以下、添付図面を参照して本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置について説明する。図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置100の斜視図である。本実施形態のインクジェット記録装置100は、シリアルスキャン方式の記録装置であり、キャリッジ3が記録ヘッド2を搭載した状態でキャリッジ3が往復移動することで、記録ヘッド2が走査を行う。
キャリッジ3は、ガイド軸4によって摺動可能に支持され、矢印Aで示す主走査方向の移動が案内される。このキャリッジ3の移動は、不図示のキャリッジモータ及びその駆動力を伝達するタイミングベルト7等の駆動力伝達機構によって可能となる。詳しくは、キャリッジ3の移動範囲の一方の端部にはキャリッジモータに接続されたプーリ5が配置され、もう一方の端部にはアイドルプーリ6が配置されている。タイミングベルト7は、これらのプーリ5及びアイドルプーリ6の間に張架されており、そのタイミングベルト7にキャリッジ3が連結されている。また、ガイド軸4を中心としてキャリッジ3が回転するのを防ぐために、ガイド軸4と平行に延びるサポート部材(不図示)が設置されており、キャリッジ3はサポート部材によっても摺動自在に支持されている。
キャリッジ3には、記録ヘッド2と、その記録ヘッド2にインクを供給するインクタンクが着脱可能に搭載される。なお、記録ヘッド2とインクタンクとは、一体的にインクジェットカートリッジを構成するものであってもよい。
ロール状の記録媒体1は、記録動作に伴って繰り出されることにより、シート状となって搬送モータ(不図示)によって上記主走査方向と交差する方向(図中矢印B方向:副走査方向)に搬送される。記録動作時においては、搬送ローラ(不図示)によって所定の位置まで搬送された記録媒体1に対し、記録ヘッド2が記録走査を行う。すなわち、記録ヘッド2は、キャリッジ3がA方向へ移動する最中、記録データに応じた適切なタイミングで記録媒体1に向けてインクを吐出する。この記録走査が終了すると記録媒体1はB方向に所定量搬送し、次の記録走査を行う。このような記録走査と搬送動作とを交互に繰り返すことにより、記録媒体1には順次画像が形成されて行きプリントがなされる。
キャリッジ3の移動方向の側面(往復移動方向が垂線となる面)には、その詳細が図3およびそれ以降の図を参照して後述される光学式のセンサユニット13が搭載されている。このセンサユニットは、それがキャリッジ3と共に移動しつつ、センサの検出対象物である記録媒体1に記録されたパッチの濃度測定、記録媒体1のエッジ位置やパターンの検出など、複数の計測機能を有するマルチセンサである。
キャリッジ3は、フレキシブルケーブル(以下FFCと記す)9を介して、装置の制御部(図2)を構成する電気基板10と接続され、これにより、記録ヘッド2の各吐出口からのインク吐出や上記検出ユニットによる測定、検出を制御することができる。また、キャリッジ3に取り付けられたエンコーダセンサ12でリニアスケール11を読み取ることにより、キャリッジ3の位置情報を得ることができる。
図2は、本実施形態におけるインクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。図2において、記録装置の各部の動作は、ホスト装置210からの要求に応じて、ROM201内に格納された制御プログラム及びRAM202に格納された種々のデータなどに基づき、CPU200により制御される。すなわち、CPU200には、記録ヘッド2に設けられた記録素子を駆動させるヘッドドライバ203、キャリッジモータ204を駆動するモータドライバ205、搬送モータ206を駆動させるモータドライバ207などが接続されている。また、CPU200には、センサユニット13が接続されており、CPUからの指示に応じて発光素子が駆動されると共に、受光素子による検出結果がCPU200に出力される。
図3は、センサユニット13を側面から見た断面図である。また、図4は、センサユニット13を分解して示した斜視図である。
センサユニット13は、筺体32及びカバー35によって囲まれた空間の内部に、基板33及びレンズ部34(発光側レンズ34a、受光側レンズ34b)が配置されて構成されている。カバー35は、ビス36bによって筐体32に固定される。また、基板33はビス36aによって筐体32に取り付けられる。図4に示される矢印A方向は記録ヘッド2が走査を行う主走査方向を示しており、矢印B方向は記録媒体の搬送方向を示している。
