JP6056153B2 - 磁気シールド、プログラムおよび選定方法 - Google Patents
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Description
外部環境磁場をキャンセルする磁気シールドの技術として、特許文献1には、外側の層に最も透磁率の高い磁気遮蔽材を用い、内側の層に向かって段階的に透磁率が低くなるように構成された多層構造の磁気シールドルームが記載されている。また、特許文献2には、パッシブ方式とアクティブ方式の磁気シールドを併用させる磁気シールド装置が記載されている。また、特許文献3には、外側の高導電材料層と内側の磁性材料層とが対をなして形成されている磁気シールド装置が記載されている。
図1は、本発明の第1実施形態に係る磁気シールド9の概要を示す図である。磁気シールド9の各構成の配置などを説明するため、磁気シールド9が配置される空間をxyz右手系座標空間として表す。ここで座標記号のうち、内側が白い円の中に交差する2本の線分を描いた記号は、紙面手前側から奥側に向かう矢印を表している。空間においてx成分が増加する方向を+x方向といい、x成分が減少する方向を−x方向という。同様に、y、z成分についても、+y方向、−y方向、+z方向、−z方向を定義する。図2は、磁気シールド9を+y方向に見たときの図である。
μ:磁性体材料の透磁率[H/m]、μ0:真空透磁率=4π×10-7[H/m]、μr=μ/μ0:磁性体材料の比透磁率、μr1:内層2の比透磁率、μr2:外層1の比透磁率、t1:内層2の磁性体材料厚み[m]、t2:外層1の磁性体材料厚み[m]、Do1:内層2の外直径[m]、Do2:外層1の外直径[m]、Di1:内層2の内直径[m]、Di2:外層1の内直径[m]、L:磁気シールド9の長さ[m]、ST1:径方向・無限長・内層2単体のシールドファクター、ST2:径方向・無限長・外層1単体のシールドファクター、STop:径方向・有限長・内層2単体のシールドファクター、STD:径方向・無限長・磁気シールド9のシールドファクター、STeff:径方向・有限長・開口・磁気シールド9の実行シールドファクター。
H0=45[μT]/(4π×10-7)≒35.8[A/m]
すなわち、磁気シールド9を東京に設置する場合、強さが35.8[A/m]の磁場が外層1に入力される。環境磁場の強さH0[A/m]は、例えば、図2に示す領域R0の磁場の強さである。
本発明の第1実施形態における第1の実施例である実施例1−1を説明する。
ここでは、以下の条件下にシミュレーションを行って、磁場の強さH1[A/m]を求める。
材料αを使った外層1のμr=μrα(H0)=22182
Case1において内層2に材料αを使った場合のμr=μrα(H1)=107430
Case2において内層2に材料βを使った場合のμr=μrβ(H1)=187007
内層2の内直径[m]:Di1=0.2
外層1の内直径[m]:Di2=0.3
内層2の磁性体材料厚み[m]:t1:=0.001
外層1の磁性体材料厚み[m]:t2=0.001
環境磁場[μT]:B0=10
磁気シールド9の長さ[m]:L=0.8
H1=2.3[μT]/(4π×10-7)≒1.83[A/m]
すなわち、東京に設置される磁気シールド9であって、外層1が材料αで構成されている場合に、外層1による磁場減衰により環境磁場は領域R1では1.83[A/m]まで低下する。そのため、内層2には外層1で減衰された磁場レベル1.83[A/m]が入力される事となる。
本発明の第1実施形態における第2の実施例である実施例1−2を説明する。
ここでは、以下の条件下にシミュレーションを行って、磁場の強さH1[A/m]を求める。なお、シミュレーションは実施例1−1と同様、有限要素法に基づくアルゴリズムを用いて行ったが、実施例1−2における空間の離散化に関する条件は、上述した実施例1−1とは異なるものを用いた。
材料αを使った外層1のμr=μrα(H0)=22182
内層2の内直径[m]:Di1=0.2
外層1の内直径[m]:Di2=0.3
内層2の磁性体材料厚み[m]:t1:=0.000278
外層1の磁性体材料厚み[m]:t2=0.000278
環境磁場[μT]:B0=45
磁気シールド9の長さ[m]:L=0.8
H1=2.3[μT]/(4π×10-7)≒1.83[A/m]
すなわち、東京に設置される磁気シールド9であって、外層1が材料αで構成されている場合に、外層1による磁場減衰により環境磁場は領域R1では1.83[A/m]まで低下する。そのため、内層2には外層1で減衰された磁場レベル1.83[A/m]が入力される事となる。
Case1aにおいてμr=μrα(H1)=107430
Case2aにおいてμr=μrβ(H1)=187007
