JP6040760B2 - 圧延要領決定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、複数種類の素材について、加熱炉からの素材の抽出順序及び圧延装置での圧延の実施順序を決定する圧延要領決定方法に関する。
厚板工場には、複数種類の素材について圧延及び冷却を可能にしているものがある。図20は、その厚板工場の設備レイアウトを示す概略図である。厚板工場には、上流から2基の連続式加熱炉101,102、1基の圧延機110及び水冷装置120が配置されている。
2基の連続式加熱炉101,102はそれぞれ、素材(スラブ)を2列に配置できるように構成されている。これにより、2基の連続式加熱炉101,102で合計4列(4種類)の素材を配置することができる。各連続式加熱炉101,102は、各列を独立に動くウォーキングビームを備えており、このウォーキングビームにより各列の素材を独立に抽出側に搬送している。そして、連続式加熱炉101,102の最抽出側に位置された4列の素材は、エキストラクタにより任意の順番に抽出される。
そして、厚板工場では、連続式加熱炉101,102から抽出した素材を圧延機110に搬送している。圧延機110は、ロールが正転及び逆転可能に構成されており、この圧延機に搬送されてきた素材は、この圧延機110でリバース圧延される。このリバース圧延により素材は、所定の寸法に造り込まれる。なお、厚板工場では1基の圧延機110により圧延処理を施しているが、このように1基の圧延機110により圧延を行うことで、工場の設備規模を小さくできるというメリットがある。
また、厚板工場では、圧延機110の前面(上流)及び後面(下流)には素材を待機させることができる待機スペースがある。これにより、圧延中の1つの素材を待機スペースに待機させて、次の素材を圧延機110で圧延することができる。このように圧延機110で圧延された素材は、圧延機110の下流にある水冷装置120で必要に応じて冷却されている。
このような厚板工場では、圧延機110で素材をリバース圧延して所定の寸法の製品を製造している。このように、様々な製品が作られるが、素材毎に圧延機110のパス回数、圧延時間は異なっている。ここで、圧延過程には、成形/幅出し過程及び厚み出し過程の2つの過程に分けることができる。なお、素材によっては、成形/幅出し過程を要しないものもある。
また、厚み出し過程では、製品の材質を造り込むために温調する場合がある。「温調」とは、最終パス付近で圧延機110の前後面で待機し、所定の温度範囲になってから圧延を行うことであり、「制御圧延」ともいわれている。また、温調を複数回行う場合もあり、素材によりその温調回数も異なっている。温調回数は例えば0〜4回である。また、温調は、空冷で実施する場合と、水冷装置120を使用して実施する場合がある。
以上のような圧延や温調等といった過程が素材に応じて組み合わされて、素材が所定の製品として造り出される。これはいわゆる「圧延スケジュール」或いは「パススケジュール」といわれている。そして、素材により圧延や温調等の内容が異なることから、パススケジュールも素材の種類によって異なるものになる。図21は、ある素材のパススケジュールの例を示す模式図である。この素材の場合、パススケジュールは、成形/幅出し圧延過程A1、空冷過程A2、厚み出し圧延過程(温調前)A3、温調過程A4、及び厚み出し圧延過程(温調後)A5の順番で構成されている。このように、成形/幅出し圧延過程A1、厚み出し圧延過程A3,A5等の各圧延過程は、冷却過程で分離されている。
このようなパススケジュールの場合、成形/幅出し圧延過程A1の終了から厚み出し圧延過程A3の開始の間の空冷過程A2の際、さらには、2つの厚み出し圧延過程A3,A5の間の温調過程A4の際に、圧延中の素材が圧延機110の前後に設けた待機スペースに待機した状態になる。そして、待機時間(冷却時間)は一般に変更可能とされており、これにより、パススケジュールの調整が可能になっている。
