<第1実施形態>
以下、本発明における燃料電池システムを具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
図1に、この実施形態における燃料電池システムを概略構成図により示す。この燃料電池システムは、電動自動車に搭載され、その駆動用モータ(図示略)に電力を供給するために使用される。燃料電池システムは、燃料電池(FC)1を備える。燃料電池1は、燃料ガス(水素ガス)と酸化剤ガス(エア)の供給を受けて発電を行うようになっている。燃料電池1で発電した電力は、インバータ(図示略)を介して駆動用モータに供給されるようになっている。この駆動用モータは、別途の指令に基づいて制御されるようになっている。
燃料電池1のアノード側には、燃料電池1に水素ガスを供給するための本発明の燃料供給流路としての水素供給流路2と、燃料電池1から排出される燃料オフガス(水素オフガス)を水素供給流路2へ循環させるための本発明の第1燃料循環流路としての第1水素循環流路3と、水素供給流路2と第1水素循環流路3との間に設けられたエゼクタ4とが設けられる。水素供給流路2には、水素タンク5から水素ガスが流れるようになっている。
エゼクタ4は、可変ノズル4aを含む。可変ノズル4aは、電磁弁より構成され、エゼクタ4における水素ガスの流速を調節するために開度可変となっている。この実施形態で、可変ノズル4aは、本発明のエゼクタ流速調節手段に相当する。
水素供給流路2には、エゼクタ4を迂回するようにバイパス流路6が設けられる。バイパス流路6には、同流路6における水素ガスの流量を調節するための流量制御弁7が設けられる。この実施形態で、流量制御弁7は、本発明のバイパス流量調節手段に相当する。
水素循環流路3には、気液分離器8と逆止弁9が設けられる。気液分離器7は、水素オフガスから水分を分離し、水素オフガスのみをエゼクタ4へ向けて流し、水分を排出流路10を介して外部へ排出するようになっている。排出流路10には、電磁弁より構成される排気排水弁11が設けられる。逆止弁9は、エゼクタ4からの水素ガスの逆流を防止するようになっている。この実施形態で、排出流路10と排気排水弁11は、本発明の排水手段に相当する。
エゼクタ4と燃料電池1との間の水素供給流路2には、第1水素圧力センサ12が設けられる。第1水素圧力センサ12は、燃料電池1に供給される水素ガスの供給圧力(水素供給圧力)P1を検出するようになっている。この実施形態で、第1水素圧力センサ12は、本発明の燃料圧力検出手段に相当する。
第1水素循環流路3と水素供給流路2との間には、エゼクタ4を迂回するように第2水素循環流路13が設けられる。第2水素循環流路13は、気液分離器8より下流にて第1水素循環流路3から分岐して設けられる。第2水素循環流路13には、水素ポンプ14と逆止弁15が設けられる。水素ポンプ14は、水素オフガスを水素供給流路2へ向けて圧送するようになっている。逆止弁15は、水素供給流路2からの水素ガスの逆流を防止するようになっている。この実施形態で、第2水素循環流路13は、本発明の第2燃料循環流路に相当する。この実施形態で、水素ポンプ14は、本発明の燃料ポンプに相当する。
水素タンク5とエゼクタ4との間の水素供給流路2には、第2水素圧力センサ16が設けられる。第2水素圧力センサ16は、エゼクタ4の上流側における水素ガスの圧力(エゼクタ上流水素圧力)P0を検出するようになっている。
一方、燃料電池1のカソード側には、燃料電池1に酸化剤ガスとしてのエアを供給するためのエア供給流路21と、燃料電池1から排出されるエアオフガスを排出するためのエア排出流路22とが設けられる。エア供給流路21には、燃料電池1に対するエアの供給量を調節するためのエアポンプ23が設けられる。エアポンプ23より下流のエア供給流路21には、エア圧力センサ24が設けられる。エア圧力センサ24は、燃料電池1へ供給されるエアの圧力(エア圧力)を検出するようになっている。また、エア排出流路22には、電磁弁よりなる切換弁25が設けられる。
上記構成において、水素タンク5の水素ガスは、水素供給流路2及びエゼクタ4を介して燃料電池1に供給可能となっている。また、水素タンク5の水素ガスは、水素供給流路2、バイパス流路6及び流量制御弁7を介して燃料電池1に供給可能となっている。燃料電池1に供給された水素ガスは、同電池1にて発電に使用された後、同電池1から水素オフガスとして第1水素循環流路3へ排出される。水素オフガスには燃料電池1の内部の生成水が含まれる。排出された水素オフガスは、気液分離器7にて水分(生成水を含む。)と分離された後、エゼクタ4を介して水素供給流路2へ循環可能となっている。このとき、水素オフガスは、エゼクタ4を流れる水素ガスによってエゼクタ4に負圧が発生することで、その負圧に吸引されて水素ガスに合流し、水素供給流路2へ循環される。また、気液分離器7にて水分と分離された水素オフガスは、水素ポンプ14を駆動させることにより、第2水素循環流路13を介して水素供給流路2へ循環可能となっている。第1水素循環流路3のみによって水素オフガスを循環させるか、第1水素循環流路3と第2水素循環流路13の両方によって水素オフガスを循環させるかは、水素ポンプ14を制御することで使い分けることができる。
この燃料電池システムは、コントローラ30を更に備える。コントローラ30は、第1水素圧力センサ12、第2水素圧力センサ16及びエア圧力センサ24の検出信号をそれぞれ入力するようになっている。コントローラ30は、燃料電池1の発電に係る電圧値及び電流値をそれぞれ入力するようになっている。また、コントローラ30は、電気自動車の運転操作に係る指令値として、運転席に設けられたアクセルセンサ31からアクセルペダル32の操作量に相当するアクセル開度ACCを入力するようになっている。コントローラ30は、中央処理装置(CPU)及びメモリを備え、燃料電池1へ供給される水素流量及びエア流量を制御するために、メモリに記憶された所定の制御プログラムに基づいて可変ノズル4a、流量制御弁7、排気排水弁11、水素ポンプ14、エアポンプ23及び切換弁25等を制御するようになっている。すなわち、コントローラ30は、燃料電池1に供給される水素流量を制御するために、あるいは、エゼクタ4における水素ガスの流速を調節するために、各水素圧力センサ12,16の検出信号等に基づいて可変ノズル4a、流量制御弁7及び水素ポンプ14を制御するようになっている。また、コントローラ30は、排出流路10からの排気排水を調節するために排気排水弁11を制御するようになっている。一方、コントローラ30は、燃料電池1へ供給されるエアの流量(エア流量)を調節するために、エア圧力センサ24の検出信号に基づいてエアポンプ23を制御するようになっている。また、コントローラ30は、エア排出流路22からのエアオフガスの排出流量を調節するために切換弁25を制御するようになっている。この実施形態で、コントローラ30は、本発明の制御手段に相当する。また、アクセルセンサ31及びアクセルペダル32は、燃料電池1の出力を指令するための本発明の出力指令手段に相当する。
