JP6042099B2 - 細胞増殖抑制剤 - Google Patents

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Description

発明の背景
発明の分野
本発明は、キシロースを有効成分とする細胞増殖抑制剤、および該細胞増殖抑制剤を用いた細胞の増殖制御方法に関する。
背景技術
生物学では、人為的に生体外で培養する培養細胞が、in vitro実験系や再生医療および細胞療法において広く用いられている。その細胞の有する性状を一定に維持するためには、継代を行うことにより培地中にて細胞を増殖し続ける必要がある。しかしながら、初代培養細胞や有限細胞系などの継代回数に制限(寿命)のある株化していない細胞では、継代を行うことによってその細胞の性状が変化することが多い。
そのため、培養細胞を中〜長期間、その性状を一定に維持する場合には、凍結保存を行うのが一般的である。しかしながら、霊長類、特にヒトのES細胞やiPS細胞のような凍結・解凍に弱い細胞では、凍結保存を行うことによる細胞へのダメージが大きい。
また、増殖スピードの速い細胞や遅い培養細胞の場合、それらを使用する際、所望の細胞濃度に調整することは難しく、熟練が必要であった。一時的に細胞の環境温度を4℃など低温に変化させることにより細胞増殖を抑える方法も知られているが、維持できる時間は数時間単位であった。
さらに、培養細胞の中でもES細胞やiPS細胞のような多能性幹細胞では、継代を行うことによってそれら細胞の有する性状の一つである未分化性(分化能)を失うことが知られている。そこで、未分化性を維持するために、マウスES細胞の場合は、例えばLIF(白血病抑制因子)を添加する必要があった。また、霊長類ES細胞の場合は、未分化維持因子を添加し、あるいはフィーダー細胞の共存下培養を行う必要があった(特開2007−228815号公報(特許文献1)参照)。しかしながら、これら未分化維持因子は高価なものが多く、またフィーダー細胞との共存下培養は煩雑なものであった。
したがって、凍結保存以外の方法で、細胞を継代する必要なく、その有する性状を維持したまま、簡便に細胞の増殖制御をする方法が求められている。
凍結保存以外の方法として、例えば、特開2008−104407号公報(特許文献2)には、還元糖を含む細胞保存液を用いた冷蔵条件にて保存することを特徴とする付着生細胞の保存方法が開示されている。しかしながら、この方法では低温での冷蔵が必須であり、保存できる細胞の種類も限られていた。また、この文献には、キシロースを用いることについては何ら記載されていない。
キシロース(Xylose)は、糖鎖の構成糖の一つであり、細胞間のコミュニケーションなど生体内において重要な役割を担っている。また、キシロースは、木質系バイオマスに豊富に含まれることが知られており、未利用資源として様々な分野での利用用途の拡大が求められている。しかしながら、培養細胞の分野では、細胞がキシロースをエネルギーとして利用できないと考えられているため、キシロースは用いられてこなかった。
本発明者らは、以前に、各種糖質(グルコース、キシロース、ガラクトースなど)によるマウスES細胞への影響を確認し、キシロースのマウスES細胞での未分化を維持できる可能性を報告している(横山忠幸ら,「各種糖含有環境下におけるマウスES細胞の増殖及びEB形成への影響」, 第7回日本再生医療学会総会 抄録集, Vol.7, pp.239, 2008(非特許文献1)、横山忠幸ら,「Xylose含有環境下におけるマウスES細胞の未分化維持に関する有効性の検討」, 第8回日本再生医療学会総会 抄録集, Vol.8, pp.221, 2009(非特許文献2))。
しかしながら、これらの文献では、マウスES細胞の未分化性以外の性状については、何ら記載されていない。中でも増殖能については、キシロース培地での3日間培養による細胞数がグルコース培地のものより少なかったことが報告されているのみであり、キシロース培地から通常培地に置換した場合の増殖能については何ら報告されていない。また、キシロースの利用は、発明者らが知る限り、マウスES細胞以外の細胞に関しては、何ら報告されていない。
特開2007−228815号公報 特開2008−104407号公報
横山忠幸ら,「各種糖含有環境下におけるマウスES細胞の増殖及びEB形成への影響」, 第7回日本再生医療学会総会 抄録集, Vol.7, pp.239, 2008 横山忠幸ら,「Xylose含有環境下におけるマウスES細胞の未分化維持に関する有効性の検討」, 第8回日本再生医療学会総会 抄録集, Vol.8, pp.221, 2009
本発明者らは、今般、細胞培養において、一般的な培地に含まれるグルコースをキシロースに代替した培地を用いると、細胞がグルコース以外の糖類をエネルギーとして利用できないため生存できないと考えられていたにもかかわらず、1週間を超える長い期間、通常の培養温度で、生存を維持でき、かつ、細胞増殖を抑えることができることを見出した。また、キシロース培地で細胞増殖を抑えた後に、通常のグルコース培地に置換したところ、初めからグルコース培地で培養した細胞と同レベルまで短期間で増殖できることを見出し、細胞に生存に影響する重大な障害を与えることなく、細胞の増殖を制御することに成功した。さらに、多能性幹細胞の場合には、未分化性と多能性とを保持したまま、細胞の増殖を制御することに成功した。
