本発明を実施するための実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下では、気導音と振動音とを利用者に伝える電子機器の例として、携帯電話について説明する。
(実施形態1)
図1及び図2を参照しながら、実施形態に係る携帯電話1Aの全体的な構成について説明する。図1は、携帯電話1Aの正面図である。図2は、携帯電話1Aのa−a断面を模式的に示す断面図である。図1及び図2に示すように、携帯電話1Aは、ディスプレイ2と、ボタン3と、照度センサ4と、近接センサ5と、圧電素子7と、マイク8と、スピーカ11と、カメラ12と、パネル20と、筐体40とを備える。
ディスプレイ2は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro−Luminescence Display)、又は無機ELディスプレイ(IELD:Inorganic Electro−Luminescence Display)等の表示デバイスを備える。ディスプレイ2は、文字、画像、記号、及び図形等を表示する。
ボタン3は、利用者からの操作入力を受け付ける。ボタン3の数は、図1及び図2に示す例に限定されない。
照度センサ4は、携帯電話1Aの周囲光の照度を検出する。照度は、光の強さ、明るさ、又は輝度を示す。照度センサ4は、例えば、ディスプレイ2の輝度の調整に用いられる。近接センサ5は、近隣の物体の存在を非接触で検出する。近接センサ5は、磁界の変化又は超音波の反射波の帰還時間の変化等に基づいて物体の存在を検出する。近接センサ5は、例えば、ディスプレイ2が顔に近づけられたことを検出する。照度センサ4及び近接センサ5は、一つのセンサとして構成されていてもよい。照度センサ4は、近接センサとして用いられてもよい。
圧電素子7は、電気信号(音信号に応じた電圧)が印加されると、構成材料の電気機械結合係数に従い伸縮又は屈曲する。すなわち、圧電素子7は、電気信号が印加されると変形する。圧電素子7は、パネル20に取り付けられ、パネル20を振動させるための振動源として用いられる。圧電素子7は、例えば、セラミック又は水晶を用いて形成される。圧電素子7は、ユニモルフ、バイモルフ、又は積層型圧電素子であってよい。積層型圧電素子には、バイモルフを積層した(例えば16層又は24層積層した)積層型バイモルフ素子が含まれる。積層型の圧電素子は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる複数の誘電体層と、該複数の誘電体層間に配設された電極層との積層構造体から構成される。ユニモルフは、電気信号(電圧)が印加されると伸縮する。バイモルフは、電気信号(電圧)が印加されると屈曲する。
マイク8は、音入力部である。マイク8は、入力される音を電気信号へ変換する。スピーカ11は、気導方式で音を出力する音出力部である。スピーカ11は、例えば、ダイナミックスピーカであり、電気信号を変換した音を、耳を携帯電話1Aに接触させていない人へも伝えることができる。スピーカ11は、例えば、音楽を出力するために用いられる。
カメラ12は、ディスプレイ2に面している物体を撮影するインカメラである。カメラ12は、撮影した画像を電気信号へ変換する。携帯電話1Aは、カメラ12に加えて、ディスプレイ2の反対側の面に面している物体を撮影するアウトカメラを備えてもよい。
パネル20は、圧電素子7の変形(伸縮又は屈曲)にともなって振動し、利用者がパネル20に接触させる耳の軟骨(耳介軟骨)等にその振動を伝える。パネル20は、ディスプレイ2及び圧電素子7等を外力から保護する機能も有する。パネル20は、例えば、ガラス、又はアクリル等の合成樹脂により形成される。パネル20の形状は、例えば、板状である。パネル20は、平板であってよい。パネル20は、表面が滑らかに湾曲する曲面パネルであってもよい。
パネル20の背面には、接合部材30により、ディスプレイ2と、圧電素子7とが取り付けられる。圧電素子7は、パネル20の背面に配置された状態で、筺体40の内表面と所定の距離だけ離間している。圧電素子7は、伸縮または屈曲した状態でも、筺体60の内表面と離間しているとよい。すなわち、圧電素子7と筺体40の内表面との間の距離は、圧電素子7の最大変形量よりも大きいとよい。圧電素子7は、補強部材(例えば、板金又はガラス繊維強化樹脂)を介してパネル20に取り付けられてもよい。接合部材30は、例えば、両面テープ、又は熱硬化性あるいは紫外線硬化性等を有する接着剤である。接合部材30は、無色透明のアクリル系紫外線硬化型接着剤である光学弾性樹脂でもよい。
ディスプレイ2は、パネル20の短手方向におけるほぼ中央に配設される。圧電素子7は、パネル20の長手方向の端部から所定の距離だけ離間した近傍に、圧電素子7の長手方向がパネル20の短手方向と平行になるように配設される。ディスプレイ2及び圧電素子7は、パネル20の内側の面に、平行に並べて配設される。
パネル20の外側の面のほぼ全面には、タッチスクリーン(タッチセンサ)21が配設される。タッチスクリーン21は、パネル20に対する接触を検出する。タッチスクリーン21は、指、ペン、又はスタイラスペン等による利用者の接触操作を検出するために用いられる。タッチスクリーン21を用いて検出されるジェスチャは、例えば、タッチ、ロングタッチ、リリース、スワイプ、タップ、ダブルタップ、ロングタップ、ドラッグ、フリック、ピンチイン、及びピンチアウトを含むがこれらに限定されない。タッチスクリーン21の検出方式は、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式(又は超音波方式)、赤外線方式、電磁誘導方式、及び荷重検出方式等の任意の方式でよい。
タッチスクリーン21は、音を聞くためにパネル20に接触する耳介軟骨等を検出するためにも用いられる。
筐体40は、樹脂又は金属を用いて形成される。筐体40は、ボタン3、照度センサ4、近接センサ5、マイク8、スピーカ11、カメラ12、およびパネル20等を支持する。
図1から図4を参照しながら、実施形態に係る携帯電話1Aによる音の出力についてより詳細に説明する。図3は、パネル20の形状の例を示す図である。図4は、パネル20の振動の例を示す図である。
圧電素子7には、出力する音に応じた電気信号が印加される。圧電素子7には、例えば、外耳道を介する気導音によって音を伝える所謂パネルスピーカの印加電圧である±5Vよりも高い、±15Vが印加されてもよい。これにより、利用者が、例えば、3N以上の力(5N〜10Nの力)でパネル20に自身の体の一部を押し付けた場合であっても、パネル20に十分な振動を発生させ、利用者の体の一部を介して伝わる振動音を発生させることができる。圧電素子7に印加される電圧は、パネル20の筺体40に対する固定強度、又は圧電素子7の性能等に応じて適宜調整可能である。
