JP6033844B2 - タウタンパク質の多重突然変異体およびヒトタウオパチーを再現するためのその使用 - Google Patents

タウタンパク質の多重突然変異体およびヒトタウオパチーを再現するためのその使用 Download PDF

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Description

神経機能障害に始まり最終的に細胞死を引き起こす慢性認知症のすべてではないとしてもその多くは、タンパク質凝集体の蓄積を病理学的特徴とする。タウオパチーにおいては、その名前が意味するように、このような凝集体が、微小管関連タンパク質タウから実質的になる神経原線維変化(NFT)を形成する。タウをコードするMAPT遺伝子はアルツハイマー病(AD)に遺伝学的には関連していないが、MAPTの突然変異は遺伝性前頭側頭型認知症(FTD)を引き起こし、またそのミスセンス突然変異は進行性核上性麻痺や大脳皮質基底核変性症、ならびにピック病に極めて類似した病態に見いだされている。このことは、タウの恒常性が崩壊するだけで神経変性による認知症が引き起こされることの根拠となる(van SwietenおよびSpillantini(2007)に総説されている)。ADにおいては、(野生型)タウタンパク質の過剰リン酸化および/または再分布がAβ/アミロイド毒性を媒介していること(Ittnerら(2010);Zempelら(2010))、またタウ濃度を低下させることによってADの症状を予防できること(Vosselら(2010))を示唆する結果が数多く報告されている。タウの突然変異によって、種々のタウアイソフォームの相対比が変化するが、さらに重要なことにはタウが異常な構造をとる傾向が強まり、その結果線維状に凝集することが知られている。従って、タウが媒介する神経変性は、タウの構造異常によって引き起こされる種々の有害な機能の同時獲得、およびタウの正常な機能の消失により生じうる有害な影響が原因となっていると考えられる。しかし残念ながら、タウの構造異常が神経細胞死のきっかけとなる、すなわち神経細胞死の一因となる正確なメカニズムは完全には解明されていない。これまでに断片的に解明されている病理学的機序においては、治療的介入のための標的が検証されておらず、このことが医薬品開発における大きな障害となっている。それでもなお、医薬品開発は、インビトロおよびインビボにおいて少なくともヒトタウオパチーの特徴を正確に再現すると考えられる機能モデルにおいて進められる。
NFTはタウオパチーにおける最も顕著な病理学的特徴であるため、NFTの蓄積による神経変性発生の仕組みの解明に多くの注目が集まっており、基本的にはNFTの病態を再現する動物モデルを用いて疾患メカニズムの研究が行われている。タウが線維状に凝集しNFTを形成すると有害な機能を獲得するという仮説は長い間支持されてきた。しかしながら、この仮説は、NFT形成の進行中にもかかわらずニューロンの欠損および記憶の減退を実験的に治癒できたという報告によってその妥当性がかなり疑問視されてきている(Santacruzら(2005))。動物モデルのいくつかにおいては、タウにより媒介されるニューロンの欠損にNFTの形成は必要とさえされない。従って、より大きならせん状の線維へと構築される過程において見られる線維状ではないが既に凝集した状態の球状タウ中間体が、神経毒性を有するタウ種であると考えられる。
微小管に結合していない遊離タウの濃度が上昇すると、タウがミスフォールドしたり、修飾や構造変化を受ける可能性が高くなると考えられ、タウが修飾や構造変化を受けると小球状オリゴマー凝集体の形成が促進され、最終的にはこのオリゴマー凝集体が集まって不溶性線維が形成されると考えられる。AD脳から単離されたタウタンパク質は複数の重要な部位において異常に高度リン酸化されていることが見出されたこと(「過剰リン酸化タウ」)、および擬似的な過剰リン酸化(すなわちこのタンパク質に沿った複数の部位における擬似的なリン酸化)によってタウタンパク質の構造異常が亢進されうることが示された(Jeganathanら(2008))ことから、構造変化を安定化させるための共有結合修飾の一つがリン酸化である可能性が高い。これに関連して、タウの過剰リン酸化が診断の指標として同定されており(WO9311231A1)、また、異なるタウ関連キナーゼが治療標的として同定されている(WO2007088400A1)。
通常タウは容易には凝集しない高溶解性タンパク質であり、培養研究の理想的な時間枠内または動物の比較的短い生存期間ではタウは凝集しにくいため、上記の事項を実験モデルにおいて評価することは困難であった。実験モデルにおいてはタウの凝集を促進させるために高濃度のタウが必要となることから、ヒトタウオパチーのニューロンおよびグリアの細胞質中におけるタウの小球状凝集物形成能の亢進は、凝集作用をもたらすタウの貯蔵量が病的状態によって局所的に増加することに起因すると考えられている。しかしながら、種々のタウオパチーにおけるタウの量は、人工的に大量のタウを過剰発現させた細胞培養や動物モデルにおけるタウの量と同レベルにはなりえず、従ってこのようなモデル系から得られた結果をヒトの状態に外挿する際には十分な注意が必要である。
さらに理解を複雑にさせているのは、野生型ヒトタウ(hタウ)を過剰発現させたトランスジェニックマウスではマウスタウがタウ凝集を防いでいるらしいという事実である。このような事実にもかかわらず、凝集を促進させる突然変異を含む高レベルのhタウアイソフォーム(例えばP301Lタウ)を過剰発現しているトランスジェニックマウスにおいては、内因性マウスタウの存在下でもタウの病態が発症されうる。P301LおよびP301S突然変異はFTD突然変異として初めて記述されたものの一部であり、これらの突然変異は平均して極めて早期に発症するヒトFTDに見られる。これらの突然変異体を発現したタウトランスジェニックマウスモデルは、タウ病態の最初の徴候を2.5〜5か月で発症する(Schindowskiら(2006))。WO01/53340 A2では、神経変性疾患モデルを作製するための、P301Lと命名された突然変異などの1個の突然変異を有するタウまたは野生型を発現するマウスモデルと、医薬品開発手段とが開示されている。さらに、3個のFTD突然変異を有するタウcDNAを用いたトランスジェニックマウスモデルにおけるタウの病態が報告されている(Limら(2001))。
インビトロでのタウ凝集を加速させるには、ポリアニオンコファクターまたは小分子リガンドを用いてタウ凝集を促進させることが多い。例えば、完全長タウを過剰発現している細胞培養モデルでは、コンゴーレッド処理により線維状タウ凝集物の形成が刺激され、細胞生存率が低下している(Bandyopadhyayら(2007))。これらの結果および他の結果から、細胞培養モデルにおいてもタウ凝集は細胞死の原因となり、少なくともその発症を加速することが示唆される。しかしながら、凝集を加速または促進させるための人工的にタウ濃度を上昇させる方法または高用量の有毒化合物を添加する方法に依らずにタウを凝集させる細胞培養モデルは今のところ報告されていない(Koら(2004)、Tsukaneら(2007)、Nieら(2007))。医薬品開発を目的としたタウオパチー疾患メカニズムのモデリングを考慮すると、これら2つの方法による変性メカニズムはAD脳におけるタウの病態とは著しく異なる可能性があるため、両方法は人為的な結果を生み出す危険性が高い。
複数の突然変異を有するタウを発現する細胞は、細胞培養の24時間以内に神経変性の徴候を示すことが明らかとなっている。4個のFTDP−17突然変異を有するタウタンパク質を発現する細胞は低いインピーダンスを示した(実施例2/図5)。このことは、異なった4個の突然変異を有する2種の異なるタウタンパク質においても認められた。この効果は5個の異なったFTDP−17突然変異を有するタウタンパク質ではさらにより顕著であった。
第1態様において本発明は、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP−17)に関連する少なくとも4個の異なった突然変異を含むタウタンパク質に関する。
本発明の第2態様は、本発明のタウタンパク質をコードする核酸である。
本発明の第3態様は、本発明の核酸を含むプラスミドまたはベクターである。
本発明の第4態様は、本発明の核酸またはベクターもしくはプラスミドを含む細胞である。
本発明の第5態様は、細胞培養の24時間後にインピーダンスの低下を示すことを特徴とする、突然変異タウタンパク質を発現する細胞である。
本発明の第6態様は、神経変性疾患の治療剤または予防剤を同定するための方法であって、
(a)試験化合物と本発明の細胞とを接触させること、および
(b)該試験物質が、神経変性の指標となる少なくとも1種のマーカーを調節するかどうかを調べること
を含む方法である。
本発明の第7態様は、神経変性の1種以上のマーカーを調節することができる薬剤をスクリーニングするための、本発明のタウタンパク質、本発明の核酸、本発明のベクターもしくはプラスミドまたは本発明の細胞の使用である。
本発明の第8態様は、神経変性疾患の治療剤または予防剤を開発するための、本発明のタウタンパク質、本発明の核酸、本発明のベクターもしくはプラスミドまたは本発明の細胞の使用である。
本発明の第9態様は、タウオパチーを再現するための方法であって、
(a)本発明の細胞を提供する工程、および
(b)異常な構造を有するタウタンパク質の発現が可能な条件下で該細胞を培養する工程
を含む方法である。
タウ過剰突然変異体を発現する細胞株における異常なタウ凝集野生型または突然変異タウを同レベルで安定に発現しているSH−SY5Y神経芽腫細胞株を用いて、20nMスタウロスポリン処理により神経細胞の分化を誘導した。Hyperタウ発現細胞においては48時間分化(+STS)させるだけで異常なタウ凝集が形成される(矢印参照)。 多重突然変異タウ細胞株における異常なタウ構造タウ多重突然変異体を構築し、これらの変異体を用いて多重突然変異神経芽腫細胞株を作製した。これらの細胞株において、生理学的条件下で異常/病的な構造を取ったタウが観察された(MC1異常タウ)。五重突然変異タウ遺伝子変異体(SH−Tau5×mut)は、野生型または単一突然変異タンパク質と比較して同程度の発現レベルにもかかわらず、MC1マーカーによって検出される異常な構造(赤色の矢印頭部参照)を取る傾向が特に高いことが示された。リン酸化により異常構造が安定化されうるという最近の結果を裏付けるように、タウキナーゼ阻害剤(SRN−003−556)で細胞を処理することによりMC1陽性タウ種の量を減少させることができた。従って、分化神経芽腫細胞において多重突然変異タウタンパク質はアルツハイマー様リン酸化状態で存在し、キナーゼを阻害することによりタウのミスフォールディングが減少し、それに次ぐ凝集も抑制されると考えられる。 神経表現型に分化後の五重突然変異タウ神経芽腫細胞中の微小管ネットワーク病態図に示したMAPT遺伝子変異体をレトロウイルスベクターを用いてヒト神経芽腫細胞株SH−SY5Yに形質導入し、この遺伝子を安定に発現している細胞株を選択した。導入遺伝子の発現(EGFP−タウ、A〜D)と、安定な微小管のマーカーであるアセチル化チューブリンに対する抗体により検出される微小管ネットワークの変化(A〜D)とについて分化細胞を分析した。二重標識蛍光により、導入細胞中の安定な微小管の線維状パターン、および微小管関連タンパク質と思われるトランスジェニックタウと微小管との共局在化(A〜D、白色の矢印参照)が示された。一方、五重突然変異体を形質導入した細胞の亜集団(D、中抜きの矢印参照)では、安定な微小管は存在しなかった。同時に、これらの細胞はEGFP標識されたタウ導入遺伝子を高レベルで示し、微小管の機能を消失したと見られる。