図3に示されるように、センサユニット13は、リード線を用いずに基板に直接実装されるチップ型のLED301(発光素子)、ならびにリード線を用いずに基板に直接実装されるチップ型のフォトダイオード302(受光素子)を含む。これらの素子は、同一の基板33の面上にリード線を介さずに直接実装されている。具体的には、それぞれの素子の接続端子が基板上の接続端子に半田付けで接合されている。これにより、リード線などの、振動によって影響を受ける部材を排して素子の装着を行うことができる。それぞれの素子は、図2に示したCPU200による制御によってそれらの発光または受光のための駆動がなされる。また、発光素子301に対応して発光側レンズ34a(第1レンズ)が、また、受光素子302に対応して受光側レンズ34b(第2レンズ)が、それぞれ設けられている。LED301と発光側レンズ34aにより発光部が構成され、フォトダイオード302と受光側レンズ34bにより受光部が構成されている。
ここで、基板33、発光側レンズ34a、受光側レンズ34bはいずれも、筐体32を構成する同一の部材に対して取り付けられている。すなわち、基板33、発光側レンズ34a、受光側レンズ34bは同じ基準で取り付けられており、これら部品間で相対的な位置ずれが起きにくい構造となっている。LED301と発光側レンズ34aを含む発光部は発光素子とレンズとの位置ずれが起きにくく、フォトダイオード302と受光側レンズ34bを含む受光部も受光素子とレンズとの位置ずれが起きにくい。そして、発光部と受光部の間の位置ずれも起きにくい。
チップ型の発光素子301および受光素子302は、それぞれ基板33に直接取り付けられるため、光軸を傾けるための傾けた姿勢では取り付けられない。このため、本実施形態では、レンズを用いることにより、発光素子および受光素子の光軸の必要な傾きをそれぞれ発光側レンズおよび受光側レンズによって実現する。すなわち、発光側レンズ34aおよび受光側レンズ34bの少なくとも一方(本実施形態では発光側レンズ)を傾けて設けることにより、発光素子301および受光素子302それぞれに必要な光軸を実現する。
発光素子301からの光は発光側レンズ34aによって記録媒体に対して斜め方向(本実施形態では垂線に対して45度方向)から照射される。照射によって生じる散乱光のうち、記録媒体から垂直方向に散乱する光を含む上方に向かう散乱光は、受光側レンズ34bによって受光素子302に向けられる。こうして受光した受光素子301の出力から記録媒体に記録された画像の濃度を検出する。
基板33には、濃度以外の情報(記録媒体のエッジや記録媒体に形成されたパターンなど)を検出するための、その他のチップ型光学素子(発光素子:303〜305、受光素子:306〜307)が取り付けられている。LED301としては、白色LEDもしくはレッド、ブルー及びグリーンの3色のLEDが用いられる。ただし、これら検出には濃度ほどの検出精度は要求されないので、上述のようなレンズ部は設けずに、コスト増大を抑制するとともに組み立て性も向上させている。以上により、センサユニット13は濃度とそれ以外の情報の複数の検出機能を実現している。
記録ヘッド2がカラー記録に対応している場合には、記録ヘッド2によって吐出可能な複数のインク色の種類に対応するために、LED301として3色のLEDを用いることが好ましい。それぞれの色のLED302によって発光させることで、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック等の色のインクによって記録されたテストパターンの濃度を測定することができる。また、LED301として3色のLEDが用いられる場合には、フォトダイオード302は、それぞれの色について、可視光領域に感度を有するフォトダイオードが用いられる。
LED301に対応して配置された発光側レンズ34aによってLED301から発せられた光が集光される。これにより、発光された光のスポット径が縮小化されると共に、単位面積当たりの光量を増加させることができる。また、フォトダイオード302の外側には、LED301によって発光された光が記録媒体で反射した光を集光するための受光側レンズ34bが配置されている。
