JP6040506B2 - アルギン酸の分解方法とアルギン酸および/またはその誘導体からなる組成物 - Google Patents

アルギン酸の分解方法とアルギン酸および/またはその誘導体からなる組成物 Download PDF

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本発明は、アルギン酸の分解方法とアルギン酸および/またはその誘導体からなる組成物に関する。より詳細には、医薬品および食品等の様々な分野で利用されている低分子量アルギン酸を得るためのアルギン酸の分解方法に関する。また、この分解方法により分解された低分子量のアルギン酸および/またはその誘導体からなる組成物に関する。
アルギン酸は、天然の褐藻類の細胞壁から抽出される高分子多糖類であって、β−D−マンヌロン酸とそのC‐5エピマーであるα−L−グルロン酸の2種類のウロン酸が1−4結合した直鎖状のブロック共重合体である。そしてその化学構造は、マンヌロン酸(M)のホモポリマーブロック(Mブロック)、グルロン酸(G)のホモポリマーブロック(Gブロック)およびマンヌロン酸(M)とグルロン酸(G)がランダムに配列したブロック(MGブロック)が任意の順列および割合で複雑に結合したものとなっている。
このアルギン酸は、低分子量化することで抗アレルギー性、抗炎症作用を示したり、コレステロール値を低下させる等の生理活性作用を有することが知られており、医療分野、バイオテクノロジー分野はもとより、食品等の分野においても広く利用がなされている。
以上のようなアルギン酸を低分子量化する手法としては、例えば、(1)酸加水分解等による化学的手法(例えば、特許文献1参照)、(2)酵素分解等による生化学的手法(例えば、特許文献2参照)、そして、(3)熱分解や、超音波等の弾性波、または、マイクロ波、紫外線およびγ線等の電磁波の照射等による物理的手法(例えば、特許文献3および非特許文献1参照)、などが知られている。
特許第3685438号 特開2000−342278号公報 特開2004−49164号公報
L. L. Quang et al., Radioisotopes 58(1), p.1-11, 2009
しかしながら、上記(1)の化学的手法によると、生産性が低く、アルギン酸をランダムに分解することにより分子量の多分散度の高い(例えば、質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される多分散度(Mw/Mn)が高いオリゴマーしか得られないという欠点があった。また、上記(2)の生化学的手法によると、酵素を使用するためにコストが増大し、分解時間も長大化することに加え、精製が欠かせないという欠点があった。そして、上記(3)の物理的手法のうち、熱分解や、超音波またはマイクロ波の照射によると、比較的高速での低分子量化が可能ではあるものの、分解されたアルギン酸の多分散度が高くなってしまい、また、紫外線やγ線の照射によると、アルギン酸の選択的な分解が可能であるものの、分解反応が遅いという欠点があった。
本発明は上記課題に鑑みて創出されたものであり、アルギン酸を短時間に分解し、多分散度の低いアルギン酸および/またはその誘導体からなる組成物を簡便に得る方法を提供することを目的とする。
この出願は、上記の課題を解決するものとして、アルギン酸の分解方法を提供する。かかるアルギン酸の分解方法は、アルギン酸および/またはその誘導体を含む水溶液中でプラズマを発生させることにより、該水溶液中のアルギン酸および/またはその誘導体の平均分子量を低減させることを特徴としている。
なお、本明細書において、「アルギン酸」とは、一般式(Cで表わされるβ−D−マンヌロン酸(M)とα−L−グルロン酸(G)が1−4結合した直鎖状のポリマー組成物に限定されることなく、そのナトリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等のアルギン酸塩を包含する。また、「アルギン酸の誘導体」とは、アルギン酸の一部をその構造や性質を大幅に変えない程度に他の原子や官能基で置換した各種の化合物を意味する。以下、特にことわりの無い限り、「アルギン酸および/またはその誘導体」を単にアルギン酸と総称する。
かかる分解方法では、アルギン酸の分解に、液中で発生されたプラズマを利用するようにしている。以下、液中で発生されたプラズマを単に「液中プラズマ」という場合がある。この液中プラズマは、典型的には、液体中に浸漬した電極対にマイクロ波や高周波を印加することで液体中に発生される気相内に形成することができ、通常の気相中(典型的には、減圧ないしは大気圧中)で発生される気相プラズマとは異なる物理的および化学的性質を示す。
かかる構成によると、アルギン酸を含む水溶液中で液中プラズマが発生されるため、液中プラズマにより発生されるラジカルや電子および正または負の電位を有するイオン等によりアルギン酸の結合が切断される。即ち、代表的には、質量平均分子量がおよそ15万〜150万程度といわれる天然の褐藻類から抽出されたアルギン酸の分子構造を切断して、その平均分子量を低減させることができる。
