本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
(概要)
はじめに、本発明の画像形成体(1)の概要について説明する。本発明の画像形成体(1)は、図1(a)に示すように、基材(2)上の少なくとも一部に再帰性反射材料(3)が積層されて成る。図1(b)は、図1(a)におけるX−X’線における再帰性反射材料(3)の断面図であり、再帰性反射材料(3)は、少なくとも、マイクロレンズ(5)と、マイクロレンズ(5)に隣接した光遮断層(6)を備える。本発明で用いる再帰性反射材料(3)は、図1(b)に示すように、マイクロレンズ(5)が接着樹脂層(4)に半球のみが埋没し、残りが表面に露出して成る。そして、接着樹脂層(4)に埋没したマイクロレンズ(5)一つ一つの表面に対応して隣接した光遮断層(6)が付与される構成となっている。なお、一般的には、再帰性反射材料(3)においてマイクロレンズ(5)の下面に存在するのは、「光を反射する材料」によって構成された「光反射層」と呼ばれるが、再帰性反射材料(3)に用いられている光を反射する材料の多くは、光を反射する特性の他に光を遮断する性質も有しており、本説明においては、本発明で必要とされる性質を鑑みて、便宜上、「光を遮断する材料」によって構成された「光遮断層(6)」とする。
本発明において、マイクロレンズ(5)一つ一つの大きさは同じ大きさでもよいし、異なる大きさであってもよい。図1(a)に示すように、マイクロレンズ(5)が配置される密度は、後述する画像(8)を形成するためにほぼ一様である必要があるが、固定されたピッチで規則的に配置される必要はない。なお、実際のマイクロレンズは、直径が20〜100μm程度であるため、目視で確認することができないが、図1(a)は、マイクロレンズ(5)が一様に配置されている状態を模式的に示している。
本発明において光遮断層(6)は、図1(b)に示すように、光遮断層(6)が基材(2)に対して、複数の異なる角度で部分的に除去された貫通孔が形成され、これによって、複数の画像(8)が形成される。以降、所定の方向に光遮断層(6)が部分的に除去された貫通孔のことを「画像要素(7)」として説明する。
図2(a)は、再帰性反射材料(3)を構成する光遮断層(6)に画像要素(7)が形成された状態を示す図である。本発明の画像形成体(1)を透過光下又は反射光下で平らな状態で観察すると、画像要素(7)の有無による明暗差又は色の差を観察することができるが、有意味な情報を観察することはできない。一方、図2(b)に示すように、本発明の画像形成体(1)を湾曲させて異なる方向から観察すると、湾曲した画像形成体(1)に対して観察者の視点(10)から見える範囲は、観察する方向毎に異なり、視点(10)の位置毎に画像形成体(1)に対する一部の表面を観察することとなる。そして、異なる方向から観察する観察者の視点(10)からは、画像要素(7)によって構成された画像(8)が変化して視認できる。なお、画像(8)を構成する画像要素(7)の詳細な構成、画像要素(7)を形成する方法、画像(8)が視認される原理については後述する。
以下、本発明の画像形成体(1)の詳細について説明する。なお、本発明の画像形成体(1)の構成を分かり易く説明するため、マイクロレンズ(5)が一定の間隔で、X軸方向とY軸方向にマトリクス状に配置された再帰性反射材料(3)について説明する。また、湾曲させて画像(8)を視認するときの条件の設定を、以下の通り行う。
本発明において、画像を(8)を観察するときの画像形成体(1)を湾曲させる方向は、任意の方向とすることができるが、本実施の形態においては、図2(a)及び図2(b)に示すように、再帰性反射材料(3)の中心であるO−O’線を基準として湾曲させ、図2(a)中の再帰性反射材料(3)の左端であるP−P’線と右端であるQ−Q’線の位置が合わさって円筒状に湾曲されるものとする。また、円筒状の断面は、真円となっているものとする。また、図2(a)に示す画像形成体(1)の横方向を「X軸」、縦方向を「Y軸」、基材(2)に対して垂直方向を「Z軸」とする。また、図2(b)に示す円筒状に湾曲させた画像形成体(1)に対しては、観察者の視点(10)から見たときの円周方向を「X軸」、高さ方向を「Y軸」、円筒の奥行き方向を「Z軸」として説明する。なお、円筒状に湾曲させた画像形成体(1)に対するZ軸は、異なる位置の観察者の視点(10)毎から見た奥行き方向のことであり、図2(b)に示す方向のみに限定されるものではない。
そして、本実施の形態では、円筒状に湾曲された画像形成体(1)の円の中心点(R)と、O−O’線を結ぶ線上に位置する観察者の視点(10)を基準として、45°ずつ異なる合計七つの方向から、画像(8)を観察するものとする。なお、図2(b)において、基準となる観察者の視点(10)の位置から、左側に角度がずれる場合は「正」の値の角度とし、右側に角度がずれる場合は「負」の値の角度として説明する。また、O−O’線上を観察する観察者の視点(10)は、図2(c)に示すように、円筒状に湾曲された画像形成体(1)に対して、鉛直方向(Z軸と平行)から観察するものとし、残りの45°ずつ異なる方向から観察する観察者の視点(10)においても、これと同様とする。
(基材)
本発明の画像形成体(1)は、透過光下又は反射光下によって、出現する画像(8)を観察するものである。画像形成体(1)を透過する光によって画像(8)を観察する場合、基材(2)には、光透過性を有した材料を用いる必要がある。このような材料としては、紙、プラスチックがあり、画像形成体(1)の真偽判別を要求される環境における照明条件に応じて、適正な透過率の基材(2)を適宜選択して用いる必要がある。仮に、蛍光灯の下で画像(8)を観察するためには、透過率が10%以上の材料を用い、太陽光の下で画像(8)を観察するためには、透過率が6%以上の材料を用いるのが好ましい。
