JP6055700B2 - 光偏向モジュール - Google Patents

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本発明は、光偏向器と該光偏向器を制御する制御装置とを含む光偏向モジュールに関する。
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスとしての光偏向器及びその制御装置を含む光偏向モジュールが知られている(例:特許文献1)。
特許文献1の光偏向モジュールでは、光偏向器は、ミラー部と、制御装置からの駆動電圧を圧電変形部の圧電素子層に印加され該圧電変形部を該駆動電圧の大きさに応じて湾曲変形することによりミラー部を所定の軸線の周りに揺動させる圧電アクチュエータとを備えている。また、制御装置は、一定周期の繰返し信号を光偏向器に供給し、該繰返し信号の各周期は、周期の1/2〜3/4期間の駆動電圧印加期間と残りの1/4〜1/2期間の電圧無印加期間とから成る。
特許文献1の光偏向モジュールは、繰返し信号の各周期に1/4〜1/2期間の電圧無印加期間を含ませることにより、該電圧無印加期間では、圧電アクチュエータを慣性力で動作させて、圧電素子層の消費電力を低減するとともに、圧電素子層の寿命増大を図っている。
特開2012−154989号公報
MEMSデバイスの光偏向器は、外力による影響を避けるために、ミラー部及び圧電アクチュエータを含む可動部の剛性を高くして、固有振動周波数を高めることが有利である。その際、光偏向器の圧電アクチュエータとして、ユニポーラ型が採用される場合、該圧電アクチュエータの圧電素子層の印加電圧は、剛性の増大に合わせて、増大する必要がある。想定される印加電圧は、例えば、50Vp-p(p-pは「ピーク・ツー・ピーク」を意味する。)以上となる。
図13は、光偏向器の圧電アクチュエータの圧電素子層に印加するユニポーラ型駆動電圧の一例を示している。図13のユニポーラ型駆動電圧は、50Vp-p、25Voffset及び60Hzの正弦波となっており、0V〜50Vの範囲で増減する。図13において、t1はユニポーラ型駆動電圧が最大値になる時刻であり、t2はユニポーラ型駆動電圧が最小値になる時刻であり、t3は、時刻t1の次に、ユニポーラ型駆動電圧が最大値になる時刻である。t1−t3の時間がユニポーラ型駆動電圧の1周期となる。
光偏向器の圧電アクチュエータの圧電素子層に図13のユニポーラ型駆動電圧を印加すると、圧電素子の飽和という問題が起きる。すなわち、後述の図11の実験グラフに「未対策品」の特性として示しているように、圧電素子層に印加するユニポーラ型駆動電圧のp-p電圧を0から徐々に上げて行き、ユニポーラ型駆動電圧が50Vp-p近くまで来ると、ミラー部の1/2振れ角(2分の1振れ角=回転軸線の周りのミラー部の振れ角について真正面に対する各片側範囲における最大振れ時の振れ角の絶対値)は、ユニポーラ型駆動電圧のさらなる増大にもかかわらず、7.4°近辺で一定になり、それ以上増大しないことが知見された。
また、光偏向器の圧電アクチュエータの圧電素子層に図13のユニポーラ型駆動電圧を連続印加すると、連続印加時間の増大に伴い、1/2振れ角が徐々に低下する問題が起きる。すなわち、後述の図12の実験グラフに「未対策品」の特性として示しているように、連続印加時間を増大していくと、連続印加時間が100時間になる辺りから1/2振れ角が徐々に低下し、連続印加時間が1万時間に達する頃には、1/2振れ角が当初の7.8°から3.2°に低下することが知見された。
このような振れ角の飽和や連続印加に伴う振れ角の低下という問題の原因として考えられることは、圧電アクチュエータの圧電素子層をユニポーラ型駆動電圧により駆動すると、圧電素子層内において+側及び−側の電圧印加面の近傍にそれぞれ+及び−の電荷(陽イオン及び陰イオン)が滞留し、この滞留電荷が、圧電素子層内に逆電界を生成して、実効電界を弱めてしまうということである。したがって、圧電素子層に逆極性の電圧を印加して、圧電素子層内の滞留電荷を除去すれば、このような問題は解消すると予想される。
そこで、発明者は、光偏向器の圧電アクチュエータの圧電素子層に印加する駆動電圧を図13のものから図14のものに変更して、問題の解消を試みた。図14の駆動電圧は、図13の駆動電圧の25Voffsetを24Voffsetに変更しているだけである。図14の駆動電圧は、−1V〜49Vの範囲で振れるので、すなわち負の範囲が含まれるので、厳密にはユニポーラ型駆動電圧ではなくなる。
図14の駆動電圧による圧電素子層の駆動を試みたにもかかわらず、実験結果として、振れ角の飽和や連続印加に伴う振れ角の低下という問題は解消されないことが判明した。理由としては、図14の駆動電圧では、圧電素子層の駆動電圧が−1V〜0Vの範囲にある期間が、1周期の17%であり、60サイクルで時間換算すると、1周期における逆極性電圧印加時間が2.83msecであり、1回の逆極性電圧印加時間が短か過ぎるからであると考えられる。一般に、圧電素子層内に滞留した電荷を圧電素子層から自然放電で抜くためには、少なくとも1秒以上かかる。また、光偏向器の作動期間に、圧電アクチュエータの作動を1秒以上停止することは困難である。
