A.実施形態:
A−1.システム構成:
図1は、本実施形態のエンジン100の概略構成を示す説明図である。エンジン100は、吸気・圧縮・膨張・排気の4つの行程を繰り返しながら燃焼室内で混合気を燃焼させ、燃焼によって生じた圧力を機械的な仕事に変換して動力を出力する。図1には、エンジン100の構造を示すために、燃焼室のほぼ中央における断面が示されている。図1に示すように、エンジン100の本体は、シリンダヘッド130と、シリンダブロック140と、ピストン144と、エンジン制御用ユニット200(以下、単に「ECU200」とも呼ぶ)と、によって構成されている。
シリンダブロック140は、シリンダヘッド130の下部に組みつけられている。シリンダブロック140の内部には、円筒形のシリンダ142が形成されている。シリンダ142の内部には、ピストン144が摺動可能に配置されている。ピストン144は、コネクティングロッド146を介してクランクシャフト148に接続されている。ピストン144は、クランクシャフト148の回転に伴なってシリンダ142の内部を上下方向に摺動する。クランクシャフト148には、クランク角を検出するクランク角センサ32が配置されている。ピストン144と、シリンダヘッド130の下面と、シリンダブロック140と、によって囲まれたシリンダ142が燃焼室となる。
シリンダヘッド130には、エンジン100に吸入される空気が通過する吸気通路12と、エンジン100から排気される排気ガスが通過する排気通路16と、が形成されている。吸気通路12および排気通路16は、シリンダ142に接続している。吸気通路12とシリンダ142との開閉は、吸気バルブ132によって行なわれる。また、排気通路16とシリンダ142との開閉は、排気バルブ134によって行なわれる。吸気バルブ132および排気バルブ134のそれぞれは、電動アクチュエータ152および電動アクチュエータ154のそれぞれによって駆動される。電動アクチュエータ152および電動アクチュエータ154のそれぞれにECU200によって電圧が印加されることで、吸気バルブ132および排気バルブ134のそれぞれが開閉される。電動アクチュエータ152は、吸気バルブ132の開閉のタイミングを制御することで、燃焼室内における不活性ガスを残留させる。なお、燃焼室内に残留した不活性ガスを、内部EGR(Exhaust Gas Recirculation)ガスともいう。内部EGRガスが燃焼室内に残留することで、空気を吸入するポンピングロスが減って燃費が向上し、NOxの低減にも効果がある。
また、シリンダヘッド130には、燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁14と、燃料室内の混合気を点火するためのスパークプラグ136と、が配置されている。詳細については後述するが、ECU200は、エンジン100の運転条件に応じて点火のためにスパークプラグ136に投入される投入エネルギーを制御する。なお、本実施形態では、燃料噴射弁14が燃料を燃焼室内に噴射するが、他の実施形態では、燃料噴射弁14が吸気通路12に設けられることで、燃料噴射弁14が吸気通路内に燃料を噴射してもよい。
吸気通路12と外気との間には、スロットル弁26と、エアフローセンサ18と、が形成されている。スロットル弁26は、ECU200によって制御された電動アクチュエータ24によって吸気通路12における開度を制御する。スロットル弁26の開度によって、燃焼室内に吸入される空気の量が調節される。エアフローセンサ18は、吸気通路12を流れる空気の流量を検出する。
また、エンジン100には、排気通路16と吸気通路12とを接続するEGR通路160が形成されている。EGR通路160は、排気バルブ134から排出される排気ガスの一部を、吸気通路12へと流入させる通路である。吸気通路12へと流入した排気ガスは、吸気通路12に吸入された空気と共に燃焼室内に供給される。EGR通路160には、EGR弁162が形成されている。EGR弁162は、ECU200によって制御されることで、開度が調整され、吸気通路12へと流入させる排気ガスの量を調整する。このように、排気ガスを再び燃焼室内に還流させることはEGRと呼ばれ、還流させる排気ガスは外部EGRガスと呼ばれる。内部EGRガスと同様に、外部EGRガスが燃焼室内に供給されることで、吸気を吸入するポンピングロスが減って燃費が向上し、NOxの低減にも効果がある。なお、請求項における排気には、内部EGRガスおよび外部EGRガスが含まれる。
ECU200は、エンジン100の運転条件を検出して、エンジン100における各部の動作を制御する。ECU200は、CPU、RAM、ROM、A/D変換素子、D/A変換素子などを接続して構成された周知のマイクロコンピュータである。ECU200は、クランク角センサ32が検出したクランク角によって、エンジン100の回転速度(rpm)を算出する。また、ECU200は、アクセルペダルに内蔵されたアクセル開度センサ(図示しない)が検出するアクセル開度によって、エンジン100の負荷を算出する。ECU200は、エンジン100の回転速度および負荷を含む運転条件に基づいてスロットル弁26やEGR弁162の開度を制御する。また、ECU200は、エアフローセンサ18やクランクシャフト148のクランク角に基づいて、電動アクチュエータ152,154、あるいは、燃料噴射弁14を駆動する。ECU200には、プラグ制御部560が含まれる。プラグ制御部560は、スパークプラグ136を制御する。なお、詳細については後述するが、点火システム500は、プラグ制御部560とスパークプラグ136とによって構成されている。
図2は、スパークプラグ136の概略構成を示す説明図である。図1では、スパークプラグ136の軸心である軸線ALを境界として、右側にスパークプラグ136の外観形状を図示し、左側にスパークプラグ136の断面形状を示している。以下の説明では、図1の下方側(スパークプラグ136において後述の接地電極10が配置されている側)を先端側と呼び、図1の上方側(スパークプラグ136において後述の端子金具40が配置されている側)を基端側と呼ぶ。
スパークプラグ136は、中心電極20と、絶縁碍子30と、端子金具40と、主体金具50と、接地電極10とを備える。なお、スパークプラグ136の軸線ALは、中心電極20、絶縁碍子30、端子金具40および主体金具50の各部材の軸心でもある。
