(第1実施形態)
以下、図1〜図3を参照して、この発明を腕時計に適用した第1実施形態について説明する。
この腕時計は、図1に示すように、腕時計ケース1を備えている。この腕時計ケース1は、図2および図3に示すように、上部側に位置する金属製の第1ケース2と下部側に位置する金属製の第2ケース3とで構成されている。
この腕時計ケース1の上部開口部、つまり第1ケース2の上部開口部には、図2および図3に示すように、時計ガラス4がパッキン4aを介して取り付けられている。この腕時計ケース1の下部、つまり第2ケース3の下部には、裏蓋5が防水リング5aを介して取り付けられている。
また、この腕時計ケース1の内部、つまり第2ケース3の内部には、図2および図3に示すように、時計モジュール6が中枠7を介して設けられている。この時計モジュール6は、図示ないが、時刻などの情報を表示する表示部や、指針の運針により時刻を指示する時計ムーブメントなどの時計機能に必要な各種の部品を備えている。
この時計モジュール6と時計ガラス4との間に位置する腕時計ケース1における第1ケース2の内周面には、図2および図3に示すように、見切り部材8および後述する内転機構10の内転リング11が設けられている。また、腕時計ケース1の3時側、4時側、および8時側に位置する各側部には、図1に示すように、スイッチ装置9がそれぞれ設けられており、この腕時計ケース1の2時側に位置する側部には、内転機構10の操作部材12が設けられている。
ところで、内転機構10は、図1〜図3に示すように、腕時計ケース1の2時側に位置する側部にその内外に突出した状態で回転操作可能に設けられた操作部材12と、この操作部材12の内端部に取り付けられた駆動歯車13と、腕時計ケース1の第1ケース2の内周面に沿って回転する内転リング11と、第1ケース2の内周面に設けられて内転リング11を回転移動可能に保持するガイド保持部14と、を備えている。
この場合、腕時計ケース1の2時側に位置する側部には、図2に示すように、貫通孔1aが内部と外部とに貫通して設けられている。この貫通孔1a内には、円筒部材15が腕時計ケース1の内部と外部とに突出して設けられている。この円筒部材15は、貫通孔1a内に配置される小径筒部15aと、貫通孔1aから腕時計ケース1の外部に突出する大径筒部15bと、を有している。この円筒部材15の内部には、軸孔15cが貫通して設けられている。
操作部材12は、図1および図2に示すように、スイッチ機能を有するものであり、頭部16と、この頭部16に連設された軸部17と、を備えている。頭部16は、腕時計ケース1の外部に配置されている。軸部17は、円筒部材15の軸孔15c内に挿入されて腕時計ケース1の内部と外部とに突出し、この状態で円筒部材15内に回転可能で、かつスライド可能に取り付けられている。
この場合、操作部材12は、図2に示すように、その軸方向に押し出された第1の位置と、軸方向に押し込まれた第2の位置とに、回転可能な状態で、移動するように構成されている。すなわち、この操作部材12は、第1の位置に押し出された際に、軸部17の内端部が時計モジュール6の接点部(図示せず)から離れてスイッチをオフ状態にし、第2の位置に押し込まれた際に、軸部17の内端部が時計モジュール6の接点部を押してスイッチをオン状態にするように構成されている。
また、この操作部材12の頭部16は、図2に示すように、その内径が円筒部材15の大径筒部15bの外径とほぼ同じか、それよりも少し大きい円筒状に形成されている。この頭部16は、円筒部材15の大径筒部15bの外周に設けられた防水リング18が頭部16の内周面に弾接して摺動するように構成されている。また、この頭部16の内端面と大径筒部15bの外端面との間には、ばね部材19が配置されている。
このばね部材19は、図2に示すように、コイルばねであり、頭部16の内端面と大径筒部15bの外端面との間に位置する軸部17の外周に配置され、この状態で外端部が頭部16の内端面に弾接し、内端部が大径筒部15bの外端面に弾接するように構成されている。これにより、ばね部材19は、頭部16を腕時計ケース1の外部に向けて押し出す方向に付勢するように構成されている。
また、操作部材12の軸部17は、図2に示すように、その外径が円筒部材15の軸孔15cの内径よりも少し小さく形成されている。この軸部17の外周面には、円筒部材15の小径筒部15aの内周面に弾接して摺動する複数の防水リング20が設けられている。また、この軸部17における腕時計ケース1内に突出する内端部側(図2では左端部側)には、角棒状の歯車取付部21が設けられている。この歯車取付部21には、駆動歯車13がEリングなどの抜止め部材22によって取り付けられている。