よって本発明は、細胞増殖抑制剤を提供すること、および該細胞増殖抑制剤を用いた細胞の増殖制御方法を提供することを目的とする。
本発明による細胞増殖抑制剤は、キシロースを有効成分とする。
本発明の一つの態様によれば、前記した剤において、細胞は多能性幹細胞である。
本発明の一つの態様によれば、前記した剤において、細胞はガン細胞である。
本発明の一つの態様によれば、本発明による細胞増殖抑制剤を含んでなる、細胞培養用培地が提供される。
本発明の一つの態様によれば、本発明による細胞増殖抑制剤を含んでなる、多能性幹細胞維持用培地であって、キシロース以外の未分化維持因子を実質的に含まない、多能性幹細胞維持用培地が提供される。
本発明の一つの態様によれば、本発明による培地を使用して、細胞を維持することを含んでなる、細胞の増殖制御方法が提供される。
本発明の一つの態様によれば、本発明による多能性幹細胞維持用培地を使用して細胞を維持することによって、多能性幹細胞の未分化性と多能性とを保持しつつ、細胞増殖を抑制することを含んでなる、多能性幹細胞の維持方法が提供される。
本発明の細胞増殖抑制剤によれば、通常の培養条件下において、細胞の性状を維持したまま、細胞の増殖を抑制することができる。このため、本発明による細胞増殖抑制剤は、凍結保存をするまでもない、細胞の短期間保存および維持に極めて有用である。
また、本発明による細胞の増殖制御方法は、通常の培地と、本発明の細胞増殖抑制剤を含んでなる培地とを置換する操作のみを行うため、熟練を要さず、大変簡便である。さらに本発明に用いられるキシロースは、未利用資源であるため、培養コストを低減することができる。
さらに、細胞が多能性幹細胞の場合には、本発明の増殖抑制剤を含んでなる培地を使用すると、多能性幹細胞の増殖を抑制しながら細胞を維持するのと共に、未分化維持因子を添加し、あるいはフィーダー細胞の共存下培養を行わなくても、細胞の未分化性と全能性とを保持することができる。したがって、凍結に弱い多能性幹細胞であっても、短期間であれば、凍結保存するのと同じように、未分化性と全能性とを保持したまま、多能性細胞を維持することができる。
図1は、例1のマウスES細胞をグルコース培地およびキシロース培地(本発明の培地)で培養した際の、MTTアッセイで評価した細胞生存率を示すグラフである。(A)は、各培地で8日間培養した際の細胞生存率を示し、(B)は各培地で8日間培養後、通常のグルコース培地に置換し、さらに8日間培養を行った際の細胞生存率を示す。 図2は、例1のマウスES細胞のグルコース培地およびキシロース培地で培養した際の顕微鏡観察による結果を示す(倍率40倍)。 図3は、例1のマウスES細胞をグルコース培地およびキシロース培地で培養した際のRT−PCRの結果を示す。 図4は、例1のマウスES細胞をグルコース培地およびキシロース培地で培養した際の蛍光免疫染色の結果を示す(倍率200倍)。 図5は、例1のマウスES細胞のEB(胚様体)をグルコース培地およびキシロース培地で培養した際の顕微鏡観察による結果を示す(倍率40倍)。 図6は、例1のマウスES細胞のEBをグルコース培地およびキシロース培地で培養した際のRT−PCRの結果を示す。 図7は、例1のマウスES細胞のEBをグルコース培地およびキシロース培地で培養した際の蛍光免疫染色の結果を示す(倍率400倍)。 図8は、例1のマウスES細胞とPA6フィーダー細胞との共培養による分化誘導の際の顕微鏡観察による結果を示す(培養後14日目)(倍率200倍)。 図9は、例1のマウスES細胞とPA6フィーダー細胞との共培養による分化誘導の際のRT−PCRの結果を示す。 図10は、例1のマウスES細胞とPA6フィーダー細胞との共培養による分化誘導の際の蛍光免疫染色の結果を示す(培養後21日目)(倍率100倍)。 図11は、例2のヒトiPS細胞(P−iPS細胞)をグルコース培地およびキシロース培地で培養した際のMTTアッセイで評価した細胞生存率を示すグラフである。(A)は、各培地で8日間培養した際の細胞生存率を示し、(B)は各培地で8日間培養後、通常のグルコース培地に置換し、さらに8日間培養を行った際の細胞生存率を示す。 図12は、例3の膵腺ガン由来細胞(Panc1細胞)をグルコース培地およびキシロース培地で培養した際のMTTアッセイで評価した細胞生存率を示すグラフである。(A)は、各培地で8日間培養した際の細胞生存率を示し、(B)は各培地で8日間培養後、通常のグルコース培地に置換し、さらに8日間培養を行った際の細胞生存率を示す。 図13は、例3の膵腺ガン由来細胞(Panc1細胞)をグルコース培地およびキシロース培地で培養した際の顕微鏡観察による結果を示す(倍率100倍)。 図14は、例4の膵腺ガン由来細胞(Mia−Pa−Ca2細胞)をグルコース培地およびキシロース培地で培養した際のMTTアッセイで評価した細胞生存率を示すグラフである。(A)は、各培地で8日間培養した際の細胞生存率を示し、(B)は各培地で8日間培養後、通常のグルコース培地に置換し、さらに8日間培養を行った際の細胞生存率を示す。 図15は、例5のヒト乳腺ガン由来細胞(MCF7細胞)をグルコース培地およびキシロース培地で培養した際のMTTアッセイで評価した細胞生存率を示すグラフである。(A)は、各培地で8日間培養した際の細胞生存率を示し、(B)は各培地で8日間培養後、通常のグルコース培地に置換し、さらに8日間培養を行った際の細胞生存率を示す。 図16は、例6のマウス繊維芽細胞(SNL)をグルコース培地およびキシロース培地で培養した際のMTTアッセイで評価した細胞生存率を示すグラフである。(A)は、各培地で8日間培養した際の細胞生存率を示し、(B)は各培地で8日間培養後、通常のグルコース培地に置換し、さらに8日間培養を行った際の細胞生存率を示す。