中心電極20は、軸線ALに沿った方向(軸線方向)に延びる棒状の電極である。本実施形態において、「軸線方向」とは、+Z方向および−Z方向(以下、「Z軸方向」とも呼ぶ)の両方向を含む意味を有する。中心電極20のうち、先端部は絶縁碍子30から露呈しており、先端部を除く他の部分は絶縁碍子30によって保持されている。中心電極20の基端部は、抵抗体22およびシール体23を介して端子金具40に電気的に接続されている。
中心電極20は、先端に電極チップ70を備えている。電極チップ70は、耐火花消耗性や耐酸化消耗性に優れる金属により形成されている。電極チップ70は、軸線ALと一致する軸線を有する円柱形の外観形状を有する。本実施形態では、電極チップ70は中心電極20の一部を構成し、中心電極20の先端とは、電極チップ70の先端を意味する。
絶縁碍子30は、軸心に沿って形成されている貫通孔31を有する筒状の絶縁体である。貫通孔31には、中心電極20における先端部を除く他の部分が挿入されている。絶縁碍子30は、主体金具50により保持されている。絶縁碍子30の基端側は、露呈されている。
端子金具40は、先端側が絶縁碍子30の貫通孔31に収容され、基端側が貫通孔31から露呈している。端子金具40には、ケーブルが接続され、後述するように、高電圧が印加される。
主体金具50は、絶縁碍子30が挿入された筒状の金具であり、例えば、低炭素鋼などの金属により形成されている。主体金具50には、加締め部56が備えられている。主体金具50は、加締め部56において加締められることにより、絶縁碍子30に組み付けられる。
加締め部56は、座屈部54と同様に、主体金具50における他の部位に比べて薄肉に形成され、自身の基端部が内側(主体金具50の軸心に向かう方向)に向かって折り曲げられた構造を有する。加締め部56は、工具係合部55の基端に接して配置されている。スパークプラグ136の製造時には、加締め部56を内側に折り曲げるようにして先端側に向けて加圧することにより、座屈部54が圧縮変形する。
接地電極10は、屈曲した棒状の金属製部材である。接地電極10の構造は、中心電極20と同様な構造としてもよい。接地電極10では、一方の端部が主体金具50の端面57に溶接されており、他方の端部が中心電極20の先端部と対向するように屈曲されている。
接地電極10は、中心電極20の先端(電極チップ70の先端)と対向する位置に、電極チップ60を備えている。電極チップ60は、前述の電極チップ70と同様に、耐火花消耗性や耐酸化消耗性に優れる金属により形成されている。本実施形態では、接地電極10の電極チップ60と、中心電極20の電極チップ70との間には、火花放電のための間隙Gが形成されている。
図3は、スパークプラグ136が用いられる点火システムの概略構成を示す説明図である。点火システム500は、スパークプラグ136に電圧を印加することにより、プラズマを発生させ、燃焼室内の混合気に点火する。図3に示すように、点火システム500は、スパークプラグ136に加えて、放電用電源510と、バッテリ520と、高周波電源530と、インピーダンスマッチング回路540と、混合回路550と、プラグ制御部560と、を備えている。なお、プラグ制御部560は、ECU200に含まれる機能の一つである。プラグ制御部560は、放電用電源510および高周波電源530を制御することで、スパークプラグ136に電圧を印加するタイミングを制御する。
放電用電源510は、一次コイル511と、二次コイル512と、コア513と、イグナイタ514と、を備えている。一次コイル511は、コア513を中心とする巻線から形成されている。一次コイル511では、一端がバッテリ520に接続され、他端がイグナイタ514に接続されている。二次コイル512は、コア513を中心とする巻線から形成されている。二次コイル512では、一端が一次コイル511およびバッテリ520に接続されると共に、他端が混合回路550を介してスパークプラグ136に接続されている。イグナイタ514は、トランジスタにより構成されている。イグナイタ514は、プラグ制御部560から入力される信号に応じて、バッテリ520から一次コイル511に対する電力の供給状態と、かかる電力の供給停止状態とを切り替える。スパークプラグ136に高電圧を印加する場合には、バッテリ520から一次コイル511に電流を流し、コア513の周囲に磁界を形成すると共に、プラグ制御部560から出力される信号をオンからオフに切り替えることにより、コア513の磁界を変化させて二次コイル512に高電圧を発生させる。そして、二次コイル512に生じた高電圧がスパークプラグ136(中心電極20)に印加されることにより、間隙Gにおいて火花放電が発生する。
高周波電源530は、スパークプラグ136に対して比較的高い周波数(例えば、1MHz以上20MHz以下)の電圧を供給する。高周波電源530によりスパークプラグ136に供給される電圧は、交流電圧である。なお、放電用電源510および高周波電源530は、請求項におけるエネルギー源に相当する。
インピーダンスマッチング回路540は、高周波電源530と混合回路550とに接続されている。インピーダンスマッチング回路540は、高周波電源530側の出力インピーダンスと、間隙Gにおいて火花放電が生じている際の混合回路550およびスパークプラグ136側(すなわち、負荷側)の入力インピーダンスとを一致させる。これにより、スパークプラグ136に供給される高周波数の電力の減衰防止が図られている。なお、高周波電源530からスパークプラグ136までの電力の伝送路を、同軸ケーブルにより構成して、電力の反射が防止されてもよい。
混合回路550は、放電用電源510から出力される電力の伝送路517と、高周波電源530から出力される電力の伝送路518とを、スパークプラグ136に接続される1つの伝送路519にまとめる。混合回路550は、コイル551とコンデンサ552とを備えている。コイル551は、放電用電源510から出力される比較的低い周波数の電流を通過させる一方で、高周波電源530から出力される比較的高い周波数の電流を通過不能として、高周波電源530から出力される電流の放電用電源510側への流入を抑制する。コンデンサ552は、高周波電源530から出力される比較的高い周波数の電流を通過させる一方で、放電用電源510から出力される比較的低い周波数の電流の通過を抑制する。このため、放電用電源510から出力される電流の高周波電源530側への流入が抑制される。なお、二次コイル512をコイル551の代わりに用いることにより、コイル551を省略することもできる。
