JP6050455B2 - 勾配付き多層光学装置を用いたファン形x線ビーム・イメージング・システム - Google Patents

勾配付き多層光学装置を用いたファン形x線ビーム・イメージング・システム Download PDF

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Description

本発明は、X線イメージング・システムに関し、具体的には、光学装置を用いて所望のスペクトル形状を有するコリメートされたファン形ビームを発生するX線イメージング・システムに関する。
CT及びX線回折のような撮像応用では、線束レベルを増大させることが常に求められている。X線束の増大は、例えばX線源によって放出されるX線放射線を集束させることにより達成され得る。X線は、入射するX線ビームを全反射を用いて境界面から反射させることにより集束され得る。境界面は、複素屈折率がnfの第一の物質の媒体と複素屈折率がnsの第二の物質の媒体との間に形成され得る。典型的には、第一の物質の媒体は空気であり、第二の物質の媒体は固体であり得る。全反射は、第二の媒体の複素屈折率nsの実部が第一の媒体の複素屈折率nfの実部よりも小さく、且つ境界面に対するX線の入射角が全反射について指定される臨界角θCRよりも小さい場合に実現され得る。しかしながら、物質の屈折率のみに基づいて第一の物質の媒体及び第二の物質の媒体のための物質を選択する従来の方法は、反射率について中程度の利得しか生じない。
線束レベルを高めることに加え、X線スペクトルをスペクトル成形することが特定の応用についてX線スペクトルを最適化するもう一つの要件である。放射線写真法撮像及び断層写真法撮像に一般的な一つのアーティファクトは、典型的な制動輻射(多色)スペクトルのX線ビームが物質を透過するときに低エネルギのX線の方が優先的に減衰することから生ずる。この効果は、標本を透過するときのビームの平均エネルギの増大を招き、透過ビームの強度と被透過物質の量との間の関係に非線形性を導入する。この非線形性が、減弱データから再構成される画像に、計算機式断層写真法では線質硬化に寄与するもののようなアーティファクトとして現われる。エネルギの広がりを小さくしたX線ビームを用いると、これらのアーティファクトの幾分かを軽減することができる。具体的には、ビーム強度が、光学系の利用によって元のスペクトルの同じ範囲での強度に関して一定に保たれている又は強化されている場合には、限定された範囲のエネルギの利用によって、特定の応用に望ましい減弱度を与えることができ、また空間分解能及びコントラスト感度に関して最適な画像を形成することができる。多色エネルギ分布から相対的に単色の分布へのスペクトルの成形は、X線画像セットに大幅な向上を可能にする。幾つかの場合には、スペクトル形状の変化、例えば低エネルギX線又は高エネルギX線の何れかの相対比を小さくすることにより、標本の最適な撮像を提供することができる。
但し、二重エネルギ撮像又はエネルギ識別撮像とも呼ばれる多重エネルギX線撮像は、固有の利点を有する。例えば、多重エネルギX線撮像は、保安警備応用、工業応用及び医療応用において走査対象の特定の物質組成についての情報を提供することが明らかにされている。かかるエネルギ識別撮像は、しばしば最も実現し易いアプローチである2以上の異なるX線スペクトルの利用を含めて、様々な方法で達成され得る。画像データが例えば先ず一つのスペクトルを用いて形成され、次いでもう一つのスペクトルを用いて形成される場合には、かかる検査の逐次的な性質に困難な問題が存在する。一つの手法では、関心対象を2回走査する。第一の完全投影データ集合が一つのエネルギについての第一の走査において生成され、次いで、第二の完全投影データ集合が第二のエネルギについての第二の走査において生成される。多くの応用では高スループットが極めて重要な課題であり、標本組成は動的であり、且つ/又は標本位置決めのため繰り返しの走査を行なうことができないので、かかる応用では対象を2回物理的に走査するロジスティクスが許容され得ない場合がある。
従来の多重エネルギX線撮像応用は、典型的な撮像走査での毎ビューの標本化時間に匹敵する時間尺度でスペクトル特性を高速に変化させるために、線源濾波及び/又は高電圧変調を用いている。かかる濾波は、相対的に低いX線エネルギを優先的に減衰させるのに適当な組成を有するフィルタを高速に相次いで挿入することから成っている。かかる方法体系は、減弱が明瞭に分離されたエネルギ区間を発生し得る程度について限定されており、様々な物質を解析するこのアプローチの感度を著しく制約している。異なるスペクトル特性を発生する高電圧変調も具現化されているが、幾つかの場合には成功が限定されている。異なるエネルギにおいて取得されるデータ集合同士の間での標本の移動から生ずる投影の位置合わせの差、及びビュー未満でのX線ビームの変調に伴って生ずるような対象を横断するX線経路の僅かな位置揃え不正を軽減するためには、両アプローチとも困難な問題を抱えている。
典型的には、ファン形ビームが広範な多色X線撮像の状況において用いられており、保安警備応用、工業応用及び医療応用での走査対象の特定の物質組成についての情報を提供している。例えば、ファン形X線ビームは、マンモグラフィ及び医療分野の一般的な放射線写真法撮像、計算機式断層写真法、撮像トモシンセシス撮像、並びにX線回折撮像のようなX線撮像に用いられている。
米国特許出願公開第20090147922号
従来の殆どのX線源は単一のX線発生スポットを有し、スポットの実効的な寸法及び位置は、アノード熱負荷量及び相対的な放出角によって決定され且つ/又は限定されている。X線スポットは典型的には、軸横断方向(ファン角度)及び軸方向(コーン角度)の各撮像方向においてタングステン又は鉛を用いてコリメートされる。CT用2D再構成アルゴリズム(すなわちフィルタ補正逆投影)を用いるためには、X線スポットは、狭く、擬似平面状で、ファン形のX線の薄い層のみが撮像対象を照射するようにコリメートされる。結果として、スポットからの利用可能なX線フォトンの僅かな百分率のみが撮像に用いられ、殆どのX線はコリメータ板に衝突して吸収される。利用可能なX線のさらに多くの百分率を活用するために、X線ビームのコーン角度を拡大することができるが、目標の応用に許容可能な画質を達成するためにはさらに複雑なコーン・ビーム再構成アルゴリズムが必要とされる。故に、X線束利用率対再構成の複雑さのトレードオフが何れのCTイメージング・システムにも存在する。
従って、X線撮像応用に望ましいX線ビームのスペクトル形状を有するファン形X線ビームを提供し得る反射性多層構成が求められている。
一実施形態では、1又は複数のファン形ビームを発生するX線イメージング・システムが提供される。このX線システムは、電子発生源からの電子によって衝突されるとX線を放出するターゲットを含んでいる。ターゲットは、少なくとも一つのターゲット焦点スポットと、ターゲットと連絡して、1又は複数のファン形ビームを発生するように全反射を通じてX線の少なくとも一部を伝達する1又は複数の勾配付き多層光学装置とを含んでいる。勾配付き多層光学装置は、全反射を通じてX線を方向転換させて伝達する第一の勾配付き多層区画を含んでいる。第一の勾配付き多層区画は、実部Re(n1)及び虚部β1を有する第一の複素屈折率n1を含む高屈折率物質層と、実部Re(n2)及び虚部β2を有する第二の複素屈折率n2を有する低屈折率物質層と、前記高屈折率物質層と前記低屈折率物質層との間に配設された勾配帯とを含んでおり、勾配帯は、Re(n1)>Re(n3)>Re(n2)となるような実部Re(n2)及び虚部β3を有する第三の複素実数屈折率n3を有する勾配層を有している。
もう一つの実施形態では、1又は複数のファン形ビームを発生する多重エネルギX線イメージング・システムが提供される。このシステムは、電子発生源と、電子発生源からの電子によって衝突されるとX線を形成するターゲットと、ターゲットを収容する真空室と、X線が真空室を出るときに通る窓と、1又は複数のファン形ビームを発生するのに望ましい範囲のX線エネルギを伝達するように構成されている少なくとも一つの勾配付き多層光学装置とを含んでいる。勾配付き多層光学装置は、全反射を通じて第一の光学X線を方向転換させる第一の光学部分と、第一の光学X線とは異なるエネルギ・レベルにある第二の光学X線を方向転換させる第二の光学部分とを含んでいる。
