(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態におけるノイズバイパス回路100を、車両に搭載されるECU(Electronic Control Unit)60に収容されるプリント基板90に適用した例を、図1〜10に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態のノイズバイパス回路100は、バイパス部10、バイパス量検出部20、および制御部40を備えている。図1の61は、プリント基板90を収容するECU60の筐体の金属部(以降、金属筐体部)を示しており、50はノイズ源を示している。ノイズ源50よりECU60内に侵入したノイズの大部分は、バイパス部10を通って金属筐体部61へバイパスされる。この金属筐体部61が請求項に記載の導体部に相当する。なお、ECU60内に侵入したノイズの一部は、ノイズバイパス回路100を除く、その他の回路200に流入する。
ノイズバイパス回路100は、図2に示すように、例えばプリント基板90上の、たとえば隅部に備えられており、このプリント基板90上には、たとえば、エンジンや電子機器の動作を制御するための制御回路110が配設されている。また、ノイズバイパス回路100はひとつのプリント基板90上に複数備えられていてもよく、たとえば、図2の100A〜Dはいずれも、ノイズバイパス回路100である。ただし、ノイズバイパス回路100は、ECU60のコネクタ70付近にあることが、より好ましい。
ノイズバイパス回路100が備えるバイパス部10、バイパス量検出部20、記憶部46、および制御部40の概要は次の通りである(具体的な構成および作動については後述する)。バイパス部10は、プリント基板90に侵入したノイズを金属筐体部61にバイパスさせるための部分である。このバイパス部10は、ノイズをバイパスするための経路(以降、バイパス経路)を複数備えていてもよく、各バイパス経路は、後述するように主として、コンデンサおよびチップインダクタと、それぞれの素子に接続するスイッチなどを備えている。そして、バイパス部10が備えるスイッチが切り替えられることによって、バイパス経路、およびバイパス部10のインピーダンスの周波数特性が変化する。その結果、ある周波数で存在しているノイズが、プリント基板90から金属筐体部61へとバイパスされる量も変化する。バイパス部10に備えられているスイッチは、いずれも制御部40によってそれぞれのオン/オフが切り替えられる。
バイパス量検出部20は、バイパス部10の各バイパス経路を流れる電流の大きさ(すなわち、バイパス量)を検出する。バイパス量検出部20が検出したバイパス量は、制御部40に入力される。
制御部40は、マイクロコンピュータを主として構成され、いずれも周知のCPU、ROM・RAM・EEPROM等のメモリ、I/O、及びこれらを接続するバスを備えている。なお、ROM・RAM・EEPROM等のメモリが図1中の記憶部46に相当する。制御部40は、バイパス量検出部20より取得した各バイパス経路のバイパス量、およびそれらの総和である総バイパス量Iaを、そのときの各スイッチのオン/オフの状態(スイッチ状態)と対応付けて、記憶部46に記憶させる。制御部40は、さらに、比較部41およびインピーダンス調整部42を機能として備えている。
比較部41は、現在のスイッチ状態での総バイパス量Iaと、記憶部46が記憶している前時刻でのスイッチ状態における総バイパス量Iaと、を比較する。インピーダンス調整部42は、比較部41の比較結果に基づいて、次時刻でのスイッチ状態を決定し、バイパス部10が備える各スイッチのオン/オフを切り替える制御信号を出力する。
ここで、ノイズバイパス回路100のより具体的な構成の説明に入る前に、ノイズがプリント基板90に侵入する経路について図3を用いて説明する。図3の一点鎖線59は、ノイズの伝播する経路を示しており、50は種々のノイズ源を示している。ノイズ源50としては、たとえばバッテリー51、センサ52やアクチュエータ53などの、車両に搭載され、ECU60とワイヤーハーネス55などで接続されている各種機器が挙げられる。また、ECU60は、ワイヤーハーネス55で直接接続している機器以外からのノイズも受信する。たとえば、ノイズは、他ECUで発生したノイズによって生じる磁界が、ワイヤーハーネス55へ誘導することでも発生する。また、ワイヤーハーネス55と他のワイヤーハーネスが容量で結合し、他のワイヤーハーネスを流れるノイズが伝播してくることも考えられる。さらに、車両に搭載される各種機器に加え、車両外部(ラジオ放送用アンテナ54など)より到来する電磁波54aもまたワイヤーハーネスでノイズを誘起する。もちろん、車外からの電磁波に加えて、車両に搭載された各種機器からの放射電磁界もノイズを誘起する。
ノイズ源50によるノイズがワイヤーハーネス55を伝播し、ECU60とワイヤーハーネス55とを接続するコネクタ70に到達する。コネクタ70よりECU60内に侵入したノイズはプリント基板90を流れ、電子機器などの動作を制御するための制御回路110へと到達する。
次に、プリント基板90に侵入したノイズに対して、ノイズバイパス回路100によってノイズをプリント基板90からECU60の外部へ逃がす経路について述べる。プリント基板90に侵入したノイズは、ノイズバイパス回路100のバイパス部10を介してECU60の金属筐体部61へと流出する。金属筐体部61へと抜けたノイズは、金属筐体部61に接続するブラケット62(導体)を伝播し、車両のボディ63(導体)に流出する。なお、プリント基板90と金属筐体部61との間には浮遊容量が存在するため、プリント基板90に侵入したノイズの一部は、バイパス部10以外に、その浮遊容量を介して金属筐体部61に流出することが考えられる。しかしながら、バイパス部10のインピーダンスは浮遊容量に対して非常に小さい値とするため、プリント基板90に侵入したノイズのほとんどはバイパス部10を通って金属筐体部61に流出する。
