JP6025640B2 - エンジンの失火時負荷制御方法およびその失火時負荷制御システム - Google Patents
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Description
すなわち、従来の多シリンダエンジンにおいては、全シリンダが正常運転状態にあって100%出力にて運転しているとき、2シリンダに失火が発生した場合には、運転出力レベルを50%出力(1シリンダの場合は90%出力)に落として、エンジンの安定運転を図っている。
したがって、失火発生時においてエンジンの運転出力を適正なものとするためには、クランク軸の捩り応答振幅の評価、検討は重要である。
例えば非特許文献1において、捩り振動は回転軸系であるクランク軸に備わる回転重量により起こるとされ、軸の強さ及び回転重量の分布状況により、ある一定の固有振動数がある(Holzer法)。
例えば、軸にN個の回転重量が備わる場合に、1節、2節、3節、……(N−1)節の(N−1)個の固有振動数が存在する。ここで1節とは振動の節点が1個ある場合をいい、x節とは節点がx個あることを意味する。
捩り振動を発生させる起振力のサイクル数がこのx節の固有振動数と一致する場合には、共振により、捩り振動が発生する。
θ=T・L/G・Ip……(1)
ただし、T:自由端に加わるトルク、G:材料の横弾性係数、Ip:軸心に対する断面2次極モーメント。
上述の式から、捩り角は振動の振幅に比例する。軸系の各点において、ハーモニック分力のベクトルAyにより軸が捩れる量はTLに比例する。したがって、各シリンダのハーモニック・ベクトルAyにこの節点よりこのシリンダまでの距離を乗じたものが合計された軸の捩り角に比例する。すなわち、
ΣAy×Lの大きさは捩り振動の振幅に比例する。
TLベクトルは、多シリンダエンジンにおける着火順序により異なる。すなわち、エンジンのクランク配列および着火順序を変更すると、TL合計ベクトルの比大きさCTLは著しく異なったものとなる。
Cv=CA×CTL
このCvに比例して、捩り振動の振幅が定まる。このCvを計算していけば、捩り振動の各次数に対して現れるべき振動の大きさが予測できる。
ここでは、捩り振動応答計算における解法のうち、トルクハーモニクス次数の共振回転数における振動並びに捩り振動応力を評価するため、定常振動解法を適用したシミュレーション計算法を用いて、失火時の捩り振動特性ならびに機関起振力とプロペラ起振力の相互作用について具体例を通し、評価が試みられている。以下、途中経過は省略し、検討結果のみを示す。
すなわち、ここでは、複数シリンダのエンジンの失火の検出結果に基づきエンジンの出力制限運転を行なう手段であって、失火の検出信号に基づき、正常運転出力から失火発生シリンダ数に対応する失火出力分を減じた出力である第1の制限出力を算出するとともに、予め設定された失火発生シリンダと捩り振動の変化との関係に基づいて設定された出力制限値を用いて失火の検出信号に基づき第2の制限出力を算出し、第1の制限出力と第2の制限出力とを比較して最小の制限出力を算出し、該最小の制限出力を失火時許容最大出力としてエンジンを運転することを提案している。
本発明は以上のような背景から提案されたものであって、一部のシリンダが失火状態となった場合に、クランク軸捩り振動評価計算に基づいてクランク軸に対する付加応力を求め、付加応力に応じてエンジンの運転出力を制御することで失火時の負荷制御運転を可能とした、エンジンの失火時負荷制御方法およびその失火時負荷制御システムを提供することを目的とする。
捩り角度がわかれば、対応する捩り振動起振力のベクトルサムからそのときのクランク軸付加応力を算出することができる。
図1に、第1実施形態にかかるエンジンの失火時負荷制御方法を実施するための失火時負荷制御システム1を示す。
この失火時負荷制御システム1は、エンジン本体2に搭載される複数のシリンダ3に対して、シリンダ3の失火を検出して、失火時の出力を制御する構成のもので、失火を検出する失火検出部4と、失火コントローラ5と、燃料噴射制御部6とを備える。
このエンジン本体2は、18個のシリンダ3を2列状(L1,L2,………L9)(R1,R2,………R9)に搭載している。各シリンダ3には、各シリンダ3の内部に燃料を噴射する燃料噴射器7が設けられる。
燃料噴射器7は、後述する失火コントローラ5の制御下にエンジン出力負荷制御信号により、燃料噴射制御部6を介して燃料噴射量および燃料噴射時期を制御するようにしている。
失火コントローラ5は、クランク軸付加応力算出部8と、クランク軸付加応力判定部9と、出力減指令部10と、付加応力制限量算出部11と、エンジン出力負荷制御部12とを備える。