A−2.運転モード決定処理:
図4は、エンジン100の運転モード決定処理の流れを示す説明図である。運転モード決定処理は、設定された基準エネルギーと検出された運転条件との比較結果によって、エンジン100の運転モードを決定して、スパークプラグ136に投入する投入エネルギーを決定する処理である。
運転モード決定処理では、初めに、プラグ制御部560がスパークプラグ136に投入する1回あたりの放電の基準エネルギーを記憶する(ステップS11)。本実施形態では、耐久試験等によってスパークプラグ136に投入される目標の累積の投入エネルギーYt(目標累積投入エネルギーYt)を、スパークプラグ136における目標の放電回数Xt(目標放電回数Xt)で除して、下記数式(1)で表わす1回あたりの放電における基準エネルギーaが設定される。プラグ制御部560は、設定された基準エネルギーaを記憶する。なお、目標放電回数Xtは、請求項における放電の上限回数Xzに相当し、目標累積投入エネルギーYtは、請求項における上限回数Xzまでの放電における基準エネルギーYzに相当する。
基準エネルギーaが記憶されると(ステップS11)、プラグ制御部560は、スパークプラグ136に既に投入された累積の投入エネルギーY(累積投入済エネルギーY)と、スパークプラグ136が基準エネルギーaと既に放電した累積の回数X(放電済回数X)との積(積a・X)と、を初期設定の値として記憶する(ステップS13)。なお、積a・Xは、1回あたりの放電における基準エネルギーaと放電済回数Xとの積であるため、放電済回数Xの放電における累積された基準エネルギー(以下、「累積基準エネルギーa・X」と呼ぶ)を表わす。
次に、プラグ制御部560は、エンジン100の運転条件を検出する(ステップS13)。プラグ制御部560は、エンジン100の運転条件として、クランク角センサ32を用いてエンジン100の回転速度(rpm)を検出し、アクセル開度センサを用いてエンジン100の負荷を検出する。次に、プラグ制御部560は、エンジン100の回転速度が2000rpm以下であるか否かを判定する(ステップS14)。回転速度が2000rpm以下であると判定された場合には(ステップS14:YES)、プラグ制御部560は、エンジン100の負荷の大きさを判定する(ステップS15)。なお、本実施形態では、エンジン100の負荷が0以上75キロワット(kw)未満の場合に負荷の大きさが「低」、エンジン100の負荷が75kw以上225kw未満の場合に負荷の大きさが「中」、エンジンの負荷が225kw以上の場合に負荷の大きさが「高」に設定されている。
ステップS15の処理において、エンジン100の負荷が「高」であると判定された場合には、プラグ制御部560は、累積投入済エネルギーYと累積基準エネルギーa・Xとの大小関係を判定する(ステップS16)。累積投入済エネルギーYが累積基準エネルギーa・Xよりも大きいことは、累積投入済エネルギーYが理想の投入エネルギーの累積よりも大きいことを表わす。放電済回数Xが目標放電回数Xtに達した場合に、累積投入済エネルギーYから累積基準エネルギーa・Xを差し引いた値が大きいことは、スパークプラグ136の消耗量が想定されていたよりも大きいことを表わしている。なお、放電済回数Xは、請求項における第1の期間における放電に相当し、累積投入済エネルギーYは、第1の期間において投入された投入エネルギーに相当する。
ステップS16の処理において、累積投入済エネルギーYが累積基準エネルギーa・Xに1.2を乗じた値(1.2a・X)よりも大きいと判定された場合には(ステップS16:Y>1.2a・X)、プラグ制御部560は、大燃料モードにおける投入エネルギー決定処理に移行する(ステップS20)。なお、大燃料モードにおける投入エネルギー決定処理の詳細については後述する。ステップS15の処理において、累積投入済エネルギーYが累積基準エネルギーa・Xに1.2を乗じた値(1.2a・X)以下であると判定された場合には(ステップS16:1.2a・X≧Y)、プラグ制御部560は、中燃料モードにおける投入エネルギー決定処理に移行する(ステップS40)。なお、中燃料モードにおける投入エネルギー決定処理の詳細については後述する。
ステップS15の処理において、エンジン100の負荷が「中」であると判定された場合には(ステップS15:中)、プラグ制御部560は、累積投入済エネルギーYと累積基準エネルギーa・Xとの大小関係を判定する(ステップS17)。累積投入済エネルギーYが累積基準エネルギーa・Xに1.2を乗じた値(1.2a・X)よりも大きいと判定された場合には(ステップS17:1.2a・X<Y)、プラグ制御部560は、大燃料モードにおける投入エネルギー決定処理に移行する(ステップS20)。ステップS17の処理において、累積投入済エネルギーYが、累積基準エネルギーa・Xに0.8を乗じた値(0.8a・X)よりも大きく、かつ、累積基準エネルギーa・Xに1.2を乗じた値(1.2a・X)以下であると判定された場合には(ステップS17:0.8a・X<Y≦1.2a・X)、プラグ制御部560は、中燃料モードにおける投入エネルギー決定処理に移行する(ステップS40)。ステップS17の処理において、累積投入済エネルギーYが累積基準エネルギーa・Xに0.8を乗じた値(0.8a・X)以下であると判定された場合には(ステップS17:Y≦0.8a・X)、プラグ制御部560は、省燃料モードにおける投入エネルギー決定処理に移行する(ステップS60)。なお、省燃料モードの詳細については後述する。
ステップS15の処理において、エンジン100の負荷が「低」であると判定された場合には(ステップS15:低)、プラグ制御部560は、累積投入済エネルギーYと累積基準エネルギーa・Xとの大小関係を判定する(ステップS18)。累積投入済エネルギーYが累積基準エネルギーa・Xに0.8を乗じた値(0.8a・X)以下であると判定された場合には(ステップS18:Y≦0.8a・X)、プラグ制御部560は、省燃料モードにおける投入エネルギー決定処理に移行する(ステップS60)。ステップS18の処理において、累積投入済エネルギーYが累積基準エネルギーa・Xに0.8を乗じた値(0.8a・X)よりも大きいと判定された場合には(ステップS18:Y>0.8a・X)、プラグ制御部560は、中燃料モードにおける投入エネルギー決定処理に移行する(ステップS40)。