ここで、仮にプリント基板90とECU60の金属筐体部61(ひいてはボディ63)とを電気的に短絡させた場合には、プリント基板90に進入したノイズはそのまま金属筐体部61へと流れるため、ノイズバイパス回路100は不要となる。しかしながら、ボディ63の電位は、ボディ上の位置が異なれば、異なっている場合がある。また、現在の車両には、多数のECUが車両各部に搭載されていることが一般的である。各ECUに収容されるプリント基板とボディとを電気的に短絡させた場合には、それぞれのECUが収容するプリント基板の基準電位同士に電位差が生じてしまい、ECUの動作が不安定になったり回路が壊れてしまったりするおそれが生ずる。この懸念から、本実施形態のように、プリント基板90とECU60の金属筐体部61とを短絡させずに、ノイズを金属筐体に逃がす回路が必要となる。
以降では、図4を用いてノイズバイパス回路100の具体的な構成について説明する。図4中のVG1は、プリント基板90上のグラウンド(すなわち基準電位)を表し、VG2は、金属筐体部61の電位を表している。バイパス部10はバイパス経路を少なくとも1つ備えていれば良く、本実施形態では、図4の鎖線で囲まれる部分P1〜4の4つのバイパス経路を備えるものとする。すなわち、プリント基板90のグラウンドVG1と金属筐体部61とは、4つのバイパス経路を備えるバイパス部10を介して接続されている。各バイパス経路P1〜4は、図4に示すように、スイッチ(本実施形態ではnpnトランジスタとする)、コンデンサ、およびチップインダクタをそれぞれ備えている。以下では、バイパス経路P1〜4を構成する素子について、さらに説明をする。
図4中のSW10〜13、SW20〜23、SW30〜33、SW40〜43は、いずれもnpnトランジスタよりなり、各トランジスタのゲートは制御部40に接続され、スイッチとしての役割を果たす。すなわち、制御部40からの制御信号に基づいて、各スイッチのオン/オフはそれぞれ切り替えられる。一例としてスイッチSW10は、制御部40からハイレベルの信号が入力されているときオンとなり、ローレベルの信号が入力されているときはオフとなる(その他のスイッチも同様である)。もちろん、これらのスイッチは、npnトランジスタのほか、スイッチとして利用可能な公知の素子(高周波リレーや高周波特性のトランジスタ)を用いてもよい。
C10〜11、C20〜21、C30〜31、C40〜41はそれぞれ所定の容量をもつコンデンサを示す。本実施形態では、C10=100pF、C20=1nF、C30=0.047μF、C40=1μFとする。これらC10、C20、C30、C40が、各バイパス経路のキャパシタンスを決定する上で主な役割を担うため、それぞれを各バイパス経路の主コンデンサと称する。また、C11=1nF、C21=10nF、C31=0.47μF、C41=10μFとする。なお、これらのコンデンサが備える容量は適宜設計されればよく、上述した値に限定しない。ただし、主コンデンサは、それぞれ容量の桁が異なるものとすることがより好ましく、また、C11、C21、C31、C41は、各バイパス経路の主コンデンサの容量に対して小さく、かつ、無視できない程度の容量であることが好ましい。なお、コンデンサの代わりに、基板の浮きパターン、誘電体、および金属筐体を用いて所定のキャパシタンスを実現してもよい。
L12〜13、L22〜23、L32〜33、L42〜43は、いずれも所定のインダクタンスをもつ素子であり、本実施形態ではチップインダクタでそれぞれのインダクタンスを実現する。L12、L22、L32、L42はいずれも1nHであり、L13、L23、L33、L43はいずれも2nHである。なお、これらの所定のインダクタンスは、チップインダクタの代わりに、たとえばそれぞれ長さの異なる冗長な配線を追加することで実現してもよい。また、これらの素子が備えるインダクタンスは適宜設計されればよく、上述した値に限定しない。
21〜24はいずれも図1のバイパス量検出部20に相当する。バイパス量検出部21〜24はそれぞれ、各バイパス経路(P1〜4)を流れるバイパス量(I1〜I4)を逐次検出し、制御部40に入力している。バイパス量検出部20は、小型の電流プローブを用いて経路を流れる電流信号を取得し、公知の全波整流回路または半波交流回路を介して制御部40に入力する。なお、バイパス量検出部20は電流プローブのほかに、バイパス部10のインピーダンスの大きさよりも小さいシャント抵抗を用いた電流検出回路を用いてもよい。また、PALAP(登録商標)のロゴスキー電流プローブを用いてもよい。
以上の構成の動作の概略を、バイパス経路P1を例にとって説明する。まず、制御部40の制御信号に基づいてスイッチSW11〜13のオン/オフを切り替えることによって、プリント基板90から図4のA点までのインダクタンスを変化させることができる。すなわち、スイッチSW11をオンにすると、プリント基板90からA点までショートされる。また、スイッチSW11がオフの状態で、スイッチSW12またはSW13をオンとすると、チップインダクタL12またはL13(さらにはそれらが並列した)のインダクタンスが、プリント基板90からA点までの間に付与される。これらのスイッチSW11〜13の制御は、インピーダンス調整部42が備えるインダクタンス調整部44が実施する。
次に、制御部40の制御信号に基づいてスイッチSW10のオン/オフを切り替えることによって、図4のA点から金属筐体部61までのキャパシタンスを変化させることができる。すなわち、制御部40の制御信号に基づいてスイッチSW10をオンにすると、コンデンサC11はショートされ、A点から金属筐体部61までのキャパシタンスはコンデンサC10による100pFとなる。一方、スイッチSW10をオフにすると、A点から金属筐体部61までに、コンデンサC10とC11とが直列に接続したキャパシタンスが生じる。コンデンサC10、C11を直列接続した合成容量C10aは、C10a=(C10×C11)/(C10+C11)で求めることができる。コンデンサC10およびC11の容量をそれぞれ代入すると、C10aはおよそ91pFとなり、コンデンサC10単体時の100pFより減少させることができる。このようにスイッチSW10のオン/オフを切り替えてバイパス経路P1のキャパシタンスを制御する処理は、インピーダンス調整部42が備えるキャパシタンス調整部43が実施する。
