(第1実施形態)
以下、図1および図2を参照して、この発明を腕時計に適用した第1実施形態について説明する。
この腕時計は、図1に示すように、腕時計ケース1を備えている。この腕時計ケース1は、硬質の合成樹脂で形成されていても良いが、剛性の高い金属で形成されていることが望ましい。この腕時計ケース1の上部開口部には、時計ガラス2が防水パッキン2aを介して取り付けられている。
また、この腕時計ケース1の下部には、図1に示すように、裏蓋3が防水リング3aを介して取り付けられている。この腕時計ケース1の内部には、時計モジュール4が設けられている。この時計モジュール4は、図示しないが、時刻を指示する指針を駆動する時計ムーブメント、時刻などの情報を電気光学的に表示する表示パネル、これを駆動する回路基板などの時計機能に必要な各種の部品を備えている。
また、この腕時計ケース1の側部には、図1に示すように、押釦スイッチ5が設けられている。この押釦スイッチ5は、腕時計ケース1に設けられた貫通孔6に取り付けられて腕時計ケース1の外部に突出する筒状部材7と、この筒状部材7にスライド可能に挿入された釦部材8と、この釦部材8を腕時計ケース1の外部に向けて付勢するコイルばね9とを備えている。
筒状部材7は、図1に示すように、腕時計ケース1の貫通孔6に取り付けられる第1筒部10と、この第1筒部10によって腕時計ケース1の外面に取り付けられる第2筒部11とを備えている。第1筒部10は、剛性の高い金属で形成されており、第2筒部11は、金属または剛性の高い硬質の合成樹脂で形成されている。
この場合、第1筒部10は、図1に示すように、腕時計ケース1の貫通孔6に挿入する円筒状の第1本体部12を備えている。この第1本体部12は、その外径が腕時計ケース1の貫通孔6の内径と同じ大きさで、軸方向の長さが、腕時計ケース1の貫通孔6における軸方向の長さよりも少し長く形成されている。
これにより、第1筒部10は、図1に示すように、第1本体部12が腕時計ケース1の貫通孔6に挿入された際に、第1本体部12の内端部(図1では左端部)が腕時計ケース1の内面とほぼ同じ面上に位置するか、あるいは腕時計ケース1の内部に僅かに突出し、この状態で第1本体部12の外端部(図1では右端部)が腕時計ケース1の外面から外部に向けて少し突出するように構成されている。
この第1筒部10における第1本体部12の外端部(図1では右端部)には、図1および図2に示すように、鍔状の押え部13が外周面から径方向に向けて突出して形成されている。この押え部13は、第1本体部12が腕時計ケース1の貫通孔6に挿入された際に、腕時計ケース1の外面に対して隙間をもって対向するように構成されている。
この押え部13の外側面(図2(a)では右側面)には、図2(a)および図2(b)に示すように、腕時計ケース1の貫通孔6に対して第1本体部12を締め付けるための締付溝13aが十字形状に形成されている。この締付溝13aは、ドライバーなどの工具(図示せず)が係合する溝である。
すなわち、この締付溝13aは、図2(a)および図2(b)に示すように、ドライバーなどの工具を係合させた状態で回転させることにより、押え部13と共に第1本体部12を回転させるように構成されている。また、この押え部13の外側面には、腕時計ケース1側に位置するコイルばね9の内端部(図1では左端部)を位置規制する規制溝13bが環状に形成されている。
また、この第1筒部10における第1本体部12の外周面には、図1および図2(a)に示すように、雄ねじ12aが設けられている。この場合、腕時計ケース1の貫通孔6の内周面には、第1本体部12の雄ねじ12aが螺合する雌ねじ6aが設けられている。これにより、第1筒部10は、第1本体部12の雄ねじ12aが腕時計ケース1の貫通孔6の雌ねじ6aに螺入されて締め付けられることにより、腕時計ケース1の貫通孔6に螺着して取り付けられるように構成されている。
一方、第2筒部11は、図1に示すように、第1筒部10の押え部13が挿入する大きさの円筒状の第2本体部14を備えている。この第2本体部14は、その内径が第1筒部10の押え部13の外径とほぼ同じ大きさで、軸方向の長さが、第1筒部10の第1本体部12の軸方向の長さとほぼ同じ長さに形成されている。この第2本体部14の外端部(図1では右端部)の内周縁には、面取り部14aが設けられている。