(安定な)微小管ネットワークの崩壊により微小管に依存する輸送が分断され、細胞は小さく萎縮し、影響を受けた細胞は死に至ると推定される。 オカダ酸で誘発した人工的な過剰リン酸化による影響のインピーダンスによる検出25nMのオカダ酸を用いた培養により、まず3時間後および6時間後にHyperタウ突然変異体に特異的な変性効果が認められるが、24時間後にはオカダ酸の非特異的な毒性副作用のためにすべてのタウ突然変異体において重大な細胞障害が発生した。(n=3、2D−ANOVA、ボンフェローニ事後検定、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001) 多重突然変異タウ発現SH−SY5Y細胞において分化により誘導された神経変性20nMスタウロスポリンを用いて48時間培養することにより、SH−SY5Y細胞の分化を誘導した。その後、細胞のインピーダンスを24時間観察した。野生型タウおよびP301Lタウ発現細胞ではインピーダンスは低下しなかったが、K257qおよびdK280qタウ細胞ではインピーダンスが低下した。特に、Hyperタウ発現細胞では神経変性の結果、より有意なインピーダンス低下が認められた。(n=4、2D−ANOVA、ボンフェローニ事後検定、*p<0.05、**p<0.01) 化合物の有効性を定量的に検出するためのHyperタウ細胞の使用構築したHyperタウ細胞を分化させることにより病態を誘導し(20nMスタウロスポリン、48時間)、このHyperタウ細胞と野生型タウ発現細胞(生理学的状態)とを比較することにより、医薬有効成分候補の有効性を定量化することができた。2種の参照化合物の効果、具体的にはキナーゼ阻害剤SRN−003−556とAR−A014418とを用いて、Hyperタウに基づく機能性タウ病態スクリーニングアッセイのスクリーニング性能を示した。SRN−003−556はHyperタウが誘導する病態を有意に改善するが、AR−A014418は有意な治療効果を示さない。一例として決定した24時間後のSRN−003−556のEC50に示されるように、観察可能な治療効果を定量することができる。(測定値はWTに対して正規化、n=4、すべての群をHyperと比較した、2D−ANOVA、ボンフェローニ事後検定、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)
本明細書および添付の請求項において単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈から明らかである場合を除いて複数のものを含む。従って、例えば、「分子」は1以上の分子および当業者に公知のその等価物などを指す。「細胞」は細胞群を含む。
本発明は、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症に関連する突然変異からなる群から選択される少なくとも4個の異なった突然変異を含むタウタンパク質に関する。
タウタンパク質
本明細書において「タウタンパク質」とは、野生型タウタンパク質と類似の配列を有するポリペプチドを指す。タウタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1に示されるアミノ酸配列と好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する。配列番号1のアミノ酸配列との同一性は、パラメータ設定をMatrix BLOSUM62;Open gap 11ペナルティおよびextension gap 1ペナルティ;gap x_dropoff50;expect 10.0 word size 3;Filter:なしとして、「BLAST 2 SEQUENCES(blastp)」プログラム(Tatusovaら, (1999), FEMS Microbiol. Lett. 174, 247-250)を用いて比較対象のアミノ酸配列と配列番号1とを比較することによって決定してもよい。本発明によれば、配列比較は少なくとも200個のアミノ酸、好ましくは少なくとも300個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも350個のアミノ酸、最も好ましくは少なくとも約380個のアミノ酸にわたる。
タウタンパク質のアミノ酸配列は配列番号1、配列番号6および配列番号8からなる群から選択されることが最も好ましい。これらの配列はそれぞれタウアイソフォーム0N4R、2N4Rおよび1N4Rのアミノ酸配列である。
タウタンパク質はヒトタウタンパク質またはその変異体であることが好ましい。野生型ヒトタウタンパク質のアミノ酸配列を配列番号1に示す(Homo sapiens microtubule−associated protein tau (MAPT):NM 016834/NP_058518)。さらに、ヒトタウアイソフォームのアミノ酸配列を配列番号6および配列番号8に示す。本明細書において「変異体」は、本発明において開示されるポリペプチドおよびタンパク質に関連する任意のポリペプチドまたはタンパク質であって、本発明に記載の天然のポリペプチドまたはタンパク質のN末端、C末端および/または天然アミノ酸配列中において1個以上のアミノ酸が付加、置換、欠失および/または挿入されたものを指す。さらに、「変異体」には、短縮または伸長されたポリペプチドまたはタンパク質も含まれる。変異体には、天然から単離されうるタンパク質およびポリペプチドならびに組換え技術および/もしくは合成技術によって作製されうるタンパク質およびポリペプチドが含まれる。天然のタンパク質またはポリペプチドは、天然の切断型または分泌型、天然の変異型(例えばスプライス変異体)および天然の対立遺伝子変異体を指す。本明細書において「変異体」および「アイソフォーム」という用語は交換可能に用いられる。
特に示されない限り、本明細書において用いられるヒトタウ配列中のアミノ酸の番号付けは、441個のアミノ酸を有する配列番号2のタウアイソフォームに従う。
FTDP−17に関連する突然変異
本発明のタウタンパク質は、「17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症」(FTDP−17)に関連する突然変異からなる群から選択される少なくとも4個の異なった突然変異を含む。FTDP−17は常染色体優性神経変性疾患であり、3つの基本的な特徴すなわち行動および人格の変化、認知障害、ならびに運動症状を呈する。FTDP−17は、1996年にミシガン州アナーバーで開催されたInternational Consensus Conferenceにおいて定義が与えられた(Foster NL, Wilhelmsen K, Sima AA, Jones MZ, D’Amato CJ, Gilman S: Frontotemporal dementia and parkinsonism linked to chromosome 17: a consensus conference, Conference Participants, Ann Neurol 1997, 41:706-715)。この定義を本明細書に援用する。FTDP−17はタウ遺伝子の突然変異により起こる。FTDP−17に関連する、タウ遺伝子の少なくとも38個の異なった突然変異が全世界で確認されている。
本発明によればFTDP−17に関連する突然変異は、5位、257位、260位、266位、272位、279位、296位、301位、303位、305位、315位、317位、320位、335位、336位、337位、342位、352位、369位、389位、406位および/または427位のアミノ酸の置換ならびに280位および/または296位のアミノ酸の欠失を含むが、これらに限定されない。より具体的にはFTDP−17に関連する突然変異は、R5H、R5L、K257T、I260V、L266V、G272V、N279K、delK280、N296H、N296N、delN296、P301L、P301S、G303V、S305N、L315R、K317M、S320F、G335V、Q336R、V337M、E342V、S352L、K369I、G389R、R406Wおよび/またはR427Mを含むが、これらに限定されない。
好ましくは、本発明のタウタンパク質は、5位、257位、260位、266位、272位、279位、296位、301位、303位、305位、315位、317位、320位、335位、336位、337位、342位、352位、369位、389位、406位および/または427位のアミノ酸の置換ならびに280位および/または296位のアミノ酸の欠失からなる群から選択される少なくとも4個の異なった突然変異を有する。より好ましくは、本発明のタウタンパク質は、5位、257位、260位、266位、272位、279位、296位、301位、303位、305位、315位、317位、320位、335位、336位、337位、342位、352位、369位、389位、406位および/または427位のアミノ酸の置換ならびに280位および/または296位のアミノ酸の欠失からなる群から選択される少なくとも5個の異なった突然変異を有する。特定の実施形態において本発明のタウタンパク質は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むが、5位、257位、260位、266位、272位、279位、296位、301位、303位、305位、315位、317位、320位、335位、336位、337位、342位、352位、369位、389位、406位および/または427位のアミノ酸の置換ならびに280位および/または296位のアミノ酸の欠失から選択される少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個の異なった突然変異を有する。別の実施形態において本発明のタウタンパク質は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むが、5位、257位、260位、266位、272位、279位、296位、301位、303位、305位、315位、317位、320位、335位、336位、337位、342位、352位、369位、389位、406位および/または427位のアミノ酸の置換ならびに280位および/または296位のアミノ酸の欠失から選択される少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個の異なった突然変異を有する。別の実施形態において本発明のタウタンパク質は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むが、5位、257位、260位、266位、272位、279位、296位、301位、303位、305位、315位、317位、320位、335位、336位、337位、342位、352位、369位、389位、406位および/または427位のアミノ酸の置換ならびに280位および/または296位のアミノ酸の欠失から選択される少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個の異なった突然変異を有する。