次に、車両の駆動系を制御するECUにノイズバイパス回路100を適用した場合の、制御部40が実施する処理について、図5〜7のフローチャートを用いて説明する。図5のフローチャートは、バッテリー51より12Vの電源電圧がECU60に印加され、かつ、駆動系が未起動の状態から、駆動系を起動状態に遷移するときに開始される(ステップS2に進む)。ここでの駆動系とは、車両がエンジン車の場合にはエンジンを指し、電気自動車の場合にはモータを指す。また、ハイブリッド車の場合には、エンジンおよびモータを指すものとする。この処理フロー開始時において、上述したスイッチSW10、SW11、SW20、SW21、SW30、SW31、SW40およびSW41はいずれもオンとなっている(これを初期設定状態とする)。なお、便宜上、上述したスイッチの状態を初期設定状態とするが、これに限らない。このフローが開始したときのスイッチの設定状態を初期設定状態とする。また、たとえばSW12、SW13などのチップインダクタに直列なスイッチもオンとなっていても良いが、SW10などがオンとなっているため、ショートされて意味を成さない。
まず、ステップS2では、バイパス量検出処理を実施してステップS4に進む。バイパス量検出処理では、バイパス量検出部20が検出した各バイパス経路を流れるバイパス量(I1〜4)を取得し、バイパス量I1〜4の総和である総バイパス量Iaを算出する。そしてバイパス量I1〜4および総バイパス量Iaを、現在のバイパス部10が備える各スイッチの状態(スイッチ状態)とともに記憶部46に出力し、記憶部46はそれらのデータを記憶する。
ステップS4では、ノイズ周波数推定処理を実施してステップS6に進む。ステップS4のノイズ周波数推定処理では、各バイパス経路を流れるバイパス量の大きさからノイズの周波数を推定する。ここで、各バイパス経路を流れるバイパス量の大きさからノイズの周波数を推定する方法について、図8を用いて具体的に説明する。
図8のグラフは、各バイパス経路のインピーダンスと周波数の関係(すなわち周波数特性)を示したものである。図8中のL1は、コンデンサC10を備えるバイパス経路P1の周波数特性を示し、L2はコンデンサC20を備えるバイパス経路P2の周波数特性を示している。また、L3は、コンデンサC30を備えるバイパス経路P3の周波数特性を示し、L4はコンデンサC40を備えるバイパス経路P4の周波数特性を示している。さらに、L5は、スイッチ状態が初期設定状態、すなわち、コンデンサC10、C20、C30、C40が並列した状態(これを全並列時とする)でのバイパス部10の周波数特性を示している。なお、各バイパス経路の周波数特性は、コンデンサのもつキャパシタンスのほかに、コンデンサや配線がもつ寄生インダクタンスを1nH、寄生抵抗を0.1Ωと想定して求めている。ただし、いずれのバイパス経路においてもスイッチSW11、SW21、SW31、SW41はいずれもオンとなっており、チップインダクタによるインダクタンスは無視される。また、各バイパス経路のキャパシタンスは、それぞれが備えるコンデンサ(C10、C20、C30、C40)によって定まるものとする。
図8に示すように、それぞれキャパシタンスの異なるコンデンサC10〜40を備えるバイパス経路P1〜4の周波数特性は異なっている。全並列時には、ノイズは複数のバイパス経路に分散してノイズ流れるが、そのノイズが存在する周波数において、インピーダンスが小さいバイパス経路に、より多く流れる傾向がある。制御部40の周波数推定部45は、各バイパス量検出部20が検出したバイパス量I1〜4を比較し、最も多く流れているバイパス経路の備えるコンデンサの容量からノイズの周波数を推定することができる。たとえば、最もバイパス量が多いバイパス経路を、コンデンサC10を備えるバイパス経路P1とすると、他のコンデンサC20、C30、C40を備えるバイパス経路P2〜4よりも400MHz付近でインピーダンスが小さくなる。すなわち、バイパス経路P1のバイパス量I1が最も大きかった場合には、ノイズは400MHz付近の周波数で存在していることが分かる。
そして、推定されたノイズの周波数から、次に説明するインピーダンス調整処理で調整するスイッチの候補を決定する。本実施形態では、単純に、最もバイパス量が多いバイパス経路が備える全てのスイッチを、インピーダンス調整処理で調整するスイッチの候補とする。
ステップS6では、インピーダンス調整処理を実施してステップS8に進む。このインピーダンス調整処理については、別途図6に示すフローチャートを用い、次の段落以降で詳細に説明する。ステップS8では、駆動系(たとえばエンジン)を起動させ、本処理フローを抜ける。なお、このステップS8完了時のスイッチ状態を起動スイッチ状態とする。
インピーダンス調整処理の流れを示す図6のフローチャートは、図5のステップS6または後述する図7のステップS16に移ったときに開始される。以降では、図5のステップS4において、I1〜4のうち、I1が最も大きかった場合、すなわち、バイパス経路P1に最もノイズが流れていた場合を例にとって、説明する。
ステップS100では、インダクタンス調整処理を実施してステップS102に進む。ステップS100のインダクタンス調整処理では、バイパス量が多かったバイパス経路(ここではP1)のスイッチSW11〜13のオン/オフを制御して、バイパス経路P1のインダクタンスを調整する。たとえば、スイッチSW11がオン、かつ、SW12およびSW13がオフとなっている場合には、スイッチSW12をオンにした後、スイッチSW11をオフにする(SW13はオフのまま)。これによって、バイパス経路P1のプリント基板90からA点まで、ショートされている状態から、チップインダクタL12によるインダクタンス(1nH)が追加されている状態となる。
