JP6051894B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、トレッドパターンにピッチバリエーションを採用した空気入りタイヤに関する。
従来、トレッドパターンにピッチバリエーションを採用した空気入りタイヤが知られている(例えば、特許文献1から3参照)。特許文献1に開示された技術は、ピッチ長と、横溝の傾斜角度と、横溝の溝面積とを特定して、ウエット性能を改善した技術である。特許文献2に開示された技術は、ピッチ列のピッチ比率を特定して、ノイズ性能を改善した技術である。特許文献3に開示された技術は、ピッチ長と横溝の溝幅とを特定して、ノイズ性能を改善した技術である。
特開平11−291714号公報 特開2011−213348号公報 特開2007−168572号公報
特許文献1、3に開示された技術においては、ピッチ長の他に、横溝の傾斜角度や面積、或いは、横溝の溝幅を特定せねばならず、設計が煩雑である。また、これらの技術によっては、ウエット性能やノイズ性能は改善されるが、その他の性能、例えば、操縦安定性能、転がり抵抗性能、制動性能、耐偏摩耗性能及びユニフォミティに関する性能が改善されるか否かについては不明である。
特許文献2に開示された技術においては、ピッチ長から一義的に定まる、複数のピッチ間のピッチ比率のみが特定されている。このため、そもそもノイズ性能を改善するためのピッチバリエーションを採用したことに基づき、当該ノイズ性能は改善されるが、上記のその他の性能(操縦安定性能等)については、改善されるか否か不明である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ピッチ長以外の因子、例えば、横溝の傾斜角度、溝面積及び溝幅に改良を加えることなく、即ち、煩雑な設計によらずに、得られ、操縦安定性能、転がり抵抗性能、制動性能、耐偏摩耗性能及びユニフォミティに関する性能が改善された、空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明に係る空気入りタイヤは、タイヤトレッド部に、周方向に延在する少なくとも2本の主溝を備えるとともに、上記主溝と交差する複数本の幅方向溝を備える。上記主溝のうちタイヤ幅方向最外側の主溝のタイヤ幅方向中心線よりもタイヤ幅方向内側の領域をトレッドセンター部とするとともに、上記主溝のうちタイヤ幅方向最外側の主溝のタイヤ幅方向中心線からタイヤ幅方向外側のトレッド端部までの領域をトレッドショルダー部とする。上記トレッドセンター部では、上記タイヤ幅方向溝と、上記タイヤ幅方向溝にタイヤ周方向の一方で隣り合う陸部とからなる領域における、タイヤ周方向ピッチ長について、少なくとも3つのピッチバリエーションを有する。ピッチ数をnとした場合に、それぞれのピッチ長Pcを長いものから順にPc1、Pc2、Pc3、...、Pcnとしたときに、Pc1/Pc2≧Pc2/Pc3≧、...、≧Pcn−1/Pcnを満たす。上記トレッドショルダー部では、上記タイヤ幅方向溝と、上記タイヤ幅方向溝にタイヤ周方向の一方で隣り合う陸部とからなる領域における、タイヤ周方向ピッチ長について、少なくとも3つのピッチバリエーションを有する。ピッチ数をnとした場合に、それぞれのピッチ長Psを長いものから順にPs1、Ps2、Ps3、...、Psnとしたときに、Ps1/Ps2≧Ps2/Ps3≧、...、≧Psn−1/Psnを満たす。上記トレッドセンター部における、タイヤ周上での最大ピッチ長Pc1と最小ピッチ長Pcnとの比Pc1/Pcnが、上記トレッドショルダー部における、タイヤ周上での最大ピッチ長Ps1と最小ピッチ長Psnとの比Ps1/Psnよりも大きい。
本発明に係る空気入りタイヤでは、ピッチ長以外の因子に改良を加えずに、ピッチ長に基づくピッチ長比のみに改良を加えている。その結果、本発明に係る空気入りタイヤは、煩雑な設計によらずに得られ、しかも、操縦安定性能、転がり抵抗性能、制動性能、耐偏摩耗性能及びユニフォミティに関する性能を改善することができる。
