JP6057109B2 - 鉛、ビスマスおよびケイ素を含まない黄銅 - Google Patents

鉛、ビスマスおよびケイ素を含まない黄銅 Download PDF

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Description

本発明は、環境に優しい黄銅合金に関するものであり、特に、切削容易性と脱亜鉛防止を兼ね備えた黄銅合金材料に関するものである。
一般的に、加工用の黄銅とは、亜鉛金属が38−42%の割合で添加されているものである。黄銅の加工性の改善のために、黄銅に通常2−3%の鉛を含ませることで、強度と加工性を向上させる。含鉛黄銅は、優れた成形性(様々な形状の製品の製作容易性)、切削性および耐摩耗性を備えて様々な形状の機械加工部品に広く使用され、銅産業で比較的大きな割合を占めて、世界的に公認を受ける重要な基礎材料である。しかしながら、含鉛黄銅は、生産若しくは使用の過程で鉛が固体あるいは気体の形で溶出される現象が発生しやすくなる。医療の研究によると、鉛は、人体の造血と神経系、特に子供の腎臓や他の器官への損害が大きい。世界各国では、鉛に起因する汚染と被害が重視されており、米国国家衛生財団(National Sanitation Foundation、NSF)により鉛元素の許容量が0.25%以下に指定されている。また、EU(European Union)内の有害物質使用制限指令(Restriction of Hazardous Substances Directive,RoHS)などには、高鉛含有黄銅の使用を規制・禁止する規定が含まれている。
また、黄銅内の亜鉛の含有量が20wt%を超えた場合、脱亜鉛(dezincification)の腐食現象が発生しやすく、特に、当該黄銅が高塩化イオンに接触する環境、例えば、海水環境の場合、脱亜鉛の腐食現象の発生を加速させることができる。脱亜鉛作用は、黄銅合金の構造に重大な損傷を与え、黄銅製品の表面層の強度を下降させ、さらに、黄銅製のパイプの穿孔をもたらすようになるので、黄銅製品の使用寿命を大幅に削減し、応用上の問題を引き起こしてしまった。
そこで、前記の問題点を解決するために、高鉛含有黄銅の代わりになり、脱亜鉛腐食防止を達成しながら、鋳造性能、鍛造性、切削性、耐腐食性および機械的性質を並立することができる合金の配合方法を提供する必要がある。
従来技術から分かるように、ケイ素は、合金の微細構造においてγ相の形式で存在することがある(k相の場合もある)。このとき、ケイ素は、一定程度鉛の合金中での作用を代替することができ、合金の切削性を向上させる。合金の切削性は、ケイ素の含有量が増加するにつれて向上するが、ケイ素は、融点が高く、比重が低く、かつ酸化が容易なので、合金溶融過程においてケイ素単量体を炉内に加入すると、合金の表面に浮いており、合金溶融時に酸化されて酸化ケイ素あるいは他の酸化物となり、ケイ素を含有した銅合金を製造するが難しく、もしCu−Si合金の方式でケイ素を添加すると、経済的コストが比較的高い。
ところで、鉛を代替してビスマスを添加すると、合金組織中で切削中断点を形成して切削性を向上させることができるが、ビスマスの含有量が高すぎると鍛造する時の熱割れが発生しやすく、生産に不利になってしまった。
したがって、本発明の目的は、引張強度、伸び率、脱亜鉛防止性および切削性などの性能に優れた黄銅合金であって、高強度、耐摩耗性を要求される切削加工品、および鍛造品や鋳造品などの構成材料として使用されるのに適している黄銅合金を提供することにある。ことによって、大量の鉛を含有した合金銅に安全に代わって、人類社会の発展につながる含鉛製品に対する制限の需要を十分に満足させることができる。
上述した目的を達成するために、以下のような、鉛、ビスマスおよびケイ素を含まない黄銅合金を提案する。
鉛、ビスマスおよびケイ素を含まず切削性に優れた黄銅合金(以下、発明物1と略称する)は、前記黄銅合金の全重量の60−65wt%の銅と、0.01−0.15wt%のアンチモンと、0.1−0.5wt%のマグネシウムと、残量の亜鉛とを含む。