ステップS14の処理において、エンジン100の回転速度が2000rpmよりも大きいと判定された場合には(ステップS14:NO)、プラグ制御部560は、エンジン100の負荷の大きさが「低」か否かを判定する(ステップS19)。エンジン100の負荷の大きさが「低」ではない、すなわち、負荷の大きさが「中」または「高」であると判定された場合には(ステップS19:NO)、プラグ制御部560は、大燃料モードにおける投入エネルギー決定処理に移行する(ステップS20)。ステップS19の処理において、エンジン100の負荷の大きさが「低」であると判定された場合には(ステップS19:YES)、プラグ制御部560は、省燃料モードにおける投入エネルギー決定処理に移行する(ステップS60)。
A−3.各運転モードにおける投入エネルギー決定処理:
図5ないし図7は、運転モードにおける投入エネルギー決定処理の流れを示す説明図である。図5には、大燃料モードにおける投入エネルギー決定処理の流れが示されている。大燃料モードにおける投入エネルギー決定処理では、初めに、プラグ制御部560は、累積投入済エネルギーYと累積基準エネルギーa・Xとの大小関係を判定する(ステップS21)。累積投入済エネルギーYが累積基準エネルギーa・Xよりも大きいと判定された場合には(ステップS21:NO)、プラグ制御部560は、スパークプラグ136の放電モードを放電エネルギー過小モードに設定する(ステップS22)。スパークプラグ136の放電モードによって、スパークプラグ136に投入される投入エネルギー、および、混合気に含まれるEGRガスの割合(以下、「EGR率」とも呼ぶ)が決定される。放電エネルギー過小モードでは、プラグ制御部560は、混合気に含まれるEGR率を0パーセント(%)に設定する(ステップS23)。なお、累積投入済エネルギーYが累積基準エネルギーa・Xよりも大きい状態は、請求項における過大エネルギー状態に相当し、累積投入済エネルギーYが累積基準エネルギーa・X以下である状態は、請求項における過小エネルギー状態に相当する。
次に、プラグ制御部560は、放電エネルギー過小モードにおけるスパークプラグ136への投入エネルギーとして、yLLを投入する(ステップS24)。なお、スパークプラグ136への投入エネルギーとして、yLLの他に、後述するyL、yS、yH、yHHがあるが、yLL、yL、yS、yH、yHHの順にエネルギーが大きくなる。なお、投入エネルギーyLL、yL、yS、yH、yHHは、請求項における複数の段階に分けられた投入エネルギーに相当する。投入エネルギーとしてyLLが投入されると(ステップS24)、プラグ制御部560は、累積投入済エネルギーYおよび放電済回数Xのデータを更新する(ステップS25)。投入エネルギーyLLが投入される直前までにおける累積投入済エネルギーがy0、放電済回数がx0であった場合に、投入エネルギーyLLが投入された後の累積投入済エネルギーYおよび放電済回数Xは、下記数式(2)および(3)で表わされる。
なお、上記数式(2)における左辺は、請求項における第2の期間における投入エネルギーに相当し、x0の直後の放電は、請求項における第2の期間における放電に相当する。
投入エネルギーyLLが投入された後に、累積投入済エネルギーYおよび放電済回数Xのデータが更新されると、プラグ制御部560は、更新された累積投入済エネルギーYおよび放電済回数Xを、新たなy0およびx0と設定する(ステップS30)。次に、プラグ制御部560は、エンジン100がストップしたか否かを判定する(ステップS31)。自動車が走行を止めて、エンジン100がストップしたと判定された場合には(ステップS31:YES)、プラグ制御部560は、運転モード決定処理を終了する。自動車が引き続き走行中で、エンジン100が動いている場合には(ステップS31:NO)、プラグ制御部560は、図4のステップS12以降の処理を繰り返す。
図5のステップS21の処理において、累積投入済エネルギーYが累積基準エネルギーa・X以下であると判定された場合には(ステップS21:YES)、プラグ制御部560は、スパークプラグ136の放電モードを放電エネルギー小モードに設定する(ステップS26)。放電エネルギー小モードでは、プラグ制御部560は、混合気に含まれるEGR率を5%に設定する(ステップS27)。
次に、プラグ制御部560は、スパークプラグ136への投入エネルギーとして、yLを投入する(ステップS24)。投入エネルギーyLが投入された後、プラグ制御部560は、累積投入済エネルギーYおよび放電済回数Xのデータを更新する(ステップS25)。累積投入済エネルギーYは、上記数式(2)におけるyLLをyLで置き換えた関係で表わされる。累積投入済エネルギーYおよび放電済回数Xのデータが更新されると、プラグ制御部560は、更新された累積投入済エネルギーYおよび放電済回数Xを、新たなy0およびx0として設定する(ステップS30)。次に、プラグ制御部560は、ステップS31以降の処理を行なう。
図6には、中燃料モードの流れが示されている。中燃料モードにおける投入エネルギー決定処理では、初めに、プラグ制御部560は、累積投入済エネルギーYと累積基準エネルギーa・Xとの大小関係を判定する(ステップS41)。累積投入済エネルギーYが累積基準エネルギーa・Xよりも大きいと判定された場合には(ステップS41:Y>aX)、プラグ制御部560は、スパークプラグ136の放電モードを放電エネルギー小モードに設定する(ステップS42)。以降の処理であるステップS43ないしステップS45、ステップS54、および、ステップS55については、大燃料モードにおける投入エネルギー決定処理におけるステップS27(図5)ないしステップS31と同じ処理であるため、説明を省略する。
図6のステップS41の処理において、累積投入済エネルギーYが累積基準エネルギーa・Xと同じ値であると判定された場合には(ステップS41:Y=aX)、プラグ制御部560は、スパークプラグ136の放電モードを放電エネルギー標準モードに設定する(ステップS46)。放電エネルギー標準モードでは、プラグ制御部560は、混合気に含まれるEGR率を10%に設定する(ステップS47)。