電気信号が印加されると、圧電素子7は長手方向に伸縮又は屈曲する。圧電素子7が取り付けられたパネル20は、圧電素子7の伸縮又は屈曲に合わせて変形する。これにより、パネル20は、振動し、気導音を発生させる。さらに、利用者が体の一部(例えば、耳介軟骨)をパネル20に接触させた場合、パネル20は、体の一部を介して利用者に伝導する振動音を発生させる。すなわち、パネル20は、圧電素子7の変形にともなって、パネル20に接触する物体に対して振動音として知覚される周波数で振動する。
例えば、圧電素子7に、通話の相手の音声、又は着信音、音楽等の音データに応じた電気信号が印加されると、パネル20は、電気信号に対応する気導音及び振動音を発生させる。圧電素子7及びパネル20を介して出力される音信号は、後述するストレージ9に記憶されている音データに基づくものであってよい。圧電素子7及びパネル20を介して出力される音信号は、外部のサーバ等に記憶され、後述する通信ユニット6によりネットワークを介して取得される音データに基づくものであってもよい。
本実施形態において、パネル20は、利用者の耳とほぼ同じ大きさであってよい。また、パネル20は、図3に示すように、利用者の耳よりも大きなサイズであってもよい。この場合、利用者は、音を聞くときに耳の外周部のほぼ全体をパネル20に接触させることができる。このようにして音を聞くことにより、周囲音(ノイズ)が外耳道に入り難くなる。本実施形態では、少なくとも、パネル20は、人間の対耳輪下脚(下対輪脚)から対耳珠までの間の距離に相当する長手方向(又は短手方向)の長さと、耳珠から対耳輪までの間の距離に相当する短手方向(又は長手方向)の長さとを有する領域よりも広い領域が振動する。パネル20は、耳輪における対耳輪上脚(上対輪脚)近傍の部位から耳垂までの間の距離に相当する長手方向(又は短手方向)の長さと、耳珠から耳輪における対耳輪近傍の部位までの間の距離に相当する短手方向(又は長手方向)の長さを有する領域が振動してもよい。上記の長さおよび幅を有する領域は、長方形状の領域であってもよいし、上記の長手方向の長さを長径、上記の短手方向の長さを短径とする楕円形状であってもよい。人間の耳の平均的な大きさは、例えば、社団法人 人間生活工学研究センター(HQL)作成の日本人の人体寸法データベース(1992−1994)等を参照すれば知ることができる。
図4に示すように、パネル20は、圧電素子7が取り付けられた取付領域20aだけでなく、取付領域20aから離れた領域も振動する。パネル20は、振動する領域において、当該パネル20の主面と交差する方向に振動する箇所を複数有し、当該複数の箇所の各々において、振動の振幅の値が、時間とともにプラスからマイナスに、あるいはその逆に変化する。パネル20は、それぞれの瞬間において、振動の振幅が相対的に大きい部分と振動の振幅が相対的に小さい部分とがパネル20の略全体に一見ランダム又は規則的に分布した振動をする。すなわち、パネル20全域にわたって、複数の波の振動が検出される。上記のように圧電素子7に対して印加される電圧が±15Vであれば、利用者が例えば5N〜10Nの力で自身の体にパネル20を押し付けた場合であっても、パネル20の上述した振動は減衰しにくい。このため、利用者は、パネル20上の取付領域20aから離れた領域に耳を接触させても、振動音を聞くことができる。
本実施形態では、ディスプレイ2がパネル20に取り付けられている。このため、パネル20の下部(ディスプレイ2が取り付けられている側)は、剛性が上がり、パネル20の上部(圧電素子7が取り付けられている側)と比べて、振動が小さい。このため、パネル20の下部において、パネル20が振動することによる気導音の音漏れが低減される。
携帯電話1Aは、パネル20の振動により、気導音と、利用者の体の一部(例えば耳介軟骨)を介する振動音とを利用者に伝えることができる。そのため、携帯電話1Aは、ダイナミックレシーバと同等の音量の音を出力する場合、空気の振動により携帯電話1Aの周囲へ伝わる音を、ダイナミックスピーカのみを有する電子機器と比較して、少なくすることができる。このような特徴は、例えば、録音されたメッセージを電車内のような近くに他人がいる場所で聞く場合等に好適である。
さらに、携帯電話1Aは、パネル20の振動により利用者に振動音を伝える。そのため、利用者は、イヤホン又はヘッドホンを身につけていても、それらに携帯電話1Aを接触させることで、イヤホン又はヘッドホン及び体の一部を介して、パネル20の振動による振動音を聞くことができる。
さらに、携帯電話1Aは、パネル20の振動により音を伝える。そのため、携帯電話1Aが別途ダイナミックレシーバを備えない場合、パネル20が発する音を外部に伝えるための開口部(放音口)を筐体40に形成する必要がない。このため、防水構造を実現する場合に、構造を簡略化することができる。携帯電話1Aは、ダイナミックスピーカの放音口等の開口部を筐体40に形成する必要がある場合、防水構造を実現するために、気体は通すが液体は通さない部材によって開口部を閉塞する構造を採用してもよい。気体は通すが液体は通さない部材は、例えば、ゴアテックス(登録商標)である。
図5を参照しながら、携帯電話1Aの機能的な構成について説明する。図5は、携帯電話1Aのブロック図である。図5に示すように、携帯電話1Aは、ディスプレイ2と、ボタン3と、照度センサ4と、近接センサ5と、通信ユニット6と、圧電素子7と、マイク8と、ストレージ9と、コントローラ10と、スピーカ11と、カメラ12と、姿勢検出ユニット15と、バイブレータ18と、タッチスクリーン21とを備える。
通信ユニット6は、無線により通信する。通信ユニット6によってサポートされる通信方式は、無線通信規格である。無線通信規格として、例えば、2G、3G、4G等のセルラーフォンの通信規格がある。セルラーフォンの通信規格として、例えば、LTE(Long Term Evolution)、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)、CDMA2000、PDC(Personal Digital Cellular)、GSM(登録商標)(Global System for Mobile Communications)、PHS(Personal Handy−phone System)等がある。無線通信規格として、さらに、例えば、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、IEEE802.11、Bluetooth(登録商標)、IrDA(Infrared Data Association)、NFC(Near Field Communication)等がある。通信ユニット6は、上述した通信規格の1つ又は複数をサポートしていてもよい。