光側レンズ34aに上述のように角度を設けていることと、複数の光学素子201〜207を平らな単一の基板33に実装することにより、光学素子201〜207の位置精度が単一の基板33内で精度良く配置することができる。これにより、それぞれの光学素子の間の位置精度を高くすることができる。
以上のように、本実施形態のセンサユニット13において、LED301は、記録媒体に向けて光を発する。また、フォトダイオード302は、LED301から発せられた光が記録媒体で反射した光を受光する。そして、フォトダイオード302で受光した光量に基づいて検出を行う。センサユニット13による検出については、例えば、記録媒体に記録されたテストパターンの濃度を測定することができる。また、センサユニット13は、フォトダイオード302で受光した光量に基づいて、検出位置における記録媒体の有無を確認することもできる。すなわち、記録媒体における白地の光学濃度と、記録媒体の載置されているプラテンの光学濃度とが予めわかっていれば、受光量に基づいて、センサユニット13によって検出の行われた位置に記録媒体が存在しているかどうかを検出することができる。また、センサユニット13は、フォトダイオード302で受光した光量に基づいて、記録媒体の端部の位置を検出することができる。
以上のように、本実施形態では、基板33にそれぞれの光学素子がリード線などの接続部材を介さずに直接取り付けられている。これにより、プリンタの輸送中などに強い振動や衝撃が加わってもリード線の曲りや断線などのおそれがない。また、プリント中においても従来のようにリード線で支えられる素子が僅かに振動してしまうおそれもない。そのため、センサの信頼性を向上させることができる。また、光学素子のリード線がないことから、基板とセンサの配置スペースを小さくすることができ、センサユニット13を小型化することが可能となる。
とくに、濃度の検出では、僅かな受光光量の変化が濃度の検出精度に大きな影響を与える。この課題に対して本実施形態では、(1)チップ型の発光素子および受光素子を基板に実装して、振動の影響を受けやすいリード線での素子支持を排した。(2)基板およびレンズ部を同じ基準で筐体に保持することで両者の間の相対的な位置ずれを排した。これら2つの特徴の相乗的な作用により、信頼性の高い濃度検出を実現している。
以下では、上述したセンサユニット13の組立工程について説明する。まず、筺体32に対して基板33が位置決めされ、基板33が筐体32内に配置される。その状態で、ビス36aによって基板33が筐体32に取り付けられ、ビス36aの締めつけが行われる。次に、レンズ部34が筺体32の内部に設置される。その後に、基板33、レンズ部34が取り付けられた筺体32に、カバー35が取り付けられ、ビス36bによる締め付けが行われる。
図5は、筺体32に対して基板33が取り付けられる前の状態のセンサユニット13を示した斜視図である。筺体32の突き当て面32a、32bに対して基板33の突き当て面33bが押し当てられ、筺体32の突き当て面32cに対して基板33の突き当て面33aの面が押し当てられるように、基板33が筐体32内に配置される。このとき、図5に示される矢印Aと矢印Bの合成方向に押し当てることで基板33の筐体32内での位置決めが行われる。基板33の筐体32内での位置決めが行われると、基板33が突き当て面に接触した状態で、基板33がビス36a(図4参照)によって筐体32に固定される。このとき、ビス36aは、基板ビス穴33cを通って筺体ビス穴32dに固定される。これにより、基板33による筺体32への取り付けの際の位置精度が高く維持される。また、筺体32と基板33の位置決めを行う際には、より正確に取り付けを行うために治具が用いられても良い。治具を用いることにより、筺体32に対して二方向からの力を均等にかけることができ、さらに位置精度を高く維持することができる。
図6は、センサユニット13が分解され、レンズ部34の筺体32への取り付けのための筐体32の構成について示された正面図である。図7は、センサユニット13が分解され、カバー35とレンズ部34との突き当て面について示された斜視図である。図7に示されるように、発光側レンズ34aには、発光側レンズ34aの筐体32への突き当て面から突出した円柱状の突起34cが形成されている。また、発光側レンズ34aには、筐体32への突き当て面から突出し、断面が楕円の突起34dが形成されている。図6に示されるように、筐体32には、取り付け面丸穴37a及び長丸穴37bが形成されている。