次に、燃料電池1に対する水素供給流量を制御するための制御プログラムについて説明する。図2に、この制御プログラムをフローチャートにより示す。
処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ100で、コントローラ30は、電気自動車の急加速要求であるか、すなわち、燃料電池1の出力増が指令されたか否かを判断する。コントローラ30は、アクセルセンサ31により検出されるアクセル開度ACCに基づいてこの判断を行う。この判断結果が否定となる場合、コントローラ30はその後の処理を終了する。この判断結果が肯定となる場合、コントローラ30は処理をステップ110へ移行する。
ステップ110で、コントローラ30は、第1水素圧力センサ12により検出される水素供給圧力P1が第1の所定値Pa以上か否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、コントローラ30は処理をステップ120へ移行する。この判断が肯定となる場合、コントローラ30は処理をステップ140へ移行する。
ステップ120では、コントローラ30は、エゼクタ4の可変ノズル4aを第1の開度Aに開弁する。次に、ステップ130で、コントローラ30は、流量制御弁7を第1の開度Bに開弁する。その後、コントローラ30は、処理をステップ110へ戻し、ステップ110〜ステップ130の処理を繰り返す。
一方、ステップ110から移行してステップ140では、コントローラ30は、第1水素圧力センサ12により検出される水素供給圧力P1が第2の所定値Pb(Pb>Pa)以上か否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、コントローラ30は処理をステップ150へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、コントローラ30はその後の処理を終了する。
ステップ150では、コントローラ30は、エゼクタ4の可変ノズル4aを第2の開度C(C>A)に開弁する。すなわち、可変ノズル4aの開度を、ステップ120の処理よりも拡げる。次に、ステップ160で、コントローラ30は、流量制御弁7を第2の開度D(D<B)に開弁する。すなわち、流量制御弁7の開度を、ステップ130の第1の開度Bよりも絞る。その後、コントローラ30は、処理をステップ140へ戻し、ステップ140〜ステップ160の処理を繰り返す。
ここで、図3に、上記制御に関する各種パラメータの挙動の一例をタイムチャートにより示す。燃料電池1の停止状態から、時刻t1にて、図3(a)に示すようにアクセル開度ACCがゼロから立ち上がり、同図(b)に示すようにFC要求出力がゼロから立ち上がる。すると、図3(d)に示すようにエゼクタ4の可変ノズル4aの開度信号がゼロから第1の開度Aへ立ち上がり、同図(e)に示すように流量制御弁7の開度信号がゼロから第1の開度Bへ立ち上がる。これに伴い、図3(f)に示すように燃料電池1に対する水素供給流量がゼロから立ち上がり、同図(c)に示すように水素供給圧力P1がゼロから増加し始め、同図(g)に示すように水素循環流量が増加し始める。
その後、時刻t2にて、図3(c)に示すように水素供給圧力P1が第1の所定値Paに達すると、同図(d)に示すように可変ノズル4aの開度信号が第1の開度Aから増加し始め、同図(e)に示すように流量制御弁7の開度信号が第1の開度Bから減少し始める。これに伴い、図3(c)に示すように水素供給圧力P1が、第1の所定値Paから緩やかに増加し始め、同図(g)に示すように水素循環流量が変わらずに増加を続ける。
そして、時刻t3にて、図3(c)に示すように水素供給圧力P1が第2の所定値Pbに達すると、同図(d)に示すように可変ノズル4aの開度信号が第1の開度Aよりも大きい第2の開度Cで上げ止まり、同図(e)に示すように流量制御弁7の開度信号が第1の開度Bよりも小さい第2の開度Dで下げ止まり、同図(g)に示すように水素循環流量が上げ止まる。このように、燃料電池1に出力要求があったとき、図3(f),(g)に示すように、燃料電池1に対する水素供給流量と水素循環流量を応答性良く確保することができる。
電気自動車の急加速時等には、燃料電池1で急速発電を行う必要があることから、燃料電池1へ相当量の水素ガスを応答性良く供給する必要がある。ここで、水素ポンプ14を使用することなく、水素オフガスを水素供給流路2へ循環させるためには、第1水素循環流路3を介して適量の水素オフガスをエゼクタ4へ応答性良く流す必要がある。また、バイパス流路6を介して水素供給流路2へ水素ガスを流すことで、エゼクタ4を介することなく水素ガスを応答性良く燃料電池1へ供給することができる。しかし、エゼクタ4へ水素オフガスを応答性良く流すことができなければ、燃料電池1の生成水を排出しきれず、燃料電池1の発電が不安定になってしまう。
そこで、上記制御によれば、コントローラ30は、燃料電池1の出力増が指令されたときに、バイパス流路6に水素ガスが流れるように流量制御弁7を比較的大きく開弁すると共に、エゼクタ4における水素ガスの流速が速くなるように可変ノズル4aを比較的小さく開弁するようになっている。詳しくは、コントローラ30は、燃料電池1の出力増が指令されたとき、初めに流量制御弁7を大き目の第1の開度Bに開いて水素ガスをバイパス流路6に流すと共に、可変ノズル4aを小さ目の第1の開度Aに開いて水素ガスをエゼクタ4にも速い流速で流す。これにより、水素ガスをバイパス流路6と水素供給流路2を介して燃料電池1へ供給すると共に、エゼクタ4に水素ガスを流して第1水素循環流路3を介して水素供給流路2へ水素オフガスを循環させる。その後、コントローラ30は、水素供給圧力P1が第1の所定値Paから第2の所定値Pbとなるように流量制御弁7及び可変ノズル4aの開度を制御するようになっている。そして、コントローラ30は、燃料電池1の出力増が指令されてから、第1水素圧力センサ12により検出される水素供給圧力P1が第2の所定値Pb以上となったときに、バイパス流路6における単位時間当たりの水素ガスの流量が減少するように流量制御弁7を制御すると共に、エゼクタ4における水素ガスの流速が遅くなるように可変ノズル4aを制御するようになっている。詳しくは、コントローラ30は、流量制御弁7を大き目の第1の開度Bから小さ目の第2の開度Dへ絞ると共に、可変ノズル4aを小さ目の第1の開度Aから大き目の第2の開度Cへ拡大する。