ストレージ9は、プログラム及びデータを記憶する。ストレージ9は、コントローラ10の処理結果を一時的に記憶する作業領域としても利用される。ストレージ9は、半導体記憶媒体、及び磁気記憶媒体等の任意の非一過的(non−transitory)な記憶媒体を含んでよい。ストレージ9は、複数の種類の記憶媒体を含んでよい。ストレージ9は、メモリカード、光ディスク、又は光磁気ディスク等の可搬の記憶媒体と、記憶媒体の読み取り装置との組み合わせを含んでよい。ストレージ9は、RAM(Random Access Memory)等の一時的な記憶領域として利用される記憶デバイスを含んでよい。
ストレージ9に記憶されるプログラムには、フォアグランド又はバックグランドで実行されるアプリケーションと、アプリケーションの動作を支援する制御プログラムとが含まれる。アプリケーションは、例えば、ディスプレイ2に画面を表示させ、タッチスクリーン21によって検出されるジェスチャに応じた処理をコントローラ10に実行させる。制御プログラムは、例えば、OSである。アプリケーション及び制御プログラムは、通信ユニット6による無線通信又は非一過的な記憶媒体を介してストレージ9にインストールされてもよい。
ストレージ9は、例えば、制御プログラム9A、読み上げアプリケーション9B、通話アプリケーション9C、メールアプリケーション9D、ブラウザアプリケーション9E、スケジュールアプリケーション9F、辞書アプリケーション9G、メディア再生アプリケーション9H、及び設定データ9Zを記憶する。読み上げアプリケーション9Bは、テキストデータを、あたかも人が読み上げたような音声データへ変換する読み上げ機能を提供する。読み上げアプリケーション9Bによる読み上げ機能は、他のアプリケーションによる機能から呼び出されることがある。通話アプリケーション9Cは、無線通信による通話のための通話機能を提供する。メールアプリケーション9Dは、電子メールの送信、受信、及び閲覧等の電子メール機能を提供する。ブラウザアプリケーション9Eは、WEBページを表示するためのWEBブラウジング機能を提供する。スケジュールアプリケーション9Fは、スケジュールの登録、一覧表示、及び通知等のスケジュール管理機能を提供する。辞書アプリケーション9Gは、単語の検索、及び表示等の辞書機能を提供する。メディア再生アプリケーション9Hは、動画データ及び音データを再生する機能を提供する。設定データ9Zは、携帯電話1Aの動作に関連する各種の設定に関する情報を含む。
制御プログラム9Aは、携帯電話1Aを稼働させるための各種制御に関する機能を提供する。制御プログラム9Aは、例えば、タッチスクリーン21によって検出される接触に基づいて利用者の操作を判定し、判定された操作に対応するプログラムを起動する。制御プログラム9Aが提供する機能には、耳のパネル20への接触が検出された場合に音を出力する処理を開始するための制御を行う機能が含まれる。制御プログラム9Aが提供する機能は、通話アプリケーション9C等の他のプログラムが提供する機能と組み合わせて利用されることがある。
コントローラ10は、演算処理装置である。演算処理装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、SoC(System−on−a−chip)、MCU(Micro Control Unit)、及びFPGA(Field−Programmable Gate Array)を含むが、これらに限定されない。コントローラ10は、携帯電話1Aの動作を統括的に制御して各種の機能を実現する。
具体的には、コントローラ10は、ストレージ9に記憶されているデータを必要に応じて参照しつつ、ストレージ9に記憶されているプログラムに含まれる命令を実行する。そして、コントローラ10は、データ及び命令に応じて機能部を制御し、それによって各種機能を実現する。機能部は、例えば、ディスプレイ2、通信ユニット6、圧電素子7、マイク8、スピーカ11、及びバイブレータ18を含むが、これらに限定されない。コントローラ10は、検出部の検出結果に応じて、制御を変更することがある。検出部は、例えば、ボタン3、照度センサ4、近接センサ5、カメラ12、姿勢検出ユニット15、及びタッチスクリーン21を含むが、これらに限定されない。
コントローラ10は、例えば、制御プログラム9Aを実行することにより、パネル20への耳の接触が検出された場合に音を出力する処理を開始するための制御を実行する。
姿勢検出ユニット15は、携帯電話1Aの姿勢を検出する。姿勢検出ユニット15は、姿勢を検出するために、加速度センサ、方位センサ、及びジャイロスコープの少なくとも1つを備える。バイブレータ18は、携帯電話1Aの一部又は全体を振動させる。バイブレータ18は、振動を発生させるために、例えば、圧電素子、又は偏心モータを有する。バイブレータ18による振動は、音を伝えるためではなく、着信等の各種のイベントを利用者に報知するために用いられる。
図5においてストレージ9が記憶するプログラム及びデータの一部又は全部は、通信ユニット6による無線通信で他の装置からダウンロードされてもよい。図5においてストレージ9が記憶するプログラム及びデータの一部又は全部は、ストレージ9に含まれる読み取り装置が読み取り可能な非一過的な記憶媒体に記憶されていてもよい。非一過的な記憶媒体は、例えば、CD(登録商標)、DVD(登録商標)、Blu−ray(登録商標)等の光ディスク、光磁気ディスク、磁気記憶媒体、メモリカード、及びソリッドステート記憶媒体を含むが、これらに限定されない。
図5に示した携帯電話1Aの構成は例であり、本発明の要旨を損なわない範囲において適宜変更してよい。例えば、携帯電話1Aは、操作のためのボタンとして、テンキー配列又はQWERTY配列等のボタンを備えていてもよい。
図6及び図7Aから図7Cを参照しながら、パネル20への耳の接触が検出された場合に音を発生させる処理を開始する制御について説明する。図6は、パネル20への耳の接触が検出された場合に音を発生させる処理を開始する制御の処理手順を示すフローチャートである。図7Aから図7Cは、パネル20への耳の接触の検出について説明するための図である。図6に示す処理手順は、コントローラ10が制御プログラム9Aを実行することにより実現される。
