり、多くの人が毎日食しており、日本人の食生活に根付いている。特に、日本人の多くが、米を炊飯し、食しており、コシヒカリやササニシキといった、炊飯により味わいの高まる品種の米が好まれ、より風味の高い米の品種改良が日々進んでいる。
また、米を加工した食品も数多く存在し、例えば、炊いたもち米を練り作成した団子や、炒った玄米を爆ぜたものを日本茶に混ぜた玄米茶や、米を爆ぜたものに風味付けをしたポン菓子等があり、主食としての米飯だけではなく、菓子や飲料にも多く利用されている。特に、玄米茶に利用されている炒った玄米を爆ぜたものは、風味が良く、米独特の香ばしさが感じられる。すなわち、玄米を炒ることにより、米本来の風味を高め、香ばしさのある玄米を調製することができる。
他方、日本人の嗜好物として好まれるものに、きな粉がある。きな粉は、大豆を焙煎し作られ、もちや団子、最近ではアイスクリーム等様々な嗜好品に添加され、多くの日本人に好まれている。
きな粉は焙煎したダイズの粉末状の製造される食品である。
他方、本発明者らは、アミロース合成酵素Iを欠失したwx変異体とアミロペクチン枝作り酵素IIbを欠失したae変異体を交配して得られたイネ交配株の中から選抜したwx/ae米を開発している(特許文献1)。
このwx/ae米の特徴としては、難消化性澱粉含量が高く、急激な血糖値上昇を抑制したり(特許文献1)、抗脂血および内臓脂肪を予防したり(特許文献2)という生理機能が確認されており、また、米中に水溶性高分子物質を保持させることが確認されている(特許文献3)。
特許文献4〜6でも米を使用した風味食品の開発が記載されている。特許文献4は、糠の加工食材に関する文献で60℃以下での処理が予定されている。特許文献5および6でも米の加工食品の開発が記載されている。
特許文献7〜8では、発芽玄米の加工が記載されている。
上述した特許文献1〜3以外に非特許文献1および2でも、wx/ae米の開発が記載されている。
特開2009−254265号公報 特開2011−55829号公報 特開2011−24448号公報 特開2005−49号公報 特開2008−79596号公報 特開2008−271914号公報 特開2004−261036号公報 特開2005−323557号公報
Kubo, A., et al., Journal of Cereal Science (2007), doi:10.1016/j.jcs.2007.08.005 Kubo A., et al., Journal of Agricultural and Food Chemistry,2010 Apr 14;58(7):4463−4469.
鋭意検討した結果、wx/ae米に代表される米を利用し、適度な温度、適度な時間で加熱することにより、きな粉様の風味(味および/またはにおい)を持つ米を調製することができることを見出し、本発明を完成させた。
従来、きな粉は大豆を焙煎し調製されるが、本発明は米を用いて、きな粉様の風味を生み出す。よって、きな粉の風味を持ちながら大豆を含まない食品を展開することが可能であり、大豆アレルギーを回避することが可能である。
従来は、玄米を炒ることにより、米本来の風味を高め、香ばしさのある玄米を調製できたが、その風味は炊飯を連想する風味であり、さらに焙煎を強くすると、焦げ臭が強くなり、風味を損なわれていたが、これを解決することができた。
また、wx/ae米は食物繊維含有量が高く、さらに血糖値上昇抑制効果、抗脂血および内臓脂肪予防効果等も確認されているが、未焙煎のものの風味は独特の風味がありおいしいものの、独特の風味のため食品への展開が制限されてしまう。しかし、本発明の焙煎処理したwx/ae米を利用すれば、風味が高く、万人受けしやすいおいしさと健康を併せ持った食品を展開できる。さらに、本発明の焙煎処理により、含有する総食物繊維量も増加することも確認された。
本発明では、本発明者らは、wx/ae米に代表される米(たとえば、wx/ae玄米)を実施例において例示した条件で焙煎することにより、きな粉様の風味をかもし出すことを見出した。この様な効果は、一般的なコシヒカリ等の玄米および白米を実施例でwx/ae米に用いたのと同様の条件で焙煎しても得られず、実施例で示した条件で加工したwx/ae米またはその同等物に特有の特徴の1つと考えられる。
したがって、本発明は、たとえば、以下を提供する。
1つの局面では、本発明は、加熱処理した米または該米に由来する成分を含む、きな粉のにおいもしくは味またはにおいおよび味の両方を有するきな粉を含まない食品または食品添加物を提供する。
1つの実施形態では、前記食品または食品添加物は、きな粉のにおいを有する。
別の実施形態では、前記加熱は焙煎によりなされる。
別の実施形態では、前記加熱は120℃より高い温度でなされる。
別の実施形態では、前記加熱は130℃以上でかつ210℃以下でなされる。
別の実施形態では、前記加熱は130℃以上でかつ210℃以下で、きな粉のにおい、味またはその両方を呈する時間でなされる、請求項1に記載の食品または食品添加物。
別の実施形態では、前記加熱は、130℃でかつ120分以上か、140℃でかつ60分〜120分か、150℃でかつ30分〜60分か、160℃でかつ20分〜60分か、170℃でかつ10分〜45分か、180℃でかつ5分〜30分か、190℃でかつ5分〜20分か、200℃でかつ5分〜10分か、または210℃でかつ5分でなされる。
別の実施形態では、前記加熱は190℃で5分、180℃で15分、または170℃で20分でなされる。
別の実施形態では、前記米は、玄米、発芽玄米または糠である。
別の実施形態では、前記米は玄米である。
別の実施形態では、前記米が、アミロペクチン枝作り酵素(BEIIb)およびアミロース合成酵素I(GBSSI)の両者が欠損した二重変異体米(wx/ae米)の米である。
別の実施形態において、前記食品は、飲料および食料を含む。
別の実施形態において、本発明の食品は、パン、パウンドケーキ、エネルギーバー、うどん、そば、アイスクリームおよびミルクプリン、およびきな粉風飲料からなる群より選択される。
別の局面において、本発明は、きな粉のにおいもしくは味またはにおいおよび味の両方を有する食品または食品添加物を製造する方法であって、該方法は:
(1)米を加熱する工程
を包含する、方法を提供する。
本発明の方法の1つの実施形態では、前記食品または食品添加物は、きな粉のにおいを有する。
別の実施形態では、前記加熱は焙煎によりなされる。
別の実施形態では、前記加熱は120℃より高い温度でなされる。
別の実施形態では、前記加熱は130℃以上でかつ210℃以下でなされる。
別の実施形態では、前記加熱は130℃以上でかつ210℃以下で、きな粉のにおい、味またはその両方を呈する時間でなされる、請求項1に記載の食品または食品添加物。
別の実施形態では、前記加熱は、130℃でかつ120分以上か、140℃でかつ60分〜120分か、150℃でかつ30分〜60分か、160℃でかつ20分〜60分か、170℃でかつ10分〜45分か、180℃でかつ5分〜30分か、190℃でかつ5分〜20分か、200℃でかつ5分〜10分か、または210℃でかつ5分でなされる。
別の実施形態では、前記加熱は190℃で5分、180℃で15分、または170℃で20分でなされる。
別の実施形態では、前記米は、玄米、発芽玄米または糠である。
別の実施形態では、前記米は玄米である。
別の実施形態では、前記米が、アミロペクチン枝作り酵素(BEIIb)およびアミロース合成酵素I(GBSSI)の両者が欠損した二重変異体米(wx/ae米)の米である。
別の実施形態において、前記食品は、飲料および食料を含む。
別の実施形態において、本発明の食品は、パン、パウンドケーキ、エネルギーバー、うどん、そば、アイスクリームおよびミルクプリン、およびきな粉風飲料からなる群より選択される。
1つの局面において、本発明は、本発明の食品添加物を含む食品を提供する。
本発明の食品の1つの実施形態において、前記食品は、飲料および食料を含む。