さらにもう一つの実施形態では、対象を撮像する方法が提供される。この方法は、少なくとも一つの電子ビーム放出器から少なくとも一つのターゲット焦点スポットを有するターゲットへ向けて電子ビームを放出するステップと、電子ビームによって衝突されるのに応答してターゲットからX線を発生するステップとを含んでいる。さらに、この方法は、X線を1又は複数のファン形ビームとして形成するステップを含んでおり、ファン形ビームは、当該1又は複数の勾配付き多層光学装置の少なくとも一つが少なくとも一つのターゲット焦点スポットと連絡するように配置されている1又は複数の勾配付き多層光学装置を通じたX線の全反射を介して発生される。さらに、この方法は、1又は複数の勾配付き多層光学装置を介して伝達される放出X線を用いることにより対象の画像を形成するステップを含んでいる。
高屈折率物質層と、高屈折率物質層の上の勾配帯と、勾配帯の上の低屈折率層とを含む単一の勾配付き多層区画であって、方向転換区画とコリメーション区画とを含むように構成されている単一の勾配付き多層区画の実施形態の一例の詳細断面図である。 第一の層が高屈折率物質層であり、第Nの層が低屈折率物質層であるn層を有する単一の勾配区画の線図である。 発散性X線源の出力をコリメートされたX線ファン・ビームに形成するのに用いられる勾配付き多数物質層を含む多層光学装置の詳細等角図である。 付加的な勾配付き多層区画を含む図2の光学装置の詳細等角図である。 曲面を近似する複数の平坦面を含む多層光学装置の実施形態の一例の詳細等角図である。 発散性X線ビーム入力から実質的に発散性のX線ビーム出力を発生するように構成されている単一の勾配付き多層区画の実施形態の一例の詳細断面図である。 発散性X線ビーム入力から実質的に収束性のX線ビーム出力を発生するように構成されている単一の多層区画の実施形態の一例の詳細断面図である。 矩形断面を有し、ファン形ビームを発生するのに用いられる勾配付き多層光学装置の模式図である。 各々円形断面を有し、ファン形ビームを発生するように構成されている勾配付き多層光学装置の一次元アレイの模式図である。 高屈折率層と、低屈折率層と、対を成す当該勾配層の間に同じ又は異なる高屈折率の層が介設されている複数の勾配層から成る勾配帯とによる多層区画を有する勾配付き多層物質積層体の実施形態の一例の詳細断面図である。 1又は複数の複合勾配層を有する勾配付き多層物質積層体であって、各々の複合勾配層が不連続な勾配副次層を含み、各々の勾配副次層が二つの成分物質を含み、各々の成分物質が異なる実数屈折率を有する勾配付き多層物質積層体の実施形態の一例の詳細断面図である。 図10の勾配付き多層物質積層体の例示的な実施形態に対する代替形態の詳細断面図であって、二つの成分物質の非分離型の分布を有する勾配副次層を示す図である。 本発明の一実施形態による二重エネルギ走査システムのターゲットと共に用いられる一対の勾配付き多層光学装置の模式図である。 勾配付き多層光学装置を用いた計算機式断層写真法イメージング・システムの一例の図である。
本発明は、X線源からのX線の少なくとも一部を方向転換させて所定のスペクトル形状を有するコリメートされたファン形ビームを発生する1又は複数の勾配付き多層光学装置の利用について記載する。本書で用いられる「コリメート」との用語は、発散性X線ビームからのX線放射線の擬似平行ビームの生成を指す。一例では、このビームは、計算機式断層写真法(CT)撮像、X線撮像、トモシンセシス撮像、又はX線回折撮像の1又は複数での応用(医療、工業及び/又は保安警備)のためのファン形ビームであり得る。幾つかの実施形態では、線源スポットからのX線の全て又は一部を、スペクトル分布を意図的に変化させながら単一のコリメートされたファン・ビームとして物理的に成形する。例えば、スペクトルは、線源スペクトルの極く低いエネルギ(<60keV)側の端部及び/又は極く高いエネルギ(>200keV)側の端部について変化させられ得る。
本書に開示される方法及び装置では、最低3種の異なる物質を勾配付き多層積層体に用いて、連続層において実数屈折率を低下させながら連続層の間での実数屈折率の差を最大化することにより、現行よりも高められた全反射を得る。さらに大きい全反射を与える実施形態では、連続層の間での虚部の変化の実数屈折率の変化に対する比が、連続層の間での虚部の変化を最小化すると同時に実数屈折率変化を最大化することにより、最小化される。屈折率の虚部は、X線が通過する物質の質量エネルギ吸収係数に関係する。加えて、各々の連続層は比較的高いX線質量エネルギ吸収特性を有するが、実数屈折率は層から層へ単調に減少する。これらの規準は、現状での反射性X線光学物質よりも最適な実数屈折率変化及びX線吸収特性を提供する。
一般的には、X線エネルギにおける物質の複素屈折率nは、n=1−δ+iβと表現されることができ、式中、項(1−δ)は物質の複素屈折率の実部であり、パラメータβは複素屈折率の虚部であって、物質の質量エネルギ吸収係数に関係する。X線エネルギでは、屈折率の実部は単位量に極く近く、従って通常は単位量からの減分δによって表現され、δは典型的には、10-6以下程度である。
反射率を高めるために、一実施形態では、隣り合った多層物質の間でのβの変化のδの変化に対する比が一般に最小化される。本開示の目的のためには、第一及び第二の層のそれぞれの実数屈折率又は吸収係数とは異なる実数屈折率又は吸収係数を有する他の物質が第一の層と第二の層との間に介設されていないときに、第一の層は第二の層に隣接していると考えられる。勾配付き多層光学系は、入射X線ビームを全反射を通じて方向転換させて反射X線ビームとするのに用いられるように適応構成され得る。反射X線ビームはファン形ビームを形成することができる。勾配付き多層積層体は、複数の多層帯を含み得る。勾配付き多層光学装置は、米国特許出願番号第12/469,121号を有する本出願と共通の譲受人に譲渡された出願“OPTIMIZING TOTAL INTERNAL REFLECTION MULTILAYER OPTICS THROUGH MATERIAL SELECTION”に開示された手法を用いることにより製造され得る。この特許出願を参照により本出願に援用する。
互いに積層された勾配付き多層光学装置区画は、入力面と出力面との間に外面の傾斜を有し得る。幾つかの実施形態では、光学系入力側(線源に最も近い側)の各々の層が同じ又は異なる曲率半径において彎曲して、光学装置の結合された各層が大きい線源立体角を捕捉することを可能にし、これらの線源X線を方向転換させて強くコリメートされたファン形ビームにすることを可能にする。相対的に高い屈折率の層が光学系出力に向かって彎曲するのに伴ってX線は勾配付き多層光学系の層の奥に進むことができる。一実施形態では、勾配付き多層光学装置の収集角は約90°までである。光学装置の収集角は、光学系の主対称軸に対する放出X線フォトンの最大角と定義される。この例では、1°の収集角は、X線源によって光学系の主対称軸に関して約0°〜約1°の範囲で放出されるフォトンが光学装置によって収集されることを示す。同様に、90°の収集角は、光学装置の主対称軸に関して約0°〜約90°の範囲で放出される線源フォトンが光学装置によって収集されることを示す。もう一つの実施形態では、光学系の入力面に位置する勾配付き多層光学装置の層にテーパを設けて、線源X線を捕捉して方向転換させ、層に垂直な方向にある複数の平行ビームにしてもよい。この実施形態では、ファン形は、勾配付き多層光学装置の層の平面に対して平行な方向にあり得る。かかる勾配付き多層光学装置のアレイを積層することもでき、線源からのX線の過半(例えば、約60%〜約90%)を収集し、ファンの平面に垂直な方向に平行ファン・ビームの集合を発生することができる。代替的には、勾配付き多層光学装置は、積層された勾配付き多層光学装置の対を含み得る。一例では、対の一方は、対の他方の鏡像になるように配置され得る。