より好ましくは、本発明のタウタンパク質は、[R5HまたはR5L]、K257T、I260V、L266V、G272V、N279K、delK280、[N296HまたはdelN296]、[P301LまたはP301S]、G303V、S305N、L315R、K317M、S320F、G335V、Q336R、V337M、E342V、S352L、K369I、G389R、R406WおよびR427Mからなる群から選択される少なくとも4個の異なった突然変異を有する。より好ましくは、本発明のタウタンパク質は、[R5HまたはR5L]、K257T、I260V、L266V、G272V、N279K、delK280、[N296HまたはdelN296]、[P301LまたはP301S]、G303V、S305N、L315R、K317M、S320F、G335V、Q336R、V337M、E342V、S352L、K369I、G389R、R406WおよびR427Mからなる群から選択される少なくとも5個の異なった突然変異を有する。特定の実施形態において本発明のタウタンパク質は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むが、[R5HまたはR5L]、K257T、I260V、L266V、G272V、N279K、delK280、[N296HまたはdelN296]、[P301LまたはP301S]、G303V、S305N、L315R、K317M、S320F、G335V、Q336R、V337M、E342V、S352L、K369I、G389R、R406WおよびR427Mからなる群から選択される少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個の異なった突然変異を有する。別の実施形態において本発明のタウタンパク質は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むが、[R5HまたはR5L]、K257T、I260V、L266V、G272V、N279K、delK280、[N296HまたはdelN296]、[P301LまたはP301S]、G303V、S305N、L315R、K317M、S320F、G335V、Q336R、V337M、E342V、S352L、K369I、G389R、R406WおよびR427Mからなる群から選択される少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個の異なった突然変異を有する。別の実施形態において本発明のタウタンパク質は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むが、[R5HまたはR5L]、K257T、I260V、L266V、G272V、N279K、delK280、[N296HまたはdelN296]、[P301LまたはP301S]、G303V、S305N、L315R、K317M、S320F、G335V、Q336R、V337M、E342V、S352L、K369I、G389R、R406WおよびR427Mからなる群から選択される少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個の異なった突然変異を有する。
さらに別の実施形態において本発明のタウタンパク質は、5位、257位、272位、279位、301位、305位、337位、389位および/または406位のアミノ酸の置換ならびに280位のアミノ酸の欠失からなる群から選択される少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個の異なった突然変異を有する。特定の実施形態において本発明のタウタンパク質は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むが、5位、257位、272位、279位、301位、305位、337位、389位および/または406位のアミノ酸の置換ならびに280位のアミノ酸の欠失からなる群から選択される少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個の異なった突然変異を有する。別の実施形態において本発明のタウタンパク質は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むが、5位、257位、272位、279位、301位、305位、337位、389位および/または406位のアミノ酸の置換ならびに280位のアミノ酸の欠失からなる群から選択される少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個の異なった突然変異を有する。別の実施形態において本発明のタウタンパク質は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むが、5位、257位、272位、279位、301位、305位、337位、389位および/または406位のアミノ酸の置換ならびに280位のアミノ酸の欠失からなる群から選択される少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個の異なった突然変異を有する。
この実施形態によれば本発明のタウタンパク質は、[R5HまたはR5L]、K257T、G272V、N279K、delK280、[P301LまたはP301S]、S305N、P301L、P301S、V337M、G389RおよびR406Wからなる群から選択される少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個の異なった突然変異を有してもよい。特定の実施形態において本発明のタウタンパク質は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むが、[R5HまたはR5L]、K257T、G272V、N279K、delK280、[P301LまたはP301S]、S305N、P301L、P301S、V337M、G389RおよびR406Wからなる群から選択される少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個の異なった突然変異を有する。別の実施形態において本発明のタウタンパク質は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むが、[R5HまたはR5L]、K257T、G272V、N279K、delK280、[P301LまたはP301S]、S305N、P301L、P301S、V337M、G389RおよびR406Wからなる群から選択される少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個の異なった突然変異を有する。別の実施形態において本発明のタウタンパク質は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むが、[R5HまたはR5L]、K257T、G272V、N279K、delK280、[P301LまたはP301S]、S305N、P301L、P301S、V337M、G389RおよびR406Wからなる群から選択される少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個の異なった突然変異を有する。
より好ましくは、本発明のタウタンパク質は、257位、301位、337位および/または406位のアミノ酸の置換ならびに280位のアミノ酸の欠失からなる群から選択される少なくとも4個の異なった突然変異を有する。特定の実施形態において本発明のタウタンパク質は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むが、257位、301位、337位および/または406位のアミノ酸の置換ならびに280位のアミノ酸の欠失からなる群から選択される少なくとも4個の異なった突然変異を有する。別の実施形態において本発明のタウタンパク質は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むが、257位、301位、337位および/または406位のアミノ酸の置換ならびに280位のアミノ酸の欠失からなる群から選択される少なくとも4個の異なった突然変異を有する。別の実施形態において本発明のタウタンパク質は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むが、257位、301位、337位および/または406位のアミノ酸の置換ならびに280位のアミノ酸の欠失からなる群から選択される少なくとも4個の異なった突然変異を有する。別の実施形態によれば本発明のタウタンパク質は、K257T、delK280、[P301LまたはP301S]、V337MおよびR406Wからなる群から選択される少なくとも4個の異なった突然変異を有する。特定の実施形態において本発明のタウタンパク質は、配列番号1、6または8に示されるアミノ酸配列を含むが、K257T、delK280、[P301LまたはP301S]、V337MおよびR406Wからなる群から選択される少なくとも4個の異なった突然変異を有する。
最も好ましくは、本発明のタウタンパク質は、少なくとも5個の異なった突然変異、すなわち257位、301位、337位および406位のアミノ酸の置換ならびに280位のアミノ酸の欠失を有する。特定の実施形態において本発明のタウタンパク質は、配列番号1、6または8に示されるアミノ酸配列を含むが、257位、301位、337位および406位のアミノ酸の置換ならびに280位のアミノ酸の欠失を有する。別の実施形態によれば本発明のタウタンパク質は、少なくとも5個の異なった突然変異K257T、delK280、[P301LまたはP301S]、V337MおよびR406W、例えばK257T、delK280、P301L、V337MおよびR406Wを有する。この実施形態によれば本発明のタウタンパク質は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含んでいてもよいが、突然変異K257T、delK280、[P301LまたはP301S]、V337MおよびR406W、例えばK257T、delK280、P301L、V337MおよびR406Wを有する。この実施形態のタウタンパク質は配列番号3に示されるアミノ酸配列を含んでいてもよく、これは最も好ましい実施形態である。別の実施形態において本発明のタウタンパク質は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含んでいてもよいが、突然変異K257T、delK280、[P301LまたはP301S]、V337MおよびR406W、例えばK257T、delK280、P301L、V337MおよびR406Wを有する。別の実施形態において本発明のタウタンパク質は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含んでいてもよいが、突然変異K257T、delK280、[P301LまたはP301S]、V337MおよびR406W、例えばK257T、delK280、P301L、V337MおよびR406Wを有する。
核酸、ベクターおよびプラスミド
本発明はさらに、本明細書に記載の本発明のタンパク質をコードする核酸に関する。
「核酸」は一般に、非修飾RNAもしくはDNAまたは修飾RNAもしくはDNAであってもよい任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを指す。このポリヌクレオチドは一本鎖もしくは二本鎖DNA、または一本鎖もしくは二本鎖RNAであってよい。当業者に公知の種々の有用な目的を果たすために、DNAおよびRNAに様々な修飾を行ってもよいことは容易に理解されるであろう。本明細書において「核酸」は、化学的、酵素的または代謝的に修飾された形態のポリヌクレオチド、ならびに細胞(例えば単純型細胞および複雑型細胞など)やウイルスに特徴的な化学的形態のDNAおよびRNAを含む。