別の実施形態において、本発明の食品は、パン、パウンドケーキ、エネルギーバー、うどん、そば、アイスクリームおよびミルクプリン、およびきな粉風飲料からなる群より選択される。
これらのすべての局面において、本明細書に記載される各々の実施形態は、適用可能である限り、他の局面において適用され得ることが理解される。
複数の実施形態が開示されるが、本発明の他の実施形態は、以下の詳細な説明から当業者には明らかになる。明らかであるように、本発明は、すべて本発明の技術思想および範囲から逸脱することなく、種々の明白な態様において修飾が可能である。従って、図面および詳細な説明は、事実上例示的であるとみなされ、制限的であるとはみなされない。
従来、きな粉は大豆を焙煎し調製されるが、本発明は米を用いて、きな粉様の風味を生み出す。よって、きな粉の風味を持ちながら大豆を含まない食品を展開することが可能であり、大豆アレルギーを回避することが可能である。
また、wx/ae米は食物繊維含有量が高く、さらに血糖値上昇抑制効果、抗脂血および内臓脂肪予防効果等も確認されているが、未焙煎のものの風味は独特の風味がありおいしいものの、独特の風味のため食品への展開が制限されてしまう。しかし、本発明の焙煎処理したwx/ae米を利用すれば、風味が高く、万人受けしやすいおいしさと健康とを併せ持った食品を展開できる。さらに、本発明の焙煎処理により、含有する総食物繊維量も増加させることができる。
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞等の用語(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」等)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
(定義)
本明細書において「食品」とは、すべての飲食物をいい、食べるものである食料および飲むものである飲料を含む。たとえば、パン、パウンドケーキ、エネルギーバー、うどん、そば、アイスクリーム、ミルクプリン、乳飲料、きな粉風飲料が挙げられ、米加工品等の加工食品も包含されることが理解される。食品としては、例えば当該米を用いて炊いた米飯、発芽米、かゆ、餅等米をそのまま利用した食品、米を粉砕して得られる米粉はもちろんのこと、その米粉を利用した加工食品、例えば、ビーフンのような麺類、米粉を用いたパン類、あられ、おかき、せんべい等のような米菓子、ケーキ、クッキー等の洋菓子、饅頭等の和菓子等米粉を原材料とした種々の菓子、きな粉風飲料、乳飲料等の飲料等、米および米粉を原材料として用いた食品すべてを意味する。
本明細書において「米加工品」とは、稲から収穫された米穀を原料とした加工品であって、米を用いて炊いた米飯、発芽米、かゆ、餅等米をそのまま利用した食品、米を粉砕して得られる米粉はもちろんのこと、その米粉を応用した加工食品、例えば、ビーフンのような麺類、米粉を用いたパン類、あられ、おかき、せんべい等のような米菓子、ケーキ、クッキー等の洋菓子、饅頭等の和菓子等米粉を原材料とした種々の菓子等、米および米粉を原材料として用いた食品すべてを意味する。米の使用量は特に制限されるものではなく、この米加工品の原料として用いられる米または米粉の全部またはその一部、あるいは加工品の原料として用いられる小麦粉またはダイズの全部またはその一部、例えば、本来使用される小麦粉またはダイズ10〜80質量%、好ましくは30〜50質量%を、従来の米、米粉、小麦粉またはダイズに替えて本発明の食品を用いて製造することができる。その製造方法も限定されることはなく、対象となる各種食品を製造し得る公知の各種方法が用いられる。本発明の食品または食品添加物における本発明の加熱処理した米または該米に由来する成分の使用量は0.01〜99.99%の範囲内で任意に定められる。
本明細書において「加工食品」とは、本発明の食品または食品添加物を原料とするものであって、例えば、本発明の食品または食品添加物を用いた麺類、パン類、おかき、せんべい等の米菓子、飲料はもちろんのこと、本発明の食品または食品添加物にタンパク質、油脂、甘味料、酸味料等を用いて得られた人工的に調製された栄養補助食品、洋菓子、和菓子、飲料等本発明の食品または食品添加物が用いられた各種の食品を意味する。本発明の食品または食品添加物の使用量は特に制限されるものではなく、前記加工食品の原料として用いられる本発明の食品または食品添加物の全部またはその一部を、従来の米または米加工品、きな粉等に替えて本発明の食品または食品添加物を用いて製造することができる。加熱処理した米または該米に由来する成分の具体的な使用量は加工食品によって異なるが、加工食品中0.1〜99.9質量%である。
本明細書において「飲料」とは、本発明の米加工物を含む任意の飲料を含み、たとえば、乳飲料等が例示される。本発明における飲料としては、たとえば、本発明の焙煎による玄米粉を含む飲料(懸濁液のような飲料)と、本発明の焙煎による玄米粉から湯等で濾過・抽出してできた飲料(抽出飲料)等が代表的な例として挙げられる。
本明細書において「食品添加物」とは、食品の製造の過程においてまたは加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用するものをいう。本発明でいう食品添加物とは、香料、栄養強化剤、苦味剤、酸味料、調味料、甘味料、着色料等の用途から選ばれた少なくとも一種の食品添加物であることを意味する。この中でも、きな粉のにおいもしくは味またはにおいおよび味を活かす目的では、香料、苦味剤、調味料での用途の食品添加物が好ましい。
本明細書において「米」は、稲の果実またはそれに由来する食品を指し、玄米、白米(精白米)、発芽玄米、糠等の如何なる形態のものも含み、それらのみならず、玄米または米を粉の状態にした米粉を含む意味で用いられる。本発明では、好ましくは、玄米、発芽玄米、糠等の糠成分を含んでいるものが好ましい。理論に束縛されるものではないが、脂質成分等のきな粉のにおい、味またはその両方に関連し得る物質において重要な要素が含まれてい得るからである。
本明細書において「玄米」とは、稲の果実である籾から籾殻を除去した状態で、また精白されていない状態の米をいう。
本明細書において「発芽玄米」とは、発芽状態にある玄米をいう。通常、玄米を約1〜2日程度、30℃〜32℃前後のぬるま湯に浸し、1mmほどの芽が出た状態にすることで調製するとされているが本発明ではこれに限定されず、発芽する条件であればどのような条件であっても用いることができることが理解される。
本明細書において「糠」とは、穀物を精白した際に出る残りの部分を指し、果皮、種皮、胚芽等の部分が含まれる。
本明細書において「〜由来する成分」とは、加熱処理した米についていう場合、その米に由来する任意の成分を指す。特に言及する場合は、本発明の目的である、きな粉のにおいもしくは味またはにおいおよび味を有する機能を有するものを指す。
本明細書において「きな粉」とは、大豆を炒って皮をむき、ひいた粉をいう。独特の風味を有しており、官能試験等によって判定することができる。
本明細書において「におい」とは、嗅覚を刺激するものをいう。匂い、臭い等の字が当てられ得るが、本明細書ではいずれも同一の意味で用いられることが理解される。また、香りもにおいの一種であり、本明細書におけるにおいと同一の意味で用いられることが理解される。
本明細書において「味」とは、味覚を刺激するものをいう。
本明細書において「風味」は、においおよび味を含む。
本明細書において「加熱」とは、一般に熱を加えることをいい、そのような処理のことを「加熱処理」という。
本明細書において「焙煎」とは、食品を乾煎り(からいり)することをいう。
本明細書において「wx/ae米」とは、アミロペクチン枝作り酵素(BEIIb)およびアミロース合成酵素I(GBSSI)の両者が欠損した二重変異体米をいう。好ましいwx/ae米としては、九州大学のAMF18株(アミロモチとして、品種登録出願されている(平成22年10月4日出願、平成23年1月5日公開、出願番号:25244))等を挙げることができるが、それに限定されず、同様の成分を有する米であれば使用することができることが理解される。