本発明物1は、鉛、ケイ素およびビスマスを除去した状況下で、銅の含有量を60−65wt%に制御し、少量のアンチモンとマグネシウムを添加して銅との金属間化合物を形成することにより、合金の切削性を高めるとともに、合金の脱亜鉛防止性にも有用である。言い換えると、発明物1内にアンチモンとマグネシウムを添加してγ相を形成するのは、その切削性を改善した。当該合金の微細構造は、主にα相、β相、γ相、および結晶粒界あるいは結晶粒内に分布された柔らかくて脆い金属間化合物を含み、そのうち銅と亜鉛が黄銅合金の主要成分を構成する。アンチモンとマグネシウムの添加は、合金の切削性を改善するほか、同時に脱亜鉛防止性にも有用である。
アンチモンの含有量が0.01wt%より低く、マグネシウムの含有量が0.1wt%よりも低いときに形成された合金は、工業生産において必要とする基本的な切削性に到達することができない。また、合金の切削性は、アンチモンとマグネシウムの含有量が増加するにつれて増加するが、合金中のアンチモンの含有量が0.15wt%であり、マグネシウムの含有量が0.5wt%であるときに、合金の切削性の改善効果が飽和する。
鉛、ビスマスおよびケイ素を含まず切削性に優れた黄銅合金(以下、発明物2と略称する)は、前記黄銅合金の全重量の60−65wt%の銅と、0.01−0.15wt%のアンチモンと、0.1−0.5wt%のマグネシウムと、前記黄銅合金の全重量の0.05−0.3wt%のリンおよび/または0.05−0.5wt%のマンガンと、残量の亜鉛とを含む。
比較してみると、発明物2は、発明物1の基礎の上に更に0.05−0.3wt%のリンおよび/または0.05−0.5wt%のマンガンを添加している。リンは、γ相を形成することができないが、アンチモンとマグネシウムにγ相の分布を良好に形成させる機能を備えているため、合金の切削性を向上させる。同時に、リンを添加したγ相は、主なα相の結晶粒を分散させ、合金の鋳造性能、耐腐食性を向上させる。銅、アンチモンおよびマグネシウムの含有量がそれぞれ60−65wt%、0.01−0.15wt%および0.1−0.5wt%の場合、リンの含有量は、0.05wt%よりも低いときに、その作用を発揮することができないが、0.3wt%よりも高いときに、逆に合金の鋳造性能と耐腐食性を下降させる。しかしながら、マンガンの添加は、合金の脱亜鉛防止性能と鋳造の流動性を増強するのに役立っている。マンガンの含有量は、0.05wt%より低いときに、その作用を効果的に発揮することができないが、0.5wt%であるときに、その作用の発揮が飽和値に到達する。
鉛、ビスマスおよびケイ素を含まず切削性に優れた黄銅合金(以下、発明物3と略称する)は、前記黄銅合金の全重量の60−65wt%の銅と、0.01−0.15wt%のアンチモンと、0.1−0.5wt%のマグネシウムと、前記黄銅合金の全重量の0.05−0.5wt%のマンガン、0.1−0.7wt%のアルミニウム、0.05−0.5wt%の錫、0.05−0.3wt%のリンおよび/または0.001−0.01wt%のホウ素と、残量の亜鉛とを含む。
発明物3は、発明物1の基礎の上に更に黄銅合金の全重量の0.05−0.5wt%のマンガン、0.1−0.7wt%のアルミニウム、0.05−0.5wt%の錫、0.05−0.3wt%のリンおよび/または0.001−0.01wt%のホウ素を添加している。
合金中に錫を添加するのは、同様にγ相を形成して合金の切削性を向上させるためである。また、錫の加入により、合金の強度を著しく向上させ、その塑性を改善させ、耐腐食性を増強させるようになる。しかしながら、錫を添加すると、コストが高まるという点を考慮するので、錫を添加するとともに、アルミニウムを添加するのは、合金の切削性を改善させるほか、合金強度、耐摩耗性、鋳造の流動性および耐高温酸化性も向上させることができる。上述した作用をより良く発揮するために、錫とアルミニウムの含有量は、それぞれ0.05−0.5wt%と0.1−0.7wt%とする。