画像形成体(1)を反射する光によって画像を観察する場合、基材(2)は、透過性を有する必要はなく、段ボールや、塗工紙、厚紙であっても良い。また、反射する光によって画像の視認性を向上させるために、基材(2)が発光材料を含む構成であっても良い。なお、本実施の形態では、はじめに、基材(2)が光透過性を有した材料の例で説明し、反射光で画像(8)を観察する構成については後述する。
(光遮断層)
光遮断層(6)については、太陽光や蛍光灯のような一般的な照明程度の光の透過を完全に遮る特性を有する必要があり、かつ、レーザーのような強い光を照射した場合に限っては、消失する特性を有する必要がある。光遮断層(6)は、具体的には一般的な再帰性反射材料に用いられているアルミ、金、銀、スズ、ニッケル、ステンレス等が適当である。また、接着樹脂層(4)としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ナイロン系樹脂、ゴム系樹脂、ビニル系樹脂などの各種合成樹脂を用いることができる。
(画像の構成)
本実施の形態は、図2(b)に示すように、湾曲させたときの観察する方向によって視認できる画像(8)として、「異なる方向から観察したときに視認できる文字(漢字の印)」を形成した例であり、七つの画像(8)が形成された画像形成体(1)について説明する。
以降、七つの画像(8)を区別するため、それぞれ、第1の画像(8A)、第2の画像(8B)、第3の画像(8C)、第4の画像(8D)、第5の画像(8E)、第6の画像(8F)、第7の画像(8G)として説明する。第1の画像(8A)は、図3(a)に示すように、「真正面から見た立体的な文字(漢字の印)」であり、第2の画像(8B)は、図3(b)に示すように、「左斜めから見た立体的な文字(漢字の印」であり、第3の画像(8C)は、図3(c)に示すように、「左横から見た立体的な文字(漢字の印」であり、第4の画像(8D)は、図3(d)に示すように、「左背面の斜めから見た立体的な文字(漢字の印」であり、第5の画像(8E)は、図3(e)に示すように、「右斜めら見た立体的な文字(漢字の印」であり、第6の画像(8F)は、図3(f)に示すように、「右横から見た立体的な文字(漢字の印」であり、第7の画像(8G)は、図3(g)に示すように、「右背面の斜めから見た立体的な文字(漢字の印」で構成される。続いて、第1の画像(8A)から第7の画像(8G)を形成する方法について説明する。
(画像の形成方法)
前述したように、画像(8)は、光遮断層(6)が部分的に除去された画像要素(7)によって形成され、画像要素(7)は、再帰性反射材料(3)に対して、マイクロレンズ(5)側からレーザー光(11)を照射することによって形成される。はじめに、第1の画像(8A)を形成する方法について説明する。
図4(a)は、レーザー加工装置(図示せず)からレーザー光(11)が照射されて、第1の画像(8A)が形成される状態を示す図である。本発明の画像形成体(1)において、第1の画像(8A)を形成する場合、図4(a)に示すように、基材(2)を湾曲させた状態で、レーザー光(11)の照射を行う。このとき、基材(2)上に一様に配置されたマイクロレンズ(5)のうち、第1の画像(8A)に対応する位置の複数のマイクロレンズ(5)に、レーザー光(11)が照射されて、第1の画像(8A)を構成する画像要素(7)が形成される。以降、第1の画像(8A)を構成する画像要素(7)を「第1の画像要素(7a)」として説明する。
ここで、基材(2)上に一様に配置されたマイクロレンズ(5)において、「第1の画像(8A)に対応する位置」について説明する。例えば、網点で形成される印刷物は、微小な点である網点が複数形成されることによって、一つの印刷画像が形成される。本発明においてもこれと同様であって、一つのマイクロレンズ(5)に形成される第1の画像要素(7a)は、第1の画像(8A)の一部を構成するだけであり、複数のマイクロレンズ(5)に形成される第1の画像要素(7a)が集まって、第1の画像(8A)が形成される。紙基材を湾曲させた状態で、印刷画像を構成する複数の網点を形成するのと同様にして、本発明では、湾曲した再帰性反射材料(3)のマイクロレンズ(5)にレーザー光(11)を照射して、複数の第1の画像要素(7a)を形成している。以降説明する第2の画像(8B)から第7の画像(8G)の対応する位置においても、これと同様である。
図4(b)は、図4(a)に示す画像形成体(1)をY軸方向から見た再帰性反射材料(3)に第1の画像(8A)が形成される部分の一部断面図である。図4(b)に示すように、第1の画像要素(7a)を形成するために照射されるレーザー光(11)の方向は、第1の画像(8A)を観察するときの視点(10)から円筒状に湾曲した画像形成体(1)を見る方向と同じである。すなわち、円筒状に湾曲した画像形成体(1)のO−O’線に対して鉛直方向(Z軸と平行)から、レーザー光(11)が照射される。
レーザー加工装置から照射されるレーザー光(11)は、マイクロレンズ(5)を通して、光遮断層(6)に照射され、光遮断層(6)が部分的に除去されて第1の画像要素(7a)が形成される。レーザー加工装置からのレーザー光(11)が、第1の画像(8A)に対応する位置のマイクロレンズ(5)に対して、同じ方向から照射されることで、湾曲させた状態の画像形成体(1)において、第1の画像(8A)を構成する複数の第1の画像要素(7a)は、図4(b)に示すように、同じ第1Gの方向(G1)に光遮断層(6)が除去された状態で形成される。以上の方法によって、再帰性反射材料(3)に第1の画像(8A)が形成される。
図5(a)は、第1の画像(8A)が形成された画像形成体(1)の平面図を示す図である。前述のように、マイクロレンズ(5)は、微小な大きさであるため、目視で確認することができないが、図5(a)は、一定の間隔でマトリクス状に配置された状態を示している。図4(b)に示す状態で形成された複数の第1の画像要素(7a)によって、再帰性反射材料(3)の一部の領域に第1の画像要素群(7A)が形成される。なお、図5(a)に示す第1の画像要素(7a)は、第1の画像(8A)である「真正面から見た立体的な文字(漢字の印)」に対応したマイクロレンズ(5)に位置するものではないが、第1の画像要素群(7A)が複数の第1の画像要素(7a)によって構成されることを説明するために、図示したものである。