図6に示すように、コントローラ10は、まず、第1の処理を実行する(ステップS101)。第1の処理は、圧電素子7及びパネル20による気導音及び振動音の発生に先行して行われる処理である。例えば、第1の処理は、気導音及び振動音の発生のための準備を行う処理、次に行う処理を選択するための処理であって気導音及び振動音を発生させることが選択肢の1つとして含まれる処理、又は気導音及び振動音の発生を通知する処理である。
続いて、コントローラ10は、パネル20への接触があるかを判定する(ステップS102)。パネル20への接触がない場合(ステップS102,No)、ステップS102の判定が再度行われる。パネル20への接触がある場合(ステップS102,Yes)、コントローラ10は、パネル20へ接触しているのが耳であるかを判定する(ステップS103)。パネル20へ接触しているのが耳でない場合(ステップS103,No)、ステップS102の判定が再度行われる。
パネル20へ接触しているのが耳である場合(ステップS103,Yes)、コントローラ10は、圧電素子7及びパネル20により気導音及び振動音を発生させる第2の処理を実行する(ステップS104)。第2の処理は、例えば、第1の処理によって準備された気導音及び振動音を発生させる処理、第1の処理の実行の後に出力可能となる気導音及び振動音を発生させる処理、又は第1の処理における通知に対応する気導音及び振動音を発生させる処理である。
このように、携帯電話1Aは、パネル20への耳の接触が検出されたときに第2の処理を実行する。このような制御によれば、気導音及び振動音は、利用者が音を聞くことができる状態になったタイミングで発生する。このため、携帯電話1Aは、利用者が音を聞き逃す可能性を低減できる。さらに、利用者がタッチスクリーン21又はボタン3等に対して余分な操作をしなくても気導音及び振動音が発生するため、利用者の利便性が向上する。さらに、上述したように、パネル20の振動によって生じる気導音は比較的小さいため、携帯電話1Aは、第2の処理で出力される音が第三者に聞かれる可能性を低くすることができる。
上記の説明では、パネル20への耳の接触が検出された場合に第2の処理が開始されるが、第2の処理は、パネル20上の所定の位置で耳の接触が検出された場合に開始されてもよい。このような制御によれば、利用者がパネル20上で耳を当てて音を聞き取りやすい位置を設定することにより、利用者が音を聞き取りやすい状態で音の出力を開始することができる。
上記のステップS103での耳の判定は、タッチスクリーン21の検出結果に基づいて行われる。例えば、タッチスクリーン21が、接触されている領域の大きさを検出できる場合、コントローラ10は、図7Aに示すように、接触が検出される領域71の大きさに基づいて、タッチスクリーン21に接触している物体が耳であるかを判定することができる。具体的には、領域71の大きさが、耳の大きさに対応する範囲内にある場合にコントローラ10は、タッチスクリーン21に接触している物体が耳であると判定する。
この方式では、タッチスクリーン21に接触している耳の位置をさらに検出する場合、耳の位置である位置72は、以下のように検出される。位置72は、例えば、領域71の中心(重心)であってよい。位置72は、領域71を含む最小矩形の頂点のいずれかであってもよい。位置72は、耳の所定の部位に対応する位置であってもよい。この場合、耳におけるその部位の一般的な位置に関する情報に基づいて、領域71との相対的な位置関係から位置72が算出される。
この方式は、複雑な演算を行うことなく、パネル20に接触している物体が耳であるかを判定することを可能にする。さらに、この方式は、タッチスクリーン21がパネル20に対する接触を同時に検出できる点の数が少ない場合にも適用できる。
あるいは、タッチスクリーン21が、接触を同時に複数の点で検出できる場合、コントローラ10は、図7Bに示すように、パターンマッチングによって、タッチスクリーン21に接触している物体が耳であるかを判定することができる。この場合、コントローラ10は、図7Bに示すように、物体の接触時にタッチスクリーン21の検出結果に基づいて得られる像73と、予め用意される標本74とのパターンマッチングを行う。像73は、タッチスクリーン21の検出領域を格子状に分割し、分割されたそれぞれの領域における物体の接触の検出状態を、対応する画素の状態に変換することにより得られる。それぞれの領域においてタッチスクリーン21が検出する値が、例えば、タッチスクリーン21と物体の距離、物体がタッチスクリーン21を圧迫する押圧等によって変動する場合、像73は、多階調の画像となってもよい。
標本74は、耳の接触時に耳が接触している領域で像73と同様のやりかたで得られるはずの像である。標本74は、携帯電話1Aの利用者の耳の接触時に得られるはずの像であってもよいし、一般的な人の耳の接触時に得られるはずの像であってもよい。標本74は、右耳の像、左耳の像というように複数枚用意されてもよい。
パターンマッチングによって、像73と標本74とがマッチした場合(例えば、一致度が閾値よりも高い場合)、コントローラ10は、タッチスクリーン21に接触している物体が耳であると判定する。一方、像73と標本74とがマッチしない場合(例えば、一致度が閾値よりも高くない場合)、コントローラ10は、タッチスクリーン21に接触している物体は耳ではないと判定する。
この方式では、タッチスクリーン21に接触している耳の位置をさらに検出する場合、耳の位置は、以下のように検出される。標本74に、耳の所定の部位に対応する基準位置74aを予め含める。基準位置74aは、標本74の左上を基準として、(x1,y1)に位置している。基準位置74aは、一般的な人の耳における所定の部位の位置に関する情報に基づいて設定されてもよい。標本74が携帯電話1Aの利用者の耳の接触時に実際に得られた像である場合、基準位置74aは、像を解析して得られる所定の部位の位置に設定されてもよい。
コントローラ10は、像73が得られると、パターンマッチングによって、像73と標本74とが最もマッチする際の両者の相対位置を得る。パターンマッチングによって、像73と標本74とがマッチすると判定され、相対位置が得られると、コントローラ10は、相対位置と、基準位置74aとに基づいて、耳の位置を算出する。図7Bの例の場合、像73の左上を基準として、標本74をX軸方向にx2、Y軸方向にy2だけシフトした場合に両者が最もマッチする。この場合、耳の位置は、(x1+x2,y1+y2)と算出される。
この方式は、パネル20に接触する物体が耳であるかを精度よく判定することを可能にする。さらに、この方式は、標本とのマッチングによって、パネル20に接触する物体が予め登録されている人物の耳であるかを判定することを可能にする。さらに、この方式は、耳の向き及び傾き等の、耳の接触に関する詳細な情報を検出することを可能にする。