また、成形/幅出し圧延過程A1の終了後の空冷過程では、その空冷時間の変更ができる。これは、成形/幅出し圧延過程A1の後は、素材に厚みがあるので、冷却時間を変えても温度がほとんど変わらないからである。また、温調過程A4では、前述したように空冷で温調する場合と、水冷装置を使用して温調する場合があり、さらに空冷及び水冷を混合させて行う場合がある。このような空冷時間を変更したり、温調過程A4での冷却内容を変更することで、待機時間を調整して、パススケジュールを調整することもできる。
図22を用いて、冷却内容によってパススケジュールの調整を図る具体例を説明する。図22(A)から図22(C)への変更として示すように、空冷過程A2の空冷時間を変更させて待機時間を調整することで、パススケジュールを調整することができる。また、図22(A)から図22(B)への変更、或いは図22(C)から図22(D)への変更として示すように、温調過程A4の内容として水冷のみ、空冷のみ、或いは水冷と空冷とを混在させる形態の3通りの内容を適宜選択することで、パススケジュールを調整することができる。
また、例えば、図23(A)に示すように、ダブル圧延として、2種類の素材のA材とB材とを対として、圧延途中のA材の待機中にB材の圧延を行ったり、図23(B)に示すように、イモズル圧延として、各種素材のA材、B材、C材、D材とを順番に、素材の圧延途中に他の素材の圧延を行ったり、或いは、図23(C)に示すように、まとめ圧延として、圧延途中のA材の待機中に、他の素材のB材、C材、D材の圧延をまとめて行ったりして、このような圧延要領により、アイドル状態を極力少なくすることができる。
ところで、オペレータ(人間)の判断により、連続式加熱炉101,102からの素材の抽出順番やその抽出タイミング、或いは圧延要領を決定している。この場合、同じパススケジュールの素材が連続すれば、圧延要領を判断することはある程度可能であるが、様々なパススケジュールの素材が混在する場合には、オペレータの判断で圧延要領を決めることは不可能である。
そこで、全てのスラブの圧延完了時間を目標とし、最適化問題に定式化してスラブ抽出順及び圧延方法を探索する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、圧延過程を「ジョブ」と呼び、圧延パススケジュールに基づいて各ジョブに圧延に関する情報を与え、圧延上の制約を満足する解を求めるようにしている。
特開2003−305508号公報 特開2009−82985号公報
しかしながら、特許文献1に示される方法によると、強水冷設備やOLAC(On−Line Accelerated Cooling:オンライン加速冷却)設備を連続的に使用する圧延順を作成してしまうことがある。この場合、大量の水を扱うため、冷却水の不足や排水遅れが発生し、最悪の場合、圧延ラインの停止に至ってしまう。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、冷却水の不足や排水遅れが発生することなく、全体として最も早く圧延を完了させ得る圧延要領決定方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる圧延要領決定方法は、複数種類の素材を加熱可能な加熱炉と、該加熱炉から抽出した素材を、その前後に設けた待機スペースを利用しながら圧延する圧延装置と、該圧延装置の直後に配設されて前記圧延装置で圧延される素材を冷却する強水冷冷却装置とを備えた厚板圧延設備により圧延される素材の圧延要領を決定する圧延要領決定方法であって、圧延される各素材の圧延スケジュールをもとに、圧延を実施する際の前記圧延装置の占有時間、同一素材についてする圧延間の冷却時間の上下限値、圧延の実施後の素材の長さ、同一素材の圧延スケジュールにおける圧延の先行関係の制約、及び冷却水の流量情報を含む情報を求め、求めた情報に基づいて、前記加熱炉を経て圧延される全ての素材についての前記圧延が完了するまでの圧延完了時間を目的関数とし、前記圧延装置において同時に重複して実施できないこと、各圧延間の冷却時間が上下限値の範囲であること、圧延処理中及び待機している素材の合計長が前記待機スペースにおける収納長以下であること、圧延間の先行関係は与えられた制約を満足しなければならないこと、並びに使用水量が前記厚板圧延設備の給水能力及び排水能力を超過しないこと、という制約条件を、最適化問題に定式化し、定式化した最適化問題を、混合整数計画問題に変換して、前記圧延完了時間が最小になるように、前記加熱炉からの素材の抽出順序及び前記圧延装置での前記圧延の実施順序を決定することを特徴とする。
