JP6041306B2 - ポリヌクレオチドを用いたコイル及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、ポリヌクレオチド、特に核酸を用いた結合手段によって複数の微小部品を組み立てる装置および方法に関し、特に、ナノスケール構造を有するコイル構造及びその製造方法に関する。
サブミクロンからミクロンサイズの構造物を作成する技術としては、集束イオンビームやフォトリソグラフィー技術を用いた手法があるが、この手法ではレーザー光の集束限界である200nm前後によって、構造物の空間分解能が決定される。
近年、DNAorigami技術を利用して微細な構造を作成することが提案されている(非特許文献1)。DNAorigamiは、DNA分子を自己集合させることによって二次元的もしくは三次元的なナノサイズの形状をデザイン、作成する技術である(非特許文献2)。
また、特許文献1では、複数の部品が組み立てられた状態を表す設計図から求められた、部品及び2種類の一本鎖塩基配列よりなる結合手段を供給する順序に関する情報に基づいて、一本鎖塩基配列で修飾され、且つ前記部品を結合させる対象物に、一本鎖塩基配列で修飾された前記部品及び結合手段を、順次供給し(ステップS2〜S4)、前記対象物を修飾する一本鎖塩基配列と、前記部品を修飾する一本鎖塩基配列とに、前記結合手段をそれぞれハイブリダイズすることにより、前記対象物と前記部品とを結合させることが開示されている。
特開2010−82731号公報
Paul W.K.Rothemund他、"Folding DNA to create nanoscale shapes and patterns" 2006 NATURE Publishing Group Vol 440/16 March 2006/doi:10.1038/nature 04586, p.297-302. Hendrik Dietz他、"Folding DNA into Twisted and Curved Nanoscale Shapes" www.sciencemag.org SCIENCE VOL 325 7 AUGUST 2009, p.725-730.
しかしながら、上記の技術は、三次元構造物において、硬い物性を持った形状の製造方法は開示されているものの、柔らかい物性を持ったナノ構造物の作成を目的としたものではない。従って、ナノサイズの機能的なコイルとしては働かせることはできなかった。
図1は、DNAorigamiの基本コンセプトを示す図である。本発明はベースとして、DNAorigami技術を用いているが、DNA分子はA,T,G,Cの塩基配列から構成された二重らせん構造(2本鎖DNA(dsDNA))をしており、約10.5塩基ごとに1周する(図1(a))。この周期性を利用して2本鎖DNA同士を20−50mer程度のオリゴヌクレオチドで連結しバンドル化していくのがDNAorigamiの基本である。この自然な周期に合わせて連結すれば、2次元的なシート構造(図1(b))や、そのシート構造を積み重ねて3次元構造に拡張することもできる(図1(c)、図1(d))。
DNAorigamiは、DNA分子を自己集合させることによって二次元的もしくは三次元的なナノサイズの形状をデザイン、作成する技術である。
ただし、図1に示すものは、平面構造とその層構造を基本としているので、3次元に拡張した場合、立方体や直方体の構造物に限定される。また、この場合、密にバンドル化されることになり、硬い構造物となるため、柔らかい構造物を得ることができない。
また、非特許文献2では、図2A〜Cのように、一本鎖のDNAにオリゴヌクレオチドをハイブリダイズする2重らせん構造であって21塩基で2周するらせん構造をベースにし、21/3=7塩基より増やしたり、減らしたりすることで、構造歪みを形成することができることを示している。
しかしながら、非特許文献2の技術は、堅い構造に構造歪みを形成してねじれ構造等を作成することはできるが、あくまで、リジッドな構造であり、コイルのような柔らかい物性を持った柔軟な構造を作成することはできない。
