以下に添付図面を参照して、この発明にかかる製造方法および製造支援装置の実施の形態を詳細に説明する。
(実施の形態)
図1−1は、実施の形態にかかる光学デバイスの構成例を示す図である。図1−1に示すように、実施の形態にかかる光学デバイス100は、光源部110と、液晶デバイス120と、制御回路130と、を備えている。ただし、光源部110や制御回路130は光学デバイス100の外部に設けられていてもよい。
光源部110は、所定波長のレーザ光を所定の偏光状態で出射する。レーザ光は、たとえば、複数の原色の光を空間的または時間的に含む直線偏光のレーザ光である。光源部110は、具体的には、RGBレーザ光源111と、偏波保持ファイバ112と、を含んでいる。RGBレーザ光源111は、複数の原色(赤、緑および青)の光を含み、直線偏光のレーザ光を出射する。光源部110は、たとえば、各色の光源を時分割で発光させるフィールドシーケンシャル方式の光源部である。
偏波保持ファイバ112は、RGBレーザ光源111から出射されたレーザ光の偏光状態(直線偏光)を保持して液晶デバイス120へ出射するPMF(Polarization Maintaining Fiber)である。偏光方向101は、偏波保持ファイバ112から液晶デバイス120へ出射されるレーザ光の偏光方向(たとえば0°)を示している。
液晶デバイス120は、第二の波長板である波長板121と、液晶セル123と、波長板125と、を含んでいる。波長板121,125は、たとえば同一構成の1/4波長板である。たとえば、波長板121,125は液晶セルによって作成することができる。波長板121は、偏波保持ファイバ112から出射されたレーザ光を通過させる。スロー軸方向122は、波長板121のスロー軸(遅相軸)の方向を示している。スロー軸は、複屈折の屈折率が最も高い軸である。
スロー軸方向122に示すように、波長板121のスロー軸は、偏波保持ファイバ112から出射されるレーザ光の所定方向の偏光方向101に対して約0°の角度に設定されている。したがって、波長板121は、通過するレーザ光の偏光状態を変化させずに液晶セル123へ出射する。
液晶セル123は、波長板121から出射されたレーザ光を通過させる。また、液晶セル123は、通過させるレーザ光の偏光方向を、切り替え可能な回転量により回転させる。ダイレクタ方向124は、液晶セル123における液晶分子のダイレクタの方向を示している。ダイレクタ方向124に示すように、波長板121のスロー軸方向122に対する液晶セル123のダイレクタの角度は、液晶セル123の基板面と平行な方向に、約67.5°と約112.5°に切り替え可能である。
液晶セル123のダイレクタ方向124をスロー軸方向122に対して67.5°に切り替えた場合は、液晶セル123から出射されるレーザ光の偏光状態は67.5×2=135°回転する。液晶セル123のダイレクタ方向124をスロー軸方向122に対して112.5°に切り替えた場合は、液晶セル123から出射されるレーザ光の偏光状態は112.5°×2=225°回転する。
波長板125は、液晶セル123から出射されたレーザ光を通過させる。スロー軸方向126は、波長板125のスロー軸(遅相軸)の方向を示している。スロー軸方向126に示すように、波長板125のスロー軸は、偏波保持ファイバ112から出射されるレーザ光の偏光方向101に対して約0°の角度に設定されている。波長板125を通過したレーザ光は光学デバイス100の後段へ出射される。
偏光状態102,103は、波長板125から出射されるレーザ光の偏光方向を示している。液晶セル123のダイレクタ方向124をスロー軸方向122に対して67.5°に切り替えた場合は、偏光状態102に示すように、波長板125から出射されるレーザ光は左回りの円偏光になる。液晶セル123のダイレクタ方向124をスロー軸方向122に対して112.5°に切り替えた場合は、偏光状態103に示すように、波長板125から出射されるレーザ光は右回りの円偏光になる。
制御回路130は、波長板121のスロー軸方向122に対する液晶セル123のダイレクタ方向124の角度を、67.5°と112.5°とに周期的に切り替える。たとえば、制御回路130は、液晶セル123の電極に印加される電圧を制御することによって液晶セル123のダイレクタ方向124を切り替える。
図1−1に示したように、液晶デバイス120は、偏波保持ファイバ112から出射されたレーザ光の偏光状態を円偏光にする1/4波長板として動作する。また、液晶セル123のダイレクタ方向124を切り替えることで、液晶デバイス120から出射されるレーザ光の偏光状態が左回りの円偏光と右回りの円偏光に交互に切り替わる。
また、液晶セル123を波長板121と波長板125で挟む構成とすることで、液晶デバイス120へ入射するレーザ光の偏光状態に依存せずに、液晶デバイス120から出射されるレーザ光に対して1/4波長板として動作させることができる。
図1−2は、光学デバイスの変形例1を示す図である。図1−2において、図1−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。液晶デバイス120へ入射されるレーザ光の偏光状態をスロー軸方向126に対して0°または90°に限定できる場合は、図1−2に示すように、液晶デバイス120の波長板121を省いた構成としてもよい。この場合も図1−1に示した光学デバイス100と同等の効果を得ることができるとともに、部品点数を減らすことができる。
図1−3は、光学デバイスの変形例2を示す図である。図1−3において、図1−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図1−3に示すように、液晶セル123のダイレクタ方向124は、スロー軸方向122に対して45°と0°にも切り替え可能であってもよい。
この場合は、液晶デバイス120は1/2波長板として動作する。具体的には、波長板121は、スロー軸方向122とレーザ光の偏光方向101とが一致しているため、入射されたレーザ光の偏光状態を変化させない。液晶セル123のダイレクタ方向124がスロー軸方向122に対して45°の場合は、レーザ光の偏光方向101に対してダイレクタ方向124が+45°傾いているため、波長板121から出射されたレーザ光の偏光方向を45×2=90°回転させる。波長板125は、液晶セル123からのレーザ光の偏光方向に対してスロー軸方向126が+90°傾いているため、液晶セル123から出射されたレーザ光の偏光状態を変化させない。
また、液晶セル123は、レーザ光の偏光方向101に対してダイレクタ方向124が0°となる場合、波長板121から出射されたレーザ光の偏光方向を変化させない。波長板125は、液晶セル123からのレーザ光の偏光方向に対してスロー軸方向126が0°となっているため、液晶セル123から出射されたレーザ光の偏光状態を変化させない。
偏光状態104は、液晶セル123のダイレクタ方向124がスロー軸方向122に対して45°である場合に液晶デバイス120から出射されるレーザ光の偏光方向を示している。また、偏光状態105は、液晶セル123のダイレクタ方向124がスロー軸方向122に対して0°である場合に液晶デバイス120から出射されるレーザ光の偏光方向を示している。偏光状態104,105に示すように、ダイレクタ方向124をスロー軸方向122に対して0°と45°とに切り替えることで液晶デバイス120から出射されるレーザ光の偏光状態を偏光方向101に対して、0°および90°の直線偏光へと切り替えることができる。
図1−4は、光学デバイスの変形例3を示す図である。図1−4において、図1−3に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図1−4に示すように、液晶デバイス120へ入射されるレーザ光の偏光状態をスロー軸方向122に対して45°の直線偏光とした場合について説明する。
この場合は、波長板121は、レーザ光の偏光方向101に対してスロー軸方向122が−45°傾いているため、入射されたレーザ光の偏光状態を右回りの円偏光に変換する。液晶セル123は、位相をπ変化させるため、波長板121から出射されたレーザ光の偏光方向を左回りの円偏光に変換する。波長板125は、スロー軸方向126が0°であるため、液晶セル123から出射されたレーザ光の偏光状態を、液晶デバイス120へ入射されたレーザ光に対して0°の直線偏光に変換して通過させる。
図1−5は、光学デバイスの変形例4を示す図である。図1−5において、図1−3に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図1−5に示すように、液晶デバイス120へ入射されるレーザ光の偏光状態をスロー軸方向122に対して30°の直線偏光とした場合について説明する。
この場合は、波長板121は、レーザ光の偏光方向101に対してスロー軸方向122が−30°傾いているため、入射されたレーザ光の偏光状態を右回りの楕円偏光(スロー軸方向122の方向に長い)に変換する。液晶セル123は、位相をπ変化させるため、波長板121から出射されたレーザ光の偏光方向を左回りの楕円偏光(スロー軸方向122の垂直方向に長い)に変換する。
波長板125は、レーザ光の楕円偏光の方向に対してスロー軸方向126が垂直であるため、x軸,y軸方向の位相ずれπ/4をキャンセルする。このため、波長板125は、液晶セル123から出射されたレーザ光の偏光状態を、スロー軸方向122に対して60°の直線偏光に変換して通過させる。
図1−6は、光学デバイスの変形例5を示す図である。図1−6において、図1−3に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図1−6に示すように、液晶デバイス120へ入射されるレーザ光の偏光状態をスロー軸方向122に対して60°の直線偏光とした場合について説明する。
この場合は、波長板121は、レーザ光の偏光方向101に対してスロー軸方向122が−60°傾いているため、入射されたレーザ光の偏光状態を右回りの楕円偏光(スロー軸方向122の垂直方向に長い)に変換する。液晶セル123は、位相をπ変化させるため、波長板121から出射されたレーザ光の偏光方向を左回りの楕円偏光(スロー軸方向122の方向に長い)に変換する。
波長板125は、レーザ光の楕円偏光の方向に対してスロー軸方向126が垂直であるため、x軸,y軸方向の位相ずれπ/4をキャンセルする。このため、波長板125は、液晶セル123から出射されたレーザ光の偏光状態を、スロー軸方向122に対して30°の直線偏光に変換して通過させる。
(液晶デバイスの波長分散特性)
つぎに、液晶デバイス120の波長分散特性について説明する。一般的な波長板によるレーザ光の偏光状態に対する作用は、ジョーンズマトリクスとして、たとえば下記(1)式のように示すことができる。Γeは波長板のリタデーション(位相差)を示している。Ψeは波長板のアジマス角を示している。(Vx,Vy)は入射偏光を示している。
液晶デバイス120において、波長板121,125のリタデーション(位相差)をγ1(=π/2)とする。また、液晶セル123のリタデーションをγ2(=π)とする。液晶セル123のアジマス角Ψは、波長板121,125のスロー軸の方向に対する液晶セル123のダイレクタの方向(スロー軸の方向)の角度となる。
波長板121,125および液晶セル123によって構成される液晶デバイス120のジョーンズマトリクスはたとえば下記(2)式によって示すことができる。なお、下記(2)式において「×」は行列の積を示している。
液晶デバイス120による作用を1枚の一般的な波長板による作用としてみなすと、上記(1)式に示したジョーンズマトリクスと上記(2)式に示したジョーンズマトリクスとの間に等式が成り立つ。この等式により、液晶デバイス120のリタデーションΓeは、たとえば下記(3)式によって示すことができる。また、液晶デバイス120のレーザ光の入射偏光に対するアジマス角Ψeは、たとえば下記(4)式によって示すことができる。
ここで、リタデーションγ1,γ2は波長分散特性を有する。2×γ1=γ2とすると、下記(5)式を満たす場合は、液晶デバイス120を通過したレーザ光のリタデーションΓeは、リタデーションγ1,γ2の影響を受けない。
波長板121,125は1/4波長板であるため、リタデーションγ1=π/2となる。また、液晶セル123が1/2波長板として動作する場合は、液晶セル123のリタデーションγ2はπとなる。この場合は、上記(3)式および(4)式は下記(6)式および(7)式のようになる。
上記(7)式のように、波長板としての液晶デバイス120のアジマス角Ψeは、波長板121,125のスロー軸と液晶セル123のスロー軸とのアジマス角Ψに関わらずπ/4となる。
図2−1は、液晶デバイスのリタデーションの特性の一例を示す図である。図2−1において、横軸は、波長板121,125のスロー軸と液晶セル123のスロー軸とのアジマス角Ψを示している。縦軸は、液晶デバイス120のリタデーションΓeを示している。リタデーション特性210は、アジマス角Ψに対するリタデーションΓeの特性を示している。上記(6)式およびリタデーション特性210に示すように、液晶デバイス120のリタデーションΓeは、波長板121,125のスロー軸と液晶セル123のスロー軸とのアジマス角Ψに応じて0〜2πに変化する。
また、アジマス角Ψがπ/4の場合はリタデーションΓe=πとなり、液晶デバイス120は、入射偏光に対してスロー軸が45°に調整された1/2波長板として動作する。また、アジマス角Ψが3π/8の場合はリタデーションΓe=π/2となり、液晶デバイス120は、入射偏光に対してスロー軸が45°に調整された1/4波長板として動作する。
図2−2は、図1−1に示した液晶デバイスの波長分散特性の一例を示す図である。図2−2において、横軸は光の波長[nm]を示している。縦軸は液晶デバイス120の複屈折による位相差(リタデーション)を示している。波長分散特性201は、通常の1/4波長板を通過したレーザ光における波長に対する位相差の特性を参考として示している。通常の1/4波長板を通過したレーザ光の位相差Γは、たとえば下記(8)式によって示すことができる。
Γ=(2π/λ)×(ne−no)×d …(8)
上記(8)式において、λは光の波長である。neは1/4波長板のファースト軸(進相軸)の方向の屈折率である。ファースト軸は、複屈折の屈折率が最も低い軸である。noは1/4波長板のスロー軸の方向の屈折率である。dは1/4波長板の厚みである。したがって、波長分散特性201は、波長λによって位相差Γが異なる特性となる。