当業者は本明細書に記載の情報および参考文献ならびに当技術分野において公知の方法を用いて、適切なタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸配列を容易に調製することができる(例えば、Sambrookら, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3rd ed. 2001, CSH Press, Cold Spring Harbor, N.Y.およびAusubelら, Short Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, 1992参照)。これらの方法には、タンパク質またはポリペプチドに関連性のある核酸試料を例えばゲノム源、化学合成物および/またはcDNA配列調製物より得、これを増幅するためにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用することが含まれる。当業者に公知の任意の適切な方法により例えばタウなどをコードするDNAを作製して使用してもよく、例えばコードDNAを採取し、発現させようとする末端部分のいずれかにおいて適切な制限酵素認識部位を特定し、この部分をDNAから切り出す方法が挙げられる。例えば部位特異的突然変異誘発などを用いて、タウをコードする配列に突然変異を導入することができる。
タウタンパク質をコードするcDNA配列は当技術分野において公知である(例えばGen−ID NM016834)。従って当業者は公知の技術によってDNAを操作して、所望のタウタンパク質またはその変異体をコードするポリヌクレオチドを容易に提供することができる。野生型タウのDNA配列を配列番号4に示す。
本発明のさらなる態様は、本発明の核酸を含むベクターおよびプラスミドである。
「ベクター」は、別のポリヌクレオチドセグメントの複製または発現ができるように該セグメントが機能可能に挿入されていてもよい、プラスミド、ファージ、コスミドまたはウイルスなどのレプリコンである。特に、ベクターはタウタンパク質またはその変異体をコードするポリヌクレオチドを含む、遺伝子工学において従来用いられるプラスミド、コスミド、ウイルスまたはバクテリオファージであってよい。当業者に公知の方法を用いて組換えウイルスベクターを構築することができる。例えば、Sambrookら, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3rd ed. 2001, CSH Press, Cold Spring Harbor, N.Y.およびAusubelら, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y.(1989)に記載の方法を参照されたい。
「組換え」は、例えば、単離されたポリヌクレオチドの遺伝子工学技術による操作または化学合成などを用いて、2つの離れた配列セグメントを人工的に組み合わせることによってポリヌクレオチド配列を作製することを意味する。
発現ベクターは、mRNAが合成されるように、目的とするタンパク質コード核酸配列に機能可能に連結されたプロモーターを含むであろう。宿主細胞として使用できる様々な細胞によって認識されるプロモーターは公知である。「機能可能に連結される」とは、プロモーターから転写を開始するのに適切な位置および方向に、プロモーターが同一核酸分子の一部として連結されることを意味する。プロモーターが機能可能に連結されたDNAはプロモーターの「転写制御下」にある。哺乳類宿主細胞におけるベクターによる転写はプロモーターによって制御されてもよく、このようなプロモーターとしては、例えばシミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られるプロモーター、例えばアクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーターなどの異種哺乳類プロモーター、熱ショックプロモーターなどが挙げられるが、これらのプロモーターは宿主細胞系に適合するものでなければならない。真核性宿主細胞に用いられる発現ベクターは、転写の終止およびmRNAの安定化に必要な配列も含むであろう。
本明細書において用いられるプロモーターは構成性プロモーターまたは誘導性プロモーターであってよい。好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドの誘導性発現は発現制御配列によって制御される。本発明のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNAの転写は、テトラサイクリンのような小型化合物やエクジソンのようなホルモンなどの外部シグナルの添加または除去によって誘導される。外部シグナルは温度の上昇や下降あるいは電離放射線であってもよい。また、誘導性発現は、メッセンジャーRNAによる誘導性翻訳の開始、またはmRNAの安定性が誘導によって制御される系によっても行うことができる。ポリペプチドの産生を誘導可能な発現制御配列としては、例えばGossenおよびBujard (1992) Proc Natl Acad Sci USA, 15; 89 (12): 5547-51; Gossenら(1995) Science, Jun 23; 268 (5218): 1766-9;およびKistnerら(1996) Proc Natl Acad Sci USA 93: 10933-10938に記載されているTet−off/Tet−onシステム、ならびにCreリコンビナーゼに基づく発現制御系が挙げられる。細胞培養およびトランスジェニック動物の両方に使用される別の誘導発現系は昆虫ホルモンであるエクジソンに基づいており、例えばHoppeら(2000) Mol Ther, 1: 159-164;またはNoら(1996) Proc Natl Acad Sci USA, 93: 3346-3351に報告がある。別の誘導発現系としては、26〜29℃の条件下で発現が可能となるGAL4システム(Ornitzら(1991) Proc Natl Acad Sci USA, Feb 1; 88 (3): 698-702)やラパマイシンによる条件発現系(Hoら(1996) Nature, Aug 29; 382 (6594): 822-6;およびPollockら(2000) Proc Natl Acad Sci USA, Nov 21; 97 (24): 13221-6)が挙げられる。温度感受性発現系はシンドビスウイルス発現カセット(Boorsmaら(2000) Nat Biotechnol, Apr; 18 (4): 429-32)に基づいており、主に細胞培養系の制御発現に適している。
また、本発明の発現ベクターは1種以上の選択遺伝子を含んでいてもよい。典型的な選択遺伝子は、抗生物質や他の毒素(例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサートまたはテトラサイクリン)に対する抵抗性を付与したり、栄養要求性欠損を補完したり、または複合培地からは得られない必須栄養素の補給を行うタンパク質をコードする。哺乳類細胞の選択マーカーとしてはDHFRやチミジンキナーゼが挙げられる。従って本発明は、複製開始点、必要に応じて構成性プロモーターまたは誘導性プロモーターに機能可能に連結された1種以上のタンパク質配列、転写終止配列およびマーカー遺伝子を含むことを特徴としてもよい。
本明細書に記載のポリヌクレオチドを含むベクターおよびプラスミドは、宿主細胞の種類に応じて選択される公知技術によって、宿主細胞内に移入することができる(下記参照)。
細胞、トランスフェクションおよび形質導入
本発明のさらなる態様は、本明細書に記載の核酸またはベクターもしくはプラスミドを含む細胞である。この細胞は単離細胞、すなわち組織などの自然環境中に存在する細胞ではないことが好ましい。この細胞は培地中の培養細胞であることがより好ましい。
上記の細胞は細胞培養で培養可能な生細胞であることが好ましい。上記の細胞は真核細胞であることが好ましく、哺乳類細胞であることがより好ましい。当技術分野において異種ポリペプチドの発現に利用可能な哺乳類細胞株としては、線維芽3T3細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、ヒト肝細胞(Hep G2)、および様々な種類の他の細胞が挙げられる。特定の実施形態において、本発明の細胞は神経細胞またはその前駆細胞である。本明細書において「神経細胞」は、マーカータンパク質である微小管関連タンパク質2(MAP−2)を発現する細胞である。この神経細胞はさらに、マーカータンパク質であるニューロフィラメントおよび/またはカルビンジンを発現してもよい。好適な神経細胞としては、好ましくは中枢神経系(CNS)の初代神経細胞、多能性幹細胞(ESおよびiPS)由来のニューロンおよび分化転換されたニューロンが挙げられるが、これらに限定されない。このような細胞は、例えばOttoら, Journal of Neuroscience Methods 128 (2003) 173-181(初代神経細胞); Pankratzら, 2007, Stem Cells 25(6): 1511-1520(ES細胞); Huら, 2010, PNAS 107(9): 4335-4340(iPS細胞);およびVierbuchenら, 2010, Nature 463, 1035-1041(分化転換されたニューロン)に報告がある。
神経細胞の前駆細胞を分化刺激に暴露させることにより、神経表現型を有する細胞に転換させることができる。通常、神経表現型への分化は、細胞培養中の前駆細胞に分化剤を添加することによって誘導できる。好適な前駆細胞としては、SH−SY5Y細胞(Agholmeら, 2010, Journal of Alzheimer’s Disease 20: 1069-1082)、Neuro2A細胞(Trembleyら, 2010, Journal of Neuroscience Methods 186: 60-67)、NG108−15細胞(Zhongら, Journal of Neurochemistry 68 (6): 2291-2299;ATCC HB−12317)、IMR32細胞(ATCC CCL−127)およびPC−12細胞(Schimmelpfenigら, 2004, Journal of Neuroscience Methods 139: 299-306)が挙げられるが、これらに限定されない。好適な分化剤としては、スタウロスポリン、レチノイン酸、トリコスタチンA、分化を促進する培地処方(例えばNeurobasal(A)+B27サプリメント、N2サプリメント)およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。
本発明の核酸、ベクターまたはプラスミドは、当業者に公知の方法を用いて上記の細胞に導入することができる。この導入は利用可能な任意の方法を用いて行ってよい。真核細胞に対して好適な方法には、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン、エレクトロポレーション、リポソームを介するトランスフェクション、およびレトロウイルスまたは他のウイルス(例えばワクシニア、昆虫細胞に対してはバキュロウイルスなど)を用いた形質導入が含まれていてもよい。上記のSambrookらの文献に記載されたような塩化カルシウムを用いるカルシウム処理、またはエレクトロポレーションは、通常、原核生物または強固な細胞壁バリアを含む他の細胞に用いられる。
本明細書において「形質導入」は、例えばアデノウイルス、AAV、レトロウイルス、またはプラスミドからなる送達遺伝子を移入する方法などの、ウイルスを介した送達システムを用いて、ポリヌクレオチドを真核細胞に送達および導入することを指す。これらの方法は当業者に公知であり、正確な構成および実施方法は本明細書の記載から明らかである。