本発明は、柔らかい物性を持ったナノ構造物の作成を目的とする。
例えば、DNAをベースにしたナノサイズのコイルを提供することを目的とする。
本発明では、曲率を持った柔らかい3次元コイル構造を実現するために、核酸分子の周期性から意図的にずらした連結を行うことで、構造内に歪みを発生させ曲率を作り出した。加えて、コイル形状に全体的に周期的な3次元構造を持たせるために、内部の歪を均一に保つよう工夫を行った。
このデザインによって、コイル構造が実現でき、電子顕微鏡のネガティブ染色観察による確認と、光ピンセット法を用いたバネ定数の実測によって、ピコニュートンオーダーの微小な力を定量出来るコイルとして働くことが確認できた。
コイル形状の周期と直径はある程度チューニングが可能であり、超微細回路の鋳型のチューニングやバネ定数のチューニングができることを意味する。
バネとしての物性を持たせるためにコイル状の形状を作成しているが、そのためには、DNA分子内で均一な構造歪みをデザインし、ある曲率を持って曲げる必要がある。この均一な構造歪みのデザインと周期性を持ったコイル形状の実現が従来のデザインとは異なる。
本発明の一観点によれば、2本鎖ポリヌクレオチドが形成する二重らせん構造の周期性を利用して、1本鎖ポリヌクレオチドからなるスカフォールドを、前記1本鎖ポリヌクレオチドと部分的に相補的なオリゴヌクレオチドからなるステイプルにより連結しバンドル化されてなる、曲率を持った柔らかい3次元コイル構造であって、前記連結の位置を、前記周期性からずらした位置としていることを特徴とする3次元コイル構造が提供される。
構造内に歪みを発生させて曲率を作り出し、コイル形状として、全体的に周期的な3次元構造を持たせるために、内部の歪を均一に保つような構造とした。自然な周期に合わせて連結すれば、2次元的なシート構造や、そのシート構造を積み重ねて3次元構造に拡張することもできる。
前記連結の位置には、前記スカフォールドに塩基の欠失又は塩基の挿入の少なくともいずれか一方がなされていることを特徴とする。
これにより、歪みを形成し、柔らかい構造を作成することができる。
前記スカフォールドを2本束ねた場合に、以下の条件とすることを特徴とする。
1)スカフォールドに、7又は14塩基毎に塩基の挿入がある。
2)1)の塩基の挿入数がそれぞれ3以上である。
3)前記ステイプルが、37塩基から43塩基である。
ステイプルを、37塩基から43塩基までにして、2本鎖ポリヌクレオチドが形成される程度に隙間を空ける。
スカフォールドを4本束ねた場合に、以下の条件とすることを特徴とする。
1)構造的に弱い曲がる部位(スカフォールドクロスオーバ)をコイル構造の途中に配置せずに、端に配置する。
2)ステイプルクロスオーバとステイプルの端が、スカフォールド間でアライメントする。
3)スカフォールドに16塩基以上ごとに塩基の挿入又は欠失がある。
4)3)の塩基の挿入数又は欠失数が、それぞれ2以上である。
本発明の他の観点によれば、2本鎖ポリヌクレオチドの周期性を利用して、1本鎖ポリヌクレオチドからなるスカフォールド(足場)を、オリゴヌクレオチドからなるステイプルにより連結しバンドル化されてなる、曲率を持った柔らかい3次元コイル構造を作成する製造方法であって、前記連結の位置を、前記2本鎖ポリヌクレオチドの周期性からずらした位置とし、前記連結の位置に、前記スカフォールドに塩基の欠失又は塩基の挿入の少なくともいずれか一方を配置することを特徴とする3次元コイル構造の製造方法が提供される。
本発明によれば、柔らかい物性を持ったナノ構造物を実現することができる。例えば、DNAをベースにしたナノサイズのコイルを提供することができる。
本手法では、ボトムアップ的に直径2nmのDNA分子を自己集合させているため、空間分解能は1−2nmであり百倍近い微細化を実現している。