パターンマッチングによって耳の位置を検出する場合、標本は、基準位置を含まなくてもよい。図7Cに示す例では、像73は、基準位置を含まない標本75とパターンマッチングされている。図7Cの例の場合、像73の左上を基準として、標本75をX軸方向にx3、Y軸方向にy3だけシフトした場合に両者が最もマッチする。この場合、耳の位置は、例えば、(x3,y3)と算出される。
この方式は、基準位置を含まないため、標本の作成を容易にする。
パネル20に接触する物体が耳であるかを、タッチスクリーン21を用いて判定する方式は、上記の方式に限定されず、他の方式を採用してもよい。例えば、耳がパネル20に接触する場合にタッチスクリーン21によって検出される何らかの特徴情報を用いて、パネル20に接触する物体が耳であるか否かの判定が行われてもよい。
図8から図13を参照しながら、第1の処理及び第2の処理の具体例について説明する。図8は、第1の処理が電子メールを表示する処理であり、第2の処理が電子メールの本文を読み上げる処理である例を示す図である。図8に示すステップS11において、コントローラ10は、電子メールをディスプレイ2に表示している。電子メールを表示する機能は、コントローラ10がメールアプリケーション9Dを実行することによって実現される。コントローラ10は、機密性が高いこと又は重要性が高いことを示す指定が電子メールに設定されている場合、ステップS11に示すように、電子メールの本文の代わりに、パネル20に耳を接触させることを促すメッセージをディスプレイ2に表示する。
そして、利用者が耳をパネル20に接触させたことがタッチスクリーン21によって検出されると(ステップS12)、コントローラ10は、電子メールの本文に係る音声を、気導音及び振動音として発生させる(ステップS13)。メール本文を読み上げる機能は、コントローラ10が読み上げアプリケーション9Bを実行することによって実現される。
このように、機密性又は重要性が高い電子メールの本文をディスプレイ2に表示せずに気導音及び振動音として出力することにより、電子メールの本文が第三者に覗き見されたり、本文を読み上げる音が第三者に聞かれたりすることを抑止できる。さらに、利用者が耳を接触させたときに読み上げが開始されるため、利用者は、読み上げられる音を聞き逃しにくく、余分な操作を行わなくてよい。
電子メールを表示する場合の制御は、上記の例に限定されない。例えば、コントローラ10は、機密性が高いこと又は重要性が高いことを示す指定が電子メールに設定されている場合に、電子メールの本文だけでなく、件名及び送信元メールアドレス等の他の項目も、ディスプレイ2に表示せずに気導音及び振動音として出力してもよい。コントローラ10は、機密性が高いこと又は重要性が高いことを示す指定が電子メールの本文の一部のみに設定されている場合に、その部分のみをディスプレイ2に表示せずに気導音及び振動音として出力してもよい。コントローラ10は、機密性が高いこと又は重要性が高いことを示す指定が設定されているか否かに関わらず、電子メールの本文等をディスプレイ2に表示せずに気導音及び振動音として出力してもよい。
電子メールに関連して気導音及び振動音を出力するのは、本文等を読み上げる場合に限定されない。例えば、コントローラ10は、電子メールに添付されているデータを再生する際に出力する音を気導音及び振動音として出力してもよい。
図9は、第1の処理が電子メールを表示する処理であり、第2の処理が電子メールに添付されている音データを再生する処理である例を示す図である。図9に示すステップS21において、コントローラ10は、電子メールをディスプレイ2に表示している。電子メールに音データが添付されている場合、音データの名称又はアイコン等を表示することによって、添付されている音データの存在を利用者に知らせる。
そして、利用者が耳をパネル20に接触させたことがタッチスクリーン21によって検出されると(ステップS22)、コントローラ10は、添付されている音データを再生し、再生された音を、パネル20を介して気導音及び振動音として出力する(ステップS23)。音データを再生する機能は、コントローラ10がメディア再生アプリケーション9Hを実行することによって実現される。
このように、利用者が耳を接触させたときに音データの再生が開始されるため、利用者は、再生される音を聞き逃しにくく、余分な操作を行わなくてよい。コントローラ10は、所定の操作が検出された場合には、添付されているデータから再生された音をスピーカ11から出力してもよい。
図10は、第1の処理が単語に関する情報を表示する処理であり、第2の処理が単語を読み上げる処理である例を示す図である。図10に示すステップS31において、コントローラ10は、単語に関する情報をディスプレイ2に表示している。単語に関する情報を表示する機能は、コントローラ10が辞書アプリケーション9Gを実行することによって実現される。コントローラ10は、例えば、利用者によって入力又は選択された単語に対応する情報をストレージ9又はネットワークを介して接続された他の装置に記憶される辞書データから取得し、表示する。
そして、利用者が耳をパネル20に接触させたことがタッチスクリーン21によって検出されると(ステップS32)、コントローラ10は、単語に係る音声を、気導音及び振動音として発生させる(ステップS33)。単語を読み上げる機能は、コントローラ10が読み上げアプリケーション9Bを実行することによって実現される。
このように、単語を気導音及び振動音として出力することにより、利用者は、単語の意味だけでなく、発音を知ることができる。さらに、利用者が耳を接触させたときに読み上げが開始されるため、利用者は、読み上げられる音を聞き逃しにくく、余分な操作を行わなくてよい。
図11は、第1の処理がディスプレイ2に表示されている情報を選択する処理であり、第2の処理が選択された情報を読み上げる処理である例を示す図である。図11に示すステップS41において、コントローラ10は、WEBページをディスプレイ2に表示している。WEBページを表示する機能は、コントローラ10がブラウザアプリケーション9Eを実行することによって実現される。