発明の具体的説明
細胞増殖抑制剤
本発明による細胞増殖抑制剤は、前記したように、キシロースを有効成分とする。
キシロースは、木質系バイオマスに多く存在し、木糖とも呼ばれる五炭糖の単糖である。本発明に用いられるキシロースは、天然に多く存在するD−キシロースであってもよいし、合成により調製されるL−キシロース、DL−キシロースであってもよい。本発明で用いられるキシロースは、好ましくは、D−キシロースである。
本発明において、「有効成分」とは、本発明の目的である細胞増殖抑制作用を奏する上で必要とされる成分のことを意味する。ここで、細胞増殖抑制作用とは、細胞の生存を維持し、かつ、細胞増殖を抑えることを意味する。細胞増殖を抑制することによって、細胞を保存することができる。
本明細書において細胞とは、人為的に生体外で培養することができる細胞を意味し、例えば、多能性幹細胞、ガン細胞、株化細胞、初代培養細胞、および有限細胞系が包含される。本発明に用いられる細胞は、細胞増殖性が著しく高く、未分化性などの形質を保持する必要がある点で、好ましくは多能性幹細胞である。
本発明に用いられる多能性幹細胞とは、自分と同じ細胞を作る自己複製能と、組織や臓器を構成する他種類の細胞に分化する多分化能とを有する細胞のことを意味する。
多能性幹細胞としては、例えば、胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性生殖細胞(EG細胞)、胚性ガン細胞(EC細胞)、成体多能性幹細胞(APS細胞)が包含される。また、多能性幹細胞は、動物、昆虫などを由来とするものが含まれうるが、好ましくは哺乳動物由来のものであり、より好ましくは霊長類由来のものである。本発明に用いられる多能性幹細胞は、好ましくはES細胞またはiPS細胞である。
ここで「多能性」とは、多分化能とも言い換えることができるが、外胚葉、中胚葉、内胚葉に属するいずれの分化細胞にも分化しうる能力、および外胚葉、中胚葉、内胚葉に属する少なくともそれぞれ一種の分化細胞に分化しうる性質をいい、生殖細胞への分化能も包含されうる。なお、分化細胞は、将来、体内の組織や臓器を構成する多種類の細胞に分化しうる。多能性を有するか否かは、例えば、PA6フィーダー細胞と多能性細胞とを共存下培養を行い、神経細胞に誘導されるか否かを評価すること、または各種分化マーカーの発現により判断することができる。
「未分化性」とは、まだ特定の細胞系列に分化していないことを意味し、幹細胞の階層的には比較的上位に位置する幹細胞が有する性状である。未分化性を有するか否かは、未分化細胞マーカー、例えば、Oct3/4、Nanog、Rex−1を測定することにより判断することができる。
本発明に用いられるガン細胞とは、ガン由来の細胞を意味する。例えば、膵腺ガン由来細胞、乳腺ガン由来細胞、肝ガン由来細胞などが挙げられる。具体的には、Panc1、Mia−Pa−Ca2またはMCF7などが挙げられる。
本発明に用いられる株化細胞とは、不死化した細胞株(cell line;セルライン)を意味する。例えば、STO細胞、SNL細胞などが挙げられる。本発明の増殖抑制剤を用いることにより、無駄な継代を省くことができる。
本発明に用いられる初代培養細胞とは、生体から採取した組織や細胞を最初に播種して培養した細胞を意味する。本発明に用いられる有限細胞系とは、継代回数に制限(寿命)のある継代培養細胞を意味する。本発明の増殖抑制剤を用いることにより、性状の変化しやすい初代培養細胞や有限細胞系を、維持、保存することができる。
本発明の増殖抑制剤は、生命活動を休止した状態での物質応答性試験や臨床検査に利用することが期待される。
本発明の一つの態様によれば、本発明の細胞増殖抑制剤を含んでなる、細胞培養用培地が提供される。
ここで「細胞培養用培地」とは、上記細胞の培養に適した培養用培地またはその組成物を意味し、細胞の生存に影響する重大な障害を与えることなく、その細胞の性状を保持したまま、細胞を一定数、一定期間生存させることを可能とするものである。細胞培養用培地は、粉末状であっても、液体状であってもよい。
本発明の細胞培養用培地におけるキシロースの含有量は特に制限はなく、培養する細胞の種類、培養目的、基礎培地の種類などに応じて、適宜変更することができる。培地におけるキシロースの含有量は、通常の基礎培地のグルコース量と同量であってもよく、好ましくは1.0〜10.0g/L、より好ましくは1.0〜5.0g/L、さらに好ましくは3.0〜4.5g/Lである。なお、本発明による培地中におけるキシロースの含有量が少量であっても、本発明は十分な効果を示すことができるが、キシロースは毒性がなく、水溶性にも優れるため、通常は多量に添加しても問題は実質的に生じない。