柔らかい物性を持ったナノ構造物が作成された例は初めてである。コイルとしての物性を持たせるためにコイル状の形状を作成しているが、そのためには、DNA分子内で均一な構造歪みをデザインし、ある曲率を持って曲げる必要がある。この均一な構造歪みのデザインと周期性を持ったコイル形状の実現が従来のデザインとは異なる。
DNAorigamiの基本コンセプトを示す図である。 DNAorigamiを用いた構造歪み生成の基本コンセプトを示す図である。 DNAorigamiを用いた構造歪み生成の基本コンセプトを示す図である。 DNAorigamiを用いた構造歪み生成の基本コンセプトを示す図である。 堅い構造と柔軟な構造とを、力と変位xとの関係により区別する原理を示す図である。 DNAorigamiの基本的な製造方法の例を示す図である。 DNAorigamiの基本的な製造方法の例を示す図である。 2本鎖ポリヌクレオチドを2本束ねた場合に、コイルとなるか否かを条件別に示した図である。 1本鎖ポリヌクレオチドを2本束ねた場合に、コイルとなるか否かを条件別に示した図である。 塩基配列の情報を示す図である。 スカフォールドとなるDNA自体で連結する部分であるスカフォールド Cross overをコイル構造の延在方向の途中に配置せずに、端部に配置した構造を示す図である。 スカフォールドとなるDNA自体で連結する部分であるスカフォールドクロスオーバをコイル構造の延在方向の途中に配置せずに、端部に配置した構造を示す図である。 スカフォールドとなるDNA自体で連結する部分であるススカフォールドクロスオーバをコイル構造の延在方向の途中に配置せずに、端部に配置した構造を示す図である。 スカフォールドとなるDNA自体で連結する部分であるスカフォールドクロスオーバをコイル構造の延在方向の途中に配置せずに、端部に配置した構造を示す図である。 スカフォールドクロスオーバをコイル構造の延在方向の途中に配置した例を示す図である。 スカフォールドクロスオーバをコイル構造の延在方向の途中に配置した例を示す図である。 スカフォールドクロスオーバをコイル構造の延在方向の途中に配置した例を示す図である。 スカフォールドクロスオーバをコイル構造の延在方向の途中に複数配置した例を示す図である。 スカフォールドクロスオーバをコイル構造の延在方向の途中に複数配置した例を示す図である。 失敗例に形状例を示す図である。 条件1)について説明した図である。 条件2)について説明した図である。 条件3)について説明した図である。 作成したコイルの物性として、バネ定数を求めるためのシステムの概要を示す図である。 作成したコイルの物性として、バネ定数を求めるためのシステムの概要を示す図である。
本明細書において、コイル(coil)とは、針金など「ひも状」のものを、螺旋状や渦巻状に巻いたもののことであり、例えば、以下のようなものにその性質が利用され、それらを指して呼ばれることもある。
1)電気電子分野
電磁誘導
インダクタ
電磁石・ソレノイド - 電動機の主要要素など
変動磁場から電気エネルギーを取り出す - 発電機や誘導コイル、磁気センサ(の実現方法のひとつ)など
変圧器
ループアンテナ
その他
電熱器や電灯などのフィラメントなどで効率よく発熱を利用するため
抵抗器(巻線抵抗)
2)機械分野等
ばね - コイルばね
図3に示すように、堅い構造と柔軟な構造とは、力と変位xとの関係により区別できる。図3(a)に示す構造は2本鎖ポリヌクレオチド(dsDNA)構造であり、相転移が生じるようなバネ定数kを有する。図3(c)に示す構造は、DNAorigamiロッドのような硬い構造であり、バネ定数kが測定できない。
ポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドには、核酸が包含され、核酸にはDNA及びRNAが包含される。オリゴヌクレオチドの塩基長は、通常10〜100nt、好ましくは10〜60ntである。
一方、図3(b)に示すコイルバネ構造では、力と変位との関係が直線的である。すなわち、バネ定数kが一定又は線形的に変位することが特徴である。
本発明によって、曲率を持った柔らかい構造を実現することができることを確かめるため、その一例である3次元コイル構造の作成を検討した。