ステップS42では、利用者がWEBページに含まれるテキストの一部を選択する操作が行われている。テキストの一部を選択する操作は、例えば、タッチスクリーン21上で選択範囲の始点及び終点を指定することによって行われる。コントローラ10は、テキストの一部を選択する操作が検出されると、選択された部分の表示態様を変更し、それによって、その部分が選択されたことを利用者に知らせる。さらに、コントローラ10は、選択されたテキストに対して行う処理を選択するためのメニューをディスプレイ2に表示する(ステップS42)。この例では、選択されたテキストをクリップボードにコピーするための「コピー」と、選択されたテキストを読み上げるための「読み上げ」という2つの選択肢をもつメニューが表示されている。
そして、利用者が耳をパネル20に接触させたことがタッチスクリーン21によって検出されると(ステップS43)、コントローラ10は、選択されたテキストに係る音声を、気導音及び振動音として発生させる(ステップS44)。単語を読み上げる機能は、コントローラ10が読み上げアプリケーション9Bを実行することによって実現される。
このように、選択されたテキストを気導音及び振動音として出力することにより、利用者は、例えば、目で文字を識別し難い状況でも、テキストの内容を知ることができる。さらに、利用者が耳を接触させたときに読み上げが開始されるため、利用者は、読み上げられる音を聞き逃しにくく、メニュー選択等の余分な操作を行わなくてよい。
表示されている情報を選択する場合の制御は、上記の例に限定されない。例えば、選択された情報を読み上げる画面は、WEBページを表示する画面以外の画面であってもよい。コントローラ10は、表示されているテキストではなく、表示されている画像等の他の要素が選択された場合にその要素に対応する情報を読み上げてもよい。例えば、WEBページ上の画像が選択された場合、コントローラ10は、その画像のALT属性の値を読み上げてもよいし、その画像を解析して画像中に含まれるオブジェクトの名称、位置、形態、色等を読み上げてもよい。コントローラ10は、メニューにおいて読み上げの実行を指示する項目が選択された後に耳の接触が検出された場合に、読み上げを実行してもよい。コントローラ10は、メニューにおいて読み上げの実行を指示する項目が選択された場合に、読み上げる音をスピーカ11から出力してもよい。コントローラ10は、選択された情報に対して行う処理を選択するためのメニューを表示せずに、パネル20への耳の接触が検出された場合に選択された情報を読み上げてもよい。
図12は、第1の処理が利用者を認証する処理であり、第2の処理が認証によってアクセスが許可された情報を読み上げる処理である例を示す図である。図12に示すステップS51において、コントローラ10は、スケジュール情報をディスプレイ2に表示している。スケジュール情報を表示する機能は、コントローラ10がスケジュールアプリケーション9Fを実行することによって実現される。コントローラ10は、秘匿化することを示す指定がスケジュール情報に設定されている場合、ステップS51に示すように、スケジュールの詳細を表示せずに、暗証番号の入力を求めるメッセージをディスプレイ2に表示する。
暗証番号が入力され、認証が成功すると、コントローラ10は、ステップS52に示すように、パネル20に耳を接触させることを促すメッセージをディスプレイ2に表示する。
そして、利用者が耳をパネル20に接触させたことがタッチスクリーン21によって検出されると(ステップS53)、コントローラ10は、スケジュール情報に含まれるスケジュールの詳細に係る音声を、気導音及び振動音として発生させる(ステップS54)。スケジュールの詳細を読み上げる機能は、コントローラ10が読み上げアプリケーション9Bを実行することによって実現される。
このように、気導音及び振動音としての出力を認証と組み合わせることにより、情報を第三者に知られる可能性をさらに低くすることができる。気導音及び振動音の出力の前に認証を求める情報は、スケジュール情報に限定されず、電子メール、アドレス帳に登録されている知人の情報、通信履歴等の他の情報でもよい。
図13は、第1の処理が着信を通知する処理であり、第2の処理が着信を受け付ける処理である例を示す図である。図13に示すステップS61において、コントローラ10は、着信を利用者に通知する画面をディスプレイ2に表示している。コントローラ10は、さらに、スピーカ11からの着信音の出力及びバイブレータ18の振動の少なくとも1つを用いて、着信を利用者に通知してもよい。
そして、利用者が耳をパネル20に接触させたことがタッチスクリーン21によって検出されると(ステップS62)、コントローラ10は、着信を受け付ける処理(オフフック処理)を行って通話を開始させ、相手の声を、パネル20を介して気導音及び振動音として出力する(ステップS63)。着信の通知及び着信を受け付ける処理は、コントローラ10が通話アプリケーション9Cを実行することによって実現される。
このように、利用者が耳を接触させたときに通話が開始されるため、利用者は、相手の声を聞き逃しにくく、迅速に通話を開始することができる。
(その他の実施形態)
本出願の開示する実施形態は、当業者に明らかな事項を含むことができ、発明の要旨及び範囲を逸脱しない範囲で変形することができる。さらに、本出願の開示する実施形態及びその変形例は、適宜組み合わせることができる。例えば、上記の実施形態は、以下のように変形してもよい。
例えば、図5に示した各プログラムは、複数のモジュールに分割されていてもよいし、他のプログラムと結合されていてもよい。
上記の実施形態では、タッチスクリーン21がパネル20のほぼ全面に配設される例について説明したが、タッチスクリーン21は、パネル20と重ならないように配設されてもよい。図14は、タッチスクリーン21がパネル20と重ならないように配設される携帯電話1Bの正面図である。図15は、携帯電話1Bのb−b断面を模式的に示す断面図である。
図14及び図15に示すように、携帯電話1Bにおいて、ディスプレイ2は、パネル20の内側ではなく、パネル20と同一平面をなすように、パネル20と並べて配設される。タッチスクリーン21は、ディスプレイ2の表側のほぼ全面を覆うように配設される。すなわち、タッチスクリーン21及びディスプレイ2は、所謂タッチパネル(タッチスクリーンディスプレイ)を構成する。
パネル20の背面のほぼ中央には、接合部材30により、圧電素子7が取り付けられる。パネル20は、圧電素子7に電気信号が印加されると、圧電素子7の変形(伸縮又は屈曲)に応じて振動し、気導音と、パネル20に接触する人体の一部(例えば、耳介軟骨)を介して伝わる振動音とを発生する。圧電素子7をパネル20の中央に配設することにより、圧電素子7の振動がパネル20全体に均等に伝わり、気導音及び振動音の品質が向上する。
パネル20の表側の面にはタッチスクリーン21が配設されないが、パネル20は、タッチスクリーン21が配設されるディスプレイ2の近傍に配置される。