図4に、燃料電池1に供給される水素供給流量とエゼクタ4へ流れる水素循環流量との関係をグラフにより示す。燃料電池1の出力増が指令されると、流量制御弁7と可変ノズル4aが開き、水素供給流量と水素循環流量が第1の所定値Q1となるように流量制御弁7と可変ノズル4aの開度が制御される。このとき、バイパス流路6を流れる水素流量(水素ガスを含む)とエゼクタ4を流れる水素流量(水素ガスと水素オフガスを含む)の合計が燃料電池1が要求する水素供給流量に一致する。この場合、燃料電池1へ水素ガスを瞬時に供給することができると共に、エゼクタ4へ水素オフガスをある程度流すことができる。その後、水素供給流量と水素循環流量が第2の所定値Q2となるように流量制御弁7と可変ノズル4aの開度が制御される。このとき、可変ノズル4aは、ノズル面積が拡大する方向へ制御される。この場合、燃料電池1に対する必要な水素供給流量を確保しながら、エゼクタ4への水素オフガスの循環流量を確保することができる。
以上説明したこの実施形態の燃料電池システムによれば、アクセルペダル32により燃料電池1の出力増が指令されたときに、流量制御弁7と可変ノズル4aが制御されることにより、バイパス流路6に水素ガスが流れると共に、エゼクタ4に水素ガスが速やかに流れる。また、エゼクタ4を流れる水素ガスによりエゼクタ4に適度な負圧が発生し、第1水素循環流路3を介して水素オフガスが適度にエゼクタ4へ吸引されて循環する。従って、エゼクタ4より下流の水素供給流路2へは、バイパス流路6とエゼクタ4を流れた水素ガスが速やかに流れると共に、第1水素循環流路3とエゼクタ4を介して循環する水素オフガスが速やかに流れ、それらが燃料電池1へ供給される。このため、燃料電池1に高出力が要求されたときに、燃料電池1からエゼクタ4への水素オフガスの循環流量と応答性を確保しながら燃料電池1へ応答性良く水素ガスを供給することができる。
また、この実施形態では、燃料電池1の出力増が指令されてから第1水素圧力センサ12により検出される水素供給圧力P1が第2の所定値Pb以上となったときに、流量制御弁7と可変ノズル4aが制御されることにより、バイパス流路6における水素ガスの流量が減少すると共に、エゼクタ4における水素ガスの流速が遅くなる。従って、バイパス流路6とエゼクタ4からエゼクタ4より下流の水素供給流路2へ流れる水素ガスが減少すると共に、エゼクタ4に吸引されて第1水素循環流路3を循環する水素オフガスが減少する。このため、燃料電池1で適度に発電を開始した後は、必要以上の水素ガスが燃料電池1に供給されることを防止することができる。
<第2実施形態>
次に、本発明における燃料電池システムを具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明において、前記第1実施形態と同等の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、異なった点を中心に説明する。
この実施形態では、制御プログラムの処理内容の点で第1実施形態と異なる。図5に、この実施形態の制御プログラムをフローチャートにより示す。図5に示すフローチャートは、ステップ115とステップ135の処理内容を加えた点で図2のフローチャートと異なる。
図5に示すように、この実施形態では、ステップ110の判断結果が否定となる場合、コントローラ30は、ステップ120及びステップ130の処理を実行する前に、ステップ115で、水素ポンプ14を駆動する。
一方、ステップ110の判断結果が肯定となる場合、コントローラ30は、ステップ140〜ステップ160の処理を実行する前に、ステップ135で、水素ポンプ14を停止させる。
ここで、図6に、上記制御に関する各種パラメータの挙動の一例をタイムチャートにより示す。燃料電池1の停止状態から、時刻t1にて、図6(a)に示すようにアクセル開度ACCがゼロから立ち上がり、同図(b)に示すようにFC要求出力がゼロから立ち上がる。すると、図6(d)に示すように水素ポンプ14が駆動を開始して回転速度がゼロから所定値Nに立ち上がり、同図(e)に示すように可変ノズル4aの開度信号がゼロから第1の開度Aへ立ち上がり、同図(f)に示すように流量制御弁7の開度信号がゼロから第1の開度Bへ立ち上がる。これに伴い、図6(g)に示すように燃料電池1に対する水素供給流量がゼロから立ち上がり、同図(c)に示すように水素供給圧力P1が増加し始め、同図(h)に示すように水素循環流量がゼロから増加し始める。
その後、時刻t2にて、図6(c)に示すように水素供給圧力P1が第1の所定値Paに達すると、同図(d)に示すように水素ポンプ14が停止して回転速度がゼロへ向けて下がり、同図(e)に示すように可変ノズル4aの開度信号が第1の開度Aから増加し始め、同図(f)に示すように流量制御弁7の開度信号が第1の開度Bから減少し始める。これに伴い、図6(c)に示すように水素供給圧力P1が、第1の所定値Paから緩やかに増加し始め、同図(h)に示すように水素循環流量が変わらずに増加を続ける。
そして、時刻t3にて、図6(c)に示すように水素供給圧力P1が第2の所定値Pbに達すると、同図(e)に示すように可変ノズル4aの開度信号が第1の開度Aよりも大きい第2の開度Cで上げ止まり、同図(f)に示すように流量制御弁7の開度信号が第1の開度Bよりも小さい第2の開度Dで下げ止まり、同図(f)に示すように水素循環流量が上げ止まる。このように、燃料電池1に出力要求があったとき、図6(g),(h)に示すように、燃料電池1に対する水素供給流量と水素循環流量を応答性良く確保することができる。
上記制御によれば、コントローラ30は、燃料電池1の出力増が指令されたときに、第1実施形態の処理内容に加え、水素ポンプ14を駆動制御するようになっている。また、コントローラ30は、その後、第1水素圧力センサ12により検出される水素供給圧力P1が第1の所定値Pa以上となったときに、水素ポンプ14を停止させるようになっている。詳しくは、コントローラ30は、燃料電池1の出力増が指令されたときに、初めに流量制御弁7を大きめの第1の開度Bに開いてバイパス流路6に水素ガスを流すと共に、可変ノズル4aを小さめの第1の開度Aに開いてエゼクタ4にも水素ガスを速い流速で流し、加えて、水素ポンプ14を駆動させる。その後、コントローラ30は、水素供給圧力P1が第1の所定値Pa以上になると水素ポンプ14を停止させ、水素供給圧力P1が第2の所定値Pbとなるように流量制御弁7及び可変ノズル4aの開度を制御するようになっている。