同時に、合金中に微量のホウ素を添加して合金の耐蝕性能を向上させ、また、ホウ素を加入した後、合金の脱亜鉛をより良く抑制し、その機械強度を増強することができると同時に、銅合金の表面の亜酸化銅膜の欠陥構造を改変し、亜酸化銅膜をさらに均一にし、緻密にし、また耐汚染性を向上させることが可能である。ホウ素の含有量は、0.001wt%よりも低いときに、上記した作用を発揮することができないが、0.01wt%よりも高いときに、上記した性能をさらに向上させることができないので、ホウ素の好ましい含有量は、0.001−0.01wt%である。リンとマンガンの含有量の範囲は、それぞれ発明物2と一致しており、その理由は、発明物2の理由と同じである。その中で、アンチモン、マグネシウム、アルミニウム、錫、リン、マンガンおよび/またはホウ素の添加の有無は、異なる製品の切削性に対する要求の高低に応じて選択されている。
鉛、ビスマスおよびケイ素を含まず切削性に優れた黄銅合金(以下、発明物4と略称する)は、前記黄銅合金の全重量の60−65wt%の銅と、0.01−0.15wt%のアンチモンと、0.1−0.5wt%のマグネシウムと、前記黄銅合金の全重量の0.05−0.5wt%のマンガン、0.1−0.7wt%のアルミニウム、0.05−0.5wt%の錫、0.05−0.3wt%のリンおよび/または0.001−0.01wt%のホウ素と、残量の亜鉛とを含み、前記マンガン、アルミニウム、錫、リンおよび/またはホウ素の総含有量は、前記黄銅合金の全重量の2wt%を超えない。
鉛、ビスマスおよびケイ素を含まず切削性に優れた黄銅合金(以下、発明物5と略称する)は、前記黄銅合金の全重量の60−65wt%の銅と、0.01−0.15wt%のアンチモンと、0.1−0.5wt%のマグネシウムと、前記黄銅合金の全重量の0.05−0.5wt%のマンガン、0.1−0.7wt%のアルミニウム、0.05−0.5wt%の錫、0.05−0.3wt%のリンおよび/または0.001−0.01wt%のホウ素と、残量の亜鉛とを含み、前記マンガン、アルミニウム、錫、リンおよび/またはホウ素の総含有量は、前記黄銅合金の全重量の0.2−2wt%を占める。
鉛、ビスマスおよびケイ素を含まず切削性に優れた黄銅合金(以下、発明物6と略称する)は、前記黄銅合金の全重量の60−65wt%の銅と、0.01−0.15wt%のアンチモンと、0.1−0.5wt%のマグネシウムと、前記黄銅合金の全重量の0.05−0.5wt%のマンガン、0.1−0.7wt%のアルミニウム、0.05−0.5wt%の錫、0.05−0.3wt%のリンおよび/または0.001−0.01wt%のホウ素と、残量の亜鉛および不可避な不純物とを含み、前記不純物は、前記黄銅合金の全重量の0.25wt%以下のニッケルおよび/または0.15wt%以下のクロムおよび/または0.25wt%以下の鉄を含む。
発明物6は、発明物3の基礎の上に、いくつかの不可避な不純物、すなわち、機械的不純物であるニッケルおよび/またはクロムおよび/または鉄を含む。
鉛、ビスマスおよびケイ素を含まず切削性に優れた黄銅合金(以下、発明物7と略称する)は、前記黄銅合金の全重量の60−65wt%の銅と、0.05−0.5wt%の錫と、前記黄銅合金の全重量の0.1−0.7wt%のアルミニウム、0.05−0.3wt%のリンおよび0.05−0.5wt%のマンガンから選択された2つ以上の元素と、残量の亜鉛とを含む。
アンチモンとマグネシウムを含まない状況下で、合金の全重量の0.05−0.5wt%の錫を添加するのは、同様に工業生産の切削性に対する需要を満足させることができ、その含有量の範囲は、発明物3と一致し、その理由は、発明物3について説明した理由と同じである。その中で、アルミニウム、リン、マンガンの添加の有無は、異なる製品の切削性に対する要求の高低に応じて選択されており、その含有量の範囲は、発明物3と一致し、その理由は、発明物3について説明したものと同一である。