発光側レンズ34aの突起34cが筐体32の取り付け面丸穴37a内に挿入されることで位置決めされ、もう一方の発光側レンズ34aにおける突起34dが筐体32の長丸穴37bに挿入されてこれらが回転止めとして機能する。また、受光側レンズ34bについても同様に、受光側レンズ34bには、発光側レンズ34bの筐体32への突き当て面から突出した円柱状の突起34eが形成されている。また、受光側レンズ34bには、筐体32への突き当て面から突出し、断面が楕円の突起34fが形成されている。図6に示されるように、筐体32には、取り付け面丸穴38a及び長丸穴38bが形成されている。受光側レンズ34bの突起34eが筐体32の取り付け面丸穴38a内に挿入されることで位置決めされ、もう一方の発光側レンズ34bにおける突起34fが筐体32の長丸穴38bに挿入されてこれらが回転止めとして機能する。
また、筺体32に位置決めされたレンズ部34の位置を固定するために、レンズ部34の側面がカバー35によって押し込まれるようにそれぞれの部品が配置される。カバー35の内側にレンズ部34側面に倣った押し当て面35aが形成されることで、カバー35の押し当て面の全体により筺体32に対してレンズ部34を押し込むことができる。
このようにして、発光側レンズ34a及び受光側レンズ34bが筐体32に取り付けられて固定される。基板33とレンズ部34は、それぞれが筺体32内に設けられた突き当て面、取り付け面によって高い位置精度によって位置決めされる。筺体32内の部品寸法を規定することで、基板33とレンズ部34の相互の位置関係が決定される。
図8は、センサユニット13を底面から見て示した平面図である。カバー35によってレンズ部34を筐体32側に押し込むときの干渉を防ぐために、カバー35と筺体32との間には破線で示される隙間39aが設けられている。
さらに、本実施形態では、カバー35によってレンズ部34を筐体32側へ押し込むために、一点鎖線で示した接地面39bが形成される。さらに、この状態を保持したまま、図4及び図7に示されるビス穴35bにビス36bを通し、ビス36bが筐体32に締結される。このように、基板33及びレンズ部34が筐体32に取り付けられるので、基板33とレンズ部34との間の位置精度を高く保つことができる。
センサユニット13では、レンズ部34と、発光素子としてのLED301及び受光素子としてのフォトダイオード302の光を通す開口部と、の間の相互の位置精度が重要になってくる。これらの間の相互の位置精度が低下してしまうと、それが光学特性に影響を及ぼし、センサユニット13の性能に影響を及ぼすことになる。光学素子301〜307が実装された単一基板33が筺体32に対して固定され、レンズ部34が基板33の固定された筺体32に精度良く位置決めされることで、これらの間の相互の位置関係を高く維持することができる。また、レンズ部34及び基板33がビスによって筐体32によって締結されているので、輸送時の振動などの外乱に対して、基板33、レンズ部34の位置ずれによる光学特性の低下を抑えることが可能となる。
なお、本実施形態では光源としてLEDを用いたが、有機EL光源(OLED)、水銀ランプ、キセノンランプ等の光源を用いても良い。また、受光素子としてはフォトダイオードに限らず、CCD、CMOSセンサ、光電子増倍管等を用いても良い。
次に、本実施形態のセンサユニット13におけるレンズ部34の周辺の構成について説明する。図9は、本実施形態のセンサユニット13の模式的な側面図を示す。また、図10(a)は、センサユニット13を底面から見た平面図であり、図10(b)は、図10(a)のB−B線に沿う断面図である。図10(a)および(b)に示されるように、センサユニット13には、筐体32の底面に、筐体32から受光側レンズ34bの方へ延びた、「ひさし」のように張り出した、ひさし部14が形成されている。
ひさし部14は、受光側レンズ34bに対応する位置に配置されている。ひさし部14は、受光側レンズ34bよりも記録ヘッド2に近い部分から、記録媒体の配置される位置に向けて受光側レンズ34bから突出し、突出した部分が受光側レンズ34bの方に屈曲して形成されている。つまり、発光部および受光部の少なくとも一方と記録媒体との間で、発光部および受光部の光軸は遮らずに、キャリッジの移動方向に突出したひさし部14が設けられた構成になっている。