図1は、本発明の実施の形態に係る空気入りタイヤのトレッド部を示す平面図である。 図2は、図1に示すトレッド部のトレッドセンター部TCを拡大して示す平面図である。 図3は、図1に示すトレッド部のトレッドショルダー部TS(図1における右側部)を拡大して示す平面図である。
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施の形態(以下に示す、基本形態及び付加的形態1から4)を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施の形態は、本発明を限定するものではない。また、上記実施の形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。さらに、上記実施の形態に含まれる各種形態は、当業者が自明の範囲内で任意に組み合わせることができる。
[基本形態]
以下に、本発明に係る空気入りタイヤについて、その基本形態を説明する。
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤの回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、上記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。さらに、タイヤ幅方向とは、上記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CL(タイヤ赤道線)に向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。なお、タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤの回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤのタイヤ幅の中心を通る平面である。
図1は、本発明の実施の形態に係る空気入りタイヤのトレッド部を示す平面図である。同図に示す空気入りタイヤ1は、トレッド部10を有している。トレッド部10は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。このトレッド部10の表面は、空気入りタイヤ1を装着する車両(図示せず)が走行した際に路面と接触する面であるトレッド表面12として形成されている。
トレッド表面12には、図1に示すように、タイヤ周方向に延在する溝14、16、18と、タイヤ周方向に対して傾斜するタイヤ幅方向溝20、22、24と、サイプ26とがそれぞれ設けられ、同図に示すトレッドパターンが形成されている。溝18から24及びサイプ26の具体的構成は、以下のとおりである。なお、以下の溝18から24及びサイプ26に関する記載は、タイヤ赤道面CLの一方側についての記載であるが、図1に示す例はその他方側についても同じ構成である。
即ち、トレッド表面12には、タイヤ周方向に延在する周方向主溝14(タイヤ幅方向内側の周方向主溝14a、タイヤ幅方向外側の周方向主溝14b)が設けられている。周方向主溝14bの、タイヤ幅方向外側には、周方向主溝14a、14bよりも幅狭の周方向副溝16が設けられている。周方向副溝16のさらにタイヤ幅方向外側には、タイヤ周方向で断続的に延在し、周方向副溝16と同様に幅狭の断続溝18(タイヤ幅方向内側の断続溝18a、タイヤ幅方向外側の断続溝18b)が設けられている。
また、トレッド表面12には、周方向主溝14a、14bのタイヤ幅方向の少なくとも一方側から延在してこれら周方向主溝14a、14bと隣接する陸部内で終端し、タイヤ周方向に対して傾斜する、複数の分岐溝20が設けられている。周方向副溝16と断続溝18bとを連通し、略タイヤ幅方向に延在する、幅方向主溝22が設けられている。断続溝18bからタイヤ幅方向内側に延在して陸部内で終端し、幅方向主溝22よりも幅狭の幅方向副溝24が、タイヤ周方向で幅方向主溝22と交互に設けられている。
