JP6045819B2 - 光反射性複合塗膜の製造方法及び光反射式表示標識 - Google Patents
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Description
<1> 電柱表面に直接又は下地塗膜を形成した後に、再帰反射性粒子と接着用樹脂とを含有する塗料組成物(I)を含む塗料を塗工して再帰反射性膜を形成する工程と、
パラフィンワックス(A)及び変性シリコン(B)を含有する塗料組成物(II)を含む塗料を、前記再帰反射性膜が被覆されるように塗工して保護膜を形成する工程と、
を含む光反射性複合塗膜の製造方法。
<2> 前記塗料組成物(II)において、成分(B)100重量部に対し、成分(A)40〜55重量部含む前記<1>記載の光反射性複合塗膜の製造方法。
<3> 電柱表面に、再帰反射性粒子と接着用樹脂とを含む再帰反射性膜と、該再帰反射性膜を被覆してなる保護膜と、を少なくとも含む光反射性複合塗膜を有する光反射式表示標識であって、
前記保護膜が、パラフィンワックス(A)及び変性シリコン(B)を含む光反射式表示標識。
<4> 前記保護膜において、成分(B)100重量部に対し、成分(A)40〜55重量部含む前記<3>記載の光反射式表示標識。
<5> 光反射性複合塗膜が形成された部分と、黒色顔料を含む下地塗料が露出した部分とを有し、前記光反射性複合塗膜が形成された部分と、前記黒色顔料を含む下地塗料が露出した部分とが、ストライプ状に形成されてなる前記<3>又は<4>に記載の光反射式表示標識。
工程(1)において、電柱表面に直接又は下地塗膜を形成した後に、再帰反射性粒子と接着用樹脂とを含有する塗料組成物(I)を塗工した後に、乾燥させて再帰反射性膜を形成する。
本発明の光反射性複合塗膜を形成する対象である電柱は、電力会社や通信会社が道路に設置する一般的なコンクリート製の電柱が対象となる。
後述するように、塗料組成物(I)から形成される再帰反射性膜を被覆する保護膜は、コンクリートに対する親和性、接着性に優れることから、コンクリート製の基材が好適な対象である。
また、本発明の光反射性複合塗膜は、塗料組成物を含む塗料を塗布乾燥して形成されるため、電柱の表面形状は特に制限されない。
塗料組成物(I)は、再帰反射性粒子と接着用樹脂を溶媒に分散してなる液状組成物であり、工程(1)において、電柱表面に直接又は下地塗膜を形成した後に、塗工、乾燥することで、再帰反射性膜が形成される。
再帰反射性粒子は、種類は限定しないが、例えば、再帰反射性粒子の材料としては、好適にはガラスビーズが挙げられ、屈折率が、1.5〜2.5程度の屈折率を有するものが使用される。
マイカの配合割合は、塗料組成物(I)全体の固形分100重量部に対し、通常、5〜25重量部程度である。
反射鏡粒子や着色粒子の粒径は、塗料組成物(I)塗布後、再帰反射性膜の表面に再帰反射性粒子が出やすいように、再帰反射性粒子より小さいことが好ましい。そのため、反射鏡粒子として、例えば、粒子径1〜150μm程度のマイカを用いられ、着色粒子としては、例えば、粒子径80μm以下のアルミニウム粒子を用いることが多い。
透明性に優れるアクリル系、ウレタン系、ビニル系、エポキシ系、シリコーン系、ポリエステル系、オレフィン系、ゴム系等の接着用樹脂が使用できる。
上述の再帰反射性膜と電柱との間には、中間層として、下地塗膜を形成してもよい。下地塗膜は、その使用目的、電柱の種類や表面凹凸性、塗料組成物(I)との濡れ性や反応性などを考慮して適宜決定される。
前者の場合には、塗料組成物(I)に含まれる接着用樹脂と同じあるいは同種であることが好ましい。後者の場合には、従来の光反射式標識板と同様の外観となるように、再帰反射性膜が形成された部分と、黒色顔料を含む下地塗料が露出した部分とをストライプ状に形成することが好ましい。このように光反射式標識板と同様の外観とすることで、再帰反射性膜の視認性をより高めることが可能となる。
工程(2)では、工程(1)で形成した再帰反射性膜が被覆するように、パラフィンワックス(A)及び変性シリコン(B)を含有する塗料組成物(II)を含む塗料を塗工して保護膜を形成する工程である。
塗料組成物(II)は、塗工対象である再帰反射性膜に対する接着性が高いだけでなく、電柱の素材であるコンクリートに対する高い親和性や浸透性を有するため、再帰反射性膜全体が被覆するように塗料組成物(II)を含む塗料を塗工することにより、複合膜全体の電柱への接着力が向上する。