鉛、ビスマスおよびケイ素を含まず切削性に優れた黄銅合金(以下、発明物8と略称する)は、前記黄銅合金の全重量の60−65wt%の銅と、0.05−0.5wt%の錫と、前記黄銅合金の全重量の0.1−0.7wt%のアルミニウム、0.05−0.3wt%のリンおよび0.05−0.5wt%のマンガンから選択された2つ以上の元素と、前記黄銅合金の全重量の0.01−0.15wt%のアンチモン、0.1−0.5wt%のマグネシウムおよび/または0.001−0.01wt%のホウ素と、残量の亜鉛とを含む。
その中で、アンチモン、マグネシウム、アルミニウム、錫、リン、マンガンおよび/またはホウ素の添加の有無は、異なる製品の切削性に対する要求の高低に応じて選択されており、その含有量の範囲は、発明物3と一致し、その理由は、発明物3について説明したものと同一である。
鉛、ビスマスおよびケイ素を含まず切削性に優れた黄銅合金(以下、発明物9と略称する)は、前記黄銅合金の全重量の60−65wt%の銅と、0.05−0.5wt%の錫と、前記黄銅合金の全重量の0.1−0.7wt%のアルミニウム、0.05−0.3wt%のリンおよび0.05−0.5wt%のマンガンから選択された2つ以上の元素と、前記黄銅合金の全重量の0.01−0.15wt%のアンチモン、0.1−0.5wt%のマグネシウムおよび/または0.001−0.01wt%のホウ素と、残量の亜鉛および不可避な不純物を含み、前記不純物は、前記黄銅合金の全重量の0.25wt%以下のニッケルおよび/または0.15wt%以下のクロムおよび/または0.25wt%以下の鉄を含む。
発明物9は、発明物8の基礎の上に、いくつかの不可避な不純物、すなわち、機械的不純物であるニッケルおよび/またはクロムおよび/または鉄を含む。
鉛、ビスマスおよびケイ素を含まず切削性に優れた黄銅合金(以下、発明物10と略称する)は、前記黄銅合金の全重量の60−65wt%の銅と、0.01−0.15wt%のアンチモンと、0.1−0.5wt%のマグネシウムと、前記黄銅合金の全重量の0.1−0.7wt%のアルミニウム、0.05−0.5wt%の錫、0.05−0.3wt%のリン、0.05−0.5wt%のマンガンおよび0.001−0.01wt%のホウ素から選択された1つ以上の元素と、残量の亜鉛とを含む。
その中で、アルミニウム、錫、リン、マンガンおよび/またはホウ素の添加の有無は、異なる製品の切削性に対する要求の高低に応じて選択されており、その含有量の範囲は、発明物3と一致し、その理由は、発明物3について説明したものと同一である。
鉛、ビスマスおよびケイ素を含まず切削性に優れた黄銅合金(以下、発明物11と略称する)は、前記黄銅合金の全重量の60−65wt%の銅と、0.01−0.15wt%のアンチモンと、0.1−0.5wt%のマグネシウムと、前記黄銅合金の全重量の0.1−0.7wt%のアルミニウム、0.05−0.5wt%の錫、0.05−0.3wt%のリン、0.05−0.5wt%のマンガンおよび0.001−0.01wt%のホウ素から選択された1つ以上の元素と、残量の亜鉛および不可避な不純物を含み、前記不純物は、前記黄銅合金の全重量の0.25wt%以下のニッケルおよび/または0.15wt%以下のクロムおよび/または0.25wt%以下の鉄を含む。
発明物11は、発明物10の基礎の上に、いくつかの不可避な不純物、すなわち、機械的不純物であるニッケルおよび/またはクロムおよび/または鉄を含む。
本発明は、発明物3における一態様を例として、以下のようなステップを含む黄銅合金の製造方法をさらに提供する。
1.銅とマンガンを提供し、温度を1000−1050℃に上昇させ、前記銅と前記マンガンによって銅マンガン合金溶液を形成する、
2.前記銅マンガン合金溶液の温度を950−1000℃に下降させる、
3.ガラス造滓剤で前記銅マンガン合金溶液の表面を覆う、
4.亜鉛を前記銅マンガン合金溶液に添加して銅マンガン亜鉛溶液を形成する、
5.前記銅マンガン亜鉛溶液に対して除滓を行い、アンチモン、アルミニウム、錫、マグネシウムを黄銅合金材料の溶液に添加して金属溶液を形成する、
6.前記金属溶液の温度を1000−1050℃に上昇させ、ホウ素銅合金、リン銅合金を添加して鉛、ビスマスおよびケイ素を含まない黄銅合金溶液を形成する、