ここに開示されるアルギン酸の分解方法においては、上記プラズマの発生時間を調整することで、上記平均分子量が所定の値にまで低減された上記アルギン酸および/またはその誘導体の分解物を得ることができる。
液中プラズマによるアルギン酸の分解量は、プラズマの発生時間、すなわち分解処理時間に伴って増大する。したがって、プラズマの発生時間を調整することでアルギン酸の分解度を調整することができ、延いては所望の平均分子量のアルギン酸を得ることができる。
なお、本願明細書において、アルギン酸の平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー法(Size Exclusion Chromatography Method:SEC法)で測定される分子量分布に基づいて算出される値とすることができる。サイズ排除クロマトグラフィー法とは、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)またはゲルろ過クロマトグラフィー法(GFC法)とも呼ばれる液体クロマトグラフィーの手法の1つであり、多孔質充填剤を詰めたカラム中における充填剤表面の細孔とポリマーとの「サイズ排除」(Size Exclusion)機構によって、測定試料の分子量に基づくふるい分けを行っている。有機化合物の平均分子量には、数平均分子量と重量平均分子量とが規定されるが、本明細書において、両者を特に区別する必要がない場合には、単に「平均分子量」とのみ記載する。
ここに開示されるアルギン酸の分解方法の好ましい一態様においては、質量平均分子量が10×10以上の上記アルギン酸および/またはその誘導体を分解することにより、質量平均分子量が7×10以下の上記分解物を得ることを特徴としている。
アルギン酸の中でも例えばアルギン酸ナトリウムは、冷水ないし温水に溶けて粘性のあるコロイド溶液となることから、乳化剤、安定剤、増粘剤等の食品添加物等として広く利用されている。この粘性の大小(すなわち粘度)はアルギン酸ナトリウムの分子量、より具体的にはアルギン酸を構成するウロン酸分子の重合度に応じて変化するため、高精度で粘性の調整を行うにはアルギン酸は低分子量であることが望ましい。また、その他にも低分子量のアルギン酸は様々な分野で多用されている。アルギン酸の分子量を所望のものとするには、従来は、γ線あるいは紫外線照射によりアルギン酸を低分子量化したり、所望の開き目の限外濾過膜でろ過する必要があった。
これに対し、このアルギン酸の分解方法によると、質量平均分子量が10×10以上(典型的には12×10以上)のいわゆる高分子量アルギン酸(典型的には、抽出され精製されたままのアルギン酸)を、質量平均分子量が7×10以下(典型的には5×10以下、例えば、3×10以下)のいわゆる低分子量アルギン酸に、比較的短時間で容易に分解することができる。具体的な処理時間については、アルギン酸含有水溶液の系にもよるため一概には言えないが、例えば一例として、アルギン酸含有水溶液の質量平均分子量を12×10以上から7×10以下程度にまで低減させるのに要する時間は、濃度が0.2%のアルギン酸含有水溶液の場合で15分程度、0.9%のアルギン酸含有水溶液の場合で25分程度と、短時間であり得る。
なお、本明細書においてアルギン酸含有水溶液の濃度の単位である「%」は、特にことわりの無い限り(w/v)基準であって、溶液100ml中に含まれるアルギン酸(溶質)のグラム数を示すものとする。
ここに開示されるアルギン酸の分解方法の好ましい一態様においては、サイズ排除クロマトグラフィー法により測定される分子量分布が二峰性を示す上記アルギン酸および/またはその誘導体を、該分子量分布が単峰性を呈する分解物に分解することを特徴としている。
液中プラズマによるアルギン酸の分解においては、より大きい分子量を有するアルギン酸から優先的に分解される傾向がみられる。したがって、かかる構成によると、たとえ処理前の水溶液中のアルギン酸の分子量分布が二峰性を呈する場合であっても、より大きなピークを形成しているアルギン酸から優先的に分解されるため、分子量分布は徐々に単峰性へと推移してゆく。すなわち、二峰性の分子量分布を有するアルギン酸を単峰性の分子量分布を有するものへと調製することができる。
ここに開示されるアルギン酸の分解方法の好ましい一態様においては、上記分解物についてサイズ排除クロマトグラフィー法により測定される単峰性の分子量分布において、質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される多分散度(Mw/Mn)が1.4〜1.7の範囲であることを特徴としている。
液中プラズマによるアルギン酸の分解においては、より大きい分子量を有するアルギン酸から優先的に分解される傾向がみられる。また、その分子量分布は分解と共に広大化することがない。したがって、かかる構成によると、より狭い分子量分布を有するアルギン酸、すなわちより分子量の揃ったアルギン酸へと分解することができる。例えば、多分散度が1.8〜1.9程度のアルギン酸を、多分散度1.4〜1.7程度に、より典型的には1.4〜1.5程度に分解することができる。