本明細書において「トランスフェクション」は、ウイルスを介さない方法を用いてポリヌクレオチドを細胞に送達および導入することを指す。このような方法としては、例えば、リン酸カルシウムまたは硫酸デキストランを用いるトランスフェクション、エレクトロポレーション、ガラスを用いた遺伝子銃法(glass projectile targeting)などが挙げられる。これらの方法は当業者に公知であり、正確な構成および実施方法は本明細書の記載から明らかである。
トランスフェクションまたは形質導入は安定なものでも一過性のものでもよい。トランスフェクションまたは形質導入は一過性であることが好ましい。これは一般に細胞に導入されたDNA構築物が一時的に発現することを指す。
本明細書に記載の発現ベクターまたはクローニングベクターを用いてトランスフェクトまたは形質導入した宿主細胞は、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適するように改変された従来の栄養培地中で培養することができる。当業者は過度の実験を行うことなく、培地、温度、pHなどの培養条件を選択することができる。一般的に、細胞培養の生産性を最大にするための原理、手順および実際の方法は、“Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach”, M. Butler編, JRL Press, (1991)およびSambrookらによる上記の文献中に見いだすことができる。
インピーダンスの低下した細胞
本発明の別の態様は、電気インピーダンスの低下を示すことを特徴とする、突然変異タウタンパク質を発現する細胞である。この細胞は単離細胞、すなわち組織などの自然環境中に存在する細胞ではないことが好ましい。この細胞は培地中の培養細胞であることがより好ましい。
本発明のこの態様の細胞種の概要は上記と同じであり、細胞培養は確立された方法に従って行うことができる。遺伝子発現は、細胞中に導入された組換え核酸の配列に基づいた適切な標識プローブを用い、例えばノーザンブロット法によるmRNAの転写物の定量化、またはin situハイブリダイゼーションによって確認することができる。あるいは、遺伝子発現は、遺伝子産物の発現を直接定量化するための細胞の免疫組織化学的染色などの免疫学的方法によって測定してもよい。免疫組織化学的染色および/または試料液のアッセイに有用な抗体は、モノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよい。
突然変異タウタンパク質の発現は、タウに対する抗体を用いて検出することが好ましい。あるいは、突然変異タウタンパク質は、当技術分野において公知の方法によって検出できる異種ペプチド配列(例えばFLAGタグ、HAタグ)などの標識に融合させてもよい。一実施形態において、突然変異タウタンパク質は、例えば、EGFP、FLAGタグ、Strepタグなどの異種アミノ酸配列に融合させる。これにより、抗タウ抗体を用いたウェスタンブロットにおいて突然変異タウを特異的に検出できるようになる。この実施形態によれば、突然変異タウは、ウェスタンブロット上でのサイズの差により内因性の野生型タウと区別することができる。
突然変異タウは細胞において強度に過剰発現されないことが好ましい。一実施形態において、細胞中の突然変異タウの量は、同じ細胞種の細胞または対照細胞(例えばトランスフェクトされていない同じ細胞種の細胞など)において発現した野生型タウの10倍未満の量であることが好ましい。細胞中の突然変異タウの量は、同じ細胞種の細胞または対照細胞(例えばトランスフェクトされていない同じ細胞種の細胞など)において発現した野生型タウの5倍未満の量であることがより好ましい。細胞中の突然変異タウの量は、同じ細胞種の細胞または対照細胞(例えばトランスフェクトされていない同じ細胞種の細胞など)において発現した野生型タウの2倍未満の量であることがさらにより好ましい。細胞中の突然変異タウの量は、同じ細胞種の細胞または対照細胞(例えばトランスフェクトされていない同じ細胞種の細胞など)において発現した野生型タウの約75%〜約150%の量または約75%〜約125%の量であることが最も好ましい。発現レベルは、ウェスタンブロット法を行い、次いで抗タウ抗体および必要に応じて抗タグ抗体を用いて突然変異タウと内因性の野生型タウとを検出することによって測定することが好ましい。特定の実施形態においては、所望の発現レベルは公知のTet−on−offシステム(上記参照)などの誘導発現システムにより得られる。
異常な構造を有するタウタンパク質は特異的抗体を用いて検出することができる。このような抗体としては、モノクローナル抗体MC−1(Jicha,G.A., Bowser, R., Kazam, I. G., Davies, P., 1997, J. Neurosci. Res. 48 (2), 128-132)およびAlz50(Davisら, 1994, Journal of Neuroscience Research 39 (5): 589-594)が挙げられる。特定の実施形態において「突然変異タウタンパク質を発現する細胞」とは、モノクローナル抗体MC−1を用いて、好ましくは下記の図2に関して記載された実験条件を用いてタンパク質を検出できる細胞である。
cellular dielectric spectroscopy(CDS)または電気インピーダンス分光法(EIS)としても知られているインピーダンス分光法を用いて、規定した交流電流および/または電圧を印加することにより、単一細胞の受動的電気特性の周波数依存的変化を測定することができる。単一細胞のバイオインピーダンスは作用電極と対電極とを用いて測定することができる。種々の細胞パラメータ、例えば、細胞膜やオルガネラの細胞内膜の静電容量および抵抗、細胞外培地および内在性の細胞質の抵抗、細胞外マトリックス、ならびに細胞と電極との接触などによって細胞全体のインピーダンスが決定される。生細胞のインピーダンス変化を分析するために、交流電圧を生体試料に印加する。細胞内コンパートメントや分子の誘電特性に応じて、印加された電流は活動作用電極から細胞内部を通り抜けて流れることができ、残った電流は対電極により回収される。印加電圧の周波数に応じて、ある特定の細胞コンパートメントの変化を確認することができる。
本発明において、インピーダンス分光法はJahnkeらの文献(Lab Chip, 2009, 9, 1422-1428)の記載に従って行うことが好ましく、その開示を本明細書に援用する。細胞のインピーダンスを測定する装置はEP 2103933 A1に記載の装置であってよい。
この態様による細胞は、対照細胞と比較して低下した電気インピーダンスを有する。対照細胞は、突然変異タウを発現していないこと以外は突然変異タウを発現する細胞と同一の細胞である。例えば、対照細胞は本発明の細胞と同じ細胞種であるが、上記突然変異タウをコードする組換え核酸を含んでいない。好ましい実施形態において対照細胞は、本発明の細胞と同じ細胞種のトランスフェクトされていない細胞または野生型細胞である。別の実施形態において、対照細胞は、コード配列を有さないプラスミドなどのmockベクターでトランスフェクトされている。さらに別の実施形態において、対照細胞は、配列番号1、6または8で示されるタウなどの野生型タウをコードする核酸配列を含むベクターでトランスフェクトされた細胞である。後者の実施形態において、対照細胞中の野生型タウの発現レベルは、本発明の細胞における突然変異タウの発現レベルと実質的に同じである。
本発明の細胞の電気インピーダンスは、実施例2/図4で用いられた条件下で、突然変異タウを発現していない(トランスフェクトされていない)対照細胞と比較して、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、最も好ましくは少なくとも20%低下する。
本発明の細胞の電気インピーダンスはオカダ酸の非存在下で低下する。別の実施形態において、本発明の細胞の電気インピーダンスはオカダ酸などのホスファターゼ阻害剤の非存在下で低下する。好ましくは、本発明の細胞の電気インピーダンスはオカダ酸およびコンゴーレッドの非存在下で低下する。別の好ましい実施形態において、本発明の細胞の電気インピーダンスは、ホスファターゼ阻害剤(例えばオカダ酸)およびコンゴーレッドの非存在下で低下する。より好ましくは、本発明の細胞の電気インピーダンスは、オカダ酸、コンゴーレッドおよびホルムアルデヒドの非存在下で低下する。別のより好ましい実施形態において、本発明の細胞の電気インピーダンスは、ホスファターゼ阻害剤(例えばオカダ酸)、コンゴーレッドおよびホルムアルデヒドの非存在下で低下する。さらにより好ましくは、本発明の細胞の電気インピーダンスは、オカダ酸、コンゴーレッド、ホルムアルデヒドおよび任意の他の有毒物質の非存在下で低下する。最も好ましくは、本発明の細胞の電気インピーダンスは、ホスファターゼ阻害剤(例えばオカダ酸)、コンゴーレッド、ホルムアルデヒドおよび任意の他の有毒物質の非存在下で低下する。さらに別の実施形態において、本発明の細胞の電気インピーダンスは、ホスファターゼ阻害剤(例えばオカダ酸)、コンゴーレッド、ホルムアルデヒド、ポリアニオン性物質(例えばヘパリン、ポリグルタメート)および任意の他の有毒物質の非存在下で低下する。
好ましい実施形態において、本発明の細胞は、抗体MC−1により検出可能な突然変異タウを発現し、かつ実施例2で用いられた条件下で、突然変異タウを発現していない対照細胞と比較して少なくとも10%低下した電気インピーダンスを示す神経細胞である。
別の好ましい実施形態において、本発明の細胞は、
神経細胞またはその前駆細胞であって、
突然変異タウタンパク質を発現すること、および
細胞培養物中に分化剤を添加した後24時間以内に電気インピーダンスの低下を示し、この電気インピーダンスは実施例2/図で用いられた条件下において突然変異タウを発現していない対照細胞と比較して少なくとも10%低下していること
を特徴とする細胞である。
電気インピーダンスの低下は分化剤の添加後、好ましくは18時間以内、より好ましくは12時間以内、最も好ましくは6時間以内に認められる。さらに、毒物(例えば、オカダ酸、コンゴーレッド、ホルムアルデヒドなど)が細胞の培地中に存在しないことが好ましい。
本発明の方法および使用
一態様において本発明は、タウオパチーの治療剤または予防剤を同定するための方法であって、
(a)試験化合物と本発明の細胞とを接触させること、および
(b)該試験物質が、神経変性の指標となる少なくとも1種のマーカーを調節するかどうかを調べること
を含む方法に関する。
本発明によれば神経変性疾患または障害には、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、ピック病、前頭側頭型認知症、進行性核麻痺、大脳皮質基底核変性症、脳血管性認知症、多系統萎縮症および軽度認知障害が包含される。さらに、神経変性過程を含む状態として、例えば、虚血性脳卒中、加齢黄斑変性症、ナルコレプシー、運動ニューロン疾患、神経損傷および修復、ならびに多発性硬化症が挙げられる。
上記の神経変性疾患はタウオパチーであることが好ましい。「タウオパチー」とは、ニューロンにタウ凝集が存在すること、特に神経原線維変化が存在することを特徴とする障害および疾患である。典型的なタウオパチーは、アルツハイマー病;ならびにFTDP−17、ピック病、進行性核上性麻痺、グアム島の筋萎縮性側索硬化症/パーキンソニズム認知症複合および大脳皮質基底核変性症などの他の神経変性疾患である。
上記の神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、タウオパチーおよびプリオン病からなる群から選択されることが好ましい。上記の神経変性疾患はアルツハイマー病であることが最も好ましい。