好ましい実施形態において本発明で使用され得る米は、好ましくは、アミロースを含まず、アミロペクチン側鎖のグルコース重合度の分布ピークが13〜15に位置するアミロペクチンを含む難消化性の米である。wx/ae米もまた、このような性質を有する。好ましくは、使用され得る米中のデンプン含有量は水分を含んだ籾殻を除いた玄米質量に対して少なくとも60%以上、良好なものでは約70%以上である。従って、本発明で使用され得る米は水分を除くとそのほとんどが難消化性のアミロペクチンからなり、難消化性の米であるといえる。この米のうち好ましい品種は、野生種のうるち米が有するアミロース合成酵素I(GBSSI)およびアミロペクチン側鎖を形成する酵素(BEIIb)を欠損した変異米(wx/ae米)であって、デンプン粒の存在が確認される。この変異米は、例えば、うるち米(WT)に対してメチルニトロソウレア(MNU)等の処理を施してGBSSIを欠損させたいわゆるモチ米(wx米)に、再び例えばメチルニトロソウレア(MNU)処理を施して変異を起こすことによって得られる(非特許文献1参照)。なお、アミロースは、デンプンを構成する多糖類の1種であり、グルコースが主としてα−1,4グリコシド結合した直鎖状の高分子を意味する。アミロペクチンもデンプンを構成する多糖類の1種であり、グルコースがα−1,4グリコシド結合した直鎖状の主鎖に、α−1,6グリコシド結合による枝分かれした分岐鎖を有する高分子を意味する。また、アミロペクチン側鎖はα−1,4グリコシド結合した主鎖から枝分かれした分岐鎖を意味し、種々のグルコース重合度のものから構成される。グルコース重合度(DP:Degree of Polymerization)、つまりアミロペクチン側鎖におけるグルコースの結合数は、イソアミラーゼ等、グルコース鎖の分岐部分を消化する酵素によってデンブン分子を分解した後に、クロマトグラフィー等の分析装置を用いて分子量の相違でふるい分けることにより求められる。このようなグルコース重合度の測定は、たとえば、シュードモナス属の菌から得られたイソアミラーゼによってアミロペクチンを分解し、それを8−アミノ−1,3,6−ピレントリスルホン酸(8−amino−1,3,6−pyrentrisulfonic acid:APTS)でラベルした後キャピラリー電気泳動を行うことにより求めることができる。
好ましい実施形態において本発明で使用され得る米はアミロースを含まない。ここでアミロースを含まないとの意味は、実質的にアミロースを含まないことを意図する。すなわち、アミロース含量が論理的にゼロであると見なされることをいい、測定結果がゼロであることを意味するものではない。本発明で使用され得る米は、アミロース合成酵素を有していないので、理論的にはゼロのはずであるが、測定方法およびその検出限界、コンタミネーションによってアミロースが検出される場合もある。なお、アミロース合成酵素I(GBSSI)以外にもアミロース合成酵素と呼ばれる酵素が存在するが、米においてはアミロースの合成に関与する酵素はGBSSIだけであり(G.E. Vandeputte, J.A. Delcour, Carbohydrate Polymers, 58(2004),p245−266)、アミロース合成酵素Iがなければ実質的にアミロースを含まないといえる。従って、本発明で用いられる米はデンプンの構成成分として実質的にアミロースを含まず、アミロペクチンのみを含む米である。また、上記米から取り出されたデンプンは実質的にアミロースを含まずアミロペクチンのみからなる。
従って、好ましい実施形態において本発明で使用され得る米はデンプン成分として実質的にアミロペクチンのみを含む米である。
好ましい実施形態において本発明で使用され得る米に含まれるアミロペクチンは、アミロペクチン側鎖のグルコース重合度(DP)の分布ピークが13〜15にある。つまり、アミロペクチン側鎖のグルコース重合度が13〜15、具体的には14前後のアミロペクチン側鎖が最も多く、野生種の稲に比べてグルコース重合度が高いアミロペクチン側鎖が多くなっている。また、ここでは、アミロペクチンは、グルコース重合度が12以上あるグルコース鎖長の長いアミロペクチン側鎖が、アミロペクチン側鎖全体の65%、良好なものでは70%以上を占めるものであり得る。なお、アミロペクチン側鎖全体に対する割合は、重合度が3〜35のアミロペクチン側鎖の総計を100とした場合の割合であって、たとえば、クロマトグラフィー等の分析装置を用いて分子量の相違でふるい分けることにより求められ得る。
好ましい実施形態において本発明で使用され得る米は、好ましくは脂質含有量が通常の米よりも高く、より好ましくは白米部分の脂質含有量が通常の米よりも高い。つまり、総脂質量は玄米総重量の2.4%以上、好ましくは3.2%以上、より好ましくは4.5%以上でありうる。もしくは、総脂質量は白米総重量の0.9%以上、より好ましくは1.5%以上でありうる。
好ましい実施形態において本発明で使用され得る米、ならびに本発明の食品および食品添加物は、難消化性であるという特徴を有している。したがって、摂食した場合に、急激な血糖上昇が見られるのではなく、摂食後徐々に血糖が上昇する。この点から、本発明の食品および食品添加物は、糖尿病患者(ヒトのみならず動物も含む)およびその予備群である人および動物に対する食材として非常に好ましい特性を有しているといえる。
好ましい実施形態において本発明で使用され得る米はアミロースを含まないが、アミロースを含むデンプン粒と同様な結晶様構造を有している。つまり、デンプン粒の結晶性は、偏光顕微鏡下で観察した場合に、複屈折性(偏光十字)の存在により判定することができ、明瞭な偏光十字の存在が確認される。
糊化および老化はデンプンに見られる特有の現象であり、糊化および老化はデンプンの粒構造、アミロース、アミロペクチン含量、鎖長分布等によって異なることが知られている。デンプンは、生のデンプン状態のβ−デンプンと、加水および加温によって膨潤された状態のα−デンプンの2態様を取ることが知られている。糊化はα−デンプンの状態に転化して粘りのある糊状になる現象であり、老化とはα−化したデンプンから水分が抜け、β−デンプンに戻る現象である。
本発明で使用され得る米はアミロース合成酵素およびアミロペクチンの側鎖を合成する酵素を欠損しているので、アレルゲンとなり得るタンパクが少なく、低アレルギー食の食材としても好適なものである。
好ましい実施形態で本発明において使用され得る米から得られた食品または食品添加物の摂食は血中の中性脂肪量を抑制し、肝臓等内蔵への脂肪の蓄積を防止・抑制する効果を有する。すなわち、高脂肪食を摂取した場合であっても、好ましい実施形態で本発明において使用され得る米から得られた食品または食品添加物から得られるデンプンを摂食した場合にあっては、野生型のうるち米(WT米)およびGBSSI遺伝子が欠損したいわゆるもち米(wx米)を摂取した場合に比べて、血中の中性脂肪濃度の増加が長期的に抑制される。また、肝臓、精巣周囲等における脂肪の蓄積が抑制される。
好ましい実施形態で本発明で使用され得るwx/ae米の概要については、特開2009−254265、特開2011−24448、特開2011−55829、特願2010−177563号、Kubo, A.,et al., Journal of Cereal Science (2007), doi:10.1016/j.jcs.2007.08.005、Kubo A.,et al., Journal of Agricultural and Food Chemistry, 2010 Apr 14;58(7):4463−4469を参照することができる。