また、この第2本体部14における腕時計ケース1側に位置する内周面の端部(図1では左側の端部)には、図1に示すように、取付突起部15が第2本体部14の内部に向けて突出した状態でリング状に形成されている。この取付突起部15は、その内径が第1筒部10の押え部13の外径よりも小さく、かつ第1本体部12の外径よりも十分に大きく形成されている。
これにより、取付突起部15は、図1に示すように、第1筒部10の第1本体部12が第2筒部11の第2本体部14に挿入された際に、第1筒部10の押え部13が軸方向に重なり、この押え部13の重なりによって腕時計ケース1の外面に押し付けられることにより、第2筒部11を腕時計ケース1の外面に取り付けられるように構成されている。
この場合、第1筒部10の押え部13と、第2筒部11の取付突起部15と、これらが対応する腕時計ケース1の外面とで囲われる領域内には、図1に示すように、環状部材である防水リング16が配置されている。この防水リング16は、第1筒部10の外周に配置された状態で、第1筒部10の第1本体部12を第2筒部11の第2本体部14に挿入させた際に、第1筒部10の押え部13の内側面(図1では左側面)に当接した状態で、第2筒部11の取付突起部15の内周面に沿って環状に配置されるように構成されている。
また、この防水リング16は、図1に示すように、第1筒部10の押え部13の内側面に当接して第2筒部11の取付突起部15の内周面に沿って環状に配置された状態で、第1筒部10の雄ねじ12aを腕時計ケース1の貫通孔6の雌ねじ6aに螺合させて締め付けた際に、第1筒部10の押え部13の内側面と腕時計ケース1の外面とに圧接すると共に、第2筒部の取付突起部15の内周面と第1本体部12の外周面とに圧接するように構成されている。これにより、防水リング16は、腕時計ケース1の貫通孔6の内周面と第1筒部10の外周面との間の防水を図るように構成されている。
ところで、釦部材8は、図1に示すように、筒状部材7の第1筒部10内にスライド可能に挿入する軸部17と、腕時計ケース1の外部に突出する筒状部材7の第2筒部11内にスライド可能に配置される頭部18と、を有している。軸部17は、その外径が第1筒部10の第1本体部12の内径とほぼ同じ大きさで、その軸方向の長さが筒状部材7の軸方向の長さよりも少し短い長さ、つまり頭部18の軸方向の長さ(厚み)だけ、筒状部材7の軸方向の長さよりも短い長さで形成されている。
この軸部17の外周面には、図1に示すように、複数の防水リング19が取り付けられている。これら複数の防水リング19は、その各内周部が軸部17の各溝部17aに嵌め込まれ、その各外周部が第1筒部10の第1本体部12の内周面に摺動可能に圧接するように構成されている。これにより、複数の防水リング19は、第1本体部12の内周面と軸部17の外周面との間の防水を図るように構成されている。
また、この軸部17における腕時計ケース1の内部側に位置する端部(図1では左端部)には、図1に示すように、腕時計ケース1の内部に突出する突起部20が設けられている。この突起部20には、Eリングなどの抜止め部材21が取り付けられる取付溝20aが設けられている。抜止め部材21は、ほぼC字形状に形成され、その外径が第1本体部12の内径よりも大きく、かつ第1本体部12の外径よりも小さく形成され、突起部20の取付溝20aに取り付けられるように構成されている。
これにより、抜止め部材21は、図1に示すように、突起部20の取付溝20aに取り付けられた状態で、腕時計ケース1の内面に位置する第1本体部12の内端面に接離可能に当接するように構成されている。このため、釦部材8は、抜止め部材21が第1本体部12の内端面に当接することにより、軸部17が筒状部材7から腕時計ケース1の外部に抜け出さないように構成されている。
一方、釦部材8の頭部18は、図1に示すように、ほぼ円板状に形成され、軸部17の外端部(図1では右端部)に一体に形成されている。この頭部18は、その外径が第2筒部11の第2本体部14の内径とほぼ同じ大きさで、その軸方向の長さ(厚み)が第2本体部14の軸方向における長さの半分の長さよりも短く(薄く)形成されている。
すなわち、この頭部18は、図1に示すように、軸部17の抜止め部材21が第1本体部12の内端面に当接した状態で、第1筒部10の押え部13から離れた位置で、かつ頭部18の外端面(図1では右端面)が第2筒部11から外部にほとんど突出しない状態で、第2筒部11内にスライド可能に配置されるように構成されている。この場合、頭部18と第1筒部10の押え部13との間隔は、釦部材8の動作ストロークであり、後述するスイッチ部22の接点板22aの変位長さとほぼ同じ長さに設定されている。