つまり材料βの比透磁率μrβ(H1)の方が、材料αの比透磁率μrα(H1)よりも高いことがわかる。そこで、内層2の材料として材料βが選定される。
制御部31は、特定部311、第1選定部312、推算部313、および第2選定部314としてそれぞれ機能する。以下、これら制御部31の各構成による動作を説明する。
以上のようにプログラムに従って選定装置3の制御部31を稼働させることにより、磁気シールド9の外層1と内層2とのそれぞれを構成する各材料が選定される。
第1実施形態において磁気シールド9は、外層1と内層2とを備える2層構造であったが、磁気シールドが備える層は2つに限られず3層以上であってもよい。図9は、本発明の第2実施形態に係る磁気シールド9aを+y方向に見たときの図である。
また、図9に示すように領域R1は、外層1aと中間層2aとの間の領域のうち、中間層2aの隣の領域である。そして、領域R2は、外層1aと内層4との間の領域のうち、内層4の隣の領域である。この領域R2は、中間層2aと内層4との間の領域のうち、内層4の隣の領域、とも言えることは言うまでもない。
なお、上述した第1実施形態において内層2の材料は、外層1と内層2との間において観測される磁場の強さに対する比透磁率が、その磁場の強さに対する外層1の材料の比透磁率に比べて高いものが選定される。そして、第1実施形態における磁気シールド9は2層構造である。すなわち、磁気シールド9において、外層1と内層2との間に他の層が介在していない。したがって、「外層1と内層2との間」とは「外層1と内層2との間の領域のうち、内層2の隣の領域」のことである。
本発明の第2実施形態における実施例である実施例2を説明する。
実施例2では、Case3,4,5,6を考える。Case3とは、外層1a、中間層2a、内層4の全てに材料αを用いた場合である。Case4とは、外層1aに材料α、中間層2aに材料β、内層4に材料αを用いた場合である。Case5とは、外層1aに材料α、中間層2aに材料β、内層4に材料βを用いた場合である。Case6とは、外層1aに材料α、中間層2aに材料β、内層4に材料γを用いた場合である。そして、Case3〜6のそれぞれについて、以下の条件下にシミュレーションを行って、図9に示す領域R1の磁場の強さH1[A/m]を求める。
内層4の内直径[m]:Di4=0.1
中間層2aの内直径[m]:Di1=0.2
外層1aの内直径[m]:Di2=0.3
内層4の磁性体材料厚み[m]:t4:=0.000278
中間層2aの磁性体材料厚み[m]:t1:=0.0278
外層1aの磁性体材料厚み[m]:t2=0.000278
環境磁場[μT]:B0=45
磁気シールド9aの長さ[m]:L=0.8
Case3における中間層2a(材料α)のμr=μrα(H1)=107430
Case4における中間層2a(材料β)のμr=μrβ(H1)=187007
Case5における中間層2a(材料β)のμr=μrβ(H1)=187007
Case6における中間層2a(材料β)のμr=μrβ(H1)=187007
材料αの比透磁率μrα(H2)=796
材料βの比透磁率μrβ(H2)=80
材料γの比透磁率μrγ(H2)=7958
これらを比較すると、材料γの比透磁率μrγ(H2)の方が、材料αの比透磁率μrα(H2)や材料βの比透磁率μrβ(H2)よりも高いことがわかる。そこで、内層4の材料として材料γが選定される。
図11,13に示すCase3は、外層1a、中間層2aおよび内層4を同じ材料αで製造した3層のシールドである。Case4は、外層1aを材料αで、中間層2aを材料βで、内層4を材料αで製造した3層のシールドである。Case5は、外層1aを材料αで、中間層2aを材料βで、内層4を材料βで製造した3層のシールドである。Case6は、外層1aを材料αで、中間層2aを材料βで、内層4を材料γでそれぞれ製造した磁気シールド9aである。その結果、Case3における中心部の磁束密度は−1.20×10-8[T]であり、Case4における中心部の磁束密度は−7.17×10-9[T]であり、Case5における中心部の磁束密度は−1.51×10-8[T]であるのに対し、Case6における中心部の磁束密度は、−1.26×10-9[T]である。これはCase3、Case4、Case5の3層シールドによる磁場の遮蔽の倍率がそれぞれ3752倍、6293倍、2995倍であるのに対し、Case6の磁気シールド9aによる磁場の遮蔽の倍率が35731倍と上昇していることを意味している。