波長分散特性202は、Ψ=3π/8の場合に液晶デバイス120を通過したレーザ光における波長に対する位相差の特性を示している。Ψは、波長板121,125のスロー軸に対する液晶セル123のダイレクタ方向124の角度を示している。
波長分散特性202に示すように、液晶デバイス120は、波長依存性の少ない(すなわち広帯域の)1/4波長板として動作することが分かる。したがって、光学デバイス100によれば、波長分散を抑えつつレーザ光の偏光状態を制御することができる。波長分散を抑えることができるため、消光比の低下を抑え、レーザ光をスクリーンに投影した画像の画質を向上させることができる。
また、偏光状態をたとえば右回りの円偏光と左回りの円偏光とに切り替えることで、レーザ光をスクリーンに投影した画像のスペックルを低減して画質を向上させることができる。また、映像の偏光状態をたとえば右回りの円偏光と左回りの円偏光とに切り替えることで、円偏光フィルタ方式の三次元画像を生成することもできる。
また、複数の原色を含むレーザ光の偏光状態を液晶デバイス120によって制御することができる。このため、たとえば原色の光ごとに偏光制御装置を設ける場合に比べて、部品点数を減らし、装置の小型化が可能になる。
また、液晶セル123には、たとえばネマティック液晶を用いることができる。または、液晶セル123には、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal:強誘電性液晶)を用いることができる。また、液晶セル123には、ダイレクタの方向をそれぞれ異なる方向に保持する複数の電極を有する液晶セルを用いてもよい(たとえば図8−1〜図8−4参照)。
いずれの液晶セルを用いても、液晶分子のダイレクタの方向を基板面と平行に回転して切り替えており、横電界を使用して液晶の電界応答速度のみによって液晶分子の動きを制御できるため、レーザ光の偏光状態の切り替えを高速に行うことができる。レーザ光の偏光状態の切り替えを高速に行うことで、スペックルの低減効果を向上させたり、フレームレートの高い三次元画像を生成したりすることができる。
(光源部の構成例)
次に光源部の構成について、詳細に説明する。光源部では、それぞれ異なる波長の複数のレーザ光を合波して、1本のレーザ光としている。図3−1は、光源部の構成例を示す図である。図1−1に示した光源部110は、たとえば、図3−1に示すように、赤色光源311と、緑色光源312と、青色光源313と、偏波保持ファイバ314〜316と、コンバイナ317と、偏波保持ファイバ318と、を備えている。偏波保持ファイバ318は、図1−1に示した偏波保持ファイバ112に対応する構成である。
赤色光源311(R)は、赤色のレーザ光を発振して偏波保持ファイバ314へ出射する。緑色光源312(G)は、緑色のレーザ光を発振して偏波保持ファイバ315へ出射する。青色光源313(B)は、青色のレーザ光を発振して偏波保持ファイバ316へ出射する。赤色光源311、緑色光源312および青色光源313が出射する各レーザ光の偏光状態は、所定方向の直線偏光であるとする。また、赤色光源311、緑色光源312および青色光源313のそれぞれは、たとえば、各色のレーザ光を直接発光するレーザ装置でもよいし、SHG(Second Harmonic Generation:第二高調波発生)方式のレーザ装置などでもよい。
偏波保持ファイバ314は、赤色光源311から出射されたレーザ光を、偏光状態を保持しつつコンバイナ317へ出射する。偏波保持ファイバ315は、緑色光源312から出射されたレーザ光を、偏光状態を保持しつつコンバイナ317へ出射する。偏波保持ファイバ316は、青色光源313から出射されたレーザ光を、偏光状態を保持しつつコンバイナ317へ出射する。
コンバイナ317は、偏波保持ファイバ314〜316から出射された各レーザ光を合波する合波部である。コンバイナ317は、合波したレーザ光を偏波保持ファイバ318へ出射する。偏波保持ファイバ318は、コンバイナ317から出射されたレーザ光を、偏光状態を保持しつつ出射する。偏波保持ファイバ318から出射されるレーザ光は、赤色、緑色および青色の各光を含むレーザ光となる。また、偏波保持ファイバ318から出射されるレーザ光の偏光状態は所定方向の直線偏光となる。
図3−2は、光源部の変形例1を示す図である。図3−2において、図3−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図3−2に示すように、光源部110は、赤色光源311と、緑色光源312と、青色光源313と、ミラー321と、ダイクロイックミラー322,323と、を備えていてもよい。
赤色光源311は、赤色のレーザ光を発振してミラー321へ出射する。緑色光源312は、緑色のレーザ光を発振してダイクロイックミラー322へ出射する。青色光源313は、青色のレーザ光を発振してダイクロイックミラー323へ出射する。ミラー321は、赤色光源311から出射されたレーザ光を反射させてダイクロイックミラー322へ出射する。
ダイクロイックミラー322,323は、赤色光源311、緑色光源312および青色光源313によって出射された各レーザ光を合波する合波部である。ダイクロイックミラー322は、緑色光源312から出射されたレーザ光(緑の波長の光)を反射させてダイクロイックミラー323へ出射する。また、ダイクロイックミラー322は、ミラー321から出射されたレーザ光(赤の波長の光)を透過させてダイクロイックミラー323へ出射する。
ダイクロイックミラー323は、青色光源313から出射されたレーザ光(青の波長の光)を反射させて光源部110の後段へ出射する。また、ダイクロイックミラー323は、ダイクロイックミラー322から出射されたレーザ光(赤および緑の波長の光)を透過させて光源部110の後段へ出射する。ダイクロイックミラー322,323のそれぞれは、たとえば誘電体多層膜によって実現することができる。
ダイクロイックミラー323から出射されるレーザ光は、赤色、緑色および青色の各光を含むレーザ光となる。また、ダイクロイックミラー323から出射されるレーザ光の偏光状態は所定方向の直線偏光となる。
図3−3は、光源部の変形例2を示す図である。図3−3において、図3−2に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図3−3に示すように光源部110は、赤色光源311と、緑色光源312と、青色光源313と、ダイクロイックミラー322,323と、を備えていてもよい。赤色光源311は、赤色のレーザ光を発振してダイクロイックミラー322へ出射する。緑色光源312は、緑色のレーザ光を発振してダイクロイックミラー322へ出射する。青色光源313は、青色のレーザ光を発振してダイクロイックミラー323へ出射する。
ダイクロイックミラー322は、赤色光源311から出射されたレーザ光(赤の波長の光)を反射させてダイクロイックミラー323へ出射する。また、ダイクロイックミラー322は、緑色光源312から出射されたレーザ光(緑の波長の光)を透過させてダイクロイックミラー323へ出射する。
ダイクロイックミラー323は、青色光源313から出射されたレーザ光(青の波長の光)を反射させて光源部110の後段へ出射する。また、ダイクロイックミラー323は、ダイクロイックミラー322から出射されたレーザ光(赤および緑の波長の光)を透過させて光源部110の後段へ出射する。
ダイクロイックミラー323から出射されるレーザ光は、赤色、緑色および青色の各光を含むレーザ光となる。また、ダイクロイックミラー323から出射されるレーザ光の偏光状態は所定方向の直線偏光となる。
(光学デバイスを適用した映像エンジンの構成例)
図4−1は、光学デバイスを適用した映像エンジンの構成例1を示す図である。図4−1において、図1−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図4−1に示す映像エンジン400は、図1−1に示した光学デバイス100を適用し、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)を用いた映像エンジンである。映像エンジン400は、光源部110と、レンズ410と、偏光ビームスプリッタ420と、LCOS430と、レンズ440と、液晶デバイス120と、を備えている。
レンズ410は、光源部110から出射されたレーザ光を偏光ビームスプリッタ420へ出射する。偏光ビームスプリッタ420は、レンズ410から出射されたレーザ光を反射させてLCOS430へ出射する。また、偏光ビームスプリッタ420は、LCOS430から出射されたレーザ光を、偏光状態に応じてレンズ440へ出射する。
LCOS430は、レーザ光を空間的に変調して映像を形成する変調器である。LCOS430は、偏光ビームスプリッタ420から出射されたレーザ光を偏光ビームスプリッタ420へ反射させる。また、LCOS430は、レーザ光が反射する面の各画素に印加される電圧に応じて、各画素における反射光の偏光状態を制御する。これにより、偏光ビームスプリッタ420からレンズ440の側へ透過するレーザ光の強度を画素ごとに制御することができる。
レンズ440は、偏光ビームスプリッタ420から出射されたレーザ光を絞って液晶デバイス120へ出射する。レンズ440はレンズを複数枚組み合わせた構成としてもよい。液晶デバイス120は、レンズ440から出射されたレーザ光の偏光状態を制御して後段へ出射する。液晶デバイス120から出射されたレーザ光はたとえばスクリーンに投影される。
図4−2は、映像エンジンの構成例1の変形例を示す図である。図4−2において、図4−1と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。液晶セル123にFLCを用いる場合は、偏光ビームスプリッタ420を通過後の光を絞る必要がないため、図4−2に示すように、LCOS430からの反射光をそのまま投影してもよい。
図5−1は、光学デバイスを適用した映像エンジンの構成例2を示す図である。図5−1において、図1−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図5−1に示す映像エンジン500は、図1−1に示した光学デバイス100を適用し、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械素子)を用いた映像エンジンである。映像エンジン500は、光源部110と、レンズ510と、液晶デバイス120と、MEMSミラー520と、を備えている。
レンズ510は、光源部110から出射されたレーザ光を液晶デバイス120へ出射する。液晶デバイス120は、レンズ510から出射されたレーザ光の偏光状態を制御してMEMSミラー520へ出射する。レンズ510はレンズを複数枚組み合わせた構成としてもよい。MEMSミラー520は、レーザ光を空間的に変調して映像を形成する変調器である。MEMSミラー520は、ミラー521と、回転軸522,523と、を備えている。ミラー521は、液晶デバイス120から出射されたレーザ光を反射させる。
また、ミラー521は、外部からの制御により、回転軸522,523のそれぞれを回転軸として回転する。回転軸522,523は互いに角度の異なる(たとえば直交する)回転軸である。したがって、ミラー521は、可変の角度によってレーザ光を反射させる。ミラー521によって反射したレーザ光はスクリーンにスキャンされる。
図5−2は、光学デバイスを適用した映像エンジンの構成例3を示す図である。図5−2において、図1−1または図5−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図5−2に示す映像エンジン500は、図5−1に示した映像エンジン500の変形例である。
映像エンジン500は、光源部110と、偏波保持ファイバ530と、コリメータレンズ541と、液晶デバイス120と、コリメータレンズ543と、偏波保持ファイバ550と、コリメータレンズ560と、MEMSミラー520と、を備えている。偏波保持ファイバ530は、光源部110から出射されたレーザ光を、偏光状態を保持しつつコリメータレンズ541へ出射する。
コリメータレンズ541は、偏波保持ファイバ530から出射されたレーザ光をコリメートして液晶デバイス120へ出射する。また、コリメータレンズ541は、樹脂542によって液晶デバイス120に固定されている。液晶デバイス120は、コリメータレンズ541から出射されたレーザ光の偏光状態を制御してコリメータレンズ543へ出射する。コリメータレンズ543は、液晶デバイス120から出射されたレーザ光を偏波保持ファイバ550へ結合させる。また、コリメータレンズ543は、樹脂544によって液晶デバイス120に固定されている。
偏波保持ファイバ550は、コリメータレンズ543によって結合されたレーザ光を、偏光状態を保持しつつコリメータレンズ560へ出射する。コリメータレンズ560は、偏波保持ファイバ550から出射されたレーザ光をMEMSミラー520へ出射する。MEMSミラー520は、コリメータレンズ560から出射されたレーザ光を可変の角度によって反射させる。
図6−1は、光学デバイスを適用した映像エンジンの構成例4を示す図である。図6−1において、図1−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図6−1に示す映像エンジン600は、図1−1に示した光学デバイス100を適用し、DLP(Digital Light Processing:登録商標)を用いた映像エンジンである。映像エンジン600は、光源部110と、液晶デバイス120と、レンズ610と、DLP620と、を備えている。
液晶デバイス120は、光源部110から出射されたレーザ光の偏光状態を制御してレンズ610へ出射する。レンズ610は、液晶デバイス120から出射されたレーザ光をDLP620へ出射する。なお、レンズ610はレンズを複数枚組み合わせた構成としてもよい。DLP620は、レーザ光を空間的に変調して映像を形成する変調器である。DLP620は、レンズ610から出射されたレーザ光をスクリーンの側へ反射させる。また、DLP620は、レーザ光が反射する面の各画素における光の反射角度を制御する。これにより、DLP620の画素ごとに、光をスクリーンへ反射し、またはスクリーンとは異なる方向へ反射させることで、スクリーンへ投影されるレーザ光の強度を画素ごとに制御することができる。