また、この頭部18の内側面(図1では左側面)には、図1に示すように、腕時計ケース1から外部側に離れる方向に位置するコイルばね9の外端部(図1では右端部)を位置規制する規制溝18aが環状に設けられている。これにより、コイルばね9は、軸部17の外周に沿って配置された状態で、その外端部が頭部18の規制溝18aに配置され、内端部が第1筒部10の押え部13の規制溝13bに配置され、この状態で釦部材8を腕時計ケース1の外部に向けて押し出す方向に付勢するように構成されている。
また、腕時計ケース1内の時計モジュール4には、図1に示すように、スイッチ部22が釦部材8に対応して設けられている。このスイッチ部22は、板ばね状の接点板22aを有し、この接点板22aが釦部材8の軸部17の内端部に設けられた突起部20の先端に弾接するよう構成されている。
これにより、スイッチ部22は、図1に示すように、釦部材8の頭部18が外部から押圧操作されて、軸部17の突起部20の先端が接点板22aを押圧した際に、接点板22aが時計モジュール4の接点部(図示せず)に接触することにより、スイッチ信号を出力するように構成されている。
次に、このような腕時計の押釦スイッチ5を腕時計ケース1に組み付ける場合について説明する。
この場合には、腕時計ケース1の下部から裏蓋3を取り外し、腕時計ケース1の内部から時計モジュール4を取り外し、この状態で押釦スイッチ5の筒状部材7を腕時計ケース1の貫通孔6に取り付ける。
このときには、まず、第1筒部10の第1本体部12の外周に防水リング16を装着し、この第1筒部10の第1本体部12を第2筒部11の第2本体部14に挿入させて、第1本体部12を第2本体部14の取付突起部15から突出させる。この状態で、第1筒部10の第1本体部12を腕時計ケース1の貫通孔6に螺入させて取り付ける。
このときには、第1筒部10の押え部13に設けられた締付溝13aにドライバーなどの工具(図示せず)を係合させて押え部13を回転させる。すると、第1筒部10が回転しながら第1筒部10の雄ねじ12aが腕時計ケース1の貫通孔6の雌ねじ6aに螺合して、第1本体部12が腕時計ケース1の貫通孔6に取り付けられる。
この状態で、第1筒部10の雄ねじ12aを腕時計ケース1の貫通孔6の雌ねじ6aに締め付けると、第1本体部12の外周に配置された防水リング16が、第1筒部10の押え部13の内側面と腕時計ケース1の外面との間に挟まれると共に、第1筒部10の押え部13が第2筒部11の取付突起部15に重なり、この重なった押え部13が取付突起部15を腕時計ケース1の外面に押し付ける。
これにより、第2筒部11が第1筒部10の押え部13によって腕時計ケース1の外面に強固に取り付けられ、筒状部材7が腕時計ケース1の貫通孔6に取り付けられる。この状態では、防水リング16が、第1筒部10の押え部13の内側面と腕時計ケース1の外面とに圧接されると共に、第2筒部11の取付突起部15の内周面と第1本体部12の外周面とに圧接される。
このため、第2筒部11が腕時計ケース1の外部に突出して取り付けられていても、また第1筒部10の押え部13が腕時計ケース1の外部に突出していても、防水リング16によって腕時計ケース1の貫通孔6の内周面と第1筒部10の外周面との間の防水が図られる。また、この状態では、第1筒部10の第1本体部12の内端部が、腕時計ケース1の内面に位置する。
この状態で、釦部材8を筒状部材7に取り付ける。このときには、まず、釦部材8の軸部17の外周にコイルばね9を配置すると共に、軸部17の外周面に複数の防水リング19を装着する。この状態で、軸部17を第2筒部11から第1筒部10に挿入させると、複数の防水リング19の外周部が、第1本体部12の内周面に圧接した状態で摺動し、釦部材8の頭部18が第2筒部11の第2本体部14内に配置される。
このときには、コイルばね9の内端部が第1筒部10の押え部13に設けられた規制溝13b内に配置され、コイルばね9の外端部が頭部18の内側面に設けられた規制溝18a内に配置される。これにより、コイルばね9が第1筒部10の押え部13と釦部材8の頭部18との間に配置され、このコイルばね9のばね力によって釦部材8が腕時計ケース1の外部に向けて押し出される方向に付勢される。
この状態で、釦部材8の頭部18をコイルばね9のばね力に抗して押し込むと、軸部17の突起部20が腕時計ケース1の内部に突出する。この突出した軸部17の突起部20の取付溝20aに抜止め部材21を取り付ける。この状態では、コイルばね9のばね力で釦部材8が腕時計ケース1の外部に向けて押し出されると、抜止め部材21が第1筒部10の第1本体部12の内端部に当接する。