また、スイッチSW12がオン、かつ、SW11およびSW13がオフのときは、SW13をオンにした後にSW12をオフに切り替える。これによって、バイパス経路P1のプリント基板90からA点までに存在するインダクタンスは、チップインダクタL12による1nHからチップインダクタL13による2nHとなる。このステップS100を実施するインダクタンス調整部44が、請求項に記載の第1、第2のインダクタンス調整部に相当する。
さらに、他の実施形態として、スイッチSW12およびSW13をオン、SW11をオフに設定し、チップインダクタL12およびL13が並列したインダクタンス(0.66nH)がプリント基板90からA点までに存在するスイッチ状態をとってもよい。ただし、現在のインダクタンスからの変化量が小さい順となるように、スイッチを設定する。
ステップS102では、バイパス量検出処理を実施して、ステップS104に進む。このステップS102のバイパス量検出処理は、図5のステップS2と同様の処理であり、バイパス量検出部21〜24のそれぞれが検出した電流の値I1〜4を取得し、総バイパス量Iaを算出する。そして、各バイパス量I1〜4、総バイパス量Ia、および、このときのスイッチ状態を記憶部46に記憶させる。
ステップS104では、現在のスイッチ状態での総バイパス量Iaと、その前のスイッチ状態での総バイパス量Iaとを比較し、総バイパス量Iaが増加したか否かを判定する。前ステップS100でスイッチを切り替えることによって総バイパス量Iaが増加した場合には、ノイズの周波数においてバイパス経路P1のインピーダンスが小さくなるように、前ステップS100において各スイッチを設定したことになる。一方、総バイパス量Iaが減少した場合には、ノイズの周波数に対してバイパス経路P1のインピーダンスが大きくなるように各スイッチを設定したことになる。
そしてステップS104で、総バイパス量Iaが増加している場合は、ステップS104がYESとなって、ステップS106に進む。また、比較の結果、総バイパス量Iaが減少している場合は、ステップS104がNOとなってステップS108に進む。
ステップS106では、バイパス経路P1のスイッチSW11〜13の状態から、スイッチSW11〜13を制御してバイパス経路P1のインダクタンスが最大となっているか否かを判定する。なお、本実施形態においてバイパス経路P1のインダクタンスが最大となっている状態とは、スイッチSW13がオン、SW11およびSW12がオフの状態である。バイパス経路P1のインダクタンスが最大となるスイッチ状態である場合にはステップS106がYESとなって、インピーダンス調整処理を抜け、このインピーダンス調整処理の呼び出し元に戻る。一方、まだバイパス経路P1に付加できるインダクタンスが最大となっていない場合には、ステップS106がNOとなってステップS100に戻る。
ステップS108では、各スイッチの状態を、ステップS104で総バイパス量Iaが減少したと判定されたスイッチ状態より1つ前のスイッチ状態(すなわち、記憶部46が記憶している総バイパス量Iaが最も大きかったときのスイッチ状態)に戻してステップS110に進む。
ステップS110では、現在インピーダンス調整処理の対象となっているバイパス経路(ここではP1)が備える各スイッチが、初期設定状態(スイッチSW11およびSW10がオン)となっているか否かを判定する。バイパス経路P1の各スイッチの状態が初期設定状態と同じであった場合には、ステップS110はYESとなってステップS112に進む。一方、バイパス経路P1の各スイッチの状態が初期設定状態とは異なっている場合には、ステップS110がNOとなって、インピーダンス調整処理を抜け、このインピーダンス調整処理の呼び出し元に戻る。
ステップS112では、キャパシタンス調整処理を実施してステップS114に進む。ステップS112のキャパシタンス調整処理では、バイパス量が多かったバイパス経路(ここではP1)のスイッチSW10のオン/オフを制御し、バイパス経路P1のキャパシタンスを減少させる。すなわち、キャパシタンス調整部43は、スイッチSW10がオンからオフに切り替えることによって、コンデンサC10に、コンデンサC11を直列に接続させる。これにより、バイパス経路P1のA点から金属筐体部61までのキャパシタンスは、コンデンサC10単体の容量から、コンデンサC10およびC11による合成容量へ切り替えられる。すなわち、バイパス経路P1のキャパシタンスは100pFから、合成容量の91pFとなる。このステップS112を実施するキャパシタンス調整部43が請求項に記載の第1、第2のキャパシタンス調整部に相当する。
ステップS114では、ステップS102と同様にバイパス量検出処理を実施して、ステップS116に進む。ステップS116では、現在のスイッチ状態(スイッチSW10=オフ)での総バイパス量Iaと、その前のスイッチ状態(スイッチSW10=オン)でのノイズ量Iaとを比較し、総バイパス量Iaが増加したか否かを判定する。総バイパス量Iaが増加している場合はステップS116がYESとなって、インピーダンス調整処理を抜け、このインピーダンス調整処理の呼び出し元に戻る。また、比較の結果、総バイパス量Iaが減少している場合は、ステップS116がNOとなってステップS118に進む。
ステップS118では、スイッチSW10をオフからオンに戻す。そして、インピーダンス調整処理を抜け、このインピーダンス調整処理の呼び出し元に戻る。なお、本実施形態では、コンデンサC10に直列可能なコンデンサをC11の1つだけとしたが、インダクタンス調整処理と同様に、2以上の容量の異なるコンデンサから選択して直列に接続できる構成としても良い。その場合は、その構成に応じた処理フローとなる。