さらに、周方向主溝14a、14a間では、分岐溝20同士を連通させるサイプ26aと、周方向主溝14aからタイヤ幅方向内側に延在して陸部内で終端するサイプ26bとが、タイヤ周方向で交互に設けられている。周方向主溝14a、14b間では、周方向主溝14aと連通する分岐溝20のタイヤ幅方向外側端部からこの分岐溝20と同一方向に延在するサイプ26cと、周方向主溝14aからサイプ26cと同一方向に延在するサイプ26dと、周方向主溝14bと連通する分岐溝20のタイヤ幅方向内側端部からこの分岐溝20と同一方向に延在するサイプ26eとが、タイヤ周方向で規則的に設けられている。周方向主溝14bのタイヤ幅方向外側では、周方向主溝14bから幅方向主溝22まで延在するサイプ26fと、周方向主溝14bから幅方向副溝24まで延在するサイプ26gとが、タイヤ周方向において交互に設けられている。
このような前提の下、図1に示す例においては、タイヤ赤道面CLの両側で、タイヤ幅方向最外側の周方向主溝14bのタイヤ幅方向中心線よりもタイヤ幅方向内側の領域を、トレッドセンター部TCとする。また、タイヤ幅方向最外側の周方向主溝14bのタイヤ幅方向中心線からタイヤ幅方向外側のトレッド端部までの領域を、トレッドショルダー部TSとする。
そして、本実施の形態においては、トレッドセンター部TCでは、分岐溝20と、分岐溝20にタイヤ周方向の一方で隣り合う陸部とからなる領域における、タイヤ周方向ピッチ長について、少なくとも3つのピッチバリエーションを有する。
図2は、図1に示すトレッド部のトレッドセンター部TCを拡大して示す平面図である。なお、図2に示す各溝の配列態様(特にタイヤ周方向長さ比)は、図1においては正確には反映されておらず、トレッドセンター部TCにおける各溝の配列態様については、図2に従うものとする。図2に示す例において、トレッドセンター部TCにおけるタイヤ周方向ピッチ長とは、分岐溝20a(20a1、20a2、....)のいずれか、例えば分岐溝20a1に着目した場合に、分岐溝20a1のタイヤ幅方向最内端におけるそのタイヤ周方向中点から、当該分岐溝20a1とタイヤ周方向において隣り合う同一形状の分岐溝20a2のタイヤ幅方向最内端におけるそのタイヤ周方向中点までの、タイヤ周方向寸法をいう。
ここで、タイヤ周方向ピッチ長を特定する上で基準とする分岐溝20は、図2に示す分岐溝20aに限らず、同図に示す他の分岐溝20b、20c、20d、20e、20f、20g、20hのいずれでもよい。
図2に示す例においては、トレッドセンター部TCにおいて、少なくとも3つのピッチバリエーションを有する。例えば、基準となる分岐溝を分岐溝20h(分岐溝20h1、分岐溝20h2、分岐溝20h3)とした場合に、ピッチPc(基準:分岐溝20h1)、ピッチPc´(基準:分岐溝20h2)、ピッチPc´´(基準:分岐溝20h3)の3つのピッチを有する。
また、本実施の形態においては、ピッチ数をnとした場合に、それぞれのピッチ長Pcを長いものから順にPc1、Pc2、Pc3、...、Pcnとしたときに、Pc1/Pc2≧Pc2/Pc3≧、...、≧Pcn−1/Pcnを満たす(第1要件)。図2に示す例では、ピッチPc、ピッチPc´、ピッチPc´´の順に長いので、上記PcがピッチPc1に、上記Pc´がピッチPc2に、上記Pc´´がピッチPc3にそれぞれ相当し、Pc/Pc´≧Pc´/Pc´´の関係が成立する。
また、本実施の形態においては、トレッドショルダー部TSでは、幅方向主溝22と、幅方向主溝22にタイヤ周方向の一方で隣り合う陸部とからなる領域における、タイヤ周方向ピッチ長について、少なくとも3つのピッチバリエーションを有する。