以上説明したようにこの実施形態の燃料電池システムによれば、前記第1実施形態の作用効果に加えて次のような作用効果を得ることができる。すなわち、水素ポンプ14を制御することにより、第1水素循環流路3及びエゼクタ4を介しての水素オフガスの循環と、第2水素循環流路13を介しての水素オフガスの循環とを適宜制御することができる。例えば、低流量の水素オフガスを水素供給流路2へ循環させる必要がある場合には、水素ポンプ14を駆動させて第2水素循環流路13及び水素ポンプ14を介して水素オフガス循環させることができる。また、中・高流量の水素オフガスを水素供給流路2へ循環させる必要がある場合には、水素ポンプ14を停止させて第1水素循環流路3及びエゼクタ4を介して水素オフガスを循環させることができる。このため、電気自動車の運転状態に応じて水素ポンプ14の駆動及び停止を制御することにより、第1水素循環流路3及びエゼクタ4を介しての水素オフガスの循環と、第2水素循環流路13及び水素ポンプ14を介しての水素オフガスの循環とを使い分けることができる。
また、この実施形態では、燃料電池1の出力増が指令されたときに水素ポンプ14が駆動制御されるので、水素オフガスが第2水素循環流路13及び水素ポンプ14を介して水素供給流路2へ速やかに循環され、その分だけ燃料電池1に多くの水素ガスが供給される。このため、燃料電池1に対する水素ガス供給の応答性を更に向上させることができる。
更に、この実施形態では、第1水素圧力センサ12により検出される水素供給圧力P1が第1の所定値Pa以上となったときに水素ポンプ14が停止されるので、第2水素循環流路13及び水素ポンプ14を介して水素供給流路2へ循環される水素オフガスが速やかに遮断され、その分だけ燃料電池1に供給される水素ガスが減少する。このため、エゼクタ4を介して水素オフガスの循環流量を確保できるようになったところで水素ポンプ14を停止することにより、水素ポンプ14に使用する電力を削減することができる。
<第3実施形態>
次に、本発明における燃料電池システムを具体化した第3実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
この実施形態では、制御プログラムの処理内容の点で前記各実施形態と異なる。図7に、この実施形態の制御プログラムをフローチャートにより示す。図7に示すフローチャートは、ステップ105、ステップ106及びステップ170〜ステップ175の処理内容の点で図5のフローチャートと異なる。
図7に示すように、この実施形態では、ステップ100の判断結果が肯定となる場合、ステップ105で、コントローラ30は、第2水素圧力センサ16により検出されるエゼクタ上流水素圧力P0が第3の所定値Psよりも高いか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、コントローラ30は、処理をステップ106へ移行する。この判断が肯定となる場合、コントローラ30は、処理をステップ110へ移行する。
ステップ106では、コントローラ30は、エゼクタ4の上流に異常があるものと判定して異常処理を実行する。例えば、コントローラ30は、エゼクタ4より上流の水素供給流路2又は水素タンク5等に漏れなどの異常があるものとして、その後の処理を停止したり、異常の判定結果をメモリに記憶したりする。
また、ステップ110の判断結果が否定となる場合、コントローラ30は、ステップ115、ステップ120及びステップ130の処理を実行した後、ステップ170で、水素供給圧力P1が上昇し始めてからの経過時間Tが所定時間T0よりも短いか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、コントローラ30は、処理をステップ171へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、コントローラ30は、処理をステップ110へ戻す。
ステップ171で、コントローラ30は、エゼクタ4に異常があるものと判定してエゼクタ4の異常処理を実行する。例えば、コントローラ30は、エゼクタ4の異常判定結果をメモリに記憶する。
次に、ステップ172で、コントローラ30は、流量制御弁7を第3の開度E(E>B)に開弁する。
次に、ステップ173で、コントローラ30は、燃料電池1のセル電圧Vが所定値V0よりも高い否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、コントローラ30は、処理をステップ174へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、コントローラ30は、その後の処理を終了する。
ステップ174では、コントローラ30は、排気排水弁11を所定時間T1だけ開弁する。その後、ステップ175で、コントローラ30は、排気排水弁11を所定時間T2だけ閉弁する。その後、コントローラ30は、処理をステップ173へ戻す。
ここで、図8に、上記制御に関する各種パラメータの挙動の一例をタイムチャートにより示す。燃料電池1の停止状態から、時刻t1にて、図8(a)に示すようにアクセル開度ACCがゼロから立ち上がり、同図(b)に示すようにFC要求出力がゼロから立ち上がり、同図(c)に示すようにエゼクタ上流水素圧力P0がゼロから立ち上がる。すると、図8(e)に示すように水素ポンプ14が駆動を開始して回転速度がゼロから所定値Nへ立ち上がり、同図(f)に示すように可変ノズル4aの開度信号がゼロから第1の開度Aへ立ち上がり、同図(g)に示すように流量制御弁7の開度信号がゼロから第1の開度Bへ立ち上がる。これに伴い、図8(h)に示すように燃料電池1に対する水素供給流量がゼロから立ち上がり、同図(d)に示すように水素供給圧力P1が増加し始め、同図(i)に示すように水素循環流量がゼロから増加し始める。
その後、時刻t2を過ぎ、水素供給圧力P1が増加し始めてからの経過時間Tが所定時間T0を過ぎても水素供給圧力P1が第1の所定値Paを超えない場合、時刻t3にて、図8(g)に示すように流量制御弁7の開度信号が第1の開度Bから第3の開度Eへ立ち上がる。これに伴い、図8(h)に示すように水素供給流量が一段階増加し、同図(d)に示すように水素供給圧力P1が急激に増加し始める。