理論に束縛されることを望まないが、好ましい実施形態で用いられるwx/ae米を焙煎することで、従来米よりもより「本物度」の強い香りを発するということができることが有利であり得る。本発明にいう「本物度」とは、「大豆由来のきな粉」と比較して、「米由来の焙煎物」が「きな粉のにおい」という観点において優れるかどうかの度合を意味する。このような本物度は、実施例に例示されるような官能評価や機器分析で判断することができる。なお、wx/ae米は、例えば、武藤農法農業研究開発機構(山梨県富士吉田市)から販売されていることから、これらから入手可能であり、WX/AE米推進協議会の協議会会員の会社からもwx/ae米のサンプルは入手可能である。
(好ましい実施形態)
本発明の好ましい実施形態を、以下に掲げる。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでない。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
(きな粉の味、におい、味またはその両方およびにおいの両方を有する食品および食品添加物、ならびにその製法)
1つの局面において、本発明は、加熱処理した米または該米に由来する成分を含む、きな粉のにおいもしくは味またはにおいおよび味の両方を有するきな粉を含まない食品または食品添加物を提供する。本発明の食品は、飲むものである飲料および食べるものである食料を含む。本発明における加熱処理は、最終的にきな粉の味、におい、味またはその両方およびにおいの両方が生じる限りどのような条件であってもよい。
1つの実施形態では、本発明の食品または食品添加物を生産するために使用される加熱は、焙煎によりなされる。本発明における焙煎は、加熱によって水分が減少する条件であって、最終的にきな粉の味、におい、味またはその両方およびにおいの両方が生じる限り、どのような形式の加熱によってもよく、初期状態では水分を含んでまたは含まないでなすことができる。
1つの好ましい実施形態では、きな粉に関する本発明における加熱は、120℃より高い温度でなされ得る。理論に束縛されることを望まないが、100℃付近ではなく、100℃より比較的高い温度での加熱によって、炊飯のにおいではなく、よりきな粉のようなにおい、味またはその両方に変化させることができるものと考えられる。好ましい実施形態で使用される特定の品種を用いる場合は、理論に束縛されることを望まないが、脂質等の特定の成分の加熱状態が、100℃付近ではなく、100℃より比較的高い温度での加熱によって、好ましいきな粉のにおい、味またはその両方が発せられるものと考えられる。
きな粉に関する本発明における加熱の条件は、きな粉のにおい、味またはその両方が発せられるような条件である限り、どのようなものでもよいが、通常、加熱は130℃以上でかつ210℃以下でなされる。理論に束縛されることを望まないが、余り高い温度で加熱を行うと、きな粉のようなにおいではなく、焦げ臭いにおいとなってしまうからである。
きな粉に関する本発明の加熱の条件は、その加熱時間によっても変動し得る。代表的には、きな粉に関する本発明の加熱の条件は、130℃の120分以上の処理で「きな粉のにおい」がだすことができる。きな粉に関する本発明の加熱の温度の条件としては、たとえば、下限として130℃以上、140℃以上、150℃以上、160℃以上、170℃以上、180℃以上等を挙げることができる。きな粉に関する本発明の加熱の温度の上限としては、たとえば、220℃未満、210℃以下、200℃以下、190℃以下、180℃以下、170℃以下、160℃以下、150℃以下等を挙げることができる。
本発明の例示的な実施形態では、オーブンを用いての焙煎(密閉系)を行なうことができるが、焙煎釜のような機器(開放系)を用いることもできる。そして、その場合の温度および時間については、熱のかかり方が変わることから3時間以上の焙煎でも同様の効果を得ることができる。
具体的な実施形態では、本発明における加熱は、130℃でかつ120分以上か、140℃でかつ60分〜120分か、150℃でかつ30分〜60分か、160℃でかつ20分〜60分か、170℃でかつ10分〜45分か、180℃でかつ5分〜30分か、190℃でかつ5分〜20分か、200℃でかつ5分〜10分か、または210℃でかつ5分でなされる。このような加熱は焙煎条件でなされ、好ましくは閉鎖系の焙煎条件でなされる。開放系で行う場合は、同じ温度でも長い時間かかり得ることが理解される。
1つの好ましい実施形態では、本発明の加熱は、200℃で5分、190℃で5〜15分か、180℃で10〜20分か、170℃で15〜30分か、160℃で30〜45分か、150℃で45分か、140℃で90分か、130℃で180分またはそれより長い時間なすことが有利である。このような加熱は焙煎条件でなされ、好ましくは閉鎖系の焙煎条件でなされる。開放系で行う場合は、同じ温度でも長い時間かかり得ることが理解される。
1つのさらに好ましい実施形態では、本発明の加熱は190℃で5分、180℃で15分、または170℃で20分なされることがさらに有利である。このような加熱は焙煎条件でなされ、好ましくは閉鎖系の焙煎条件でなされる。開放系で行う場合は、同じ温度でも長い時間かかり得ることが理解される。
1つの好ましい実施形態では、本発明で用いられる米は、玄米、発芽玄米または糠である。理論に束縛されることを望まないが、白米を用いた場合、同じ条件での焙煎では、玄米、糠または発芽玄米を用いた場合ほどは、きな粉のにおいが発生しなかった(実施例参照)ことから、本発明において用いられる米としては、玄米、糠または発芽玄米を用いることが好ましい。さらに、理論に束縛されることを望まないが、糠を焙煎したところ、玄米の焙煎粉よりもきな粉のにおいは弱かった(実施例参照)ことから、実施例等で用いた焙煎条件では、玄米と糠とを比較すると、玄米が糠よりも好ましい。発芽玄米は、玄米に加水して発芽処理したものであることから、同様の加熱条件での加工により玄米と同様のにおい・味が発生することが期待される。なお、発芽玄米については、特許文献7は、発芽玄米の焙煎を記載しているが、グルタミン酸添加による焙煎方法であり、グルタミン酸の効果としては焙煎による苦味を低減する目的である。特許文献7には、「きな粉」とは記載されていない。特許文献8は、玄米を水中に長時間置き、水切りを行った後、米温度が140〜160℃となるように焙煎する工程を含む方法を開示している。しかし、これに関しても、「きな粉」とは謳っていない。
1つの好ましい実施形態では、本発明の食品または食品添加物において使用される米は玄米である。理論に束縛されることを望まないが、玄米での焙煎では、きな粉の「本物度」が従来よりはるかに増大した効果が実施例等において示されているからである。
1つの実施形態では、本発明の加熱は、前記米に含水させて、または含水させないで行う。理論に束縛されることを望まないが、焙煎後の食味・食感を改善するために、含水処理後に焙煎するケースもあるからである。ただし、この場合も、焙煎(乾煎り)すると含水した水分は100度で飛ぶことから、水分蒸発後の加熱の処理としては同様の処理となる。味についても、においについても同様であると予想される。なお、「焙煎」とは違い、高水分+加熱処理である「蒸す」では、本発明のような「きな粉のにおい」は発生することは観察されていないことから、蒸す条件よりも焙煎条件が好ましいことが理解される。
さらに好ましい実施形態では、本発明において使用される米は、アミロペクチン枝作り酵素(BEIIb)およびアミロース合成酵素I(GBSSI)の両者が欠損した二重変異体米(wx/ae米)の米である。なお、第三者が製造した玄米焙煎粉を何種類か入手した限り、どの玄米焙煎粉も本発明品と比較するときな粉のにおいが劣る評価となった。理論に束縛されることを望まないが、他社製品とは、好ましい加熱(焙煎等)の条件が異なるほか、「wx/ae米」には通常の米よりも多い糠(脂質)成分が含まれており、この成分量(比)がきな粉のにおい、味またはその両方を出すのにより適切な条件となっていることが考えられる。