ここに開示されるアルギン酸の分解方法の好ましい一態様においては、プラズマ発生前の上記アルギン酸および/またはその誘導体を含む水溶液の濃度を、w/v%基準で、0.1%〜1%の範囲とすることを特徴とする。
かかる構成とすることで、水溶液中のアルギン酸の状態を液中プラズマによる分解に適した状態とすることができ、より短時間で高効率な分解を行うことができる。
ここに開示されるアルギン酸の分解方法の好ましい一態様においては、上記水溶液の電気伝導度を、300μS・cm−1〜2500μS・cm−1の範囲とすることを特徴としている。
かかる構成とすることで、液中プラズマを発生させるのに必要な電力量を抑え、より安定した液中プラズマを発生させることができるため、より効率よく安定した条件でアルギン酸の分解を行うことができる。
ここに開示されるアルギン酸の分解方法の好ましい一態様においては、上記プラズマは、上記水溶液中で線状電極間にパルス幅が1〜10μsで、周波数が10〜10Hzの直流パルス電圧を印加することで発生させることを特徴としている。
かかる構成によると、ジュール熱により水溶液中に発生する気泡を水面に向かって浮上させることなく、水溶液中に安定した状態で維持することができ、かかる気泡中に安定した状態でプラズマを発生させることもが可能となる。これにより、より効率よく安定した状態でアルギン酸の分解を行うことが可能となる。
ここに開示されるアルギン酸の分解方法の好ましい一態様において、上記プラズマが、グロー放電プラズマであることを特徴としている。
液中で発生されるプラズマは、火花放電、コロナ放電、グロー放電、アーク放電の形態であり得る。なかでも、本態様の分解方法では、液中プラズマのより好ましい形態としてグロー放電プラズマをアルギン酸の分解に利用しており、非平衡な低温プラズマを発生させることができ、より安定的にアルギン酸の分解を行うことができる。
ここに開示されるアルギン酸の分解方法の好ましい一態様において、上記グロー放電プラズマは、上記水溶液中に発生した気相中に形成されることを特徴としている。
液中のグロー放電プラズマは、液中に配置した電極間に高周波数の電圧を印加することを発生させることができる。かかる構成によると、電極間に発生するジュール熱により液相中に発生される気相の内部に、グロー放電プラズマを定常的に発生させることができる。すなわち、液相/気相/プラズマ相の界面が安定に形成され、プラズマ相で発生された活性種が気相を介して気液界面に供給されるため、液相に含まれるアルギン酸を高効率に分解することが可能となる。
本発明が他の側面で提供するアルギン酸および/またはその誘導体からなる組成物は、質量平均分子量(Mw)が0.1×10〜7×10の範囲のいずれかであって、多分散度(Mw/Mn)が1.4〜1.7の範囲であることを特徴としている。
上記のとおり、本発明のアルギン酸の分解方法によると、アルギン酸を分解して低分子量化することができ、また、そのアルギン酸の分解物の分子量はばらつきの少なく比較的揃ったものとすることができる。これにより、その平均分子量に応じた諸特性がより明瞭に発現され得るアルギン酸が提供される。
本発明が提供するアルギン酸および/またはその誘導体からなる組成物の製造方法は、質量平均分子量(Mw)が0.1×10〜7×10の範囲のいずれかであって、多分散度(Mw/Mn)が1.4〜1.7の範囲であるアルギン酸の製造方法である。かかる製造方法は、上記のいずれかに記載のアルギン酸の分解方法を行うことを特徴としている。
すなわち、上記のアルギン酸の分解方法は、多分散度が上記の範囲内で所望の平均分子量を有するアルギン酸を製造する方法として利用することが可能である。これにより、例えば所望の特性を強く有するアルギン酸を簡便かつ高効率に製造することが可能とされる。
アルギン酸の分解に用いる液中プラズマ発生装置の構成の一例を示す模式図である。 アルギン酸の分解に用いる液中プラズマによる反応場の構成を例示した模式図である。 実施例における分解時間とアルギン酸含有水溶液温度との関係を例示した図である。 実施例における分解時間とアルギン酸含有水溶液の粘性との関係を例示した図である。 濃度が0.2%のアルギン酸含有水溶液の分解時間ごとの発光分析の結果を例示した図である。 濃度が0.5%のアルギン酸含有水溶液の分解時間ごとの発光分析の結果を例示した図である。 濃度が0.9%のアルギン酸含有水溶液の分解時間ごとの発光分析の結果を例示した図である。 図5A〜5Cにおける分解時間45分の各濃度のアルギン酸水溶液のスペクトルを示す図である。 実施例における分解時間とアルギン酸の質量平均分子量との関係を例示した図である。 実施例における分解時間とアルギン酸の数平均分子量との関係を例示した図である。 濃度が0.2%のアルギン酸含有水溶液の分解時間ごとのゲル浸透クロマトグラフィー法による微分分子量分布曲線を例示した図である。 濃度が0.5%のアルギン酸含有水溶液の分解時間ごとのゲル浸透クロマトグラフィー法による微分分子量分布曲線を例示した図である。 濃度が0.9%のアルギン酸含有水溶液の分解時間ごとのゲル浸透クロマトグラフィー法による微分分子量分布曲線を例示した図である。 濃度が0.2%のアルギン酸含有水溶液の分解時間ごとのUV/VIS法による吸収スペクトルを例示した図である。 濃度が0.5%のアルギン酸含有水溶液の分解時間ごとのUV/VIS法による吸収スペクトルを例示した図である。 濃度が0.9%のアルギン酸含有水溶液の分解時間ごとのUV/VIS法による吸収スペクトルを例示した図である。