次に、プラグ制御部560は、スパークプラグ136への投入エネルギーとして、ySを投入する(ステップS48)。累積投入済エネルギーYは、上記数式(2)におけるyLLをySで置き換えた関係で表わされる。投入エネルギーySが投入された後、プラグ制御部560は、累積投入済エネルギーYおよび放電済回数Xのデータを更新する(ステップS49)。累積投入済エネルギーYおよび放電済回数Xのデータが更新されると、プラグ制御部560は、更新された累積投入済エネルギーYおよび放電済回数Xを、新たなy0およびx0として設定する(ステップS54)。次に、図5のステップS31と同じ処理であるステップS55(図6)以降の処理が行なわれる。
ステップS41の処理において、累積投入済エネルギーYが累積基準エネルギーa・Xよりも小さいと判定された場合には(ステップS41:Y<aX)、プラグ制御部560は、スパークプラグ136の放電モードを放電エネルギー大モードに設定する(ステップS50)。放電エネルギー大モードでは、プラグ制御部560は、混合気に含まれるEGR率を15%に設定する(ステップS51)。
次に、プラグ制御部560は、スパークプラグ136への投入エネルギーとして、yHを投入する(ステップS52)。投入エネルギーyHが投入された後、プラグ制御部560は、累積投入済エネルギーYおよび放電済回数Xのデータを更新する(ステップS53)。累積投入済エネルギーYは、上記数式(2)におけるyLLをyHで置き換えた関係で表わされる。累積投入済エネルギーYおよび放電済回数Xのデータが更新されると、プラグ制御部560は、更新された累積投入済エネルギーYおよび放電済回数Xを、新たなy0およびx0として設定する(ステップS54)。次に、プラグ制御部560は、ステップS55以降の処理を行なう。
図7には、省燃料モードにおける投入エネルギー決定処理の流れが示されている。省燃料モードにおける投入エネルギー決定処理では、初めに、プラグ制御部560は、累積投入済エネルギーYと累積基準エネルギーa・Xとの大小関係を判定する(ステップS61)。累積投入済エネルギーYが累積基準エネルギーa・Xよりも大きいと判定された場合には(ステップS61:NO)、プラグ制御部560は、スパークプラグ136の放電モードを放電エネルギー大モードに設定する(ステップS62)。以降の処理であるステップS63ないしステップS65、ステップS70、および、ステップS71については、中燃料モードにおける投入エネルギー決定処理におけるステップS51(図6)ないしステップS55の処理と同じ処理であるため、説明を省略する。
図7のステップS61の処理において、累積投入済エネルギーYが累積基準エネルギーa・X以下であると判定された場合には(ステップS61:NO)、プラグ制御部560は、スパークプラグ136の放電モードを放電エネルギー過大モードに設定する(ステップS66)。放電エネルギー過大モードでは、プラグ制御部560は、混合気に含まれるEGR率を20%に設定する(ステップS67)。
次に、プラグ制御部560は、スパークプラグ136への投入エネルギーとして、yHHを投入する(ステップS68)。投入エネルギーyHHが投入された後、プラグ制御部560は、累積投入済エネルギーYおよび放電済回数Xのデータを更新する(ステップS69)。累積投入済エネルギーYは、上記数式(2)におけるyLLをyHHで置き換えた関係で表わされる。累積投入済エネルギーYおよび放電済回数Xのデータが更新されると、プラグ制御部560は、更新された累積投入済エネルギーYおよび放電済回数Xを、新たなy0およびx0として設定する(ステップS70)。次に、プラグ制御部560は、ステップS71以降の処理を行なう。
図8は、エンジン100の運転条件と各運転モードとの関係の一例を示す説明図である。図8には、エンジン100の回転速度、負荷、および、累積投入済エネルギーYと累積基準エネルギーa・Xとの大小関係によって決定されるスパークプラグ136の放電モードが一覧で示されている。図8に示す一覧は、図4ないし図7の処理によって決定されるスパークプラグ136の放電モードである。例えば、エンジン100の回転速度が1000rpmであり、エンジン100の負荷が「中」である場合には、運転モードが中燃料モードに決定される。その後、累積投入済エネルギーYと累積基準エネルギーa・Xとの大小関係によって、スパークプラグ136の放電モードが小モード、標準モード、大モードのいずれかに決定される。
図9は、累積投入済エネルギーYと特定の1回あたりの放電における投入エネルギーとの関係の一例を示す説明図である。図9には、スパークプラグ136の放電回数が0回から1000回までの間に、スパークプラグ136に投入された累積投入済エネルギーYと特定の1回あたりの放電において投入された投入エネルギーとの関係の一例が示されている。
図9に示すように、初期設定として、キーをオンにしてエンジン100を始動させる直前では、フロー回数が0、すなわち、まだスパークプラグ136が1回も放電していない状態であるため、エンジン100の回転速度が0、エンジン100の負荷が「−」として設定される。また、本実施形態では、目標累積投入エネルギーYtが10000、目標放電回数Xtが1000に設定されているため、基準エネルギーaが10に設定される。なお、図9では、説明を簡単にするため、エネルギーの単位を特に設定していないが、投入エネルギーyLLが1とした場合の値を用いている。他の実施形態では、エネルギーの単位として、ジュール(J)等の単位が用いられてもよい。基準エネルギーaが設定されると、投入エネルギー決定処理に用いられる累積基準エネルギーa・Xに、0.8、1.0、1.2を乗じた値が算出される。初期設定では、放電済回数Xが0であるため、算出された値のいずれもが0になる。また、累積投入済エネルギーYも0であるため、投入エネルギーYと累積基準エネルギーa・Xとは同じ値になる。初期設定では、エンジン100が回転しておらず、スパークプラグ136の放電もないため、スパークプラグ136の投入エネルギーは設定されない。なお、本実施形態では、図9に示すように、投入エネルギーyLL、yL、yS、yH、yHHのそれぞれが1、5、10、15、20に設定されている。