画像形成体(1)が平面の状態では、前述の通り、第1の画像(8A)を観察することができないが、図5(a)は、画像形成体(1)に第1の画像要素群(7A)が形成される領域(3A)を示している。
図5(b)は、図5(a)に示す第1の画像(8A)が形成される領域(3A)のX1−X1’線、X2−X2’線及びX3−X3’線における、マイクロレンズ(5)に形成された第1の画像要素(7a)の拡大図である。図5(b)に示すように、X1−X1’線におけるマイクロレンズ(5)において、第1の画像要素(7a)は、基材面に対して水平な第1Fの方向(F1)を向く直線状に配置された状態となっている。なお、第1Fの方向(F1)は、円筒状に湾曲させた画像形成体(1)の円周方向であり、この形態の場合、X軸方向と同じ方向となる。また、ここでいう直線状とは、複数の第1の画像要素(7a)によって直線を構成するのではなく、第1の画像(8A)に対応した位置に配置される第1の画像要素(7a)が一つの直線状に配置されることである。
図5(b)に示すX2−X2’線及びX3−X3’線におけるマイクロレンズ(5)においても、これと同様であり、第1の画像要素(7a)は、基材面に対して水平な第1Fの方向(F1)を向く直線状に配置された状態となっている。このように、第1の画像要素群(7A)は、直線(X1−X1’線、X2−X2’線、X3−X3’線、・・・Xn−Xn’線)状に配置された複数の第1の画像要素(7a)が、更に、万線状に配置された構成となっている。
図5(c)は、第1の画像要素群(7A)が形成される領域(3A)のX1−X1’線における断面図である。画像形成体(1)が円筒状に湾曲した状態のとき、第1の画像要素(7a)は同じ第1Gの方向(G1)を向いているが、平らな状態では、図5(c)の破線で示すように、第1Fの方向(F1)に隣同士の光遮断層(6)において、第1の画像(8A)を構成する第1の画像要素(7a)は、異なる方向に向いた状態となっている。なお、第1の画像要素群(7A)の中で、X1−X1’線の直線状とは異なるX2−X2’線及びX3−X3’線における断面図については省略するが、図5(b)に示す断面図と同様に、第1Fの方向(F1)に隣同士の光遮断層(6)において、第1の画像(8A)を構成する第1の画像要素(7a)は、異なる方向に向いた状態となっている。
図6は、特許文献2の潜像画像形成体の一部断面図である。図6に示すように、特許文献2の潜像画像形成体は、一つの画像を構成する画像要素(7)が、同じ方向を向いた状態となっているのに対し、本発明の画像形成体(1)は、図5(c)に示すように、一つの画像を構成する画像要素(7)の向きが異なる。
図5では、マイクロレンズ(5)が規則的な間隔でマトリクス状に配置された再帰性反射材料(3)に第1の画像要素(7A)が形成された状態を示しているが、本発明においてマイクロレンズ(5)は、図1に示したように、必ずしも規則的に配置されていなくても良い。図7(a)は、不規則な間隔で一様にマイクロレンズ(5)が配置された再帰性反射材料(3)に第1の画像要素(7a)が形成された状態を示している。図7(a)に示すマイクロレンズ(5)は、一様に配置されたマイクロレンズ(5)に第1の画像要素(7a)が形成される構成の説明するため、便宜上、図5に示すマイクロレンズ(5)よりも小さい状態で図示しているが、前述のようにマイクロレンズ(5)は微小であり、図7(a)に示す構成の方が、より実際の再帰性反射材料(3)に近い状態である。
本発明において、不規則な間隔で一様にマイクロレンズ(5)が配置された再帰性反射材料(3)に対しては、照射するレーザー光のスポット径をマイクロレンズ(5)より大きくして、前述したように加工を行えば良い。図7(b)は、図7(a)に示すX1−X1’線における拡大図である。マイクロレンズ(5)の径に対して、レーザー光(11)のスポット径を大きくして加工することで、図7(b)に示すように、レーザー光(11)のスポット径の中に位置するマイクロレンズ(5)には、第1の画像要素(7a)が形成される。図7(b)に示す拡大図においては、マイクロレンズ(5)の位置毎に、第1の画像要素(7a)が形成される位置は異なるが、レーザー光(11)のスポット径の中で、直線状に配置されており、マイクロレンズ(5)と第1の画像要素(7a)自体は微小であるため、本発明の第1の画像(8A)を観察する際に、図7に示す複数の第1の画像要素(7a)による第1の画像(8A)と、図5に示す複数の第1の画像要素(7a)による第1の画像(8A)は同じように視認できる。このことからして、図7に示す第1の画像要素(7a)の状態も、本発明でいう直線状に配置される技術的思想の範囲に含まれる。
また、実際の再帰性反射材料(3)を構成する一つのマイクロレンズ(5)は、前述のように微小であるため、目視で確認することができず、一つ一つのマイクロレンズ(5)を狙ってレーザー光(11)を照射することは困難である。しかし、前述したようにマクロレンズ(5)は、一様に配置されているため、レーザー光(11)は、いずれかのマイクロレンズ(5)に照射され、図4、図5及び図7に示す第1の画像要素(7a)は必ず形成される。このことから、第1の画像要素(7a)同士の間に、レーザー光(11)が照射されないマイクロレンズ(5)もあり、第1の画像要素(7a)を形成する時に、必ずしも図4、図5及び図7に示すように連続して第1の画像要素(7a)を形成する必要はなく、これまでに説明した第1の画像要素(7a)が再帰性反射材料(3)上に形成されていれば良い。
従って、本発明において、隣同士の光遮断層(6)とは、第1の画像要素(7a)が形成される光遮断層(6)同士のことを指している。