図6−2は、光学デバイスを適用した映像エンジンの構成例5を示す図である。図6−2において、図1−1、図5−2または図6−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図6−2に示す映像エンジン600は、図6−1に示した映像エンジン600の変形例である。
映像エンジン600は、光源部110と、偏波保持ファイバ530と、コリメータレンズ541と、液晶デバイス120と、コリメータレンズ543と、偏波保持ファイバ550と、コリメータレンズ560と、DLP620と、を備えている。コリメータレンズ560は、レーザ光をDLP620へ出射する。DLP620は、コリメータレンズ560から出射されたレーザ光を、画素ごとに可変の角度によって反射させる。
以上説明したように、液晶デバイス120では、光源部で合波した1本のレーザ光を調整するだけでよいので、映像エンジン全体を小型化でき、また、調整自体も容易に行うことが可能である。
(光学デバイスを適用したプロジェクタの構成例)
図7は、光学デバイスを適用したプロジェクタの構成例を示す図である。図7において、図1−1、図3−1〜図3−3、図4−1などに示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図7に示すプロジェクタ700は、映像エンジン710と、制御ボード720と、電源730と、を備えている。
映像エンジン710には、たとえば、図4−1に示した映像エンジン400、図5−1、図5−2に示した映像エンジン500、図6−1,図6−2に示した映像エンジン600を適用することができる。ここでは、映像エンジン710に、図4−1に示した映像エンジン400を適用する場合について説明する。この場合は、映像エンジン710は、赤色光源311、緑色光源312、青色光源313、液晶デバイス120およびLCOS430を含む。
制御ボード720は、光源コントローラ721と、液晶素子コントローラ722と、LCOSコントローラ723と、コントロールユニット724と、を備えている。光源コントローラ721は、コントロールユニット724からの制御に従って、赤色光源311、緑色光源312および青色光源313へ供給する駆動電流を制御することで、赤色光源311、緑色光源312および青色光源313が出射する各レーザ光を制御する。
液晶素子コントローラ722は、図1−1に示した制御回路130に対応する構成である。液晶素子コントローラ722は、コントロールユニット724からの制御に従って、液晶セル123の電極へ印加する電圧を制御することで、プロジェクタ700が出射するレーザ光の偏光状態を制御する。具体的には、液晶素子コントローラ722は、波長板121のスロー軸方向122に対する液晶セル123のダイレクタ方向124の角度を、67.5°と112.5°とに周期的に切り替える。
コントロールユニット724は、映像信号処理ユニット725を備えている。映像信号処理ユニット725は、プロジェクタ700へ入力された映像信号に基づく映像処理を行う。コントロールユニット724は、映像信号処理ユニット725における映像処理に基づいて、所定のタイミングで光源コントローラ721、液晶素子コントローラ722およびLCOSコントローラ723を制御する。
LCOSコントローラ723は、コントロールユニット724からの制御に従って、LCOS430の電極へ印加する電圧を制御することでレーザ光を変調し、プロジェクタ700が出射するレーザ光の画像や映像を制御する。これにより、プロジェクタ700が出射するレーザ光をスクリーンに投影することで映像を表示することができる。電源730は、制御ボード720の電源である。電源730はバッテリであってもよい。
(液晶セルの電極構造の例)
図8−1は、液晶セルの電極構造の例1を示す図である。図8−1に示す液晶セル123は、レーザ光の進行方向からみた液晶セル123である(図8−2〜図8−4においても同様)。電極811〜818は、液晶セル123の電極である。電極811〜818は、それぞれ0°,45°,90°,135°,180°,225°,270°,315°の角度で設けられている。
電極811と電極815、電極812と電極816、電極813と電極817、電極814と電極818はそれぞれ組になる電極である。組になる電極に電圧を印加することで、液晶セル123における液晶分子のダイレクタを基板面と平行に回転させ、ダイレクタ方向を制御することができる。たとえば、電極811および電極815に電圧を印加することで、液晶セル123のダイレクタ方向を0°に制御することができる。また、組になる電極以外の電極にも電圧を印加してもよい。これにより、各電極に印加される電圧値のバランスをとることで、より広範囲に液晶セル123のダイレクタ方向を制御することができる。このように、液晶の電界応答速度のみによって液晶分子の動きを制御できるため、高速に動作させることが可能である。
この場合は、液晶デバイス120へ入射するレーザ光の偏光方向および波長板121,125のスロー軸方向122,126は、偏光方向810に示すように、22.5°,67.5°,112.5°,157.5°のいずれかの方向にする。これにより、電極811〜818に印加する電圧の制御により、液晶セル123のダイレクタ方向を波長板121,125のスロー軸方向122,126に対して67.5°および112.5°の角度に切り替えることができる。
図8−1に示した液晶セル123については、たとえば、非特許文献(大寺康夫,千葉貴史,川上彰二郎、「回転電界駆動による液晶偏光制御デバイス」、光学、30巻1号、29−30頁、2001年1月10日)に記載された液晶偏光制御デバイスを用いることができる。
図8−2は、液晶セルの電極構造の例2を示す図である。図8−2に示す電極821〜824は、液晶セル123の電極である。電極821〜824は、それぞれ45°,90°,225°,270°の角度で設けられている。液晶セル123においては、ダイレクタ方向を67.5°および112.5°の2方向に切り替えればよいため、図8−2に示すように、液晶セル123には2組の電極を設ければよい。
この場合は、液晶デバイス120へ入射するレーザ光の偏光方向および波長板121,125のスロー軸方向122,126は、偏光方向820に示すように、22.5°,67.5°,112.5°,157.5°のいずれかの方向にする。これにより、電極821〜824に印加する電圧の制御により、液晶セル123のダイレクタ方向を波長板121,125のスロー軸方向122,126に対して67.5°および112.5°の角度に切り替えることができる。
図8−3は、液晶セルの電極構造の例3を示す図である。図8−3に示す電極831〜834は、液晶セル123の電極である。電極831〜834は、それぞれ0°,90°,180°,270°の角度で設けられている。
この場合は、液晶デバイス120へ入射するレーザ光の偏光方向および波長板121,125のスロー軸方向122,126は、偏光方向830に示すように、22.5°,67.5°,112.5°,157.5°のいずれかの方向にする。これにより、電極831〜834に印加する電圧の制御により、液晶セル123のダイレクタ方向を波長板121,125のスロー軸方向122,126に対して67.5°および112.5°の角度に切り替えることができる。
図8−4は、液晶セルの電極構造の例4を示す図である。図8−4に示す電極841〜848は、液晶セル123の電極である。電極841〜848は、それぞれ22.5°,67.5°,112.5°,157.5°,202.5°,247.5°,292.5°,337.5°の角度で設けられている。すなわち、電極841〜848は、図8−1に示した電極811〜818をそれぞれ22.5°ずつ傾けたものである。
この場合は、液晶デバイス120へ入射するレーザ光の偏光方向および波長板121,125のスロー軸方向122,126は、偏光方向840に示すように、0°,45°,90°,135°のいずれかの方向にする。これにより、電極841〜848に印加する電圧の制御により、液晶セル123のダイレクタ方向を波長板121,125のスロー軸方向122,126に対して67.5°および112.5°の角度に切り替えることができる。
図8−1〜図8−4に示したように、液晶セル123は、ダイレクタ方向を保持する電極の組を複数有することで、複数のダイレクタ方向の切り替えを高速に行うことができる。具体的には、液晶セル123は、ダイレクタの方向を波長板121,125のスロー軸の方向に対して67.5°の方向に保持する第一電極と、ダイレクタの方向を波長板121,125のスロー軸の方向に対して112.5°の方向に保持する第二電極と、を有する。
(プロジェクタの利用形態)
図9−1は、プロジェクタの利用形態の例1を示す図である。図9−1に示すプロジェクタ700は、たとえば図7に示したプロジェクタ700である。プロジェクタ700は、光学デバイス100によって周期的かつ高速に偏光状態を切り替えながらレーザ光901をスクリーン920へ出射する。これにより、スクリーン920に投影される映像や画像のスペックルを低減し、画質を向上させることができる。
図9−2は、プロジェクタの利用形態の例2を示す図である。図9−2において、図9−1と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。図9−2に示すように、プロジェクタ700は、左回りの円偏光のレーザ光902と、右回りの円偏光のレーザ光903と、を交互にスクリーン920へ出射する。また、レーザ光902およびレーザ光903は、それぞれ異なる視点からの映像となるように変調される。
三次元グラス930は、左回りの円偏光のレーザ光902のみを透過するグラス931と、右回りの円偏光のレーザ光903のみを透過するグラス932と、を備えている。これにより、三次元グラス930の装着者に三次元映像を視認させることができる。なお、ここでは円偏光の切り替えにより三次元映像を実現する構成について説明したが、たとえば異なる方向の直線偏光の切り替えにより三次元映像を実現する構成としてもよい。
(スペックルの低減を実現する場合の制御)
図10は、スペックルの低減を実現する場合の制御例を示すフローチャートである。たとえば図9−1に示したように、スペックルの低減を実現する場合は、光学デバイス100は、コントロールユニット724の制御によってたとえば図10に示す各ステップを実行する。まず、液晶素子コントローラ722が、液晶セル123のダイレクタ方向124を切り替える(ステップS1001)。
つぎに、LCOSコントローラ723が、LCOS430に赤色用の映像信号を入力する(ステップS1002)。つぎに、光源コントローラ721が、赤色光源311をオンにする(ステップS1003)。つぎに、光源コントローラ721が、赤色光源311をオフにする(ステップS1004)。
つぎに、LCOSコントローラ723が、LCOS430に緑色用の映像信号を入力する(ステップS1005)。つぎに、光源コントローラ721が、緑色光源312をオンにする(ステップS1006)。つぎに、光源コントローラ721が、緑色光源312をオフにする(ステップS1007)。
つぎに、LCOSコントローラ723が、LCOS430に青色用の映像信号を入力する(ステップS1008)。つぎに、光源コントローラ721が、青色光源313をオンにする(ステップS1009)。つぎに、光源コントローラ721が、青色光源313をオフにし(ステップS1010)、ステップS1001へ戻る。以上の各ステップを繰り返し行うことで、液晶セル123のダイレクタ方向124を切り替えることによって偏光状態を切り替えながら各色のレーザ光を時分割で出力することができる。
これにより、赤色、緑色、青色の一連のレーザ光を出力するごとに液晶セル123のダイレクタ方向124を切り替えることができる。ただし、たとえばスペックルの低減を目的とする場合は、液晶セル123の切り替えは、赤色光源311、緑色光源312、青色光源313およびLCOS430の制御と同期していなくてもよい。
図11は、液晶デバイスのダイレクタ方向の切り替えの一例を示す図である。図11において、図8−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。ダイレクタ1110は液晶セル123のダイレクタである。状態1101〜1104は、ダイレクタ1110の方向の切り替えの状態を示している。
液晶素子コントローラ722は、電極811〜818に印加する電圧の制御により、図10に示したステップS1001に移行するごとに、ダイレクタ1110の方向を45°ずつ変化させる。これにより、ダイレクタ1110の方向を状態1101、状態1102、状態1103、状態1104、状態1101、…の順に切り替えることができる。
(三次元映像を実現する場合の制御)
図12は、三次元映像を実現する場合の制御例を示すフローチャートである。たとえば図9−2に示したように、光学デバイス100によって三次元映像を実現する場合は、たとえば、コントロールユニット724の制御によって図12に示す各ステップを繰り返し実行する。
まず、液晶素子コントローラ722が、液晶セル123のダイレクタ方向124を切り替える(ステップS1201)。つぎに、光源コントローラ721が、青色光源313をオフにする(ステップS1202)。つぎに、光源コントローラ721が、赤色光源311をオンにする(ステップS1203)。
つぎに、LCOSコントローラ723が、右目の赤色用の映像信号をLCOS430へ入力する(ステップS1204)。液晶素子コントローラ722が、液晶セル123のダイレクタ方向124を切り替える(ステップS1205)。つぎに、LCOSコントローラ723が、左目の赤色用の映像信号をLCOS430へ入力する(ステップS1206)。
つぎに、液晶素子コントローラ722が、液晶セル123のダイレクタ方向124を切り替える(ステップS1207)。つぎに、光源コントローラ721が、赤色光源311をオフにする(ステップS1208)。つぎに、光源コントローラ721が、緑色光源312をオンにする(ステップS1209)。
つぎに、LCOSコントローラ723が、右目の緑色用の映像信号をLCOS430へ入力する(ステップS1210)。液晶素子コントローラ722が、液晶セル123のダイレクタ方向124を切り替える(ステップS1211)。つぎに、LCOSコントローラ723が、左目の緑色用の映像信号をLCOS430へ入力する(ステップS1212)。