本発明の種々の実施形態では、本発明の食品または食品添加物は、種々の形態で提供される。たとえば、粉末状であってもよく、粒状であってもよく、塊状であってもよい。また、粉砕物の形態でもよく、粉砕しない固形状で使用しても良い。
別の局面において、本発明は、きな粉のにおいもしくは味またはにおいおよび味の両方を有する食品または食品添加物を製造する方法であって、該方法は:(1)米を加熱する工程を包含する、方法を提供する。本発明の方法では、本明細書において記載される任意の特徴を適宜採用することができることが理解される。
好ましい実施形態では、本発明のきな粉のにおいもしくは味またはにおいおよび味の両方を有する食品または食品添加物を製造する方法では、上述の任意の特徴を1つまたは複数さらに包含し得ることが理解される。
別の局面において、本発明は、本発明のきな粉のにおいもしくは味またはにおいおよび味の両方を有するきな粉を含まない食品添加物を含む、食品を提供する。
本発明の食品は、任意の形態の飲料および食料の形態で提供されることが理解され、たとえば、パン、パウンドケーキ、エネルギーバー、うどん、そば、アイスクリームおよびミルクプリン、きな粉風飲料、乳飲料等を挙げることができるがそれらに限定されない。
(本発明の健康改善食品等としての態様)
好ましい実施形態では、本発明の食品または食品添加物は、血液中および内臓中の中性脂肪量の抑制または脂肪蓄積抑制効果のあるものである。特に、この効果は、本発明においてwx/ae米を用いて生産した場合に顕著である。
高脂血症は動脈硬化を引き起こし、狭心症、心筋梗塞等のいわゆる心臓疾患、および脳出血、脳梗塞等のいわゆる脳疾患を誘引する。高脂血症は、血液中に存在する脂肪重量が多い状態である。血液中に存在する脂肪のうち、中性脂肪は動脈硬化の原因とはならないが、中性脂肪が多いと、血液中のHDL(高比重リポタンパク)が減少し、LDL(低比重リポタンパク)が増加する傾向にあり、このことが間接的に動脈硬化の原因であるといわれている。
血中の中性脂肪量の抑制には、脂肪だけでなく炭水化物を含めた食餌からの摂取エネルギーを抑制することが望まれる。炭水化物を代表する食物に米がある。日本人が摂取する米の量は近年減少傾向にあるが、米は日本人の主食であり、米を食べないというのは日本人の食生活からは考えられない。従って、米を食べても中性脂肪が増加せず、米を食べることにより血液中および内臓中の中性脂肪の蓄積抑制が見込めるならばより望ましい。
米デンプン添加食による中性脂肪抑制効果については以下のように調べることができる。試験には、ヒトの高脂血症・動脈硬化症の機序、予防および治療法に関する研究に広く用いられている、これら病態モデル動物であるApoE欠損マウスを用いることができる。ApoE欠損マウスは、血漿リポタンパクの主要な構成要素であり、脂質およびリポタンパク代謝に重要な役割を果たすApoE遺伝子が全く発現しないことから、ヒト家族性III型高リポ蛋白血症と特に似た自然発生性高脂血症を発症することができる。
例示的な実施形態では、4週齢のApoE欠損雄マウス(体重20〜25g)にwx米、WT米およびwx/ae米から精製したデンプンを添加した欧米型食事に近い組成の混合餌(米デンプン14.9%、ショ糖20.0%、カゼイン25%、ラード14%、牛脂14%、大豆油2%、セルロース5%、ビタミンミックス(AIN−93:日本農産工業株式会社製)1%、ミネラルミックス(AIN−93:同社製)3.5%:表1参照)を継続的に自由摂取させ、米デンプンの長期摂取が血中脂肪濃度、脂肪蓄積量に与える効果を調べることができる。血液中の脂肪濃度は、飼育開始6週、8週、10週経過後に腹部大動脈より採血し、市販のトリグリセリド測定用キット(和光純薬工業株式会社製)によって測定する。また、試験開始14週間経過後にラットを解剖し、肝臓中の中性脂肪量並びに内臓脂肪量(精巣周辺脂肪)を測定する。肝臓中の中性脂肪量は、摘出した肝臓からクロロホルム・メタノール混合液を加え、氷冷下でホモジネートを行った。これを遠心分離(1500g×min)して上清を分取し、窒素気流下にて溶媒を除去する。その後、リン酸バッファーを加えて残留物を溶解し、上記市販のトリグリセリド測定用キットで、中性脂肪量を測定することができる。また、肝臓の細胞切片の顕微鏡観察による画像によっても測定することができる。
本発明の好ましい実施形態で使用されるwx/ae米については、その米由来のデンプンまたは米の米粉を高脂肪食と共にマウスに摂取させたところ、うるち米およびもち米由来のデンプンまたはそれらの米粉を摂取させた場合に比べて血中のトリグリセリド濃度が有意に低下することが見いだされている(特開2011−55829を参照。)。また同時に、上記高脂肪食に当該変異体米由来のデンプンまたは当該米の米粉を添加した食餌を摂取したマウスで、肝臓中の脂肪球が著しく減少することも見出されている。したがって、このような効果は、同様の米を用いた場合に本発明の食品または食品添加物においても見出されることが理解される(特開2011−55829を参照。)。
この変異体米はうるち米と同様に炊飯できるので、日常の食餌である米飯として食することができる。従って、うるち米に変わってこの米を主食とすれば、普通の食生活によって高脂血症に起因する脳卒中および心臓病、さらには内臓脂肪の蓄積およびそれに起因する内臓疾患の発症率を低減させることができる(特開2011−55829を参照。)。
したがって、好ましい実施形態では、本発明は、原料となる米と同様、血液中または内蔵中の中性脂肪抑制効果または脂肪蓄積抑制効果を奏する食品そのものとして、 あるい
は加工食品の原料として、または有効成分とする血液中または内臓中の中性脂肪抑制剤等として使用することができる。その結果、高脂肪食の摂取下における血中中性脂肪量の上昇が抑制され、内臓への脂肪の蓄積が防止される。そして、本発明の食品または食品添加物は、通常のものと同様に炊飯できるので、日常の食餌である米飯として食することができる。従って、きな粉に代えてこの米を使用すれば、普通の食生活によって高脂血症に起因する脳卒中および心臓病、さらには内臓脂肪の蓄積およびそれに起因する内臓疾患の発症率を低減させることができる。
本発明の食品または食品添加物は、血液中および内臓中の中性脂肪量を抑制する機能を発揮する。本発明の食品または食品添加物において、血液中の中性脂肪量を抑制するとは、本発明の食品または食品添加物の摂取が血液中の中性脂肪量の上昇を抑制することを意味する。また、内臓中の中性脂肪量を抑制するとは、本発明の食品または食品添加物を摂取しない場合と比べて、当該デンプンの摂取が内臓への中性脂肪の蓄積を抑制することを意味する。すなわち、本発明の食品または食品添加物の摂取が、血液中の中性脂肪量(血中中性脂肪濃度)の上昇を抑制し、また、中性脂肪の内臓への蓄積を防止する。
したがって、本発明の加熱処理した米または該米に由来する成分は、中性脂肪抑制剤および脂肪蓄積防止剤としての利用も可能である。すなわち、本発明の加熱処理した米または該米に由来する成分を食品として用いるのではなく、これらを有効成分として各種の賦形剤、添加剤等を使用して、錠剤、顆粒剤、カプセル剤等に製剤化した医薬組成物として提供できる。
また、本発明の加熱処理した米または該米に由来する成分は、上記のとおり、食品または医薬組成物のいずれの形態として摂取することができる。本発明の加熱処理した米または該米に由来する成分は、通常の食品またはそれから得られるデンプンと異なる特別な取り扱いは要しないので、摂取量においても普通米等と基本的には同様に考えればよい。なお、医薬組成物および効能効果の表示が行政庁の許認可を必要とするいわゆる特定保健用食品(食品組成物)の有効成分とする場合にも、その配合量は組成物中0.01〜99.99%である。