図3は、図1に示すトレッド部のトレッドショルダー部TS(同図における右側部)を拡大して示す平面図である。なお、図3に示す各溝の配列態様(特にタイヤ周方向長さ比)は、図1においては正確には反映されておらず、トレッドショルダー部TSにおける各溝の配列態様については、図3に従うものとする。図3に示す例において、トレッドショルダー部TSにおけるタイヤ周方向ピッチ長とは、幅方向主溝22(22a、22b、22c、22d)のいずれか、例えば幅方向主溝22aに着目した場合に、幅方向主溝22aのタイヤ幅方向最外端におけるそのタイヤ周方向中点から、当該幅方向主溝22aとタイヤ周方向において隣り合う同一形状の幅方向主溝22bのタイヤ幅方向最外端におけるそのタイヤ周方向中点までの、タイヤ周方向寸法をいう。
ここで、タイヤ周方向ピッチ長を特定する上で基準とする溝は、図3に示す幅方向主溝22に限らず、同図に示す幅方向副溝24(24a、24b、24c)であってもよい。
図3に示す例においては、トレッドショルダー部TSにおいて、少なくとも3つのピッチバリエーションを有する。例えば、基準となる溝を幅方向主溝22(幅方向主溝22a、22b、22c)とした場合に、ピッチPs(基準:幅方向主溝22a)、ピッチPs(基準:幅方向主溝22b)´、ピッチPs´´(基準:幅方向主溝22c)の3つのピッチを有する。
そして、本実施の形態においては、ピッチ数をnとした場合に、それぞれのピッチ長Psを長いものから順にPs1、Ps2、Ps3、...、Psnとしたときに、Ps1/Ps2≧Ps2/Ps3≧、...、≧Psn−1/Psn関係を満たす(第2要件)。図3に示す例では、ピッチPs、ピッチPs´、ピッチPs´´の順に長いので、上記PsがピッチPs1に、上記Ps´がピッチPs2に、上記Ps´´がピッチPs3にそれぞれ相当し、Ps/Ps´≧Ps´/Ps´´の関係が成立する。
さらに、本実施の形態においては、トレッドセンター部TCにおける、タイヤ周上での最大ピッチ長Pc1と最小ピッチ長Pcnとの比Pc1/Pcnが、トレッドショルダー部TSにおける、タイヤ周上での最大ピッチ長Ps1と最小ピッチ長Psnとの比Ps1/Psnよりも大きくなっている(第3要件)。図1から図3に示す例においては、Pc/Pc´´>Ps/Ps´´の関係が成立する。
上述のとおり、図1に示す空気入りタイヤ1では、トレッドセンター部TC及びトレッドショルダー部TSのいずれにおいても、複数の周方向ピッチ長が規定され、これに基づいて、これらのピッチ長のうち、値の近いもの同士の商(除算による結果)を複数算出し、これらの商の大小関係が規定されている。また、図1に示す空気入りタイヤ1では、トレッドセンター部TCにおける、タイヤ周上での最大ピッチ長・最小ピッチ長の比と、トレッドショルダー部TSにおける、タイヤ周上での最大ピッチ長・最小ピッチ長の比との関係が規定されている。
具体的には、上記第1要件及び上記第2要件により、トレッドセンター部TC及びトレッドショルダー部TSのいずれにおいても、最小ピッチ長を長くするとともに最大ピッチ長を短くして剛性を高め、さらにタイヤ周方向全体としてピッチ長差を抑えて剛性差を小さくしている。その結果、操縦安定性能、転がり抵抗性能及び制動性能を改善することができる。
また、ピッチ長比が大きい場合に偏摩耗が起こり易いところ、上記第3要件により、トレッドセンター部TCと比較して偏摩耗が起こり易いトレッドショルダー部TSにおいて、ピッチ長比を小さくしている。その結果、偏摩耗を効率的に抑制し、ひいてはユニフォミティに関する性能についても改善することができる。
さらに、図1に示す空気入りタイヤ1では、ピッチ長以外の因子に改良は加えられておらず、ピッチ長に基づくピッチ長比のみに改良が加えられている。即ち、図1に示す空気入りタイヤ1は、ピッチバリエーションを採用する従来技術(例えば、特許文献1、3)のように、ピッチ長以外に、横溝の傾斜角度や面積、或いは、横溝の溝幅を特定して得られるものではない。このため、図1に示す空気入りタイヤは、煩雑な設計によらずに得ることができる。
以上により、本実施の形態に係る空気入りタイヤは、トレッドセンター部及びトレッドショルダー部における複数の周方向ピッチ長を制御するだけで、煩雑な設計によらずに、操縦安定性能、転がり抵抗性能、制動性能、耐偏摩耗性能及びユニフォミティに関する性能を改善することができる。