本発明の目的は、光偏向器の圧電アクチュエータの圧電素子層をユニポーラ型駆動電圧で駆動する場合に、光偏向器の作動を停止することなく、圧電素子層内の滞留電荷を除去することで振れ角の低下を防止する光偏向モジュールを提供することである。
本発明の光偏向モジュールは、偏向器と該光偏向器を制御する制御装置とを含む。前記光偏向器は、ミラー部と、圧電素子層への印加電圧の大きさに応じて湾曲変形する圧電変形部を有し、前記ミラー部を含む可動部が所定の軸線の周りに固有振動する時の固有振動周波数に等しい周波数のユニポーラ型駆動電圧が、前記圧電素子層への印加電圧として前記制御装置から供給されて、前記圧電変形部の湾曲変形により前記ミラー部を前記所定の軸線の周りに揺動させる圧電アクチュエータとを備える。前記制御装置は、前記ユニポーラ型駆動電圧の各周期において前記圧電変形部の湾曲変形が減少する減少側半周期内の所定時間範囲では、前記ユニポーラ型駆動電圧に代えて、周波数が10kHz以上で振幅が前記圧電素子層の分極方向を反転させない範囲となっている交流電圧を前記圧電変形部の前記圧電素子層の印加電圧として前記光偏向器に供給する。
本発明によれば、ユニポーラ型駆動電圧の各周期において圧電変形部の湾曲変形が減少する減少側半周期内の所定時間範囲では、圧電素子層へのユニポーラ型駆動電圧の印加が中止されるが、減少側半周期では、圧電変形部は、ユニポーラ型駆動電圧により駆動されなくても、自らの復元力により固有振動を継続する。そして、該減少側半周期の所定時間範囲において、周波数が10kHz以上で振幅が前記圧電素子層の分極を反転させない値となっている交流電圧が圧電素子層に印加されることにより、圧電素子層から滞留電荷を除去する。したがって、光偏向器の作動を停止することなく、振れ角の減少をすることができる。
好ましくは、前記所定時間範囲の長さは、前記固有振動周波数の周期の0.3〜0.45である。
この構成によれば、ユニポーラ型駆動電圧の供給中止に因るミラー部の振れ角の減少を十分に抑えることができる。
好ましくは、前記所定時間範囲の開始時刻は、前記減少側半周期の開始時刻より後であり、前記所定時間範囲の終了時刻は、前記減少側半周期の終了時刻より前である。
この構成によれば、圧電変形部の湾曲変形の増減の反転時刻としての減少側半周期の開始時刻及び終了時刻には、ユニポーラ型駆動電圧が圧電アクチュエータに印加して、圧電アクチュエータの湾曲変形の増減反転を誘導することになるので、圧電変形部は、変形のオーバシュートやアンダシュートを抑制されて、湾曲変形の増減反転を的確に行うことができる。
好ましくは、前記光偏向器は、前記ミラー部を前記所定の軸線とは別の軸線の周りに別の固有振動周波数で揺動させるバイポーラ型圧電アクチュエータを備え、前記交流電圧の周波数は、前記別の固有振動周波数の高調波の周波数から所定値以上ずれている周波数に選定されている。
この構成によれば、圧電素子層内からの滞留電荷除去のための圧電素子層への交流電圧の印加が、バイポーラ型圧電アクチュエータによる別の軸線の周りのミラー部の揺動に与える影響を抑制することができる。
光スキャナの構成図。 光偏向器の模式的な縦断面図 制御装置のブロック図。 制御装置の偏向制御部のブロック図。 ミアンダ型アクチュエータの圧電素子層についての印加電圧と変位量との関係のヒステリシス特性を示す図。 ミアンダ型アクチュエータの圧電素子層の印加電圧範囲を図5の線形範囲に限定したときの圧電素子層についての印加電圧と変位量との関係のヒステリシス特性を示す図。 制御装置が光偏向器に供給する垂直駆動電圧の波形図。 ミアンダ型アクチュエータへのユニポーラ型駆動電圧の供給を一時的に停止したときのミラー部の振れ角の変化を調べた実験の結果を示す図。 図8の実験結果に基づいてユニポーラ型駆動電圧の周期におけるユニポーラ型駆動電圧の占有率と振れ角との関係を示したグラフ。 光偏向器において双腕型アクチュエータの作動は停止しミアンダ型アクチュエータには滞留電荷除去用交流電圧のみを印加したときの滞留電荷除去用交流電圧の周波数と縦回転軸線の周りの光偏向器の揺動振幅との関係を調べた実験グラフ。 実施形態と未対策品とについてミアンダ型アクチュエータのカンチレバーの圧電素子層に印加する垂直駆動電圧とミラー部の1/2振れ角との関係を調べた実験結果のグラフ。 実施形態と未対策品とについて垂直駆動電圧を連続印加したときの連続印加時間とミラー部の1/2振れ角との関係を調べた実験結果のグラフ。 未対策品の光偏向器のミアンダ型アクチュエータの垂直駆動電圧を示す図。 図13の垂直駆動電圧のオフセット量を下へ1V変更した駆動電圧を示す図。
図1を参照して、光スキャナ1の全体構成について説明する。光スキャナ1は、主要構成要素として、制御装置2、光偏向器3、レーザ光源4及びビームスプリッタ5を備える。制御装置2及び光偏向器3は光偏向モジュール8を構成する。画像ソース器11及びスクリーン12は、光スキャナ1の構成要素とは別個に、光スキャナ1の外部に配備される。