次に、フロー回数が1の状態において、エンジン100の回転速度が1000rpmで2000rpm以下であり、エンジン100の負荷が「低」であり、累積投入済エネルギーYと累積基準エネルギーa・Xとが0で同じであるため、スパークプラグ136の運転モードが中燃料モードに設定される。この場合に、累積投入済エネルギーYと累積基準エネルギーa・Xとが同じであるため、放電モードが放電エネルギー標準モードに設定され、EGR率が10%に設定され、投入エネルギーがySに設定される。その後、更新された累積投入済エネルギーYおよび放電済回数Xとして、y0とx0のそれぞれが10と1とに設定されて、フロー回数が1の処理が終了する。フロー回数が1の処理と同様の処理が1回の放電ごとに行なわれる。
フロー回数が目標放電回数Xtである1000に達すると、プラグ制御部560は、インストルメントパネル(instrument panel)におけるスパークプラグ136の交換を知らせるランプを点灯させる。本実施形態では、プラグ制御部560は、スパークプラグ136が交換されると、累積投入済エネルギーYおよび放電済回数Xのデータをリセットする。なお、累積投入済エネルギーYおよび放電済回数Xのデータのリセットは、スパークプラグ136が交換される際に、手動でリセットするかの有無を決定できる態様であってもよい。
図10は、放電済回数Xと累積投入済エネルギーYとの関係の一例を示す説明図である。図10には、図9で示した放電済回数Xの1回から20回までの放電における累積投入済エネルギーYの推移が示されている。横軸を放電済回数Xとした場合に、累積基準エネルギーa・Xを表わす直線L1に近づくような値となる。
プラグ制御部560は、ある特定の時点においてスパークプラグ136の投入エネルギーを、その直前までのスパークプラグ136に投入された累積投入済エネルギーYと累積基準エネルギーa・Xとの比較に基づいて決定する。例えば、図9に示すように、フロー回数が14回の場合に、プラグ制御部560は、累積投入済エネルギーY(128)が累積基準エネルギーa・X(130)よりも小さいため、15回目のスパークプラグ136の放電において、基準エネルギーa(10)よりも大きい投入エネルギーyH(15)をスパークプラグ136に投入する。また、フロー回数が15の場合に、プラグ制御部560は、投入エネルギーY(143)が累積基準エネルギーa・X(140)よりも大きいため、16回目のスパークプラグ136の放電において、基準エネルギーa(10)よりも小さい投入エネルギーyL(5)を投入する。
また、例えば、フロー回数が11回の場合に、プラグ制御部560は、累積投入済エネルギーY(83)から累積基準エネルギーa・X(100)を差し引いた絶対値が17であり、フロー回数が12回の場合に、累積投入済エネルギーY(98)から累積基準エネルギーa・X(110)を差し引いた絶対値が17よりも小さい12となるように、スパークプラグ136の投入エネルギーを決定する。すなわち、プラグ制御部560は、累積投入済エネルギーYから累積基準エネルギーa・Xを差し引いた絶対値が小さくなるような制御を行なう。
以上説明したように、本実施形態の点火システム500は、内燃機関であるエンジン100の混合気に放電して点火するスパークプラグ136と、スパークプラグ136の放電のために電圧を供給する放電用電源510および高周波電源530と、高周波電源530を制御してスパークプラグ136に印加される電圧を制御するプラグ制御部560と、を備えている。プラグ制御部560は、累積投入済エネルギーYが累積基準エネルギーa・Xよりも小さい場合には、スパークプラグ136の次の放電において、基準エネルギーaよりも大きい投入エネルギーをスパークプラグ136に投入する。また、プラグ制御部560は、投入エネルギーYが累積基準エネルギーa・Xよりも大きい場合には、スパークプラグ136の次の放電において、基準エネルギーaよりも小さい投入エネルギーを投入する。そのため、点火システム500では、スパークプラグ136に投入された累積投入済エネルギーYがスパークプラグ136の放電済回数Xに応じた一定値に近づくように制御される。そのため、放電済回数Xの放電後のスパークプラグ136の消耗量の大きさのばらつきが抑制され、目標放電回数Xtの放電が行なわれるよりも早くスパークプラグ136に生じる不具合が抑制される。
また、本実施形態の点火システム500では、プラグ制御部560は、累積投入済エネルギーYに基づいて、次の放電において、スパークプラグ136の投入エネルギーとして、5段階の投入エネルギーyLL、yL、yS、yH、yHHの内から1つを選択する。そのため、この点火システム500では、スパークプラグ136への投入エネルギーが簡便に設定される。
また、本実施形態の点火システム500では、スパークプラグ136に投入された累積投入済エネルギーYは、スパークプラグ136の1回目の放電からの累積の投入エネルギーである。そのため、本実施形態の点火システム500では、累積投入済エネルギーYとしてすべての放電の投入エネルギーが加算されているため、目標放電回数Xtと目標累積投入エネルギーYtとの関係が正確に把握され、スパークプラグ136に生じる不具合をより抑制できる。また、累積投入済エネルギーYが累積基準エネルギーa・Xよりも小さい場合には、スパークプラグ136の消耗量を大きくすることでスパークプラグ136の着火性を向上させて、燃料の消費を抑制できる。
また、本実施形態の点火システム500では、目標累積投入エネルギーYtと目標放電回数Xtとから数式(1)を満たす基準エネルギーaが設定され、プラグ制御部560は、累積投入済エネルギーYから累積基準エネルギーa・Xを差し引いた絶対値が小さくなるように投入エネルギーを決定する。そのため、本実施形態の点火システム500では、スパークプラグ136の交換時期において、スパークプラグ136の消耗量が大きすぎず、かつ、小さすぎないように制御される。よって、スパークプラグ136の消耗量が大きすぎた場合に生じる不具合を抑制でき、かつ、スパークプラグ136の消耗量が小さすぎた場合に、スパークプラグ136の交換がされずに、その後に急速に消耗量が増えた場合に生じる不具合を抑制できる。