なお、以上に示す、本実施形態の空気入りタイヤは、図示しないが、従来の空気入りタイヤと同様の子午断面形状を有する。ここで、空気入りタイヤの子午断面形状とは、タイヤ赤道面と垂直な平面上に現れる空気入りタイヤの断面形状をいう。本実施の形態の空気入りタイヤは、タイヤ子午断面視で、タイヤ径方向内側から外側に向かって、ビード部、サイドウォール部及びトレッド部を有する。そして、空気入りタイヤは、例えば、タイヤ子午断面視で、トレッド部から両側のビード部まで延在して一対のビードコアの周りで巻回されたカーカス層と、上記カーカス層のタイヤ径方向外側に順次形成された、ベルト層及びベルト補強層とを備える。
また、本実施の形態の空気入りタイヤは、通常の各製造工程、即ち、タイヤ材料の混合工程、タイヤ材料の加工工程、グリーンタイヤの成型工程、加硫工程及び加硫後の検査工程等を経て得られるものである。本実施の形態の空気入りタイヤを製造する場合には、特に、加硫用金型の内壁に、所望のピッチバリエーションに対応する凹部及び凸部を形成し、この金型を用いて加硫を行う。
[付加的形態]
次に、本発明に係る空気入りタイヤの上記基本形態に対して、任意選択的に実施可能な、付加的形態1から4を説明する。
(付加的形態1)
付加的形態1は、基本形態に対して、トレッドセンター部TCに改良を加えた形態である。即ち、基本形態においては、トレッドセンター部TCにおいて、タイヤ周上でのピッチ長Pc1のピッチ数が、タイヤ周上でのPcnのピッチ数よりも少なくなっていること(付加的形態1)が好ましい。これにより、トレッドセンター部TCとトレッドショルダー部TSとの間において、ピッチ長の最も小さい部分、換言すれば、最も剛性の小さい部分を調整するに際して、その調整箇所をトレッドセンター部TCに多く含ませることができ、タイヤ周上での剛性差が小さくなる。その結果、特に、乾燥路面での操縦安定性や転がり抵抗性能が大幅に改善される。
(付加的形態2)
付加的形態2は、基本形態(及び基本形態に付加的形態1を加えた形態)に対して、トレッドショルダー部TSに改良を加えた形態である。即ち、基本形態等においては、トレッドショルダー部TSにおいて、タイヤ周上でのピッチ長Ps1のピッチ数が、タイヤ周上でのPsnのピッチ数よりも少なくなっていること(付加的形態2)が好ましい。これにより、トレッドセンター部TCとトレッドショルダー部TSとの間において、ピッチ長の最も小さい部分、換言すれば、最も剛性の小さい部分を調整するに際して、その調整箇所をトレッドショルダー部TSに多く含ませることができ、タイヤ周上での剛性差が小さくなる。その結果、特に、乾燥路面での操縦安定性や転がり抵抗性能が大幅に改善される。
(付加的形態3)
付加的形態3は、基本形態(及び基本形態に付加的形態1、2の少なくともいずれかを加えた形態)に対して、さらに、トレッドセンター部TCとトレッドショルダー部TSとの少なくともいずれかに改良を加えた形態である。即ち、基本形態等においては、ピッチ数がnである場合に、トレッドセンター部TCにおけるピッチ長比Pck−1/Pck(kは2からnまでの自然数のうちの少なくともいずれかであり、以下、「センター部隣接ピッチ長比」と称する場合がある)と、トレッドショルダー部TSにおけるピッチ長比Psk−1/Psk(kは2からnまでの自然数のうちの少なくともいずれかであり、以下、「ショルダー部隣接ピッチ長比」と称する場合がある)との少なくとも一方が、1.05から1.20の範囲にあること(付加的形態3)が好ましい。
センター部隣接ピッチ長比とショルダー部隣接ピッチ長比との少なくともいずれかを、1.05以上とすることで、この値が適用された部分TC、TSにおいては、寸法の近いピッチ長間の寸法をある程度異ならせることができる。これにより、当該部分TC、TSにおいて発生する音の周波数を分散させ、同じ周波数帯の音の増幅作用を抑制することができる。その結果、トレッドセンター部TC及びトレッドショルダー部TSの少なくともいずれかにおいて、ノイズ自体を小さくすることができ、ノイズ性能を改善することができる。