レーザ光源4は直進光線Laを出射する。直進光線Laは、ビームスプリッタ5のハーフミラーを直進で通過し、光偏向器3のミラー部33の前面のミラー面に当たって、反射し、走査光線Lbとなる。走査光線Lbは、ビームスプリッタ5の方へ進行し、ビームスプリッタ5のハーフミラーにおいて直角に反射し、走査光線Lcとなる。走査光線Lcは、スクリーン12の方へ進み、スクリーン12を走査する。ビームスプリッタ5を直進光線Laの光軸の周りに回転することにより、ハーフミラーの反射面が直進光線Laの光軸の周りに回転し、スクリーン12の位置に合わせて走査光線Lcの向きを調整することができる。
制御装置2は、例えばDVDプレーヤやPC(パソコン)等の画像ソース器11から動画や静止画のコンテンツの画像信号S11を入力し、該画像信号S11に基づいてレーザ光源4の直進光線Laの輝度や色を制御信号S2b及び光偏向器3のミラー部33の振れ角を制御する制御信号S2aを生成し、光偏向器3及びレーザ光源4へ出力する。この結果、スクリーン12には、画像ソース器11が制御装置2に出力した画像信号S11に対応する画像が表示される。
なお、カラーの画像に対応する場合には、レーザ光源4は赤、緑及び青の3色が用意され、各色の直進光線Laについて輝度が調整される。
光偏向器3の構成について詳細に説明する。説明の便宜上、原点o、x軸及びy軸を定義する。また、この実施形態では、光偏向器3は、矩形の外側支持枠31の長辺方向及び短辺方向をそれぞれ水平方向及び垂直方向(=鉛直方向)に揃えて配設されていると想定する。ミラー部33は、後述するように、制御装置2から光偏向器3への制御信号S2aに応じてミラー部33の振れ角が制御されるようになっているが、ミラー部33が光偏向器3のまっすぐ前方を向いている時をミラー部33の「基準向き」と定義する。
ミラー部33の基準向きにおいて、原点oはミラー部33の前面の中心、x軸及びy軸は、該前面上に含まれ、外側支持枠31の長辺方向及び短辺方向の軸と定義する。光偏向器3の前後方向はx軸及びy軸の両方に対して直角な方向となる。光偏向器3の前側及び後ろ側は、それぞれMEMSデバイスとしての光偏向器3の表側及び裏側でもある。図1における光偏向器3は、正面図で描かれている。光偏向器3の左右を光偏向器3の正面視したときの左右と定義する。
光偏向器3は、正面視で左右対称の構造となっている。外側支持枠31、内側支持枠32及びミラー部33は、中心を原点oに揃えられる。内側支持枠32は外側支持枠31の内周側に配設され、ミラー部33は内側支持枠32の内周側に配設される。
ミアンダ型アクチュエータ35a,35bは、外側支持枠31の内周側において、内側支持枠32の左右両側に配設される。ミアンダ型アクチュエータ35a,35bは、y軸に対して対称となっているので、ミアンダ型アクチュエータ35aについてのみ説明する。ミアンダ型アクチュエータ35aは、長手方向がy軸に対して平行に揃えられている4つのカンチレバー39と、カンチレバー39を直列に連結する3つの折返し部38とを有し、基端側において外側支持枠31の短辺部の下端部に結合し、先端部において内側支持枠32の縦辺の下部に結合している。
双腕型アクチュエータ36a,36bは、内側支持枠32の内周側においてミラー部33の左右両側に配設される。2つのバー40は、ミラー部33の静止時では、軸線をy軸に揃え、ミラー部33からそれぞれ上及び下に突出している。双腕型アクチュエータ36a,36bは双腕部41を有している。双腕部41は、半楕円周状の中間部を1つの基端部とし、上下の両端部を2つの先端部としている。双腕部41は、基端部においてx軸上の内側支持枠32の内周位置に結合し、先端部を両バー40の突出端に結合している。
ミラー部33は、原点oにおいて直交する横回転軸線と縦回転軸線との2つの回転軸線の周りに揺動する。横回転軸線及び縦回転軸線は、ミラー部33が基準向きになっているときは、それぞれx軸及びy軸に一致する。横回転軸線は常時水平方向である。縦回転軸線は、バー40の軸線に一致し、上下方向に首振りする。縦回転軸線は、y軸に一致するときのみ垂直方向(鉛直方向)となる。複数の電極パッド44a,44bは、外側支持枠31の短辺部に設けられ、後述の下部電極層62及び上部電極層64(図2)へ接続されている。
図2を参照して、MEMSデバイスとしての光偏向器3のチップ構造について説明する。光偏向器3は、表側から裏側へ順番に積層体55、SOI層56、BOX層57及びハンドル層58から成る。
積層体55は、裏側(図2の下側)から表側へ順番に(創成時の積層順に)、Ti(チタン。TiOxでも可)から成る下部電極密着層61、Pt(プラチナ)から成る下部電極層62、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)から成る圧電素子層63、及びPt(プラチナ)から成る上部電極層64を有している。被覆層67は、SiO2(二酸化ケイ素)から成り、下部電極密着層61、下部電極層62、圧電素子層63及び上部電極層64の表面を被覆している。
SOI層56はSi(ケイ素)から成る。BOX層57は酸化膜としてのSiO2(二酸化ケイ素)から成る。ハンドル層58はSi(ケイ素)から成る。
積層体55及びSOI層56からは、MEMS構造物として、外側支持枠31、内側支持枠32(図2では図示省略)、ミラー部33、ミアンダ型アクチュエータ35a,35b及び双腕型アクチュエータ36a,36bが作製される。内側支持枠32、ミラー部33、ミアンダ型アクチュエータ35a,35b及び双腕型アクチュエータ36a,36bは、光偏向器3の可動部を構成する。内周側空間54は、光偏向器3の可動部の運動を許容する空間として、ハンドル層58において外側支持枠31の内周側にエッチングにより形成される。