また、本発明にかかる圧延要領決定方法は、上述した発明において、前記強水冷冷却装置の後段にオンライン加速冷却装置をさらに備えた厚板圧延設備により圧延される素材の圧延要領を決定する圧延要領決定方法であって、オンライン加速冷却される各素材の冷却スケジュールをもとに、前記圧延装置からオンライン加速冷却装置までの搬送時間、オンライン加速冷却装置での処理時間、及びオンライン加速冷却装置の冷却水の流量情報を含むオンライン加速冷却処理に関する情報をさらに求め、求めた情報に基づいて、前記加熱炉を経て圧延及びオンライン加速冷却される全ての素材についての前記オンライン加速冷却が完了するまでのオンライン加速冷却完了時間を目的関数とし、前記圧延装置において同時に重複して実施できないこと、各圧延間の冷却時間が上下限値の範囲であること、圧延処理中及び待機している素材の合計長が前記待機スペースにおける収納長以下であること、圧延間の先行関係は与えられた制約を満足しなければならないこと、オンライン加速冷却時間が重複しないこと、並びにオンライン加速冷却装置に用いられる使用水量を含めた使用水量が前記厚板圧延設備及び前記オンライン加速冷却装置の給水能力及び排水能力を超過しないこと、という制約条件を、最適化問題に定式化し、定式化した最適化問題を、混合整数計画問題に変換して、前記オンライン加速冷却完了時間が最小になるように、前記加熱炉からの素材の抽出順序、及び前記圧延装置と前記オンライン加速冷却装置での前記圧延と前記オンライン加速冷却の実施順序を決定することを特徴とする。
また、本発明にかかる圧延要領決定方法は、上述した発明において、前記オンライン加速冷却処理完了時における各素材間の圧延ピッチと剪断ピッチとを比較し、圧延ピッチが剪断ピッチに比して大きい場合、オンライン加速冷却処理時間の長い圧延順序に組み替えることを特徴とする。
本発明によれば、最適化問題を所定の目的関数と、使用水量が厚板圧延設備の給水能力及び排水能力を超過しないことを含む所定の制約条件とにより定式化し、この定式化した最適化問題を混合整数計画問題に適用して当該混合整数計画問題を解いて、圧延完了時間が最小になるように加熱炉からの素材の抽出順序及び圧延装置での圧延の実施順序を得ているので、冷却水の不足や排水遅れが発生することなく、全体として最も早く圧延を完了させ得る圧延要領決定方法を提供することができる。
図1は、本実施の形態の厚板工場の設備レイアウトを示す概略図である。 図2は、本実施の形態の制御システムの処理内容を示す概略フローチャートである。 図3は、同一素材中のジョブが所定の順序になるようなジョブの先行関係を説明するための模式図である。 図4は、同時に2つ以上のジョブの圧延が重なるために禁止される例を説明するための模式図である。 図5は、重なる素材のジョブの間の時間が切替時間下限値以下になるようなジョブの先行関係を説明するための模式図である。 図6は、待機中のジョブと圧延中のジョブの合計圧延長が制限値を超えないようなジョブの先行関係を説明するための模式図である。 図7は、同一素材のジョブの間に入る異なる素材のジョブの数が制限値になるようなジョブの先行関係を説明するための模式図である。 図8は、2つの素材間で先に圧延した素材が必ず先に圧延完了するようなジョブの先行関係を説明するための模式図である。 図9は、水冷パターン追加時のジョブの配列例を示す模式図である。 図10は、水冷材を追越材として使用する場合を示す模式図である。 図11は、水冷材をCR材に変更した場合の使用例を示す模式図である。 図12は、水量制約例を説明するための模式図である。 図13は、圧延要領決定までの処理内容を図式化して示す概略図である。 図14は、最適圧延要領決定システムの構成例を示す概略図である。 図15は、本実施の形態の変形例にかかる厚板工場の設備レイアウトを示す概略図である。 図16は、OLAC処理過程を含めた1つの素材の全体処理過程の一例を示す概略フローチャートである。 図17は、変形例による使用水量を考慮して決定した圧延順序の一例を示すタイムチャートである。 図18は、変形例によるOLAC処理が重複しないように決定された圧延順序の一例を示すタイムチャートである。 図19は、変形例による圧延ピッチと剪断ピッチとを考慮して決定した圧延順序の一例を示すタイムチャートである。 図20は、厚板工場の設備レイアウトを示す概略図である。 図21は、素材のパススケジュールを示す模式図である。 図22は、パススケジュールにおいて可変とされている冷却過程を説明するための模式図である。 図23は、複数の素材の圧延要領を説明するための模式図である。