つぎに、液晶素子コントローラ722が、液晶セル123のダイレクタ方向124を切り替える(ステップS1213)。つぎに、光源コントローラ721が、緑色光源312をオフにする(ステップS1214)。つぎに、光源コントローラ721が、青色光源313をオンにする(ステップS1215)。
つぎに、LCOSコントローラ723が、右目の青色用の映像信号をLCOS430へ入力する(ステップS1216)。液晶素子コントローラ722が、液晶セル123のダイレクタ方向124を切り替える(ステップS1217)。つぎに、LCOSコントローラ723が、左目の青色用の映像信号をLCOS430へ入力し(ステップS1218)、ステップS1201へ戻る。
以上の各ステップを繰り返し行うことで、右目用の映像信号と左目用の映像信号とで偏光状態を切り替えながらレーザ光を出力し、三次元映像を実現することができる。このように、たとえば三次元映像を目的とする場合は、液晶セル123の切り替えは、赤色光源311、緑色光源312、青色光源313およびLCOS430の制御と同期させる。具体的には、液晶セル123の切り替えは、右目用の映像信号と左目用の映像信号とを切り替えるタイミングで行う。液晶セル123の切り替えの順序については、たとえば図11に示した例と同様である。
(液晶セルへの印加電圧1)
図13−1は、液晶セルへの印加電圧の一例を示す図である。図13−1において、図8−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図13−1に示すように、電極811〜818に印加する電圧は、たとえばそれぞれV0、V0/2(1+1/√2)、V0/2、V0/2(1−1/√2)、0、V0/2(1−1/√2)、V0/2、V0/2(1+1/√2)とする。電極811〜818に対する1周期あたりの印加電圧Vの時間は、たとえば下記(9)式によって算出することができる。
図13−2は、1周期あたりの印加電圧の時間の一例を示す図である。図13−2に示すテーブル1320において、Electrode1〜8はそれぞれ電極811〜818を示している。テーブル1320に示すように、電極811〜818へ印加する電圧は、それぞれV0、0.854V0、0.5V0、0.146V0、0、0.146V0、0.5V0、0.854V0とする。また、電極811〜818に対する1周期あたりの印加電圧Vの時間は、それぞれT、730T/1000、250T/1000、20T/1000、0、20T/1000、250T/1000、730T/1000とする。
(液晶セルへの印加電圧の波形1)
図14−1は、液晶セルへの印加電圧の波形の例1を示す図である。図14−1において、Electrode1〜8はそれぞれ電極811〜818を示している。波形1411〜1418は、それぞれ電極811〜818に対する印加電圧の波形を示している。pulse1〜5は、印加電圧の波形パターンを示している。たとえば、電極812と電極818には同じ波形パターン(pulse2)の電圧が印加される。また、電極813と電極817には同じ波形パターン(pulse3)の電圧が印加される。また、電極814と電極816には同じ波形パターン(pulse4)の電圧が印加される。
液晶素子コントローラ722は、液晶セル123の電極811〜818に対して、それぞれ波形1411〜1418のような電圧を印加することで、液晶セル123のダイレクタ方向を順次切り替えることができる。
図14−2は、液晶セルへの印加電圧の波形の例2を示す図である。図14−2において、図14−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。液晶素子コントローラ722は、液晶セル123の電極811〜818に対して、それぞれ図14−2に示す波形1411〜1418のような電圧を印加することで液晶セル123のダイレクタ方向を順次切り替えてもよい。
(液晶セルへの印加電圧2)
また、電極811〜818への電圧の印加は以下のように行ってもよい。図15−1は、液晶セルへの印加電圧の一例を示す図である。図15−1において、図8−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図15−1に示すように、電極811〜818に印加する電圧は、たとえばそれぞれV0、V0/√2、0、−V0/√2、−V0、−V0/√2、0、V0/√2とする。上記の電圧印加方法によれば、電極811〜818に対して1/8周期あたり上記電圧値を印加すればよい。
図15−2は、1周期あたりの印加電圧の時間の一例を示す図である。図15−2に示すテーブル1520において、Electrode1〜8はそれぞれ電極811〜818を示している。テーブル1520に示すように、電極811〜818へ印加する電圧は、それぞれV0、0.707V0、0、−0.707V0、−V0、−0.707V0、0、707V0とする。
(液晶セルへの印加電圧の波形2)
図16は、液晶セルへの印加電圧の波形の例3を示す図である。図16において、Electrode1〜8はそれぞれ電極811〜818を示している。波形1601〜1608は、それぞれ電極811〜818に対する印加電圧の波形を示している。pulse1〜8は、印加電圧の波形パターンを示している。電極811〜818へ印加する電圧は、それぞれV0、0.707V0、0、−0.707V0、−V0、−0.707V0、0、0.707V0とする。
(液晶セルへの電圧印加による電界分布)
図17は、液晶セルへの電圧印加による電界分布の一例を示す図(その1)である。図17に示す電界分布1700は、液晶セル123に上記の電圧(たとえば図14−1または図16)を印加した場合の液晶セル123の基板表面における電界分布を示している。領域1701〜1710は、電界強度がそれぞれ9〜10、8〜9、7〜8、6〜7、5〜6、4〜5、3〜4、2〜3、1〜2、0〜1である領域を示している。ダイレクタ方向1720は、ダイレクタ1110の方向を示している。
図18は、液晶セルへの電圧印加による電界分布の一例を示す図(その2)である。図18において、図17に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図18に示す電界分布1800は、液晶セル123に上記の電圧(たとえば図14−2)を印加した場合の液晶セル123の液晶バルクにおける電界分布を示している。
(各電極への電圧印加パターン)
図19は、液晶セルの各電極への電圧印加パターンの一例を示す図である。図19において、図14−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図19に示すテーブル1900は、液晶セル123の電極811〜818への電圧印加パターンの一例を示している。テーブル1900に示すように、液晶素子コントローラ722は、1周期ごとに電極811〜818に印加するパルスをシフトさせる。
たとえば、液晶素子コントローラ722は、1周期目においては電極811〜818に対してそれぞれpulse1,2,3,4,5,4,3,2を印加し、2周期目においては電極811〜818に対してそれぞれpulse2,3,4,5,4,3,2,1を印加する。そして、液晶素子コントローラ722は、8周期目の次に1周期目に戻る。
図20−1〜図20−8は、電圧印加パターンによる電界分布の変化の一例を示す図である。図20−1〜図20−8において、図17に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図20−1〜図20−8にそれぞれ示す電界分布2001〜2008は、それぞれ図19に示したテーブル1900の1周期目〜8周期目における液晶セル123の電界分布を示している。
図20−1〜図20−8に示すように、1周期ごとに電極811〜818に印加するパルスをシフトさせることで液晶セル123の電界分布を変化させ、液晶セル123のダイレクタ方向124を順次切り替えることができる。
(光学デバイスの変形例)
図21は、光学デバイスの他の変形例を示す図である。図21において、図1−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図21に示すように、光学デバイス100は、液晶セル123を反射型の液晶セルとしてもよい。この場合は、図1−1に示した波長板121と波長板125は共通化して、1つの波長板121として配置すればよい。
図21に示すように、液晶セル123の波長板121とは反対側の面にミラー1010を設ける。液晶セル123は、偏光方向を回転させたレーザ光をミラー1010によって反射させて波長板121へ出射する。これによりレーザ光は液晶セル123を往復することになり、反射されたレーザ光は液晶セル123によりレーザ光が偏波保持ファイバ112から液晶セル123に入射した時に回転された偏光方向と同じ量だけ偏光方向が回転される。すなわち、透過に対して2倍の光路を通過するため、液晶セル123は実質的に1/2波長板として作用する。波長板121は、液晶セル123から出射されたレーザ光を通過させる。これにより、液晶セル123によって反射して波長板121を通過したレーザ光の反射光の偏光状態は偏光状態102,103(図1−1参照)のようになる。
このように、液晶セル123を反射型の液晶セルとし、レーザ光が波長板121を往復するようにすることで、図1−1に示した光学デバイス100と同様の効果を得ることができる。これにより、波長板125を省いた構成とすることもできるため、部品点数を減らして装置の小型化を可能にすることができる。
なお、液晶セル123によって反射して波長板121を通過したレーザ光は、たとえばサーキュレータなどを用いて取り出すことができる。また、光源部110からのレーザ光が波長板121へ入射する位置と、液晶セル123によって反射したレーザ光が波長板121から出射される位置と、が異なるように各素子の角度などを調整することでレーザ光を取り出してもよい。
図21に示した変形例は、図1−1に示した光学デバイス100に限らず、たとえば図1−2、図1−3〜図1−6に示した光学デバイス100にも適用可能である。
(積層波長板の設計)
図22は、積層波長板の動作の一例を示す図である。図22において、図1−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図22において、x軸は、上記の所定方向(0°)に対応している。z軸は、光の進行方向に対応している。図22に示す波長板121,125のリタデーションはともにγ1であるとする。また、波長板121,125におけるスロー軸方向122,126と所定方向との間の方位角(アジマス角)はともにΨ1であるとする。
液晶セル123のリタデーションはγ2であるとする。また、液晶セル123のダイレクタ方向124と所定方向との間の方位角はΨ2であるとする。ここでは、波長板121,125のスロー軸方向122,126の方向を基準の0°と定義する。この場合は、波長板121,125の方位角Ψ1は0°となる。したがって、波長板121,125と液晶セル123との間の方位角Ψは、Ψ=Ψ2−Ψ1=Ψ2となる。
図22に示す液晶デバイス120は、波長板121,125および液晶セル123によって構成される液晶デバイス120を1つの波長板(積層波長板)として仮想的に図示したものである。スロー軸方向2201は、液晶デバイス120の仮想的なスロー軸の方向を示している。液晶デバイス120のスロー軸方向2201と所定方向との間の方位角をΨeとする。
液晶デバイス120のリタデーションΓeと、液晶デバイス120のスロー軸方向2201と所定方向との間の方位角Ψeと、は波長板121,125および液晶セル123のリタデーションγ1,γ2と方位角Ψとジョーンズマトリクスとに基づく計算により上記(3)式および(4)式のように示すことができる。
上記(3)式および(4)式において、波長板x(波長板121,125および液晶セル123)のリタデーションγxは、通過する光の波長によって下記(10)式のように変化する。下記(10)式において、Δnxは、波長板xの屈折率(複屈折)である。Δnxは、たとえば波長板xの材料や通過する光の波長λによって決まる。Δnxの波長依存性については後述する。dxは、波長板xの厚みである。
<液晶デバイスを1/4波長板として使用する場合>
ここでは、液晶デバイス120を1/4波長板として使用する場合について説明する。液晶デバイス120を1/4波長板として使用するためには、液晶デバイス120のリタデーションΓe=±π/2×(2n−1)とすればよい(nは自然数、±は+または−を示す)ため、cos(Γe/2)=±1/√2かつsin(Γe/2)=±1/√2となる。また、液晶セル123は、所定波長(たとえば緑色の波長)で1/2波長板となるように設計され、γ2=πとなる。したがってsin(γ2/2)=1となる。
たとえば、偏光方向を右回りの円偏光と左回りの円偏光とに切り替えるためにはΨe=45°となればよいため、上記(4)式は、上記のcos(Γe/2)=±1/√2かつsin(Γe/2)=±1/√2と、sin(γ2/2)=1と、によりsin(2Ψe)=±√2・sin(2Ψ)=1となる。したがって、波長板121,125と液晶セル123との間の方位角Ψを、22.5°,67.5°,112.5°または157.5°、すなわちΨ=π/8×(2n−1)とすればよい。
上記(3)式に、上記(10)式と、Ψ=π/8×(2n−1)と、各光源によって出射される各レーザ光の波長と、を代入し、上記(3)式が±1/√2に近づくような波長板121,125の材料および厚みd1の選択を行う。これにより、各光源によって出射される各レーザ光の波長において、液晶デバイス120(積層波長板)を1/4波長板として動作させることができる。
たとえば、液晶セル123におけるスイッチングが容易なように、波長板121,125と液晶セル123との間の方位角Ψを67.5°にしたとする。ここで、青色、緑色および赤色の各レーザ光の波長をそれぞれλB、λGおよびλRとする。波長板121,125における青色、緑色および赤色の各レーザ光に対するリタデーションをそれぞれγ1B、γ1Gおよびγ1Rとする。リタデーションγ1B,γ1G,γ1Rは、上記(10)式と、波長板121,125の屈折率Δn1と、波長板121,125の厚みd1と、波長λB,λG,λRと、によって得ることができる。