多層物質積層体を構成する多層帯の数は一切限定されず、多層物質積層体を構成するときの対象となる特定の応用によって決まることを理解されたい。例えば、分解能がマイクロメートル程度である高分解能工業用CTの場合には、積層体の多層の数は10層未満であってよい。大きい光学的収集角が望まれる他の形式のCTでは、層の数は数千であってよい。多層物質積層体は、数十乃至数千の多層区画を含み得る。高屈折率層、低屈折率層、及び高屈折率層と低屈折率層との間に配設された1又は複数の勾配層を有する勾配帯に加えて、多層光学装置はまた、光学装置の最外表面に位置して光学装置の内部から装置の非放出面の端辺を通るX線放射線の放出を防ぐX線不透過性のクラッド層を含み得る。X線不透過性クラッド層は光学装置に配設されることができ、X線が入力面を通って光学装置に入り、光学系出力面を実質的に通って光学装置から出るようにする。
典型的には、高屈折率物質は最小の損失でX線を伝達し、低屈折率物質はX線透過を実質的に遮断する。X線が高屈折率物質と低屈折率物質との間の境界面に遭遇すると、X線が高屈折率物質から低屈折率物質へ走行しており、各物質の間のX線吸収の差が最小であり、また境界面でのX線入射角が全反射の臨界角よりも小さい場合には、X線は反射して高効率で高屈折率物質に戻る。臨界角の値は物質及び入射X線エネルギに依存する。勾配付き多層光学装置を用いると、所望のエネルギのX線を全反射を介して高効率で反射させることが可能になる。適当な曲率を有するように層を成形して適当な厚みを有するように層を作製すると、強くコリメートされたファン形出力ビームを発生することができる。
入射X線ビームの幅は、一つの多層区画の厚みよりも小さくても大きくてもよい。入射X線ビームの幅が一つの多層光学装置の厚みよりも大きいときには、入射X線ビームの様々な部分が光学装置の内部の多層区画の幾つか又は全てを通過し、これらの多層区画の幾つか又は全てによって全反射されて、反射したフォトン・ビームの対応する部分として多層区画から発生する。代替的には、入射フォトン・ビームの幅が一つの光学装置の厚みよりも小さいときには、装置は相対的に小さい線束利得を生ずるが、有用な方向転換能力を提供することができる。
勾配付き多層光学装置を、例えば計算機式断層写真法(CT)撮像、放射線写真法撮像、トモシンセシス撮像、及び高エネルギX線回折撮像のように60keVを上回るエネルギ・レベルで動作する応用に用いることができる。これらの応用の幾つかは、メガボルトのフォトン・エネルギに及ぶエネルギ・レベルで動作する場合がある。幾つかの実施形態では、相対的に高いエネルギ(メガボルト程度)の応用にシリコンを高屈折率物質として用いることができる。一方、相対的に低いエネルギのX線にはホウ素、ベリリウム、及び水素化リチウムの1又は複数を高屈折率物質として用いることができる。例えば、ホウ素、ベリリウム、水素化リチウムの1又は複数を60keVと100keVとの間のX線エネルギに用いることができる。医療応用では、エネルギは140keV未満であり得る。140keV以下のX線エネルギのための低屈折率物質は、タングステン、イリジウム、白金、又はオスミウムから選択され得る。勾配付き多層光学装置を作製するのに用いられる物質に依存して、10MeVまでのX線エネルギを伝達することができる。
幾つかの実施形態では、X線ビームは勾配付き多層光学装置を用いてスペクトル成形される。光学装置に入射する制動輻射スペクトルの場合には、交互層の屈折率によって、反射が禁止される上限の遮断エネルギが決まるので、制動輻射の最高エネルギが遮断されて、通常の制動輻射スペクトルよりも狭い放出エネルギ・スペクトルを生ずる。また、光学装置の入力面及び出力面の形状に依存して、放出スペクトルの極く低いエネルギの部分が実質的に減少し又は解消され得る。
幾つかの実施形態では、多層光学系からの反射X線ビームは、実質的に発散性の入力X線ビーム、コリメートされた入力X線ビーム、又は収束性の入力X線ビームから、所望のスペクトル形状を有する実質的にコリメートされたファン形ビームを形成することができる。一例では、ファン形ビームは、連続ファン形ビーム、又は平行ファン形ビームの不連続な積層体を含み得る。一例では、連続ファン形ビームは、2以上の勾配付き多層光学装置の重なり合った出力を含み、不連続なファン形ビームは、2以上の勾配付き多層光学装置の重なり合っていない出力を含み得る。一実施形態では、多層光学系は、擬似平行単色ファン形ビームを発生することができる。十分な強度を有するかかる単色ファン形ビームは、医療撮像及び侵襲処置に用いられ得る。かかる単色撮像は、分解能を高めると共に、多色X線スペクトルの撮像での利用から生ずる線質硬化のようなアーティファクトを低減しつつ、患者X線量を減少させるのに役立ち得る。光学装置によって発生されるファン形ビームの擬似平行性のため、CTに現在用いられているファン形ビームの発散性から生ずる再構成アーティファクトを低減することができる。多層光学系は、他の場合に可能である線源立体角よりも大きい線源立体角にわたってX線源の放射線の収集及び方向転換を提供する。医療イメージング・システムに適用されるときには、このことは撮像曝射時間の短縮及び患者線量の減少を可能にし、画像解析を単純化すると共に、計算機式断層写真法(CT)のような撮像モダリティの診断精度を潜在的に高めることができる。また、X線応用では、X線源を例えば2分の1〜10分の1の電力で動作させることができ、X線源の寿命を延ばすことができる。
勾配付き多層光学装置は、空間的規模及び柔軟性に関して利点を提供する。微細製造された成層構造の性質のため、光学装置を非常に小型化することができる。一例では、装置の断面寸法は僅か数十マイクロメートルである。規模が小さいため、同じスペクトル放出特性及び幾何学的構成を有する勾配付き多層光学装置のアレイすなわち複合体を、殆どの医用及び工業用X線撮像に用いられるビーム・スポット寸法(0.5mm〜1.0mm)の周りの面積の範囲内で組み立てて、コリメートされたファン・ビームの大きい連続ビーム又は不連続ビームを発生することができる。
幾つかの実施形態では、本発明の勾配付き多層光学装置は、CTシステム、X線放射線写真法システム、トモシンセシス・システム、又はX線回折システムのようなX線イメージング・システムに用いられる。イメージング・システムは、少なくとも一つのターゲット焦点スポットを有するターゲットを含んでいる。イメージング・システムは、ターゲットと連絡している1又は複数の勾配付き多層光学装置を含んでおり、全反射を通じてX線の少なくとも一部を伝達して1又は複数のファン形ビームを発生する。勾配付き多層光学装置は、全反射を通じてX線を方向転換させて伝達する第一の勾配付き多層区画を含んでいる。第一の勾配付き多層区画は、第一の複素屈折率n1を有する高屈折率物質層を含んでいる。第一の複素屈折率n1は、第一の複素屈折率の実部Re(n1)と、第一の複素屈折率の虚部β1とを含んでいる。第一の複素屈折率の実部Re(n1)は、(1−δ1)とも表現され得る。第一の勾配付き多層区画はさらに、第二の複素屈折率n2を有する低屈折率物質層を含んでいる。第二の複素屈折率は、第二の複素屈折率の実部Re(n2)と、第二の複素屈折率の虚部β2とを含んでいる。第二の複素屈折率の実部Re(n2)はまた、(1−δ2)とも表現され得る。第一の勾配付き多層区画はまた、高屈折率物質層と低屈折率物質層との間に配設された勾配帯を含んでいる。勾配帯は、第三の複素屈折率n3を有する勾配層を含んでいる。第三の複素屈折率n3は、第三の複素屈折率の実部Re(n3)と、第三の複素屈折率の虚部β3とを含んでいる。第三の複素屈折率の実部Re(n3)はまた、(1−δ3)とも表現されることができ、Re(n1)>Re(n3)>Re(n2)となる。本書で用いられる「複素屈折率の虚部」との用語は、質量エネルギ吸収係数に対応している。
ターゲットは、X線透過性窓を有する筐体に封入され得る。勾配付き多層光学装置は、筐体装置の内部に装着されても外部に装着されてもよい。一実施形態では、勾配付き多層光学装置は、筐体の内部又は外部の何れかで窓に光学的に結合され得る。一例では、窓は、勾配付き多層光学装置と一体化され得る。換言すると、勾配付き多層光学装置は窓の一部であってよい。透過型ターゲットの場合には、勾配付き多層光学装置は、ターゲットに装着されてもよいし、ターゲットと一体化されてもよい。代替的には、反射型ターゲットの場合には、勾配付き多層光学装置は、ターゲットに近接して配設され得る。