柔軟な構造を実現するために、DNA分子の周期性から意図的にずらした連結を行うことで、3次元構造内に歪みを発生させ曲率を作り出す。加えて、コイル形状として、全体的に周期的な3次元構造を持たせるために、内部の歪を均一に保つような構造とした。
図4A、図4Bは、DNAorigamiの基本的な製造方法を示す図である。コイル形状を作成するために、基本的には非特許文献2の方法を用いる。均一な歪みを実現するために、様々な工夫や試行錯誤(挿入、欠失の数や配置など)を行った。
図4A、図4Bに示すように、スカフォールド(scaffold:足場)となる1本鎖ポリヌクレオチド(ssDNA)と、ステイプル(staple:ホチキスの針のような固定用)となるオリゴヌクレオチド(オリゴDNA)とを用いて、例えば、60℃で16塩基部のアニールを行い、次いで、30℃で8塩基部のアニールを行うことで、DNAorigamiの基本的な構造が完成する。
スカフォールドとして利用するDNAは、M13mp18ファージから精製された長鎖環状DNA(7000nt程度)を用い、ステイプルとして利用するDNAはDNA合成メーカーから20−50ntのオリゴDNAとして購入する。スカフォールド1種類 (10nM)と100種類程度のステイプル(100nM)を混合し、マグネシウムイオン存在下で市販のサーマルサイクラーを用いて、90℃から25℃の範囲内で徐々に冷却(アニーリング)を行う。マグネシウムイオン(Mg+2)濃度、冷却条件は、DNAorigamiのデザインによって変わるが、本実施の形態によるコイルにおいては、18−26mMのマグネシウムイオンにおいて、欠損率の少ないコイルが得られた。冷却条件は、80℃から60℃まで2時間かけて冷却し(6分で1℃ずつ下げる)、続けて、60℃から25℃まで2時間かけて冷却(3.3分で1℃ずつ下げる)を行った。得られたサンプルは、2%のアガロースゲル電気泳動を行う。サンプルの中には、デザイン通りのDNAorigamiとは別に、二量体化したものや、欠損したorigamiも含まれる。欠損のない均一なDNAorigamiは、コンパクトな形状をとるために電気泳動によって最も泳動距離が長く、バンドもシャープになる。電気泳動後のゲルをエチジウムブロマイド溶液で染色、UVにて可視化した後に、目的のバンドを切り出し、精製する。
以下に、バネのデザインに必要なパラメータを様々に変えた時の結果について示す。
まず、本発明の第1の実施の形態として、2ヘリックスバンドルの場合の、バネ形成技術について説明する。
スカフォールドとは、DNAorigamiの足場配列の役割を果たす長鎖DNAであり、7000nt以上の1本鎖DNAが採用されることが多い。
ステイプルとは、化学合成された短い1本鎖DNA(数10nt程度)であり、足場配列をホチキスのように留める役割を果たす。
図5Aは、スカフォールドDNAを2本束ねた場合に、コイルとなるか否かを条件別に示した図である。
図5A(a)は、スカフォールド(足場)の一構造例を示す図でありであり、ファージDNAを精製した1本鎖DNAである。P7308は、これをベースにDNAの長さを調節した。図5Cに、塩基配列の情報を示す。
また、図5A(c)は、例としてタイプ1の場合の、対応するデザイン図を模式的に示した図である。図5A(c)に示すように、L1がスカフォールドであり、L2(矢印)がステイプルであり、Ninsertionと「わっか」で示したのが塩基の挿入の位置と数である。
図5A(b)からわかるように、基本的には、Ninsertionが3以上という条件が、柔軟なコイル構造を形成するために必要な構造歪みの強さである。また、Nseparationは、7又は14であることが条件である。