液晶セル123における青色、緑色および赤色の各レーザ光に対するリタデーションをそれぞれγ2B、γ2Gおよびγ2Rとする。リタデーションγ2B,γ2G,γ2Rは、上記(10)式と、液晶セル123の屈折率Δn2と、液晶セル123の厚みd2と、波長λB,λG,λRと、によって得ることができる。
下記(11)式に示す倍角の公式と、Ψ=67.5°と、γ1=γ1B,γ1G,γ1Rと、γ2=γ2B,γ2G,γ2Rと、を上記(3)式に代入することで、下記(12)式を得ることができる。
上記(12)式は、積和公式により、下記(13)式のように変形することができる。
また、屈折率Δnも波長λに応じて変化する。たとえば、屈折率Δnは、Cauchy(コーシー)の分散公式から、Δn=a+b/λ2+c/λ4+d/λ6…と近似することができる。a,b,c,d,…は、波長板の材料に固有の係数である。以下の説明においては、屈折率Δnをa+b/λ2+c/λ4(第三項まで)によって近似する。
γ1B,γ1G,γ1R,γ2B,γ2G,γ2Rは、上記(10)式により下記(14)式のように示すことができる。ただし、波長板121,125における係数a,b,cをそれぞれa1,b1,c1とする。液晶セル123における係数a,b,cをそれぞれa2,b2,c2とする。
また、液晶セル123は所定波長(たとえばλG)において1/2波長板として動作するため、液晶セル123における係数a2,b2,c2および上記(14)式によって液晶セル123の厚みd2が決まる。
また、上記(12)式を変形することにより、液晶デバイス120における波長λB,λG,λRに対するリタデーションΓeは、下記(15)式のように示すことができる。
上記(15)式は、積和公式により、下記(16)式のように変形することができる。
したがって、上記(15)式または(16)式の波長λB,λG,λRに対するリタデーションΓeが±π/2×(2n−1)に近づくように、波長板121,125の厚みd1を選択する。これにより、波長λB,λG,λRの各波長成分において、液晶デバイス120(積層波長板)を1/4波長板として動作させることができる。
図23は、液晶デバイスを1/4波長板として使用する場合の波長に対するリタデーションの特性の第一の例を示すグラフである。図23において、横軸は、光の波長λ[nm]を示している。縦軸は、液晶デバイス120のリタデーションΓe(位相差)を示している。リタデーション特性2301は、液晶セル123が、1/4波長板として動作する単体の液晶セルであると仮定した場合の波長に対するリタデーションΓeの変化特性を参考として示している。
リタデーション特性2302は、波長板121,125および液晶セル123によって構成される液晶デバイス120における波長に対するリタデーションΓeの変化特性を示している。リタデーション特性2302に示すように、波長板121,125および液晶セル123によって構成される液晶デバイス120においては、波長に対してリタデーションΓeが周期的に変化している。
たとえば、青色のレーザ光に対応する波長448[nm]においては、リタデーションΓeが約π/2となっている。また、緑色のレーザ光に対応する532[nm]においては、リタデーションΓeが約π/2となっている。また、赤色のレーザ光に対応する650[nm]においては、リタデーションΓeが約π/2となっている。
このように、使用する複数の波長においてリタデーションΓeが所望の値となるように、波長板121,125の厚みd1を設計することで、使用する各波長成分において液晶デバイス120を1/4波長板として動作させることができる。この場合は、液晶デバイス120へ入射する各レーザ光の偏光方向を揃えておく(図28−1参照)。
図24−1は、液晶デバイスを1/4波長板として使用する場合の方位角の特性の第一の例(Ψ=3π/8)を示すグラフである。図24−2は、液晶デバイスを1/4波長板として使用する場合の方位角の特性の第一の例(Ψ=5π/8)を示すグラフである。図24−1,図24−2において、横軸は、光の波長λ[nm]を示している。縦軸は、液晶デバイス120の方位角Ψeを示している。
図24−1に示す方位角特性2410は、液晶デバイス120において、波長板121,125のスロー軸と、液晶セル123のスロー軸と、の間の方位角ΨをΨ=3π/8とした場合の波長に対する方位角Ψeの変化特性を示している。方位角特性2410に示すように、Ψ=3π/8とした場合の液晶デバイス120は、使用する各波長(448[nm]、532[nm]および650[nm])において、液晶デバイス120の方位角Ψeが約45°となっている。
図24−2に示す方位角特性2420は、液晶デバイス120において、波長板121,125のスロー軸と、液晶セル123のスロー軸と、の間の方位角ΨをΨ=5π/8とした場合の波長に対する方位角Ψeの変化特性を示している。方位角特性2420に示すように、Ψ=5π/8とした場合の液晶デバイス120は、使用する各波長(448[nm]、532[nm]および650[nm])において、液晶デバイス120の方位角Ψeが約−45°となっている。
図23〜図24−2に示したように、波長板121,125の厚みd1の設計により、使用する各波長(448[nm]、532[nm]および650[nm])において、液晶デバイス120のリタデーションΓeをπ/2、液晶デバイス120の方位角Ψeを±45°に揃えることができる。このため、各波長の入射時の偏光方向を0°または90°に揃えることで、液晶デバイス120から出力される各波長成分を同一の円偏光とすることができる。
図25は、液晶デバイスを1/4波長板として使用する場合の波長に対するリタデーションの特性の第二の例を示すグラフである。図25において、図23に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。液晶デバイス120のリタデーションΓeの特性が、図25のリタデーション特性2302のようになるように波長板121,125の厚みd1を設計してもよい。この場合は、たとえば、図23に示した例よりも、波長板121,125の厚みd1を小さくすることができる。
この場合においても、青色のレーザ光に対応する波長455[nm]と、赤色のレーザ光に対応する635[nm]と、においてはリタデーションΓeが約π/2となっている。また、緑色のレーザ光に対応する532[nm]においては、リタデーションΓeが約3π/2(−π/2)となっている。このため、使用する各波長(455[nm]、532[nm]および635[nm])において、液晶デバイス120のリタデーションΓeを±π/2に揃えることができる。これにより、波長λB,λG,λRの各波長成分において、液晶デバイス120を1/4波長板として動作させることができる。
さらに、緑色のレーザ光の偏光方向を、青色および赤色の偏光方向に対して90°傾けておくことで(たとえば図28−2参照)、液晶デバイス120から出力される緑色の波長成分と、液晶デバイス120から出力される青色および赤色の各波長成分と、を同一の円偏光とすることができる。このため、液晶デバイス120から出力される各波長成分を同一の円偏光とすることができる。
図26−1は、液晶デバイスを1/4波長板として使用する場合の方位角の特性の第二の例(Ψ=3π/8)を示すグラフである。図26−2は、液晶デバイスを1/4波長板として使用する場合の方位角の特性の第二の例(Ψ=5π/8)を示すグラフである。図26−1、図26−2において図24−1または図24−2に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
図25に示した例では、Ψ=3π/8とした場合の方位角特性2410は図26−1のようになる。図25に示した例においても、Ψ=3π/8とした場合の液晶デバイス120の方位角Ψeは、使用する各波長(455[nm]、532[nm]および635[nm])において約45°となっている。
また、図25に示した例では、Ψ=5π/8とした場合の方位角特性2420は図26−2のようになる。図25に示した例においても、Ψ=5π/8とした場合の液晶デバイス120の方位角Ψeは、使用する各波長(455[nm]、532[nm]および635[nm])において約−45°となっている。
図23〜図26−2に示したように、波長板121,125の厚みd1の設計により、使用する各波長(455[nm]、532[nm]および635[nm])において、液晶デバイス120を1/4波長板として動作させることができる。
図23〜図26−2に示した例では、Ψ=3π/8とΨ=5π/8の組み合わせもしくはΨ=π/8とΨ=7π/8の組み合わせで方位角を切り替えることによって、リタデーションΓeの値はそのままに使用する各波長における方位角Ψeを±45°に切り替えることができ、円偏光スイッチングデバイスとして使用することができる。
これは、コーン角度が45°の強誘電性液晶または図8−1に示したような液晶セル123を用いて、液晶のダイレクタ方向124をスロー軸方向122に対して67.5°と112.5°の組み合わせもしくは22.5°と157.5°(−22.5°)の組み合わせで切り替えることによって実現することができる。
(位相差フィルムを用いる構成)
上記の例において、波長板121,125とは異なる任意の位相差γ3を有する位相差フィルム(たとえばλ/4フィルム)を波長板121,125と組み合わせて使用してもよい。これにより、位相差特性ならびに方位角特性が使用する各波長に合うように、より柔軟な調整を行うことが可能となる。
図27−1は、位相差フィルムを組み合わせた積層波長板の一例を示す図である。図27−1において、図22に示した部分と同一の部分については説明を省略する。図27−1に示すように、たとえば、位相差フィルム127を波長板121と液晶セル123の間に設けることができる。また、位相差フィルム128を波長板125の後段に設けることができる。また、波長板121を設けない構成とする場合は、位相差フィルム127は設けなくてもよい。位相差フィルム127,128の光軸は、波長板121,125と平行もしくは垂直とすることができる。
まず、位相差フィルム(たとえば位相差フィルム127,128)のスロー軸と波長板121,125のスロー軸とを平行にする場合について説明する。
図27−2は、位相差フィルムの波長分散の特性の例を示すグラフである。図27−3は、位相差フィルムを設けた液晶デバイスの波長に対するリタデーションの特性の例を示すグラフである。図27−2および図27−3において、横軸は、光の波長λ[nm]を示している。縦軸は、リタデーションΓe(位相差)を示している。
図27−2に示すリタデーション特性2721は、波長板121,125の波長に対するリタデーションΓeの変化特性を示している。リタデーション特性2722は、位相差フィルム127,128の波長に対するリタデーションΓeの変化特性の一例を示している。図27−2のリタデーション特性2723は、位相差フィルム127,128の波長に対するリタデーションΓeの変化特性の他の例を示している。
位相差フィルム127,128には、リタデーション特性2722,2723のように、波長板121,125と異なる波長分散をもつ位相差フィルムを適用することができる。そして、位相差フィルム127,128と波長板121,125とのスロー軸を揃えるように設計する。
図27−3に示すリタデーション特性2731は、位相差フィルム127,128を設けない場合の液晶デバイス120の波長に対するリタデーションΓeの変化特性を示している。リタデーション特性2732は、リタデーション特性2722を有する位相差フィルム127,128を設けた場合の液晶デバイス120の波長に対するリタデーションΓeの変化特性を示している。リタデーション特性2733は、リタデーション特性2723を有する位相差フィルム127,128を設けた場合の液晶デバイス120の波長に対するリタデーションΓeの変化特性を示している。
図27−2および図27−3に示すように、位相差フィルム127,128を組み合わせることで目的の位相差をとる波長位置を変化させることができるため、使用する波長への柔軟な対応が可能となる。なお、上記の例ではλ/4フィルムを位相差フィルム127,128として用いているが、位相差フィルム127,128の位相差はλ/4に限らない。
図27−4は、位相差フィルムを設けた液晶デバイスの波長に対する方位角の特性の例を示すグラフである。図27−4において、横軸は、光の波長λ[nm]を示している。縦軸は、液晶デバイス120の方位角Ψeを示している。図27−4に示す方位角特性2741は、位相差フィルム127,128を設けない場合の液晶デバイス120における波長に対する方位角Ψeの変化特性を示している。
方位角特性2742は、リタデーション特性2722を有する位相差フィルム127,128を設けた場合の液晶デバイス120における波長に対する方位角Ψeの変化特性を示している。方位角特性2743は、リタデーション特性2723を有する位相差フィルム127,128を設けた場合の液晶デバイス120における波長に対する方位角Ψeの変化特性を示している。
方位角特性2741〜2743に示すように、液晶デバイス120の方位角Ψeは、位相差フィルム127,128を設けない場合と同様に、位相差が極小値または極大値となる点で±45degとなる。
図27−5は、位相差フィルムの枚数によるリタデーションの特性の変化の一例を示す図である。図27−5において、横軸は、光の波長λ[nm]を示している。縦軸は、リタデーションΓe(位相差)を示している。
図27−5のリタデーション特性2751〜2753は、リタデーション特性2722を有する位相差フィルム(たとえば位相差フィルム127,128)の枚数を0枚,1枚,2枚とした場合のリタデーションΓeの変化特性を示している。
このように、位相差フィルムの枚数を変化させることによっても液晶デバイス120のリタデーションΓeの特性を調整することが可能である。また、位相差フィルム(たとえば位相差フィルム127,128)の枚数を3枚以上としてもよい。
図27−6は、位相差フィルムの枚数による方位角の特性の変化の一例を示す図である。図27−6において、横軸は、光の波長λ[nm]を示している。縦軸は、液晶デバイス120の方位角Ψeを示している。図27−6に示す方位角特性2761〜2763は、リタデーション特性2722を有する位相差フィルム(たとえば位相差フィルム127,128)の枚数を0枚,1枚,2枚とした場合の方位角Ψeの変化特性を示している。