本発明に用いられる培地は、従来の細胞培養に用いられる培地中のグルコースをキシロースに置換することにより得られる。具体的には、培地中のグルコースをキシロースに置換した基礎培地に、必要に応じて、血清または血清代替物または他の成分を添加することにより得られる。
ここで、基礎培地としては、例えば、培地中のグルコースをキシロースに置換したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、イーグル最小必須培地(MEM)、ハムF12培地、MCDB培地、フィッシャー培地、およびRPMI−1640培地が挙げられる。
血清または血清代替物は、公知のものであればいずれのものも用いることができる。例えば、血清としては、FBS、FCSなどが挙げられ、血清代替物としては、KSRなどが挙げられる。
他の成分としては、非必須アミノ酸、pH調整剤などが挙げられる。
基礎培地に添加する血清もしくは血清代替物または他の成分は、好ましくは、膜処理により糖質を除去したものである。膜処理は、例えば、透析膜 36/32(エーディア株式会社製)を用いることにより行うことができる。
また、本発明の一つの態様によれば、本発明の細胞増殖剤を含んでなる、多能性幹細胞維持用培地であって、キシロース以外の未分化維持因子を実質的に含まない多能性幹細胞維持用培地が提供される。
ここで「多能性幹細胞維持用培地」とは、上記多能性幹細胞の培養に適した培養用培地またはその組成物を意味し、未分化の多能性幹細胞の未分化性と多能性とを保持しつつ、細胞を一定数のまま、一定期間生存可能とするものである。
本発明の多能性幹細胞用培地は、キシロースを有効成分とする細胞増殖抑制剤を含んでなるため、多能性幹細胞用培地に必須の成分とされているキシロース以外の未分化維持因子(例えば、LIF、フィーダー細胞由来の未分化維持因子)を実質的に含まなくても、多能性幹細胞の未分化性と多能性とを保持することができる。
本発明の一つの態様によれば、本発明の細胞培養用培地を使用して、細胞を維持することを含んでなる、細胞の増殖制御方法が提供される。
ここで「細胞の増殖制御」とは、所望の時期に細胞の増殖能を停止させ、細胞の生存に影響する重大な障害を細胞に与えることなくその細胞濃度を維持させ、その後所望の時期に細胞の増殖を再開させることを意味する。具体的には、細胞の増殖制御は、本発明の細胞培養用培地と、通常の細胞培養用培地とを置換することによって行うことができる。ここで、細胞によっては、増殖再開後の増殖スピードを、通常培養と同レベル、またはそれ以上にすることができる。
細胞の増殖制御は、通常の細胞培養温度および環境条件で行ってもよい。
細胞の増殖抑制期間は、培養する細胞の種類、培養目的、基礎培地の種類、培養温度などに応じて、適宜変更することができる。例えば、培地中のグルコースをキシロースに置換したDMEMを用いて通常の培養条件にて培養した場合、少なくとも1ヵ月は細胞の増殖を抑制することが期待でき、好ましくは少なくとも26日間、より好ましくは少なくとも21日間、さらに好ましくは少なくとも14日間、さらにより好ましくは少なくとも8日間は、細胞の増殖を抑制することができる。
本発明の一つの態様によれば、本発明の多能性幹細胞未分化維持用培地を使用して細胞を維持することによって、多能性幹細胞の未分化性と多能性とを保持しつつ、細胞増殖を抑制することを含んでなる、多能性幹細胞の維持方法が提供される。
本発明を以下の例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例1:マウスES細胞での細胞増殖制御
(1)培地の調製
マウスES細胞(胚性幹細胞)培養用培地はそれぞれ下記の配合となるように調製した。
対照ES培地(グルコースES培地)
ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;Gibco BRL、Rockville,MD)、15容量% KnockOut Serum Replacement(KSR;Invitorogen)、100μM 非必須アミノ酸(Gibco BRL)、1mM ピルビン酸ナトリウム溶液(Gibco BRL)、10U/mL LIF(Chemicon,Temecula,CA)、100μM 2−メルカプトエタノール(Sigma,St.Louis,MO)、50U/mL ペニシリン、および50μg/mL ストレプトマイシン(Gibco BRL)
本発明によるES培地(キシロースES培地)
DMEM中のグルコースをD−キシロースに置換した変法DMEM(M−DMEM,日水製薬株式会社より入手)、糖質を透析膜(透析膜 36/32、エーディア株式会社製)により除去した15容量% KSR(日水製薬株式会社より入手)、100μM 非必須アミノ酸、1mM ピルビン酸ナトリウム溶液、100μM 2−メルカプトエタノール、50U/mL ペニシリン、および50μg/mL ストレプトマイシン
(2)マウスES細胞の調製