図3には、I節モードの捩り振動の振幅比が実線で示されているが、破線のように線形近似が可能である。II節についても同様に線形近似が可能である。
各シリンダにおけるクランクにかかる捩り振動起振力は振幅比に比例する。したがって、最も影響の大きいI、II節モードの場合、クランクのクランク長手方向の座標を示すvpベクトル〔各節の捩り振動の振幅モード(機関部)ベクトル〕に比例するとしてよい。
次数mの捩り振動起振力のベクトルサムを〈vpN,θmN〉に比例すると見なして評価することが可能となり得る。なお、次数は、2サイクルの場合はm=1、
2、 3、 4、・・・、4サイクルの場合はm=0.5、
1、 1.5、 2、・・・である。ただし、er=[a1
a2……aN]、θr mN=[1exp(j・mθ2)……exp(j・mθn)]、n=N−1。
第1段階として、エンジンスタートでエンジン本体2の各シリンダ3を、それぞれ失火検出部4により失火が監視され、失火が検出されると(ステップS1)、失火発生のシリンダ3から失火検出信号が、失火コントローラ5のクランク軸付加応力算出部8に入力される。
クランク軸付加応力算出部8においては、ステップS2に示すように、失火検出部4からの検出信号により、失火シリンダ3を特定する。例えばシリンダ(L1,L2,………L9)、(R1,R2,………R9)から、失火シリンダはL1なのか、L2なのか、あるいはL1およびR1、L1およびR2なのかを特定し、特定にかかる信号を出力する。
クランク軸付加応力算出部8では、クランク軸捩り振動起振力のベクトルサムVSは、正常着火時と、失火時におけるクランク軸捩り振動の値が所定の値を取ることから、失火シリンダ3に対応したベクトルサムVSが格納されている。そのため、失火したシリンダ3にかかるベクトルサムVSを抽出して、正常着火時のクランク軸捩り振動起振力のベクトルサムVSとの比例関係から、そのときの付加応力を容易に算出することができる。
例えば、正常着火時のクランク軸捩り振動起振力のベクトルサムVSが0.085で、あるシリンダ3が失火すると、着火順序と軸受応力とクランク応力で決まるベクトルサムVSが崩れ、値が大きくなる。例えば失火シリンダがL1およびR1のときにベクトルサムVSが1.394となったとすると、この値は、正常着火時のベクトルサムVS、0.085の16.4倍となり、このことから、失火シリンダがL1およびR1のときのクランク軸付加応力は、正常着火時のクランク軸付加応力の16.4倍となる。
一方、クランク軸付加応力が許容応力を下回るものであれば付加応力制限量算出部11に出力され、付加応力制限量算出部11は、クランク軸に対する付加応力の制限量を算出する(ステップS7)。
そして、再度算出したクランク軸付加応力を、クランク軸付加応力判定部9において、クランク軸に対する許容応力より大きいか、小さいかの判定がなされる(ステップS6)。
ステップS6において、クランク軸付加応力が未だ許容応力より大きい場合はステップS4において、エンジン出力負荷制御部12へエンジンの運転出力を所定量減ずるべく指令を出力する。
クランク軸付加応力が許容応力を下回るものであれば付加応力制限量算出部11に出力され、付加応力制限量算出部11は、クランク軸に対する付加応力の制限量を算出する(ステップS7)。
この付加応力が許容応力を越えないように、エンジンの運転出力を制御して運転を行うことができる。したがって、失火発生時のエンジンの適正な負荷制御運転を行うことができる。
このため、失火の発生時にエンジンの安定運転を継続する目的で、許容最小運転出力で運転できるようにして、エンジンの必要以上の低負荷運転を回避することにより燃料消費率も改善でき、エンジン発電プラントの効率の向上が期待できる。
(参考形態)
図5に、参考形態にかかる失火時負荷制御システム1を示す。
参考形態では、失火コントローラ5は、クランク軸の捩り角度を求める計測部51と、計測部51により求められたクランク軸の捩り角度から、振動を計算することにより、クランク軸付加応力を算出するクランク軸付加応力算出部52と、予め定められたクランク軸付加応力に対応する出力制限率とのマップデータ部53と、クランク軸付加応力算出部52により求められたクランク軸付加応力とマップデータ部53を参照して、クランク軸付加応力に対応した出力制限率を抽出する出力制限率抽出部54と、出力制限率抽出部54からの出力制限率に基づいてエンジンの運転出力を制御するエンジン出力負荷制御部55と、を具備する。
これは、各シリンダにおけるクランクにかかる捩り振動起振力は振幅比に比例することから、失火したシリンダ3の位置によって、発生する捩り振動起振力が異なり、その起振力に対応する振幅比から、捩り角度を求めることができる。