この場合、抜止め部材22は、図2に示すように、軸部17の内端部(図2では左端部)に設けられた取付溝部17aに取り付けられて、駆動歯車13が軸部17の歯車取付部21から脱落するのを防ぐように構成されている。また、駆動歯車13は、その中心部に四角形状の軸孔23が設けられ、この軸孔23に操作部材12の歯車取付部21がスライド可能に嵌合するように構成されている。
これにより、駆動歯車13は、図2に示すように、軸部17の歯車取付部21にスライド可能に取り付けられ、この状態で操作部材12と共に一体的に回転すると共に、操作部材12がばね部材19のばね力によって第1の位置に押し出される際、また操作部材12がばね部材19のばね力に抗して第2の位置に押し込まれる際に、軸部17の移動に対して相対的にスライドすることにより、常に同じ位置を維持するように構成されている。
この駆動歯車13は、図2に示すように、その外周部に等間隔で多数の歯部13aが設けられ、この駆動歯車13の上側に位置する歯部13aが腕時計ケース1内に設けられた内転リング11の後述するラック24に噛み合い、この状態で操作部材12の回転操作に伴って操作部材12と共に回転し、その回転に連動して内転リング11を駆動歯車13の回転方向と直交する方向である腕時計ケース1の内周面に沿って回転させるように構成されている。
一方、内転リング11は、方位位置を示す目盛が表示された方位回転板や、時間計測の目盛が表示された計測回転板、あるいは目盛機能を有しない回転板などである。この内転リング11は、図2および図3に示すように、時計ガラス2を通してその上方向から見る状態で、腕時計ケース1の内周面に沿って回転するように構成されている。この場合、腕時計ケース1の第1ケース2の内周面には、内転リング11を回転移動可能に保持するガイド保持部14が第1ケース2内に向けて鍔状に突出して設けられている。
また、この内転リング11は、図2および図3に示すように、第1ケース2のガイド保持部14上に回転移動可能に配置されるリング状の回転体25と、この回転体25上に設けられた回転見切り部26と、回転体25の下面に設けられて駆動歯車13が噛み合うラック24と、を備えている。回転体25は、平板状のリング部25aと、このリング部25aの外周部に起立して設けられた外周部25bと、を有している。
この回転体25は、図2および図3に示すように、その外周部25bの上端部が時計ガラス4の下面に接触または接近した状態で配置されている。また、この回転体25は、その外周部25bの外周面が第1ケース2の内周面に接近した状態で配置されている。これにより、回転体25は、第1ケース2の内周面に沿って回転移動するように構成されている。
回転見切り部26は、図2および図3に示すように、回転体25のリング部25a上に設けられている。この回転見切り部26は、その外周端が回転体25の外周部25bとほぼ同じ高さで、内周端が外周端よりも低く形成されている。これにより、回転見切り部26は、その上面が外周側から内周側に向けて次第に低くなる斜面26aに形成され、この斜面26aに方位位置表示や時間計測表示などの目盛(図示せず)が表示されるように構成されている。
ラック24は、図2および図3に示すように、駆動歯車13の上部側に位置する歯部13aに対応する回転体25の下面に、その下側つまり駆動歯車13に向けて突出した状態で、回転体25の円周方向に沿ってリング状に設けられている。このラック24は、その円周方向に沿って多数の歯部が下側に向けて設けられ、これら多数の歯部に駆動歯車13の上部側に位置する歯部13aが順次噛み合うことにより、回転体25と共に回転移動するように構成されている。
この場合、第1ケース2のガイド保持部14の上面には、図2および図3に示すように、内転リング11のラック24が回転移動可能に挿入するガイド溝27が第1ケース2の内周面に沿ってリング状に形成されている。このガイド溝27は、その内部にラック24が回転移動可能に挿入されていることにより、ラック24および回転体25の径方向における位置を規制するように構成されている。
また、このガイド溝27は、図2に示すように、腕時計ケース1の2時側に位置する箇所が下側に開放され、この開放された箇所に駆動歯車13の上部側に位置する歯部13aが挿入されてラック24に噛み合うように構成されている。また、ガイド保持部14の内周面には、図2および図3に示すように、見切り部材8が設けられている。この見切り部材8は、リング状に形成され、時計モジュール6の上部に設けられた文字板(図示せず)の外周縁を覆うように構成されている。
すなわち、この見切り部材8は、図2および図3に示すように、その外周側の厚みが厚く、内周側に向けて厚みが薄くなる傾斜面8aに形成されている。また、この見切り部材8は、その外周部がガイド保持部14の内周面に取り付けられた状態で、下面が文字板(図示せず)の外周縁における上面に接近すると共に、外周側の上面が内転リング11の回転見切り部26の内端下部に接近して配置されるように構成されている。