以下、本発明のアルギン酸の分解方法について説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書および図面に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
ここに開示されるアルギン酸の分解方法は、アルギン酸および/またはその誘導体を含む水溶液中でプラズマを発生させることにより、該水溶液中のアルギン酸および/またはその誘導体の平均分子量を低減させることを特徴としている。
かかる分解方法では、アルギン酸の分解の手段として、液中プラズマを利用するようにしている。すなわち、プラズマを構成する正負のイオン、電子およびラジカル等の活性種によりアルギン酸の分子構造におけるいずれかの結合を切断して、当該アルギン酸の分子量を低減するものである。かかる活性種としては、典型的には、アルギン酸水溶液を構成する水が分解されて生成する、水素イオン、水酸化物イオン、酸素イオン、水素ラジカル、酸素ラジカルおよびヒドロキシラジカル等であり得る。
ここで、液中プラズマは、液体中に発生された気体(気相)にマイクロ波や高周波を印加して当該気体を構成する分子を部分的ないしは完全に電離させることで、形成することができる。つまり、液中プラズマにおいては、プラズマ相を取り囲む気相はさらに液相に取り囲まれており、プラズマを構成する上記のイオン、電子およびラジカル等の活性種は制限された気相中において自由に運動し得る状態であり、解放された気相中に発生される気相プラズマとは異なる物理的および化学的性質を示す。例えば、気相プラズマは、気体の温度を上げて行った際にこの気体を構成する中性分子が電離してプラズマ化することで発生する。このとき、固体・液体・気体間の相転移とは異なり気体からプラズマへの転移は徐々に起こるため、構成分子のごく一部が電離した電離度が非常に低い状態でも充分にプラズマであり得る。これに対し液中プラズマは、典型的には、まず液中での放電により当該液体がジュール加熱により気化されて気相を形成し、さらにこの気相においてプラズマが発生することで形成される。すなわち、液中プラズマは、プラズマという高エネルギー状態が液中(すなわち凝縮相)に閉じ込められており、閉鎖系の物理が実現するとともに、解放されない高密度なプラズマ反応場が形成されているといえる。
そして、プラズマと反応する反応物質についても、気相プラズマにおいては気相として供給されるものの、液中プラズマにおいては液相として供給される。すなわち、本発明では、反応物質であるアルギン酸を高密度で供給することができる。
これらのことから、本発明のアルギン酸の分解方法では、アルギン酸を簡便かつ高効率に分解することが可能とされる。
なお、以上のような液中プラズマは、電極間にかかる電位差の違い等によって、雷のような火花放電、コロナ放電、グロー放電、アーク放電等に分類される。火花放電が継続的に流れるとグロー放電あるいはアーク放電となる。ここで、液中で発生されるグロー放電プラズマ(以下、ソリューションプラズマとも言う。)は、その他の液中プラズマに対して、さらに異なる特徴を有している。例えば、アークプラズマは粒子密度が高く、イオンや中性粒子の温度が電子温度とほぼ等しい局所熱平衡状態にある熱プラズマである。これに対し、グロー放電プラズマは、電子温度は高いがイオンや中性粒子の温度が低い非平衡状態にある低温プラズマである。かかるグロー放電プラズマは、高い繰り返し周波数で、サブマイクロ秒のパルス幅の電圧を印加することにより、比較的安定して発生可能であることから、プラズマ相を囲む液体の膨張・圧縮運動とプラズマ相とは連動しつつ安定な状態が長時間(例えば、2時間以上)維持され得る。そのため、例えば、ソリューションプラズマにおいては、電極間に発生される気相はその一部が浮力により電極間から浮上して液表面に到達することがあり得るものの、その大部分は電極間に一定の大きさの気相として定常的に維持される。したがって、ソリューションプラズマにおいてはプラズマの発生状態を常にコントロールすることができる。本発明のアルギン酸の分解方法では、このような制御されたプラズマを利用することを好ましい形態としており、アルギン酸のより高効率な分解が可能とされる。発生したプラズマがグロー放電プラズマであるかどうかは、例えば、プラズマ発光分光分析等により求められるタウンゼント第2係数が約0.0005〜0.005の範囲にあることで確認することができる。
以下、本発明の好適な実施形態としての、ソリューションプラズマを反応場としたアルギン酸の分解を例にして、本発明のアルギン酸の分解方法についてより詳細に説明する。