7.前記黄銅合金溶液を出湯させて鋳造して前記黄銅合金材料を形成する。
好ましくは、前記製造方法において、銅マンガン合金の提供を銅とマンガンの元素の提供ソースとする。
好ましくは、前記製造方法において、使用される溶解炉は、高周波溶解炉であり、また、前記高周波溶解炉内に黒鉛坩堝を炉ライニングとする。
高周波溶解炉は、溶解速度が速く、温度上昇が早く、清潔で汚染がなく、また、溶解過程中で自己攪拌することができる(つまり、磁力線の影響を受ける)などの特性を備える。
本発明において記述した鉛、ビスマスおよびケイ素を含まない黄銅合金は、様々な異なる物質を一定の割合で添加した後、高周波溶解炉を通じて制作されており、既知の含鉛黄銅に相当する機械加工性能と、優れた引張強度、伸び率、脱亜鉛防止性とを備え、かつ鉛を含まないものである。既知の含鉛黄銅の代わりになる合金材料として、例えば、蛇口やトイレ・浴室用品の予備部品などの製品の製造に使用されるのに適している。
発明物3における一態様の製造方法のフローチャートである。
本発明の技術態様をより明確に説明するために、以下に実施例を通じて本発明の技術を説明する。
本発明の範囲は、上記の典型的な実施例に限定されない。(当業者および本公開内容を知る技術者が連想することができる)ここで説明する本発明の特徴の変更や追加修正、およびここで説明する本発明の原理の他の応用は、本発明の範囲に含まれるとみなされるべきである。
本発明の数値の説明における「以上」と「以下」は、いずれも数値自身を含むものとする。
本明細書で言う脱亜鉛腐食防止性能テストは、鋳造状態の形式でAS−2345−2006標準に基づいて行われたものであって、1000C.Cの脱イオン水に12.8gの塩化銅を加入して測定物をその中に24時間放置して脱亜鉛深さを測定する。◎は、脱亜鉛深さが100μmよりも小さいことを表し、○は、脱亜鉛深さが100μmと200μmの間にあることを表し、×は、脱亜鉛深さが200μmよりも大きいことを表す。
本明細書で言う切削性能テストは、鋳造状態の形式で同じカッターを採用して同じ切削速度と同じ供給量で行われており、切削速度は、25m/min(メートル/分)であり、供給量は、0.2mm/r(ミリメートル/毎ブレード数)であり、切削深さは、0.5mmであり、テストバーの直径は、20mmであり、C36000合金材料を基準として切削抵抗を測定することにより、相対切削率を求める。
相対切削率=C36000合金材料の切削抵抗/試料の切削抵抗。
◎は、相対切削率が85%よりも大きいことを表し、○は、相対切削率が70%よりも大きいことを表す。
本明細書で言う引張強度と伸び率のテストでは、いずれも鋳造状態の形式で室温で引張試験を行う。伸び率、すなわち、試料の引張破断後の標点距離の部分の総変形ΔLと元標点距離の長さLの比率のパーセントは、δ=ΔL/L×100%である。対比試料は、同じ状態かつ同じ規格の含鉛黄銅、すなわち、C36000合金である。
C36000合金材料の実測成分の配分率は、次のとおりであり、単位は、重量パーセント(wt%)である。
Figure 0006057109
図1は、発明物3における一態様の製造方法のフローチャートであり、以下のようなステップを含む。
ステップS100:銅とマンガンを提供する。このステップにおいて、銅マンガン合金の提供を当該銅とマンガンの元素の提供ソースとすることができる。
ステップS102:銅マンガン母合金に対して加熱を行い、温度を1000−1050℃の間に上昇させ、銅マンガン母合金によって銅マンガン合金溶液を形成する。このステップにおいて、当該銅マンガン合金を高周波溶解炉に入れ、溶解炉内で溶解させて温度上昇を行うことができ、温度を1000−1050℃の間に上昇させ、さらに1100℃に達することができ、そのプロセスは、5−10分間持続されて、銅マンガン合金を銅マンガン合金溶液になるように溶解させる。上述した動作は、温度が高すぎることにより銅マンガンが溶解された液体が大量の外部気体を吸収して成形された合金材料に亀裂作用が発生してしまったことを回避することができる。