したがって、この好ましい実施形態の本発明によれば、米に由来する新たな中性脂肪抑制剤または脂肪蓄積防止剤、あるいは中性脂肪抑制効果または脂肪蓄積防止効果を有する食品であって、一般の人に受け入れられる味の食品を提供することができる。本発明の中性脂肪抑制剤等は米またはそれに由来する成分を有効成分とするものである。このために、本発明を摂取することにより、内臓脂肪の蓄積抑制効果等生活習慣病を緩和する効果が期待できる。実際、これら生理機能改善効果や血糖値の急激な上昇抑制作用は、焙煎処理後も維持される。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願等の参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
以下に示す実施例等において、特段の記載がない場合、一般的に、米としては以下に記載される米を用いて実験を行った。また、以下、本発明の内容を、実施例、比較例、試験例等を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
(wx/ae米の作出例)
〔試料の作製〕
ジャポニカ米である金南風の受精卵細胞をN−メチル−N−ニトロソウレア(MNU)で処理して変異させたwx変異米EM21(GBSSI欠損株:Satoh and Omuraら(J. Fac. Agric., Kyushu Univ. 1979, 24, 165− 174;1979)の方法による)と、ae変異米EM16(BEIIb欠損株)を交配して、ダブルミュータントwx/ae株を得ることができる。このようなwx/ae種としては、たとえば九州大学のAMF18株(アミロモチとして、品種登録出願されている(出願番号:25244))等を挙げることができる。
この株を適切な培地にて栽培し、開花後30日後に変異米(wx/ae変異米)として収穫することができる。本実施例で用いるものは、九州大学佐藤光研究室から供与されたものを大阪府立大学にて栽培したものである。wx/ae種自体は、親種であるwx種とae種とを交雑することで、孫世代(F2)で9:3:3:1の遺伝の法則に基づき、1/16の割合で獲得可能である。
より詳細には、たとえば、特許文献1〜3、非特許文献1および2に記載の手法を参酌して本作出例を実施することができる。
(他の材料)
また、コントロールとして、うるち種の金南風(WT)、wx変異体であるEM21、ae変異米であるEM16を用いた。
これらの変異米を脱穀し玄米とした。また、玄米を試験用精米器にて精米し、糠を完全に取り去った精白米を得た。その後粉砕して米粉末を得た。また、脱穀した玄米を粉砕して玄米粉を得た。
発芽玄米については、玄米を30℃のぬるま湯に浸漬し、24時間静置いた。その後、1mm程度の芽が出た状態であるのを確認した後、水切りし、乾燥させて発芽玄米を得た。
(実施例1:wx/ae米の玄米を用いた焙煎玄米粉試料調製)
オーブンを用いて、野生種のうるち米からアミロース合成酵素I(GBSSI)とアミロペクチン枝作り酵素IIb(BEIIb)の双方を欠失した二重変異体(wx/ae)米の玄米を焙煎処理した。120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230若しくは240℃に設定したオーブン内で予め熱しておいた鉄板に、玄米150gを均等に並べ、表1の時間条件に従い、玄米を焙煎した。玄米を焙煎後、粉砕機(大阪ケミカル株式会社、ワンダーブレンダー)を用いて粉砕し、焙煎玄米粉試料を調製した。
(比較例1:他の品種の玄米を用いた焙煎玄米粉試料調製)
実施例1の方法に従って、二重変異体(wx/ae)米の玄米を用いず、うるち種の金南風、wx変異体であるEM21もしくはae変異米であるEM16の玄米を用いて焙煎玄米粉試料を調製した。180℃に設定したオーブン内で予め熱しておいた鉄板に、玄米150gを均等に並べ、15分間玄米を焙煎した。玄米を焙煎後、粉砕機を用いて粉砕し、焙煎玄米粉試料を調製した。
(試験例1:きな粉のにおいの官能試験)
実施例1で得られた焙煎玄米粉を、男性9名、女性3名からなる被験者ににおいをかがせ、きな粉の香り(におい)の強弱を評価した。香り(におい)の官能評価は◎>○>▲>△>×の5段階で評価を行い、最もきな粉の香り(におい)が強いものを◎とした。各被験者の評価から平均点数を求め、得られた結果を下記表1に示す。
温度に関しては、130℃の120分〜処理で「きな粉のにおい」が出ていることからきな粉の焙煎条件は130℃以上の温度条件で行うことが好ましいことが理解される。
(実施例2:焙煎の有無による総食物繊維量の比較)
wx/ae米の未焙煎の玄米粉および実施例1で得たwx/ae米の焙煎玄米粉のうち、180℃で15分間焙煎処理した焙煎玄米粉を財団法人日本食品分析センターにて総食物繊維含量を測定した。
酵素−HPLC法の酵素処理後の検液をエタノール沈殿処理する前に吸引ろ過し、残留物を重量法で測定し不溶性食物繊維とした。また、ろ液については、エタノール沈殿処理後吸引ろ過を行い、残留物を重量法で測定し高分子水溶性食物食物繊維とし、ろ液を高速液体クロマトグラフ法で測定し三糖類以上を低分子水溶性食物繊維とした。総食物繊維量は以下の式より算出し、水分値から乾物の総食物繊維量を求めた。
総食物繊維=不溶性食物繊維+高分子水溶性食物繊維+低分子水溶性食物繊維
得られた結果を下記表2に示す。
(試験例2:wx/ae米と他の品種の米とのにおいの対比)
実施例1で得たwx/ae米の焙煎玄米粉のうち、180℃で15分間焙煎処理した焙煎玄米粉および比較例1で得られた焙煎玄米粉を、男性9名、女性3名からなる被験者ににおいをかがせ、きな粉の香り(におい)の強弱を評価した。香り(におい)の官能評価は◎>○>▲>△>×の5段階で評価を行い、最もきな粉の香り(におい)が強いものを◎とした。各被験者の評価から平均点数を求め、得られた結果を下記表3に示す。
(試験例3:wx/ae米と他の品種の米との味の対比)
実施例1で得たwx/ae米の焙煎玄米粉のうち、180℃で15分間焙煎処理した焙煎玄米粉および比較例1で得られたうるち米の焙煎玄米粉を、男性9名、女性3名からなる被験者に食してもらい、きな粉の味の強弱を評価した。味の官能評価は◎>○>▲>△>×の5段階で評価を行い、最もきな粉の味が強いものを◎とした。各被験者の評価から平均点数を求め、得られた結果を下記表4に示す。
味に関しても同様の試験をしたところ、実施例1ならびに比較例1と同様に焙煎処理をしたうるち種、wx変異米EM21およびae変異米EM16の焙煎玄米粉と比較すると、wx/ae種が味も、きな粉風味として優れていることが明らかになった。
(比較例3:wx/ae米の白米での実験)
wx/ae米の白米を用い、実施例1と同様に180℃で15分間焙煎処理した焙煎白米粉および実施例1で得たwx/ae米の焙煎玄米粉のうち180℃で15分間焙煎処理したものを、試験例1のように官能試験をおこなった結果を下記表5に示す。
その結果、本実施例で用いた条件では、白米では「きな粉のにおい」は発生しなかった。
(実施例3:wx/ae米の糠での実験)
wx/ae米の糠を用い、実施例1と同様に180℃で15分間焙煎処理した焙煎糠および実施例1で得たwx/ae米の焙煎玄米粉のうち、180℃で15分間焙煎処理したものを、試験例1のように官能試験をおこなった結果を下記表6に示す。
その結果、本実施例で用いた条件では、玄米に比べて糠は「きな粉のにおい」は弱かった。
(実施例4:wx/ae米の発芽玄米での実験)
wx/ae米の発芽玄米を用いて同様の実験を行った。より詳細には、実施例1と同様の条件でwx/ae米の発芽玄米を焙煎処理し、試験例1のように官能試験をおこなった結果を下記表7に示す。
その結果、本実施例で用いた条件では、発芽玄米を用いても玄米と同様に「きな粉のにおい」を発生することが分かったが、焙煎玄米粉と比較すると、きな粉のにおいは弱かった。
(比較例4:蒸す場合の実験)