図1は、アルギン酸を含む水溶液中でプラズマを発生させるためのソリューションプラズマ発生装置10の概略を示す図である。この実施形態において、アルギン酸を含む水溶液2は、ガラス製のビーカーなどの容器5に入れられている。また、プラズマを発生させるための一対の電極6は所定の間隔を以て水溶液2中に配設され、絶縁部材9を介して容器5に保持されている。電極6は外部電源8に接続されており、この外部電源8から所定の条件のパルス電圧が印加される。これによって、一対の電極6間に、定常的にソリューションプラズマ4を発生させることができる。
電極6としては、例えば、平板状電極や棒状電極およびその組み合わせ等の様々な形態であってよく、その材質についても特に制限はない。この実施形態においては、電界を局所的に集中させることが可能なタングステンからなる針状電極6を用いている。かかる電極6は、電界集中を妨げる余分な電流を抑えるために、先端部(例えば、数mm程度)のみを露出させ、後の部分は絶縁部材9等で絶縁しておくことが望ましい。絶縁部材9は、例えばゴム製あるいは樹脂(例えば、フッ素樹脂)製であることが例示される。この実施形態では、絶縁部材9は電極6を容器5に固定するとともに、電極6と容器5との水密を保つための栓をも兼ねた構成である。かかる装置10において、ソリューションプラズマを発生させるためのパルス電圧の印加条件は、水溶液2中に含まれるアルギン酸の種類や濃度等の条件にもよるものの、例えば、電圧:約1〜50kV、周波数:約1〜100kHz、パルス幅:約1〜20μsの範囲とすることができる。さらに限定的には、電圧:約1〜2kV、周波数:約10〜30kHz、パルス幅:約1〜2μsとするのがより好ましい。より詳細な電圧の印加条件は、例えば、分解の対象とするアルギン酸水溶液に応じて上記範囲内で適宜調整することができる。
上記のソリューションプラズマ発生装置10により発生されるプラズマ反応場は、例えば、図2に示したような構成となる。すなわち、アルギン酸含有水溶液(液相)2中に気相3が形成され、この気相3中にソリューションプラズマ(プラズマ相)4が形成されている。このプラズマ反応場は、定常的に維持されている。かかるプラズマ反応場では、プラズマ相4から液相2に向かって、高いエネルギーを有した電子、イオン、ラジカル等の活性種が供給される。一方、液相2から気相3およびプラズマ相4に向けては、液相2を構成する水あるいはこれに溶解したアルギン酸成分等が供給されると考えられる。そしてこれらは、主として液相2と気相3の界面において接触(衝突)する。とりわけ、水から発生される水素ラジカル,水素負イオン,ヒドロキシラジカル等は反応性が高く、液相2中に含まれるアルギン酸と接触することで、アルギン酸の結合を切断してアルギン酸の分子量を低減する、すなわち、分解する作用を示す。また、この分解により、アルギン酸は、一般式(Cで表わされる骨格構造は概ね保ったまま、例えば各アルギン酸分子鎖が絡み合った部分等において結合が切断されると考えられる。かかる切断部分は、結晶構造における特定の結合部位に制限されることなく、様々な結合部位であり得る。
なお、図2では理解を容易にするために、液相2と気相3、気相3とプラズマ相4の間の各界面が略球状に明確に形成されたような様子を示しているが、かかる界面は必ずしも明確に形成されることに限定されない。例えば、気相3とプラズマ相4の間の界面に臨界的なものがなく、かかる界面は空間的な広がりを持っていても良い。
アルギン酸水溶液は、例えば、各種のアルギン酸塩を水に溶解させることで調製することができる。アルギン酸水溶液は、w/v%基準で、0.1%〜1%程度の濃度に調整するのが好ましい。濃度が0.1%未満であると、液中のアルギン酸量が少なく、アルギン酸の分解効率が劣る点で好ましくない。また、濃度が1%を超過すると、アルギン酸水溶液の粘性が高くなりすぎ、分解効率が劣ったり、架橋反応が生じる等するために好ましくない。アルギン酸水溶液の濃度は、0.3%〜8%であるのが好ましく、更には0.5%±0.1%程度であるのがより好ましい。使用するアルギン酸塩にもよるが、アルギン酸水溶液は糊状となり溶けにくいため良く撹拌し、また分解処理中も系の均一が保てる程度に攪拌装置7等により撹拌しておくのが好ましい。
また、アルギン酸水溶液は、電気伝導度を300μS・cm−1〜2500μS・cm−1の範囲とするのが好ましい。概ね、上記の濃度のアルギン酸水溶液は電気伝導度が300μS・cm−1〜2500μS・cm−1の範囲であり得るが、使用するアルギン酸塩の種類によってはかかる電気伝導度の範囲から外れる場合もあり得る。このような場合は、例えば、アルギン酸水溶液に塩化カリウム(KCl)を溶解させたり、アルギン酸水溶液の濃度を低下させる等して電気伝導度を調整するとよい。電気伝導度が300μS・cm−1未満であると、ソリューションプラズマを好適に発生し難くなるために好ましくない。また、電気伝導度が2500μS・cm−1を超過する場合は、概ねアルギン酸水溶液の粘性が高すぎる場合が多くなるために好ましくない。電気伝導度は、500μS・cm−1〜2300μS・cm−1程度とするのが好ましく、更には、1000μS・cm−1〜2000μS・cm−1程度とするのが好ましい。