プリント中に記録ヘッドのインク吐出に起因したインクミストは、記録ヘッドの進行方向(走査方向;図中矢印Dで示す方向)とは逆方向に流れる。このインクミストは、図10(b)に示されるように、筐体32の底面において受光側レンズ34bの方へ延びた、ひさし部14によって、受光側レンズ34bへの付着が遮られながら主走査方向の下流へ流れる。これにより、受光側レンズ34bに対するインクミストの付着を抑制することができる。
記録ヘッド2からのインク吐出によってインミストが発生し、このミストは記録ヘッドの周辺部に浮遊する。この浮遊するインクミストは、記録ヘッド2の走査によって生じる気流の影響を受けてセンサユニット13に到達し、レンズ部34に付着する可能性がある。
図11は、比較例として、ひさし部14の形成されない形態の検出ユニットの断面図である。上述のようにして発生したミストは、図11に示されるように、ひさし部14の形成されないセンサユニットに到達すると、筐体32の壁面を回り込んで受光側レンズ34bに付着する。このようにインクミストが受光側レンズ34bに付着、付着するインクミストの量が多くなると、センサユニットによる検出結果に影響を与えてしまう可能性がある。これに対し、本実施形態では、上述したように、ひさし部14によってミストの付着を抑制することができる。
ここで、図10(a)および(b)に示すように、ひさし部14の底面における受光側レンズ34b側の端部(ひさし先端)を、ひさし部先端14aと定義する。また、センサユニット13の筐体32の一部であり、受光側レンズ34bを保持する保持面(記録媒体と平行)における、キャリッジ3(記録ヘッド2)から遠い側の端部を、保持面端部15と定義する。保持面および保持面端部15は、使用時において記録媒体の側から見て、センサユニットの最下面よりも奥(上方)に引っ込んだ位置にあり、且つ記録媒体に対して露出している。センサユニット13において、発光側レンズ34a、受光側レンズ34bが設けられた凹状の部位は、キャリッジ3の側は保持面からひさし部14までは壁で覆われているのに対して、反対のレンズ保持面端部15の側は壁が存在せずに開放されている。
そして、ひさし部先端14aとレンズ保持面端部15とを結ぶ直線Lの内側に、受光側レンズ34bの全体が収まるように、受光側レンズ34bとひさし部14とが関係付けられて形成されている。このような構造により、走査中に記録ヘッドの側からセンサユニット下面に流れ込むインクミストを含んだ気流が受光部の側に巻き込まれることを、ひさし部14が抑制する。そのため、受光側レンズ34bへのインクミストの付着量が非常に少なくなる。
センサユニット13は、記録ヘッド2及びキャリッジ3が、図11に示される矢印D方向に移動するときに主走査方向の下流側に位置するように、キャリッジ3に取り付けられている。すなわち、キャリッジ3が矢印D方向に移動しているときに、キャリッジ3はセンサユニット13よりも矢印D方向の上流側に位置するように、センサユニット13がキャリッジ3に取り付けられている。従って、キャリッジ3が矢印D方向に走査しているときには、ひさし部14が受光側レンズ34bよりも上流側に位置することになる。一方、記録ヘッド2及びキャリッジ3が、図10(b)に示される矢印D方向とは逆方向に移動している場合には、センサユニット13は、記録ヘッド2よりも上流側に位置することになる。従って、記録ヘッド2によるインクの吐出に伴って発生するインクミストは、記録ヘッド2の走査によって記録ヘッド2の下流側に流れるのみで、センサユニット13の位置には到達しない。このように、記録ヘッド2及びキャリッジ3が、図10(b)に示される矢印D方向に移動するとき、あるいは矢印D方向とは逆方向に移動するときのいずれの場合であっても、インクミストが受光側レンズ34bへ付着することを抑えることができる。
また、記録ヘッド2によって記録の行われている記録媒体にカール等が生じることにより、記録媒体の端部がセンサユニット13に向かって延びているような場合には、ひさし部14が受光側レンズ34bを保護することができる。このように、ひさし部14は、記録媒体の端部との接触からレンズ部34を保護する保護部材として機能することもできる。