この状態では、釦部材8が、腕時計ケース1の外部に抜け出すことがなく、第1筒部10の内部と第2筒部11の内部とに配置された状態で、筒状部材7内に取り付けられる。これにより、釦部材8の頭部18が第1筒部10の押え部13から釦部材8の動作ストロークだけ離れた状態で、頭部18の外端面が第2筒部11から外部にほとんど突出することなく、釦部材8の頭部18が第2筒部11内に配置される。
この後、腕時計ケース1内に時計モジュール4を組み込む。このときには、スイッチ部22の接点板22aを釦部材8の軸部17における突起部20の先端に対応させ、この状態で時計モジュール4を腕時計ケース1に配置する。そして、腕時計ケース1の下部に裏蓋3を取り付ける。これにより、腕時計ケース1に押釦スイッチ5が組み付けられる。
次に、このような腕時計の押釦スイッチ5の作用について説明する。
この押釦スイッチ5は、通常の状態のときに、コイルばね9のばね力によって釦部材8が腕時計ケース1の外部に向けて押し出されている。この状態では、釦部材8の軸部17の突起部20に取り付けられた抜止め部材21が第1筒部10の第1本体部12の内端部に当接する。
このため、スイッチ部22の接点板22aは、時計モジュール4の接点部(図示せず)から離れてスイッチ部22がオフ状態になっている。また、このときには、釦部材8の頭部18が第1筒部10の押え部13から外部に向けて釦部材8の動作ストロークだけ離れた状態で、頭部18の外端面が第2筒部11から外部にほとんど突出することなく、頭部18が第2筒部11内に配置される。
この状態で、釦部材8の頭部18を指でコイルばね9のばね力に抗して押し込むと、頭部18が第2筒部11の第2本体部14内において腕時計ケース1側に向けて押し込まれる。このときには、第2本体部14の外端部に位置する内周縁に面取り部14aが設けられているので、頭部18が第2筒部11内から外部にほとんど突出していなくても、第2本体部14の面取り部14aによって指を第2本体部14内に押し込むことができるので、頭部18が第2本体部14内で腕時計ケース1側に向けて押し込まれる。
また、このときには、釦部材8の頭部18と共に、釦部材8の軸部17が腕時計ケース1内に向けてスライドする。このときには、軸部17の外周面に設けられた複数の防水リング19が第1筒部10の第1本体部12の内周面に圧接した状態で摺動しながら、軸部17が第1本体部12内をスライドし、軸部17の内端部に設けられた突起部20が腕時計ケース1の内部に押し出される。
すると、軸部17の突起部20に取り付けられた抜止め部材21が第1本体部12の内端部から離れて、突起部20の先端がスイッチ部22の接点板22aを押圧する。これにより、接点板22aが時計モジュール4の接点部(図示せず)に接触し、スイッチ部22がスイッチ信号を出力する。そして、釦部材8の頭部18から指を離すと、コイルばね9のばね力によって釦部材8が元の位置に戻る。
このように、この腕時計の押釦スイッチ5によれば、腕時計ケース1の貫通孔6に取り付けられ、かつ軸部17および頭部18を有する釦部材8がスライド可能に挿入される筒状部材7が、腕時計ケース1の貫通孔6に取り付けられて釦部材8の軸部17がスライド可能に挿入される第1筒部10と、腕時計ケース1の外部に配置されて第1筒部10によって腕時計ケース1の外面に取り付けられ、この状態で釦部材8の頭部18がスライド可能に配置される第2筒部11と、を有しているので、腕時計全体の小型化を図り、かつ耐衝撃性を高めることができる。
すなわち、この腕時計の押釦スイッチ5では、筒状部材7の第1筒部10によって第2筒部11を腕時計ケース1の外面に取り付けることができるので、腕時計ケース1の落下による衝撃を第2筒部11によって確実に受け止めることができる。これにより、落下による衝撃から釦部材8を良好に保護することができると共に、腕時計ケース1内の時計モジュール4の破損を防ぐことができるので、耐衝撃を向上させることができる。
また、この腕時計の押釦スイッチ5では、第1筒部10によって腕時計ケース1の外面に取り付けられた第2筒部11内に釦部材8の頭部18をスライド可能に配置することができ、先行文献のように腕時計ケース1の肉厚内に釦部材8の頭部18をスライド可能に配置する必要がないので、腕時計ケース1の肉厚を薄く形成することができる。