本明細書において「マーカー」は、細胞レベルでの神経変性疾患の発症または存在を示す任意のパラメータを指す。好適なマーカーとしては、神経原線維変化の存在、インピーダンスの低下、タウのリン酸化、樹状突起/軸索ジストロフィー、軸索変性、β−アミロイド産生、シナプスジストロフィー、微小管および細胞骨格全体の機能性/統合性に基づく輸送/分布、プロテアソームの機能、細胞形態、細胞接着、シグナル形質導入、受容体分布/機能、ならびに影響を受けうる他の細胞機能のすべてが挙げられる。好ましいマーカーとしては、神経原線維変化の存在、インピーダンスの低下、タウのリン酸化、樹状突起/軸索ジストロフィー、軸索変性、β−アミロイド産生、シナプスジストロフィー、および細胞形態が挙げられる。
試験化合物が神経変性疾患の指標となるマーカーのレベルおよび/または活性を変化させることができる場合、該試験化合物は該マーカーを「調節」する。この調節はマーカーのレベルおよび/または活性の増加または減少であってよい。例えば、この調節は、タウのリン酸化、樹状突起/軸索ジストロフィー、軸索変性、シナプスジストロフィーおよび/または神経原線維変化の存在量の増加または減少であってよい。
細胞中の神経原線維変化の形成はGallyas鍍銀法とそれに続く光学/電子顕微鏡法または他の適切な方法によって確認してもよい(Braak, H.およびBraak, E. (1995) Neurobiol Aging 16, 271-8; discussion 278-84)。他の適切な方法の1つは、立体構造依存性抗体を利用することを含み、この立体構造依存性抗体は、神経原線維変化を起こした状態にあるタウ分子と他の凝集状態にあるタウ分子とを区別して認識および識別することができ、かつ例えば蛍光顕微鏡法および/または蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)法によって検出することが可能な抗体である。神経原線維変化の形成は、蛍光偏光分光法、蛍光相関分光法、蛍光相互相関分光法、蛍光強度分布分析、蛍光寿命測定、蛍光異方性測定、およびこれらの組み合わせなどの他の光学的手法を利用することによっても検出できるであろう。例えば、溶液中の対らせん状線維の形成および凝集をモニタリングし定量化する分析法がFriedhoffらによって報告されている(1998, Biochemistry, 37: 10223-30)。好ましい実施形態において、この立体構造依存性抗体は光学的に標識されており、蛍光標識されていることが好ましい。
別の実施形態によれば本発明の方法は、1以上のリン酸化部位すなわちSer198、Ser199、Ser202、T231、S235、S396、S404、S409、S413およびS422におけるリン酸化を同定することを含む。疾患に特異的なリン酸化部位におけるリン酸化を同定することにより、タウトランスフェクション細胞がAD様変性の過程にあることが確認できる。例えばSer202/Thr205(AT8部位として知られている)のリン酸化は診断マーカーエピトープとして同定されており、すなわちこれはアルツハイマー病における神経原線維変化の形成および神経細胞の欠損に先行する早期の神経変性を示すものである。別の実施形態において、本発明の方法はSer202および/またはThr205におけるリン酸化を同定することを含む。
タウのリン酸化エピトープまたはタウの非リン酸化領域を特異的に認識する好適な抗体を用いて、各エピトープにおけるタウのリン酸化の程度を確認してもよい。現在利用できる抗体は、例えばJohnson, G. V.およびHartigan, J. A. (1999), J Alzheimers Dis 1, 329-51に記載されているものが挙げられ、このような抗体は市販されている。タウのリン酸化エピトープの定量化は、ウェスタンブロット法およびそれに続く標準的な方法に従ったシグナルのデンシトメトリー分析により行ってもよい。
樹状突起または軸索のジストロフィー/変性は、生化学的判定、目視検査および/または好適なマーカー(例えばMackら, (2001) Nat Neurosci 4, 1199-206に詳細に記載されているようなニューロフィラメントの重鎖アイソフォームを検出する抗体など)を用いた組織切片(染色)標識により確認することができる。形態学的には、軸索のウォラー変性が、Beirowskiら, (2005) BMC Neurosci 6,6に詳細に記載されている。
シナプスジストロフィーは、生化学的判定、目視検査ならびに/またはシナプシンおよびシナプトフィジンなどの好適なマーカーを用いた組織切片標識(染色)により確認することができる(Ruttenら, 2005, Am J Pathol 167, 161-73)。
特定の実施形態において、本発明の方法は上記の細胞をβ−アミロイド前駆タンパク質(β−APP)またはその断片、誘導体もしくは変異体と共処理する工程をさらに含む(上記参照)。あるいは、β−アミロイド前駆タンパク質(β−APP)またはその断片、誘導体もしくは変異体を、好ましくは誘導システムの制御下で、上述のように上記の細胞において発現させてもよい。この実施形態は、β−アミロイド前駆タンパク質またはその断片、誘導体もしくは変異体をコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターを用いて、上記の細胞をトランスフェクトまたは形質導入する工程を含んでもよい。好ましい断片はβ−アミロイドペプチドAβ1−42である。このβ−アミロイドペプチドはより大きなI型膜貫通タンパク質であるβ−APPに由来し、β−APPは選択的スプライシングによりいくつかの種類の転写物を産生する。β−APPおよびAβ1−42のアミノ酸配列は、Kang J.ら(1987);Knauer M.Fら(1992);Homo sapiens APP(Gen−ID):NM 201414に記載されている。これらの配列を本明細書に援用する。
本明細書において「断片」は、例えば選択的スプライシング、切断または開裂により産生される転写産物または翻訳産物を含むことを意味する。本明細書において「誘導体」は、突然変異転写産物、RNA編集された転写産物、化学的に修飾された転写産物もしくは他の改変が加えられた転写産物、または突然変異翻訳産物、化学的に修飾された翻訳産物もしくは他の改変が加えられた翻訳産物を指す。例えば「誘導体」は、改変されたリン酸化、グリコシル化、アセチル化もしくは脂質化などの処理によって、または改変されたシグナルペプチド開裂もしくは他の種類の成熟開裂によって作製してもよい。これらの処理は翻訳後に行ってもよい。
上記の試験物質が、神経変性疾患の指標となる少なくとも1種のマーカーを調節するかどうかを調べる工程は、
(i)上記の試験物質に接触させた細胞または細胞培養物中のマーカーを測定する工程、
(ii)上記の試験物質に接触させていない細胞または細胞培養物(対照細胞または対照細胞培養物)中のマーカーを測定する工程、ならびに
(iii)必要に応じて(i)および(ii)で測定したマーカーのレベルまたは活性を比較する工程
を含んでいてもよい。
別の実施形態において、上記の試験物質が、神経変性疾患の指標となる少なくとも1種のマーカーを調節させるかどうかを調べる工程は、
(i)上記の試験物質に接触させた細胞または細胞培養物中のマーカーを測定する工程、
(ii)突然変異タウを発現しておらず、かつ上記の試験物質に接触させていない対照細胞(または対照細胞培養物)中のマーカーを測定する工程、ならびに
(iii)必要に応じて(i)および(ii)で測定したマーカーのレベルまたは活性を比較する工程
を含んでいてもよい。
この方法は、神経変性疾患の指標となるマーカーのレベルまたは活性を低下させることのできる試験化合物を、神経変性疾患の治療剤または予防剤として選択または同定する工程を含んでもよい。試験化合物によって該マーカーのレベルまたは活性を顕著に低下させることができれば、その試験化合物を選択することができる。好ましくは、該マーカーを定量的方法で測定可能な場合、対照細胞または対照細胞培養物と比較して、該マーカーのレベルまたは活性を少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、さらにより好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも50%低下させることができれば、その試験化合物を選択する。
特定の実施形態において、本発明の細胞の電気インピーダンスを顕著に上昇させることができれば、その試験化合物を選択することができる。好ましくは、試験化合物と接触さていない対照細胞または対照細胞培養物と比較して、本発明の細胞の電気インピーダンスを少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、さらにより好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも25%上昇させることができれば、その試験化合物を選択する。
別の特定の実施形態において、突然変異タウを発現していない対照細胞の電気インピーダンスと比較して、本発明の細胞の電気インピーダンスを10%未満、より好ましくは5%未満上昇させることができれば、その試験化合物を選択する。
この方法は本発明の細胞の生存率を測定する工程をさらに含んでもよい。この工程は、顕微鏡下での目視検査;生体染色色素ならびに正常脳および損傷脳中に存在する細胞種または成分に特異的な免疫組織化学的試薬を用いる染色;ニューロフィラメント、グリア線維性酸性タンパク質、S100、微小管関連タンパク質またはシナプスタンパク質に対する抗体との反応;代謝活性の生化学的評価;全タンパク質含量または特定のタンパク質含量の測定;細胞機能の評価;ならびに神経活動の評価などの方法を用いることによって行ってもよい。
細胞の健康状態を明らかにし、前処理した細胞培養物中に存在する生存細胞数の基準を得るために、細胞または細胞培養物の生存率/完全性を各実験の開始時に評価してもよい。
試験化合物
上記の方法で分析した化合物をランダムに選択することができ、あるいは合理的に選択もしくは設計することができる。本明細書において、同定されている他の活性化合物の構造を考慮せずにランダムに化合物を選択する場合に、「化合物をランダムに選択する」という。ランダムに選択される化合物としては、化合物ライブラリー、ペプチドコンビナトリアルライブラリー、微生物の増殖ブロスまたは植物抽出物を利用して選択される化合物が挙げられる。
本明細書において、非ランダムに化合物を選択する場合に、「化合物を合理的に選択または設計する」という。合理的な選択は、既に同定されている活性化合物の作用標的または構造に基づいて行うことができる。具体的には、アルツハイマー病の治療に用いるために現在研究中の化合物の構造を利用することによって、化合物を合理的に選択または合理的に設計することができる。
試験化合物は例えば、ペプチド、小分子、ビタミン誘導体、炭水化物であってよい。試験化合物は、核酸、天然もしくは合成ペプチド、天然もしくは合成タンパク質複合体または融合タンパク質であってもよい。試験化合物はまた、抗体、有機もしくは無機分子、有機もしくは無機組成物、薬物、または上記の薬剤の任意の組み合わせであってもよい。試験化合物は、試験、診断または治療を行う目的で用いてもよい。当業者は、本発明に従って用いられる試験化合物の構造特性には制限がないことを容易に理解できる。
試験物質の適用
実験の開始に当たっては、通常、本発明による細胞を含む細胞培養物を用意する。細胞の導入前に培地に試験化合物を加えてもよく、または細胞を培養皿に入れた後で試験化合物を培地に加えてもよい。一般的に、試験物質をまず適切なビヒクル、例えばDMSO、水、生理食塩水または培地など(ただしこれらに限定されない)に溶解して保存溶液を調製した後、培地中に希釈する。本発明を使用する場合、ビヒクル対照試験を含めてもよい。