このようなソリューションプラズマのアルギン酸の分解作用によると、例えば、天然の褐藻類から抽出されたアルギン酸などの質量平均分子量が比較的高いアルギン酸を、質量平均分子量が比較的低いアルギン酸の分解物として得ることができる。例えば一例として、質量平均分子量が10×10以上、典型的には12×10以上の高分子量アルギン酸を、質量平均分子量が7×10以下、典型的には5×10以下の低分子量アルギン酸として得ることができる。分解により得られるアルギン酸の質量平均分子量の下限については、プラズマの発生時間(分解処理時間ともいえる。)に依存するところが大きいため特定することはできないものの、典型的には0.1×10〜7×10の範囲(例えば、1×10以上6×10以下の範囲)内で考慮することが例示される。
また、かかるソリューションプラズマによると、上記のアルギン酸の分解は安定したソリューションプラズマの発生によって分解時間と共に逐次的に進行するため、比較的短時間での多くのアルギン酸の分解が可能とされる。具体的な処理時間については、アルギン酸含有水溶液の系にもよるため一概には言えないが、例えば一例として、アルギン酸含有水溶液の質量平均分子量を12×10以上から7×10以下程度にまで低減させるのに要する時間は、濃度が0.2%のアルギン酸含有水溶液の場合で15分程度、0.9%のアルギン酸含有水溶液の場合で25分程度と、短時間であり得る。そしてまた、処理時間を調整することで、所望のレベルまでアルギン酸の分解を進めることができ、例えば、アルギン酸分解物として所望の平均分子量を有するアルギン酸を得ることも可能とされる。
また、質量平均分子量が10×10以上(典型的には12×10以上)のいわゆる高分子量アルギン酸(典型的には、抽出され精製されたままのアルギン酸)は、分子量分布の広がり具合を示す多分散度(Mw/Mn)が1.8以上となる場合があり得る。また、このようなアルギン酸は、分子量分布におけるピーク(峰)の数が2以上の多峰性分布の状態であり得る。これに対し、本発明のアルギン酸の分解方法により得られる分解物は、分子量分布が単峰性を示し、分子量分布の広がり具合を示す多分散度(Mw/Mn)が1.4〜1.7(典型的には1.4〜1.5)と狭い範囲のものとして得ることができる。
例えば、食品分野で広く利用されているアルギン酸ナトリウムは、その分子量特性が製品の品質、保存性に大きな影響を与えることが知られている。例えば、アルギン酸ナトリウム水溶液の粘度は、アルギン酸ナトリウムの分子量、より具体的にはアルギン酸を構成するウロン酸分子の重合度に応じて変化する。すなわち、多分散度の小さいアルギン酸とすることで、その分子量特性に応じた諸特性がより明瞭に発現され得るアルギン酸を得ることができる。そしてまた、本発明の方法で得られる単峰性で多分散度が小さく所定の平均分子量のアルギン酸を複数配合することで、各々の分子量特性に応じた特性をバランス良く備えたアルギン酸を調整することも可能となる。
以上、好適な実施形態に基づきアルギン酸の分解方法について説明したが、かかるアルギン酸の分解方法はこの例に限定されず、適宜に態様を変化して行うことができる。例えば、ソリューションプラズマの発生に際しては、必ずしもタングステンからなる針状電極を用いる必要はなく、例えば、低インダクタンスの誘導コイルによりソリューションプラズマを発生するようにしても良い。また、かかるアルギン酸の分解方法は、ソリューションプラズマ(グロー放電プラズマ)によるものに限定されず、例えば、液中でのアーク放電プラズマを利用して実施しても良い。
次に、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
[被処理溶液の調整]
処理対象であるアルギン酸溶液を、以下の手順で用意した。すなわち、(a)0.3mg、(b)0.75mgおよび(c)1.35mgのアルギン酸ナトリウム(関東化学株式会社製)を超純水に溶解させて150mLにメスアップすることで、濃度がそれぞれ(a)0.2%、(b)0.5%および(c)0.9%の3通りのアルギン酸水溶液(a)〜(c)を用意した。なお、このアルギン酸ナトリウムの質量平均分子量は約12.4×10、多分散度は約18であった。
これらのアルギン酸溶液(a)〜(c)の粘度および電気伝導度を測定したところ、以下の表1に示した通りであった。
なお、粘度の測定は、音叉型振動式粘度計(株式会社エー・アンド・デイ製、SV−10)を用い、20℃の環境にて測定した。また、電気伝導度は、電気伝導率計を用いて室温(25℃)にて測定した。
Figure 0006040506
[ソリューションプラズマの発生]
図1に、本実施形態で用いたアルギン酸の分解に用いたソリューションプラズマ発生装置10を模式的に示した。この装置10は、ビーカーからなる容器5に処理対象である上記で用意したアルギン酸水溶液2を入れ、この溶液中に2本のタングステン電極6を配置することで構成したものである。タングステン電極6としては、外周を絶縁材で被覆した直径5mmのタングステン線材を用い、先端部においてタングステン線材が絶縁材から1mm程度露出するようにした。また、2本のタングステン電極6は、同様のものを0.7mmの間隔を保つように対向して配置した。アルギン酸水溶液2は、攪拌装置7にて系の均質が保てる程度(例えば、200rpm程度)で撹拌した。