横回転軸線の周りのミラー部33の揺動は、左右のミアンダ型アクチュエータ35a,35bの作動により行われる。ミアンダ型アクチュエータ35a,35bの4つのカンチレバー39について、基端側(外側支持枠31側)から先端側(内側支持枠32側)へ順番に1〜4番の番号を付けると、奇数番のカンチレバー39の圧電素子層63には正相のユニポーラ型駆動電圧が印加され、偶数番のカンチレバー39の圧電素子層63には逆相のユニポーラ型駆動電圧が印加される。
制御装置2がミアンダ型アクチュエータ35a,35bに供給する駆動電圧を「垂直駆動電圧」と呼ぶことにする。該垂直駆動電圧には、ユニポーラ型駆動電圧と後述の交流電圧とが含まれる。
垂直駆動電圧を、奇数番のカンチレバー39の圧電素子層63と偶数番のカンチレバー39の圧電素子層63とに相互に逆相にして印加することにより、内側支持枠32の左右の側部の下端部に結合する先端側は、前後方向位置を揃えて光偏向器3の前後方向へ同期して変位する。これにより、ミラー部33は、横方向回転軸線の周りに往復揺動する。
縦回転軸線の周りのミラー部33の揺動は、左右の双腕型アクチュエータ36a,36bの作動により行われる。制御装置2が双腕型アクチュエータ36a,36bに供給する駆動電圧を「水平駆動電圧」と呼ぶことにする。水平駆動電圧は、バイポーラ型駆動電圧から成る。バイポーラ型駆動電圧の具体例は後述する。
左右の双腕型アクチュエータ36a,36bの双腕部41の圧電素子層63には、相互に逆相の水平駆動電圧が印加される。これにより、左右の双腕部41の先端部は、一方が前方に変位すると、他方が後方に変位する関係となり、また、バー40に対しては軸線の周りに同一方向に同一量の回転変位となり、この結果、ミラー部33は、縦回転軸線の周りに往復揺動する。バイポーラ型駆動電圧を「水平駆動電圧」と呼ぶことにする。
内側支持枠32、ミラー部33、ミアンダ型アクチュエータ35a,35b及び双腕型アクチュエータ36a,36bから成る光偏向器3の可動部は、横回転軸線の周り及び縦回転軸線の周りにそれぞれ異なる固有振動をもつ。典型的には、横回転軸線の周りの固有振動周波数は、走査光線Lcの縦方向走査の縦走査周波数として使用され、縦回転軸線の周りの固有振動周波数は、走査光線Lcの横方向走査の横走査周波数として使用される。この光偏向器3では、横回転軸線の周りの固有振動周波数は、縦回転軸線の周りの固有振動周波数より小さい。
光偏向器3において、ミアンダ型アクチュエータ35a,35bは圧電アクチュエータの一例である。双腕型アクチュエータ36a,36bはバイポーラ型圧電アクチュエータの一例である。カンチレバー39は圧電変形部の一例である。
図3を参照して、制御装置2について説明する。制御装置2は、画像入力部71、画像処理部72、処理信号出力部73、偏向制御部74及び光源制御部75を備える。画像入力部71は、画像ソース器11から画像信号S11を受けて、画像処理部72の処理に適合した信号S71に変換し、画像処理部72に出力する。画像処理部72は、画像入力部71から信号S71に基づいて偏向制御部74及び光源制御部75の制御情報を含む信号S72を生成する。該制御情報には、光偏向器3のミアンダ型アクチュエータ35a,35b及び双腕型アクチュエータ36a,36bの振動周期とレーザ光源4の制御信号とを相互に同期させる同期情報や、レーザ光源4が画像ソース器11からの画像信号S11に対応する直進光線Laを生成する際に必要となる輝度や色等についての生成基礎情報が含まれる。
処理信号出力部73は、画像処理部72からの信号S72に基づいて信号S73a及び信号S73bを生成し、それぞれ偏向制御部74及び光源制御部75へ出力する。信号S73aには、同期情報が含まれる。信号S73bには、同期情報の他に、生成情報が含まれる。偏向制御部74は、信号S73aに基づいて光偏向器3のミアンダ型アクチュエータ35a,35bの垂直駆動電圧及び双腕型アクチュエータ36a,36bの水平駆動電圧を生成し、それを制御信号S2aとして光偏向器3に出力する。偏向制御部74の詳細は次の図4において説明する。光源制御部75は、処理信号出力部73からの制御信号S2bに基づいてレーザ光源4の駆動電圧を生成し、レーザ光源4に出力する。レーザ光源4は、光源制御部75からの駆動電圧に基づいて、各時刻の直進光線Laの輝度及び色を決定する。
図4を参照して、偏向制御部74について説明する。偏向制御部74は、処理信号出力部73からの制御信号S73aを、ミアンダ型アクチュエータ35a,35bの垂直駆動電圧及び双腕型アクチュエータ36a,36bの水平駆動電圧をレーザ光源4からの直進光線Laの出射と同期させる情報として使用する。
ユニポーラ型垂直駆動電圧発生部81は、垂直走査用低周波の発振信号S81を出力し、バイポーラ型水平駆動電圧発生部83は、水平走査用高周波数の発振信号S83を出力する。ユニポーラ型垂直駆動電圧発生部81の発振信号S81とバイポーラ型水平駆動電圧発生部83の発振信号S83とは、レーザ光源4からの直進光線Laと同期することにより、走査光線Lcは、スクリーン12(図1)において例えばラスタースキャンにより画像を適切に生成することができる。