また、本実施形態の点火システム500では、プラグ制御部560は、放電済回数Xおよび累積投入済エネルギーYを記憶し、スパークプラグ136が交換されると、累積投入済エネルギーYおよび放電済回数Xのデータをリセットする。そのため、本実施形態の点火システム500では、スパークプラグ136の交換に応じて、放電済回数Xおよび累積投入済エネルギーYの制御が行なわれ、交換後のスパークプラグ136においても適切な交換時期を把握できる。
また、本実施形態の点火システム500では、プラグ制御部560は、スパークプラグ136の放電のために電圧を供給する高周波電源530を制御する。そのため、本実施形態の点火システム500では、電源として高周波電源530が用いられているため、スパークプラグ136の投入エネルギーを容易に可変して制御できる。
また、本実施形態の点火システム500では、同じ運転モードであっても、累積投入済エネルギーYが累積基準エネルギーa・X以下である場合には、プラグ制御部560は、次のスパークプラグ136の放電において、EGR率を上昇させる。そのため、本実施形態の点火システム500では、スパークプラグ136に投入する投入エネルギーを大きくすると共にEGR率を上昇させることで、燃料消費を抑制できる。また、同じ運転モードであっても、累積投入済エネルギーYが累積基準エネルギーa・Xよりも大きい場合には、プラグ制御部560は、次のスパークプラグ136の放電において、EGR率を減少させる。そのため、本実施形態の点火システム500では、スパークプラグ136に投入する投入エネルギーを大きくしない代わりに、EGR率を減少させて、エンジン100自体の着火性を向上させることで、燃料消費を抑制する効果を小さくできる。
また、本実施形態の点火システム500では、プラグ制御部560がインストルメントパネルにスパークプラグ136の交換を知らせるランプを点灯させる。そのため、本実施形態の点火システム500では、予め設定された目標放電回数Xtの放電が行なわれたことを運転手等に認識させ、スパークプラグ136が交換されることで、エンジン100の良好な運転状態を維持させることができる。
B.変形例:
B1.変形例1:
上記実施形態では、スパークプラグ136における1回目の放電から放電済回数Xまでの放電が第1の期間における放電としているが、第1の期間における放電についてはこれに限られず、種々変形可能である。例えば、100回目等の任意の放電から放電済回数Xまでの放電が第1の期間における放電として設定されてもよい。また、上記実施形態では、第2の期間における放電が放電済回数Xの直後の放電としているが、第2の期間における放電については種々変形可能である。例えば、放電済回数Xの直後の10回等の任意の放電における投入エネルギーの累計によって、スパークプラグ136への投入エネルギーが設定されてもよい。
また、上記実施形態では、基準エネルギーaが目標累積投入エネルギーYtと目標放電回数Xtに基づいて設定されたが、基準エネルギーaの設定についてはこれに限られず、種々変形可能である。例えば、基準エネルギーaが目標放電回数Xtに対して2次曲線のような関係となる目標累積投入エネルギーYtによって設定されてもよい。また、基準エネルギーaは、放電済回数Xに対して個々に設定された値であってもよい。また、基準エネルギーaは、運転条件や運転モードによって変更される値であってもよい。
B2.変形例2:
上記実施形態では、回転速度が2000rpm以下であるか否かによって、スパークプラグ136への投入エネルギーが決定されたが、スパークプラグ136への投入エネルギーは、回転速度によって決定されなくてもよく、その他の運転条件等に設定されてもよい。例えば、自動車がアイドリング状態であるか否かでスパークプラグ136への投入エネルギーが決定されてもよい。
図11は、変形例におけるエンジン100の運転モード決定処理の流れを示す説明図である。変形例における運転モード決定処理では、上記実施形態の運転モード決定処理と比較して、ステップS83の運転条件の判定基準と、その後の処理と、が異なり、他の処理については上記実施形態と同じである。変形例における運転モード決定処理では、プラグ制御部560が運転条件を検出して(ステップS83)、エンジン100がアイドリング状態であるか否かを判定する(ステップS84)。エンジン100は、アイドリング状態である場合、回転速度が低回転(例えば、750±500rpm)で、かつ、負荷が軽負荷(低)である。そのため、エンジン100がアイドリング状態であると判定された場合には(ステップS84:YES)、上記実施形態の運転モード決定処理と同じ処理であるステップS87以降の処理が行なわれる。ステップS84の処理において、エンジン100がアイドリング状態ではないと判定された場合には(ステップS84:NO)、プラグ制御部560は、エンジン100の回転速度や負荷に応じて予め定められた所定の放電をスパークプラグ136に行なわせる(ステップS89)。所定の放電が行なわれると、プラグ制御部560は、所定の放電において投入された投入エネルギーyTとして、累積投入済エネルギーYおよび放電済回数Xのデータを更新する(ステップS90)。累積投入済エネルギーYおよび放電済回数Xのデータが更新されると、プラグ制御部560は、上記実施形態と同じ処理であるステップS91およびステップS92の処理を行なう。
この変形例の点火システム500では、エンジン100がアイドリング状態の場合に、プラグ制御部560がスパークプラグ136への投入エネルギーを設定する。そのため、この変形例の点火システム500では、エンジン100の回転速度の変動が小さく、かつ、同じ回転速度で維持する時間の長いアイドリング状態の場合に累積投入済エネルギーYが調整される。よって、スパークプラグ136への投入エネルギーの制御が行なわれやすく、放電済回数Xの放電後のスパークプラグ136の消耗量のばらつきがより抑制され、目標放電回数Xtの放電が行なわれるよりも早くスパークプラグ136に生じる不具合がより抑制される。また、この変形例の点火システム500では、エンジン100がアイドリング状態の場合に、投入エネルギーYが累積基準エネルギーa・Xよりも大きい場合には、スパークプラグ136の次の放電において、基準エネルギーaよりも小さい投入エネルギーが投入される。よって、スパークプラグ136への投入エネルギーの制御を行ないやすく、目標放電回数Xtの放電が行なわれるよりも早くスパークプラグ136に生じる不具合をより抑制できる。