このような構成の携帯電話1Bの利用者が、振動音を聞くために耳をパネル20に接触させると、パネル20はタッチスクリーン21の近傍にあるため、耳の一部がタッチスクリーン21に接触する。このため、タッチスクリーン21の検出領域を格子状に分割し、分割されたそれぞれの領域における耳の接触の検出状態を、対応する画素の状態に変換することにより、図16に示すような像76が得られる。
携帯電話1Bは、像76が得られると、像76と標本75とのパターンマッチングを行う。パターンマッチングによって、像76と標本75とがマッチした場合(例えば、一致度が閾値よりも高い場合)、コントローラ10は、タッチスクリーン21に接触している物体が耳であると判定する。一方、像76と標本75とがマッチしない場合(例えば、一致度が閾値よりも高くない場合)、コントローラ10は、タッチスクリーン21に接触している物体は耳ではないと判定する。
タッチスクリーン21に接触している耳の位置をさらに検出する場合、コントローラ10は、像76と標本75とが最もマッチする際の両者の相対位置を得る。図16の例の場合、像76の左上を基準として、標本75をX軸方向にx4、Y軸方向に−y4だけシフトした場合に両者が最もマッチする。この場合、耳の位置は、(x4,−y4)と算出される。コントローラ10は、基準位置74aを含む標本74を用いて耳の位置を検出することもできる。
このように、コントローラ10は、タッチスクリーン21がパネル20と重ならないように配設されていても、パネル20に接触する物体が耳であるか否かを判定することができる。
上記の実施形態では、タッチスクリーン21の少なくとも一部がディスプレイ2と重なるように配設される例について説明したが、タッチスクリーン21は、ディスプレイ2と重ならないように配設されてもよい。図17は、タッチスクリーン21がディスプレイ2と重ならないように配設される携帯電話1Cの正面図である。図18は、携帯電話1Cのc−c断面を模式的に示す断面図である。
図17及び図18に示すように、携帯電話1Cにおいて、ディスプレイ2は、パネル20の内側ではなく、パネル20と同一平面をなすように、パネル20と並べて配設される。
パネル20の背面のほぼ中央には、接合部材30により、圧電素子7が取り付けられる。パネル20と圧電素子7との間には、補強部材31が配設される。すなわち、携帯電話1Cにおいては、圧電素子7と補強部材31とが接合部材30により接着され、さらに補強部材31とパネル20とが接合部材30で接着される。
補強部材31は、例えばゴムまたはシリコン等の弾性部材である。補強部材31は、例えばある程度の弾性を有するアルミニウム等から成る金属板であってもよい。補強部材31は、例えばSUS304等のステンレス板であってもよい。ステンレス板等の金属板の厚さは、圧電素子7に印加される電圧値等に応じて、例えば0.2mm〜0.8mmのものが適宜用いられる。補強部材31は、例えば樹脂製の板であってもよい。ここでいう樹脂製の板を形成する樹脂としては、例えばポリアミド系樹脂が挙げられる。ポリアミド系樹脂には、例えば、メタキシリレンジアミンとアジピン酸とから得られる結晶性の熱可塑性樹脂から成り、強度および弾性に富むレニー(登録商標)がある。このようなポリアミド系樹脂は、それ自体をベースポリマーとして、ガラス繊維、金属繊維または炭素繊維等により強化された強化樹脂であってもよい。強化樹脂は、ポリアミド系樹脂に対するガラス繊維、金属繊維または炭素繊維等の付加量に応じて、強度および弾性が適宜調整される。強化樹脂は、例えば、ガラス繊維、金属繊維または炭素繊維等を編みこんで形成された基材に樹脂を含浸させ、硬化させて形成される。強化樹脂は、液状の樹脂に細かく切断された繊維片を混入させたのちに硬化させて形成されるものであってもよい。強化樹脂は、繊維を編みこんだ基材と樹脂層とを積層したものであってもよい。
圧電素子7とパネル20との間に補強部材31を配設することにより、以下の効果が得られる。パネル20に外力が加わった場合に、その外力が圧電素子7に伝わって圧電素子7が破損する可能性を低減することができる。例えば携帯電話1Cが地面に落下することでパネル20に対して外力が加わると、当該外力はまず補強部材31に伝わる。補強部材31は、所定の弾性を有しているため、パネル20から伝わる外力により弾性変形する。そのため、パネル20に対して加わった外力は補強部材31により少なくとも一部が吸収され、圧電素子7に伝達される外力が低減される。結果、圧電素子7の破損を低減することができる。補強部材31が圧電素子7と筺体40との間に配置される場合、例えば携帯電話1Cが地面に落下することで筺体40が変形し、変形した筺体40が圧電素子7に衝突して圧電素子7が破損する可能性を低減できる。
圧電素子7の伸縮または屈曲による振動は、まず補強部材31に伝達され、さらにパネル20に伝達される。すなわち、圧電素子7は、まず圧電素子7よりも大きな弾性係数を有する補強部材31を振動させ、さらにパネル20を振動させることになる。したがって、携帯電話1Cは、補強部材31を備えず、圧電素子7が接合部材70によりパネル20に接合される構造と比較して、圧電素子7の変形が過剰になりにくくすることができる。これにより、パネル20の変形量(変形の程度)を調節することができる。この構造は、圧電素子7の変形を阻害しにくいパネル20の場合に特に有効である。
さらに、圧電素子7とパネル20との間に補強部材31を配設することにより、図19に示すように、パネル20の共振周波数が下がり、低周波帯域の音響特性が向上する。図19は、補強部材31による周波数特性の変化例を示す図である。図19には、上記のSUS304のような板金を補強部材31として用いた場合の周波数特性と、上記のレニーのような強化樹脂を補強部材31として用いた場合の周波数特性とが示されている。横軸は周波数を、縦軸は音圧を示す。強化樹脂を用いた場合の共振点は約2kHzであり、板金を用いた場合の共振点は約1kHzである。強化樹脂を用いた場合のディップは約4kHzであり、板金を用いた場合のディップは約3kHzである。すなわち、強化樹脂を用いた場合には、板金を用いた場合に比べて、パネル20の共振点が高い周波数領域に位置しており、周波数特性のディップがより高い周波数領域に位置している。携帯電話機の音声通話で用いられる周波数帯は300Hz〜3.4kHzであるため、強化樹脂を補強部材31として用いた場合、ディップが携帯電話1Cの使用周波数帯に含まれないようにすることができる。尚、補強部材31として板金を用いる場合でも、板金を構成する金属の種類もしくは組成または板金の厚さ等を適宜調整することで、ディップが携帯電話1Cの使用周波数帯に含まれないようにすることができる。板金と強化樹脂とを比較すると、強化樹脂は、板金と比較してアンテナ性能への影響を低減することができる。強化樹脂は板金と比較して塑性変形しにくいため、音響特性が変化しにくいという利点がある。強化樹脂は板金と比較して、音発生時の温度上昇が抑えられる。補強部材31に換えて、板状の錘を接合部材30により圧電素子7に取り付けてもよい。