この電極6対に対し、バイポーラパルス電源(栗田製作所製、MPS−06K−01C)8を用い、マイクロ秒パルス電圧を印加することで、水溶液2中にソリューションプラズマ4を発生させ、水溶液2中のアルギン酸の分解を行った。本実施形態では、予備的に行った試験から、アルギン酸溶液(a)〜(c)のそれぞれについて、アーク放電することなくグロー放電を安定に維持できるソリューションプラズマの発生条件を決定した。その結果を、上記の表1に併せて示した。すなわち、ソリューションプラズマ発生のための電圧印加条件は、パルス幅2μs、パルス周波数15kPPsで一定とし、水溶液ごとに表1に示す通りに一次側電圧および電流を変化させることとした。
[1.溶液の温度と粘度の時間変化]
上記で用意したアルギン酸溶液(a)〜(c)中において、表1に示した条件でソリューションプラズマを所定の時間発生させた際の、処理時間と溶液の温度との関係を調べ、その結果を図3に示した。また、処理時間と溶液の粘度との関係を調べ、その結果を図4に示した。
電圧印加によって上記の電極間にはジュール熱が発生し、水溶液の温度はプラズマ処理時間の経過と共に80℃程度まで上昇した。水溶液の温度が高くなるほど、系の反応性は高められ傾向がある。ここで、図4に示されたように、アルギン酸の濃度が高い水溶液ほど粘度が高くなることから、水溶液中に蓄積される発熱量も多く、図3のアルギン酸水溶液(a)〜(c)の温度を示す曲線はその濃度の順に並ぶことが予想された。しかしながら、ここに示す例では、中間の濃度の水溶液(b)の温度が最も低い結果となり、アルギン酸含有水溶液の濃度を調整することで反応(例えば反応速度)に影響を与え得ることがわかった。
また、図4の処理時間と粘度との関係からは、水溶液の粘度が極めて高い状態にある処理開始初期の水溶液(c)において、粘度の低下の度合いが極めて大きくなっていることがわかる。これは、アルギン酸が高い濃度で存在し、その分子が互いに絡み合って高粘性を示す状態においては、その絡み合う点においてアルギン酸の結合が破壊され易く、アルギン酸の分解と絡み合いの解消、すなわち粘度の低減とが同時に起こっているものと考えられる。
[2.時間分解プラズマ発光分光分析]
ソリューションプラズマはマゼンタ色の発光を生じる。光ファイバープローブに連結した分光装置(AvaSpec/3648−USB2)を用いて、ソリューションプラズマの時間分解発光分光分析を行い、プラズマ中に発生した化学活性種の分析を行った。その結果を図5A〜5Cおよび図6に示した。図5A〜5Cは、それぞれアルギン酸溶液(a)〜(c)中においてソリューションプラズマを発生させた際の、所定の処理時間における発光スペクトルである。図6は、処理時間45分におけるアルギン酸水溶液(a)〜(c)の発光スペクトルである。
図5A〜5Cに示したように、アルギン酸水溶液(a)〜(c)においてプラズマ処理時間が進んでも、発光スペクトルには大きな変化が見られなかった。また、アルギン酸水溶液(a)〜(c)の何れもおおよそ似たスペクトル特性を有し、プラズマ形成初期からHα(656nm)とNa(589nm)の強い発光が見られることが分かった。そして、例えば、最も発光強度の強い図5Aを見ると、302nmにヒドロキシラジカルからの発光がわずかに確認でき、また777nmおよび844nmに酸素原子Oからの発光も見られる。さらに、Hα(656nm)およびHβ(485nm)が見られる。このことから、放電中の電子が水分子と直接衝突して、[e+HO→H+OH+e]および[e+OH→O+H+e]の反応が進んでいるとみられる。そして、溶液中のアルギン酸は、この活性化された水素ラジカルあるいは酸素原子と反応して酸化分解されるものと考えられる。
また、時間分解プラズマ発光分光分析の結果から、タングステン電極を用いた場合に電子温度は0.5eVから2.5eVまで振幅していることがわかった。また、そのタウンゼント第2係数は0.005であり、このソリューションプラズマがグロー放電領域にあることが確認できた。なお、電流電圧曲線を精度よく計測した結果からも、ソリューションプラズマがグロー放電領域であることが確認できた。
[3.分子量測定]
上記で用意したアルギン酸水溶液(a)〜(c)中において、表1に示した条件でソリューションプラズマを所定の時間発生させた際の、処理時間と平均分子量との関係を調べた。その結果を図7Aおよび7Bに示した。図7Aは処理時間と質量平均分子量との関係を、図7Bは処理時間と数平均分子量との関係を示している。また、図8A〜8Cに、アルギン酸溶液(a)〜(c)のそれぞれについて得られた微分分子量分布曲線の時間変化を示した。
なお、平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法により、下記の条件にて測定した。
(分析条件)
カラム :Shodex OHpak SB-806M(昭和電工株式会社製)
溶離液 :0.1M NaNO aq.