その後、図8(d)に示すように水素供給圧力P1が第2の所定値Pbを越えない状態で、時刻t4にて、同図(j)に示すようにFCセル電圧Vが所定値V0以下になると、同図(k)に示すように、時刻t4から時刻t5の間で、排気排水弁11が所定時間T1だけ開弁され、その後、時刻t5から時刻t6の間で、排気排水弁11が所定時間T2だけ閉弁される。排気排水弁11が開弁される間は、第1水素循環流路3の内圧が変化することから、時刻t4から時刻t5の間では、図8(i)に示すように水素循環流量が一時的に減少し、これに伴い同図(d)に示すように水素供給圧力P1も一時的に減少する。
上記制御によれば、コントローラ30は、エゼクタ上流水素圧力P0に基づいてエゼクタ4の上流の異常を判定するようになっている。また、コントローラ30は、エゼクタ4の可変ノズル4aを開弁しても水素供給圧力P0が狙い通りに上昇しない場合は、エゼクタ4の異常と判定し、バイパス流路6の流量制御弁7を更に開いて燃料電池1への水素供給流量を確保するようになっている。それでも燃料電池1の発電が不安定と判断したときは、コントローラ30は、排気排水弁11を開いて燃料電池1からの排水を促すようになっている。
以上説明したようにこの実施形態の燃料電池システムによれば、前記第2実施形態の作用効果に加えて次のような作用効果を得ることができる。すなわち、燃料電池1の電圧が不安定となったときに排気排水弁11が制御されて燃料電池1から生成水が排出流路10へ排出されるので、燃料電池1の電圧の不安定要因が解消される。このため、燃料電池1の出力電圧を速やかに安定化させることができる。
また、この実施形態では、エゼクタ4やエゼクタ4より上流の水素供給流路2に関する異常を判定し、その異常をコントローラ30のメモリに記憶するので、燃料電池システムのメンテナンスに寄与することができる。
<第4実施形態>
次に、本発明における燃料電池システムを具体化した第4実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
この実施形態では、燃料電池システムのアノード側の構成と制御プログラムの処理内容の点で前記各実施形態と異なる。図9に、この実施形態の燃料電池システムを概略構成図により示す。この実施形態では、図1に示すシステムにおける第2水素循環流路13、水素ポンプ14及び逆止弁15が省略される。また、この実施形態では、図1に示すシステムにおける流量制御弁7に代わってバイパス流路6にバイパスインジェクタ41が設けられ、エゼクタ4より上流の水素供給流路2には2つの上流側インジェクタ42,43が並列に設けられる。各インジェクタ41〜43は、電磁弁を備えて構成され、水素ガスを噴射するようになっている。この実施形態で、バイパスインジェクタ41は、本発明のバイパス流量調節手段に相当すると共に、本発明の第1燃料噴射弁に相当する。この実施形態で、2つの上流側インジェクタ42,43は、本発明の第2燃料噴射弁に相当する。
図10に、この実施形態の制御プログラムをフローチャートにより示す。図10に示すフローチャートは、ステップ200〜ステップ230の処理内容の点で図1のフローチャートのステップ130及びステップ160と異なる。
すなわち、ステップ110の判断結果が否定となる場合、コントローラ30は、ステップ120で、エゼクタ4の可変ノズル4aを第1の開度Aに開弁した後、ステップ200及びステップ210の処理を実行する。すなわち、ステップ200では、コントローラ30は、バイパスインジェクタ41を第1の開弁時間Tcだけ開弁する。続いて、ステップ210で、コントローラ30は、2つの上流側インジェクタ42,43を第2の開弁時間Tbだけ開弁する。その後、コントローラ30は処理をステップ110へ戻す。
ここで、コントローラ30は、各インジェクタ41〜43をデューティ制御(開閉を周期的に繰り返す制御)によって開弁するようになっている。また、コントローラ30は、バイパスインジェクタ41と上流側インジェクタ42,43との間で開弁時期が互いに逆位相となるように、すなわち、バイパスインジェクタ41からの水素ガスの噴射と上流側インジェクタ42,43からの水素ガスの噴射とが互いに逆位相となるように各インジェクタ41〜43をデューティ制御するようになっている。また、この実施形態では、各インジェクタ41〜43の開弁時間と周期が、エゼクタ4の可変ノズル4aの開度に応じて設定されるようになっている。
一方、ステップ140の判断結果が否定となる場合、コントローラ30は、ステップ150で、エゼクタ4の可変ノズル4aを第2の開度Cに開弁した後、ステップ220及びステップ230の処理を実行する。すなわち、ステップ220では、コントローラ30は、バイパスインジェクタ41を第3の開弁時間Taだけ開弁する。続いて、ステップ230で、コントローラ30は、2つの上流側インジェクタ42,43を第4の開弁時間Tdだけ開弁する。その後、コントローラ30は処理をステップ140へ戻す。
ここでも、コントローラ30は、各インジェクタ41〜43をデューティ制御によって開弁し、バイパスインジェクタ41と上流側インジェクタ42,43との間で、開弁時期が互いに逆位相となるように各インジェクタ41〜43をデューティ制御するようになっている。
図11に、上記制御に関する各種パラメータの挙動の一例をタイムチャートにより示す。時刻t1以前の定常運転時では、図11(a)〜(h)に示すように、アクセル開度ACC及び燃料電池1の要求出力がそれぞれある一定値で推移することにより、可変ノズル4aがある一定の開度で推移し、バイパスインジェクタ41と上流側インジェクタ42,43がそれぞれある開弁時間により互いに逆位相でデューティ制御され、水素供給圧力P1がある一定値で推移し、水素供給流量及び水素循環重量がそれぞれある一定値で推移する。このとき、図11(d)に示すように、可変ノズル4aは、第1の開度Aよりも大きく第2の開度Cよりも小さい開度で開弁され、バイパスインジェクタ41は、第3の開弁時間Taよりも短い開弁時間で開弁され、上流側インジェクタ42,43は、第2の開弁時間Tbよりも長く第4の開弁時間Tdよりも短い開弁時間により開弁される。