マウスES細胞(129/SV系、Cell and Molecular Technologies, Philipsburg, NJ)は、0.1重量% ゼラチン(Sigma)でコートした細胞培養ディッシュ(6ウェルプレート、株式会社サンプラテックより入手)にて、マイトマイシンC(Sigma)を用いて不活性化させたSNLフィーダー細胞(信州大学より入手)層上で、37℃、5%CO存在下にて、培養されたものを用いた。培地は、上記グルコースES培地を用い、培地交換を毎日行った。
(3)マウスES細胞の増殖抑制作用
ES細胞をSNLフィーダー細胞上で培養後、0.1重量% トリプシン/1mM EDTA溶液を用いて、マウスES細胞のコロニーのみを回収し、不活性化させたSNLフィーダー細胞を播種した96ウェルプレート(AGCテクノグラス株式会社より入手)上にES細胞を播種し、37℃、5%CO存在下にて、上記グルコースES培地を用いて2〜3日間培養し、再度コロニーを形成させた。
コロニー形成後に、一方の培地を、キシロースES培地に置換して、培養した(「培養後0日目」とする)。
培養後8日目に、キシロースES培地で培養したES細胞コロニーは、培地をグルコースES培地に置換して、さらに8日間培養した。培養期間中、培地交換を毎日行った。
培養後0、1、4、8日目およびグルコースES培地へ置換後1、4、8日目(培養後9、12、16日目)に、それぞれの培地で培養したES細胞の生存率をMTTアッセイにより測定した。MTTアッセイは、各回、6ウェルずつ行った。
MTTアッセイ
MTT Cell Growth Assay Kit(Chemicon)を用いて、製品マニュアルに従って測定した。具体的には、96ウェルプレートで培養した細胞の培地100μLを新鮮な培地に交換し、これに対してMTT試薬を10μL添加後4時間インキュベートした。その後、生細胞が生成するホルマザン色素(青色)を、可溶化液(0.04N HCl/イソプロパノール)を加えてピペッティングを数回行って溶解させ、プレートリーダーを用いて吸光波長570nmとリファレンス波長630nmを用いて測定した。生存率は、培養後0日目を100%として、それぞれの平均値±標準偏差を算出した。結果を図1AおよびBに示す。
(4)マウスES細胞の性状試験
上記(3)と同様に、マウスES細胞のコロニーのみを回収し、不活化させたSNLフィーダー細胞を播種した6ウェルプレート(株式会社サンプラテックより入手)に、ES細胞を2.0×10細胞/ウェルとなるように播種し、37℃、5%CO存在下にて、上記グルコースES培地を用いて2〜3日間培養し、再度コロニーを形成させた。コロニー形成後に、一方の培地をキシロースES培地に置換して、培養した(「培養後0日目」とする)。培地交換は毎日行った。
それぞれのマウスES細胞コロニー形態の観察、遺伝子発現の解析(RT−PCR)および蛍光免疫染色による分化傾向の確認を行った。
コロニー形態の観察
培養後0日目、4日目、8日目のES細胞コロニーの形態を光学顕微鏡(IX70、オリンパス株式会社製)で観察した。結果を図2に示す。
遺伝子発現の解析(RT−PCR)
全RNAを、TRIzol Reagent(Invitorogen,Carlsbad,CA)を用いて抽出した。抽出したRNAからSuper Script II(Inbitrogen)を用いてcDNAを調製した。cDNAサンプルは、下記表1のプライマーの内Oct3/4、Nanog、Rex−1、Nestin、Brahyury、Foxa2、β−actinを用いて、増幅した(Thermal Cycler Dice、タカラバイオ株式会社製)。
結果を図3に示す。結果から明らかなように、未分化マーカーの発現が確認された。
蛍光免疫染色
培養後8日目のES細胞を4%パラホルムアルデヒド/リン酸緩衝液(PBS、pH7.4)で30分間固定した。0.1%TritonX−100/PBSを用いて透過処理を行い、1.5%正常ロバ血清または正常ヤギ血清で処理した。その後、一次抗体として、マウス抗Oct3/4(1:100,Santa Cruz Biptechnology,Santa Cruz,CA)およびウサギ抗Foxa2(1:800,Cell Signaling Technology,Inc.,Beverly,MA)を用いて、4℃で一晩反応させ、洗浄後、二次抗体として、フルオレセインまたはTRITC接合IgGで染色した。その後、DAPIを用いて核染色した。結果を図4に示す。
(5)EBの形成
マウスEB(胚様体)培養用培地はそれぞれ下記の配合となるように調製した。
対照EB培地(グルコースEB培地)
DMEM、20容量% FBS、100μM 非必須アミノ酸、1mM ピルビン酸ナトリウム溶液、100μM 2−メルカプトエタノール、50U/mL ペニシリン、および50μg/mL ストレプトマイシン
本発明によるEB培地(キシロースEB培地)
DMEM中のグルコースをD−キシロースに置換した変法DMEM(M−DMEM,日水製薬株式会社より入手)、糖質を透析膜により除去した20容量% FBS、100μM 非必須アミノ酸、1mM ピルビン酸ナトリウム溶液、100μM 2−メルカプトエタノール、50U/mL ペニシリン、および50μg/mL ストレプトマイシン