尚、一番右のタイプ3のデザインで、柔軟なコイル構造が形成できずうまくいかない理由は、ステイプルに7塩基の隙間を作っているために、空いている隙間にはスカフォールドとステイプルの間で2本鎖DNAが形成されずに、1本鎖DNAの状態となっていることに起因する。1本鎖DNAは柔らかいため、せっかく3塩基の挿入を入れて歪ませても、歪みがそこで解消されているためと推測される。実際に、このようなデザインでは、図5B(d)に示すようなバネとは異なる形状となっており、一方、成功例では、図5B(e)に示すように、バネの構造を示していることがわかる。
以上に示すように、2本鎖ポリヌクレオチド(dsDNA)を2本束ねた場合に、コイルとなるか否かは、以下の通りである。
(条件)
1)Ninsertionが3以上である。
2)Nseparationは、7又は14である。
次に、本発明の第2の実施の形態として、4ヘリックスバンドルの場合の、バネ形成技術について説明する。
図6Aから図9までは、2本鎖ポリヌクレオチド(dsDNA)を4本束ねた場合に、コイルとなるか否かを条件別に示した図である。
これらの図について、簡単には、横軸に塩基が割り当てられるようになっており、青い横線L11が1本鎖DNAである。4本の横線が、スカフォールドとなるDNAで、このDNAに相補的なオリゴヌクレオチド(20−50merの1本鎖オリゴDNAでステイプルと呼ばれる。)が150種類程度結合することで、2本鎖DNAが4本でき、さらにその4本がお互いに連結されてバンドル化されている。
黒い横線L12および縦線L13で示されているのが、ステイプルである。ステイプルの縦線L13の線は、ここで2本鎖DNAが連結されることを示す。ステイプルの線は矢印になっているが、1本鎖DNAの5’から3’への方向を示している。■(黒塗りの四角)は5’端であり、▲(黒塗りの三角)は3’端である。2,3の数字がわっか形状の中に書かれているが、ここに塩基を2つもしくは3つ挿入することを示す。×印は、逆に、この位置で塩基を欠失させるということを示す。×1つが、塩基1つを欠失することを示す。
図6Aは、スカフォールドとなるDNA自体で連結する部分であるスカフォールドクロスオーバをコイル構造の延在方向の途中に配置せずに、端部に配置した構造を示す図である。図6A(a)は、この構造の概略形状を示す図であり、図6A(b)は、コイルとして機能する成功例の詳細な構造例を示す図であり、図6C(d)は、コイルとして機能しない失敗例の詳細な構造例を示す図であり、図6B(c)は、コイルを形成しているが、延在方向に変位が生じている例を示す図である。図6Dは、失敗例の構成を示す図である。
図6A(b)に示すように、スカフォールドクロスオーバをコイル構造の延在方向の端部に配置した構造では成功例が見られる。
図7Aは、スカフォールドクロスオーバをコイル構造の延在方向の途中に配置した例を示す図(図7A(a))であり、図7B(b)、図7C(c)に示すように、いずれの構成もコイルとして機能していないことがわかる。
図8Aは、スカフォールドクロスオーバをコイル構造の延在方向の途中に複数配置した例を示す図(図8A(a))であり、図8A(b)、図8B(c)に示すように、いずれの構成もコイルとして機能していない。
図9は、失敗例の形状例を示す図である。
以上のことから、4へリックスバンドルの場合の、バネ機能を実現するために、図6から図9までを参照して、以下のような条件が見出された。
・コイル構造を安定して形成させるための必要条件
1)スカフォールドクロスオーバをコイル構造の途中に配置せずに、端に配置する。
2)構造的に弱い曲がる部位(ステイプルクロスオーバ)とステイプルの端を縦方向に一列に配置する。
3)挿入および欠失の数は、2以上にする。
4)4へリックスバンドルでは、挿入または欠失の位置を16塩基以上離す。
以下に、それぞれの条件について詳細に説明する。
条件1)については、図10を参照して説明する。
スカフォールドクロスオーバとは、隣り合ったスカフォールドとなるDNAで連結する部分であり、図10において、丸で囲んだ部分を指す。
DNAをバンドル化する時に、このスカフォールドクロスオーバと、ステイプルで連結されるステイプルクロスオーバの2種類が使われる。