方位角特性2761〜2763に示すように、液晶デバイス120の方位角Ψeは、位相差フィルム127,128を設けない場合と同様に、位相差が極小値または極大値となる点で±45degとなる。
また、位相差フィルム(たとえば位相差フィルム127,128)のスロー軸と波長板121,125のスロー軸とを直交させて組み合わせることもできる。
図27−7は、位相差フィルムと波長板のスロー軸を直交させた場合の位相差フィルムの枚数によるリタデーションの特性の変化の一例を示す図である。図27−7において、横軸は、光の波長λ[nm]を示している。縦軸は、リタデーションΓe(位相差)を示している。
図27−7のリタデーション特性2771〜2773は、位相差フィルム(たとえば位相差フィルム127,128)のスロー軸と波長板121,125のスロー軸とを直交させた場合において、リタデーション特性2722を有する位相差フィルムの枚数を0枚,1枚,2枚とした場合のリタデーションΓeの変化特性を示している。
リタデーション特性2771〜2773に示すように、位相差フィルムのスロー軸と波長板121,125のスロー軸とを直交させた場合は、位相差フィルムのスロー軸と波長板121,125のスロー軸とを平行にした場合と比較して、リタデーションΓeの変化特性のピーク位置を逆方向にシフトさせることができる。
図27−8は、位相差フィルムと波長板のスロー軸を直交させた場合の位相差フィルムの枚数による方位角の特性の変化の一例を示す図である。図27−8において、横軸は、光の波長λ[nm]を示している。縦軸は、方位角Ψeを示している。
図27−8の方位角特性2781〜2783は、位相差フィルム(たとえば位相差フィルム127,128)のスロー軸と波長板121,125のスロー軸とを直交させた場合において、リタデーション特性2722を有する位相差フィルムの枚数を0枚,1枚,2枚とした場合の方位角Ψeの変化特性を示している。
方位角特性2781〜2783に示すように、位相差フィルムのスロー軸と波長板121,125のスロー軸とを直交させた場合は、位相差フィルムのスロー軸と波長板121,125のスロー軸とを平行にした場合と比較して、方位角Ψeの変化特性のピーク位置をリタデーションΓeの変化特性のピーク位置と同様に逆方向にシフトさせることができる。
図28−1は、光学デバイスの一例を示す斜視図である。図28−1において、図1−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図28−1に示すように、赤色光源311、緑色光源312および青色光源313と、液晶デバイス120と、の間に偏光板2811〜2813を設けてもよい。
赤色光源311、緑色光源312および青色光源313から出力されたレーザ光は、それぞれ偏光板2811〜2813へ入射する。偏光板2811は、赤色光源311から出射されたレーザ光のうちの透過偏光方向2821の直線偏光成分のみを透過させて液晶デバイス120へ出射する偏光子である。偏光板2812は、緑色光源312から出射されたレーザ光のうちの透過偏光方向2822の直線偏光成分のみを透過させて液晶デバイス120へ出射する偏光子である。
偏光板2813は、青色光源313から出射されたレーザ光のうちの透過偏光方向2823の直線偏光成分のみを透過させて液晶デバイス120へ出射する偏光子である。たとえば図23に示した第一の例のように、使用する各波長においてリタデーションΓeが一致する場合は、図28−1に示すように、偏光板2811〜2813が透過させる直線偏光成分の透過偏光方向2821〜2823をいずれも所定方向に揃えておく。これにより、液晶デバイス120から出力される各波長成分を同一の円偏光とすることができる。
なお、赤色光源311、緑色光源312および青色光源313が直線偏光のレーザ光を出射する場合は、赤色光源311、緑色光源312および青色光源313からの各レーザ光の偏光方向が、それぞれ透過偏光方向2821〜2823とほぼ一致するように、赤色光源311、緑色光源312および青色光源313の角度を調整しておいてもよい。また、この場合は、偏光板2811〜2813を省いた構成とすることも可能である。これにより、偏光板2811〜2813における光損失を抑えることができる。
偏光方向2831〜2833は、液晶デバイス120から出射されるレーザ光における、それぞれ赤色、緑色および青色の各波長成分における偏光方向を示している。図28−1に示す例では、各波長成分における偏光方向は同じ方向の円偏光となっている。
図28−2は、光学デバイスの他の例を示す斜視図である。図28−2において、図28−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。たとえば図25に示した第二の例のように、使用する各波長においてリタデーションΓeが±π/2となる場合は、図28−2に示すように、偏光板2811〜2813が透過させる直線偏光成分の透過偏光方向2821〜2823を90°ずらしておく。
図25に示した第二の例では、青色および赤色の各波長においてはリタデーションΓeがπ/2となり、緑色の波長においてはリタデーションΓeが3π/2(−π/2)となっている。この場合は、赤色および青色に対応する透過偏光方向2821,2823を揃えておくとともに、緑色に対応する透過偏光方向2822は透過偏光方向2821,2823に対して90°ずらしておく。これにより、液晶デバイス120から出力される各波長成分を同一の円偏光とすることができる。
また、図28−1および図28−2に示した光学デバイス100においては、液晶デバイス120への各入射偏光と波長板121(1枚目の波長板)の遅相軸方向が平行または垂直であるため、波長板121を省いた構成としてもよい。
図29は、各波長における波長板の厚みに対するリタデーション特性の一例を示すグラフである。図29において、横軸は、波長板121,125の厚みd1を示している。縦軸は、液晶デバイス120のリタデーションΓeを示している。リタデーション特性2901〜2903は、それぞれ青色、緑色および赤色の波長における、波長板121,125の厚みd1に対するリタデーションΓeの特性を示している。リタデーション2904は、π/2のリタデーションを示している。
実施例1にかかる製造支援装置は、波長板121,125の屈折率Δn1(λ)と、液晶セル123の厚みd2と、液晶セル123の屈折率Δn2(λ)と、波長板121,125および液晶セル123の各スロー軸の間の角度Ψと、上記(15)式または(16)式と、に基づいて、各波長成分について、波長板121,125の厚みd1ごとのリタデーションΓeを算出し、厚みd1ごとのリタデーションΓeの計算結果を出力する。たとえば、製造支援装置は、厚みd1ごとのリタデーションΓeの計算結果を、図29に示すグラフのように表示することで出力する。
これにより、液晶デバイス120の設計者は、液晶デバイス120のリタデーションΓeが各波長成分において所望のリタデーションに近くなる波長板121,125の厚みd1を容易に選択することができる。たとえば、符号2905,2906に示す位置の厚みd1を選択することで、液晶デバイス120のリタデーションΓeが各波長成分においてπ/2に近くなり、各波長成分において1/4波長板として動作する液晶デバイス120を設計することができる。
<一般的な条件式>
上記(15)式および(16)式においては、Ψ=67.5°としてリタデーションΓeを示したが、より一般的には、波長λに対するリタデーションΓeは下記(17)式によって示すことができる。すなわち、使用する各波長において、下記(17)式によって算出されるリタデーションΓeが±π/2×(2n−1)に近づくように波長板121,125の厚みd1を設計する。これにより、使用する各波長において、液晶デバイス120を1/4波長板として動作させることができる。
上記(17)式において、波長板121,125の屈折率Δn1(λ)は、上記のCauchyの分散公式から、a1+b1/λ2+c1/λ4…によって近似することができる。また、液晶セル123の屈折率Δn2(λ)は、a2+b2/λ2+c2/λ4…によって近似することができる。
すなわち、波長板121,125の材料に固有の係数をA1,A2,A3,…Am(mは自然数)とすると、波長板121,125の屈折率Δn1(λ)は、A1+A2/λ2+A3/λ4+A4/λ6…+A(m)/λ^(2(m−1))によって近似することができる。また、液晶セル123の材料に固有の係数をB1,B2,B3,…Bmとすると、液晶セル123の屈折率Δn2(λ)は、B1+B2/λ2+B3/λ4+B4/λ6…+B(m)/λ^(2(m−1))によって近似することができる。
このように、実施例1にかかる製造方法においては、まず、第一決定工程として、液晶セル123の厚みd2が決定される。また、第二決定工程として、波長板121,125および液晶セル123の各スロー軸の間の角度Ψが決定される。そして、第三決定工程として、第一決定工程および第二決定工程による各決定結果に基づいて、波長板121,125の厚みd1が、使用する各波長において、液晶デバイス120が1/4波長板として動作する厚みに決定される。なお、第一決定工程および第二決定工程の順序は入れ替えてもよい。
これにより、使用する各波長において、液晶デバイス120が1/4波長板として動作し、波長ごとの偏光方向のばらつきを抑えることができる。このため、たとえばプロジェクタ700において、レーザ光の各波長成分の偏光状態をより精度よく制御することができる。したがって、レーザ光の各波長成分の消光比のばらつきを抑え、レーザ光をスクリーンに投影した画像の画質を向上させることができる。
また、各波長成分について、偏光状態をたとえば右回りの円偏光と左回りの円偏光とに切り替えることができる。このため、レーザ光をスクリーンに投影した画像の各波長成分のスペックルを低減して画質をより向上させることができる。また、映像の偏光状態をたとえば右回りの円偏光と左回りの円偏光とに切り替えることで、円偏光フィルタ方式の三次元画像を生成することもできる。
なお、使用する各波長において、上記(17)式によって算出されるリタデーションΓeが±π/2×(2n−1)となる波長板121,125の厚みd1が定まらない場合もあり得る。これに対して、たとえば、各レーザ光の各波長帯域内において、リタデーションΓeが±π/2×(2n−1)となる波長板121,125の厚みd1が少なくとも1つは存在するように、波長板121,125の材料や液晶デバイス120を設計することが望ましい。
各レーザ光の各波長帯域としては、たとえば、青色のレーザ光の波長帯域を435〜480[nm]とし、緑色のレーザ光の波長帯域を500〜560[nm]とし、赤色のレーザ光の波長帯域を610〜750[nm]とすることができる。
図30は、実施例1にかかる製造支援装置のハードウェア構成の一例を示す図である。実施例1にかかる製造支援装置は、たとえば図30に示す情報処理装置3000によって実現することができる。情報処理装置3000は、CPU3010と、メインメモリ3020と、補助メモリ3030と、ユーザインタフェース3040と、通信インタフェース3050と、を備えている。CPU3010、メインメモリ3020、補助メモリ3030、ユーザインタフェース3040および通信インタフェース3050は、バス3001によって接続されている。
CPU3010(Central Processing Unit)は、情報処理装置3000の全体の制御を司る。メインメモリ3020は、たとえばRAM(Random Access Memory)である。メインメモリ3020は、CPU3010のワークエリアとして使用される。補助メモリ3030は、たとえば、ハードディスク、光ディスク、フラッシュメモリなどの不揮発メモリである。補助メモリ3030には、情報処理装置3000を動作させる各種のプログラムが記憶されている。補助メモリ3030に記憶されたプログラムは、メインメモリ3020にロードされてCPU3010によって実行される。
ユーザインタフェース3040は、たとえば、ユーザからの操作入力を受け付ける入力デバイスや、ユーザへ情報を出力する出力デバイスなどを含む。入力デバイスは、たとえばキー(たとえばキーボード)やリモコンなどによって実現することができる。出力デバイスは、たとえばディスプレイやスピーカなどによって実現することができる。また、タッチパネルなどによって入力デバイスおよび出力デバイスを実現してもよい。ユーザインタフェース3040は、CPU3010によって制御される。
通信インタフェース3050は、たとえば、無線や有線によって情報処理装置3000の外部との間で通信を行う通信インタフェースである。通信インタフェース3050は、CPU3010によって制御される。
たとえば、補助メモリ3030には、上記(15)式または(16)式や、(15)式または(16)式による演算を行う演算プログラムなどが記憶される。また、ユーザインタフェース3040や通信インタフェース3050からは、液晶セル123の厚みd2、角度Ψ、使用波長λB,λG,λRなど、上記(15)式または(16)式による演算を行うための各パラメータが入力される。ユーザインタフェース3040や通信インタフェース3050から入力された各パラメータはメインメモリ3020に記憶される。
CPU3010は、補助メモリ3030に記憶された上記(15)式または(16)式および演算プログラムと、メインメモリ3020に記憶された各パラメータと、に基づいて、各波長成分について、厚みd1ごとのリタデーションΓeを算出する。そして、CPU3010は、厚みd1とリタデーションΓeとの関係を、たとえばユーザインタフェース3040や通信インタフェース3050によって出力する。
ただし、情報処理装置3000の構成は上記に限らない。たとえば、上記(15)式または(16)式や演算プログラムなどは、情報処理装置3000に記憶されておらず、外部のシミュレーション装置に記憶されていてもよい。情報処理装置3000は、たとえば通信インタフェース3050を介して、外部のシミュレーション装置へ各パラメータを送信し、厚みd1ごとのリタデーションΓeの計算結果を受信し、受信した計算結果を出力してもよい。
<液晶デバイスを1/2波長板として使用する場合>
つぎに、液晶デバイス120を1/2波長板として使用する場合について説明する。なお、液晶デバイス120を1/2波長板として使用する場合は、液晶セル123の厚みを制御する必要があるため、液晶セル123には、厚みがより制御しやすい図8−1〜図8−4に示したような、レーザ光の進行方向からみて放射状に電極が形成されている液晶セルを用いることが好ましい。