流速 :0.4mL/min
カラム温度 :30℃
インテグレータ:807-IT(日本分光株式会社製)
図7Aおよび7Bから、ソリューションプラズマによってアルギン酸の平均分子量を低減できることが確認できた。また、当初のアルギン酸溶液(a)〜(c)に含まれるアルギン酸の質量平均分子量はおよそ12.5×10程度であったが、例えば上記の条件のソリューションプラズマを30分間発生させることで、アルギン酸の質量平均分子量をそれぞれ(a)約3×10、(b)約6.8×10、(c)約5.6×10に低減でき、アルギン酸水溶液の濃度やソリューションプラズマの発生条件を調整することで平均分子量の制御が可能なことがわかった。
図8A〜8Cからも、ソリューションプラズマによる処理時間に伴ってアルギン酸の質量平均分子量が低減する様子が確認できた。なお、この実施形態において用いたアルギン酸は、(1)5.5×10付近と(2)6.2×10付近の2つにピークを有する二峰性の分子量分布特性を有するものであった。しかしながら、図8Cを見るとわかるように、ソリューションプラズマによる処理の開始直後から、より分子量が大きい側のピークのみが低分子量側にシフトしてゆき、ピーク位置を中心にほぼ左右対称の単峰性の曲線となってから、その分布形状を保ちつつ全体として低分子量側にシフトするのがわかった。すなわち、ここに開示されるソリューションプラズマによると、比較的分子量の大きいアルギン酸分子から優先的に分解されることがわかった。
[4.色変化]
上記で用意したアルギン酸水溶液(a)〜(c)中において、表1に示した条件でソリューションプラズマを所定の時間発生させた際の、処理時間と各水溶液の色との関係を、目視で観察するとともに、可視・紫外分光法(UV/VIS:Ultraviolet・Visible Absorption Spectroscopy)により吸収スペクトルおよび透過率の測定を行った。アルギン酸水溶液(a)〜(c)の分解処理時間ごとのUV/VIS法による吸収スペクトルをそれぞれ図9A〜9Cに示した。
目視観察では、アルギン酸水溶液(a)および(b)については、未処理の状態のものから60分間の処理を施したものまで、いずれも水溶液の色は無色透明で変化は見られなかった。これに対し、アルギン酸水溶液(c)については、処理時間が45分以上となるあたりから透明の褐色に変色し始め、処理時間が長くなるにつれてその色が濃く変化していくのが確認できた。
目視観察と図9A〜9Cの吸収スペクトルとから、アルギン酸水溶液の変色は、極大吸収波長λmaxが265nmにおける吸収に由来していることがわかった。この吸収は、アルギン酸が架橋したことに因るものであると推察される。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。ここで開示される発明には上述の具体例を様々に変形、変更したものが含まれ得る。
2 水溶液(液相)
3 気相
4 プラズマ(プラズマ相)
5 容器
6 電極
7 攪拌装置
8 外部電源
9 絶縁部材
10 ソリューションプラズマ発生装置

Claims (11)

  1. アルギン酸および/またはその誘導体を含む水溶液中でプラズマを発生させることにより、該水溶液中のアルギン酸および/またはその誘導体の平均分子量を低減させる、アルギン酸の分解方法。
  2. 前記プラズマの発生時間を調整することで、前記平均分子量が所定の値にまで低減された前記アルギン酸および/またはその誘導体の分解物を得る、請求項1に記載のアルギン酸の分解方法。
  3. 質量平均分子量が10×10以上の前記アルギン酸および/またはその誘導体を分解することにより、質量平均分子量が7×10以下の前記分解物を得る、請求項1または2に記載のアルギン酸の分解方法。
  4. サイズ排除クロマトグラフィー法により測定される分子量分布が二峰性を示す前記アルギン酸および/またはその誘導体を、該分子量分布が単峰性を呈する分解物に分解する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルギン酸の分解方法。
  5. 前記分解物についてサイズ排除クロマトグラフィー法により測定される単峰性の分子量分布において、質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される多分散度(Mw/Mn)が1.4〜1.7の範囲である、請求項4に記載のアルギン酸の分解方法。
  6. プラズマ発生前の前記アルギン酸および/またはその誘導体を含む水溶液の濃度を、w/v%基準で、0.1%〜1%の範囲とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルギン酸の分解方法。
  7. 前記水溶液の電気伝導度を、300μS・cm−1〜2500μS・cm−1の範囲とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアルギン酸の分解方法。
  8. 前記プラズマは、前記水溶液中で線状電極間にパルス幅が1〜10μsで、周波数が10〜10Hzの直流パルス電圧を印加することで発生させる、請求項1〜7のいずれか1項に記載のアルギン酸の分解方法。
  9. 前記プラズマが、グロー放電プラズマである、請求項1〜8のいずれか1項に記載のアルギン酸の分解方法。
  10. 前記グロー放電プラズマは、前記水溶液中に発生した気相中に形成される、請求項1〜9のいずれか1項に記載のアルギン酸の分解方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法を行うことを特徴とする、質量平均分子量(Mw)が0.1×10〜7×10の範囲のいずれかであって、多分散度(Mw/Mn)が1.4〜1.7の範囲である、アルギン酸および/またはその誘導体からなる組成物の製造方法。
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