wx/ae米の玄米を、蒸し器(アサダ金属株式会社、蒸気式蒸し器)を用いて120℃で40分間水蒸気による加熱処理した。玄米を加熱処理後、水きりして余剰な水分を除去した後、粉砕機を用いて粉砕し、水蒸気加熱玄米粉試料を調製した。得られた水蒸気加熱玄米粉および実施例1で得たwx/ae米の焙煎玄米粉のうち、180℃で15分間焙煎処理したものを、試験例1のように官能試験をおこなった結果を下記表8に示す。
その結果、本実施例で用いた条件では、水蒸気によって加熱処理した玄米粉ではきな粉のにおいはなかった。
(実施例5:含水処理の有無の効果)
wx/ae米の玄米を予め4℃で18時間浸水し、その後水切りをした含水処理玄米を用い、実施例1と同様の条件でwx/ae米の含水玄米の焙煎を行い、試験例1または2のように官能試験をおこなった結果を下記表9に示す。
その結果、含水玄米を用いても玄米と同様に「きな粉のにおい」を発生することが分かった。従って、焙煎前の含水処理の有無については、「きな粉のにおい」の発現には影響を及ぼさないといえる。
(実施例6:他社製品との比較)
実施例1で得たwx/ae米の焙煎玄米粉のうち、180℃で15分間焙煎処理したもの、きな粉(市販品:大豆由来)および米ぬかと発芽玄米を焙煎し製粉したもの(特許文献4の市販品)を、試験例1のように官能試験をおこなった結果を下記表10に示す。
注:原材料:精製米ぬか、発芽玄米粉、米胚芽(株式会社のざわ/商品名「玄きな粉−げんきなこ−」)
その結果、wx/ae米は米粉であるにもかかわらずきな粉と同等もしくはそれ以上の強いきな粉風味を呈することが分かった。一方、市販のきな粉風玄米である玄きな粉と比較すると、wx/ae米の玄米焙煎粉は「きな粉のにおい」に優れていることが分かった。
(実施例6A:機器分析による本物度の比較)
実施例1で得たwx/ae米の焙煎玄米粉のうち、180℃で15分間焙煎処理したもの、きな粉(市販品:大豆由来)および比較例1で得られたうるち米の焙煎玄米粉を、におい識別装置(株式会社島津製作所、FF−2A)を用いて分析した。得られた結果の内、芳香族系の基準ガスとの類似度を示した値を下記表10Aに示す。
その結果、wx/ae米 焙煎玄米粉では芳香族系の値がきな粉に近く、一方でうるち米焙煎玄米粉は芳香族系の値が低いことが分かった。きな粉は大豆を焙煎することで 得られる粉末であるが、焙煎した大豆の香気成分としてピラジン類等の芳香族系が主成分であることが報告されている。表10Aの結果において、wx/ae米焙煎玄米粉の芳香族系の値がきな粉と近い値を示していることから、wx/ae米 焙煎玄米粉はうるち米 焙煎玄米粉よりも、「本物度」の強い香りを発していることが考えられる。
(実施例7:米粉パン(きな粉風味)の調製)
下記表11に掲げる処方の全原料をパンミキサーに投入した。生地が繋がり塊(ドウ)が形成されるまで撹拌混合した。ドウを50gずつに分割し、手で丸めた生地を10分間静置し休ませた。その後、生地を平たくのばし、再度、手で丸めた生地を、庫内温度37℃〜38℃、庫内湿度70%〜75%のホイロにて30分間発酵させた。発酵後、庫内温度205℃〜210℃のオーブンにて15分間焼成し、米パンを調製した。
注1:米粉(グリコ栄養食品株式会社)
注2:原材料:精製米ぬか、発芽玄米粉、米胚芽(株式会社のざわ/商品名「玄きな粉−げんきなこ−」)
注3:米パン用小麦蛋白ミックス/原材料:粉末状小麦たん白、麦芽糖(グリコ栄養食品株式会社)
得られた米パンについて官能評価を行なった。wx/ae玄米焙煎粉(180℃加熱処理)を添加した実施例8は、米粉であるにもかかわらず比較例5と同等もしくはそれ以上の強いきなこ風味を呈する結果となった。また、本実施例で用いた条件では、比較例6および比較例7は、いわゆる通常の焙煎臭、焦げ臭を呈するのみで、きな粉風味を全く呈しない結果となった。なお、本実施例でwx/ae米に対して用いたのと同様の条件で調製したwx変異米EM21およびae変異米EM16の焙煎玄米粉を用いて同様に米パンの官能評価を行ったが、wx変異米EM21およびae変異米EM16の焙煎玄米粉の添加区では通常の焙煎臭、焦げ臭を呈するのみで、きな粉風味を全く呈しない結果となった。
(実施例8:パウンドケーキ(きな粉風味)の調製)
下記表12に掲げる処方の内、無塩バター、メープルシロップ、砂糖をハンドミキサーにて混ぜ合わせた。更に、ハンドミキサーにて撹拌しながら全卵を加えて混ぜ合わせた。そこへ、予め混合した粉体原料を篩い入れ、へらで混ぜ合わせ、最後に、牛乳を加え、へらで混ぜ合わせた。型に流し込み、オーブンにて(180℃下40分間)焼成しパウンドケーキを調製した。
注1:米粉(グリコ栄養食品株式会社)
注2:原材料:精製米ぬか、発芽玄米粉、米胚芽(株式会社のざわ/商品名「玄きな粉−げんきなこ−」)
得られたパウンドケーキについて官能評価を行なった。wx/ae玄米焙煎粉(180℃加熱処理)を添加した実施例9は、米粉でありながらも比較例8と同等もしくはそれ以上の強いきな粉風味を呈する結果となった。本実施例で用いた条件では、比較例9および比較例10は、いわゆる通常の焙煎臭、焦げ臭を呈するのみで、きな粉風味を全く呈しない結果となった。なお、本実施例でwx/ae米に対して用いたのと同様の条件で調製したwx変異米EM21およびae変異米EM16の焙煎玄米粉を用いて同様にパウンドケーキの官能評価を行ったが、wx変異米EM21およびae変異米EM16の焙煎玄米粉の添加区では通常の焙煎臭、焦げ臭を呈するのみで、きな粉風味を全く呈しない結果となった。
(実施例9:エネルギーバー(きな粉風味)の調製)
下記表13に掲げる処方の内、ミキサーに無塩バター、メープルシロップ、砂糖を加え、撹拌混合した。そこへ、予め混合した粉体原料、オレンジピール、水を入れ、生地が繋がり塊(ドウ)が形成されるまで撹拌混合した。バー形態に成形し、オーブンにて(170℃下20分間)焼成しエネルギーバーを調製した。
注1:米粉(グリコ栄養食品株式会社)
注2:原材料:精製米ぬか、発芽玄米粉、米胚芽(株式会社のざわ/商品名「玄きな粉−げんきなこ−」)
得られたエネルギーバーについて官能評価を行なった。wx/ae玄米焙煎粉(180℃加熱処理)を添加した実施例10は、米粉でありながらも比較例11と同等もしくはそれ以上の強いきな粉風味を呈する結果となった。本実施例で用いた条件では、比較例12および比較例13は、いわゆる通常の焙煎臭、焦げ臭を呈するのみで、きな粉風味を全く呈しない結果となった。なお、本実施例でwx/ae米に対して用いたのと同様の条件で調製したwx変異米EM21およびae変異米EM16の焙煎玄米粉を用いて同様にエネルギーバーの官能評価を行ったが、wx変異米EM21およびae変異米EM16の焙煎玄米粉の添加区では通常の焙煎臭、焦げ臭を呈するのみで、きな粉風味を全く呈しない結果となった。
(実施例10:ミルクプリン(きな粉風味)の調製)
下記表14に掲げる処方の内、牛乳に砂糖を加え、木べらでよく混ぜ合わせ砂糖を溶かした。そこへくず粉他、粉体原料を加え、木べらでよく混ぜ合わせた。木べらで掻き混ぜながら、粘度が出て滑らかな状態になるまで加熱した。ゼリーカップに充填し、氷浴にて急冷し、ミルクプリンを調製した。
注1:原材料:精製米ぬか、発芽玄米粉、米胚芽(株式会社のざわ/商品名「玄きな粉−げんきなこ−」)
得られたミルクプリンについて官能評価を行なった。wx/ae玄米焙煎粉(180℃加熱処理)を添加した実施例10は、米粉でありながらも比較例14と同等もしくはそれ以上の強いきな粉風味を呈する結果となった。本実施例で用いた条件では、比較例15および比較例16は、いわゆる通常の焙煎臭、焦げ臭を呈するのみで、きな粉風味を全く呈しない結果となった。なお、本実施例でwx/ae米に対して用いたのと同様の条件で調製したwx変異米EM21およびae変異米EM16の焙煎玄米粉を用いて同様にミルクプリンの官能評価を行ったが、wx変異米EM21およびae変異米EM16の焙煎玄米粉の添加区では通常の焙煎臭、焦げ臭を呈するのみで、きな粉風味を全く呈しない結果となった。
(実施例11:アイスクリーム(きな粉風味)の調製)