様々な用量を試験することが好ましい。最初の試験範囲は、他の試験系における精製タンパク質、培養細胞または毒性に対する試験化合物またはそれと密接に関連する物質の効果に関する予備的知見から情報を得ることができる。このような知見がない場合、用量範囲は好ましくは約1nM〜約100μMである。当業者は特定の任意の化合物または一連の化合物の試験範囲を容易に設定することができる。
試験化合物を細胞または細胞培養物に適用する時間は、通常、約1時間〜約21日間、好ましくは約3時間〜約7日間、より好ましくは約6時間〜約3日間、最も好ましくは約18時間〜約2日間、例えば約24時間である。長期間適用する場合には、試験化合物を含む新しい培地を定期的に加えることができ、化学変換や代謝により試験化合物が速やかに消失する恐れがあれば試験化合物を含む新しい培地をより頻繁に加えることができる。特定の実施形態においては、本発明の細胞と上述の分化剤とを接触させる。細胞を試験物質に暴露する前(例えば24時間または48時間前)に細胞に分化剤を加えてもよく、または分化剤と試験物質とを同時に加えてもよく、次いで細胞をさらに培養する。必要な変更を加えてこれらの実施形態を上記の方法に適用する。
別の態様において本発明は、神経変性の1種以上のマーカーを調節することができる薬剤をスクリーニングするための、本発明のタウタンパク質、本発明の核酸、本発明のベクターもしくはプラスミドまたは本発明の細胞の使用に関する。
さらに別の態様において本発明は、神経変性疾患の治療剤または予防剤を開発するための、本発明のタウタンパク質、本発明の核酸、本発明のベクターもしくはプラスミドまたは本発明の細胞の使用に関する。
さらに別の態様において本発明は、タウオパチーを再現するための方法であって、
(a)本発明の細胞を提供する工程、および
(b)異常な構造を有するタウタンパク質の発現が可能な条件下で該細胞を培養する工程
を含む方法に関する。
以下、実施例を参照しながら本発明をより詳細に説明するが、下記の材料、方法および例示は本発明の態様を説明することのみを目的とし、本発明の範囲を限定するものではない。それゆえ、本発明を実施または試験する目的で、本明細書に記載された方法や材料と類似したものまたは等価なものを用いることができる。
下記の材料および方法を以下に記載する実施例において使用した。
EGFP融合タウを安定に発現するSH−SY5Y細胞株の作製
ヒト神経細胞から単離したmRNAからヒト野生型タウ(0N4)のcDNAをPCRにより増幅した。PCR中、BglII部位をタウ遺伝子の5’末端に、SalI部位を3’末端に導入した。PCR産物を、C末端にEGFPコード配列を融合したpEGFP−C1ベクターにクローン化した。レンチウイルスへ形質導入するために、EGFP−タウ野生型コード配列にBamHI(5’)およびXhoI(3’)制限部位を導入してPCRにより増幅し、レンチウイルス形質導入ベクターにクローン化した。EGFP−タウ(多重)突然変異体を部位特異的突然変異誘発(QuickChange Lightning、Stratagene)により得た。レンチウイルス粒子を作製するために、レンチウイルスTOPO発現キット(Invitrogen)を使用した。レンチウイルス粒子を用いてSH−SY5Y細胞株への形質導入を行い、EGFp−タウ構築物を安定に発現する細胞をブラストサイジンにより選択した。
細胞培養および細胞処理
ヒト神経芽腫SH−SY5Y細胞を、15%ウシ胎児血清(FBS)、非必須アミノ酸、glutamaxおよびペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)を添加したDMEM培地中で増殖させた。SH−SY5Y細胞の分化は、SH−SY5Y細胞を20nMスタウロスポリン(シグマアルドリッチ)と共に48時間培養することで誘導した。適切に実験を行うために、分化細胞を25nMのオカダ酸(シグマアルドリッチ)、または対照化合物試験の場合はSRN−003−556およびAR−A014418でそれぞれ処理した。
免疫細胞化学的試験
細胞をカバースリップ上で増殖させ、4%ホルムアルデヒドにより室温で30分間固定した後、0.1%Triton X−100で透過処理を行った。細胞を抗アセチル化タウ抗体(Abcam、1:1000)と共に室温で2時間培養した。PBSで3回洗浄後、細胞をCy3結合2次抗体(Dianova、1:100)と共に1.5時間培養した。核をDAPI(シグマアルドリッチ)で染色した。共焦点画像をNikon Eclipse C1 LSM顕微鏡を用いて撮影した。
ウェスタンブロット分析
細胞を採取し、プロテアーゼとホスファターゼ阻害剤カクテル(シグマアルドリッチ)とを加えた。タンパク質を超音波処理(Hielscher GmbH)により抽出し、タンパク質濃度をRoti−Nanoquant Assay(Carl−Roth GmbH)を用いて測定した。Laemmliサンプルバッファーを60μgの細胞溶解物に加えた。試料を10%SDS−ポリアクリルアミドゲル上で分離し、ポリフッ化ビニリデン膜上に電気的に転写した後、抗MC1特異抗体(Peter Davis Department of Pathology,Albert Einstein College of Medicine,1:100)を用い4℃で一晩かけて免疫標識した。二次抗体はホースラディッシュペルオキシダーゼ結合抗体を用いた(Dianova、1:5000)。特異的なタンパク質シグナルを、化学発光検出キット(Chemiluminescence Detection Kit,MobiTec)およびChemiDoc−XRS(BioRad)を用いて検出した。
インピーダンス測定
培養表面に金電極を含む自作の96ウェルアレイ上で細胞を培養した。SH−SY5Y細胞を96ウェルアレイ上で48時間分化させた。96ウェルアレイ用の自作のマルチプレクサユニットとインピーダンス測定器Agilent 4294A(Agilent Technologies)を用い、交流電圧10mV、周波数500Hz〜5MHz(電極間のバイアス:0mV)でインピーダンススペクトルを記録した。各実験について少なくとも5個のウェルを繰り返し測定した。すべてのインピーダンス強度スペクトルは自作のソフトウェアIDAT(Impedance Data Analysing Tool)で解析した。IDATは、細胞が存在しない電極に対する細胞に覆われた電極のインピーダンス(相対インピーダンス:(|Z|covered−|Z|cell−free)/|Z|cell−free×100%)を計算し、細胞層によって変化するインピーダンスが最大となる周波数を決定し選択する(96ウェルアレイ上のSH−SY5Y細胞では約100kHz)。さらに、経時的な相対インピーダンスをゼロ時点(100%)に対して正規化することで、異なったウェルおよび実験の比較ならびに総合的な統計解析を可能とした。実験は少なくとも3回繰り返した。
実施例1
第1の実施例において、複数の組み合わせのタウ多重突然変異体を作製し、ヒト神経芽腫細胞株中の導入遺伝子として試験した。全体像の理解を深め比較を行うための、タウ単一突然変異体(P301L)、タウ四重突然変異体ΔK280/P301L/V337M/R406W(dK280q)、タウ四重突然変異体K257T/P301L/V337M/R406W(K257Tq)およびタウ過剰突然変異体(Hyper)とも呼ぶタウ五重突然変異体K257T/ΔK280/P301L/V337M/R406Wを示す。タウ変異体導入遺伝子を同レベルで発現させるため、構築物はすべて同一のレンチウイルス発現系を用いて発現させた。ウイルスを感染させ、タウ変異体導入遺伝子をゲノム内に安定に組み込んだ形質導入細胞を選択した後、トランスジェニック細胞株を速やかに作製した。
予想外にも、オカダ酸のような有毒コファクターを添加せず(Jahnkeら、2009)かつタウ導入遺伝子を大量に過剰発現させなかったHyperタウ細胞株(図1、矢印参照)においてのみ、分化誘導(20nMスタウロスポリン)によって異常なタウ凝集が形成された。
分子レベルでの細胞株のより詳細な分析により、種々の条件下におけるミスフォールドしたタウタンパク質の蓄積が明らかになった(図2)。分析結果から、未分化の神経芽腫細胞株では、5個のFTD突然変異を有するHyperタウ変異体だけに、異常構造のミスフォールドしたタウ種が立体構造依存性抗体MC1によって検出されたことが示された(図2;上段)。この五重突然変異体は、別の刺激や処理を加えなくても異常なMC1構造を有するタウタンパク質を産生することから、「過剰突然変異」タウ変異体と称した。細胞を48時間または72時間分化させた後では、野生型変異体細胞株以外のすべての細胞株においてミスフォールドしたタウ種の大幅な増加が認められ、MC1構造を有するタウアイソフォームの濃度は五重突然変異体において最大であった。
興味深いことに、病的にミスフォールドしたタウ種はPAGE電気泳動において生理学的構造を有する種(すなわち野生型の対照タウ)よりもわずかに早く移動することから両者を区別することができ、おそらくこれは病的にミスフォールドしたタウ種はよりコンパクトな構造を有するためだと考えられる(図2;中段に全タウを示す;最もコンパクトでほぐれた構造のアイソフォームを矢印で示す)。この所見はまた、Jeganathanら(2008)が示唆した、立体構造依存性抗体MC1によって認識されるAD脳からの病的タウは、凝集しやすく微小管の安定化を妨げるコンパクトな「ペーパークリップ」構造を保持するという結果と完全に一致する。
さらに、「過剰突然変異」タウ変異体は微小管の完全性に関しても類のない特徴を示した。タウ突然変異体は非常に凝集しやすく、凝集することによってその生理学的機能を失うと考えられるだけでなく、何よりも有害な機能を獲得して特異的な神経毒性を示すようである(グリア細胞には影響を及ぼさない)。しかしこの有害機能の獲得の正確な特性は未だ不明である。3種の突然変異タウと野生型タウ対照細胞株中の微小管ネットワークの安定性を比較したところ(図3)、本発明者らはeGFP標識されたタウ導入遺伝子を発現する細胞中に安定な微小管の太い束を観察した(白色の矢印参照)。これらの細胞において、翻訳後修飾された安定な微小管のマーカーとしてのアセチル化チューブリンはトランスジェニックタウとの共局在性が高く、鮮やかな黄色の線維状パターンを示した。
一方、五重突然変異体MAPT遺伝子変異体を有する分化した神経細胞型細胞の亜集団では(図3D)、安定な微小管が明らかに消失していることが観察された(中抜きの矢印参照)。これらの細胞においては、タウ導入遺伝子が顕著に発現しているのにもかかわらず、共局在化している微小管は存在しなかった。ある一定の時間が経過した後、神経細胞分画において微小管がタウ毒性に依存して破壊されることにより、微小管ネットワークが徐々に消失していく可能性がある。タウ多重突然変異体は、影響を受ける細胞の割合を上昇させるか、微小管の破壊を相当に促進することによって、効果的な微小管病理学的モジュレータのスクリーニングを可能にすると考えられる。
凝集したタウオリゴマー(図1と同程度の大きさまたはさらに小さな前駆体)は微小管ネットワークを攻撃する有毒タウ種を構成している可能性があり、最終的には、重要な微小管依存性輸送機能を阻害する原因となり、細胞をゆっくりと萎縮させていると考えられる。さらに、上記の分析結果は、微小管に基づく軸索および樹状突起輸送、すなわちシナプス/脊椎の維持はADにおいて主にタウ依存変性による影響を受けているというエビデンスが多数報告されていることにも支持されるものである(例えばZempelら(2010)参照)。
実施例2