図7のフローチャートは、駆動系が起動状態において、制御部40で逐次(たとえば20ミリ秒ごと)実施されている。また、この処理フロー開始時においてバイパス部10の備える各スイッチは、前述した起動スイッチ状態となっている。ステップS10では、図6のステップS102と同様に、バイパス量検出処理を実施して、ステップS12に進む。
ステップS12では、前ステップS10で検出された総バイパス量Iaと前時刻の検出結果とを比較し、ノイズ(たとえばノイズの周波数や大きさ)が変化したか否かを判定する。ここで、ノイズが変化したと判定する条件としては、最もノイズがバイパスされているバイパス経路が変化した(たとえば、バイパス経路P1からP2となった)場合や、総バイパス量Iaが所定の閾値(1mA)以上となった場合などが挙げられる。また、各バイパス量検出部21〜24が検出しているバイパス量が、所定の閾値(たとえば前時刻のバイパス量より5mA以上変化した場合に実施すればよい。ノイズが変化したと判定された場合は、ステップS12がYesとなってステップS14に進む。また、インピーダンス再調整条件が満たされていない場合は、ステップS12がNOとなってステップS10に戻る。
ステップS14では、ノイズ周波数推定処理を実施し、ステップS16に進む。このノイズ周波数推定処理は、図5のステップS4と同様の処理である。そして、このステップS14の推定結果を受けてステップS16でインピーダンス調整処理を実施してステップS10に戻る。このインピーダンス調整処理は図6を用いて前述したものと同様の処理である。
なお、以上ではバイパス量が最も大きいバイパス経路をP1であると仮定して本実施形態の作動を説明したが、その他のバイパス経路(P2〜4)においても同様に作動するものである。
ここで、ステップS100において、たとえばバイパス経路P1にインダクタンス調整処理を実施した場合の効果を、図9を用いて説明する。図9のL5が図8のL5と同一のものであり、初期設定状態におけるバイパス部10全体のインピーダンスの周波数特性を示している。L51はバイパス経路P1のスイッチSW12をオン、SW11およびSW13をオフに設定しているとき(すなわち、バイパス経路P1に1nHを追加しているときの)のバイパス部10全体のインピーダンスの周波数特性を示している。
バイパス経路P1上のスイッチSW11〜13を切り替えて、バイパス経路P1に1nHを追加することによって、ピーク周波数(インピーダンスが急激に大きくなっている周波数)f1を図の左側へ(すなわち、より低い周波数のほうへ)移すことができる。したがって、ノイズが存在している周波数に対して適宜インダクタンスを調整することによって、バイパス部10のインピーダンスが小さくなるように調整することができる。
また、ステップS112のキャパシタンス調整処理を実施し、たとえばバイパス経路P1のスイッチSW11をオフにした場合には、ピーク周波数f1を図の右側へ(すなわち、より高い周波数のほうへ)移すことができる。インダクタンス調整処理とキャパシタンス調整処理とを併用することで、周波数特性を周波数の低い方向と高い方向の両方へ移すことが可能となり、バイパス部10の取りうるインピーダンスの自由度をさらに高めることができる。
以上の構成によれば、バイパス部10が備える各スイッチの設定が変更されることによって、バイパス部10のインピーダンスの周波数特性は変化される。すなわち、インダクタンス調整部44によってインダクタンスを調整することでインピーダンスの周波数特性は周波数の低い方向へ移すことができる。また、キャパシタンス調整部43によってキャパシタンスを調整することでインピーダンスの周波数特性は周波数の高い方向へ移すことができる。そして、インピーダンスを調整した結果、バイパス量が増えた否かを考慮して各スイッチの設定を変更することで、ノイズの周波数に対して、より適切なインピーダンスに調整することができる。したがって、種々の周波数のノイズに対してバイパス効果を高め、ノイズによる影響を低減することができる。
また、本実施形態のバイパス部10は、複数のバイパス経路を備え、各バイパス経路のキャパシタンスを決定するコンデンサC10、C20、C30、C40はいずれも異なる容量をもつものとした。このため、各バイパス経路の周波数特性は異なり、流れやすいノイズの周波数は異なる。ところで、ノイズは一般に単一の周波数ではなく、様々な周波数のノイズが重畳して存在している。すなわち、バイパス部10に、本実施形態のように、異なる周波数特性をもつ複数のバイパス経路を備えさせることで、様々な周波数が重畳したノイズは、それぞれの周波数に適したバイパス経路を流れる。このため、バイパス部10としてのバイパス効果をさらに高めることができる。
さらに、本実施形態では、ノイズ周波数推定部45が複数のバイパス経路P1〜4を流れるバイパス量を比較することでノイズが存在する周波数を推定し、そのノイズの存在する周波数を考慮して、インピーダンス調整処理で操作するスイッチを備えるバイパス経路を決定した。このようにノイズの存在する周波数を考慮して操作するスイッチを選択することにより、制御部40の処理負荷を軽減するとともに、ノイズに対する対応も迅速化することができる。また、バイパス量が最も多いバイパス経路は、ノイズの周波数に対して最もインピーダンスを小さくできる可能性が高い経路であるため、他のバイパス経路のスイッチの設定を変更するよりも効率的にインピーダンスを低減することができる。
また、以上ではバイパス量が最も大きいバイパス経路に対してインピーダンス調整処理を実施する態様を説明したが、複数のバイパス経路に対して、それぞれ独立してインピーダンス調整処理を実施してもよい。たとえば、150MHz付近のノイズと400MHz付近のノイズが同時に存在している場合には、400MHz付近のノイズはバイパス経路P1に流入し、150MHz付近のノイズはバイパス経路P2へと流入する。このとき、バイパス経路P1とP2に対して、それぞれ独立してインピーダンス調整処理を実施することの効果を、図10を用いて説明する。