次に、この腕時計の作用について説明する。
通常は、図2に示すように、腕時計ケース1の貫通孔1a内に固定された円筒部材15内に回転可能でかつスライド可能に設けられた操作部材12が、ばね部材19のばね力によって腕時計ケース1の外部に向けて押し出される方向、つまり操作部材12の第1の位置に付勢されている。
この状態では、操作部材12の頭部16と軸部17とが第1の位置に押し出されて、操作部材12の軸部17の内端部に設けられた抜止め部材22が駆動歯車13の内側面に当接して、駆動歯車13を円筒部材15の内端部に押し付ける。このため、操作部材12の軸部17の内端部が腕時計ケース1内に配置された時計モジュール6の接点部(図示せず)から離れた位置に配置される。これにより、時計モジュール6のスイッチがオフ状態になる。
また、操作部材12の頭部16をばね部材19のばね力に抗して押圧すると、図2に示す状態で、操作部材12の頭部16と軸部17とが第2の位置に押し込まれる。この状態では、頭部16が円筒部材15の大径筒部15bの外周を覆って腕時計ケース1の外面に接近し、軸部17の内端部の抜止め部材22が駆動歯車13の内側面から離れ、軸部17の内端部が腕時計ケース1内の時計モジュール6の接点部(図示せず)を押してスイッチをオン状態にする。
このように、操作部材12がばね部材19のばね力によって押し出された第1の位置に配置されていても、また操作部材12がばね部材19のばね力に抗して押し込まれた第2の位置に配置されていても、操作部材12の軸部17の移動に対して駆動歯車13が相対的にスライドすることにより、駆動歯車13は腕時計ケース1内の内転リング11のラック24に噛み合った状態を維持する。
一方、この腕時計において内転リング11を回転させて、内転リング11に表示された方位位置表示や時間計測表示などの目盛を選択して指定する場合には、図1および図2に示すように、操作部材12の頭部16を回転操作する。すると、操作部材12の軸部17が回転し、この軸部17の回転に伴って駆動歯車13が回転し、この駆動歯車13の回転に応じて内転リング11が腕時計ケース1の内周面に沿って回転移動する。
この場合には、操作部材12の内端部に設けられた角棒状の歯車取付部21が、駆動歯車13の中心に設けられた角孔状の軸孔23に挿入されているので、操作部材12の軸部17が回転すると、その軸部17の回転と共に駆動歯車13が回転する。このときには、駆動歯車13の上部側に位置する歯部13aが腕時計ケース1内の内転リング11のラック24に噛み合っているので、駆動歯車13の回転に伴って内転リング11が腕時計ケース1の内周面に沿って回転移動する。
また、このときには、図2および図3に示すように、内転リング11の回転体25が腕時計ケース1のガイド保持部14上に回転移動可能に配置され、ラック24がガイド保持部14のガイド溝27内に回転移動可能に配置されているので、内転リング11の回転体25およびラック24における径方向の位置が規制されている。
このため、内転リング11の回転体25およびラック24がその径方向におけるガタつきや遊びが小さく抑えられているので、内転リング11が腕時計ケース1の内周面に沿って円滑に回転移動する。これにより、内転リング11に表示された方位位置や時間計測などの目盛を正確にかつ良好に選択して指定することができる。
このように、この腕時計の内転機構10によれば、腕時計ケース1の側部に回転操作可能に設けられた操作部材12と、腕時計ケース1の内部に突出した操作部材12の内端部に取り付けられた駆動歯車13と、腕時計ケース1の内部に回転移動可能に配置され、かつ駆動歯車13に向けて突出した状態で設けられて駆動歯車13が噛み合うラック24を備える内転リング11と、腕時計ケース1の内部に設けられて内転リング11が配置され、かつラック24が回転移動可能に挿入するガイド溝27を備えるガイド保持部14と、を備えていることにより、内転リング11の回転性能を向上させ、かつ表示領域を広げてワイドフェイス化を図ることができる。
すなわち、この腕時計の内転機構10では、内転リング11のラック24がガイド保持部14のガイド溝27内に回転移動可能に挿入されているので、内転リング11が腕時計ケース1内で回転移動する際に、ガイド溝27によってラック24をガイドすることができる共に、内転リング11の径方向における位置を規制することができる。これにより、内転リング11の径方向におけるガタつきや遊びを小さく抑えることができるので、内転リング11を円滑にかつ良好に回転移動させることができ、これにより内転リング11の回転性能を向上させることができる。