その後、停止状態から急加速へ移行すると、時刻t2にて、図11(a)に示すようにアクセル開度ACCがゼロから立ち上がり、同図(b)に示すようにFC要求出力がゼロから立ち上がる。すると、図11(d)に示すように可変ノズル4aの開度信号がゼロから第1の開度Aへ立ち上がり、同図(e)に示すようにバイパスインジェクタ41の開弁時間がゼロから第1の開弁時間Tcへ立ち上がり、同図(f)に示すように上流側インジェクタ42,43の開弁時間がゼロから第2の開弁時間Tbへ立ち上がる。これに伴い、図11(g)に示すように燃料電池1に対する水素供給流量がゼロから立ち上がり、同図(c)に示すように水素供給圧力P1が増加し始め、同図(h)に示すように水素循環流量がゼロから増加し始める。
その後、時刻t3にて、図11(c)に示すように水素供給圧力P1が第1の所定値Paに達すると、同図(d)に示すように可変ノズル4aの開度信号が第1の開度Aから増加し始め、同図(e)に示すようにバイパスインジェクタ41の開弁時間が第1の開弁時間Tcから減少し始め、同図(f)に示すように上流側インジェクタ42,43の開弁時間が第2の開弁時間Tbから増加し始める。これに伴い、図11(c)に示すように水素供給圧力P1が、第1の所定値Paから緩やかに増加し始め、同図(h)に示すように水素循環流量が変わらずに増加を続ける。
そして、時刻t4にて、図11(c)に示すように水素供給圧力P1が第2の所定値Pbに達すると、同図(d)に示すように可変ノズル4aの開度信号が第1の開度Aよりも大きい第2の開度Cで上げ止まり、同図(e)に示すようにバイパスインジェクタ41の開弁時間が第3の開弁時間Taで下げ止まり、同図(f)に示すように上流側インジェクタ42,43の開弁時間が第4の開弁時間Tdで上げ止まる。このように、燃料電池1に出力要求があったとき、図11(g),(h)に示すように、燃料電池1に対する水素供給流量と水素循環流量を応答性良く確保することができる。
上記制御によれば、コントローラ30は、バイパスインジェクタ41による水素ガスの噴射と上流側インジェクタ42,43による水素ガスの噴射とが互いに逆位相となるように各インジェクタ41〜43をデューティ制御するようになっている。
以上説明したこの実施形態の燃料電池システムによれば、前記第1実施形態の作用効果に加えて次のような作用効果を得ることができる。すなわち、バイパス流路6にバイパスインジェクタ41が設けられるので、バイパスインジェクタ41により水素ガスを噴射することでバイパス流路6における水素ガスの流量と圧力が調節可能となる。このため、燃料電池1に対する水素供給圧力を急激に高める必要がある場合に、このバイパスインジェクタ41により対応することができる。
また、この実施形態では、エゼクタ4の上流に上流側インジェクタ42,43が設けられるので、上流側インジェクタ42,43により水素ガスを噴射することでエゼクタ4に供給される水素ガスの流量と圧力が調節可能となる。このため、エゼクタ4による水素オフガスの循環流量を増やす必要がある場合に、これら上流側インジェクタ42,43により対応することができる。
更に、この実施形態では、バイパスインジェクタ41による水素噴射と上流側インジェクタ42,43による水素噴射とが互いに逆位相となるように各インジェクタ41〜43が制御されるので、バイパス流路6における水素ガスの圧力脈動とエゼクタ4における水素ガスの圧力脈動とが、エゼクタ4より下流の水素供給流路2において互いに相殺し合うことになる。このため、水素ガスを圧力脈動を伴うことなく燃料電池1へ安定的に供給することができる。
<第5実施形態>
次に、本発明における燃料電池システムを具体化した第5実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
この実施形態では、制御プログラムの処理内容の点で第4実施形態と異なる。図12に、この実施形態の制御プログラムをフローチャートにより示す。図12に示すフローチャートは、ステップ105、ステップ106、ステップ170、ステップ171、ステップ173〜ステップ175、ステップ240及びステップ250の処理内容を加えた点で図10のフローチャートと異なる。ここで、ステップ105、ステップ106、ステップ170、ステップ171及びステップ173〜ステップ175の処理内容は、図7のフローチャートのそれと同じであることから説明を省略する。
図12に示すように、この実施形態では、ステップ170の判断結果が否定となる場合、コントローラ30は、ステップ171で、エゼクタ4の異常処理を実行した後、ステップ240及びステップ250の処理を実行する。
すなわち、ステップ240で、コントローラ30は、バイパスインジェクタ41を第5の開弁時間Teだけ開弁する。続いて、ステップ250で、コントローラ30は、上流側インジェクタ42,43を第4の開弁時間Tdだけ開弁する。その後、コントローラ30は処理をステップ173へ移行する。
ここで、コントローラ30は、各インジェクタ41〜43をデューティ制御によって開弁し、バイパスインジェクタ41と上流側インジェクタ42,43との間で、開弁時期が互いに逆位相となるように各インジェクタ41〜43をデューティ制御するようになっている。
図13に、上記制御に関する各種パラメータの挙動の一例をタイムチャートにより示す。時刻t2以前の各種パラメータの挙動は、図11のタイムチャートのそれとほぼ同じである。その後、停止状態から急加速へ移行すると、時刻t2にて、図13(a)に示すようにアクセル開度ACCがゼロから立ち上がり、同図(b)に示すようにFC要求出力がゼロから立ち上がり、同図(c)に示すようにエゼクタ上流水素圧力P0がゼロから立ち上がる。すると、図13(e)に示すように可変ノズル4aの開度信号がゼロから第1の開度Aへ立ち上がり、同図(f)に示すようにバイパスインジェクタ41の開弁時間がゼロから第1の開弁時間Tcへ立ち上がり、同図(g)に示すように上流側インジェクタ42,43の開弁時間がゼロから第2の開弁時間Tbへ立ち上がる。これに伴い、図13(h)に示すように燃料電池1に対する水素供給流量がゼロから立ち上がり、同図(d)に示すように水素供給圧力P1が増加し始め、同図(i)に示すように水素循環流量がゼロから増加し始める。
その後、水素供給圧力P1が増加し始めてからの経過時間Tが所定時間T0を過ぎても水素供給圧力P1が第1の所定値Paを超えない場合、時刻t3にて、図13(f)に示すようにバイパスインジェクタ41の開弁時間が第1の開弁時間Tcから第5の開弁時間Teへ立ち上がり、上流側インジェクタ42,43の開弁時間がゼロとなる。これに伴い、図13(h)に示すように水素供給流量が一段階増加し、同図(d)に示すように水素供給圧力P1が急激に増加し始め、同図(i)に示すように水素循環流量がゼロとなる。