下記表15に掲げる処方の内、牛乳、生クリーム、砂糖、粉体原料を、木べらでよく混ぜ合わせ、砂糖と粉体原料を良く溶かす。アイスクリームフリーザーによりアイスクリームを調製した。
注1:原材料:精製米ぬか、発芽玄米粉、米胚芽(株式会社のざわ/商品名「玄きな粉−げんきなこ−」)
得られたアイスクリームについて官能評価を行なった。wx/ae玄米焙煎粉(180℃加熱処理)を添加した実施例11は、米粉でありながらも比較例17と同等もしくはそれ以上の強いきな粉風味を呈する結果となった。本実施例で用いた条件では、比較例18、および比較例19は、いわゆる通常の焙煎臭、焦げ臭を呈するのみで、きな粉風味を全く呈しない結果となった。なお、本実施例でwx/ae米に対して用いたのと同様の条件で調製したwx変異米EM21およびae変異米EM16の焙煎玄米粉を用いて同様にアイスクリームの官能評価を行ったが、wx変異米EM21およびae変異米EM16の焙煎玄米粉の添加区では通常の焙煎臭、焦げ臭を呈するのみで、きな粉風味を全く呈しない結果となった。
(実施例12:うどん(きな粉風味)の調製)
下記表16に掲げる処方の全原料を真空ミキサーに投入し、混練する。形成された生地の塊(ドウ)を、製麺機にて、複合、圧延、切り出しを行ない麺線とし、うどんを調製した。得られたうどんを茹でたものについて官能評価を行なった。
注1:原材料:精製米ぬか、発芽玄米粉、米胚芽(株式会社のざわ/商品名「玄きな粉−げんきなこ−」)
注2:A−グルG:小麦グルテン(グリコ栄養食品株式会社)。 「A−グル」はグリコ栄養食品株式会社の登録商標。
得られたうどんについて官能評価を行なった。wx/ae玄米焙煎粉(180℃加熱処理)を添加した実施例12は、米粉でありながらも比較例20と同等もしくはそれ以上の強いきな粉風味を呈する結果となった。本実施例で用いた条件では、比較例21および比較例22は、いわゆる通常の焙煎臭、焦げ臭を呈するのみで、きな粉風味を全く呈しない結果となった。なお、本実施例でwx/ae米に対して用いたのと同様の条件で調製したwx変異米EM21およびae変異米EM16の焙煎玄米粉を用いて同様にうどんの官能評価を行ったが、wx変異米EM21およびae変異米EM16の焙煎玄米粉の添加区では通常の焙煎臭、焦げ臭を呈するのみで、きな粉風味を全く呈しない結果となった。
(実施例13:そば(きな粉風味)の調製)
下記表17に掲げる処方の全原料を真空ミキサーに投入し、混練した。形成された生地の塊(ドウ)を、製麺機にて、複合、圧延、切り出しを行ない麺線とし、そばを調製した。得られたそばを茹でたものについて官能評価を行なった。
注1:原材料:精製米ぬか、発芽玄米粉、米胚芽(株式会社のざわ/商品名「玄きな粉−げんきなこ−」)
注2:A−グルWP:小麦グルテン(グリコ栄養食品株式会社)。「A−グル」はグリコ栄養食品株式会社の登録商標。
得られたそばについて官能評価を行なった。wx/ae玄米焙煎粉(180℃加熱処理)を添加した実施例13は、米粉でありながらも比較例23と同等もしくはそれ以上の強いきな粉風味を呈する結果となった。本実施例で用いた条件では、比較例24および比較例25は、いわゆる通常の焙煎臭、焦げ臭を呈するのみで、きな粉風味を全く呈しない結果となった。なお、本実施例でwx/ae米に対して用いたのと同様の条件で調製したwx変異米EM21およびae変異米EM16の焙煎玄米粉を用いて同様にそばの官能評価を行ったが、wx変異米EM21およびae変異米EM16の焙煎玄米粉の添加区では通常の焙煎臭、焦げ臭を呈するのみで、きな粉風味を全く呈しない結果となった。
(実施例14:きな粉風飲料の調製)
下記表18に掲げる処方の全てを撹拌混合し、きな粉風飲料を調製した。
注1:原材料:精製米ぬか、発芽玄米粉、米胚芽(株式会社のざわ/商品名「玄きな粉−げんきなこ−」)
得られたきな粉風飲料について官能評価を行なった。wx/ae玄米焙煎粉(180℃加熱処理)を添加した実施例14は、米粉でありながらも比較例26と同等もしくはそれ以上の強いきな粉風味を呈する結果となった。本実施例で用いた条件では、比較例27および比較例28は、いわゆる通常の焙煎臭、焦げ臭を呈するのみで、きな粉風味を全く呈しない結果となった。なお、本実施例でwx/ae米に対して用いたのと同様の条件で調製したwx変異米EM21およびae変異米EM16の焙煎玄米粉を用いて同様にきな粉風飲料の官能評価を行ったが、wx変異米EM21およびae変異米EM16の焙煎玄米粉の添加区では通常の焙煎臭、焦げ臭を呈するのみで、きな粉風味を全く呈しない結果となった。
上記実施例以外に、カスタードクリーム等パンに挟むまたは塗布または充填するフラワーペースト類、ドレッシング類、シチュー等の固形食品、レトルト食品、冷凍食品等において得られたwx/ae玄米焙煎粉を用いて製造したところ、米粉でありながらもきな粉と同等もしくはそれ以上の強いきな粉風味を呈する結果となることが理解される。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきである。
従来、きな粉は大豆を焙煎し調製されるが、本発明は米を用いて、きな粉様の風味を生み出す。よって、きな粉の風味を持ちながら大豆を含まない食品を展開することが可能であり、大豆アレルギーを回避することが可能である。
また、wx/ae米は食物繊維含有量が高く、さらに血糖値上昇抑制効果、抗脂血および内臓脂肪予防効果等も確認されているが、未焙煎のものの風味は独特の風味がありおいしいものの、独特の風味のため食品への展開が制限されてしまう。しかし、本発明の焙煎処理したwx/ae米を利用すれば、風味が高く、万人受けしやすいおいしさと健康とを併せ持った食品を展開できる。さらに、本発明の焙煎処理により、含有する総食物繊維量も増加させることができる。
以上から、本発明により、従来の玄米素材では得られなかった、良好なきな粉風味の食品を提供することができるようになった。しかも、その素材が米であるにもかかわらず、きな粉を使わない大豆由来原料フリー食品の開発が可能となり、大豆アレルギー対応食品できな粉風味を呈する食品の提供が可能となった。

Claims (6)

  1. きな粉のにおい及び/又は味を有する焙煎玄米又は焙煎玄米粉の製造方法であって、
    wx/ae米の玄米又はwx/ae米の玄米粉を130℃以上でかつ210℃以下で焙煎する工程を含む方法。
  2. 130℃でかつ120分以上か、140℃でかつ60分〜120分か、150℃でかつ30分〜60分か、160℃でかつ20分〜60分か、170℃でかつ10分〜45分か、180℃でかつ5分〜30分か、190℃でかつ5分〜20分か、200℃でかつ5分〜10分か、または210℃でかつ5分で焙煎する請求項1に記載の方法。
  3. wx/ae米の玄米又はwx/ae米の玄米粉に、きな粉のにおい及び/又は味を付加する方法であって、
    wx/ae米の玄米又はwx/ae米の玄米粉を130℃以上でかつ210℃以下で焙煎する工程を含む方法。
  4. 130℃でかつ120分以上か、140℃でかつ60分〜120分か、150℃でかつ30分〜60分か、160℃でかつ20分〜60分か、170℃でかつ10分〜45分か、180℃でかつ5分〜30分か、190℃でかつ5分〜20分か、200℃でかつ5分〜10分か、または210℃でかつ5分で焙煎する請求項3に記載の方法。
  5. きな粉のにおい及び/又は味を有する食品又は食品添加物を製造する方法であって、
    wx/ae米の玄米及び/又はwx/ae米の玄米粉を130℃以上でかつ210℃以下で焙煎する工程を含む方法。
  6. 130℃でかつ120分以上か、140℃でかつ60分〜120分か、150℃でかつ30分〜60分か、160℃でかつ20分〜60分か、170℃でかつ10分〜45分か、180℃でかつ5分〜30分か、190℃でかつ5分〜20分か、200℃でかつ5分〜10分か、または210℃でかつ5分で焙煎する請求項5に記載の方法。
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