スカフォールドクロスオーバがコイル構造の途中にある場合には、その領域とスカフォールドクロスオーバのみから構成される領域を比べると、内部の構造歪みに違いが出てくる。一方、コイル構造には空間的に均一な歪みの形成が不可欠であるため、スカフォールドクロスオーバをコイルの端に配置する構成が好ましい。実際に、成功例は、図10の(a)に含まれる。
一方、図8A、図8B、図9のように、図10(b)、(c)の構成をベースにすると、成功例は発見できなかった。
条件2)については、図6A(b)の成功例を見ると、図11の示すように、スカフォールドクロスオーバとステイプルとの継ぎ目(矢印のおしりと頭のすきま)がそろっている。
クロスオーバの位置と、ステイプルの継ぎ目とは、しっかり二重らせんが形成されている領域と比べて相対的に構造が弱い部分になる。つまり、この位置で曲がりやすくすることができることを意味し、この位置をDNAの延在方向と直交する縦に揃えることで、4本のバンドル化されたDNAが共同的に揃って曲がりやすくなるものと推定される。
条件3)については、実験的に、1つの挿入もしくは欠失では構造歪みの形成が不十分であり、コイルでなく、図12(a)に示すように、波打つような構造が形成されるのみとなっている。
条件4)については、図12(b)に示すように、4へリックスバンドルでは、8塩基ごとに構造歪みを作成するのは、無理な歪みが延在方向のどこかの位置で制御できなくなり、全体的なコイル構造を形成できないと推定される。
実際に、成功例のデザインは、32塩基以上離しており、また、16塩基以上離して配置すると、成功とは言えないデザインでも部分的にはコイル構造が形成できており、成功例に近いデザインとなることがわかる。
次に、上記の実験で作成したバネ構造の特性を評価した。図13A、図13Bは、上記のようにして作成したコイルの物性として、バネ定数を求めるためのシステムの概要を示す図である。
1)DNAバネ11の作成時に、ビオチン化したステイプルおよび、DIG(ジゴギキゲニン)化したステイプルをバネ両端に挿入する。
2)DIG抗体でコートした直径200nmの蛍光ポリスチレンビーズ15とDNAバネ11を混合して、ビーズ15にDNAバネ11を結合する。
3)ニュートラアビジンコートしたカバーガラス17に、上記サンプルを流して、DNAバネ11をガラス17上に結合する(図13A(a))。
4)蛍光ビーズ15のブラウン運動を解析してガラス17上で等方的に運動しているビーズ15を選ぶ(図13A(b))。この解析により、ガラス17とビーズ15に摩擦がない、表面の影響を受けていないビーズをセレクションできる。
5)ビーズ15を光ピンセットによりトラップする。
6)ガラス17面をピエゾステージのコントロールによって一方向にスライドさせる。
7)ビーズ15は、トラップされているためある1点P1で固定されているが、ガラス17面に固定されたバネ11の端はピエゾによって平行移動し、バネ11が徐々に引き延ばされる(図13B(a))。
8)さらにステージを動かし続けると、トラップされたビーズ15がトラップ中心からずれてくる。このトラップ中心からの距離からどのくらいの力がバネ11に加わるかがわかる。
9)引き延ばしたバネ11の長さとその時の力が実測でき、Force-extension curveが求まる(図13B(b))。
10)このカーブの傾きがバネ定数であり、十分に引き延ばされた領域を除いて、緩やかなバネ定数の変化が観察された。
このように、一般的なバネと同様な特性が得られたことから、柔軟なバネ構造が得られていることが実証できた。
以上のように、このデザインによって、コイル構造が実現でき、電子顕微鏡のネガティブ染色観察による確認と、光ピンセット法を用いたバネ定数の実測によって、ピコニュートンオーダーの微小な力を定量出来るバネとして働くことが確認できた。
コイル形状の周期と直径はある程度チューニングが可能であり、超微細回路の鋳型のチューニングやバネ定数のチューニングができることを意味する。
以上に示すように、作成したナノサイズのバネは、DNAorigamiという手法を活用したものであり、DNA分子のみから構成され、化学修飾が容易に可能である。