また、センター部隣接ピッチ長比とショルダー部隣接ピッチ長比との少なくともいずれかを、1.20以下とすることで、この値が適用された部分TC、TSにおいては、寸法の近いピッチ長間の寸法が必要以上に異なることがない。これにより、当該部分TC、TSにおいて剛性が局所的に小さくなることを抑制することができる。その結果、トレッドセンター部TC及びトレッドショルダー部TSの少なくともいずれかにおいて、乾燥路面での操縦安定性能や転がり抵抗性能を改善することができる。
(付加的形態4)
付加的形態4は、基本形態(及び基本形態に付加的形態1から3の少なくともいずれかを加えた形態)に対して、トレッドセンター部TCとトレッドショルダー部TSとの少なくともいずれかに改良を加えた形態である。即ち、基本形態等においては、トレッドセンター部TCにおける、タイヤ周上での最大ピッチ長Pc1と最小ピッチ長Pcnとの比Pc1/Pcn(以下、「センター部最大最小ピッチ長比」と称する場合がある)と、トレッドショルダー部TSにおける、タイヤ周上での最大ピッチ長Ps1と最小ピッチ長Psnとの比Ps1/Psn(以下、「ショルダー部最大最小ピッチ長比」と称する場合がある)との少なくとも一方が、1.20から2.00の範囲にあること(付加的形態4)が好ましい。
センター部最大最小ピッチ長比とショルダー部最大最小ピッチ長比との少なくともいずれかを、1.20以上とすることで、この値が適用された部分TC、TSにおいては、複数のピッチ長間にばらつきを持たせることができる。これにより、当該部分TC、TSにおいて発生する音の周波数を分散させ、同じ周波数帯の音の増幅を抑制することができる。その結果、トレッドセンター部TC及びトレッドショルダー部TSの少なくともいずれかにおいて、ノイズ自体を小さくすることができ、ノイズ性能を改善することができる。
また、センター部最大最小ピッチ長比とショルダー部最大最小ピッチ長比との少なくともいずれかを、2.00以下とすることで、この値が適用された部分TC、TSにおいては、複数のピッチ長間のばらつきが必要以上に大きくなることはない。これにより、当該部分TC、TSにおいて剛性が局所的に小さくなることを抑制することができる。その結果、トレッドセンター部TC及びトレッドショルダー部TSの少なくともいずれかにおいて、乾燥路面での操縦安定性能や転がり抵抗性能を改善することができる。
タイヤサイズを215/45R17 87Wとし、図1から図3に示すトレッドパターンを有し、ピッチ数が5であって、センター部ピッチ長比(ピッチ比Ce)、ショルダー部ピッチ長比(ピッチ比Sh)、センター部における最大ピッチ長数と最小ピッチ長数との関係(最大最小ピッチ長数関係Ce)及びショルダー部における最大ピッチ長数と最小ピッチ長数との関係(最大最小ピッチ長数関係Sh)が表1に示す値の、従来例及び実施例1から8の空気入りタイヤをそれぞれ作製した。
このよう作製した、各タイヤを17x7Jのリムに空気圧230kPaで組み付け、排気量1800CCのセダン型車両(フロントエンジン・フロントドライブ方式)に装着し、(乾燥路面での)操縦安定性能、転がり抵抗性能、制動性能、耐偏摩耗性能及びユニフォミティに関する性能、並びにノイズ性能を評価した。これらの結果を表1に併記する。
(操縦安定性能)
乾燥路面を時速120kmで走行した際の、パネラーによる官能性評価を実施した。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。この評価は、指数が大きいほど、操縦安定性能が高いことを示す。
(転がり抵抗性能)
ISOの規定に準拠して、転がり抵抗の値を測定した。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。この評価は、指数が大きいほど、転がり抵抗性能が高いことを示す。
(制動性能)