パネル20は、圧電素子7に電気信号が印加されると、圧電素子7の変形(伸縮又は屈曲)に応じて振動し、気導音と、パネル20に接触する人体の一部(例えば、耳介軟骨)を介して伝わる振動音とを発生する。タッチスクリーン21は、パネル20の表側のほぼ全面を覆うように配設される。
このような構成の携帯電話1Cの利用者が、振動音を聞くために耳をパネル20に接触させると、タッチスクリーン21は耳と比較して小さいものの、耳の一部がタッチスクリーン21に接触する。このため、タッチスクリーン21の検出領域を格子状に分割し、分割されたそれぞれの領域における耳の接触の検出状態を、対応する画素の状態に変換することにより、図20に示すような像77が得られる。
携帯電話1Cは、像77が得られると、像77と標本75とのパターンマッチングを行う。パターンマッチングによって、像77と標本75とがマッチした場合(例えば、一致度が閾値よりも高い場合)、コントローラ10は、タッチスクリーン21に接触している物体が耳であると判定する。一方、像77と標本75とがマッチしない場合(例えば、一致度が閾値よりも高くない場合)、コントローラ10は、タッチスクリーン21に接触している物体は耳ではないと判定する。
タッチスクリーン21に接触している耳の位置をさらに検出する場合、コントローラ10は、像77と標本75とが最もマッチする際の両者の相対位置を得る。図20の例の場合、像77の左上を基準として、標本75をX軸方向にx5、Y軸方向に−y5だけシフトした場合に両者が最もマッチする。この場合、耳の位置は、(x5,−y5)と算出される。コントローラ10は、基準位置74aを含む標本74を用いて耳の位置を検出することもできる。
このように、コントローラ10は、タッチスクリーン21がディスプレイ2と重ならないように配設されていても、パネル20に接触する物体が耳であるか否かを判定することができる。
上記の実施形態では、パネル20に対する耳の接触を、タッチスクリーン21を用いて検出する例を示したが、耳の接触を検出する検出部は、タッチスクリーン21に限定されない。例えば、耳の接触を検出する検出部は、カメラ12であってもよい。この場合、耳の接触は、カメラ12が取得する画像に基づいて検出される。耳の接触を検出する検出部は、近接センサ5であってもよい。
上記の実施形態では、第1の処理の後に第2の処理を行う条件として、パネル20に接触する物体が耳であるという条件を含む。しかしながら、第2の処理は、第1の処理の後に、耳であるか否かにかかわらず、パネル20への何らかの物体の接触が検出された場合に開始されてもよい。このように制御することにより、処理を簡略化することができる。
第2の処理は、第1の処理の後に、予め登録された利用者の耳がパネル20へ接触したことが検出された場合に開始されてもよい。パネル20に接触する物体が予め登録された利用者の耳であるか否かの判定は、例えば、利用者の耳の像を標本として用意しておくことにより実現できる。このように接触する耳が利用者のものであるかを判定することにより、情報を第三者に知られる可能性を低くすることができる。上記の実施形態で説明した暗証番号による認証に代えて、接触する耳が利用者のものであるかを判定してもよい。
上記の実施形態では、携帯電話1Aとして、ディスプレイ2が接合部材30を用いてパネル20の背面に取り付けられる例を示したが、携帯電話1Aは、パネル20とディスプレイ2の間に空間ができるように構成されてもよい。パネル20とディスプレイ2の間に空間を設けることにより、パネル20が振動しやすくなり、パネル20上において振動音を聞きやすい範囲が広くなる。
上記の実施形態では、圧電素子7をパネル20に取り付ける例を示したが、他の場所に取り付けられてもよい。例えば、圧電素子7は、バッテリリッドに取り付けられてもよい。バッテリリッドは、筐体40に取り付けられ、バッテリを覆う部材である。バッテリリッドは、携帯電話等の携帯電子機器においてディスプレイ2と異なる面に取り付けられることが多いため、そのような構成によれば、利用者はディスプレイ2と異なる面に体の一部(例えば耳)を接触させて音を聞くことができる。
上記の実施形態では、補強部材31は板状部材であるが、補強部材31の形状はこれに限られない。補強部材31は、例えば、圧電素子7より大きく、かつその端部が圧電素子7側に湾曲し圧電素子7の側部を覆う形状を有していてもよい。また、補強部材31は、例えば、板状部と、当該板状部から延設されて圧電素子7の側部を覆う延設部とを有する形状であってもよい。この場合、延設部と圧電素子7の側部とが、所定の距離だけ離間しているとよい。これにより、延設部が圧電素子の変形を阻害しにくくなる。
また、パネル20は、表示パネル、操作パネル、カバーパネル、充電池を取り外し可能とするためのリッドパネルのいずれかの一部または全部を構成することができる。特に、パネル20が表示パネルのとき、圧電素子7は、表示機能のための表示領域の外側に配置される。これにより、表示を阻害しにくいという利点がある。操作パネルは、タッチパネルを含む。また、操作パネルは、例えば折畳型携帯電話において操作キーのキートップが一体に形成され操作部側筺体の一面を構成する部材であるシートキーを含む。
なお、パネル20と圧電素子7とを接着する接合部材およびパネル20と筺体40とを接着する接合部材等を同一の符号を有する接合部材30として説明した。しかしながら、接合部材は、接合する対象である部材に応じて適宜異なるものが用いられてよい。
上記の実施形態では、添付の請求項に係る装置の例として、携帯電話について説明したが、添付の請求項に係る装置は、携帯電話に限定されない。添付の請求項に係る装置は、携帯電話以外の携帯電子機器であってもよい。携帯電子機器は、例えば、タブレット、携帯型パソコン、デジタルカメラ、メディアプレイヤ、電子書籍リーダ、ナビゲータ、及びゲーム機を含むが、これらに限定されない。
添付の請求項に係る技術を完全かつ明瞭に開示するために特徴的な実施形態に関し記載してきた。しかし、添付の請求項は、上記実施形態に限定されるべきものでなく、本明細書に示した基礎的事項の範囲内で当該技術分野の当業者が創作しうるすべての変形例及び代替可能な構成を具現化するように構成されるべきである。