ステップS104:銅マンガン合金溶液の温度を950−1000℃の間に下降させる。このステップにおいて、溶解炉内の温度が1000−1050℃の間に上昇して5−10分間持続するとき、高周波溶解炉の電源をオフにして溶解炉内の温度を950−1000℃に下降させるとともに、当該銅マンガン合金溶液を溶融状態に維持する。
ステップS106:ガラス造滓剤で銅マンガン合金溶液の表面を覆う。このステップにおいて、ガラス造滓剤で950−1000℃の銅マンガン合金溶液の表面を覆うことにより、液体と空気の接触を効果的に遮断するとともに、次のステップで添加する亜鉛に950−1000℃の間で高温溶解に起因する沸騰揮発が発生することを防止することができる。
ステップS108:亜鉛を銅マンガン合金溶液に添加して銅マンガン亜鉛溶液を形成する。このステップにおいて、亜鉛を溶解炉内に添加して銅マンガン合金溶液に沈め、亜鉛を銅マンガン合金溶液内で十分に溶解させ、銅マンガン亜鉛溶液を形成する。
ステップS110:銅マンガン亜鉛溶液に対して除滓を行う。このステップにおいて、まず銅マンガン亜鉛溶液を高周波誘導の作用により攪拌混合した後、造滓剤を掬い上げる。そして、除滓剤を使用して除滓動作を行う。
ステップS112:アンチモン、アルミニウム、錫、マグネシウムを銅マンガン亜鉛溶液に添加して金属溶液を形成する。このステップにおいて、銅アンチモン母合金、銅アルミニウム母合金、銅錫母合金、銅マグネシウム母合金を銅マンガン亜鉛溶液に添加することができる。
ステップS114:金属溶液の温度を1000−1050℃の間に昇温させ、銅ホウ素合金とリン銅合金を添加して鉛、ビスマスおよびケイ素を含まない黄銅合金の溶液を形成する。
ステップS116:黄銅合金溶液を出湯させて鋳造して黄銅合金を形成する。このステップにおいて、当該黄銅合金溶液を均一に攪拌した後、出湯温度を1000−1050℃の間に制御し、最後当該黄銅合金溶液を出湯させて鋳造することにより、鉛、ビスマスおよびケイ素を含有せず、加工性能が良好で、脱亜鉛防止性能及び機械性能の両方の優れた黄銅合金を形成する。
実施例1.
表1−1は、上記の工程に従って得られた5つの異なるグループの発明物1を示すものであり、番号は、それぞれ1001−1005であり、各グループの単位は、重量パーセント(wt%)である。
Figure 0006057109
前記グループの合金について、鋳造状態の形式で室温で切削性能、脱亜鉛腐食防止性能、引張強度及び伸び率のテストを実施しており、対比試料は、同じ状態かつ同じ規格の含鉛黄銅、すなわち、C36000合金である。
引張強度、伸び率、切削性能および脱亜鉛腐食防止性能の実験の結果は、以下の通りである。
Figure 0006057109
実施例2.
表2−1は、上記の工程に従って得られた5つの異なるグループの発明物2を示すものであり、番号は、それぞれ2001−2005であり、各グループの単位は、重量パーセント(wt%)である。
Figure 0006057109
前記グループの合金について、鋳造状態の形式で室温で切削性能、脱亜鉛腐食防止性能、引張強度及び伸び率のテストを実施しており、対比試料は、同じ状態かつ同じ規格の含鉛黄銅、すなわち、C36000合金である。
引張強度、伸び率、切削性能および脱亜鉛腐食防止性能の実験の結果は、以下の通りである。
Figure 0006057109
実施例3.
表3−1は、上記の工程に従って得られた8つの異なるグループの発明物3を示すものであり、番号は、それぞれ3001−3008であり、各グループの単位は、重量パーセント(wt%)である。
Figure 0006057109
前記グループの合金について、鋳造状態の形式で室温で切削性能、脱亜鉛腐食防止性能、引張強度及び伸び率のテストを実施しており、対比試料は、同じ状態かつ同じ規格の含鉛黄銅、すなわち、C36000合金である。
引張強度、伸び率、切削性能および脱亜鉛腐食防止性能の実験の結果は、以下の通りである。
Figure 0006057109
実施例4.