ターゲット焦点スポットは、完全に静止していないで動的に移動してよく、幾つかの場合には数十ミリメートル以上にわたって移動し得ることが公知である。勾配付き多層光学装置のアレイは、1又は複数の焦点スポットの移動を補償するように設計されて配置され得る。例えば、光学コア、及びコアの近くの光学層は、焦点スポット移動の典型的な範囲である100ミクロン以下にわたり移動した焦点スポットからのX線を効率よく収集するように設計され得る。また、光学アレイは焦点スポットよりも大きく製造され得るので、焦点スポットが移動するときにも全スポットが光学系で依然カバーされる。アレイは、ターゲット焦点スポット全体よりも小さい範囲をカバーしても効率よく作用し得ることを認められたい。一例では、勾配付き多層光学装置の各々が、当該勾配付き多層光学装置の幅がターゲット・スポットの可能なあらゆる移動を補償するのに十分に余分なカバー範囲を含みつつターゲット・スポットの範囲を光学的にカバーするのに十分であるように作製される。勾配付き多層光学装置の各々は、様々な幅に作製されて積層されてもよいし、全て同じ幅に作製されて積層されることもできる。
図1(A)は、高屈折率層142と、低屈折率層144と、高屈折率層142と低屈折率層144との間に配設された複数の勾配層152、154、及び156を有する勾配帯158とを含む単一の勾配付き多層区画140の実施形態の一例の断面図である。上述のように、各物質層の厚みは、説明を分かり易くするために誇張されている。第一の反射性境界面162が高屈折率層142と第一の勾配層152との間に形成される。同様に、第二の反射性境界面164が第一の勾配層152と第二の勾配層154との間に形成され、第三の反射性境界面166が第二の勾配層154と第三の勾配層156との間に形成され、第四の反射性境界面168が第三の勾配層156と低屈折率層144との間に形成される。
発散性X線放射線ビーム172が、X線放射線源170によって形成されて、勾配付き多層帯140の入力面146を照射することができる。X線ビーム172は図では5本の発散性X線ビームレット(小ビーム)172−0〜172−4として示されているが、X線ビーム172は物理的には所定の放出立体角にわたり分散した連続ビームであり、不連続なビームレットとしてのX線ビーム172の表現は本書の様々な実施形態の例の提示を容易にするためのみに作成されていることを理解されたい。実施形態の一例では、勾配付き多層区画140は、図示のように全体的に構成されている方向転換区画174及びコリメーション区画176を含むように構成されている。方向転換区画174は、発散性X線ビーム172を実質的に方向転換させ、コリメートして、所望の空間領域に合わせて実質的にコリメートされたビーム178とする。コリメーション区画176は、方向転換区画174を出るビームのさらなるコリメーションを提供する。
第一の反射性境界面162は、図1(A)の断面図ではコリメーション区画176の実質的に直線の部分と連続した方向転換区画174の彎曲部分を有するものとして表現されている。物理的に、第一の反射性境界面162は、X線ビームレット172−1の反射のための表面を形成し、例えば平坦面、円筒面若しくは円錐面、これらの表面の組み合わせ、又はさらに複雑な曲面を含み得ることを理解されたい。反射性境界面164、166、及び168の断面も同様に、方向転換区画174では曲線として、またコリメーション区画176では直線として示されている。反射性境界面164、166、及び168の彎曲部分は、例えば発散性X線ビーム172の方向転換又はコリメーションのための円筒面のような正の曲率を有する物理的表面を表わす。同様に、反射性境界面164、166、及び168の直線部分は、物理的な平坦面若しくは円筒面、又は平坦面と円筒面との組み合わせを表わす。
X線ビーム172のコリメーションは、X線ビームレット172−0〜172−4の伝達経路を追跡することにより最もよく理解され得る。図示のように、X線源170の中心は一般的には、高屈折率層142の中間を通って配設される軸と同一位置にある。第0のX線ビームレット172−0は、図示のように高屈折率層142を通過して、反射せずに第0のコリメートされたフォトン・ビームレット178−0として現われることができる。これに比較して、第一のX線ビームレット172−1は、初期反射点182a及び最終反射点182bによって示すように1又は複数の全反射を行ないつつ高屈折率層142を通過して、第一のコリメートされたX線ビームレット178−1として現われることができる。第二のX線ビームレット172−2が第二の反射性境界面164に関して臨界角未満で初期反射点184aに入射した場合には、第二のX線ビームレット172−2は第二の反射性境界面164の彎曲部分に沿って多数の全反射を経た後に、第二のコリメートされたフォトン・ビームレット178−2として勾配帯の第一の層152を通過して出ることができる。これらの多数の全反射が初期反射点184a及び最終反射点184bによって図に表わされており、図では分かり易くするために初期反射点184aと最終反射点184bとの間で生じている中間的な多数の全反射は示されていない。
実施形態の一例では、初期反射点184aと最終反射点184bとの間の第二の反射性境界面164の彎曲部分の曲率は、初期反射点184aと最終反射点184bとの間の反射性境界面164からの第二のX線ビームレット172−2の全ての後続の反射が臨界角未満で生じ従って全反射となるように指定される。
同様に、第三のX線ビームレット172−3は、初期反射点186aと最終反射点186bとの間で多数の全反射を経ることができ、第四のX線ビームレット172−4は、初期反射点188aと最終反射点188bとの間で多数の全反射を経ることができる。第三及び第四の反射性境界面166及び168の彎曲部分の曲率は、多数の全反射が方向転換区画174に位置する反射性境界面166及び168の部分に沿って生じ得るように指定される。実施形態の一例では、X線ビームレットは、方向転換区画174の対応する曲面に沿って数百乃至数千の反射を経た後に、多層区画140を通過して出ることができる。コリメートされたX線ビームレット178−1〜178−4の所望の軌跡は、反射したビームレットが方向転換区画174からコリメーション区画176に入るとき、すなわち方向転換区画174の端部の層の彎曲部分に接する接線が連続する線形区画176に実質的に平行になるときに達成されることが当業者には認められよう。コリメーション区画176の物理的長さは、望ましいコリメーションの程度を決定し、又は全体的な光学装置の扱いに好都合な物理的寸法を与えるように指定され得る。最終反射点は、方向転換区画174又はコリメーション区画176の何れにおいて生じてもよい。
図1(B)は、N層を有する単一の勾配区画100の一例を示す。図示の実施形態では、第一の層102が高屈折率物質層であり、第Nの層104が低屈折率物質層である。第一の層102と第Nの層104との間の層が勾配帯110を画定している。認められるように、全反射の単純なモデルは臨界角未満の全てのフォトン(矢印112によって表わされている)が100%効率で反射される(矢印114によって表わされている)ことを示唆するが、現実には、全反射の条件を満たすX線の僅かな百分率が境界面116、118、120又は122のような境界面を通過することができ、下方の層まで透過させられ得る。中間的な勾配帯110の多数の層は、これらの透過X線が全反射を経て反射されて多層から出る多数の機会を与える。最適な光学系設計では、透過したX線が最後の層に達するときまでに、第一の層102と第二の層106との間の境界面に入射するフォトンの10-4%未満が、それぞれ第(N−1)の層108と第Nの層104との間の境界面に到達し得る。最適な勾配付き多層設計では、第一の層の入射フォトンの99.9999%以上が勾配付き多層区画100の多数の層によって反射されて、0°から全反射臨界角までの角度範囲内で入射ビームと近似的に同じ強度を有する反射ビームを発生する。