図10のL5は、図8のL5と同一のものであり、初期設定状態におけるバイパス部10のインピーダンスの周波数特性を示している。L52は、バイパス経路P1において、スイッチSW12をオン、SW11およびSW13をオフに設定し、かつ、バイパス経路P2において、スイッチSW22をオン、SW21およびSW23をオフに設定したものである。その他のスイッチに関しては初期設定状態のままである。図10に示すように、異なるキャパシタンスをもつバイパス経路(P1、P2)において、それぞれ独立してインダクタンス調整処理を実施することで、それぞれのピーク周波数(f1、f2)を低くすることができる。もちろん、インダクタンス調整処理に代わってキャパシタンス調整処理を実施することで、バイパス部10のインピーダンスが急激に増加する周波数領域をそれぞれ高くすることもできる。
すなわち、各バイパス経路が周波数ごとに分担してノイズをバイパスする構成において、それぞれのバイパス経路のインピーダンスを独立して調整することで、さらにバイパス部10が取りうるインピーダンスの自由度を高めることができる。なお、このような構成においてインピーダンス調整処理を実施するバイパス経路の候補としては、たとえば、バイパス量が所定の閾値(1mA)以上となっている全てのバイパス経路とすればよい。
(第2の実施形態)
また、本発明に係るノイズバイパス回路100は、第2の実施形態として図11〜図16を用いて説明するような構成をとしてもよい。図11は、図1に対応する図であり、第2の実施形態に係るノイズバイパス回路100の構成を示すブロック図である。なお、この第2の実施形態の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、前述した実施形態における同一符号の要素と同一の要素である。
この第2の実施形態におけるノイズバイパス回路100の回路構成の一例を図12に示す。スイッチSW10、SW20、SW30、SW40は、いずれもnpnトランジスタよりなり、各トランジスタのゲートは制御部40に接続されている。
スイッチとなる各トランジスタのコレクタは、プリント基板90のグラウンドVG1に接続され、また、トランジスタのエミッタはそれぞれ所定容量のコンデンサ(C10、C20、C30、C40)を介してそれぞれ金属筐体部61に接続されている。また、SW10、SW20、SW30、SW40を含むバイパス経路をそれぞれ順に、バイパス経路P21、P22、P23、P24とする。なお、これらのバイパス経路(P21〜24)がバイパス部10に相当する。
この構成において制御部40が実施する処理の流れは、インピーダンス調整処理を除いて、第1の実施形態における同様である。したがってここでは、第2の実施形態におけるインピーダンス調整処理について、図6に対応する図13を用いて説明する。図13に示すフローチャートは、図5のステップS6または後述する図7のステップS16に移ったときに開始され、ステップS200より開始する。以降では、図5のステップS4において、I1〜4のうち、I1が最も大きかった場合、すなわち、バイパス経路P21に最もノイズが流れていた場合を例として、説明する。また、初期のスイッチ状態(初期設定状態)として、スイッチSW10、SW20、SW30、およびSW40はいずれもオンとなっているものとする。すなわち、初期設定状態において、全てのコンデンサが並列に接続している。
ステップS200では、キャパシタンス調整処理を実施してステップS202に進む。ステップS200のキャパシタンス調整処理では、バイパス量が多かったバイパス経路(ここではP1)のスイッチSW10のオン/オフを制御して、バイパス部10のインピーダンスを変化させる。ここで、スイッチSW10を操作することで、バイパス部10のインピーダンスが変化する一例を、図14を用いて説明する。図14はノイズなどの信号の周波数を横軸にとったときの、周波数ごとのバイパス部10のインピーダンス(すなわち周波数特性)を表したグラフである。グラフ中のL6は、初期設定状態でのバイパス部10の周波数特性を示している。また、L7は、SW10をオフとし、SW20、SW30、およびSW40はオンとしたスイッチ状態でのバイパス部10のインピーダンスを示している。L6とL7と比較すると、400MHz近傍(図中f1)において、バイパス部10のインピーダンスを初期設定状態時に比べて最大17dB低減することができることが分かる。一方、スイッチSW10をオンとしているとき(すなわち初期設定状態時)には、f3においてバイパス部10のインピーダンスを大きく低減することができる。すなわち、各スイッチを切り替えてバイパス部10で並列しているコンデンサの数を変更し、コンデンサを並列させることによる長所および短所を適宜使い分けることができる。なお、他の実施形態として、コンデンサに対して直列に抵抗を挿入した構成としてもよい。抵抗を直列に挿入することで共振を鈍らすことができる。ただし、その場合、抵抗によって全体の周波数特性を悪化させる可能性があることに留意する。
ステップS202では、バイパス量検出処理を実施して、ステップS204に進む。ステップS202のバイパス量検出処理は、各バイパス量検出部21〜24が検出した電流の値I1〜4を取得して総バイパス量Iaを算出し、このときのスイッチの状態とともに記憶部46に記憶させる。
ステップS204では、現在のスイッチ状態(ここではSW10=オフ)での総バイパス量Iaと、その前のスイッチ状態(ここでは初期設定状態)での総バイパス量Iaとを比較する。そして、総バイパス量Iaが増加していると判定された場合はステップS204がYESとなって、インピーダンス調整処理を抜け、このインピーダンス調整処理の呼び出し元に戻る。また、比較の結果、総バイパス量Iaが減少していると判定された場合は、ステップS204がNOとなってステップS206に進む。