これにより、腕時計ケース1をコンパクトに形成することができるので、腕時計全体の小型を図ることができる。また、腕時計ケース1の外形が釦部材8の頭部18によって制約を受けることがないので、腕時計ケース1の形状を自由に形成することができ、これによりデザイン性および外観性の高いものを提供することができる。
この場合、第1筒部10は、腕時計ケース1の外部に位置する外端部に押え部13が形成されており、第2筒部11は、腕時計ケース1側に位置する内端部に第1筒部10の押え部13によって腕時計ケース1の外面に押し付けられて取り付けられる取付突起部15が形成されていることにより、第1筒部10の押え部13によって第2筒部11の取付突起部15を腕時計ケース1の外面に確実に押え付けることができるので、第1筒部10によって第2筒部11を腕時計ケース1の外面に強固に取り付けることができる。
すなわち、第1筒部10の押え部13は、第1本体部12の外端部に径方向の外部に向けて突出した状態で鍔状に形成されており、第2筒部11の取付突起部15は、第2本体部14の腕時計ケース1側の内端部に第2本体部14の内部に向けて突出して形成され、かつその内径が押え部13の外径よりも小さく形成されているので、第1筒部10の押え部13と第2筒部11の取付突起部15とを軸方向に重ねることができ、これにより押え部13によって取付突起部15を腕時計ケース1の外面に確実に押し付けることができる。
また、この腕時計の押釦スイッチ5では、第1筒部10の押え部13と、第2筒部11の取付突起部15と、これらが対応する腕時計ケース1の外面とで囲われる領域内に環状部材である防水リング16が配置されているので、この防水リング16によって腕時計ケース1の貫通孔6の内周面と第1筒部10の外周面との間を確実にかつ良好に防水することができると共に、腕時計ケース1の落下などの衝撃を第2筒部11で受け止めても、防水リング16によって衝撃による防水不良や気密不良を防ぐことができ、これによっても耐衝撃性を向上させることができる。
すなわち、この防水リング16は、第1筒部10の外周に配置されて第1筒部10の押え部13の内側面に当接し、この状態で第2筒部11の取付突起部15の内周面に沿って配置されているので、第1筒部10を腕時計ケース1の貫通孔6に取り付けた際に、防水リング16を第1筒部10の押え部13の内側面と腕時計ケース1の外面とに圧接させることができると共に、第2筒部11の取付突起部15の内周面と第1本体部12の外周面とに圧接させることができ、これにより腕時計ケース1の貫通孔6の内周面と第1筒部10の外周面との間を確実にかつ良好に防水することができる。
また、この腕時計の押釦スイッチ5では、腕時計ケース1の貫通孔6の内周面に雌ねじ6aが形成され、第1筒部10の外周面に貫通孔6の雌ねじ6aに螺合する雄ねじ12aが形成されていることにより、第1筒部10の雄ねじ12aを腕時計ケース1の貫通孔6の雌ねじ6aに螺入させて締め付けるだけで、第1筒部10を腕時計ケース1の貫通孔6に螺着させて確実にかつ強固に取り付けることができる。これにより、筒状部材7の第1筒部10の押え部13によって第2筒部11の取付突起部15を腕時計ケース1の外面に押え付けて第2筒部11を腕時計ケース1の外面に確実にかつ強固に取り付けることができる。
この場合、第1筒部10の押え部13の外側面には、腕時計ケース1の貫通孔6に対して第1本体部12を締め付けるための締付溝13aが形成されているので、第1筒部10の雄ねじ12aを腕時計ケース1の貫通孔6の雌ねじ6aに螺入させて締め付ける際に、ドライバーなどの工具を締付溝13aに係合させて押え部13を確実にかつ良好に回転させることができる。これにより、第1筒部10を確実にかつ良好に回転させて締め付けることができるので、より一層、第1筒部10を腕時計ケース1の貫通孔6に確実にかつ強固に取り付けることができる。
さらに、この腕時計の押釦スイッチ5では、釦部材8の軸部17の外周面に、第1筒部10の内周面に圧接して摺動する複数の防水リング19が設けられているので、これら複数の防水リング19によって軸部17の外周面と第1筒部10の内周面との間を確実にかつ良好に防水することができ、これによっても防水性および気密性の高いものを提供することができる。