以降の説明において、図4(b)に示すように、一つ一つに画像要素(7)を形成する時に照射されるレーザー光(11)の対象は、狭義の意味でマイクロレンズ(5)とし、画像(8)全体を形成するときに照射されるレーザー光(11)の対象は、広義の意味で再帰性反射材料(3)とする。
続いて、第2の画像(8B)を形成する方法について説明する。図8(a)は、レーザー加工装置(図示せず)からレーザー光(11)が照射されて、第2の画像(8B)が形成される状態を示す図である。第2の画像(8B)を形成する場合、図8(a)に示すように、円筒状に湾曲された画像形成体(1)に対して、45°傾いた方向からレーザー光(11)を照射して、第2の画像(8B)に対応する位置の複数のマイクロレンズ(5)に、画像要素(7)が形成される。以降、第2の画像(8B)を構成する画像要素(7)を「第2の画像要素(7b)」として説明する。
図8(b)は、図8(a)に示す画像形成体(1)をY軸方向から見た再帰性反射材料(3)に第2の画像(8B)が形成される部分の一部断面図である。円筒状に湾曲された画像形成体(1)に対して、45°傾いた方向の鉛直方向(Z軸と平行)からレーザー光(11)が照射されることで、第2の画像(8B)を構成する複数の第2の画像要素(7b)は、図8(b)に示すように、第2Gの方向(G2)に光遮断層(6)が除去された状態で形成される。以上の方法によって、再帰性反射材料(3)に第2の画像(8B)が形成される。
図9(a)は、第2の画像(8B)が形成された画像形成体(1)の平面図である。図8(b)に示す状態で形成された複数の第2の画像要素(7b)によって、再帰性反射材料(3)の一部の領域に第2の画像要素群(7B)が形成される。なお、図9(a)に示す第2の画像要素(7b)は、第2の画像(8B)である「左斜めから見た立体的な文字(漢字の印)」に対応したマイクロレンズ(5)に位置するものではないが、第2の画像要素群(7B)が複数の第2の画像要素(7b)によって構成されることを説明するために、図示したものである。図9(a)に示す平面図において、第2の画像要素群(7B)が形成される領域を符号(3B)で示し、太線の破線で示している。また、第1の画像要素群(7A)が形成された領域(3A)は、細線の破線で示している。図8(b)に示すように、45°異なる方向からレーザー光(11)が照射された結果、一部のマイクロレンズ(5)には、第1の画像要素(7a)と第2の画像要素(7b)が形成される部分が生じ、この部分のマイクロレンズ(5)は、第1の画像(8A)と第2の画像(8B)に共通するものである。そのため、図9(a)においても、第2の画像要素群(7B)が形成される領域(3B)と第1の画像要素群(7A)が形成される領域(3A)の一部は重複した領域となっている。
図9(b)は、図9(a)に示す第2の画像(8B)が形成される領域(3B)のX1−X1’線、X2−X2’線及びX3−X3’線における、マイクロレンズ(5)に形成された第2の画像要素(7b)の拡大図である。本実施の形態において、第2の画像要素(7b)は、第1の画像要素(7a)と同じ湾曲した状態で形成されることから、X1−X1’線、X2−X2’線及びX3−X3’線におけるマイクロレンズ(5)において、第2の画像要素(7b)は、基材面に対して水平な第1Fの方向(F1)を向く直線状に配置された状態となっている。そして、第2の画像要素群(7B)もまた第1の画像要素群(7A)と同様に、直線状に配置された第2の画像要素(7b)が万線状に配置された構成となっている。
図9(c)は、第2の画像(8B)が形成される領域(3B)のX−X’線における断面図である。画像形成体(1)が円筒状に湾曲した状態のとき、第2の画像要素(7b)は同じ第2Gの方向(G2)を向いているが、平らな状態では、図9(c)の破線で示すように、第2の画像(8B)を構成する第2の画像要素(7b)は、第1Fの方向に隣同士の光遮断層(6)において異なる方向に向いた状態となっている。また、第1の画像(8A)と第2の画像(8B)が重複する領域の光遮断層(6)には、図9(c)に示すように、第1の画像要素(7a)と第2の画像要素(7b)が形成される。なお、第2の画像要素群(7B)の中で、X1−X1’線の直線状とは異なるX2−X2’線及びX3−X3’線における断面図については省略するが、図9(c)に示す断面図と同様に、第1Fの方向(F1)に隣同士の光遮断層(6)において、第2の画像(8B)を構成する第2の画像要素(7b)は、異なる方向に向いた状態となっている。
続いて、第3の画像(8C)を形成する方法について説明する。図10(a)は、レーザー加工装置(図示せず)からレーザー光(11)が照射されて、第3の画像(8C)が形成される状態を示す図である。第3の画像(8C)を形成する場合、図10(a)に示すように、円筒状に湾曲された画像形成体(1)に対して、90°傾いた方向からレーザー光(11)を照射して、第3の画像(8C)に対応する位置の複数のマイクロレンズ(5)に、画像要素(7)が形成される。以降、第3の画像(8C)を構成する画像要素(7)を「第3の画像要素(7c)」として説明する。
図10(b)は、図10(a)に示す画像形成体(1)をY軸方向から見た再帰性反射材料(3)に第3の画像(8C)が形成される部分の一部断面図である。円筒状に湾曲された画像形成体(1)に対して、90°傾いた方向の鉛直方向(Z軸と平行)からレーザー光(11)が照射されることで、第3の画像(8C)を構成する複数の第3の画像要素(7c)は、図10(b)に示すように、第3Gの方向(G3)に光遮断層(6)が除去された状態で形成される。以上の方法によって、再帰性反射材料(3)に第3の画像(8C)が形成される。