表4−1は、上記の工程に従って得られた8つの異なるグループの発明物4を示すものであり、番号は、それぞれ4001−4008であり、各グループの単位は、重量パーセント(wt%)である。
Figure 0006057109
前記グループの合金について、鋳造状態の形式で室温で切削性能、脱亜鉛腐食防止性能、引張強度及び伸び率のテストを実施しており、対比試料は、同じ状態かつ同じ規格の含鉛黄銅、すなわち、C36000合金である。
引張強度、伸び率、切削性能および脱亜鉛腐食防止性能の実験の結果は、以下の通りである。
Figure 0006057109
実施例5.
表5−1は、上記の工程に従って得られた8つの異なるグループの発明物5を示すものであり、番号は、それぞれ5001−5008であり、各グループの単位は、重量パーセント(wt%)である。
Figure 0006057109
前記グループの合金について、鋳造状態の形式で室温で切削性能、脱亜鉛腐食防止性能、引張強度及び伸び率のテストを実施しており、対比試料は、同じ状態かつ同じ規格の含鉛黄銅、すなわち、C36000合金である。
引張強度、伸び率、切削性能および脱亜鉛腐食防止性能の実験の結果は、以下の通りである。
Figure 0006057109
実施例6.
表6−1は、上記の工程に従って得られた8つの異なるグループの発明物6を示すものであり、番号は、それぞれ6001−6008であり、各グループの単位は、重量パーセント(wt%)である。
Figure 0006057109
前記グループの合金について、鋳造状態の形式で室温で切削性能、脱亜鉛腐食防止性能、引張強度及び伸び率のテストを実施しており、対比試料は、同じ状態かつ同じ規格の含鉛黄銅、すなわち、C36000合金である。
引張強度、伸び率、切削性能および脱亜鉛腐食防止性能の実験の結果は、以下の通りである。
Figure 0006057109
実施例7.
表7−1は、上記の工程に従って得られた8つの異なるグループの発明物7を示すものであり、番号は、それぞれ7001−7008であり、各グループの単位は、重量パーセント(wt%)である。
Figure 0006057109
前記グループの合金について、鋳造状態の形式で室温で切削性能、脱亜鉛腐食防止性能、引張強度及び伸び率のテストを実施しており、対比試料は、同じ状態かつ同じ規格の含鉛黄銅、すなわち、C36000合金である。
引張強度、伸び率、切削性能および脱亜鉛腐食防止性能の実験の結果は、以下の通りである。
Figure 0006057109
実施例8.
表8−1は、上記の工程に従って得られた8つの異なるグループの発明物8を示すものであり、番号は、それぞれ8001−8008であり、各グループの単位は、重量パーセント(wt%)である。
Figure 0006057109
前記グループの合金について、鋳造状態の形式で室温で切削性能、脱亜鉛腐食防止性能、引張強度及び伸び率のテストを実施しており、対比試料は、同じ状態かつ同じ規格の含鉛黄銅、すなわち、C36000合金である。
引張強度、伸び率、切削性能および脱亜鉛腐食防止性能の実験の結果は、以下の通りである。
Figure 0006057109
実施例9.
表9−1は、上記の工程に従って得られた8つの異なるグループの発明物9を示すものであり、番号は、それぞれ9001−9008であり、各グループの単位は、重量パーセント(wt%)である。
Figure 0006057109
前記グループの合金について、鋳造状態の形式で室温で切削性能、脱亜鉛腐食防止性能、引張強度及び伸び率のテストを実施しており、対比試料は、同じ状態かつ同じ規格の含鉛黄銅、すなわち、C36000合金である。
引張強度、伸び率、切削性能および脱亜鉛腐食防止性能の実験の結果は、以下の通りである。
Figure 0006057109
実施例10.
表10−1は、上記の工程に従って得られた8つの異なるグループの発明物10を示すものであり、番号は、それぞれ10001−10008であり、各グループの単位は、重量パーセント(wt%)である。
Figure 0006057109
前記グループの合金について、鋳造状態の形式で室温で切削性能、脱亜鉛腐食防止性能、引張強度及び伸び率のテストを実施しており、対比試料は、同じ状態かつ同じ規格の含鉛黄銅、すなわち、C36000合金である。
引張強度、伸び率、切削性能および脱亜鉛腐食防止性能の実験の結果は、以下の通りである。
Figure 0006057109
実施例11.