例えば、Au(金)粒子などの金属を化学結合によってDNA上にきれいに1nmの精度で配置させることが可能であり、ナノサイズの配線形成等が可能となる。この形状を鋳型にして金属粒子を配置すれば、ナノサイズのコイルを作成することができ、次世代の極小電子部品作成に使うことができる。
また、金属ではなく蛍光分子をバネにラベリングすることにより、バネの伸び縮みに応じて蛍光分子間の距離が変化し、セルフクエンチング効果による蛍光強度変化が期待できる。
逆に、蛍光強度のモニタリングからバネの伸びが分かり、どのくらいの力がバネにかかっているか定量することが可能になる。医療分野などにも適用が可能である。
マイクロからナノサイズの極小領域で力場がどのようになっているか可視化できるため、ナノサイエンスやナノバイオロジー、メカノバイオロジーの分野で有用なツールとなりうる。
尚、本願の対象は、RNAでも基本的には同じ製造方法で作成することは可能なので、核酸全体に適用できる。ただし、RNAは構造安定性がDNAよりも不安定であり、工学的応用としてはDNAでの作成の方が好ましい。
上記の実施の形態において、添付図面に図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。また、本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれるものである。
例えば、上記の実施の形態では、コイル形状の作成を例にして説明したが、柔軟な微細構造であれば、微小なバネや接点スイッチなどの弾性部品など、弾性部品と一般的な剛性部品との組み合わせなど種々の構造に適用可能である。
本発明は、ナノ構造のコイルに利用可能である。
11…DNAバネ、15…ビーズ、17…ガラス。

Claims (6)

  1. 2本鎖ポリヌクレオチドが形成する二重らせん構造の周期性を利用して、1本鎖ポリヌクレオチドからなるスカフォールドを、前記1本鎖ポリヌクレオチドと部分的に相補的なオリゴヌクレオチドからなるステイプルにより連結しバンドル化されてなる、曲率を持った柔らかい3次元コイル構造であって、
    連結の位置を、前記周期性からずらした位置としていることを特徴とする3次元コイル構造。
  2. 連結の位置には、
    スカフォールドに塩基の欠失又は塩基の挿入の少なくともいずれか一方がなされていることを特徴とする請求項1に記載の3次元コイル構造。
  3. スカフォールドを2本束ねた場合に、以下の条件とすることを特徴とする請求項2に記載の3次元コイル構造。
    1)スカフォールドに、7又は14塩基毎に塩基の挿入がある。
    2)1)の塩基の挿入数がそれぞれ3以上である
  4. スカフォールドを4本束ねた場合に、以下の条件とすることを特徴とする請求項2に記載の3次元コイル構造。
    1)カフォールドクロスオーバコイル構造の端に配置する。
    2)ステイプルクロスオーバとステイプルの継ぎ目が、ポリヌクレオチドの延在方向と直交する縦方向に揃っている
  5. さらに以下の条件とすることを特徴とする請求項4記載の3次元コイル構造。
    )スカフォールドに16塩基以上ごとに塩基の挿入又は欠失がある。
    )の塩基の挿入数又は欠失数が、それぞれ2以上である。
  6. 2本鎖ポリヌクレオチドが形成する二重らせん構造の周期性を利用して、1本鎖ポリヌクレオチドからなるスカフォールドを、前記1本鎖ポリヌクレオチドと部分的に相補的なオリゴヌクレオチドからなるステイプルにより連結しバンドル化されてなる、曲率を持った柔らかい3次元コイル構造を作成する製造方法であって、
    連結の位置を、前記周期性からずらした位置とし、
    連結の位置に、スカフォールドに塩基の欠失又は塩基の挿入の少なくともいずれか一方を配置することを特徴とする3次元コイル構造の製造方法。
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