図11(a)は、第3の画像(8C)が形成された画像形成体(1)の平面図である。以上に説明した方法で形成された複数の第3の画像要素(7c)によって、再帰性反射材料(3)の一部の領域に第3の画像要素群(7C)が形成される。なお、図11(a)に示す第3の画像要素(7c)は、第3の画像(8C)である「左横から見た立体的な文字(漢字の印)」に対応したマイクロレンズ(5)に位置するものではないが、第3の画像要素群(7C)が複数の第3の画像要素(7c)によって構成されることを説明するために、図示したものである。図11(a)に示す平面図において、第3の画像要素群(7C)が形成される領域を符号(3C)で示し、太線の破線で示している。また、第2の画像要素群(7B)が形成された領域(3B)は、細線の破線で示している。図10(b)に示すように、45°異なる方向からレーザー光(11)が照射された結果、一部のマイクロレンズ(5)には、第2の画像要素(7b)と第3の画像要素(7c)が形成される部分が生じ、この部分のマイクロレンズ(5)は、第2の画像(8B)と第3の画像(8C)に共通するものである。そのため、図11(a)においても、第3の画像要素群(7C)が形成される領域(3C)と第2の画像要素群(7B)が形成される領域(3B)の一部は重複した領域となっている。
図11(b)は、図11(a)に示す第3の画像(8C)が形成される領域(3C)の、X1−X1’線、X2−X2’線及びX3−X3’線における、マイクロレンズ(5)に形成された第3の画像要素(7c)の拡大図である。本実施の形態において、第3の画像要素(7c)は、第1の画像要素(7a)及び第2の画像要素(7b)と同じ湾曲した状態で形成されることから、X1−X1’線、X2−X2’線及びX3−X3’線におけるマイクロレンズ(5)において、第3の画像要素(7c)は、基材面に対して水平な第1Fの方向(F1)を向く直線状に配置された状態となっている。そして、第3の画像要素群(7C)もまた第1の画像要素群(7A)及び第2の画像要素群(7B)と同様に、直線状に配置された第3の画像要素(7c)が万線状に配置された構成となっている。
図11(c)は、第3の画像(8C)が形成される領域(3C)のX−X’線における断面図である。画像形成体(1)が円筒状に湾曲した状態のとき、第3の画像要素(7c)は同じ第3Gの方向(G3)を向いているが、平らな状態では、図11(c)の破線で示すように、第3の画像(8C)を構成する第3の画像要素(7c)は、第1Fの方向に隣同士の光遮断層(6)において異なる方向に向いた状態となっている。また、第2の画像(8B)と第3の画像(8C)が重複する領域の光遮断層(6)には、図11(c)に示すように、第2の画像要素(7b)と第3の画像要素(7c)が形成される。なお、第3の画像要素群(7C)の中で、X1−X1’線の直線状とは異なるX2−X2’線及びX3−X3’線における断面図については省略するが、図11(c)に示す断面図と同様に、第1Fの方向(F1)に隣同士の光遮断層(6)において、第3の画像(8C)を構成する第3の画像要素(7c)は、異なる方向に向いた状態となっている。
本実施の形態では、発明を分かり易く説明するため、一つのマイクロレンズ(5)に隣接した光遮断層(6)に二つの画像要素(7)が形成された例で説明するが、複数の画像(8)を形成するときの角度の差が小さくなるほど、一つのマイクロレンズ(5)に対応した光遮断層(6)に、更に多くの画像要素(7)が形成されることとなる。
第4の画像(8D)から第7の画像(8G)を形成する場合には、円筒状に湾曲させた画像形成体(1)に対してレーザー光の照射角度が異なる他は、これまでに説明した画像要素(7)の形成方法と同様にすれば良く、第4の画像(8D)を形成する場合には、135°傾いた方向の鉛直方向(Z軸と平行)から第4の画像(8D)に対応する位置の複数のマイクロレンズ(5)に、画像要素(7)を形成すれば良い。また、第5の画像(8E)を形成する場合には、−45°傾いた方向の鉛直方向(Z軸と平行)から第5の画像(8E)に対応する位置の複数のマイクロレンズ(5)に、画像要素(7)を形成すれば良い。また、第6の画像(8F)を形成する場合には、−90°傾いた方向の鉛直方向(Z軸と平行)から第6の画像(8F)に対応する位置の複数のマイクロレンズ(5)に、画像要素(7)を形成すれば良い。また、第7の画像(8G)を形成する場合には、−135°傾いた方向の鉛直方向(Z軸と平行)から第7の画像(8G)に対応する位置の複数のマイクロレンズ(5)に、画像要素(7)を形成すれば良い。
(画像の加工装置)
以上説明した七つの画像(8)を形成する方法において、画像要素(7)を形成するための加工装置(20)の一例を図12に示す。図12に示す加工装置(20)は、再帰性反射材料(3)を備えた基材(2)を載せるための回転ステージ(23)と、レーザー光(11)を照射するレーザー加工装置(22)と、回転ステージ(23)の回転を制御するとともに、レーザー加工装置(22)によるレーザー光(11)の照射する位置を制御するコンピュータ(21)で構成される。なお、主軸の回転によって、回転ステージ(23)を自在に回転させて角度を変更することができる。このような加工装置(20)を用いて、第1の画像(8A)に相当する位置の再帰性反射材料(3)にレーザー光(11)を照射し、以降は、45°ずつ回転させて、第2の画像(8B)から第7の画像(8G)に相当する位置の再帰性反射材料(3)にレーザー光(11)を照射することで、本発明の画像形成体(1)を作製することができる。なお、レーザー加工装置(22)で用いる光の波長としては、マイクロレンズ(5)を傷つけることなく透過し、かつ、光遮断層(6)に欠損を生じさせる特性を必要とすることから、可視波長か、それに近い赤外線であることが望ましい。具体的にはYAG、サファイア、YVO4等のレーザーが適している。
(画像の視認原理)
続いて、本実施の形態の画像形成体(1)において、異なる方向から観察したときに、第1の画像(8A)から第7の画像(8G)が視認される原理について説明する。
図13(a)は、円筒状に湾曲させた画像形成体(1)を、七つの異なる方向から観察する状態を示す図である。図13(b)は図13(a)をY軸上から見た図である。