ステップS206では、バイパス部10のキャパシタンスを適正化して、インピーダンス調整処理を抜け、呼び出し元に戻る。なお、ここでの、キャパシタンスの適正化とは、ステップS200で操作したスイッチ(ここではSW10)をオフからオンに戻すことである。そして、インピーダンス調整処理を抜け、このインピーダンス調整処理の呼び出し元に戻る。
以上の構成によれば、バイパス部10が備える各スイッチの設定が変更されることによって、バイパス部10のインピーダンスの周波数特性は変化される。すなわち、各スイッチを切り替えてバイパス部10の並列するコンデンサの数を変更することで、並列コンデンサの共振・反共振によるインピーダンスの増減効果を適宜使い分けることができる。また、第2の実施形態では、第1の実施形態が備えるチップインダクタなどを必要としないため、より簡素な回路構成となり、コストを低減することができる。
なお、バイパス経路は例えば図15に示すような構成としても良い。図15のC12は、所定の容量をもつコンデンサであり、この変形例においては例えば、コンデンサC10の容量より一桁小さい10pFとする。このコンデンサC12をコンデンサC10に対して並列するように備えることで、バイパス経路P21のキャパシタンスを変更することができる。すなわち、スイッチSW11をオンとしているときには、コンデンサC10およびC12の合成容量110pFがバイパス経路P21に生じる。一方、スイッチSW11をオフとしているときにはコンデンサC10単体の100pFがバイパス経路P21に生じる。そして、スイッチSW11を制御してバイパス経路P21のキャパシタンスを100pFから110pFに変更することで、バイパス部10のインピーダンスの周波数特性は、たとえば図9のL5からL51のように、低い周波数の方向へ移すことができる。
以上のように、バイパス経路が備える主コンデンサに並列するように、主コンデンサよりも容量が小さい副コンデンサを配置し、副コンデンサに直列なスイッチを切り替えることで、バイパス部10のインピーダンスを調整することができる。なお、ここでの主コンデンサとは、上段落で述べたコンデンサC10であり、副コンデンサとはコンデンサC12である。もちろんこれら主コンデンサと副コンデンサの容量は適宜設計されればよい。また、副コンデンサが主コンデンサよりも大きい容量であってもよい。主コンデンサに他の回路(副コンデンサ)を接続することで、周波数特性が変更される構成となっていればよい。
また、前述した第2の実施形態では、図12に示したように、バイパス部10として4つのバイパス経路P21〜24を備える構成としたが、これに限らない。バイパス経路の数は適宜設計者によって設計されればよい。
また、バイパス経路は必ずしも複数とは限らず、図16に示すように、ノイズバイパス回路100が備えるバイパス経路はひとつでもよい。このとき、バイパス量検出部20は、金属筐体部61に配置する。このバイパス量検出部20として、特開2007−85741に開示の電流プローブを用いてもよい。
ここで、図16中のC0は、プリント基板90と金属筐体部61間に存在する浮遊容量であり、スイッチSW10がオフの場合には、プリント基板90に侵入したノイズは、この浮遊容量C0を介して金属筐体部61に流れる。そして、制御部40は、SW10をオンとした場合と、オフとした場合の、それぞれのバイパス量I5を取得し、バイパス量I5が多いほうのスイッチ状態とすればよい。たとえば、SW10をオンとした場合とオフとした場合のどちらのバイパス量が大きいかを判定するため、一定周期ごとにスイッチSW10を切り替えてみる。仮に現在スイッチSW10がオンだとすると、短時間(バイパス量が検出できる程度の時間)だけ、SW10をオフに設定してバイパス量を検出する。その結果、バイパス量が増加したと判定された場合には、そのままスイッチSW10をオフに設定し、一方、バイパス量が減少したと判定された場合にはオンに戻す。ここでの一定周期とは、バイパス量が検出できる程度の時間よりも長いものとすればよい。
このような構成とすることで、ノイズバイパス回路100が備える素子の数を、上述した実施形態よりもさらに低減し、コストを抑えることができる。
(第3の実施形態)
さらに、本発明に係るノイズバイパス回路100は、第3の実施形態として図17〜図20を用いて説明するような構成としてもよい。図17は、図1に対応する図であり、第2の実施形態に係るノイズバイパス回路100の構成を示すブロック図である。なお、この第3の実施形態の説明において、これまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、前述した実施形態における同一符号の要素と同一の要素である。
この第3の実施形態におけるノイズバイパス回路100の回路構成の一例を図18に示す。この構成において制御部40が実施する処理の流れは、インピーダンス調整処理を除いて、第1の実施形態における同様である。したがってここでは、第3の実施形態におけるインピーダンス調整処理について、図6に対応する図19を用いて説明する。図19に示すフローチャートは、図5のステップS6または後述する図7のステップS16に移ったときに開始され、ステップS300より開始する。以降では、図5のステップS4において、I1〜4のうち、I1が最も大きかった場合、すなわち、バイパス経路P31に最もノイズが流れていた場合を例として、説明する。なお、初期のスイッチ状態(すなわち初期設定状態)として、スイッチSW11、SW21、SW31、およびSW41はいずれもオンとなっており、その他のスイッチ(SW12など)はオフとなっているものとする。