ユニポーラ型垂直駆動電圧発生部81の発振信号S81は、例えば図13に示したユニポーラ型駆動電圧になっている。なお、図13の正弦波の周波数は60Hzと説明したが、ユニポーラ型垂直駆動電圧発生部81の発振信号は、横回転軸線周りの光偏向器3の可動部の固有振動周波数の周波数に合わせられる。バイポーラ型水平駆動電圧発生部83の発振信号は、バイポーラ駆動電圧であり、具体的には、例えば、周波数が縦回転軸線の周りの光偏向器3の可動部の固有振動周波数に等しくした正弦波である。
滞留電荷除去用交流電圧発生部82は交流電圧の正弦は波形の発信信号S82を出力する。発信信号S82は、正弦波であり、振幅が±10V未満であり(10Vとした理由は図6で後述)、周波数が10kHz以上である(10kHz以上とした理由は図11及び図12で後述)。発振信号S83は、周波数が1kHzでピークツーピーク電圧が振幅が発信信号S81のピークツーピーク電圧のおおよそ半分の正弦波信号である。なお、発振信号S83として、バイポーラ駆動電圧に代えて、ユニポーラ駆動電圧を使用することもできる。切替部84は、ユニポーラ型垂直駆動電圧発生部81及び滞留電荷除去用交流電圧発生部82からの出力を所定のタイミングで切替えて、垂直駆動部85へ信号S84として出力する(切替の具体的な仕方及び信号S84の具体的な波形は図7で後述)。
垂直駆動部85は、切替部84からの信号S84を垂直駆動電圧に変換した信号S85として、光偏向器3へ出力する。光偏向器3は、垂直駆動部85からの信号S85をミアンダ型アクチュエータ35a,35bのカンチレバー39の圧電素子層63に印加する。なお、ミアンダ型アクチュエータ35a,35bのカンチレバー39の圧電素子層63の印加電圧には、奇数番のカンチレバー39用と、偶数番のカンチレバー39用との2種類、必要となるので、信号S85は2種類となる。
水平駆動部86は、バイポーラ型水平駆動電圧発生部83からの発信信号S83を水平駆動電圧に変換した信号S86として、光偏向器3へ出力する。光偏向器3は、水平駆動部86からの信号S86を双腕型アクチュエータ36a,36bの双腕部41の圧電素子層63に印加する。なお、双腕型アクチュエータ36a,36bの双腕部41の圧電素子層63の印加電圧は、双腕型アクチュエータ36aの双腕部41用と双腕型アクチュエータ36bの双腕部41用とで相互に逆相にしなければならないので、信号S86は2種類となる。図1の制御信号S2は、信号S85,S86をまとめたものである。
図5を参照して、ミアンダ型アクチュエータ35a,35bの圧電素子層63についての印加電圧と変位量との関係のヒステリシスについて説明する。変位量は、圧電素子層63がカンチレバー39の長手方向に伸びる方向を正、縮む方向を負としている。図5では、変位量が負となっているので、圧電素子層63が縮むことを意味する。
光偏向器3では、カンチレバー39は圧電素子層63が1層だけのユニモルフ構造となっている。また、圧電素子層63は、カンチレバー39の表側部分に存在する。したがって、圧電素子層63がカンチレバー39の長手方向に縮むことにより、カンチレバー39は、表側を凹、裏側を凸にして、湾曲変形する。圧電素子層63のヒステリシスのために、分極方向が反転する箇所が、印加電圧=0Vの縦軸に対して左右に計2個、存在する。
図5のヒステリシスにおいて、印加電圧がおおよそ−60V〜+60Vの範囲では、負側の分極点へ向かう印加電圧の下降過程と正側の分極点へ向かう印加電圧の上昇過程とにおいて、変位量が印加電圧の変化に対して線形に変化する2つの線形区間が存在すること認められる。
図6は、ミアンダ型アクチュエータ35a,35bの圧電素子層63の印加電圧範囲を図5の2つの線形区間を含む範囲に限定した時の圧電素子層63についての印加電圧と変位量との関係のヒステリシス特性を示している。ミアンダ型アクチュエータ35a,35bは、上部電極層64にユニポーラ型駆動電圧を印加することになっているので、光偏向器3の垂直駆動電圧は、負側の分極点へ向かう印加電圧の下降過程の線形区間を使用する。破線は、該線形区間の近似直線を示し、線形区間の印加電圧は、左側の−10Vの分極点を下限とし、上限は60V近辺とし、−10V〜60Vの範囲となる。
図7を参照して、ミアンダ型アクチュエータ35a,35bの圧電素子層63に印加する垂直駆動電圧について説明する。なお、ミアンダ型アクチュエータ35a,35bの圧電素子層63の垂直駆動電圧は、奇数番のカンチレバー39に対しては正相、偶数番のカンチレバー39に対しては逆相になる。図7が奇数番のカンチレバー39に対して供給する正相の垂直駆動電圧とすると、偶数番のカンチレバー39に対して供給する逆相の垂直駆動電圧は、図7の垂直駆動電圧とは逆相になる。
図7の垂直駆動電圧は、ユニポーラ型駆動電圧の各周期において、0V〜50Vの範囲で変化するユニポーラ型駆動電圧からなるユニポーラ型駆動電圧部分(図4の発振信号S81の部分)と、−10V〜+10Vの範囲で変化する交流部分(図4の発振信号S82の部分)との2つから成る。図7において、t1はユニポーラ型駆動電圧が最大値になる時刻であり、t2はユニポーラ型駆動電圧が最小値になる時刻であり、t3は、時刻t1の次に、ユニポーラ型駆動電圧が最大値になる時刻である。