高屈折率層142は、一方の端部に曲面又は円筒面を有して勾配付き多層帯140の方向転換区画174に彎曲した境界面を生成する全体的に平坦なコア又は基材として形成され得る。当該コア層の一端に第一の曲面を有し、他端に第二の曲面を有するコア層のような他のコア構成も可能である。
図2は、光学装置200の単純化した等角図であって、同図では発散性X線源170の出力が入力面204を照射しているのを示している。光学装置200を用いてファン形のコリメートされたX線ビーム出力208を形成することができ、コリメートされたX線ビーム208は実質的に、光学装置200の長手方向対称面に平行に位置する一連の平面において伝達される。図1(A)を参照すると、図2の光学装置200は、高屈折率層206の両面に勾配帯158を堆積させ、次いで勾配帯158に低屈折率層144を堆積させることにより作製され得る。光学装置200は本質的に、多層区画140(図1(A)を参照されたい)と鏡像との一体結合であることが認められよう。
光学装置200の高屈折率層206の上下両面に多数の層の堆積を繰り返すことにより、図3に示すようにさらに大型の光学装置210を形成することもできる。このように、光学装置210は、中央の高屈折率層206を含んでおり、上に複数の多層帯212−1〜212−Nが繰り返し堆積されて、実質的に図示するように数十又は数百又は数千又は数百万の多層帯から成る平坦な積層体を得る。多層帯212−1〜212−Nの一部は円筒面を含んで、入射する発散性フォトン・ビームを方向転換させてコリメートするように作用し得る方向転換区画214を形成する。
図4には、コア層244を含む光学装置260が示されている。複数の平坦な多層帯262−1〜262−Nがコア層244の上下両面に順次堆積されて、図3に示す光学装置210と同様に数十、数百、数千又は数百万の多層帯から成る平坦な積層体を得る。方向転換区画215は、2以上の平坦面248の組み合わせであってよい。平坦面248が全て類似した傾斜及び寸法を有していてもよい。代替的には、平坦面は傾斜及び寸法が区々であってもよい。例えば、平坦面248の幾つかが他のものよりも長くてよい。代替的には、平坦面の幾つかがコア層244に関して他の平面よりも鋭角をなしていてもよい。平坦面248は、結果として得られる表面215が曲面を近似するような態様で構成される。平坦面248は、曲面状の対応物よりも簡単に作製されるので有利である。従って、方向転換区画215を異なる平坦面の組み合わせとして形成すると、製造が簡単になる。
図5に示す本発明の代替的な観点では、光学装置400が、X線源170によって放出される発散性入力X線ビーム172を方向転換させて第二の発散性X線ビーム174にするように構成されている。光学装置400は、高屈折率コア142のような高屈折率層と、高屈折率コア142に配設された複数の勾配層を含む勾配帯402と、勾配帯402に配設された低屈折率層404とを含む勾配付き多層区画を含んでいる。光学装置400は、多数の層の間に曲線状の境界面を含んでいる。光学装置400が光学装置200(図2を参照されたい)又は光学装置210(図3を参照されたい)と同様に平面状の装置を含む構成では、低屈折率層404は光学装置400の長手軸に向かって彎曲した凸面を形成する。
彎曲した反射境界面414、416、及び418では、図5に示すように、対応する光学装置の出力面における彎曲した境界面に接する接線は光学装置の光学軸に平行にはならず、同様に構成されている図1(A)に示す多層帯140における反射境界面164、166、及び168の同等の彎曲した部分とは異なっている。従って、図5の入力X線ビームレット172−1、172−2、及び172−3は、コリメートされたビームを形成するのに十分には光学装置400の内部で方向転換せず、図5の出力X線ビーム174は、入力X線ビーム172よりも程度は小さいが発散性のままである。これに対し、図1(A)の発散性X線ビーム172は、方向転換区画174を通ることにより実質的にコリメートされ、方向転換区画174の端部における彎曲した反射面に接する接線は、光学装置の光学軸及びコリメーション区画176の直線反射面に対して平行になる。
図6に示す本発明のもう一つの観点では、光学装置450が、発散性フォトン・ビーム172を方向転換させて、実質的に収束性の出力フォトン・ビーム458にするように構成されている。光学装置450は第一の方向転換区画452と第二の方向転換区画456とを含んでおり、包囲されたコリメーション区画454を含んでいてもいなくてもよい。方向転換区画452及び456における低屈折率層462並びに層464、466及び468を含む勾配帯は、光学装置450の高屈折率層460に向かって彎曲した反射面を有する。
一実施形態では、勾配付き多層光学装置は二次元アレイとして構成されて、ファン形ビーム・プロファイルを生成するように構成される。様々な光学装置は二次元アレイを形成するように対応する角度に配設され得る。図8に示すように、ファン・ビームが、ファン方向に互いから発散する多数の円形断面ビームで構成され得る。もう一つの実施形態では、勾配付き多層光学装置の各々が矩形断面プロファイルを有する。図7に示すように、この実施形態では、矩形断面を有する勾配付き多層光学装置470がファン形ビーム472を発生し得る。図8は、円形断面光学系476の一次元アレイ474を示す。円形断面光学系476のアレイ474は、ファン形状に構成された不連続な円筒形ビーム478から成る近似的なファン形ビームを発生する。
図9には、さらにもう一つの代替的な勾配付き多層物質積層体570の実施形態の一例が示されており、この積層体570は、同図では勾配付き多層区画572−1及び勾配付き多層区画572−2によって表わされている複数の勾配付き多層区画を含んでいる。これら複数の多層区画の1又は複数は、各々の多層区画に、実部の大きい複素屈折率n1を有する物質から作製される高屈折率層574と、実部の小さい複素屈折率n2を有する物質から作製される低屈折率層576との間に配設される高反射率勾配帯580を含み得る。高反射率勾配帯580は、複素屈折率n3及び複素屈折率の虚部β3を有する第一の勾配層582と、複素屈折率n4、複素屈折率の虚部β4を有する第二の勾配層584と、複素屈折率n5及び複素屈折率の虚部β5を有する第三の勾配層586とを含んでいる。一実施形態では、Re(n1)>Re(n3)>Re(n4)>Re(n5)>Re(n2)及びβ1<β3<β4<β5<β2である。高反射率勾配帯580はさらに、第一の勾配層582と第二の勾配層584との間に配設された実部の大きい複素屈折率n6を有する物質を含む第一の高屈折率勾配層592と、第二の勾配層584と第三の勾配層586との間に配設された実部の大きい複素屈折率n7を有する物質を含む第二の高屈折率勾配層594とを含んでおり、Re(n6)>Re(n3)及びRe(n7)>Re(n4)である。一実施形態では、最適な全反射を提供するために、加えてβ3>β6及びβ4>β7である。
第一の高屈折率勾配層592及び第二の高屈折率勾配層594を形成するのに用いられる高屈折率物質は、高屈折率層574を形成するのに用いられる同じ物質を含んでいてもよいし、異なる高屈折率物質を含んでいてもよいことを理解されたい。勾配付き多層物質積層体570の構成は、実部の大きい屈折率の物質の層(すなわちフォトン吸収が相対的に低い領域)が高反射率勾配帯580に配設されているので、X線透過を増大させることができる。この構成は、図1及び図5に示す断面を有する実施形態にも適用されることができ、例えば実効的に交互の勾配層を透過層にすることによりそれぞれの光学装置の開口面積を増大させることができる。
図10には、代替的な勾配付き多層物質積層体600の実施形態の一例が示されており、積層体600は、多層区画602−1及び多層区画602−2によって例示される複数の多層区画を含んでいる。多層区画の1又は複数は、勾配層604−1及び604−3を含む勾配帯604と、複合勾配層604−2とを含み得る。勾配層604−1は、一意の複素屈折率n3及び複素屈折率の虚部β3を有するM1と示されている第一の成分物質を含んでおり、勾配層604−3は、一意の複素屈折率n5及び複素屈折率の虚部β5を有する第二の成分物質M2を含んでいる。図示の実施形態の例では、複合勾配層604−2は、右側の詳細図に示すように4層の勾配副次層612〜618を含んでいる。