第1実施形態および第2実施形態において磁気シールド9,9aを構成する各層は、円筒状の部材であったが、これらは、円筒状の部材に限られず、断面が多角形(三角形、四角形、五角形…など)の角筒状であってもよいし、断面が楕円形の筒状であってもよい。また、磁気シールドの形状は筒状に限定されるものではなく、上述した中空部を有していれば、四角柱などの多角柱状の箱体や、筒における2つの開口部のうち一方のみを壁で閉鎖した、いわゆる『有底筒状』であってもよい。また、磁気シールドは、内側の空間に通じる開口部を有する形状の筒状の部材と、その開口部を覆う大きさの蓋状の部材とを有していてもよい。この場合、磁気シールドは、筒状の部材の開口部を蓋状の部材で閉鎖する構成であってもよい。
図14に示すように矢視XIII−XIIIは、軸Oを通る。磁気シールド9bの外層1bの材料は、図14に示す領域R0bにおける磁場の強さH0[A/m]に基づいて決められる。磁気シールド9bの内層2bの材料は、図14に示す領域R1bにおける磁場の強さH1[A/m]に基づいて決められる。
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
(1)上述した実施形態において、層の材料は、その層の外側においてその層の隣の領域の磁場の強さを特定し、その磁場の強さのときに最も比透磁率が高くなるものが選ばれていたが、層の隣の領域について、その層の軸方向について特に限定しなかった。しかし、この領域を、さらに軸方向の位置で限定してもよい。例えば、層の材料は、その層の外側においてその層の隣の領域のうち、その層の軸方向における中央部の領域の磁場の強さに基づいて決められてもよい。この中央部とは、軸の中点を通り、軸に垂直な平面を含む領域であって、層全体の軸方向の範囲のうち、予め決められた割合(例えば20%)の範囲にわたる領域である。
Claims (4)
- 第1材料で構成された第1の筒型構造体と、
前記第1材料と異なる第2材料で構成された第2の筒型構造体と、
更に、第3材料で構成された第3の筒型構造体と、
を備え、
前記第2の筒型構造体は前記第1の筒型構造体の内部に配置され、
第1の磁場での前記第1材料の比透磁率は、前記第1の磁場での前記第2材料の比透磁率よりも高く、
前記第1の磁場よりも弱い第2の磁場での前記第1材料の比透磁率は、前記第2の磁場での前記第2材料の比透磁率よりも低く、
前記第3の筒型構造体は前記第2の筒型構造体の内部に配置され、
前記第2の磁場よりも弱い第3の磁場での前記第2材料の比透磁率は、前記第3の磁場での前記第3材料の比透磁率よりも低く、
前記第2の磁場は、前記第1の筒型構造体と前記第2の筒型構造体との間の磁場であって、該第2の筒型構造体を配置する前の磁場である
ことを特徴とする磁気シールド。 - 前記第3の磁場は、前記第2の筒型構造体と前記第3の筒型構造体との間の磁場であって、該第3の筒型構造体を配置する前の磁場であることを特徴とする請求項1に記載の磁気シールド。
- 材料ごとに磁場の強さに対する比透磁率を記憶した記憶手段を備えたコンピューターに、
磁気シールドが設置される環境の磁場の強さを特定する特定手段と、
前記記憶手段の記憶内容を参照して、前記特定手段によって特定された磁場の強さに対して最も高い比透磁率を示す材料を、磁気シールドの第1の筒型構造体の材料である第1材料として選定する第1選定手段と、
前記第1選定手段によって選定された前記第1材料を用いて前記第1の筒型構造体を製造した場合において、当該第1の筒型構造体と、当該第1の筒型構造体の内部に配置される第2の筒型構造体と、の間の領域であって、該第2の筒型構造体を配置する前の領域における磁場の強さを推算する推算手段と、
前記記憶手段の記憶内容を参照して、前記推算手段によって推算された磁場の強さに対して最も高い比透磁率を示す材料を、前記第2の筒型構造体の材料である第2材料として選定する第2選定手段、
として機能させるためのプログラム。 - 特定手段が、磁気シールドの設置される環境の磁場の強さを特定し、
第1選定手段が、材料ごとに磁場の強さに対する比透磁率を記憶した記憶手段の記憶内容を参照して、前記特定手段によって特定された磁場の強さに対して最も高い比透磁率を示す材料を、磁気シールドの第1の筒型構造体の材料である第1材料として選定し、
推算手段が、前記第1選定手段によって選定された前記第1材料を用いて前記第1の筒型構造体を製造した場合において、当該第1の筒型構造体と、当該第1の筒型構造体の内部に配置される第2の筒型構造体と、の間の領域であって、該第2の筒型構造体を配置する前の領域における磁場の強さを推算し、
第2選定手段が、前記記憶手段の記憶内容を参照して、前記推算手段によって推算された磁場の強さに対して最も高い比透磁率を示す材料を、前記第2の筒型構造体の材料である第2材料として選定する
ことを特徴とする前記磁気シールドの材料の選定方法。
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