本実施形態では、ひさし部14は、受光側レンズ34bへのインクミストの付着を少なく抑えるために、受光側レンズ34bに対応した位置のみに形成され、発光側レンズ34aに対応した位置にはひさし部は形成されていない。一般に、発光素子から発せられる光は光量が大きいので、発光側レンズ34aにインクミストが付着したとしても、それが検出結果に及ぼす影響は比較的低い。これに対し、受光素子側では、発光部で発せられた光が一旦記録媒体で反射したところで受光素子が受光するので、受光素子で受光する光の光量は比較的小さく、受光側レンズ34bにインクミストが付着したときの検出結果への影響は比較的大きい。そのため、発光側レンズ34aへのインクミストの付着の影響が無視できるくらいに小さいのであれば、図10に示されるように、発光側レンズ34aに対応する位置にはひさし部を設けなくても良い。
本実施形態において、発光側レンズ34aの側にひさし部を設けていない別の理由は、発光側レンズ34aは斜めに傾いて取り付けられて、レンズ下端がセンサ下面のぎりぎりまで迫っているためである。もし、ここにひさし部を設けるとレンズと物理的に干渉するので、大きなひさし部を設けることは難しい。つまり、センサの小型化を追求することを優先して、あえて一方にはひさし部を設けていないのである。
しかしながら、本発明はこれに限定されず、発光側レンズ34a及び受光側レンズ34bの両方に対応する位置に、ひさし部が形成される構成としても良い。この場合は、発光側レンズ34aの側のひさし部は、レンズとの干渉を避けて受光側レンズ34bのそれよりも小さくすることが好ましい。また、発光側レンズ34aへのインクミストの付着がセンサユニット13による検出結果に比較的大きく影響を及ぼすのであれば、発光側レンズ34aに対応する位置のみに、ひさし部14を設ける形態としても良い。
また、本発明は、本実施形態のような配置関係に限定されず、発光側レンズ34aと発光素子301を含む発光部と、受光側レンズ34bと受光素子302を含む受光部との位置関係は逆であってもよい。つまり、発光部と受光部の一方の光軸は記録媒体に対して斜めに傾いており、他方の光軸は記録媒体に対して垂直であり、ひさし部は少なくとも他方の光軸を持つ側に設けられているような構成であればよい。
また、ひさし部14によってインクミストの付着が抑えられる対象としては、発光側レンズ34a及び受光側レンズ34bに限定されない。発光素子による発光及び受光素子による受光に関与する構成であれば、その他の要素についてひさし部14によってインクミストの付着が抑えられるような構成であっても良い。センサユニットに発光側レンズ及び受光側レンズが用いられないような構成の場合、ひさし部14によって、光を通すための開口部へのインクミストの浸入が抑えられるような構成であっても良い。あるいは、ひさし部14によって発光素子及び受光素子への直接的なインクミストの付着が抑えられるような構成であっても良い。
また、本実施形態では、センサユニットを構成する筐体にひさし部14を設けているが、この形態には限定されない。すなわち、キャリッジ3のセンサユニット13が取り付けられる面に、上述のひさし部14と同一形状となる突出部を設けるようにしてもよい。つまり、プリント中は、キャリッジ3とセンサユニット13とは実質的に一体物とみなすことができるので、ひさし部はセンサユニット、キャリッジのどちらに設けられていたとしても、機能的には同じである。
本実施形態によれば、受光側レンズ34bに対応した位置に、ひさし部14が設けられている。従って、受光側レンズ34bに付着するインクミストの量を少なく抑えることができる。受光側レンズ34bへのインクミストの付着を少なく抑えることができるので、受光素子による検出結果の精度を高く維持することができる。従って、検出結果の精度の高いセンサユニットを提供することができる。また、受光側レンズ34bへのインクミストの付着が少なく抑えられるので、堆積したインクミストによって受光素子の機能が損なわれるのを抑えることができる。従って、受光素子の寿命を長く維持することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明を実施するための第2実施形態について説明する。上記の第1実施形態と同様の構成の部分については説明を省略し、異なる部分のみ説明することとする。
図12は、第2実施形態のセンサユニット13'を示す断面図である。第2実施形態では、レンズとして、発光側レンズと受光側レンズとが一体に形成されたレンズ部34'が用いられている。このように、レンズ部34'が一部品として形成されることにより、レンズ部34'の筐体32への取り付けの際に、発光側レンズと受光側レンズとの間の位置関係にずれが生じることを抑えることができる。また、レンズ部34'の筐体32への取り付けの際に、発光側レンズと受光側レンズとの取り付けが一度で済むので、レンズ部34'の取り付けのために位置精度が低下するのを少なく抑えることができる。また、発光側レンズと受光側レンズとの取り付けが一度で済むので、レンズ部34'の取り付けの工程を少なくすることができる。そのため、センサユニットの製造コストを低く抑えることができる。