図示の実施形態では、4層の勾配副次層612〜618の各々は、勾配層604−1と勾配層604−3との間に単調の段階的な光学的特性遷移を与えるように、第一の成分物質M1及び第二の成分物質M2の両方から成る異なる組成を含んでいる。勾配副次層612は、例えば容積で約0.8の第一の成分物質M1と容積で約0.2の第二の成分物質M2との混合物を含んでいてよく、すなわち勾配副次層612での第一の成分物質M1の第二の成分物質M2に対する比は容積で約4対1である。同様に、勾配副次層614は、約0.6の第一の成分物質M1と約0.4の第二の成分物質M2とを含んでいてよく、勾配副次層616は約0.4の第一の成分物質M1と約0.6の第二の成分物質M2とを含んでいてよく、勾配副次層618は約0.2の第一の成分物質M1と約0.8の第二の成分物質M2とを含んでいてよい。
勾配付き多層帯604の層が1よりも多い複合勾配層を含み得ることを理解されたい。さらに、複合勾配層は2以上の勾配副次層を含んでいてもよく、またそれぞれの勾配副次層の成分物質混合物が、上に掲げた例とは異なる比の二つの勾配層成分物質を含んでいてよいことを理解されたい。また、この組成勾配を高屈折率層及び低屈折率層にも適用することができ、勾配帯のみに必ずしも限定されないことを理解されたい。一般的には、成分物質MAを有する層A及び成分物質MBを有する層Bが与えられた場合に、層Aと層Bとの間に複合層Cを作製することができ、複合層Cは複数の副次層C1、C2、…、CNを含み得る。好ましくは、副次層C1、C2、…、CNの各々での層成分物質MAの比は、層Aと層Bとの間の連続した副次層において減少し、層成分物質MBの比は、層Aと層Bとの間の連続した副次層C1、C2、…、CNにおいて増大する。
図11には、勾配付き多層物質積層体600(図10を参照されたい)の代替的な実施形態の例である勾配付き多層物質積層体620が示されている。勾配付き多層物質積層体620は、勾配付き多層区画622−1、及び勾配付き多層区画622−2〜第Nの多層区画(図示されていない)を含めて複数のN個の勾配付き多層区画を含んでいる。勾配付き多層区画の1又は複数は、複合勾配層624−2を備えた勾配帯624を含み得る。複合勾配層624−2は、第一の成分物質M1と第二の成分物質M2との混合物を含んでいる。複合勾配層624−2の異なる高さに堆積されている第二の成分物質M2に対する第一の成分物質M1の比は、高屈折率層626又は低屈折率層627からの距離zの関数として指定され得る。例えば、複合勾配層624−2の任意の点での成分物質M1及びM2の相対比は、パラメータzの関数として、
複合層=f(z)M1+[1−f(z)]M2 (13)
によって表現され得る。
式中、f(z)は、例えば線形関数、多項式関数、又は対数単調関数であって、成分物質M1及びM2の分率値を指定している。このように、単調関数は、隣り合った二つの勾配層624−1と624−3との間での成分物質M1及びM2の相対比の滑らかな組成変化を生成する。
図12には、一対の光学装置10a及び10bが示されている。これらの光学装置10a、10bの各々が図1(A)〜図9を特に参照して記載されている光学装置と同様のものである。一対の光学装置10a、10bは、多重エネルギX線イメージング・システムにおいて用いられ得る。システムは、全反射を通じて第一の光学X線を方向転換させる第一の光学部分と、第一の光学X線とは異なるエネルギ・レベルにある第二の光学X線を方向転換させる第二の光学部分とを含み得る。例えば、第一の光学部分は、高エネルギの第一の光学的エネルギ・スペクトルを発生するように構成されており、第二の光学部分は低エネルギの第二の光学的エネルギ・スペクトルを発生するように構成されている。この例では、第一の光学的エネルギ・スペクトルの平均エネルギは第二の光学的エネルギ・スペクトルの平均エネルギよりも大きい。スペクトルの平均エネルギは、スペクトルの算出平均エネルギであって、平均を算出する前に、スペクトルの各々のエネルギ値域が先ず当該エネルギにおいて放出される全フォトンの分率によって加重される。
光学装置10aと10bとの間の差は、一方が相対的に高いX線エネルギを通過させるように形成され、他方が相対的に低いX線エネルギを通過させるように形成されていることである。光学装置10a、10bによって線源スペクトルを成形する又は濾波すると、ビュー未満での鋭い高エネルギ遮断を有するスペクトル形状を高速に発生する見込みを与え、これにより、物質分離感度が高まり、殆どの位置合わせの問題を解消することができる。所望のスペクトル形状を有するスペクトルを発生し、高速の時間尺度でかかるスペクトルを発生する能力のため、かかる光学装置は、多重エネルギ撮像について特に有用になる。
多重エネルギ・イメージング・システムはまた、光学装置によって伝達されるビームから何らかのエネルギを除去する濾波機構を含んでいてよい。濾波機構は光学装置の外部に設けられてもよいし、光学装置と一体化されてもよい。一実施形態では、限定しないがKエッジ・フィルタのような濾波機構が各々の光学系10a、10bについて鋭い低エネルギ遮断を与える。一実施形態は、Kエッジ・フィルタを光学系10a、10bの何れかの端部に直接気相堆積させることを含んでいる。代替的には、Kエッジ・フィルタは、光学系10a、10bの出力又は入力に整列した別個の箔として形成されてもよい。すると、各々の光学系10a、10bは、光学系と一体化されている又は光学系とは別個になっているの何れかで固有の異なるKエッジ・フィルタを有するものとなる。
図示のように積層構成にあってよい光学装置10a、10bは、X線管ヘッドのターゲット724と光学的に連絡している。明確に述べると、電子ビームをターゲット724の焦点スポット725に衝突させることにより形成されるX線733が、焦点スポット725から光学装置10a、10bの入力面12へ向けて伝播される。代替的には、焦点スポット725は、単一の連続ターゲット・スポット724とは対照的に各々別個のターゲット・スポットの範囲内に位置していてもよいし、別個の非隣接ターゲットに位置していてもよい。次いで、X線733は、上述のように光学装置10a、10bによって集束されて、方向転換されたX線734として各出力面を出る。この幾何学的構成を繰り返してかかるスポットの対から成るアレイを作製することができ、この場合にはX線源スポットの分散型アレイが利用されることになる。
高エネルギX線信号と低エネルギX線信号とを分離するのを助けるために、多くの選択肢が可能である。かかる一つの構成は、エネルギ分布が互いに異なる二つの信号を発生する別個のKエッジ・フィルタを備えている場合及び備えていない場合の光学装置を用いる。このことは、一つの光学装置によって画像を撮影し、次いで低エネルギのフォトンを消去するために光学装置及びKエッジ・フィルタの両方によって画像を再撮像することにより行なわれる。これら二つの適当に正規化された信号を減算すると、主として低いエネルギを有する信号が得られ、光学装置及びKエッジ・フィルタを組み合わせたものによって発生される信号は、主として相対的に高いエネルギのフォトンを有する信号を発生する。
代替的には、少なくとも一つのKエッジ・フィルタと共に二つの光学装置を用いることができる。二つの光学装置は、重なり合っていてもいなくてもよい異なる2種のフォトン・エネルギ範囲のX線方向転換及び透過を生ずる物質で製造される。これら二つの光学装置によって画像を撮影し、光学装置と、低エネルギを伝達する光学装置からの低エネルギの透過を遮断するKエッジ・フィルタとを用いて撮影を繰り返し、これら二つの適当に正規化された画像を減算すると、低エネルギを伝達した光学系によって通された低エネルギのみから導かれる画像が得られる。この低エネルギ・スペクトル画像は、適当に正規化された相対的に高いエネルギのスペクトル画像を、二つの光学装置とKエッジ・フィルタとを組み合わせたものからのフォトンによって形成される画像から減算することにより取得され得る。低エネルギ画像においてさらに鋭い低エネルギ遮断を生成するために、光学系から最も低いエネルギのフォトンを遮断する第二のKエッジ・フィルタを含めてもよい。