その後、図13(d)に示すように水素供給圧力P1が第2の所定値Pbを越えない状態で、時刻t4にて、同図(j)に示すようにFCセル電圧Vが所定値V0以下になると、同図(k)に示すように、時刻t4から時刻t5の間で、排気排水弁11が所定時間T1だけ開弁され、その後、時刻t5から時刻t6の間で、排気排水弁11が所定時間T2だけ閉弁される。排気排水弁11が開弁される間は、第1水素循環流路3の内圧が変化することから、時刻t4から時刻t5の間では、図13(d)に示すように水素供給圧力P1が一時的に減少する。
上記制御によれば、コントローラ30は、前記第4実施形態と異なり、エゼクタ上流水素圧力P0に基づいてエゼクタ4の上流の異常を判定するようになっている。また、コントローラ30は、エゼクタ4の可変ノズル4aを開弁しても水素供給圧力P0が狙い通りに上昇しない場合は、エゼクタ4の異常と判定し、バイパス流路6の流量制御弁7を更に開いて燃料電池1への水素供給流量を確保するようになっている。それでも燃料電池1の発電が不安定になると判断したときは、コントローラ30は、排気排水弁11を開いて燃料電池1からの排水を促すようになっている。
以上説明したようにこの実施形態の燃料電池システムによれば、前記第4実施形態の作用効果に加えて次のような作用効果を得ることができる。すなわち、燃料電池1の電圧が不安定となったときに排気排水弁11が制御されて燃料電池1から生成水が排出流路10へ排出されるので、燃料電池1の電圧の不安定要因が解消される。このため、燃料電池1の出力電圧を速やかに安定化させることができる。
また、この実施形態では、エゼクタ4の異常やエゼクタ4より上流の水素供給流路2に関する異常(上流側インジェクタ42,43の異常を含む。)を判定し、その異常をコントローラ30のメモリに記憶するので、燃料電池システムのメンテナンスに寄与することができる。
<第6実施形態>
次に、本発明における燃料電池システムを具体化した第6実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
この実施形態では、燃料電池システムのアノード側の構成と制御プログラムの処理内容の点で前記各実施形態と異なる。図14に、この実施形態の燃料電池システムを概略構成図により示す。この実施形態の燃料電池システムは、図9に示すシステムに対し、図1に示すシステムにおける第2水素循環流路13、水素ポンプ14及び逆止弁15が加えられることで構成される。
図15に、この実施形態の制御プログラムをフローチャートにより示す。図15に示すフローチャートは、ステップ115及びステップ135の処理内容の点で図10のフローチャートと異なる。
すなわち、ステップ110の判断結果が否定となる場合、コントローラ30は、ステップ120、ステップ200及びステップ210の処理を実行する前に、ステップ115で、水素ポンプ14を駆動する。
一方、ステップ110の判断結果が肯定となる場合、コントローラ30は、ステップ140、ステップ150、ステップ220及びステップ230の処理を実行する前に、ステップ135で、水素ポンプ14を停止する。
ここで、図16に、上記制御に関する各種パラメータの挙動の一例をタイムチャートにより示す。このタイムチャートでは、図11のタイムチャートに対し、パラメータとして水素ポンプ14の回転速度が加わった点で異なる。すなわち、停止状態から急加速へ移行すると、時刻t2にて、図16(a)に示すようにアクセル開度ACCがゼロから立ち上がり、同図(b)に示すようにFC要求出力がゼロから立ち上がる。すると、図16(d)に示すように、水素ポンプ14の回転速度がゼロから所定値Nへ立ち上がり、図16(e)に示すように可変ノズル4aの開度信号がゼロから第1の開度Aへ立ち上がり、同図(f)に示すようにバイパスインジェクタ41の開弁時間がゼロから第1の開弁時間Tcへ立ち上がり、同図(g)に示すように上流側インジェクタ42,43の開弁時間がゼロから第2の開弁時間Tbへ立ち上がる。これに伴い、図16(h)に示すように燃料電池1に対する水素供給流量がゼロから立ち上がり、同図(c)に示すように水素供給圧力P1が増加し始め、同図(i)に示すように水素循環流量がゼロから増加し始める。
その後、時刻t3にて、図16(c)に示すように水素供給圧力P1が第1の所定値Paに達すると、同図(d)に示すように水素ポンプ14が停止し回転速度がゼロへ向けて下がり、同図(e)に示すように可変ノズル4aの開度信号が第1の開度Aから増加し始め、同図(f)に示すようにバイパスインジェクタ41の開弁時間が第1の開弁時間Tcから減少し始め、同図(g)に示すように上流側インジェクタ42,43の開弁時間が第2の開弁時間Tbから増加し始める。これに伴い、図16(c)に示すように水素供給圧力P1が、第1の所定値Paから緩やかに増加し始め、同図(i)に示すように水素循環流量が変わらずに増加を続ける。
そして、時刻t4にて、図16(c)に示すように水素供給圧力P1が第2の所定値Pbに達すると、同図(e)に示すように可変ノズル4aの開度信号が第1の開度Aよりも大きい第2の開度Cで上げ止まり、同図(f)に示すようにバイパスインジェクタ41の開弁時間が第3の開弁時間Taで下げ止まり、同図(g)に示すように上流側インジェクタ42,43の開弁時間が第4の開弁時間Tdで上げ止まる。このように、燃料電池1に出力要求があったとき、図11(h),(i)に示すように、燃料電池1に対する水素供給流量と水素循環流量を応答性良く確保することができる。
以上説明したこの実施形態の燃料電池システムによれば、前記第4実施形態の作用効果に加えて次のような作用効果を得ることができる。すなわち、水素ポンプ14を制御することにより、第1水素循環流路3及びエゼクタ4を介しての水素オフガスの循環と、第2水素循環流路13を介しての水素オフガスの循環とを適宜制御することができる。例えば、低流量の水素オフガスを水素供給流路2へ循環させる必要がある場合には、水素ポンプ14を駆動させて第2水素循環流路13及び水素ポンプ14を介して水素オフガス循環させることができる。また、中・高流量の水素オフガスを水素供給流路2へ循環させる必要がある場合には、水素ポンプ14を停止させて第1水素循環流路3及びエゼクタ4を介して水素オフガスを循環させることができる。このため、電気自動車の運転状態に応じて水素ポンプ14の駆動及び停止を制御することにより、第1水素循環流路3及びエゼクタ4を介しての水素オフガスの循環と、第2水素循環流路13及び水素ポンプ14を介しての水素オフガスの循環とを使い分けることができる。