Hyperタウ突然変異体細胞株に特有な特性を明らかにするために、インピーダンス分光法を、高感度な標識を用いないリアルタイムモニタリング法として用いた。この方法の詳細はJahnkeら、2009に記載されている。第1工程において本発明者らは、タウタンパク質の過剰リン酸化を検出するためのAD関連インビトロアッセイに広く用いられている有毒ホスファターゼ阻害剤であるオカダ酸を用いた(図4)。
オカダ酸は一般にインビトロ実験において非生理的条件下でタウ過剰リン酸化を人工的に誘導するために用いられており、本発明者らは3時間後および6時間後に、Hyperタウ突然変異体に特異的な初期変性の影響をインピーダンス的に検出することができた。培養時間を長くするとオカダ酸の毒性副作用によりすべてのタウ突然変異体細胞株に全体的な細胞毒性が現れ、インピーダンスが強度に低下する。
病変を人工的に誘導し、それによって例えばインビトロでの過剰リン酸化および/または凝集などの特異的ではあるが完全には検証されたとは言えない標的に焦点を当てることに対する限界を克服するために、本発明者らは多重突然変異タウ、特に神経細胞分化への誘導のみによって神経病理学的表現型を示すHyperタウ突然変異体を利用した(図1参照)。すなわち野生型および多重突然変異タウ発現細胞を48時間分化させた後、インピーダンスを24時間モニタリングした(図5)。3種の実験を4〜6回繰り返した平均値から、単一突然変異体P301Lタウ発現細胞は野生型タウ発現細胞と同じインピーダンス特性を示すことが明らかとなった。野生型およびP301Lタウ発現細胞と比較して、四重突然変異体K257TqおよびdK280qは、20時間後に十分に低いインピーダンス値を示しているが、Hyperタウ発現細胞においては神経変性が誘発されているためさらに低い相対インピーダンスが示されている。
実施例3
Hyper突然変異タウに特有な効果を利用して機能性タウ病態インビトロスクリーニングアッセイを行うことにより、医薬有効成分候補を特定しその有効性を定量化することが可能であった。インピーダンス分光法によりモニタリングすることができる生理学的状態(野生型タウ発現細胞)と病的状態(Hyperタウ発現細胞)との間の差異を調べることで、化合物が病的な細胞変性を減弱する有効性を定量的に測定することができる。
本発明者らは一例として2種のキナーゼ阻害剤を用いてHyperタウに基づくスクリーニングアッセイの性能を明らかにした(図6)。詳細には、ERK2に中程度の特異性を有することが明らかになっているリード化合物であるSRN−003−556と、特異的GSK3β阻害剤であるAR−A014418を試験した。両阻害剤は、オカダ酸のような有毒化合物を用いる人工的過剰リン酸化に基づくタウ病態のインビトロアッセイにおいて治療効果を示した(LeCorreら(2006)、Selenicaら(2007)、Jahnke、未発表データ)。しかしながら、タウオパチーマウスモデルにおいてはSRN−003−556だけが治療効果を示し、AR−A014418は治療効果を示さなかった(LeCorreら(2006)、Selenicaら(2007))。
本発明者らはインピーダンス分光法に基づく機能性タウ病態インビトロスクリーニングアッセイを用いることにより、SRN−003−556の治療効果を示す24時間EC50値が35nMであると定量することができた。一方、AR−A014418は治療効果を示さなかった。
これらの結果から、例えば、(オカダ酸のような有毒化合物を用いることによる)キナーゼ媒介性過剰リン酸化、凝集促進物質およびリフォールディング/分解促進物質、オリゴマータウ構造または線維状タウ構造などのような、偽陽性の結果をもたらすことの多い仮説上の標的をあらかじめ定めていない新規多重突然変異体タウに基づくインビトロモデルは有用であることが分かる。さらに、インピーダンスのモニタリングでは、神経栄養効果(図6、SRN−003−556、100nM、6時間後および12時間後)や毒性効果(AR−A014418、0.1nM〜100nM、6時間後および12時間後)のような潜在的な副作用を検出できる可能性がある。機能性タウ病態インビトロスクリーニングアッセイにおいてタウ多重突然変異体を用いると、標的の特定および検証ならびに医薬有効成分候補の有効性の予測を極めて改善することができるであろう。
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配列表に示したアミノ酸配列およびヌクレオチド配列
配列番号1は野生型ヒトタウタンパク質のアミノ酸配列を示す(Homo sapiens microtubule−associated protein tau(MAPT):NM 016834/NP_058518)。
配列番号2は441個のアミノ酸を有するヒトタウアイソフォームのアミノ酸配列を示す。
配列番号3は野生型配列と比較して5個のFTDP−17突然変異を有する修飾ヒトタウタンパク質のアミノ酸配列を示す。
配列番号4は配列番号1をコードするヌクレオチド配列を示す。
配列番号5は配列番号3をコードするヌクレオチド配列を示す。
配列番号6および7はそれぞれヒトタウタンパク質の別のアイソフォームのアミノ酸配列およびヌクレオチド配列を示す。以下に詳細を示す。
LOCUS NM_005910 1326 bp mRNA linear PRI 03-APR-2011
DEFINITION Homo sapiens microtubule-associated protein tau (MAPT), transcript
variant 2, mRNA.
ACCESSION NM_005910 REGION 323..1648
VERSION NM_005910.5 GI294862262
配列番号8および9はそれぞれヒトタウタンパク質のさらに別のアイソフォームのアミノ酸配列およびヌクレオチド配列を示す。以下に詳細を示す。
LOCUS NM_001123067 1239 bp mRNA linear PRI 03-APR-2011
DEFINITION Homo sapiens microtubule-associated protein tau (MAPT), transcript
variant 5, mRNA.
ACCESSION NM_001123067 REGION: 323..1561

Claims (20)

  1. 17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP−17)に関連する突然変異からなる群から選択される少なくとも4個の異なった突然変異を含むタウタンパク質であって、
    (a)delK280、P301L、V337M、R406W、
    (b)K257T、P301L、V337M、R406W、
    (c)K257T、delK280、P301L、V337M、R406W、
    からなる群から選択される突然変異の組み合わせを少なくとも含むことを特徴とするタウタンパク質、
    ただし、前記アミノ酸の番号は配列番号2に示されるアミノ酸配列の番号に従う。
  2. 配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むが、前記(a)〜(c)からなる群から選択される突然変異の組み合わせを少なくとも有する、請求項1に記載のタウタンパク質。
  3. 配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載のタウタンパク質。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のタウタンパク質をコードする核酸。
  5. 配列番号に示されるヌクレオチド配列を含む、請求項4に記載の核酸。
  6. 請求項4または5に記載の核酸を含むプラスミドまたはベクター。
  7. 請求項4もしくは5に記載の核酸または請求項6に記載のベクターもしくはプラスミドを含む細胞。
  8. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の突然変異タウタンパク質を発現する細胞。
  9. 神経細胞の表現型を有する、請求項7または8に記載の細胞。
  10. 細胞培養の24時間後に、突然変異タウを発現していない対照細胞と比較してインピーダンスが少なくとも10%低下することを特徴とする、請求項7〜9のいずれか一項に記載の細胞。
  11. 神経変性疾患の治療剤または予防剤を同定するための方法であって、
    (a)試験化合物と請求項7〜10のいずれか一項に記載の細胞とを接触させること、および
    (b)該試験物質が、神経変性の指標となる少なくとも1種のマーカーを調節するかどうかを調べること
    を含む方法。
  12. 神経変性の指標となる前記マーカーが、細胞インピーダンス、神経原線維変化、タウのリン酸化、樹状突起/軸索ジストロフィー、軸索変性、軸索輸送およびシナプスジストロフィーからなる群から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
  13. 前記工程(b)が、
    (i)前記試験化合物の非存在下で前記細胞のインピーダンスを測定すること、
    (ii)前記試験化合物の存在下で前記細胞のインピーダンスを測定すること、および
    (iii)(i)で測定したインピーダンスと(ii)で測定したインピーダンスとを比較すること
    を含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
  14. 前記工程(b)が、
    (i)前記試験物質に接触させた前記細胞中の前記マーカーを測定すること、
    (ii)突然変異タウを発現しておらず、かつ前記試験物質に接触させていない対照細胞中の前記マーカーを測定すること、ならびに
    (iii)必要に応じて(i)および(ii)で測定した前記マーカーのレベルまたは活性を比較すること
    を含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
  15. (i)培地中で前記細胞を培養すること、
    (ii)前記試験化合物を該培地に加え、前記試験化合物の存在下で前記細胞を少なくとも1時間さらに培養すること、
    (iii)必要に応じて工程(ii)の前に前記マーカーを測定すること、および
    (iv)工程(ii)の後に前記マーカーを少なくとも1回測定すること
    を含む、請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記の培養時間が少なくとも12時間であることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
  17. 神経変性の1種以上のマーカーを調節することができる薬剤をスクリーニングするための、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタウタンパク質、請求項4もしくは5に記載の核酸、請求項6に記載のベクターもしくはプラスミドまたは請求項7〜10のいずれか一項に記載の細胞の使用。
  18. タウオパチーを再現するための方法であって、
    (a)請求項7〜10のいずれか一項に記載の細胞を提供する工程、および
    (b)異常な構造を有するタウタンパク質の発現が可能な条件下で該細胞を培養する工程
    を含む方法。
  19. 前記培養が、少なくとも、神経原線維変化を前記細胞中に検出できる時点まで行われることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
  20. 前記培養が、少なくとも12時間、好ましくは少なくとも18時間、最も好ましくは少なくとも24時間行われることを特徴とする、請求項18または19に記載の方法。
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