図7において、t2−t3の発振信号S81の部分は、図13のt2−t3の部分に一致し、ユニポーラ型駆動電圧の上昇する半周期になっている。発振信号S82の部分が占めるt1−t2は、図13のt1−t2の時間範囲に一致し、図13では、ユニポーラ型駆動電圧の下降する半周期になっている。
図7の垂直駆動電圧において、ユニポーラ型駆動電圧の各周期において一部期間ではミアンダ型アクチュエータ35a,35bへのユニポーラ型駆動電圧の供給を停止してもかまわないことを、図8を参照して説明する。図8は、ミアンダ型アクチュエータ35a,35bへのユニポーラ型駆動電圧の供給を一時的に停止したときのミラー部33の振れ角の変化を調べた実験の結果を示している。
図8では、横軸が時間tであり、縦軸がピークツーピーク電圧Vである。t2,t3は、前述の図13のt2,t3と同一に定義しており、t2は、ピークツーピーク電圧Vが最小値になる時刻、t3は、ピークツーピーク電圧Vが最大値になる時刻となっている。なお、t2の位相を90°、t3位相を270°と定義する。
図8において、(a)はユニポーラ型駆動電圧を1周期全体にわたりミアンダ型アクチュエータ35a,35bに供給したときの垂直駆動電圧の波形、(b)はt2(位相=90°)から0.5周期分(位相では180°分)だけ、ユニポーラ型駆動電圧をミアンダ型アクチュエータ35a,35bに供給したときの垂直駆動電圧、(c)は時刻t2(位相=90°)より前の位相=80°から0.55周期分だけ、ユニポーラ型駆動電圧をミアンダ型アクチュエータ35a,35bに供給したときの垂直駆動電圧の波形、(d)は時刻t2(位相=90°)より前の位相=75°から0.6周期分だけ、ユニポーラ型駆動電圧をミアンダ型アクチュエータ35a,35bに供給したときの垂直駆動電圧の波形、(e)は時刻t2(位相=90°)より前の位相=65°から0.7周期分だけユニポーラ型駆動電圧をミアンダ型アクチュエータ35a,35bに供給したときの垂直駆動電圧の波形を示している。
図8において、ミラー部33の振れ角は、所定の垂直スクリーン上の走査光線Lcの軌跡長さで示している。なお、この実験では、双腕型アクチュエータ36a,36bへの水平駆動電圧を供給は停止する。したがって、所定のスクリーン上の走査光線Lcの軌跡はy軸方向になる。走査光線Lcの軌跡の長さが長いほど、ミラー部33の振れ角が大きいことを意味する。長さは、(a)では43mm、(b)では29mm、(c)では38mm、(d)では39mm、(e)では38mmとなった。
図9は、図8の実験結果に基づいてユニポーラ型駆動電圧の周期におけるユニポーラ型駆動電圧の占有率と振れ角との関係を示したグラフである。図9から、各周期におけるユニポーラ型駆動電圧の占有率を0.55〜0.7にしても、ミラー部33は、停止することなく、ミラー部33の振れ角は、占有率が1であるときの88(=38mm÷43mm×100)%以上確保できることが分かる。
図9は、ユニポーラ型駆動電圧の周期におけるユニポーラ型駆動電圧の占有率をプロットしたものであるが、逆に、ユニポーラ型駆動電圧の周期におけるユニポーラ型駆動電圧の供給停止期間について考えると、圧電素子層63が縮み量を減少する半周期において、ユニポーラ型駆動電圧の周期におけるユニポーラ型駆動電圧の供給停止期間の占有率を0.3〜0.45に維持すれば、ミラー部33の振れ角は、ユニポーラ型駆動電圧の供給停止期間が無いときの88%以上確保できるということになる。
ユニポーラ型駆動電圧の周期におけるユニポーラ型駆動電圧の供給停止期間は、ミアンダ型アクチュエータ35a,35bの圧電素子層63へのユニポーラ型駆動電圧が圧電素子層63の縮みを減少させる半周期、すなわちカンチレバー39の湾曲変形が減少する半周期に相当する。カンチレバー39は、その湾曲変形を減少する半周期では、圧電素子層63にユニポーラ型駆動電圧を印加されなくても、カンチレバー39の復元力により横軸線周りの固有振動を維持すると考えられる。
そこで、図7に示したように、ミアンダ型アクチュエータ35a,35bの垂直駆動電圧は、ユニポーラ型駆動電圧の各周期においてユニポーラ型駆動電圧の下降側の半周期、すなわち、カンチレバー39がその湾曲変形を減少する半周期では、ミアンダ型アクチュエータ35a,35bのカンチレバー39の圧電素子層63へのユニポーラ型駆動電圧の印加を停止する。なお、ミアンダ型アクチュエータ35a,35bのカンチレバー39の圧電素子層63へのユニポーラ型駆動電圧の印加停止は、カンチレバー39がその湾曲変形を減少する半周期内であって、ユニポーラ型駆動電圧の周期の例えば、0.25〜0.5、好ましくは0.3〜0.45の時間範囲とし、この時間範囲には、ユニポーラ型駆動電圧に代えて、後述の滞留電荷除去用交流電圧をミアンダ型アクチュエータ35a,35bのカンチレバー39の圧電素子層63に印加して、該圧電素子層63内の滞留電荷を除去する。