本実施の形態の画像形成体(1)を観察する場合、図13(a)及び図13(b)に示すように、円筒状の画像形成体(1)の中心側に光源(9)を配置し、画像形成体(1)を挟んだ反対側に視点(10)が位置した状態で、画像形成体(1)を透過する光を観察する。なお、本発明の画像形成体(1)を観察するとき、光源(9)として、蛍光灯やLED等の照明装置を用いて観察しても良いし、照明装置を用意することなく、日常生活で得られる太陽光や、蛍光灯の下でも、光が円筒状の画像形成体(1)の内部の回り込むため、画像(8)を観察することができる。
また、本発明において、画像形成体(1)を観察するときの画像形成体(1)の湾曲状態と、第1の画像(8A)から第7の画像(8G)を形成するときの湾曲状態は同じである。また、円筒状に湾曲した画像形成体(1)に対して、第1の画像(8A)から第7の画像(8G)を観察する七つの方向は、第1の画像(8A)から第7の画像(8G)を形成するときに、円筒状の画像形成体(1)に対してレーザー光(11)を照射する方向と同じである。
以降、第1の画像(8A)を形成するときにレーザー光(11)が照射される方向から見た観察者の視点の符号を(10A)とし、第2の画像(8B)を形成するときにレーザー光(11)が照射される方向から見た観察者の視点の符号を(10B)とし、第3の画像(8C)を形成するときにレーザー光(11)が照射される方向から見た観察者の視点の符号を(10C)とし、第4の画像(8D)を形成するときにレーザー光(11)が照射される方向から見た観察者の視点の符号を(10D)とし、第5の画像(8E)を形成するときにレーザー光(11)が照射される方向から見た観察者の視点の符号を(10E)とし、第6の画像(8F)を形成するときにレーザー光(11)が照射される方向から見た観察者の視点の符号を(10F)とし、第7の画像(8G)を形成するときにレーザー光(11)が照射される方向から見た観察者の視点の符号を(10G)として説明する。
視点(10A)から観察すると、光源(9)の光は、基材(2)を透過し、更に、画像要素(7)が形成された部分を透過する。再帰性反射材料(3)は、入射した光が光反射層(6)によって、入射した方向と同じ方向に光を反射する性質があるが、本発明のように、光遮断層(6)を除去した画像要素(7)を形成した場合、画像要素(7)を透過するときの光の方向のみに強く光を透過させる性質がある。このとき、図14に示すように、第1の画像要素(7a)が観察者の視点(10A)に対して同じ第1Gの方向(G1)を向いており、複数の第1の画像要素(7a)を透過した光のみが、観察者の視点(10A)に達する。一方、光源(9)の光は、第2の画像要素(7b)と第5の画像要素(7e)も透過するが、マイクロレンズ(5)によって、屈折されることから、観察者の視点(10A)に届くか、届いたとしても透過光量は極めて小さくなり、第1の画像(8A)の視認性に影響することはない。この結果、複数の第1の画像要素(7a)を透過する光の集合によって、「真正面から見た立体的な文字(漢字の印)の画像」である第1の画像(8A)を視認することができる。
同様の原理によって、視点(10B)から観察した場合、図14に示すように、第2の画像要素(7b)は、観察者の視点(10B)に対して同じ第2Gの方向(G2)を向いており、第2の画像要素(7b)を透過する光のみが観察者の視点(10B)に達し、複数の第2の画像要素(7b)を透過する光の集合によって、「左斜めから見た立体的な文字(漢字の印)の画像」である第2の画像(8B)を視認することができる。また、視点(10C)から観察した場合、図14に示すように、第3の画像要素(7c)は、観察者の視点(10C)に対して同じ第3Gの方向(G3)を向いており、第3の画像要素(7c)を透過する光のみが観察者の視点(10C)に達し、複数の第3の画像要素(7c)を透過する光の集合によって、「左横から見た立体的な文字(漢字の印)の画像」である第3の画像(8C)を視認することができる。また、視点(10D)から観察した場合、図14に示すように、第4の画像要素(7d)は、観察者の視点(10D)に対して同じ第4Gの方向(G4)を向いており、第4の画像要素(7d)を透過する光のみが観察者の視点(10D)に達し、複数の第4の画像要素(7d)を透過する光の集合によって、「左背面の斜めから見た立体的な文字(漢字の印)の画像」である第4の画像(8D)を視認することができる。また、視点(10E)から観察した場合、図14に示すように、第5の画像要素(7e)は、観察者の視点(10E)に対して同じ第5Gの方向(G5)を向いており、第5の画像要素(7e)を透過する光のみが観察者の視点(10E)に達し、複数の第5の画像要素(7e)を透過する光の集合によって、「右斜めから見た立体的な文字(漢字の印)の画像」である第5の画像(8E)を視認することができる。また、視点(10F)から観察した場合、図14に示すように、第6の画像要素(7f)は、観察者の視点(10F)に対して同じ第6Gの方向(G6)を向いており、第6の画像要素(7f)を透過する光のみが観察者の視点(10F)に達し、複数の第6の画像要素(7f)を透過する光の集合によって、「右横から見た立体的な文字(漢字の印)の画像」である第6の画像(8F)を視認することができる。また、視点(10G)から観察した場合、図14に示すように、第7の画像要素(7g)は、観察者の視点(10G)に対して同じ第7Gの方向(G7)を向いており、第7の画像要素(7g)を透過する光のみが観察者の視点(10G)に達し、複数の第7の画像要素(7g)を透過する光の集合によって、「右背面の斜めから見た立体的な文字(漢字の印)の画像」である第7の画像(8G)を視認することができる。
このように、本発明の画像形成体(1)は、湾曲した状態で画像(8)を形成することで、特許文献1に記載される技術よりも、広い観察角度で画像(8)を視認することができ、立体、動画、チェンジ効果を高めることができる。
以上に説明した画像形成体(1)は、透過光下で画像(8)が観察できる構成であるが、続いて、反射光下で画像(8)が観察できる構成について説明する。この場合、基材(2)は、前述のように光透過性を有する必要はなく、段ボールや、塗工紙、厚紙等を用いる。また、湾曲可能なものであれば、紙材に限定されるものはなく、金属板、プラスチックを用いても良い。基材(2)が異なること以外の構成は、前述した画像形成体(1)と同様であるので説明を省略し、続いて反射光下で画像(8)が視認できる原理について説明する。