上記車両が時速100kmから静止するまでの距離を測定した。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。この評価は、指数が大きいほど、制動性能が高いことを示す。
(耐偏摩耗性能)
上記車両を10000km走行させた後のヒールアンドトー摩耗を測定した。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。この評価は、指数が大きいほど、耐偏摩耗性能が高いことを示す。
(ユニフォミティに関する性能)
ユニフォミティ試験機を用いて、各空気入りタイヤのRFV(Radial Force Variation:荷重変動のうち、上下力の変動)を測定した。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。この評価は、指数が大きいほど、ユニフォミティに関する性能が高いことを示す。
(ノイズ性能)
平滑路面において、時速100kmで走行した際のオーバーオール値を計測して従来例を基準(100)とした指数評価を行った。この評価は、指数が大きいほど、ノイズ性能が優れていることを示す。
Figure 0006051894
表1によれば、本発明の技術的範囲に属する(ピッチ比Ce及びピッチ比Shが所定範囲内である)実施例1から実施例8の空気入りタイヤについては、いずれも、本発明の技術的範囲に属しない、従来例の空気入りタイヤよりも、操縦安定性能、転がり抵抗性能、制動性能、耐偏摩耗性能及びユニフォミティに関する性能が高いことが判る。
本発明は以下の態様を包含する。
(1)タイヤトレッド部に、周方向に延在する少なくとも2本の主溝を備えるとともに、上記主溝と交差する複数本の幅方向溝を備え、上記主溝のうちタイヤ幅方向最外側の主溝のタイヤ幅方向中心線よりもタイヤ幅方向内側の領域をトレッドセンター部とするとともに、上記主溝のうちタイヤ幅方向最外側の主溝のタイヤ幅方向中心線からタイヤ幅方向外側のトレッド端部までの領域をトレッドショルダー部とした場合に、上記トレッドセンター部では、上記タイヤ幅方向溝と、上記タイヤ幅方向溝にタイヤ周方向の一方で隣り合う陸部とからなる領域における、タイヤ周方向ピッチ長について、少なくとも3つのピッチバリエーションを有し、ピッチ数をnとした場合に、それぞれのピッチ長Pcを長いものから順にPc1、Pc2、Pc3、...、Pcnとしたときに、Pc1/Pc2≧Pc2/Pc3≧、...、≧Pcn−1/Pcnを満たし、上記トレッドショルダー部では、上記タイヤ幅方向溝と、上記タイヤ幅方向溝にタイヤ周方向の一方で隣り合う陸部とからなる領域における、タイヤ周方向ピッチ長について、少なくとも3つのピッチバリエーションを有し、ピッチ数をnとした場合に、それぞれのピッチ長Psを長いものから順にPs1、Ps2、Ps3、...、Psnとしたときに、Ps1/Ps2≧Ps2/Ps3≧、...、≧Psn−1/Psnを満たし、上記トレッドセンター部における、タイヤ周上での最大ピッチ長Pc1と最小ピッチ長Pcnとの比Pc1/Pcnが、上記トレッドショルダー部における、タイヤ周上での最大ピッチ長Ps1と最小ピッチ長Psnとの比Ps1/Psnよりも大きい空気入りタイヤ。
(2)上記トレッドセンター部において、タイヤ周上でのピッチ長Pc1のピッチ数が、タイヤ周上でのPcnのピッチ数よりも少ない、上記(1)に記載の空気入りタイヤ。
(3)上記トレッドショルダー部において、タイヤ周上でのピッチ長Ps1のピッチ数が、タイヤ周上でのPsnのピッチ数よりも少ない、上記(1)又は(2)に記載の空気入りタイヤ。
(4)ピッチ数がnである場合に、上記トレッドセンター部におけるピッチ長比Pck−1/Pck(kは2からnまでの自然数のうちの少なくともいずれか)と、上記トレッドショルダー部におけるピッチ長比Psk−1/Psk(kは2からnまでの自然数のうちの少なくともいずれか)との少なくとも一方が、1.05から1.20の範囲である、上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