以下、塗料組成物(II)の成分、塗工方法について説明する。
[(A)パラフィンワックス]
パラフィンワックスは、炭素数18〜30程度の直鎖状パラフィン系炭化水素を主成分とする常温において固体あるいは半固体の固形油脂(ワックス)であり、一般に、石油の減圧蒸留留出油から分離精製して製造される。
パラフィンワックスは、通常、その融点で区別され、JIS K 2235では120パラフィン(融点:48.9℃〜51.7℃)から155パラフィン(融点:68.3℃〜71.0℃)まで8種類が規定されている。これらは融点が高温であるほど柔軟性が低下する傾向がある。塗料組成物(II)において、電柱や再帰反射性膜との親和性、適当な融点を有するパラフィンワックスが使用される。
変性シリコンは、オルガノポリシロキサンの末端にアミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、オキシメチレン基などの官能基の1種または2種以上が導入されたものや、側鎖に前記官能基が導入されたもの、または末端と側鎖の両方に前記官能基が導入されたものなどが使用できる。
変性シリコンとしては、市販品の「ワンツーセラ」(大日本塗料株式会社)、「ペンギンシール2550LM」(サンスター技研株式会社)を例に挙げることができる。
また、このような組成であると、電柱素材であるコンクリートに対する親和性や浸透性により優れる。
例えば、相溶化剤、顔料、湿潤剤、可塑剤、反応促進剤、タレ止め剤、沈澱防止剤、塗面調整剤などの塗料用添加剤が挙げられる。
また、本発明の効果において、再帰反射性以外の効果は、塗料組成物(II)からなる保護膜が、光反射性複合塗膜の表面層に形成されていれば発現する。
本発明の光反射式表示標識は、電柱表面に、再帰反射性粒子と接着用樹脂とを含む再帰反射性膜と、該再帰反射性膜を被覆してなる保護膜と、を少なくとも含む光反射性複合塗膜を有する光反射式表示標識であって、前記保護膜が、パラフィンワックス(A)及び変性シリコン(B)を含むことを特徴とする。
本発明の光反射式表示標識は、上述した本発明の製法方法にて、製造することができる。
すなわち、本発明の光反射式表示標識は、光反射性複合塗膜が形成された部分と、黒色顔料を含む下地塗料が露出した部分とを有し、前記光反射性複合塗膜が形成された部分と、前記黒色顔料を含む下地塗料が露出した部分とが、ストライプ状に形成されてなることが好ましい。
このような形態であると、光反射性複合塗膜(例えば、黄色)と、再帰反射性膜が形成されていない部分(例えば、黒色)がストライプ状に形成されているため、自動車や通行人の視認性が向上して、安全性がより向上する。
下地塗料(黒):無反射ブラック(黒色顔料含有アクリル系塗料)
下地塗料(白):ブライトコート用下塗り剤(株式会社小松プロセス製)
塗料組成物(I)を含む塗料:ブライトコートN(株式会社小松プロセス製)
溶媒:水
ブライトコートN:水=95:5(重量比)
塗料組成物(II)を含む塗料:ピオバリアー(株式会社ピオテック製)
成分(A):パラフィン(4〜5量%)
成分(B):変性シリコン(9〜10重量%)
他の成分
脂肪酸系油脂(2.5〜3重量%)
植物性油脂(2.5〜3重量%)
溶媒:ヘキサン(75〜85重量%)
以下の手順で試料を作製した。
まず、テスト用基材として、電柱の素材であるコンクリート平版(300×300mm)の表面を水洗いし、24時間乾燥させた。
次いで、下地塗料(黒)をテスト用基材一面にローラー塗布し(使用量:10g)、3時間乾燥させた。次いで、テスト用基材の左半面を覆うようにマスキングを行い、右半面のみに下地塗料(白)を塗布し(使用量6g)、30分乾燥させた。
次いで、下地塗料(白)の上に、上記塗料組成物(I)を含む塗料を塗布し、30分乾燥させたのちに、さらに、その上に2回目の塗料組成物(I)を含む塗料を再度塗布した。マスキングを除去し、24時間室内養生して塗料組成物(I)からなる再帰反射塗膜を形成した。塗料組成物(I)を含む塗料の合計使用量は10gであった。
次いで、上半面を覆うようにマスキングを行い、下半面のみに塗料組成物(II)を含む塗料を塗布し(使用量:20ml)、マスキングを除去。24時間室内養生して塗料組成物(II)からなる保護膜を形成させ、テスト用基材を得た。