図15は、反射光下で円筒状に湾曲した画像形成体(1)を、視点(10A)から観察する状態を示す図である。図15の光源(9)からの光は、マイクロレンズ(5)を透過して光遮断層(6)に到達する。そして、光遮断層(6)が残っている部分では、マイクロレンズ(5)を透過した光がそのまま反射され、一方の、画像要素(7a)が形成された部分は、光が透過し、基材(2)によって反射される。このとき、光遮断層(6)は、前述した金属材料で構成されているため、反射光が強く、基材(2)に紙材を用いる場合、紙材(2)に到達した光の吸収と散乱が生じるため、反射光は弱くなる。結果的に、視点(10A)から観察すると、画像要素(7a)の有無によって、反射光の明暗差が生じて、画像(8)を視認することができる。
また、基材(2)が可視発光材料を含む場合には、画像要素(7)を透過した光によって、基材(2)が可視光領域の波長を含む光で発光して光が反射される。そして、画像要素(7)が形成された部分は、発光材料の発光色が視認でき、画像(8)が発光色の色で視認できる。なお、発光材料としては、紫外線励起可視発光材料、赤外線励起可視発光材料、可視光励起可視発光材料があり、特定波長の光を照射することにより可視発光する公知の材料を使用することができる。このような材料を、樹脂と混合して、基材(2)に塗布しても良いし、基材(2)に含浸させても良い。
本実施の形態では、観察する方向に応じて視認できる画像(8)として、「異なる方向から観察した立体的な文字(漢字の印)」を例に形成したが、本発明の画像形成体(1)に形成する画像(8)は、これに限定されるものではなく、例えば、それぞれの画像(8)を相互に相関のある動きを表現した画像とし、パラパラ漫画のように画像の動きを表現する動画的構成や、それぞれの画像(8)を全く異なる図柄で構成し、一つの画像から、全く相関のない画像に変化する、いわゆるチェンジングと呼ばれる画像変化に富んだ構成であっても良い。また、本実施の形態では、画像(8)を「立体的な文字(漢字の印)」としているが、本発明の画像形成体(1)に形成する画像(8)は、これに限定されるものではなく、任意の画像を形成することができる。例えば、文字、記号、数字、風景画等でも良い。また、コンピュータ上で形成した画像であっても良い。
また、本実施の形態では、画像形成体(1)の構成を分かりやすく説明するため、七つの方向からレーザー光(11)を照射して、七つの画像(8)を形成した画像形成体(1)について説明したが、画像(8)の数はこれに限定されるものではなく、更に多くの方向からレーザー光(11)を照射して画像(8)を形成することで、より動的効果又はチェンジ効果の高い画像形成体(1)とすることができる。
また、本実施の形態では、円筒状に湾曲された画像形成体(1)に対して、鉛直方向(Z軸と平行)にレーザー光(11)を照射した形態について説明したが、鉛直方向に対して傾斜した角度からレーザー光(11)を照射して複数の画像要素(7)を形成しても良い。
また、任意の立体物を異なる方向から観察した画像を形成する本実施の形態において、更に、画像(8)を形成する角度の差を小さくし、図16に示すように、右目(10R)と左目(10L)のそれぞれで、画像要素(7R、7L)を視認すると、立体視の状態となる。図16において、画像要素(7R)は、光遮断層(6)を右目の方向に貫通しており、画像要素(7L)は、左目の方向に貫通している。このとき、複数の画像要素(7R)による画像と複数の画像要素(7L)による画像は、湾曲した画像形成体(1)の奥側で結像し、立体的な画像として視認できる。なお、立体視の原理については、公知であり、例えば、特許第4977895号に記載されている。図16に示す画像要素(7R、7L)は、故意的に右目用の画像要素(7R)と左目用の画像要素(7L)として形成する必要はなく、二つの画像(8)を形成する角度の差を小さくして形成し、図16に示す位置に視点の位置を移動させることで立体視が可能となる。
また、本実施の形態では、第1の画像(8A)から第7の画像(8G)の形成される領域の一部が重複した形態について説明したが、図17に示すように、それぞれの画像が重複せず、別の領域に形成される構成としても良い。
また、本実施の形態では、図2に示すO−O’線を基準とし、基材(2)が外側に沿った状態に湾曲させて、画像(8)が形成される形態について説明したが、O−O’線を基準とし、図2に示す湾曲させる方向とは逆の方向に湾曲させ、基材(2)が内側に沿った状態で画像(8)が形成される構成としても良い。
また、本実施の形態では、図2(a)に示すO−O’線を基準に湾曲させた状態で画像(8)を形成する形態について説明したが、本発明の画像形成体(1)は、前述のように、任意の方向に湾曲させても良い。その一例として、図18(a)に示すように、O−O’線と直交する方向であるS−S’線を基準に円筒状に湾曲させた状態で、図18(b)に示すように、異なる方向からレーザー光(11)を照射して複数の画像(8)を形成しても良い。
図19(a)は、図18(b)に示す状態で画像要素(7)が形成された画像形成体(1)の平面図を示す図である。図19(a)では、画像(8)の図柄の詳細については省略しており、画像(8)の対応した位置の複数のマイクロレンズ(5)に画像要素(7)が形成されている状態を示している。