(第3実施形態)
次に、本発明を実施するための第3実施形態について説明する。上記の第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成の部分については説明を省略し、異なる部分のみ説明することとする。
図13は、第3実施形態のセンサユニット13''を示す断面図である。第2実施形態では、レンズとして、発光側レンズと受光側レンズとが一体に形成されたレンズ部34'が用いられている。第3実施形態では、さらに発光側レンズ及び受光側レンズが一体に形成されたレンズ部34'と、基板33と、が一体に形成された部材40が用いられている。このように、レンズ部34'と基板33とが一部品として形成されることにより、部材40の筐体32への取り付けの際に、レンズと基板との間の位置関係にずれが生じることを抑えることができる。
また、部材40の筐体32への取り付けの際に、レンズと基板との取り付けが一度で済むので、部材40の取り付けのために位置精度が低下するのをさらに少なく抑えることができる。また、発光側レンズと受光側レンズとの取り付けが一度で済むので、部材40の取り付けの工程をさらに少なくすることができる。そのため、センサユニットの製造コストをさらに低く抑えることができる。
(第4実施形態)
次に、本発明を実施するための第4実施形態について説明する。上記の第1実施形態ないし第3実施形態と同様の構成の部分については説明を省略し、異なる部分のみ説明することとする。
図14は、第4実施形態におけるインクジェット記録装置で用いられているインクミスト回収経路を上方から見た平面図である。第4実施形態では、インクジェット記録装置の記録ヘッド2よりも記録媒体の搬送方向下流側の位置に、記録ヘッド2の周辺で発生したインクミストを吸引口54から吸引して回収できるように、ダクト51が配置されている。また、ダクト51には、ファン50が接続されている。ファン50を回転駆動させることでダクト51の吸引口54で吸引力を発生させ、ダクト51の吸引口54から記録ヘッド2の周辺で発生したインクミストを吸引して回収することができる。ファン50の回転駆動によって回収されたインクミストは、ダクト51を通じてインクジェット記録装置の外部へ排気される。このように、ダクト51の吸引口54は、プラテン8よりも記録媒体の搬送方向Bに沿った下流側に配置されている。そのため、ファン50の回転駆動によって生じる気流は、プラテン8に対して、搬送方向Bに沿って上流側から下流側に向かって流れる。
図15は、第4実施形態のインクジェット記録装置で用いられているセンサユニット13'''の断面図である。センサユニット13'''の記録媒体に対向する面(対向面)における発光側レンズ34a及び受光側レンズ34bの周囲には、記録媒体に対向した面から記録媒体の方へ突出した枠状のアパーチャ(突出部材)52が設けられている。本実施形態では、アパーチャ52は、発光側レンズ34a及び受光側レンズ34bの周囲を囲むように、配置されている。なお、ここではアパーチャ52は発光側レンズ34a及び受光側レンズ34bの周囲の全周に亘って発光側レンズ34a及び受光側レンズ34bを囲むように配置されているが、本発明は必ずしも周囲を囲むように配置されなくてもよい。記録媒体と対向する対向面における発光側レンズ34a及び受光側レンズ34bよりも記録媒体の搬送方向の少なくとも上流側に、アパーチャ52が設けられていればよい。
アパーチャ52が、センサユニット13'''の記録媒体に対向する面に取り付けられることにより、アパーチャ52の内側に開口部53が形成される。開口部53は、発光側レンズ34a及び受光側レンズ34bの光軸に対応する位置に形成されており、開口部53を光軸が通過するようにアパーチャ52がセンサユニット13'''に配置されている。