エンジンスタートでエンジン本体2の各シリンダ3を、それぞれ失火検出部4により失火が監視され、失火が検出されると(ステップS1)、失火発生のシリンダ3から失火検出信号が、失火コントローラ5の計測部51に入力される。
計測部51においては、各シリンダにおけるクランクにかかる捩り振動起振力は振幅比に比例することから、失火したシリンダ3の位置によって、発生する捩り振動起振力が異なり、その起振力に対応する振幅比から、捩り角度を求めることができる(ステップS2)。
すなわち、マップデータ部53には、予めクランク軸付加応力(MPa)に対応するエンジン出力制限率(%)が蓄積されているので、クランク軸付加応力がわかれば、適応した出力制限率を抽出することができる。
そして、エンジン出力負荷制御部55から、付加応力制限量に基づいて、エンジン出力負荷制御信号を出力し、燃料噴射制御部6を介して燃料噴射量および燃料噴射時期を制御することができる。
2 エンジン本体
3 シリンダ
4 失火検出部
5 失火コントローラ
6 燃料噴射制御部
7 燃料噴射器
8 クランク軸付加応力算出部
9 クランク軸付加応力判定部
10 出力減指令部
11 付加応力制限量算出部
12 エンジン出力負荷制御部
51 計測部
52 クランク軸付加応力算出部
53 マップデータ部
54 出力制限率抽出部
55 エンジン出力負荷制御部
Claims (6)
- エンジンにおける複数シリンダの失火を検出し、該失火の検出結果に基づきエンジンの運転出力を制御するエンジンの失火時負荷制御方法であって、
前記失火の検出時に、クランク軸捩り振動評価計算に基づいて、該クランク軸に対する付加応力を算出する第1段階と、
該算出されたクランク軸に対する付加応力の制限量を求める第2段階と、
前記付加応力の制限量に基づいてエンジンの運転出力を制御する第3段階と、を具備し、
前記第2段階において、前記算出されたクランク軸に対する付加応力が、前記クランク軸に対する許容応力未満であるか否かを判定し、前記算出された付加応力が前記許容応力を越えるものであるときは、前記エンジンの運転出力を所定量減ずるべく制御して前記第1段階に戻り、前記第1段階を繰り返し実行し、前記算出されたクランク軸に対する付加応力が、前記クランク軸に対する許容応力未満と判定した際には、前記クランク軸に対する付加応力の制限量を求めるようにした、ことを特徴とするエンジンの失火時負荷制御方法。 - 前記第1段階におけるクランク軸捩り振動評価計算は、クランク軸捩り振動起振力のベクトルサムを基に、クランク軸に対する付加応力を算出するものである、ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの失火時負荷制御方法。
- 前記第1段階における前記クランク軸捩り振動評価計算は、前記クランク軸の捩り角度を基に、前記クランク軸に対する付加応力を算出するものである、ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの失火時負荷制御方法。
- エンジンにおける複数シリンダの失火を検出し、失火の検出結果に基づき前記エンジンの運転出力を制御するように構成されたエンジンの失火時負荷制御システムにおいて、
前記失火の検出時に、クランク軸捩り振動評価計算に基づいて、該クランク軸に対する付加応力を算出するクランク軸付加応力算出部と、
該算出されたクランク軸に対する付加応力の制限量を求める付加応力制限量算出部と、
該付加応力制限量算出部により算出された前記付加応力の制限量に基づいて前記エンジンの運転出力を制御するエンジン出力負荷制御部と、を具備し、
前記付加応力制限量算出部は、前記算出されたクランク軸付加応力が、前記クランク軸に対する許容応力未満であるか否かが判定され、前記算出されたクランク軸付加応力が前記許容応力を越えるものであるときは、エンジンの運転出力を所定量減ずるべく指令し、前記算出されたクランク軸付加応力が、前記クランク軸に対する許容応力未満である場合には、前記クランク軸に対する付加応力の制限量を算出することを特徴とするエンジンの失火時負荷制御システム。 - 前記クランク軸付加応力算出部は、クランク軸捩り振動起振力のベクトルサムを基に、クランク軸に対する付加応力を算出するものである、ことを特徴とする請求項4に記載のエンジンの失火時負荷制御システム。
- 前記クランク軸付加応力算出部は、前記クランク軸の捩り角度を基に、前記クランク軸に対する付加応力を算出するものである、ことを特徴とする請求項4に記載のエンジンの失火時負荷制御システム。
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