ミアンダ型アクチュエータ35a,35bのカンチレバー39の圧電素子層63へのユニポーラ型駆動電圧の印加を停止する所定時間範囲は、ミアンダ型アクチュエータ35a,35bの圧電素子層63へのユニポーラ型駆動電圧が圧電素子層63の縮みを減少させる期間としての減少側半周期、すなわちカンチレバー39がその湾曲変形を減少させる半周期の所定時間範囲となる。減少側半周期では、カンチレバー39は、圧電素子層63にユニポーラ型駆動電圧を印加されなくても、復元力により形状を戻し、ミラー部33は、横軸線の周りの固有振動を継続すると考えられる。
所定時間範囲の開始時刻は、減少側半周期の開始時刻t2より後であり、所定時間範囲の終了時刻は、減少側半周期の終了時刻t3より前である。
ミアンダ型アクチュエータ35a,35bの垂直駆動電圧におけるユニポーラ型駆動電圧と、滞留電荷除去用交流電圧との切替は、切替部84(図4)が実施する。切替え時期の具体的な検出の仕方として、ユニポーラ型垂直駆動電圧発生部81が出力するユニポーラ型駆動電圧の値を例えばユニポーラ型駆動電圧の周波数の約10倍のサンプリング周波数で検出し、ユニポーラ型駆動電圧が最大値となる時刻(例:図13の時刻t1,t3)及び最小値となる時刻(例:図13の時刻t2)を検出する。そして、切替部84は、ユニポーラ型駆動電圧が最大値になった時刻に垂直駆動部85への出力をユニポーラ型駆動電圧から滞留電荷除去用交流電圧へ切替え、ユニポーラ型駆動電圧が最小値になった時刻に垂直駆動部85への出力を滞留電荷除去用交流電圧からユニポーラ型駆動電圧へ切替える。
ユニポーラ型駆動電圧の最大値及び最小値の時刻に同期して、ユニポーラ型駆動電圧と滞留電荷除去用交流電圧とを切替える方式では、ユニポーラ型駆動電圧の周期が変動しても、ユニポーラ型駆動電圧の1周期におけるユニポーラ型駆動電圧の占有率は50%に維持することができる。しかし、占有率が50%に固定されてしまう。
これに対処して、タイマを利用するタイマ方式も採用することができる。タイマ方式では、所定周波数のクロックパルスを計数して、計数値から、基準時刻からの経過時間を測定することができる。発振信号S81(ユニポーラ型駆動電圧)の周期は一定であるので、発振信号S81の周期に対応するクロックパルス数を求めることができる。これにより、発振信号S81の所定の基準時刻(例:ユニポーラ型駆動電圧が最小値となる時刻t2)を周期の開始時刻に設定し、ユニポーラ型駆動電圧の周期に対応するクロックパルス数から、現在が1周期においてどの位相にあるかを検出することができる。したがって、切替部84は、タイマが計数したクロックパルス数が、ユニポーラ型駆動電圧と滞留電荷除去用交流電圧とを切替える位相に対応する値になった時、発振信号S81から発振信号S82(滞留電荷除去用交流電圧)へ又はその逆に切替える。
ミアンダ型アクチュエータ35a,35bのカンチレバー39の湾曲変形の増減の反転時刻としての減少側半周期の開始時刻t1及び終了時刻t2には、駆動電圧がミアンダ型アクチュエータ35a,35bのカンチレバー39の圧電素子層63に印加して、カンチレバー39の湾曲変形の反転を誘導することになるので、カンチレバー39は、変形のオーバシュートやアンダシュートを抑制されて、湾曲変形の反転を的確に行うことができる。
図7に示したように、ミアンダ型アクチュエータ35a,35bの垂直駆動電圧は、発振信号S81無しの期間において、発振信号S81の代わりに、発振信号S82を印加する。発振信号S82としての滞留電荷除去用交流電圧は、振幅が前述の図6において説明した線形範囲の内の−10V〜+10Vの範囲内とするものであり、かつ周波数が10kHz以上とするものである。
滞留電荷除去用交流電圧を−10V〜+10Vの範囲内とした理由は、−10Vより低い電圧を上部電極層64に印加すると、圧電素子層63の分極方向が反転してしまい、印加電圧を上昇させたときに、元の変位特性に戻らなくなるからである。滞留電荷除去用交流電圧を10kHz以上とした理由は、周波数が低いと、64内の滞留電荷の除去に時間がかかるからである。
滞留電荷除去用交流電圧は、周波数を10kHz以上に設定すれば、圧電素子層63内の滞留電荷を効率的に除去することができるが、二次元走査型の光偏向器3特有の問題点として所定周波数範囲を除外し、10kHz〜18kHz及び30kHz以上が好ましい。この理由を、図10を参照して説明する。
図10は、この光偏向器3において双腕型アクチュエータ36a,36bの作動は停止しミアンダ型アクチュエータ35a,35bには滞留電荷除去用交流電圧のみを印加したときの滞留電荷除去用交流電圧の周波数と縦回転軸線の周りの光偏向器3の揺動振幅(単位「a.u.」は任意ユニットを意味する。)との関係を調べた実験グラフである。
これによれば、1kHz近辺及び20kHz近辺において縦回転軸線の周りの光偏向器3の揺動振幅が増大するので、この周波数付近では、水平走査の振幅に影響を与えることが分かる。これは、縦軸線の周りの可動部の固有振動周波数が1kHz近辺に存在するとともに、その高調波の振動数が20kHz近辺にあるからである。したがって、ミアンダ型アクチュエータ35a,35bのカンチレバー39の圧電素子層63への滞留電荷除去用交流電圧の印加が、走査光線Lbの横方向走査に悪影響を与えないように、滞留電荷除去用交流電圧が、縦軸線の周りの可動部の固有振動の高調波の振動数が所定値以上ずれるように、滞留電荷除去用交流電圧の周波数は10kHz〜18kHz及び30kHz以上の周波数が選定された。