ステップS300では、インダクタンス調整処理を実施してステップS302に進む。このステップS300のインダクタンス調整処理は、図6のインダクタンス調整処理と同様の処理である。ステップS302では、バイパス量検出処理を実施して、ステップS304に進む。このステップS302のバイパス量検出処理では、各バイパス量検出部21〜24が検出した電流の値I1〜4を取得して総バイパス量Iaを算出し、このときの各スイッチの状態とともに記憶部46に記憶させる。
ステップS304では、現在のスイッチ状態での総バイパス量Iaと、その前のスイッチ状態でのバイパス量Iaとを比較し、総バイパス量Iaが増加したか否かを判定する。比較の結果、総バイパス量Iaが増加している場合には、ステップS304がYESとなって、ステップS306に進む。また、比較の結果、総バイパス量Iaが減少している場合は、ステップS304がNOとなってステップS308に進む。
ステップS306では、バイパス経路P31のスイッチSW11〜13の状態から、スイッチSW11〜13を制御してバイパス経路P31に付加できるインダクタンスが最大となっているか否かを判定する。本実施形態においてバイパス経路P31のインダクタンスが最大となっている状態とは、スイッチSW13がオン、SW11およびSW12がオフの状態である。バイパス経路P31に付加できるインダクタンスが最大となるスイッチ状態である場合にはステップS306がYESとなって、インピーダンス調整処理を抜け、インピーダンス調整処理の呼び出し元に戻る。また、まだバイパス経路P31に付加できるインダクタンスが最大となっていない場合には、ステップS306がNOとなってステップS300に戻る。
ステップS308では、バイパス経路P31が備える各スイッチの状態を、総バイパス量Iaが減少する前のスイッチ状態(すなわち、記憶部46が記憶している総バイパス量Iaが最も大きかったときのスイッチ状態)に戻してインピーダンス調整処理を終了する。
このような構成では、バイパス部10が備える各スイッチの設定が変更されることによって、バイパス部10のインピーダンスの周波数特性は変化される。すなわち、インダクタンス調整部44によってバイパス部10のインダクタンスを調整することで、バイパス部10のインピーダンスのピーク周波数を低い周波数の方向へ移すことができる。そして、第3の実施形態では、第1の実施形態が備えるコンデンサC11、C21、C31、C41などを必要としないため、第1の実施形態より簡素な回路構成となり、コストを低減することができる。
なお、この図1および図18に示す回路構成においては、たとえばスイッチSW11〜13を全てオフにすることで、バイパス経路P31をバイパス部10から切り離し、バイパス部10のインピーダンスの周波数特性を変化させることができる。すなわち、スイッチSW11〜13を全てオフにした場合には、第2の実施形態の図12において、SW10をオフにした場合と同様の効果が得られる。したがって、図1および図18の構成は、第2の実施形態のように、並列コンデンサによる共振・反共振の周波数特性の変化を適宜利用することができる。
なお、以上で述べた第3の実施形態では、図13に示したように、バイパス部10として4つのバイパス経路P31〜34を備える構成としたが、これに限らない。バイパス経路の数は適宜設計者によって設計されればよい。また、バイパス経路は必ずしも複数とは限らず、図15に示すように、ノイズバイパス回路100が備えるバイパス経路はP1のひとつでもよい。
図15のスイッチSW11〜15は、いずれもnpnトランジスタよりなり、各トランジスタのゲートは制御部40に接続されている。各トランジスタのコレクタは、プリント基板90のグラウンドVG1に接続されている。また、スイッチSW12〜15として作動する各トランジスタのエミッタは、それぞれ異なるインダクタンスをもつチップインダクタ(L12〜L15)に接続されている。本変形例においてL12は1nH、L13は2nH、L14は3nH、L15は4nHとする。図15の構成における制御部40が実施する制御は、バイパス経路が1つであるため周波数推定処理を実施しない点を除けば、上述した第3の実施形態での処理と同様である。
このような構成では、バイパス量検出部20の数は1つでよい。したがって、前述した第3の実施形態に比べて、ノイズバイパス回路を構成する要素を少なくすることができる。特に、バイパス量検出部20を小型の電流プローブで実現する場合、1つのバイパス量検出部20にかかるコストは、他の要素(たとえばチップインダクタやトランジスタ)1つかかるコストに比べて大きい。したがって、バイパス量検出部20の個数を1つとすることで、前述した実施形態に比べて、ノイズバイパス回路にかかるコストを低減することができる。
また、チップインダクタ(L12〜L15)およびそれに接続するスイッチの数を増やすことで、インダクタンス調整処理時に、スイッチの切り替えによって実現可能なインダクタンスの数値の種類を増やすことができる。このため、バイパス部10のとりうるインダクタンス、ひいてはインピーダンスの自由度を向上させることができる。なお、本変形例が備えるチップインダクタの数は、4つに限らず、1つであってもよい。
また、各実施形態で備えていたコンデンサは、バリキャップダイオードを用いてもよく、制御部40はアナログ回路で実現してもよい。さらに、第1〜第3の実施形態においては、ノイズが変化するたびにスイッチを切り替えて、バイパス量が減少した場合には、1つ手前のスイッチ状態となるように設定したが、これに限らない。たとえば、車両イミュニティ試験時に各周波数において、最適なスイッチ状態を求め、記憶部46に登録しておき、周波数推定部45で推定したノイズの周波数に応じて最適なスイッチ状態を記憶部46より読み出せばよい。
また、以上では、本発明のノイズバイパス回路100を、車両に搭載されるECU内のプリント基板90に適用した例を挙げたが、これに限らない。本発明は、比較的長いワイヤーハーネスや配線によって他の装置と接続している制御回路に適用でき、例えば、船や飛行機、鉄道などのほか、産業機器、家庭用電気機器、アミューズメント機器、複写機、エレベータなどの制御回路に適用できる。