信号同士の間にさらに一層大きいエネルギ分離を提供し得るもう一つの選択肢は、光学装置を異なる加速電位にある別個のターゲットに結合して、各々の加速電位/光学系の組み合わせによって放出されるX線によって連続画像を撮影するものである。スペクトル成形は、他の場合ではCT応用又はX線回折応用に要求されていた多数回のX線検査及び走査手順の実効性を最適化することを容易にするので有利である。多数のエネルギにおける画像の差を考察することに関して議論しているが、標準的な投影方式及び画像方式のエネルギ感知型分解方法を用いて撮像対象の実効原子番号を特定してもよい。
図13は、例えば計算機式断層写真法(CT)スキャナのような対象検出システムに用いられる従来の取得システム700を示す。取得システム700は、支持構造によって形成されるスキャナ702を含んでおり、スキャナ702は、以下でさらに詳細に記載されるように、X線放射線の1又は複数の静止型又は回転式分散型線源(図示されていない)と、1又は複数の静止型又は回転式ディジタル検出器(図示されていない)とを内部に含んでいる。スキャナ702は、例えば患者、手荷物、鞄類又は工業部品のような走査対象のためのテーブル704又は他の支持体を受け入れるように構成されている。テーブル704は、スキャナの開口を移動させられて、撮像系列時に走査される撮像容積又は撮像平面に被検体を適当に配置することができる。
システムはさらに、放射線源制御器706、テーブル/ベルト制御器708、及びデータ取得制御器710を含んでおり、これらの制御器は全てシステム制御器712の指示の下に作用し得る。放射線源制御器706は、スキャナ702の周りの点から反対側の検出器素子へ向けて照射されるX線放射線の放出のタイミングを調整し、このことについて以下で議論する。放射線源制御器706は、各々の時間的瞬間に分散型X線源の1又は複数の放出器にトリガを発して、測定投影データの多数の投影又はフレームを作成することができる。幾つかの構成では、例えばX線放射線源制御器706は、放射線の放出にトリガを順次発してスキャナの周りで測定データの隣接する又は隣接しないフレームを収集することができる。多くのかかるフレームが検査系列において収集されることができ、後述するように検出器素子に結合されているデータ取得制御器710が検出器素子から信号を受け取ってこれらの信号を処理して記憶し、また後に画像再構成を施す。1又は複数の線源が回転する後述する構成では、放射線源制御器706はまた、分散型線源(1又は複数)が装着されているガントリの回転を指示することもできる。次いで、テーブル/ベルト制御器708がテーブル及び被検体を、放射線が放出される平面に、又はここでの状況では一般に被撮像容積の内部に、適当に配置する。テーブルは、用いられている撮像プロトコルに依存して、撮像系列と撮像系列との間に又は幾つかの撮像系列にわたって変位され得る。また、1又は複数の検出器又は検出器区画が回転する後述する構成では、データ取得制御器710は、検出器(1又は複数)が装着されているガントリの回転を指示することもできる。
システム制御器712は一般的には、放射線源制御器706、テーブル制御器708及びデータ取得制御器710の動作を調整する。このように、システム制御器712は、X線放射線の放出にトリガを発し、またシステム制御器によって画定されている撮像系列時にかかる放出を調整することを放射線源制御器706に行なわせることができる。システム制御器はまた、特定の関心のある容積に対応して、又は螺旋モードのような様々な撮像モードにおいて測定データを収集するように、かかる放出と協調したテーブル/ベルトの移動を調整することができる。また、システム制御器712は、線源(1又は複数)、検出器(1又は複数)、又は両方が装着されているガントリの回転を調整する。システム制御器712はまた、データ取得制御器710によって取得されたデータを受け取って、データの記憶及び処理を調整する。
これらの制御器、また実際には本書に記載される様々な回路は、ハードウェア回路、ファームウェア又はソフトウェアによって画定され得ることに留意されたい。例えば撮像系列のための特定のプロトコルは一般的には、システム制御器によって実行されるコードによって画定される。また、スキャナによって取得される測定データに要求される初期処理、調節、フィルタ処理、及び他の動作が、図13に示す構成要素の1又は複数において実行され得る。例えば、後述するように、検出器素子はデータ取得検出器のピクセルに対応する位置に配置されているフォトダイオードの電荷の消耗を表わすアナログ信号を発生する。かかるアナログ信号は、スキャナの内部の電子回路によってディジタル信号へ変換されて、データ取得制御器710へ送信される。この点において部分的処理が生じてもよく、信号は最終的には、システム制御器へ送信されてさらなるフィルタリング及び処理を施される。加えて、制御器は、別個の実体として具現化されてもよいし、単体のハードウェア、ファームウェア又はソフトウェアとして含まれていてもよい。
システム制御器712はまた、操作者インタフェイス714及び1又は複数のメモリ装置716に結合されている。操作者インタフェイスは、システム制御器と一体化されていてもよく、一般的には、撮像系列を初期化したり、かかる系列を制御したり、撮像系列時に取得された測定データを操作したりするための操作者ワークステーションを含んでいる。メモリ装置716は、イメージング・システムに対してローカルに位置していてもよいし、部分的に又は完全にシステムから遠隔に位置していてもよい。このように、撮像装置716は、ローカルの磁気式又は光学式メモリを含んでいてもよいし、再構成のための測定データを格納するローカル又は遠隔の貯蔵体を含んでいてもよい。また、メモリ装置は、再構成のための処理前の測定データ、部分的処理を施した測定データ又は完全な処理を施した測定データの何れを受け取るようにも構成され得る。
システム制御器712若しくは操作者インタフェイス714、又はあらゆる遠隔システム及びワークステーションは、画像処理及び再構成のためのソフトウェアを含み得る。当業者には認められるように、CT測定データのかかる処理は、多くの数学的なアルゴリズム及び手法によって実行され得る。例えば、従来のフィルタ補正逆投影手法を用いて、イメージング・システムによって取得されるデータを処理して再構成することができる。他の手法、及びフィルタ補正逆投影と共に用いられる手法を採用してもよい。一例では、回折解析を実行して、対象の結晶構造、組成、及び応力/歪の少なくとも一つを識別する。
イメージング・システムからかかる遠隔処理ステーション、観察用ステーション、又はメモリ装置へデータを送信する遠隔インタフェイス718がシステムに含まれていてもよい。
幾つかの実施形態では、回転ターゲット又は静止ターゲットのようなターゲット724(図12を参照されたい)を計算機式断層写真法システムに用いることができる。ターゲット724は、単一のターゲット焦点スポット又は複数のターゲット焦点スポット725を含んでいる。さらに、ターゲット724は少なくとも一つのX線透過窓を含む真空筐体(図示されていない)に封入される。ターゲット724は、ターゲット焦点スポット725が窓の一つの光学的に連絡して配置されるように、回転され得る。ターゲット724のターゲット焦点スポット725は、ターゲットへ向けて加速される電子から発生され、電子は1又は複数の電子放出器から放出される。
上に述べた勾配付き多層光学装置装置172、200、210、215、400、450、570、600及び620の任意のものが、上述の勾配付き多層区画構成の1又は複数を含むことができ、さらに勾配付き多層光学装置の中心層又はコア層が高屈折率物質又は低屈折率物質を含むことができ、光学装置の外側層が低屈折率物質を含み得ることが当業者には認められよう。また、本書に開示される様々なコア構成及び光学装置の実施形態は、円形断面又は平面状の断面を含むが、本発明の範囲から逸脱することなくX線ビーム放射線の方向転換を生成するために任意のコア形状及び光学装置構成を用い得ることを理解されたい。