図16は、センサユニット13'''を底面から見て示した平面図である。発光側レンズ34a及び受光側レンズ34bの直下において、アパーチャ52がレンズ部34のそれぞれの光路を塞がないように、開口部53がレンズ部34のそれぞれの光路に位置するようにアパーチャ52が配置されている。開口部53は、発光側レンズ34a及び受光側レンズ34bとほぼ同等の大きさの開口形状に形成されている。発光側レンズ34aに対応する位置では、アパーチャ52が発光側レンズ34aに干渉しないように、発光側レンズ34aの外側に開口部53の端面が形成されている。また、受光側レンズ34bに対応する位置では、センサユニット13'''における筐体32の底面に形成されたひさし部14の外側に開口部53の端面が形成されている。
発光側レンズ34aの搬送方向Bに沿った上流側の位置には、アパーチャ52が配置されることによって凹領域Xが形成されている。凹領域Xは、アパーチャ52における搬送方向Bの下流側の端面と、発光側レンズ34aの取り付けられた領域との間に、アパーチャ52における記録媒体に対向した面(突出面)から凹むように形成されている。凹領域Xは、インクミストを捕獲して回収するための捕獲領域として形成されている。凹領域Xは、レンズ部34の一部であるが、発光側レンズ34a及び受光側レンズ34bの光軸からは外れた位置に形成されている。本実施形態では、凹領域Xは、平面である。凹領域Xにおける搬送方向Bに沿う長さLは、凹領域Xにおけるキャリッジの移動方向Cに沿う長さYの1/4以上である。より好ましくは、凹領域Xにおける搬送方向Bに沿う長さLは、凹領域Xにおけるキャリッジの移動方向Cに沿う長さYの1/2以上の長さである。図16に示されるように、本実施形態では、凹領域Xにおける搬送方向Bに沿う長さLが、凹領域Xにおけるキャリッジの移動方向Cに沿う長さYの1/2よりも長くなるように、開口部53が形成されている。
このような構成によって、ダクト51の吸引口54からインクミストの吸引が行われる際には、吸引口54からの吸引によって記録媒体の搬送方向Bに沿って気流が発生する。また、レンズ部34付近では、上流側の発光側レンズ34aから下流側の受光側レンズ34bに向かうにつれて記録媒体からの距離が大きくなるように構成されている。すなわち、発光側レンズ34aから記録媒体までの間隔より、受光側レンズ34bから記録媒体までの間隔が広くなっている。そのため、レンズ部34における上流側と下流側との間の気圧差によって、さらに多くの気流が記録媒体の搬送方向Bと同じ方向に沿って流れることになる。このとき発生した気流によってインクミストがレンズ部34に向かって流される。
上述したように、本実施形態では、発光側レンズ34a及び受光側レンズ34bの上流側に、凹領域Xが形成されている。従って、インクミストを含んだ気流の一部は、発光側レンズ34a及び受光側レンズ34bの付近を通過する前に凹領域Xの付近を通過することになる。このときの気流の流れる方向について、図18に示す。
図18に示されるように、インクミストを含んでレンズ部34に沿って流れる気流の一部は、センサユニット13'''に到達した後に、まず凹領域Xに衝突する。その後、気流は、発光側レンズ34aの位置に流れ込む。このようにセンサユニット13'''が構成されることにより、センサユニット13'''の下面に流れ込むインクミストを含んだ気流の一部は、発光側レンズ34aに到達する前に凹領域Xに衝突し、そこでインクミストが付着して回収されることになる。凹領域Xは、発光側レンズ34a及び受光側レンズ34bのそれぞれの光軸から外れた位置に形成されている。そのため、インクミストが凹領域Xに付着しても、そのことによるセンサユニット13'''による検出結果への影響は少ない。これにより、気流が発光側レンズ34a及び受光側レンズ34bに到達する際には、気流の中のインクミストが減少し、発光側レンズ34a及び受光側レンズ34bへのインクミストの付着量を少なくすることができる。
図17に、センサユニット13'''の底面にアパーチャ52が配置された第4実施形態の比較例としての、アパーチャ52が形成されない形態の検出ユニットについての断面図を示す。
比較例のセンサユニットでは、インクミストを含み、搬送方向Bと同じ方向に沿って流れる気流は、図17に示されるようにセンサユニットに到達するときに発光側レンズ34aに直接衝突する。そのため、気流に含まれるインクミストが、発光側レンズ34aに多く付着する可能性がある。そのため、比較例のセンサユニットでは、発光側レンズ34aに多くのインクミストが付着し、発光側レンズ34aから発せられる光量あるいは受光側レンズ34bで受光する光量が変化する可能性がある。これによって、センサユニットの検出結果が影響を受け、検出の精度が低下してしまう可能性がある。