図19(b)は、図19(a)に示す、Y1−Y1’線、Y2−Y2’線及びY3−Y3’線におけるマイクロレンズ(5)に形成された画像要素(7)の拡大図である。図19(b)に示すように、Y1−Y1’線におけるマイクロレンズ(5)において、画像要素(7)は、基材面に対して水平な第2Fの方向(F2)を向く直線状に配置された状態となっている。なお、ここでいう第2Fの方向(F2)は、円筒状に湾曲させた画像形成体(1)の円周方向であり、この形態の場合、Y軸方向と同じ方向となる。図19(b)に示すY2−Y2’線及びY3−Y3’線におけるマイクロレンズ(5)においても、これと同様であり、画像要素(7)は、基材面に対して水平な第2Fの方向(F2)を向く直線状に配置された状態となっている。このように、S−S’線を基準に円筒状に湾曲させた画像を形成する場合においても、直線状に配置された画像要素(7)が万線状に配置された構成となっている。
また、O−O’線とS−S’線のそれぞれを基準に湾曲させて、それぞれの湾曲させた状態で複数の画像(8)を形成すれば、二つの方向に湾曲させて画像(8)が視認できる画像形成体(1)とすることができる。この場合、O−O’線を基準に湾曲して形成した画像を構成する画像要素(7)が配置される方向を第1Fの方向(F1)とし、S−S’線を基準に湾曲して形成した画像を構成する画像要素(7)が配置される方向を第2Fの方向(F2)とすると、図20に示すように、第1Fの方向(F1)と第2Fの方向(F2)は異なる方向となる。
また、画像形成体(1)を湾曲させて画像を形成する方向は、ここで説明した二つの方向に限定されるものではなく、更に、別の任意の方向に湾曲させて画像を形成しても良い。例えば、更に、図21(a)に示すT−T’線を基準に湾曲させて画像(8)を形成すると、T−T’線を基準に湾曲して形成した画像を構成する画像要素(7)が配置される第3Fの方向(F3)は、図21(b)に示すとおりであり、図21(a)に示すU−U’線を基準に湾曲させて画像(8)を形成すると、U−U’線を基準に湾曲して形成した画像を構成する画像要素(7)が配置される第4Fの方向(F4)は、図21(b)に示すとおりである。
また、画像要素(7)を形成するときの画像形成体の湾曲状態は、真円である必要はなく、図22(a)に示す楕円、図22(b)に示す半円であっても良い。
また、図23に示すように、円錐状に湾曲させて、複数の画像(8)を形成しても良い。
以下に、前述の発明を実施するための最良の形態にしたがって、具体的に作成した画像形成体の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1において、わずかに観察角度の異なる画像を一定の規則に従って配置し、基材を円筒状に湾曲させて観察した場合に、立体感を付与した画像形成体(1−1)の例を説明する。図24に、実施例1における画像形成体(1−1)を示す。実施例1の画像形成体(1−1)は、外径17mmのガラス製の円筒に再帰性反射材料(3−1)を巻きつけた状態で「異なる方向から観察した立体的な文字(印)」の画像(8−1)を形成した後、透明で平坦なプラスチックフィルムに貼付した。なお、再帰性反射材料(3−1)には、ユニチカスパークライト社製の再帰性反射フィルムを用いた。
続いて、画像(8−1)の詳細について説明する。図24は、便宜上、一つの画像(8−1)のみを示しているが、実施例1の画像形成体(1)の画像(8−1)は、図25に示すように、72の異なる方向から観察した立体的な文字(印)の画像で構成し、再帰性反射材料(3−1)に72個の画像を第1の画像(8−1−1)、第2の画像(8−1−2)、・・・、第72の画像(8−1−72)として形成した。
図25において、第1の画像(8−1−1)は、立体的な文字(印)を真正面から見たときの画像であり、これを基準として、画像(8−1−19)は立体的な文字(印)を左方向に90度回転した画像である。また、画像(8−1−37)は180度、画像(8−1−55)は270度回転した画像である。
このように、実施例1の画像(8−1)は、符号の数が1増える毎に、観察角度が5度変わる規則性のある画像であり、72個の画像で立体的な文字(印)を全周方向から観察する構成とした。以上のような画像を描画ソフトウェア(Adobe社製、イラストレータ)によって作成した。これらの画像の解像度はすべて300dpiとし、画像のサイズは30mm×30mmで作成した。なお、画像(8−1)を形成するために用いたレーザーマーカー(キーエンス製、MD―V、発振波長1090nm)において、入力された画像の濃度に応じてレーザーを照射する密度を変換する機能を用い、また、ガラス製の円筒形状に応じてレーザーの焦点位置を制御する機能を用いた。
72個の画像(8−1)を形成するため、図26に示す再帰性反射材(3−1)を巻き付けた円筒の中心を通る垂直軸と加工用回転ステージ(23)の回転軸が一致するように設置し、この回転軸に対して、Z軸と平行にレーザー光(11)を照射する構成とした。一つの画像をレーザー照射により形成した後、加工用回転ステージを一定方向に5度回転させ、連続する次の画像を形成することを、加工用回転ステージが360度回転するまで繰り返し行った。72個の画像を形成した後、再帰性反射材(3−1)を円筒からはがし、透明で平坦なプラスチックフィルムに貼付して画像形成体(1)を作製した。
以上の手順で作製した画像形成体(1−1)は、透過光下で直径17mmの円筒と同様な形状に湾曲させて観察した場合、画像(8−1)である立体的な文字(印)が観察でき、また、湾曲させた方向での観察する角度に対応して立体的な文字が変化して観察される。一方、平坦な状態で観察した場合、画像(8−1)である立体的な文字(印)は観察されず、まだら模様の72本の直線の集まりが観察される。
また、我々の右眼と左眼は水平方向に70〜75mm離れているために、観察者が画像形成体(1−1)を円筒状に湾曲させて観察した場合、右眼と左眼とでは画像形成体(1−1)に対する角度がわずかに異なる。この角度差によって、画像形成体(1−1)を観察する観察者は、右眼と左眼とでは異なる画像(8−1)を捉える。これは、通常我々が実際に存在する三次元構造物を観察する場合に生じる視差と全く同じであることから、画像(8−1)は自然な立体感を伴って観察される。また、観察角度に応じて、立体的な文字の向きが滑らかに変化することも伴うため、湾曲させた基材の内部に立体物が存在するかのような視覚効果を得ることができる。