以下に、本発明にかかる圧延要領決定方法の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。この実施の形態は、厚板工場において圧延過程を制御するための制御システムに本発明を適用したものである。また、厚板工場の構成については、基本的には、従来と同様に構成されているが、本実施の形態では、厚板工場の設備レイアウトは、図1に示すように、上流から2基の連続式加熱炉101,102、1基の圧延機110及び強水冷冷却装置130が配置されている。強水冷冷却装置130は、圧延機110で圧延しながら冷却を行うためのものであって、スケールが薄くなるものであり、表面美麗鋼板のために用いられる。さらに、強水冷冷却装置130より下流には、図示しないOLAC設備等も配設されている。
2基の連続式加熱炉101,102はそれぞれ、素材(スラブ)を2列に配置できるように構成されており、これにより、2基の連続式加熱炉101,102で合計4列(4種類)の素材を配置することができるようになっている。各連続式加熱炉101,102は、各列を独立に動くウォーキングビームを備えており、このウォーキングビームにより各列の素材を独立に抽出側に搬送している。そして、連続式加熱炉101,102の最抽出側に位置された4列の素材は、エキストラクタにより任意の順番に抽出される。
そして、厚板工場では、連続式加熱炉101,102から抽出した素材を圧延機110に搬送している。圧延機110は、ロールが正転及び逆転可能に構成されており、この圧延機に搬送されてきた素材は、この圧延機110でリバース圧延される。このリバース圧延により素材は、所定の寸法に造り込まれる。また、厚板工場では、圧延機110の前面(上流)には素材を待機させることができる待機スペースがあり、これにより、圧延中の1つの素材を待機スペースに待機させて、次の素材を圧延機110で圧延することができるようにしている。このように圧延機110で圧延された素材は、圧延機110の下流側直後にある強水冷冷却装置130で必要に応じて圧延しながら冷却される。
厚板工場はこのように構成されており、制御システムにより、連続式加熱炉101,102からの素材の抽出順序及び圧延機での圧延の実施順序の内容を示す圧延要領を決定している。次にその圧延要領の決定手順を説明する。制御システムでは、圧延要領の決定に必要な内容から最適化問題を定式化して得て、これを混合整数計画問題といった数理的な解法に変換或いは適用することにより、最適スケジュールとされた圧延要領を決定している。図2は、それを実現するための処理手順を示す。
まず、ステップS1において、対象素材の情報を取得する。続くステップS2において、対象素材の情報に基づいてパススケジュール(圧延スケジュール)を取得する。そして、ステップS3において、そのパススケジュールに基づいて各種情報を取得する。すなわち、各素材(スラブ)が決まればパススケジュールも決まるものであり、そのパススケジュールに基づいて各種情報を取得している。
ここで、各種情報とは、そのパススケジュールに含まれている圧延過程(以下、ジョブという。)に関して取得する情報であり、具体的には、下記に示すような内容の情報である。また、本実施の形態では、強水冷冷却装置130に関する水冷パターンがジョブとして追加されており、水冷パターン用の情報が付加されている。
<各ジョブについて取得する情報>
A.ジョブを実施する際の圧延機の占有時間
B.同一素材についてするパススケジュール間の冷却時間の上下限値
C.ジョブの実施後の素材の長さ
D.同一素材のパススケジュールにおけるジョブの先行関係の制約
E.冷却水の流量情報