ES細胞をSNLフィーダー細胞上で培養後、マウスES細胞コロニーのみを回収し、ハンギングドロップ法により、上記グルコースEB培地およびキシロースEB培地を用いて、EB(胚様体)を形成した。ここでグルコースEB培地は、10U/ml LIFをさらに添加したグルコースEB LIF+培地と、添加しないグルコースEB LIF−培地とを用いた。
培養後5日目にEBを回収した。回収したEBは、各EB培地を満たしたゼラチンコート細胞培養プレートでさらに培養し、回収後21日間(培養後26日間)、EB形態の観察、遺伝子発現の解析(RT−PCR)、蛍光免疫染色による分化傾向の確認を行った。
EB形態の観察
回収後0日目、4日目、8日目(培養後5日目、9日目、13日目)のEBの形態を光学顕微鏡で観察した。結果を図5に示す。結果に示されるように、グルコースEB培地を用いたものは、伸展したが、キシロースEB培地を用いたものは形態の変化が少なかった。
遺伝子発現の解析(RT−PCR)
回収後4日目、7日目、14日目(培養後9日目、12日目、19日目)のEBについて、上記(4)に記載の方法と同様の方法で、上記表1のプライマーの内Oct3/4、Nanog、Rex−1、Nestin、Goosecoid、Brahyury、Foxa2、AFP、GATA4、β−actinを用いて、RT−PCRを行った。結果を図6に示す。
蛍光免疫染色
回収後8日目、21日目(培養後13日目、26日目)のEBについて、一次抗体として、マウス抗Oct3/4(1:100,Santa Cruz Biptechnology,Santa Cruz,CA)、ウサギ抗Foxa2(1:800,Cell Signaling Technology,Inc.,Beverly,MA)、ヤギ抗Sox17(1:200,Santa Cruz Biptechnology,Santa Cruz,CA)、およびウサギ抗Nanog(1:200,ReproCELL Inc,横浜、日本)を用いる以外は、上記(4)に記載の方法と同様の方法で、蛍光免疫染色を行った。
(6)ES細胞の神経細胞への分化誘導試験
神経系細胞へ分化誘導するために、SNLフィーダー細胞上で培養したES細胞を、マイトマイシンC処理したPA6フィーダー細胞(理研BRCより入手)上に播種し、LIFを含まない上記グルコースES培地またはキシロースES培地で21日間培養した。
培養から4、7、14日目に、上記(4)と同様の方法で、グルコースES培地およびキシロースES培地それぞれのES細胞の形態観察、遺伝子発現の解析(RT−PCR)、蛍光免疫染色を行った。ここで、RT−PCRでは、上記表1のプライマーの内Oct3/4、Nanog、Rex−1、Nestin、Pax−6、β−actinを用いた。また蛍光免疫染色では、一次抗体として、マウス抗Oct3/4(1:100,Santa Cruz Biptechnology,Santa Cruz,CA)、ウサギ抗Nanog(1:200,ReproCELL Inc,横浜、日本)、マウス抗神経クラスIIIβ−チューブリン(クローンTuj1,1:500,マウスIgG2a、Covance,Berkley,CA)、およびウサギ抗MAP2(1:100,Chemicon,Temecula,CA)を用いた。結果を図8〜10に示す。結果に示されるように、キシロースES培地では、ES細胞は神経細胞へ分化誘導されなかった。
例2:ヒトiPS細胞の細胞増殖制御
(1)培地の調製
ヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)培養用培地はそれぞれ下記の配合となるように調製した。
対照培地(グルコースiPS培地)
DMEM/F12(Gibco BRL、Rockville,MD)、20容量% KSR(Invitorogen)、2mM L−グルタミン、100μM β−メルカプトエタノール(Sigma,St.Louis,MO)、50U/mL ペニシリン、および50μg/mL ストレプトマイシン(Gibco BRL)
本発明による培地(キシロースiPS培地)
DMEM/F12中のグルコースをD−キシロースに置換した変法DMEM/F12(M−DMEM,日水製薬株式会社より入手)、糖質を透析膜(透析膜 36/32、エーディア株式会社製)により除去した20容量% KSR(日水製薬株式会社より入手)、2mM L−グルタミン、100μM β−メルカプトエタノール(Sigma,St.Louis,MO)、50U/mL ペニシリン、および50μg/mL ストレプトマイシン(Gibco BRL)
(2)ヒトiPS細胞の調製
ヒトiPS細胞として、エーラスダンロス症候群患者由来の疾患iPS細胞(信州大学より入手)(以下、「P−iPS」という)を用いた。P−iPS細胞は、0.1重量%ゼラチン(Sigma)でコートした細胞培養ディッシュ(6ウェルプレート、サンプラテック株式会社より入手)にて、マイトマイシンC(Sigma)を用いて不活性化させたMEFフィーダー細胞(オリエンタル酵母工業株式会社より入手)層上で、37℃、5%CO存在下で培養した。培地は、上記グルコースiPS培地を用い、培地交換を毎日行った。
(3)ヒトiPS細胞の増殖抑制作用