剥離性テストは、JIS Z0237「粘着テープ・粘着シート試験方法、10.4 180度引きはがし粘着力の測定」に準じる方法で行った。使用器具として、「株式会社エー・アンド・ディー社製デジタルフォースゲージ」を用い、評価用粘着テープとして、「日東電工株式会社製クラフト粘着テープ、幅25mm、長さ120mm」を使用した。
図2に示すようにテスト用基材表面に評価用粘着テープを貼り付け、剥離性テストを行った。結果を、表1に示す。
表面に、塗料組成物(II)からなる保護膜が形成された試験箇所5〜8、試験箇所13〜16(それぞれ無保護膜面1〜4、無保護膜面9〜12に対応)では、粘着テープを貼付することができなかった。このことから、塗料組成物(II)からなる保護膜が、高い張り付け防止性を有することが分かった。
付着性テストは、JIS k5600−5−6 付着性試験(クロスカット法)に準じる方法で行った。使用器具として、「コーテック株式会社製クロスカットガイド」を用い、評価用テープとして、「透明感圧付着テープ、幅25mm、長さ75mm」を使用した。図3に示すようにテスト用基材表面に評価用テープを貼り付け、付着性テストを行った。結果を表2に示す。すべての試験箇所において、塗膜の剥離は認められず、塗膜の付着性が高いことが認められた。
本発明の光反射性複合塗膜の再帰反射性を評価するために、該塗膜を有する光反射式表示標識を有する評価用電柱を以下の方法で製造した。
まず、コンクリート製の電柱の表面に下地塗料(黒)を、幅460mm、で地面からの高さが約350mmになる部分にローラー塗りで塗布して(塗布量0.17kg、塗布面積0.56m2)、十分に乾燥させた。
次いで、乾燥後の下地塗料(黒)の上に、ストライプ状のマスキングを張り付け、白色顔料を含む下地塗料(白)を刷毛塗りして(1回塗り、塗布量0.09kg、塗布面積0.3m2)、十分に乾燥させることで、下地塗膜(白)を形成した。
次いで、下地塗膜(白)の上に、上記塗料組成物(I)を含む塗料を刷毛塗りして(2回塗り、塗布量0.15kg、塗布面積0.3m2)、乾燥させて再帰反射性膜を形成した。
次いで、マスキングを外して、再帰反射性膜及び下地塗膜(黒)(再帰反射性膜非形成部)を全面的に覆うように、塗料組成物(II)を含む塗料をローラー塗り(1回塗り、塗布量0.31L、塗布面積2.04m2)して、乾燥させることにより、実施例の光反射性複合塗膜を得た。
図4に実施例の光反射性複合塗膜を所定領域に形成した光反射式表示標識を有する電柱の模式図を示す。図4(a)は電柱全体の模式図、図4(b)光反射式表示標識(塗膜形成部)の拡大図、図4(c)光反射性複合塗膜の断面模式図である。
上記塗工方法にて、図5に示す光反射性複合塗膜を形成した電柱を作製した。テストとして、フラッシュ撮影に対する塗装部の輝度確認したところ、図5に示すようにフラッシュの照射に対し、目視で十分に観測できる反射光が確認された。
また、実用的テストとして、夜間に自動車のヘッドライトを照射して、塗装部の輝度を目視にて観察したところ、従来の電柱標識板と同等以上の光が確認された。
Claims (5)
- 電柱表面に直接又は下地塗膜を形成した後に、再帰反射性粒子と接着用樹脂とを含有する塗料組成物(I)を含む塗料を塗工して再帰反射性膜を形成する工程と、
パラフィンワックス(A)及び変性シリコン(B)を含有する塗料組成物(II)を含む塗料を、前記再帰反射性膜が被覆されるように塗工して保護膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする光反射性複合塗膜の製造方法。 - 前記塗料組成物(II)において、成分(B)100重量部に対し、成分(A)を40〜55重量部含む請求項1記載の光反射性複合塗膜の製造方法。
- 電柱表面に、再帰反射性粒子と接着用樹脂とを含む再帰反射性膜と、該再帰反射性膜を被覆してなる保護膜と、を少なくとも含む光反射性複合塗膜を有する光反射式表示標識であって、
前記保護膜が、パラフィンワックス(A)及び変性シリコン(B)を含むことを特徴とする光反射式表示標識。 - 前記保護膜において、成分(B)100重量部に対し、成分(A)を40〜55重量部含む請求項3記載の光反射式表示標識。
- 光反射性複合塗膜が形成された部分と、黒色顔料を含む下地塗料が露出した部分とを有し、前記光反射性複合塗膜が形成された部分と、前記黒色顔料を含む下地塗料が露出した部分とが、ストライプ状に形成されてなる請求項3又は4に記載の光反射式表示標識。
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