そして、ステップS4において、上述の各種情報をもとに、最適化問題に定式化する。この定式化では、下記に示すように、その目的関数を全てのジョブの圧延完了時間として、制約条件を、少なくともa〜eに示すような条件にする。
<目的関数>
加熱炉を経て圧延される全ての素材についてのジョブが完了するまでの圧延完了時間
<制約条件>
a.圧延装置において同時に重複して実施できないこと
b.各ジョブの冷却時間が上下限値の範囲であること
c.圧延処理中及び待機している素材の合計長が待機スペースにおける収納長以下であること
d.ジョブ間の先行関係は与えられた制約を満足しなければならないこと
e.使用水量が厚板圧延設備の給水能力及び排水能力を超過しないこと
ここで、「d.ジョブ間の先行関係は与えられた制約を満足すること」、とあるが、そのジョブの先行関係は例えば次のように与えている。まず、ジョブの先行関係を同一素材の中のジョブが所定の順序になるような関係にする。すなわち、図3に示すように、圧延a1(圧延1)、圧延a2(圧延2)、圧延a3(圧延3)の順番で圧延するような関係にする。例えば、ここで、圧延a1(圧延1)は成形/幅出し圧延であり、圧延a2(圧延2)は1回目の厚み出し圧延(温調前の厚み出し圧延)であり、圧延a3(圧延3)は2回目の厚み出し圧延(温調後の厚み出し圧延)である。
また、ジョブの先行関係を同時に2つ以上のジョブの圧延が重ならないような関係にする。すなわち、これにより、図4に示すように素材aのジョブと素材bのジョブとが同時期に重複して実施されるようなことを禁止している。また、ジョブの先行関係を重なる素材のジョブの間の時間が切替時間下限値以上になるような関係にする。すなわち、図5に示すように、異なる素材aと素材bのジョブ間の切替時間を考慮した関係にする。
また、ジョブの先行関係を待機中のジョブと圧延中のジョブの合計圧延長が制限値を超えないような関係にする。すなわち、図6に示すように、待機中の素材aのジョブと圧延中の素材bのジョブの合計圧延長を考慮した関係にする。また、ジョブの先行関係を同一素材のジョブの間に入る異なる素材のジョブの数が制限値になるような関係にする。例えば、制限値は2にする。この結果、図7に示すように、素材bのジョブb1とジョブb2との間に他の素材aの1つのジョブa1及び素材cの1つのジョブc1が入ることが許容されるようになる。
また、ジョブの先行関係を2つの素材間で先に圧延した素材が必ず先に圧延完了するような関係にする。この結果、図8(A)に示すように、素材aのジョブa1とジョブa2との間で、後で実施された他の素材bのジョブb1が完了してしまうことが禁止されて、図8(B)に示すように、素材aの最後のジョブa2の後で、他の素材bのジョブb1が実施されて完了するようになる。
また、新たに追加された水冷パターンに関しては、例えば、図9に示すように、水冷材である素材cの場合、圧延c1,c2間に強水冷冷却装置130により水冷される水冷パターンを有するものであり、例えば、素材aの圧延a1,a2間のリフトのタイミングで処理される。
また、水冷材は、追い越し圧延における追越材として使用可能とする。例えば、図10に示すように、素材aの圧延a1,a2間のリフトのタイミングで水冷材である素材bの追越が可能とされている。
さらに、一般に、水冷材は、CR材(制御圧延材)に変更可能で、図11に示すように、既設のタンデム圧延や追い越し圧延のリフト材(追い越される側の材)としても使用可能とする。ただし、材質の作り込み等の理由からCR材に変更不可能なスラブも存在する。
続いて、ステップS5において、前述のような目的関数と制約条件とによって定式化した最適化問題を混合整数計画問題に変換して、圧延完了時間が最小になるように、連続加熱炉101,102からの素材の抽出順序及び圧延機110でのジョブの実施順序を決定する。以上のような処理手順により、パススケジュールから得た種々の情報から目的関数と制約条件とによって最適化問題を定式化し、その定式化した最適化問題を混合整数計画問題に適用して解いて、最も圧延時間が最小になるような最適スケジュールとしての圧延要領を決定している。
これにより、例えば、図12に示すように、単位時間当たりの使用水量として、期間T0あたりに使用する水量Vを、