液晶デバイス120を1/2波長板として使用するためには、液晶デバイス120のリタデーションΓe=±π×(2n−1)とすればよい(nは自然数、±は+または−を示す)ため、cos(Γe/2)=0かつsin(Γe/2)=±1となる。また、液晶セル123は、所定波長(たとえば緑色の波長)で1/2波長板となるように設計され、γ2=πとなる。したがってsin(γ2/2)=1となる。また、波長板121,125は、所定波長(たとえば緑色の波長)で1/4波長板となるように設計される。
たとえば、偏光方向を0度と90度の直線偏光に切り替えるためにはΨe=45°となればよいため、上記(4)式は、上記のcos(Γe/2)=0かつsin(Γe/2)=±1と、sin(γ2/2)=1と、によりsin(2Ψe)=sin(2Ψ)=1となる。したがって、波長板121,125と液晶セル123との間の方位角Ψを、45°または135°、すなわちΨ=π/4×(2n−1)とすればよい。
上記(3)式に、上記(10)式と、Ψ=π/4×(2n−1)と、各光源によって出射される各レーザ光の波長と、を代入し、上記(3)式が0に近づくような液晶セル123の材料および厚みd2の再選択を行う。これにより、各光源によって出射される各レーザ光の波長において、液晶デバイス120(積層波長板)を1/2波長板として動作させることができる。
たとえば、波長板121,125と液晶セル123との間の方位角Ψを45°にしたとする。Ψ=π/4と、γ1=γ1B,γ1G,γ1Rと、γ2=γ2B,γ2G,γ2Rと、を上記(3)式に代入することで、下記(18)式を得ることができる。
上記(18)式は、積和公式により、下記(19)式のように変形することができる。
また、上記のように、屈折率Δnをa+b/λ2+c/λ4(第三項まで)によって近似すると、γ1B,γ1G,γ1R,γ2B,γ2G,γ2Rは、上記(10)式により上記(14)式のように示すことができる。また、波長板121,125は所定波長(たとえばλG)において1/4波長板として動作するため、波長板121,125における係数a1,b1,c1および上記(14)式によって波長板121,125の厚みd1が決まる。
また、上記(18)式を変形することにより、液晶デバイス120における波長λB,λG,λRに対するリタデーションΓeは、下記(20)式のように示すことができる。
上記(20)式は、積和公式により、下記(21)式のように変形することができる。
したがって、上記(19)式または(20)式の波長λB,λG,λRに対するリタデーションΓeが±π×(2n−1)に近づくように、液晶セル123の厚みd2を選択する。これにより、波長λB,λG,λRの各波長成分において、液晶デバイス120(積層波長板)を1/2波長板として動作させることができる。
図31は、液晶デバイスを1/2波長板として使用する場合の波長に対するリタデーションの特性の例を示すグラフである。図31において、横軸は、光の波長λ[nm]を示している。縦軸は、液晶デバイス120のリタデーションΓe(位相差)を示している。リタデーション特性3101は、液晶セル123が、1/2波長板として動作する単体の液晶セルであると仮定した場合の波長に対するリタデーションΓeの変化特性を参考として示している。
リタデーション特性3102は、波長板121,125および液晶セル123によって構成される液晶デバイス120における波長に対するリタデーションΓeの変化特性を示している。リタデーション特性3102に示すように、波長板121,125および液晶セル123によって構成される液晶デバイス120においては、波長に対してリタデーションΓeが周期的に変化している。
ここでは、青色のレーザ光に対応する波長を448[nm]、緑色のレーザ光に対応する波長を510[nm]、赤色のレーザ光に対応する波長を660[nm]とする。たとえば、青色のレーザ光に対応する波長448[nm]においては、リタデーションΓeが約πとなっている。また、緑色のレーザ光に対応する510[nm]および赤色のレーザ光に対応する660[nm]においても、リタデーションΓeが約πとなっている。
このように、使用する複数の波長においてリタデーションΓeが所望の値となるように、液晶セル123の厚みd2を設計することで、使用する各波長成分において液晶デバイス120を1/2波長板として動作させることができる。
図32は、液晶デバイスを1/2波長板として使用する場合の方位角の特性の例(Ψ=π/4)を示すグラフである。図32において、横軸は、光の波長λ[nm]を示している。縦軸は、液晶デバイス120の方位角Ψeを示している。
図32に示す方位角特性3210は、液晶デバイス120において、波長板121,125のスロー軸と、液晶セル123のスロー軸と、の間の方位角ΨをΨ=π/4とした場合の波長に対する方位角Ψeの変化特性を示している。方位角特性3210に示すように、Ψ=π/4とした場合の液晶デバイス120は、使用する各波長(448[nm]、510[nm]および660[nm])において、液晶デバイス120の方位角Ψeが約−45°となっている。
図31および図32に示したように、液晶セル123の厚みd2の設計により、使用する各波長(448[nm]、510[nm]および660[nm])において、液晶デバイス120のリタデーションΓeをπ、液晶デバイス120の方位角Ψeを±45°に揃えることができる。このため、各波長の入射時の偏光方向を揃えることで、液晶デバイス120から出力される各波長成分を0度の入射直線偏光に対して90度回転した同一の直線偏光とすることができる。
液晶デバイス120を1/2波長板として使用する場合においては、上記の製造支援装置を用いて、使用する各波長において、上記(17)式によって算出されるリタデーションΓeが±π×(2n−1)に近づくように液晶セル123の厚みd2を設計する。これにより、使用する各波長において、液晶デバイス120を1/2波長板として動作させることができる。
たとえば、上記のCPU3010は、補助メモリ3030に記憶された上記(15)式または(16)式および演算プログラムと、メインメモリ3020に記憶された各パラメータと、に基づいて、各波長成分について、厚みd2ごとのリタデーションΓeを算出する。そして、CPU3010は、厚みd2とリタデーションΓeとの関係を、たとえばユーザインタフェース3040や通信インタフェース3050によって出力する。
このように、実施例1にかかる製造方法においては、まず、第一決定工程として、波長板121,125の厚みd1が決定される。また、第二決定工程として、波長板121,125および液晶セル123の各スロー軸の間の角度Ψが決定される。そして、第三決定工程として、第一決定工程および第二決定工程による各決定結果に基づいて、液晶セル123の厚みd2が、使用する各波長において、液晶デバイス120が1/2波長板として動作する厚みに決定される。なお、第一決定工程および第二決定工程の順序は入れ替えてもよい。
これにより、使用する各波長において、液晶デバイス120が1/2波長板として動作し、波長ごとの偏光方向のばらつきを抑えることができる。このため、たとえばプロジェクタ700において、レーザ光の各波長成分の偏光状態をより精度よく制御することができる。したがって、レーザ光の各波長成分の消光比のばらつきを抑え、レーザ光をスクリーンに投影した画像の画質を向上させることができる。
また、各波長成分について、偏光状態をたとえば0度の直線偏光と90度の直線偏光とに切り替えることができる。このため、レーザ光をスクリーンに投影した画像の各波長成分のスペックルを低減して画質をより向上させることができる。また、映像の偏光状態をたとえば0度の直線偏光と90度の直線偏光とに切り替えることで、直線偏光フィルタ方式の三次元画像を生成することもできる。
なお、使用する各波長において、上記(17)式によって算出されるリタデーションΓeが±π×(2n−1)となる液晶セル123の厚みd2が定まらない場合もあり得る。これに対して、たとえば、各レーザ光の各波長帯域内において、リタデーションΓeが±π×(2n−1)となる液晶セル123の厚みd2が少なくとも1つは存在するように、波長板121,125の材料や液晶デバイス120を設計することが望ましい。
(クロストークを考慮した積層波長板の設計)
図33は、三次元映像の視聴システムの構成の一例を示す図である。図33に示すレーザ光源3310(Laser light source)には、たとえば図1−2に示したRGBレーザ光源111を適用することができる。図33に示す偏光板3320は、たとえば図1−2に示した偏波保持ファイバ112に対応する。
図33に示す液晶デバイス3330には、たとえば図1−2に示した液晶デバイス120を適用することができる。図33に示す液晶セル3331には、たとえば図1−2に示した液晶セル123を適用することができる。図33に示す波長板3332には、たとえば図1−2に示した波長板125を適用することができる。
図33に示す偏光メガネ3340には、たとえば図9−2に示した三次元グラス930を適用することができる。この場合は、図33に示す左目用のグラス3341は、たとえば図9−2に示したグラス931に対応する。また、図33に示す右目用のグラス3342は、たとえば図9−2に示したグラス932に対応する。
つぎに、偏光メガネ3340のグラス3341,3342の構成および動作について説明する。ここでは、液晶デバイス3330から、右回りの円偏光の光と、左回りの円偏光の光と、が交互に出射される場合について説明する。この場合に、たとえば、右回りの円偏光の光は、グラス3341においては遮断され、グラス3342においては透過すべき光であるとする。また、左回りの円偏光の光は、グラス3341を透過し、グラス3342においては遮断すべき光であるとする。
また、ここでは、液晶デバイス3330から右回りの円偏光の光が出射されるタイミングについて説明するが、液晶デバイス3330から左回りの円偏光の光が出射されるタイミングについても同様である。
図34−1は、左目用のグラスの構成の一例を示す図である。図34−1に示すように、左目用のグラス3341は、たとえば、波長板3411および偏光板3412によって実現することができる。波長板3411は1/4波長板である。したがって、波長板3411のリタデーションは、理想的にはπ/2であるが、実際には波長分散により波長に応じてπ/2からずれている。
偏光状態3413は、グラス3341へ入射する光の偏光状態を示している。偏光状態3413に示すように、グラス3341へ入射する光は右回りの円偏光になっている。波長板3411は、理想的には、グラス3341へ入射した光の偏光状態を、右回りの円偏光から、偏光板3412の偏光軸方向に対して垂直な方向の直線偏光3414にする。
しかし、上記のように波長板3411のリタデーションは波長に応じてπ/2からずれているため、波長板3411を通過した光の偏光状態は、直線偏光3414に近い楕円偏光3415となる。したがって、波長板3411を通過した光は、偏光板3412によって完全には遮断されず、一部が偏光板3412を透過する。
図34−2は、右目用のグラスの構成の一例を示す図である。図34−2に示すように、右目用のグラス3342は、たとえば、波長板3421および偏光板3422によって実現することができる。波長板3421は1/4波長板である。したがって、波長板3421のリタデーションは、理想的にはπ/2であるが、実際には波長分散により波長に応じてπ/2からずれている。
偏光状態3423は、グラス3342へ入射する光の偏光状態を示している。偏光状態3423に示すように、グラス3342へ入射する光は右回りの円偏光になっている。波長板3421は、理想的には、グラス3342へ入射した光の偏光状態を、右回りの円偏光から、偏光板3422の偏光軸方向に対して平行な方向の直線偏光3424にする。
しかし、上記のように波長板3421のリタデーションは波長に応じてπ/2からずれているため、波長板3421を通過した光の偏光状態は、直線偏光3424に近い楕円偏光3425となる。したがって、波長板3421を通過した光は、偏光板3422を完全に透過せず、一部が偏光板3422によって遮断される。
このように、波長板3411や波長板3421におけるリタデーションのずれにより、グラス3341においては遮断され、グラス3342においては透過すべき右回りの円偏光の光の一部がグラス3341を透過するクロストークが生じる。
左目用のグラス3341の透過光の強度P1は、ジョーンズマトリクスによりたとえば下記(22)式のように示すことができる。右目用のグラス3342の透過光の強度P2は、ジョーンズマトリクスによりたとえば下記(23)式のように示すことができる。下記(22)式および(23)式において、リタデーションΓg1,Γg2はそれぞれ波長板3411,3421のリタデーションを示している。
上記(22)式に示すグラス3341の透過光の強度P1と、上記(23)式に示すグラス3342の透過光の強度P2と、の比がグラス3341,3342の間のクロストークに相当する。したがって、波長板3411,3421のリタデーションΓg1,Γg2、上記(22)式および(23)式に基づいて、波長に対するクロストークの特性を求めることができる。
また、リタデーションΓeは、上記(17)式のように、波長板3332(第一波長板)の屈折率Δn1(λ)と、液晶セル3331の屈折率Δn2(λ)と、波長板3332の厚みd1と、液晶セル3331の厚みd2と、波長板3332と液晶セル3331の各遅相軸の間の角度Ψと、によって示すことができる。また、Ψeは、上記(4)式に基づき下記(24)式によって示すことができる。このため、波長板3332の厚みd1ごとに、波長に対するクロストークの特性を求めることができる。
また、波長板3411のリタデーションΓg1は、たとえばコーシーの分散公式から下記(25)式によって示すことができる。また、波長板3421のリタデーションΓg2は、たとえばコーシーの分散公式から下記(26)式によって示すことができる。
上記(25)式において、ag1,bg1,cg1,dg1は、波長板3411の材料に固有の係数である。上記(26)式において、ag2,bg2,cg2,dg2は、波長板3421の材料に固有の係数である。