また、エンジン100を搭載した自動車では、走行時のエンジン100の負荷の大きさが高い状態が長い場合がある。この場合には、スパークプラグ136の着火性が良好であるため、累積投入済エネルギーYが累積基準エネルギーa・X以下である状態が長時間持続することとなり、スパークプラグ136の1回あたりの放電における投入エネルギーを基準エネルギーaよりも大きくする制御を行なえないことが多い。また、逆に、エンジン100の負荷が小さい場合には、スパークプラグ136の着火性が良好でないため、スパークプラグ136の1回あたりの放電における投入エネルギーを基準エネルギーaよりも小さくする制御を行なえない場合もある。そのため、投入エネルギーの制御に対してエンジン100の負荷の大きさの影響が少ないアイドリング状態の場合に、プラグ制御部560が、累積投入済エネルギーYが累積基準エネルギーa・Xよりも小さい場合には、スパークプラグ136の次の放電において、基準エネルギーaよりも大きい投入エネルギーをスパークプラグ136に投入してもよい。また、プラグ制御部560は、累積投入済エネルギーYが累積基準エネルギーa・Xよりも大きい場合には、スパークプラグ136の次の放電において、基準エネルギーaよりも小さい投入エネルギーを投入してもよい。また、走行時およびアイドリング状態のエンジン100において、制御可能な範囲で所定の回数における基準エネルギーが、スパークプラグ136の放電ごとに設定されてもよい。この変形例では、エンジン100がアイドリング状態の場合にスパークプラグ136の投入エネルギーの制御が行なわれやすいため、累積投入済エネルギーYを累積基準エネルギーa・Xにより近づけることができ、放電済回数Xの放電後のスパークプラグ136の消耗量の大きさのばらつきを抑制できる。
B3.変形例3:
上記実施形態では、EGR率が制御されることで、有害生成物の発生の抑制やスパークプラグ136の着火性の向上が行なわれたが、混合気の空燃比が制御されることで、これらが行なわれてもよいし、EGR率および空燃比の制御の両方が行なわれてもよい。例えば、同じ運転モードであっても、累積投入済エネルギーYが累積基準エネルギーa・Xよりも大きい場合には、次のスパークプラグ136の放電において、プラグ制御部560が混合気の空燃比を小さくしてもよい。また、同じ運転モードであっても、累積投入済エネルギーYが累積基準エネルギーa・X以下である場合には、次のスパークプラグ136の放電において、プラグ制御部560が混合気の空燃比を大きくしてもよい。この変形例の点火システム500では、スパークプラグ136への投入エネルギーが大きい場合には、投入エネルギーが小さい場合に比べてスパークプラグ136の着火性が良好であるため、空燃比を大きくすることで、スパークプラグ136の着火性を悪化させずに、エンジン100の燃費を向上させることができる。また、スパークプラグ136への投入エネルギーが小さい場合には、投入エネルギーが大きい場合に比べてスパークプラグ136の着火性が悪化するため、空燃比を小さくすることで、エンジン100の着火性を向上させることができる。
B4.変形例4:
図12は、変形例における放電済回数Xと累積投入済エネルギーYとの関係の一例を示す説明図である。図12には、スパークプラグ136がXm回放電した後に、スパークプラグ136へと投入される投入エネルギーの制御について示されている。プラグ制御部560は、スパークプラグ136がXm回放電した場合における累積基準エネルギーYm(a・Xm)を累積投入済エネルギーY0から差し引いたエネルギー差の絶対値Zmを算出する。次に、プラグ制御部560は、スパークプラグ136がまだ放電していないXn回目の放電における累積基準エネルギーYn(a・Xn)を算出する。プラグ制御部560は、Xn回目の放電までにスパークプラグ136へと投入される累積投入済エネルギーY1から累積基準エネルギーYnを差し引いたエネルギー差の絶対値Znが絶対値Zmよりも小さくなるように、スパークプラグ136へと投入する投入エネルギーを制御する。そのため、この変形例のエンジン100では、目標放電回数Xtの放電終了時に、スパークプラグ136へと投入された累積投入済エネルギーYが目標累積投入エネルギーYtに近づく。そのため、スパークプラグ136の消耗量が大きすぎた場合に生じる不具合を抑制でき、かつ、スパークプラグ136の消耗量が小さすぎた場合に、スパークプラグ136の消耗量を大きくすることでエンジン100の着火性を向上させて、燃料の消費を抑制できる。
B5.変形例5:
上記実施形態では、スパークプラグ136にエネルギーを投入するエネルギー源として、高周波電源530が用いられたが、エネルギー源については高周波電源530に限られず、種々変形可能である。例えば、直流電源が用いられてもよい。
また、上記実施形態では、負荷の大きさが、「低」、「中」、「高」の3段階に分類されたが、負荷の大きさの設定についてはこれに限られず、種々変形可能である。例えば、負荷の大きさの分類が2段階であってもよいし、4段階以上であってもよい。また、負荷の大きさの分類についても、上記実施形態の数値に限られず、種々変形可能である。例えば、車種によっては、負荷の大きさが0から50kwの場合に、負荷の大きさが「低」と設定されてもよい。
また、上記実施形態では、図9に示すように、目標累積投入エネルギーYtとして10000、放電回数Xtとして1000が設定されたが、目標累積投入エネルギーYtおよび目標放電回数Xtについては、種々変形可能である。スパークプラグ136の耐久試験等の結果に基づいて、目標放電回数Xtや目標累積投入エネルギーYtが異なる値として設定されてもよいし、目標とする走行距離、および、経年劣化等に基づいて目標放電回数Xtおよび目標累積投入エネルギーYtが設定されてもよい。また、投入エネルギーyLL、yL、yS、yH、yHHについても、種々変形可能である。上記実施形態とは異なる数値が設定されてもよいし、例えば、投入エネルギーySが設定されずに、投入エネルギーが4種に分類され、5種未満、または、6種以上に分類されてもよい。
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現できる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行なうことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。