P−iPS細胞をMEFフィーダー細胞上で培養後、0.25重量% トリプシンおよび0.1mg/mL collagenase IV(Invitrogen)を用いて、P−iPS細胞のコロニーのみを回収し、不活性化させたMEFフィーダー細胞を播種した96ウェルプレート(AGCテクノグラス株式会社より入手)上に、P−iPS細胞を播種し、37℃、5%CO存在下にて、上記グルコースiPS培地を用いて4日間培養して再度コロニーを形成させた。
コロニー形成後に、一方の培地をキシロースiPS培地に置換して培養した(「培養後0日目」とする)。
培養後8日目に、キシロースiPS培地で培養したP−iPS細胞は、培地をグルコースiPS培地に置換して、さらに8日間培養した。培養期間中、培地交換を毎日行った。
培養後0、1、4、8日目およびグルコース培地置換後1、4、8日目(培養後9、12、16日目)に、細胞の生存率をMTTアッセイにより測定した。MTTアッセイは、各回、6ウェルずつ、上記例1(3)と同様の方法で行った。結果を図11AおよびBに示す。
例3:ヒト膵腺ガン由来細胞(Panc1)の細胞増殖制御
(1)培地の調製
ヒト膵腺ガン由来細胞(Panc1)培養用培地はそれぞれ下記の配合となるように調製した。
対照培地(グルコース培地)
DMEM(Gibco BRL、Rockville,MD)、10容量% FBS(Gibco BRL)、50U/mL ペニシリン、および50μg/mL ストレプトマイシン(Gibco BRL)
本発明による培地(キシロース培地)
DMEM中のグルコースをD−キシロースに置換した変法DMEM(M−DMEM,日水製薬株式会社より入手)、糖質を透析膜(透析膜 36/32、エーディア株式会社製)により除去した10容量% FBS(日水製薬株式会社より入手)、50U/mL ペニシリン、および50μg/mL ストレプトマイシン(Gibco BRL)
(2)ヒト膵腺ガン由来細胞(Panc1)の増殖抑制作用
ヒト膵腺ガン由来細胞(Panc1)(信州大学より入手)を上記グルコース培地で培養後、0.1重量% トリプシン/1mM EDTA溶液を用いて、Panc1細胞のみを回収し、0.1重量%ゼラチンでコートした96ウェルプレート(AGCテクノグラス株式会社より入手)に、1.0×10細胞/ウェルとなるように播種し、37℃、5%CO存在下にて、培養した。培地は、上記グルコース培地とキシロース培地とを用いた。
培養後8日目に、キシロース培地で培養したPanc1細胞は、培地をグルコース培地に置換して、さらに8日間培養した。培養期間中、培地交換を毎日行った。
培養後0、1、4、8日目およびグルコース培地置換後1、4、8日目(培養後9、12、16日目)に、細胞の生存率をMTTアッセイにより測定した。MTTアッセイは、各回、6ウェルずつ、上記例1(3)と同様の方法で行った。結果を図12AおよびBに示す。
また、培養後3日目の形態を光学顕微鏡で観察した。結果を図13に示す。
例4:ヒト膵腺ガン由来細胞(Mia−Pa−Ca2)の細胞増殖制御
(1)培地の調製
ヒト膵腺ガン由来細胞(Mia−Pa−Ca2)培養用培地はそれぞれ下記の配合となるように調製した。
対照培地(グルコース培地)
DMEM(Gibco BRL、Rockville,MD)、10容量% FBS(Gibco BRL)、50U/mL ペニシリン、および50μg/mL ストレプトマイシン(Gibco BRL)
本発明による培地(キシロース培地)
DMEM中のグルコースをD−キシロースに置換した変法DMEM(M−DMEM,日水製薬株式会社より入手)、糖質を透析膜(透析膜 36/32、エーディア株式会社製)により除去した10容量% FBS(日水製薬株式会社より入手)、50U/mL ペニシリン、および50μg/mL ストレプトマイシン(Gibco BRL)
(2)ヒト膵腺ガン由来細胞(Mia−Pa−Ca2)の増殖抑制作用
ヒト膵腺ガン由来細胞(Mia−Pa−Ca2)(信州大学より入手)を上記グルコース培地で培養後、0.1重量% トリプシン/1mM EDTA溶液を用いて、Mia−Pa−Ca2細胞のみを回収し、0.1重量%ゼラチンでコートした96ウェルプレート(AGCテクノグラス株式会社より入手)に、1.0×10細胞/ウェルとなるように播種し、37℃、5%CO存在下にて、培養した。培地は、上記グルコース培地とキシロース培地とを用いた。
培養後8日目に、キシロース培地で培養したMia−Pa−Ca2細胞は、培地をグルコース培地に置換して、さらに8日間培養した。培養期間中、培地交換を毎日行った。
培養後0、1、4、8日目およびグルコース培地置換後1、4、8日目(培養後9、12、16日目)に、細胞の生存率をMTTアッセイにより測定した。MTTアッセイは、各回、6ウェルずつ、上記例1(3)と同様の方法で行った。結果を図14AおよびBに示す。
例5:ヒト乳腺ガン由来細胞(MCF7)の細胞増殖制御
(1)培地の調製
ヒト乳腺ガン由来細胞(MCF7)培養用培地はそれぞれ下記の配合となるように調製した。
対照培地(グルコース培地)
DMEM(Gibco BRL、Rockville,MD)、10容量% FBS(Gibco BRL)、50U/mL ペニシリン、および50μg/mL ストレプトマイシン(Gibco BRL)
本発明による培地(キシロース培地)