表11−1は、上記の工程に従って得られた8つの異なるグループの発明物11を示すものであり、番号は、それぞれ11001−11008であり、各グループの単位は、重量パーセント(wt%)である。
Figure 0006057109
前記グループの合金について、鋳造状態の形式で室温で切削性能、脱亜鉛腐食防止性能、引張強度及び伸び率のテストを実施しており、対比試料は、同じ状態かつ同じ規格の含鉛黄銅、すなわち、C36000合金である。
引張強度、伸び率、切削性能および脱亜鉛腐食防止性能の実験の結果は、以下の通りである。
Figure 0006057109
上述した内容から分かるように、ビスマスとケイ素を含まない低鉛黄銅合金は、様々な異なる物質を一定の割合で添加した後、高周波溶解炉を通じて制作されており、既知の含鉛黄銅に相当する機械加工性能と、優れた引張強度、伸び率、脱亜鉛防止性とを備え、切削が容易で、かつ鉛を含まないものである。既知の含鉛黄銅の代わりになる合金材料としては、例えば、蛇口やトイレ・浴室用品の予備部品などの製品の製造に使用されるのに適している。
本発明は、実施形態によって上述したように開示されたが、当該実施形態に限定されるものではない。本発明が属する技術の当業者なら、本発明の技術思想を離脱しない範囲で、多様な変更、及び修正が可能であることが分かる。従って、本発明の技術的範囲は、特許請求範囲により決めなければならない。

Claims (9)

  1. 鉛、ビスマスおよびケイ素を含まず切削性に優れた黄銅合金であって、
    前記黄銅合金の全重量の60−65wt%の銅と、0.01−0.15wt%のアンチモンと、0.1−0.5wt%のマグネシウムと、残量の亜鉛及び不可避な不純物からなることを特徴とする鉛、ビスマスおよびケイ素を含まず切削性に優れた黄銅合金。
  2. 前記黄銅合金の全重量の0.05−0.3wt%のリンおよび/または0.05−0.5wt%のマンガンをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の鉛、ビスマスおよびケイ素を含まず切削性に優れた黄銅合金。
  3. 前記黄銅合金の全重量の0.05−0.5wt%のマンガン、0.1−0.7wt%のアルミニウム、0.05−0.5wt%の錫、0.05−0.3wt%のリンおよび/または0.001−0.01wt%のホウ素をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の鉛、ビスマスおよびケイ素を含まず切削性に優れた黄銅合金。
  4. 前記マンガン、アルミニウム、錫、リンおよび/またはホウ素の総含有量は、前記黄銅合金の全重量の2wt%を超えないことを特徴とする請求項3に記載の鉛、ビスマスおよびケイ素を含まず切削性に優れた黄銅合金。
  5. 前記マンガン、アルミニウム、錫、リンおよび/またはホウ素の総含有量は、前記黄銅合金の全重量の0.2wt%より小さくないことを特徴とする請求項4に記載の鉛、ビスマスおよびケイ素を含まず切削性に優れた黄銅合金。
  6. 前記黄銅合金の全重量の0.25wt%以下のニッケルおよび/または0.15wt%以下のクロムおよび/または0.25wt%以下の鉄を含むことを特徴とする請求項3に記載の鉛、ビスマスおよびケイ素を含まず切削性に優れた黄銅合金。
  7. 鉛、ビスマスおよびケイ素を含まず切削性に優れた黄銅合金であって、
    前記黄銅合金の全重量の60−65wt%の銅と、0.05−0.5wt%の錫と、0.05−0.5wt%のマンガンと、前記黄銅合金の全重量の0.1−0.7wt%のアルミニウムまたは0.05−0.3wt%のリンから選択されたつ以上の元素と、残量の亜鉛及び不可避な不純物からなることを特徴とする鉛、ビスマスおよびケイ素を含まず切削性に優れた黄銅合金。
  8. 前記黄銅合金の全重量の0.01−0.15wt%のアンチモン、0.1−0.5wt%のマグネシウムおよび/または0.001−0.01wt%のホウ素をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の鉛、ビスマスおよびケイ素を含まず切削性に優れた黄銅合金。
  9. 前記黄銅合金の全重量の0.25wt%以下のニッケルおよび/または0.15wt%以下のクロムおよび/または0.25wt%以下の鉄を含むことを特徴とする請求項8に記載の鉛、ビスマスおよびケイ素を含まず切削性に優れた黄銅合金。
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