勾配付き多層光学装置は、あらゆる現在のCTイメージング・システムに存在しているX線束利用率と再構成の複雑さとの間のトレードオフを軽減し又は解消するので有利である。例えば、勾配付き多層光学装置は、X線束利用率と再構成の複雑さとの間のトレードオフを、2D再構成原理を採用し得るトポロジを提供しつつ焦点スポットからの利用可能なX線束をさらに高い百分率で用いる手段を設けることにより軽減する。この成果を達成するためには、幾つかの勾配付き多層光学装置を用いて利用可能なX線を収集して方向転換させ、平行ファン・ビームの積層体(不連続又は連続的)にする。結果として、適当な画質を得るために相対的に単純な2D再構成原理を用いつつ、高い線束利用率を達成することができる。勾配付き多層光学装置は、コーン・ビーム再構成アーティファクトを解消することにより高分解能高スループット・システムのための再構成方策を著しく単純化する。これらの光学系はまた、長手方向での拡大の問題が解消するため所定の対象のカバー範囲に必要とされる検出器の大きさを小さくすることにより検出器の費用を抑える。さらに単純でさらに正確な2D再構成を可能にする平面状の標本化幾何学的構成を確立することに加えて、光学系のアレイが、スペクトル形状、ビーム・スポットの光学的寸法、及びマルチ・スライス・アレイの内部の全ての検出器素子に対するビーム・スポットの位置を一様で一貫したものとし、従来の単一スポット広角CTシステムに特徴的なこれらのパラメータのばらつきを小さくする。結果として、次世代の設計はこれらの利点の影響を享受する。利用可能なX線フォトンの利用率が高まると、管の寿命も長くなる。X線フォトンのより多くのものが撮像に利用可能になるので、アノードに衝突する電子ビームの電流を低減することができる。この効果によって、ターゲットの熱サイクルを減少させ、より単純な冷却方式を可能にし、またさらに長い管寿命を提供する。
以上ではCT撮像の状況において議論したが、利用可能なX線フォトンの利用率が高まること及びターゲットの熱サイクルが減少することのような多層X線光学装置の利点は、X線撮像、トモシンセシス撮像及びX線回折撮像にも同等に当てはまる。
この書面の記載は、発明を開示し、また任意の装置又はシステムを製造して利用すること及び任意の組み込まれた方法を実行することを含めてあらゆる当業者が本発明を実施することを可能にするように実例を用いている。特許付与可能な発明の範囲は特許請求の範囲によって画定されており、当業者に想到される他の実例を含み得る。かかる他の実例は、特許請求の範囲の書字言語に差しない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の書字言語と非実質的な差を有する等価な構造要素を含む場合には、特許請求の範囲内にあるものとする。
100:単一の勾配区画
102:第一の層
104:第Nの層
106:第二の層
108:第(N−1)の層
110:勾配帯
112:フォトン
114:臨界角
116、118、120、122:境界面
140:単一の勾配付き多層区画
142:高屈折率層
144:低屈折率層
152、154、156:複数の勾配層
158:勾配帯
162:第一の反射面
164:第二の反射面
166:第三の反射面
168:第四の反射面
170:X線放射線源
172:発散性X線放射線ビーム
172−0、172−1、172−2、172−3、172−4:発散性X線ビームレット
174:方向転換区画
176:コリメーション区画
178:コリメートされたビーム
178−0、178−1、178−2、178−3、178−4:X線ビームレット
182a、184a、186a:初期反射点
182b、184b、186b:最終反射点
200:光学装置
206:高屈折率層
210:さらに大型の光学装置
215:方向転換区画
212−1、212−N:複数の多層帯
244:コア層
248:平坦面
260:光学装置
262−1、262−N:複数の多層帯
400:光学装置
402:勾配帯
414、416、418:彎曲した反射境界面
450:光学装置
452:第一の方向転換区画
454:包囲されたコリメーション区画
456:第二の方向転換区画
462:低屈折率層
470:勾配付き多層光学装置
472:ファン形ビーム
474:一次元アレイ
476:円形断面光学系
474:円形断面光学系のアレイ
476:円形断面光学系
478:不連続な円筒形ビーム
570:勾配付き多層物質積層体
572−1、572−2:勾配付き多層区画
574:高屈折率層
576:低屈折率層
580:高反射率勾配帯
582:第一の勾配層
584:第二の勾配層
586:第三の勾配層
592:高屈折率勾配層
594:第二の高屈折率勾配層
600:勾配付き多層物質積層体
602−1、602−2:多層区画
604:勾配帯
604−1、604−2、604−3:勾配層
612、614、616、618:勾配副次層
620:勾配付き多層物質積層体
622−1、622−2、622−N:勾配付き多層区画
624:勾配帯
624−2:複合勾配層
626、627:低屈折率層
700:取得システム
702:スキャナ
704:テーブル
706:放射線源制御器
708:テーブル制御器
710:データ取得制御器
712:システム制御器
714:操作者インタフェイス
716:メモリ装置
718:遠隔インタフェイス
724:ターゲット
725:焦点スポット
733、734:X線

Claims (2)

  1. 1又は複数のファン形ビームを発生する多重エネルギX線イメージング・システムであって、
    電子発生源と、
    該電子発生源からの電子により衝突されるとX線を形成するターゲットと、
    該ターゲットを収容する真空室と、
    前記X線が前記真空室を出るときに通る窓と、
    前記1又は複数のファン形ビームを発生するのに望ましい範囲のX線エネルギを伝達するように構成されている少なくとも一つの勾配付き多層光学装置と
    を備えており、該少なくとも一つの勾配付き多層光学装置は、
    全反射を通じて第一の光学X線を方向転換させる第一の光学部分と、
    前記第一の光学X線とは異なる平均エネルギ・レベルにある第二の光学X線を方向転換させる第二の光学部分と
    を含んでおり、
    前記第一の光学部分は、高い平均エネルギのスペクトルを発生するように構成されており、
    前記第二の光学部分は、低い平均エネルギのスペクトル向けに構成されており、
    前記第一の光学的エネルギ・スペクトルの前記平均エネルギは、前記第二の光学的エネルギ・スペクトルの前記平均エネルギ以上である、多重エネルギX線イメージング・システム。
  2. 対象を撮像する方法であって、
    少なくとも一つの電子ビーム放出器から少なくとも一つのターゲット焦点スポットを有するターゲットへ向けて電子ビームを放出するステップと、
    前記電子ビームにより衝突されるのに応答して前記ターゲットからX線を発生するステップと、
    前記X線を1又は複数のファン形ビームとして形成するステップであって、該ファン形ビームは、当該1又は複数の勾配付き多層光学装置の少なくとも一つが前記少なくとも一つのターゲット焦点スポットと光学的に連絡するように配置されている1又は複数の勾配付き多層光学装置を通じた前記X線の全反射を介して発生される、形成するステップと、
    前記1又は複数の勾配付き多層光学装置を介して伝達される前記放出X線を用いることにより前記対象の画像を形成するステップと
    を備え
    前記第一の光学部分は、高い平均エネルギのスペクトルを発生するように構成されており、
    前記第二の光学部分は、低い平均エネルギのスペクトル向けに構成されており、
    前記第一の光学的エネルギ・スペクトルの前記平均エネルギは、前記第二の光学的エネルギ・スペクトルの前記平均エネルギ以上である、
    方法。
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