DMEM中のグルコースをD−キシロースに置換した変法DMEM(M−DMEM,日水製薬株式会社より入手)、糖質を透析膜(透析膜 36/32、エーディア株式会社製)により除去した10容量% FBS(日水製薬株式会社より入手)、50U/mL ペニシリン、および50μg/mL ストレプトマイシン(Gibco BRL)
(2)ヒト乳腺ガン由来細胞(MCF7)の増殖抑制作用
ヒト乳腺ガン由来細胞(MCF7細胞)(ECACC)を上記グルコース培地で培養後、0.1重量% トリプシン/1mM EDTA溶液を用いて、MCF7細胞のみを回収し、0.1重量%ゼラチンでコートした96ウェルプレート(AGCテクノグラス株式会社より入手)に、1.0×10細胞/ウェルとなるように播種し、37℃、5%CO存在下にて、培養した。培地は、上記グルコース培地とキシロース培地とを用いた。
培養後8日目に、キシロース培地で培養したMCF7細胞は、培地をグルコース培地に置換して、さらに8日間培養した。培養期間中、培地交換を毎日行った。
培養後0、1、4、8日目およびグルコース培地置換後1、4、8日目(培養後9、12、16日目)に、細胞の生存率をMTTアッセイにより測定した。MTTアッセイは、各回、6ウェルずつ、上記例1(3)と同様の方法で行った。結果を図15AおよびBに示す。
例6:マウス繊維芽細胞(SNL)の細胞増殖制御
(1)培地の調製
マウス繊維芽細胞(SNL)培養用培地はそれぞれ下記の配合となるように調製した。
対照培地(グルコース培地)
DMEM(Gibco BRL、Rockville,MD)、10容量% FBS(Gibco BRL)、50U/mL ペニシリン、および50μg/mL ストレプトマイシン(Gibco BRL)
本発明による培地(キシロース培地)
DMEM中のグルコースをD−キシロースに置換した変法DMEM(M−DMEM,日水製薬株式会社より入手)、糖質を透析膜(透析膜 36/32、エーディア株式会社製)により除去した10容量% FBS(日水製薬株式会社より入手)、50U/mL ペニシリン、および50μg/mL ストレプトマイシン(Gibco BRL)
(2)マウス繊維芽細胞(SNL)の増殖抑制作用
SNL細胞(信州大学より入手)を上記グルコース培地で培養後、0.1重量% トリプシン/1mM EDTA溶液を用いて、SNL細胞のみを回収し、0.1重量%ゼラチンでコートした96ウェルプレート(AGCテクノグラス株式会社より入手)に、1.0×10細胞/ウェルとなるように播種し、37℃、5%CO存在下にて、培養した。培地は、上記グルコース培地とキシロース培地とを用いた。
培養後8日目に、キシロース培地で培養したSNL細胞は、培地をグルコース培地に置換して、さらに8日間培養した。培養期間中、培地交換を毎日行った。
培養後0、1、4、8日目およびグルコース培地置換後1、4、8日目(培養後9、12、16日目)に、細胞の生存率をMTTアッセイにより測定した。MTTアッセイは、各回、6ウェルずつ、上記例1(3)と同様の方法で行った。結果を図16AおよびBに示す。

Claims (17)

  1. キシロースを有効成分として含んでなる、霊長類由来の多能性幹細胞維持用培地。
  2. 多能性幹細胞がiPS細胞である、請求項1に記載の多能性幹細胞維持用培地。
  3. 請求項1または2の培地を使用して、霊長類由来の多能性幹細胞を維持することを含んでなる、霊長類由来の多能性幹細胞の維持方法。
  4. 請求項1または2の培地を使用して細胞を維持することによって、霊長類由来の多能性幹細胞の未分化性と多能性とを保持しつつ、細胞増殖を抑制することを含んでなる、霊長類由来の多能性幹細胞の維持方法。
  5. キシロースを有効成分とする、細胞増殖抑制剤。
  6. 細胞が、多能性幹細胞である、請求項5に記載の細胞増殖抑制剤。
  7. 多能性幹細胞が霊長類由来の多能性幹細胞である、請求項6に記載の細胞増殖抑制剤。
  8. 多能性幹細胞がES細胞またはiPS細胞である、請求項6または7に記載の細胞増殖抑制剤。
  9. 細胞が、ガン細胞である、請求項5に記載の細胞増殖抑制剤。
  10. 請求項5〜9のいずれか一項に記載の細胞増殖抑制剤を含んでなる、細胞増殖抑制用細胞培養用培地。
  11. 請求項6〜8のいずれか一項に記載の細胞増殖抑制剤を含んでなる、細胞増殖抑制用多能性幹細胞維持用培地。
  12. キシロース以外の未分化維持因子を実質的に含まない、請求項11に記載の細胞増殖抑制用多能性幹細胞維持用培地。
  13. 多能性幹細胞が霊長類由来の多能性幹細胞である、請求項11または12に記載の細胞増殖抑制用多能性幹細胞維持用培地。
  14. 多能性幹細胞がES細胞またはiPS細胞である、請求項11〜13のいずれか一項に記載の細胞増殖抑制用多能性幹細胞維持用培地。
  15. 請求項1、2および10〜14のいずれか一項に記載の培地を使用して、細胞を維持することを含んでなる、細胞の増殖制御方法。
  16. 請求項1、2および11〜14のいずれか一項に記載の培地を使用して細胞を維持することによって、多能性幹細胞の未分化性と多能性とを保持しつつ、細胞増殖を抑制することを含んでなる、多能性幹細胞の維持方法。
  17. 霊長類がヒトである、請求項1、12および13に記載の培地。
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