この場合、この押釦スイッチ5は、釦部材8を腕時計ケース1の外部に向けて付勢する付勢部材であるコイルばね9を備えているので、釦部材8の軸部17の外周面に設けられた複数の防水リング19が第1筒部10の内周面に圧接して摺動する構成であっても、コイルばね9のばね力によって釦部材8を元の位置である初期位置に確実にかつ良好に戻すことができ、これにより釦部材8の操作性を向上させることができる。
また、この押釦スイッチ5では、腕時計ケース1内に突出する釦部材8の軸部17の突起部20に抜止め部材21が設けられているので、この抜止め部材21を第1筒部10の内端部に接離可能に当接させることができ、これにより釦部材8が腕時計ケース1の外部に抜け出するのを確実に阻止することができると共に、コイルばね9のばね力で釦部材8が押し出される方向に付勢されていても、釦部材8を常に初期位置に確実に位置規制することができる。
(第2実施形態)
次に、図3を参照して、この発明を腕時計に適用した第2実施形態について説明する。なお、図1および図2に示された第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
この腕時計は、図3に示すように、腕時計ケース1の外面とこれに対向する第2筒部11の端部との間に緩衝部材25を配置した構成であり、これ以外は第1実施形態とほぼ同じ構成になっている。
この場合、腕時計ケース1の外面には、図3に示すように、第2筒部11の第2本体部14の端部に対応する凹部26がリング状に設けられている。すなわち、この腕時計ケース1の凹部26は、その溝幅が第2筒部11の第2本体部14における取付突起部15を含む端部の径方向の長さ(厚み)とほぼ同じか、それよりも少し広い長さ(幅)で、かつ第2本体部14の取付突起部15を含む端部と同じ形状のリング状に形成されている。
この腕時計ケース1の凹部26内には、図3に示すように、緩衝部材25が配置されている。この緩衝部材25は、ニトリル系樹脂、ブチル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂などのゴム材、またはアクリルフォーム基材、あるいがゲル材などの緩衝性を有する材料によって、リング状に形成されている。
また、この緩衝部材25は、図3に示すように、腕時計ケース1の凹部26内に配置された際に、その露出面が腕時計ケース1の外面とほぼ同一平面上に配置されるように構成されている。これにより、緩衝部材25は、第2筒部11が第1筒部10によって腕時計ケース1の外面に向けて押し付けられた際に、第2筒部11の第2本体部14に設けられた取付突起部15を含む第2本体部14の端部が押し当てられるように構成されている。
この場合、第1筒部10の押え部13と腕時計ケース1の外面との間には、図3に示すように、環状部材である防水リング16が配置されている。このため、第2筒部11は、その第2本体部14に設けられた取付突起部15を含む第2本体部14の端部が、緩衝部材25に押し当てられた際に、緩衝部材25を適度に潰して、防水リング16を適正な圧縮状態にするように構成されている。
このような第2実施形態における腕時計の押釦スイッチ5によれば、第1実施形態と同様の作用効果があるほか、腕時計ケース1側に位置する第2筒部11の端部と、これに対面する腕時計ケース1の外面との間に緩衝部材25が配置されているので、腕時計ケース1の落下による衝撃を第2筒部11が受けた際に、その衝撃を緩衝部材25によって緩衝することができる。これにより、釦部材8を保護することができると共に、腕時計ケース1内の時計モジュール4を良好に保護することができるので、第1実施形態よりも、耐衝撃を向上させることができる。
すなわち、この第2実施形態の押釦スイッチ5では、腕時計ケース1の外面に凹部26が第2筒部11の第2本体部14の端部に対応して設けられ、この腕時計ケース1の凹部26内に緩衝部材25が配置されていることにより、第2筒部11が第1筒部10によって腕時計ケース1の外面に向けて押し付けられた際に、第2筒部11の第2本体部14に設けられた取付突起部15を含む第2本体部14の端部を押し当てることができる。
このため、第2筒部11が腕時計ケース1の落下による衝撃を受けた際に、その落下による衝撃によって第2筒部11の端部が腕時計ケース1の外面に当接することがなく、落下による衝撃を緩衝部材25によって確実にかつ良好に緩衝することができる。これにより、落下による衝撃が腕時計ケース1に伝わるのを緩和することができるので、腕時計ケース1内の時計モジュール4を良好に保護することができ、より一層、耐衝撃性の高いものを提供することができる。