また、この実施形態では、燃料電池1の出力増が指令されたときに水素ポンプ14が駆動制御されるので、水素オフガスが第2水素循環流路13及び水素ポンプ14を介して水素供給流路2へ速やかに循環され、その分だけ燃料電池1に多くの水素ガスが供給される。このため、燃料電池1に対する水素ガス供給の応答性を更に向上させることができる。
更に、この実施形態では、第1水素圧力センサ12により検出される水素供給圧力P1が第1の所定値Pa以上となったときに水素ポンプ14が停止されるので、第2水素循環流路13及び水素ポンプ14を介して水素供給流路2へ循環される水素オフガスが速やかに遮断され、その分だけ燃料電池1に供給される水素ガスが減少する。このため、エゼクタ4を介して水素オフガスの循環流量を確保できるようになったところで水素ポンプ14を停止することにより、水素ポンプ14に使用する電力を削減することができる。
<第7実施形態>
次に、本発明における燃料電池システムを具体化した第7実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
この実施形態では、制御プログラムの処理内容の点で前記第5実施形態と異なる。図17に、この実施形態の制御プログラムをフローチャートにより示す。図17に示すフローチャートは、ステップ115及びステップ135の処理内容の点で図12のフローチャートと異なる。
すなわち、ステップ110の判断結果が否定となる場合、コントローラ30は、ステップ120以降の各処理を実行する前に、ステップ115で、水素ポンプ14を駆動する。
一方、ステップ110の判断結果が肯定となる場合、コントローラ30は、ステップ140以降の各処理を実行する前に、ステップ135で、水素ポンプ14を停止する。
ここで、図18に、上記制御に関する各種パラメータの挙動の一例をタイムチャートにより示す。このタイムチャートでは、図13のタイムチャートに対し、パラメータとして水素ポンプ14の回転速度が加わった点で異なる。すなわち、停止状態から急加速へ移行すると、時刻t2にて、図18(a)に示すようにアクセル開度ACCがゼロから立ち上がり、同図(b)に示すようにFC要求出力がゼロから立ち上がり、同図(c)に示すようにエゼクタ上流水素圧力P0がゼロから立ち上がる。すると、図18(e)に示すように、水素ポンプ14の回転速度がゼロから所定値Nへ立ち上がり、同図(f)に示すように可変ノズル4aの開度信号がゼロから第1の開度Aへ立ち上がり、同図(g)に示すようにバイパスインジェクタ41の開弁時間がゼロから第1の開弁時間Tcへ立ち上がり、同図(h)に示すように上流側インジェクタ42,43の開弁時間がゼロから第2の開弁時間Tbへ立ち上がる。これに伴い、図18(i)に示すように燃料電池1に対する水素供給流量がゼロから立ち上がり、同図(d)に示すように水素供給圧力P1が増加し始め、同図(j)に示すように水素循環流量がゼロから増加し始める。
その後、水素供給圧力P1が増加し始めてからの経過時間Tが所定時間T0を過ぎても水素供給圧力P1が第1の所定値Paを超えない場合、時刻t3にて、図18(g)に示すようにバイパスインジェクタ41の開弁時間が第1の開弁時間Tcから第5の開弁時間Teへ立ち上がり、上流側インジェクタ42,43の開弁時間がゼロになる。これに伴い、図18(i)に示すように水素供給流量が一段階増加し、同図(d)に示すように水素供給圧力P1が急激に増加し始める。
その後、図18(d)に示すように水素供給圧力P1が第2の所定値Pbを越えない状態で、時刻t4にて、同図(k)に示すようにFCセル電圧Vが所定値V0以下になると、同図(l)に示すように、時刻t4から時刻t5の間で、排気排水弁11が所定時間T1だけ開弁され、その後、時刻t5から時刻t6の間で、排気排水弁11が所定時間T2だけ閉弁される。排気排水弁11が開弁される間は、第1水素循環流路3の内圧が変化することから、時刻t4から時刻t5の間では、図18(d)に示すように水素供給圧力P1が一時的に減少する。
以上説明したこの実施形態の燃料電池システムによれば、前記第5実施形態の作用効果に加えて次のような作用効果を得ることができる。すなわち、水素ポンプ14を制御することにより、第1水素循環流路3及びエゼクタ4を介しての水素オフガスの循環と、第2水素循環流路13を介しての水素オフガスの循環とを適宜制御することができる。例えば、低流量の水素オフガスを水素供給流路2へ循環させる必要がある場合には、水素ポンプ14を駆動させて第2水素循環流路13及び水素ポンプ14を介して水素オフガス循環させることができる。また、中・高流量の水素オフガスを水素供給流路2へ循環させる必要がある場合には、水素ポンプ14を停止させて第1水素循環流路3及びエゼクタ4を介して水素オフガスを循環させることができる。このため、電気自動車の運転状態に応じて水素ポンプ14の駆動及び停止を制御することにより、第1水素循環流路3及びエゼクタ4を介しての水素オフガスの循環と、第2水素循環流路13及び水素ポンプ14を介しての水素オフガスの循環とを使い分けることができる。
また、この実施形態では、燃料電池1の出力増が指令されたときに水素ポンプ14が駆動制御されるので、水素オフガスが第2水素循環流路13及び水素ポンプ14を介して水素供給流路2へ速やかに循環され、その分だけ燃料電池1に多くの水素ガスが供給される。このため、燃料電池1に対する水素ガス供給の応答性を更に向上させることができる。
更に、この実施形態では、第1水素圧力センサ12により検出される水素供給圧力P1が第1の所定値Pa以上となったときに水素ポンプ14が停止されるので、第2水素循環流路13及び水素ポンプ14を介して水素供給流路2へ循環される水素オフガスが速やかに遮断され、その分だけ燃料電池1に供給される水素ガスが減少する。このため、エゼクタ4を介して水素オフガスの循環流量を確保できるようになったところで水素ポンプ14を停止することにより、水素ポンプ14に使用する電力を削減することができる。
なお、この発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
例えば、前記第1実施形態では、図1に示す燃料電池システムについて図2に示す制御プログラムを実行した。これに対し、図19に示す燃料電池システムについて図2に示す制御プログラムを実行することもできる。図19に示すシステムでは、図1に示すシステムにおける第2水素循環流路13、水素ポンプ14及び逆止弁15が省略されている。この場合も、第1実施形態と同等の作用効果を得ることができる。