図11は、実施形態と未対策品とについてミアンダ型アクチュエータ35a,35bのカンチレバー39の圧電素子層63に印加する垂直駆動電圧とミラー部33の1/2振れ角との関係を調べた実験結果のグラフである。実施形態とは光偏向モジュール8を指し、未対策品とは、垂直駆動電圧を、滞留電荷除去用交流電圧を含まず、ユニポーラ型駆動電圧のみとしたものである。垂直駆動電圧は、図7の垂直駆動電圧のp-p(50V)を、0Vよりわずかに大きい値から、50Vよりわずかに小さい値の範囲の各値に変更したものとなる。
図11によれば、未対策品では、垂直駆動電圧としてのユニポーラ型駆動電圧の振幅が50Vp-p近くまで来ると、ミラー部の1/2振れ角は、ユニポーラ型駆動電圧のさらなる増大にもかかわらず、7.4°近辺で一定になり、それ以上増大しないという振れ角の飽和が生じる。これに対し、実施形態では、このような振れ角の飽和という問題を解消することができる。
図12は実施形態と未対策品とについて垂直駆動電圧としてのユニポーラ型駆動電圧の振幅を連続印加したときの連続印加時間とミラー部の1/2振れ角との関係を調べた実験結果のグラフである。垂直駆動電圧は、実施形態及び未対策品共に50Vp-pとしている。
図12によれば、未対策品では、連続印加時間の増大に伴い、1/2振れ角が徐々に低下する問題が起きる。これに対し、実施形態では、連続印加時間の増大に伴う振れ角の減少という問題を解消することができる。
本発明を実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定することなく種々に変形して実施することができる。
実施形態では、ミアンダ型アクチュエータ35a,35bが用いられているが、本発明は、ユニポーラ型駆動電圧で駆動するその他の圧電アクチュエータにも適用することができる。
実施形態では、正のユニポーラ型駆動電圧がミアンダ型アクチュエータ35a,35bの圧電素子層63に印加されるが、負のユニポーラ型駆動電圧がミアンダ型アクチュエータ35a,35bの上部電極層64を介して圧電素子層63に印加されてもよい。なぜなら、図6のヒステリシス特性から分かるように、−60V〜+10Vにおいて、図6の右肩下がりの破線とは左右対称となる右肩上がりの線形範囲が存在するので、負のユニポーラ型駆動電圧を使用して、該右肩上がりの線形範囲を利用することができるからである。
実施形態では、ミラー部33の回転軸線としての縦回転軸線と横回転軸線とは直交しているが、ミラー部33の2つの回転軸線として直交していない2つの回転軸線を設定することもできる。
実施形態では、走査光線Lbから走査光線Lcを生成するために、ビームスプリッタ5のハーフミラーが利用されるが、走査光線Lbから走査光線Lcを生成するミラーを、直進光線Laの光軸上から外して配設し、ミラー部33の前面のミラー面から出射する走査光線Lbを、該ミラーの方へ向けてもよい。
1・・・光スキャナ、2・・・制御装置、3・・・光偏向器、8・・・光偏向モジュール、33・・・ミラー部、35a,35b・・・ミアンダ型アクチュエータ(圧電アクチュエータ)、36a,36b・・・双腕型アクチュエータ(バイポーラ型圧電アクチュエータ)、39・・・カンチレバー(圧電変形部)、63・・・圧電素子層。

Claims (4)

  1. 光偏向器と該光偏向器を制御する制御装置とを含む光偏向モジュールであって、
    前記光偏向器は、ミラー部と、圧電素子層への印加電圧の大きさに応じて湾曲変形する圧電変形部を有し、前記ミラー部を含む可動部が所定の軸線の周りに固有振動する時の固有振動周波数に等しい周波数のユニポーラ型駆動電圧が、前記圧電素子層への印加電圧として前記制御装置から供給され、前記圧電変形部の湾曲変形により前記ミラー部を前記所定の軸線の周りに揺動させる圧電アクチュエータとを備え、
    前記制御装置は、
    前記ユニポーラ型駆動電圧の各周期において前記圧電変形部の湾曲変形が減少する減少側半周期内の所定時間範囲では、前記ユニポーラ型駆動電圧に代えて、周波数が10kHz以上で振幅が前記圧電素子層の分極方向を反転させない範囲とある交流電圧を、前記圧電素子層の印加電圧として前記光偏向器に供給することを特徴とする光偏向モジュール。
  2. 請求項1記載の光偏向モジュールにおいて、
    前記所定時間範囲の長さは、前記固有振動周波数の周期の0.3〜0.45であることを特徴とする光偏向モジュール。
  3. 請求項2記載の光偏向モジュールにおいて、
    前記所定時間範囲の開始時刻は、前記減少側半周期の開始時刻より後であり、前記所定時間範囲の終了時刻は、前記減少側半周期の終了時刻より前であることを特徴とする光偏向モジュール。
  4. 請求項3記載の光偏向モジュールにおいて、
    前記光偏向器は、前記ミラー部を前記所定の軸線とは別の軸線の周りに別の固有振動周波数で揺動させるバイポーラ型圧電アクチュエータを備え、
    前記交流電圧の周波数は、前記別の固有振動周波数の高調波の周波数から所定値以上ずれている周波数に選定されていることを特徴とする光偏向モジュール。
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