なお、上述した第2実施形態では、腕時計ケース1の外面に凹部26を設け、この凹部26内に緩衝部材25を設けた場合について述べたが、これに限らず、腕時計ケース1の外面に対向する第2筒部11の端部に緩衝部材25を設けた構成であっても良い。この場合には、腕時計ケース1の外面に凹部26が設けられていることが望ましいが、必ずしも腕時計ケース1の外面に凹部26が設けられている必要はない。
また、上述した第1、第2の各実施形態では、第1筒部10の押え部13にドライバーなどの工具が係合する締付溝13aを設けた場合について述べたが、これに限らず、第1筒部10の押え部13の外周に係合突起を設け、第2筒部11の内周面に押え部13の係合突起が係合する係止溝を設けた構成であっても良い。
このように構成すれば、第1筒部10の係合突起を第2筒部11の係止溝に係合させた状態で、第2筒部11をスパナーやパイプレンチなどの工具で回転させることにより、第1筒部10の雄ねじ12aを腕時計ケース1の貫通孔6の雌ねじ6aに螺合させて締め付けることができる。このため、釦部材8を筒状部材7に取り付けた状態で、第1筒部10を締め付けることができるので、第1筒部10の締付作業が容易にできる。
また、上述した第1、第2の各実施形態では、腕時計ケース1の貫通孔6の内周面に雌ねじ6aを設け、第1筒部10の外周面に雄ねじ12aを設け、この第1筒部10の雄ねじ12aを腕時計ケース1の貫通孔6の雌ねじ6aに螺合させて、第1筒部10を腕時計ケース1の貫通孔6に固定した場合について述べたが、これに限らず、第1筒部10を腕時計ケース1の貫通孔6に圧入によって嵌め込んで嵌着させるように構成しても良く、また第1筒部10を腕時計ケース1の貫通孔6にロー付けやレーザー溶接などの溶接によって固着するように構成しても良い。
さらに、上述した第1、第2の各実施形態では、腕時計に適用した場合について述べたが、必ずしも腕時計である必要はなく、例えばトラベルウオッチ、目覚まし時計、置き時計、掛け時計などの各種の時計に適用することができる。また、必ずしも時計に限らず、携帯電話機や携帯情報端末などの各種の電子機器にも広く適用することができる。
以上、この発明のいくつかの実施形態について説明したが、この発明は、これらに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記)
請求項1に記載の発明は、貫通孔が設けられたケースと、前記ケースの前記貫通孔に取り付けられた筒状部材と、軸部および頭部を有し、前記筒状部材にスライド可能に挿入された釦部材と、を備え、前記筒状部材は、前記ケースの前記貫通孔に取り付けられて前記釦部材の前記軸部がスライド可能に挿入される第1筒部と、前記ケースの外部に配置されて前記第1筒部によって前記ケースの外面に取り付けられ、この状態で前記釦部材の前記頭部がスライド可能に配置される第2筒部と、を有していることを特徴とする押釦構造である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の押釦構造において、前記第1筒部は、前記ケースの外部に位置する外端部に押え部が形成されており、前記第2筒部は、前記ケース側に位置する内端部に前記第1筒部の前記押え部によって前記ケースの外面に押し付けられて取り付けられる取付突起部が形成されていることを特徴とする押釦構造である。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の押釦構造において、前記第1筒部の前記押え部と、前記第2筒部の前記取付突起部と、これらが対応する前記ケースの外面とで囲われる領域内には、環状部材が配置されていることを特徴とする押釦構造である。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の押釦構造において、前記ケース側に位置する前記第2筒部の端部と、これに対面する前記ケースの外面との間には、緩衝部材が配置されていることを特徴とする押釦構造である。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の押釦構造において、前記ケースの前記貫通孔の内周面には雌ねじが形成され、前記第1筒部の外周面には、前記貫通孔の前記雌ねじに螺合する雄ねじが形成されていることを特徴とする押釦構造である。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載された押釦構造を備えていることを特徴とする時計である。