(5)上記トレッドセンター部における、タイヤ周上での最大ピッチ長Pc1と最小ピッチ長Pcnとの比Pc1/Pcnと、上記トレッドショルダー部における、タイヤ周上での最大ピッチ長Ps1と最小ピッチ長Psnとの比Ps1/Psnとの少なくとも一方が、1.20から2.00の範囲である、上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
1 空気入りタイヤ
10 トレッド部
12 トレッド表面
14 周方向主溝
16 周方向副溝
18 断続溝
20 分岐溝
22 幅方向主溝
24 幅方向副溝
26 サイプ
CL タイヤ赤道面
TC トレッドセンター部
TS トレッドショルダー部

Claims (5)

  1. タイヤトレッド部に、周方向に延在する少なくとも2本の主溝を備えるとともに、前記主溝と交差する複数本の幅方向溝を備え、
    前記主溝のうちタイヤ幅方向最外側の主溝のタイヤ幅方向中心線よりもタイヤ幅方向内側の領域をトレッドセンター部とするとともに、前記主溝のうちタイヤ幅方向最外側の主溝のタイヤ幅方向中心線からタイヤ幅方向外側のトレッド端部までの領域をトレッドショルダー部とした場合に、
    前記トレッドセンター部では、前記タイヤ幅方向溝と、前記タイヤ幅方向溝にタイヤ周方向の一方で隣り合う陸部とからなる領域における、タイヤ周方向ピッチ長について、少なくとも3つのピッチバリエーションを有し、ピッチ数をnとした場合に、それぞれのピッチ長Pcを長いものから順にPc1、Pc2、Pc3、...、Pcnとしたときに、Pc1/Pc2≧Pc2/Pc3≧、...、≧Pcn−1/Pcnを満たし、
    前記トレッドショルダー部では、前記タイヤ幅方向溝と、前記タイヤ幅方向溝にタイヤ周方向の一方で隣り合う陸部とからなる領域における、タイヤ周方向ピッチ長について、少なくとも3つのピッチバリエーションを有し、ピッチ数をnとした場合に、それぞれのピッチ長Psを長いものから順にPs1、Ps2、Ps3、...、Psnとしたときに、Ps1/Ps2≧Ps2/Ps3≧、...、≧Psn−1/Psnを満たし、
    前記トレッドセンター部における、タイヤ周上での最大ピッチ長Pc1と最小ピッチ長Pcnとの比Pc1/Pcnが、前記トレッドショルダー部における、タイヤ周上での最大ピッチ長Ps1と最小ピッチ長Psnとの比Ps1/Psnよりも大きい
    空気入りタイヤ。
  2. 前記トレッドセンター部において、タイヤ周上でのピッチ長Pc1のピッチ数が、タイヤ周上でのPcnのピッチ数よりも少ない、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記トレッドショルダー部において、タイヤ周上でのピッチ長Ps1のピッチ数が、タイヤ周上でのPsnのピッチ数よりも少ない、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. ピッチ数がnである場合に、前記トレッドセンター部におけるピッチ長比Pck−1/Pck(kは2からnまでの自然数のうちの少なくともいずれか)と、前記トレッドショルダー部におけるピッチ長比Psk−1/Psk(kは2からnまでの自然数のうちの少なくともいずれか)との少なくとも一方が、1.05から1.20の範囲である、請求項1から3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記トレッドセンター部における、タイヤ周上での最大ピッチ長Pc1と最小ピッチ長Pcnとの比Pc1/Pcnと、前記トレッドショルダー部における、タイヤ周上での最大ピッチ長Ps1と最小ピッチ長Psnとの比Ps1/Psnとの少なくとも一方が、1.20から2.00の範囲である、請求項1から4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
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