V=Q1*T1+Q2*T2
として求め(各ジョブについて取得する情報中の「E:冷却水の流量情報」により使用する冷却水の流量は既知)、給水槽及び排水槽の能力や現在の水位などによって決定される上限使用量Vlimを超えないよう、
V≦Vlim
なる制約として与えることで、冷却水不足や排水の遅れを発生させない組合せを探索することが可能となり、圧延ラインの停止といった圧延能率の低下を防止できる。
また、以上のような圧延要領決定までの処理内容は、図式化すると例えば図13に示すようになる。この図13に示すように、まず、素材の炉内における配列情報を取得して(B1)、その炉内配列情報に基づいてパススケジュールを計算する(B2)。ここで、パススケジュールの計算とは、前述のA〜Eに示したような各種情報を取得するための計算である。そして、パススケジュールの計算結果や必要に応じて炉内配列情報を用いて最適化計算を行う(B3)。
ここで、炉内配列情報の取得(B1)は、図2におけるステップS1の処理内容に対応し、パススケジュールの計算(B2)は、図2におけるステップS2及びステップS3の処理内容に対応し、最適化計算(B3)は、図2におけるステップS4及びステップS5の処理内容に対応している。以上のように、制御システムでは最適スケジュールとしての圧延要領を決定している。そして、その圧延要領を得るための計算は、目的関数及び制約条件を、前述のA〜Eの条件を用いて説明した値を用いて最適化問題として定式化して、その定式化した最適化問題を混合整数計画問題に変換して圧延要領を得る計算になっている。
これにより、混合整数計画問題による解法は、スケジュール問題の最適解を求めるのに確立されている最適な手法であることから、その混合整数計画問題の解法を利用して得た最適スケジュールとしての圧延過程の内容は、計算機の処理能力を有効に活用し、理想に近い内容の最適解として実時間内に得られるものになる。すなわち、圧延要領の内容は、より現実的な内容であり、最も早く圧延を完了させることができる最適スケジュールになっている。
図14は、制御システムの具体例としての最適圧延要領決定システムを示す。この最適圧延要領決定システムでは、加熱についての情報を管理するためのコンピュータ(ミルP/C(ミルプロセスコンピュータ)、以下、第1の計算機という。)1、圧延順序を決定するためのコンピュータ(以下、第2の計算機という。)2、及びスケジュールを計算するためのコンピュータ(以下、第3の計算機という。)3を備えている。
このような最適圧延要領決定システムでは、素材やその素材の加熱についての情報を管理するための第1の計算機1から圧延順序を決定するための第2の計算機2に加熱炉内の情報等がLAN(Local Area Network)4を介して送信されるようになされている。また、第2の計算機2からは最適スケジュールに応じて組み合わせパターン(抽出タイミング)の情報等がLAN4を介して第1の計算機1に送信されるようになされている。そして、第3の計算機3において、スケジュール計算の共有化が実現されている。
(変形例)
ところで、図15に示すように、上述した強水冷冷却装置130を含む圧延設備の後段には、OLAC装置140が配置され、さらにその後段には剪断装置150などの下流設備が配置される。OLAC装置140は、圧延が終了した厚鋼板を特定の温度域で材質上要求される特定の冷却速度で加速冷却し、その後空冷する。したがって、このOLAC装置140によるOLAC処理時間は、材料や寸法によって異なり、圧延材の圧延順によっては、圧延機110の停止や、剪断装置150などの下流設備での渋滞が発生してしまう場合がある。また、OLAC装置140は、強水冷冷却装置130とともに、冷却水を併用するため、システム全体として、冷却水不足や排水遅れが生じる可能性がある。このため、この変形例では、圧延過程のみならず、OLAC処理過程を含めた最適圧延要領を決定するようにしている。