図35−1は、波長板の厚みに対する各波長成分のクロストークの一例を示すグラフである。図35−2は、図35−1の一部を拡大して示すグラフである。図35−1,図35−2において、横軸は波長板3332の厚みd1を示し、縦軸はグラス3341,3342の間のクロストークを示している。
クロストーク特性3501〜3503は、それぞれ青色、緑色および赤色の波長(448[nm]、510[nm]および660[nm])における、波長板3332の厚みd1に対するクロストークの特性を示している。クロストーク特性3501〜3503は、波長板3332の屈折率Δn1(λ)と、液晶セル3331の屈折率Δn2(λ)と、液晶セル3331の厚みd2と、波長板3332と液晶セル3331の各遅相軸の間の角度Ψと、波長板3411,3421のリタデーションΓg1,Γg2と、上記(17)式、(22)式〜(24)式と、によって算出することができる。
クロストーク特性3501〜3503により、使用する各波長(448[nm]、510[nm]および660[nm])のクロストークが小さくなる波長板3332の厚みd1を求めることが可能になる。たとえば、クロストーク特性3501〜3503のすべてにおいてクロストークが小さくなる、符号3510に示す厚みを、波長板3332の厚みd1として選択することにより、使用する各波長において偏光メガネ3340におけるクロストークが小さくなる液晶デバイス3330を製造することが可能になる。
実施例2にかかる製造支援装置は、波長板3332の屈折率Δn1(λ)と、液晶セル3331の屈折率Δn2(λ)と、液晶セル3331の厚みd2と、波長板3332および液晶セル3331の各スロー軸の間の角度Ψと、波長板3411,3421のリタデーションΓg1,Γg2と、上記(17)式、(22)式〜(24)式と、に基づいて、各波長成分について、グラス3341を透過する光の強度P1と、グラス3342を透過する光の強度P2と、の波長板3332の厚みd1ごとの比を算出し、計算結果を出力する。たとえば、製造支援装置は、厚みd1ごとの強度P1,P2の比の計算結果を、図35−1,図35−2に示すグラフのように表示することで出力する。
これにより、液晶デバイス3330(液晶デバイス120)の設計者は、クロストークが各波長成分において小さくなる波長板3332の厚みd1を容易に選択することができる。たとえば、符号3510に示す位置の厚みd1を選択することで、液晶デバイス3330のクロストークが各波長成分において0.5%以下となり、各波長成分においてクロストークを抑えた液晶デバイス3330を設計することができる。このため、偏光メガネ3340を用いた円偏光フィルタ方式の三次元画像の画質を向上させることができる。
このように、実施例2にかかる製造方法においては、まず、第一決定工程として、液晶セル3331の厚みd2が決定される。また、第二決定工程として、波長板3332および液晶セル3331の各スロー軸の間の角度Ψが決定される。そして、算出工程として、第一決定工程および第二決定工程による各決定結果と、偏光メガネ3340の偏光板3412および偏光板3422のリタデーションΓg1,Γg2と、に基づいて、グラス3341(第一偏光部材)を透過する光の強度P1と、グラス3342(第二偏光部材)を透過する光の強度と、の比が波長板3332の厚みd1ごとに算出される。つぎに、第三決定工程として、算出工程による算出結果に基づいて、波長板3332の厚みd1が決定される。なお、第一決定工程および第二決定工程の順序は入れ替えてもよい。
実施例2にかかる製造支援装置は、たとえば図30に示した情報処理装置3000によって実現することができる。たとえば、補助メモリ3030には、上記(17)式、(22)式〜(24)式による演算を行う演算プログラムなどが記憶される。また、ユーザインタフェース3040や通信インタフェース3050からは、液晶セル3331(液晶セル123)の厚みd2、角度Ψ、使用波長λB,λG,λRなど、上記(17)式、(22)式〜(24)式による演算を行うための各パラメータが入力される。ユーザインタフェース3040や通信インタフェース3050から入力された各パラメータはメインメモリ3020に記憶される。
CPU3010は、補助メモリ3030に記憶された上記(17)式、(22)式〜(24)式および演算プログラムと、メインメモリ3020に記憶された各パラメータと、に基づいて、各波長成分について、厚みd1ごとのクロストークを算出する。そして、CPU3010は、厚みd1とクロストークとの関係を、たとえばユーザインタフェース3040や通信インタフェース3050によって出力する。
ただし、情報処理装置3000の構成は上記に限らない。たとえば、上記(17)式、(22)式〜(24)式や演算プログラムなどは、情報処理装置3000に記憶されておらず、外部のシミュレーション装置に記憶されていてもよい。情報処理装置3000は、たとえば通信インタフェース3050を介して、外部のシミュレーション装置へ各パラメータを送信し、厚みd1ごとのクロストークの計算結果を受信し、受信した計算結果を出力してもよい。
また、ここでは図33に示したように液晶セル3331の前段に波長板を設けない構成(たとえば図1−2に対応)において波長板3332の厚みd1を決定する場合について説明した。これに対して、液晶セル3331の前段に波長板を設ける構成(たとえば図1−1に対応)において、液晶セル3331の前段の波長板および波長板3332の厚みd1を決定するようにしてもよい。
図36は、波長に対するクロストークの特性の一例を示すグラフである。図36において、横軸は光の波長λ[nm]を示し、縦軸はグラス3341,3342の間のクロストークを示している。クロストーク特性3610は、波長板3332の厚みd1を選択後の、グラス3341,3342の間のクロストークの波長に対する特性である。
なお、図36においては、簡単のため、波長板3411,3421が理想的な1/4波長板であると仮定し、上記(22)式および(23)式においてΓg1=Γg2=π/2とした場合の強度P1,P2の比を示す下記(27)式によって算出したクロストーク特性3610を示している。
このように、図36に示すクロストーク特性3610は、波長板3411,3421が理想的な1/4波長板であると仮定した場合の特性であるが、波長板3411,3421が理想的な1/4波長板でない場合であっても同様に、波長板3411,3421の実際のリタデーションΓg1,Γg2、上記(17)式、(22)式〜(24)式によりクロストーク特性3610を求めることができる。
クロストーク曲線3611は、クロストーク特性3610の各ピーク点を結んだ曲線である。波長帯域3612は、クロストーク曲線3611において、クロストークが0.5%以下となる波長帯域を示している。波長帯域3613は、クロストーク曲線3611において、クロストークが1%以下となる波長帯域を示している。
クロストーク特性3620は、光学デバイス100において波長板の厚みを調整しなかった場合のクロストーク特性3620である。波長帯域3622は、クロストーク特性3620において、クロストークが0.5%以下となる波長帯域を示している。波長帯域3623は、クロストーク特性3620において、クロストークが1%以下となる波長帯域を示している。
クロストーク特性3630は、仮に、光学デバイス100に代えて1枚の1/4波長板を用いた場合のクロストーク特性3630である。波長帯域3632は、クロストーク特性3630において、クロストークが0.5%以下となる波長帯域を示している。波長帯域3633は、クロストーク特性3630において、クロストークが1%以下となる波長帯域を示している。
波長帯域3622,3623,3632,3633に示すように、光学デバイス100によれば、1枚の1/4波長板を用いた場合に比べて、クロストークが低くなる波長帯域を広くすることができる。また、波長帯域3612,3613,3622,3623に示すように、光学デバイス100の波長板の厚みd1を調整することにより、厚みd1を調整しない場合に比べて、クロストークが低くなる波長帯域をさらに広くすることができる。
また、クロストーク特性3610を求めることにより、クロストークが所定の値以下となる波長帯域を見積もることができる。このため、レーザ光源3310の選択において、見積もった波長帯域を有する光源を選択することによって、偏光メガネ3340におけるクロストークが所定値以下になる液晶デバイス3330を製造することが可能になる。
実施例2にかかる製造支援装置は、上記のように波長板3332の厚みd1ごとの強度P1,P2の比の計算結果を出力した後に、出力した計算結果に基づいて設計者が決定した波長板3332の厚みd1を入力する。そして、製造支援装置は、入力した波長板3332の厚みd1と、波長板3332の屈折率Δn1(λ)と、液晶セル3331の屈折率Δn2(λ)と、液晶セル3331の厚みd2と、波長板3332および液晶セル3331の各スロー軸の間の角度Ψと、波長板3411,3421のリタデーションΓg1,Γg2と、上記(17)式、(22)式〜(24)式と、に基づいて、グラス3341を透過する光の強度P1と、グラス3342を透過する光の強度P2と、の比を波長λごとに算出し、計算結果を出力する。たとえば、製造支援装置は、波長λごとの強度P1,P2の比の計算結果を、図36に示すグラフのように表示することで出力する。
これにより、液晶デバイス3330(液晶デバイス120)の設計者は、クロストークを所定値以下に抑えることができる波長範囲を見積もることができる。そして、設計者は、見積もった波長範囲を有する光源をレーザ光源3310として選択することにより、クロストークを所定値以下に抑えることができる光源を選択することができる。
または、製造支援装置は、強度P1,P2の比を波長λごとに算出し、算出結果に基づいて、強度P1,P2の比が所定値以下になる波長λの範囲を示す情報を出力してもよい。これにより、設計者は、製造支援装置から出力された情報が示す波長範囲を有する光源をレーザ光源3310として選択することにより、クロストークを所定値以下に抑えることができる光源を選択することができる。
このように、実施例2にかかる製造方法においては、上記の第三決定工程の後に、第二算出工程として、第一決定工程、第二決定工程および第三決定工程による決定結果と、偏光メガネ3340の偏光板3412および偏光板3422のリタデーションΓg1,Γg2と、に基づいて、グラス3341(第一偏光部材)を透過する光の強度P1と、グラス3342(第二偏光部材)を透過する光の強度と、の比が波長λごとに算出される。つぎに、特定工程として、第二算出工程によって算出結果に基づいて、強度P1,P2の比が所定値以下になる波長λの範囲が特定される。つぎに、選択工程として、特定工程による特定結果に基づいて、レーザ光源3310に用いる光源が選択される。
(強誘電性液晶を用いた液晶セルの具体例)
つぎに、図8−1から図8−4に示した電極形状をもつ液晶セルの代わりに、強誘電性液晶を用いた液晶セル123の具体例について説明する。ここでは、液晶セル123に強誘電性液晶を用いる場合について説明する。
図37は、強誘電性液晶を用いた液晶セルの具体例を示す断面図である。図37に示すように、液晶セル123は、たとえば、約2[μm]の厚さの液晶層3720を挟持した一対のガラス基板3731,3732と、これら2枚のガラス基板3731,3732を接着するシール材3770とで構成されている。ガラス基板3731,3732のそれぞれの対向面には電極3741,3742が形成されており、その上に配向膜3751,3752が配置され、配向処理がなされている。電極3741,3742は、たとえばITOなどのベタ電極である。
液晶デバイス120を反射型として使用する場合には、ガラス基板3732の外側には、反射板3760を配置する。
波長板121からの光は、第一のガラス基板3731の側から照射される。照射された光は、第一のガラス基板3731、電極3741、配向膜3751、液晶層3720、配向膜3752、電極3742、および第二のガラス基板3732を透過して反射板3760に至り、そこで反射されて、逆の経路を辿ってから出射し、波長板121へ入射する。
また、反射板を省いた構成とすることで、図37に示した液晶セル123を、たとえば図1−1〜図1−6に示した透過型の液晶セル123に適用してもよい。
つぎに、強誘電性液晶の電気光学効果について説明する。図38および図39は、強誘電性液晶の分子長軸方向と電界との関係を示す説明図である。図38および図39では、液晶セル123を、レーザ光の入射側からみた場合の液晶分子を模式的に示しており、図38および図39に沿って液晶の平均的な分子長軸方向について説明する。
図38に示すように、電界Eが図面表(液晶セル123の第一のガラス基板3731)から裏(液晶セル123の第二のガラス基板3732)に向かって印加されると、液晶分子LCMの第一の強誘電状態である平均的な分子長軸方向Mは、配向膜の配向軸OAを中心に角度「θ1」傾いて安定している。一方、図39に示すように、電界Eが図面裏から表に向かって印加されると、液晶分子LCMの第二の強誘電状態である平均的な分子長軸方向Mは、配向膜の配向軸OAに対して時計回りに角度「θ2」傾いて安定している。
すなわち、液晶分子LCMは、分子長軸方向Mを動直線として描くコーン形状の側面上を転移している。また角度「θ1」と角度「θ2」の和(θ1+θ2)が第一の強誘電状態である液晶の平均的な分子長軸方向と、第二の強誘電状態である液晶の平均的な分子長軸方向との間の角度、つまり円錐(コーン)の中心角θ(すなわちコーン角度)となる。強誘電性液晶の材料を種々考慮することで、中心角θの角度を45°に設定することができる。これにより、液晶セル123の基板面と平行な方向にダイレクタ方向124(液晶分子の方向)を上述したように切り替えることができる。
また、以上説明した波長板121,125を液晶素子によって作成することができる。さらに、液晶素子内に電圧を印加することができるように、液晶層の両面に電極を形成する。これにより、液晶素子への印加電圧を制御し、波長板121,125の位相差を微調整することができる。また、波長板121,125の設計および製造が容易となり、温度変化によるレーザ光の波長シフトといった使用環境の変化にも対応が可能となる。
以上説明したように、製造方法および製造支援装置によれば、画質の劣化を抑えつつ装置の小型化を可能にすることができる。また、三次元グラス930の波長分散をキャンセルし、クロストークを抑えた三次元表示機能を実現することができる。