図16は、OLAC処理過程を含めた1つの素材の全体処理過程の一例を示す概略フローチャートである。図16に示すように、この変形例では、圧延過程のジョブJ1の後に行われるOLAC処理過程のジョブJ2を含めた処理全体を最適圧延要領の決定対象としている。このOLAC処理過程のジョブJ2は、強水冷冷却装置130を含めた圧延機110による圧延過程(圧延J11→冷却J12→圧延J13)の後、OLAC装置140まで搬送するOLAC搬送J21及びOLAC装置140によるOLAC処理J22が含まれる。
図14に示した第2の計算機2は、圧延過程の圧延順序のみならず、OLAC処理を含めた全体圧延順序を決定する。なお、OLAC処理のみのジョブ管理を行う第4の計算機5をLAN4に接続し、第3の計算機3が全体処理のスケジュール計算をするようにしてもよい。変形例にかかる第2の計算機2は、所定対象の各スラブ(各素材)に対してOALC処理に関する情報を与え、各素材間のOLAC処理時間が重複しないことを上述した制約条件に加える。
ここで、OLAC処理に関する情報には、圧延完了後からOLAC装置140に素材を搬送する時間であるOLAC搬送時間、OLAC装置140による加速冷却時間であるOLAC処理時間、及びOLAC装置140による使用水量が含まれる。この使用水量は、上述したE:冷却水の流量情報に含まれることになる。なお、OLAC搬送時間は、搬送装置の設備仕様と素材長に依存する。また、OLAC処理時間は、製品使用、素材長、設備仕様(冷却能力)に依存する変数である。
そして、加熱炉101,102を経て圧延及びOLAC処理される全ての素材についてのOLAC装置140によるOLAC処理が完了するまでのOLAC完了時間を目的関数として各素材の圧延順序を決定する。
例えば、図17に示すように、システム全体での単位時間当たりの使用水量として、期間T10あたりに使用する水量V1を、
V1=Q11*T11+Q12*T12+Q13*T13+Q14*T14+Q15*T15
として求め(各ジョブについて取得する情報中の「E:冷却水の流量情報」により使用する冷却水の流量は既知)、給水槽及び排水槽の能力や現在の水位などによって決定される上限使用量Vlim1を超えないよう、
V1≦Vlim1
なる制約として与えることで、冷却水不足や排水の遅れを発生させない組合せを探索することが可能となり、圧延ラインの停止といった圧延能率の低下を防止できる。
また、上述した素材間のOLAC処理時間が重複しないという制約条件を満足するようにパススケジュールが決定される。これは、OLAC装置140が、素材を1つずつしか処理できないことを前提とするからである。例えば、図18に示すように、先行圧延材a11と後行圧延材a12とは、OLAC処理時間t11,t21が重複しないように、OLAC入替時間tc2が、tc2>0となるようにパススケジュールが決定される。これにより、圧延後の素材が、OLAC装置140前で待つことがなくなり、圧延ラインの渋滞発生を抑止することができる。なお、OLAC搬送時間t11は、ミル入替時間tc1以上である必要がある。
さらに、この変形例では、1つの素材のOLAC処理過程完了時における圧延ピッチと後段の剪断ピッチとを比較し、この比較結果が、圧延ピッチ>剪断ピッチである場合、すなわち剪断処理が渋滞する場合、OLAC処理時間が長い素材を優先して先に圧延するように、圧延順序を組み替える。
例えば、図19に示すように、3つの素材(スラブ)a21,a22,a23を処理する場合、上段の図では、スラブa22,a23間の剪断ピッチがスラブa21,a22,a23間の圧延ピッチに比して短い。このため、下段の図に示すようにOLAC処理時間が長い順序となるようにスラブの圧延処理をするように組み替える。すなわち、スラブa21→a22→a23の圧延順序をスラブa22→a21→a23の圧延順序に組み替える。これにより、下段の圧延順序は、特に、上段の圧延順序に比して時間t3分、スラブa22のOLAC処理の完了が遅れ、その分、後段の剪断処理に時間的余裕が生まれる。その結果、剪断ラインの渋滞を緩和することができる。
この圧延ピッチと剪断ピッチとを考慮した圧延順序とする決定を行うことは、図19に示すように、圧延ピッチと剪断ピッチとの平準化を行うことができ、OLAC処理完了時間順とする圧延順序の決定処理よりも、剪断処理の時間的余裕が生まれることからさらに好ましい圧延順序の決定処理である。なお、圧延ピッチが剪断ピッチよりも大きくない場合、圧延処理の効率が最大となる圧延順序で処理する。
以上説明したように、所定の目的関数と所定の制約条件とにより最適化問題を定式化して、混合整数計画問題として素材の抽出順序、及び圧延設備あるいはOLAC装置を含む圧延設備での圧延の実施順序を解くことで、最も早く圧延を完了させるための加熱炉からの素材の抽出順序及び圧延順序を決定することができる。特に、使用水量が厚板圧延設備の給水能力及び排水能力を超過しないことを含む所定の制約条件により定式化し、この定式化した最適化問題を混合整数計画問題に適用して当該混合整数計画問題を解いて、圧延完了時間が最小になるように加熱炉からの素材の抽出順序及び圧延装置での圧延あるいはOLAC装置を含む圧延設備の実施順序を得ているので、冷却水の不足や排水遅れが発生することなく、圧延ラインの停止といった圧延能率の低下を防止できる。
また、スラブ抽出順(圧延順)と圧延方法とが確定すれば、そのときの使用水量が判るため、フィードフォワード制御による給水槽及び排水槽の水位制御が可能となる。また、前述のように、水冷材を様々な圧延方法に変更可能なスラブと定義することにより、多様なスラブ抽出順・圧延方法の組合せが可能となる。これは、抽出順・圧延方法の組合せにより圧延能率を調整しようとした場合に、水冷材が調整幅を広げ、柔軟な組合せ作成を行えるという効果が期待できる。
さらに、圧延ピッチが剪断ピッチよりも大きい場合には、OLAC処理時間の長い圧延順序に並び替えるようにして剪断処理の時間的余裕を持たせるようにしているので、剪断渋滞を抑えることができる。
101,102 加熱炉
110 圧延機
130 強水冷冷却装置
140 OLAC装置
150 剪断装置

Claims (2)

  1. 複数種類の素材を加熱可能な加熱炉と、該加熱炉から抽出した素材を、その前後に設けた待機スペースを利用しながら圧延する圧延装置と、該圧延装置の直後に配設されて前記圧延装置で圧延される素材を冷却するために大量の水を用いる強水冷冷却装置と、前記強水冷冷却装置の後段に大量の水を用いるオンライン加速冷却装置とを備えた厚板圧延設備により圧延される素材の圧延要領を決定する圧延要領決定方法であって、
    圧延される各素材の圧延スケジュールをもとに、圧延を実施する際の前記圧延装置の占有時間、同一素材についてする圧延間の冷却時間の上下限値、圧延の実施後の素材の長さ、同一素材の圧延スケジュールにおける圧延の先行関係の制約、及び前記強水冷冷却装置の冷却水の流量情報を含む情報を求め、さらに、オンライン加速冷却される各素材の冷却スケジュールをもとに、前記圧延装置からオンライン加速冷却装置までの搬送時間、オンライン加速冷却装置での処理時間、及びオンライン加速冷却装置の冷却水の流量情報を含むオンライン加速冷却処理に関する情報を求め、
    求めた情報に基づいて、前記加熱炉を経て圧延及びオンライン加速冷却される全ての素材についての前記オンライン加速冷却が完了するまでのオンライン加速冷却完了時間を目的関数とし、前記圧延装置において同時に重複して実施できないこと、各圧延間の冷却時間が上下限値の範囲であること、圧延処理中及び待機している素材の合計長が前記待機スペースにおける収納長以下であること、圧延間の先行関係は与えられた制約を満足しなければならないこと、オンライン加速冷却時間が重複しないこと、並びにオンライン加速冷却装置に用いられる使用水量を含めた使用水量が前記厚板圧延設備及び前記オンライン加速冷却装置の給水能力及び排水能力を超過しないこと、という制約条件を、最適化問題に定式化し、
    定式化した最適化問題を、混合整数計画問題に変換して、前記オンライン加速冷却完了時間が最小になるように、前記加熱炉からの素材の抽出順序、及び前記圧延装置と前記オンライン加速冷却装置での前記圧延と前記オンライン加速冷却の実施順序を決定することを特徴とする圧延要領決定方法。
  2. 前記オンライン加速冷却処理完了時における各素材間の圧延ピッチと剪断ピッチとを比較し、圧延ピッチが剪断ピッチに比して大きい場合、オンライン加速冷却処理時間の長い圧延順序に組み替えることを特徴とする請求項に記載の圧延要領決定方法。
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