また、この腕時計の内転機構10では、内転リング11の表面である表示面の形状による影響を受けずに、ラック24を内転リング11に設けることができるので、内転リング11を大きく形成しても、ラック24と駆動歯車13との噛み合い位置が影響を受けないようにすることができる。このため、内転リング11の回転性能を向上させることができると共に、表示領域を広げて腕時計全体のワイドフェイス化を図ることができる。
この場合、内転リング11は、腕時計ケース1のガイド保持部14に回転移動可能に配置された回転体25を有し、ラック24は、駆動歯車13に対応する回転体25の一面である下面に駆動歯車13に向けて突出して設けられているので、回転体25をガイド保持部14に配置した際に、内転リング11のラック24をガイド保持部14のガイド溝27内に回転移動可能な状態で確実にかつ良好に挿入させることができる。このため、内転リング11の径方向における位置を正確にかつ良好に規制することができるので、より一層、内転リング11の回転性能を向上させることができる。
また、この内転リング11は、ガイド保持部14上に回転移動可能に配置された回転体25と、この回転体25上に設けられた回転見切り部26と、を備えているので、回転見切り部26を自由な形状で形成することができる。例えば、回転見切り部26の上面を外周側から内周側に向けて次第に低くなる斜面26aに形成することができ、この斜面26aに方位位置表示や時間計測表示などの目盛(図示せず)を見易く表示することができる。
この場合にも、内転リング11のラック24が内転リング11の回転体25の下面にその下側に突出して設けられているので、内転リング11のラック24が内転リング11の回転見切り部26の形状による影響を受けることがなく、回転体25の下面における任意の位置にラック24を設けることができるので、これによっても腕時計全体のワイドフェイス化を図ることができる。
(第2実施形態)
次に、図4を参照して、この発明を腕時計に適用した第2実施形態について説明する。なお、図1〜図3に示された第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
この腕時計は、図4に示すように、内転リング11の回転体25とラック24との間に台座部30を設け、この台座部30とガイド保持部14のガイド溝27との間に緩衝部材31を設けた構成であり、これ以外は第1実施形態とほぼ同じ構成になっている。
すなわち、台座部30は、図4に示すように、ラック24を支持するためものであり、回転体25の下面にその下側に突出した状態で回転体25の円周方向に沿ってリング状に形成されている。この台座部30は、その径方向の長さ(幅)がラック24の径方向の長さ(歯幅)と同じ長さで形成されている。ラック24は、台座部30の下面に一体に形成されている。
この場合、台座部30は、図4に示すように、腕時計ケース1内のガイド保持部14に設けられたガイド溝27内にラック24と共に腕時計ケース1の内周面に沿って回転移動可能に挿入されるように構成されている。これにより、腕時計ケース1内のガイド保持部14に設けられたガイド溝27は、その深さが台座部30の厚み分、第1実施形態よりも深く形成されている。
緩衝部材31は、図4に示すように、断面円形状のリング部材であり、天然ゴム、合成ゴムなどの弾力を有する材料で形成されている。この緩衝部材31は、腕時計ケース1の内部の中心側に位置するガイド溝27の内周面に設けられた環状溝27a内に配置され、この状態でガイド溝27の環状溝27aに対応する台座部30の内周面に接触して摺動するように構成されている。
これにより、緩衝部材31は、図4に示すように、腕時計ケース1のガイド保持部14と内転リング11との熱膨張係数の違いによって、内転リング11のラック24および台座部30がガイド保持部14のガイド溝27内でその内周面を締め付ける際に、内転リング11の台座部30の内周面が圧接するように構成されている。
このため、緩衝部材31は、図4に示すように、ガイド保持部14のガイド溝27に対する内転リング11の台座部30による締め付けを緩衝し、内転リング11の台座部30およびラック部24をガイド保持部14のガイド溝27内で円滑に回転移動させるように構成されている。
このような腕時計の内転機構10によれば、第1実施形態と同様の作用効果あるほか、内転リング11の回転体25の下面に台座部30を設け、この台座部30の下面にラック24を設け、このラック24と共に台座部30をガイド保持部14のガイド溝27内に回転移動可能に挿入した構成であるから、ガイド溝27によって台座部30をラック24と共にガイドすることができる共に、この台座部30によっても内転リング11の径方向における位置を規制することができ、これにより内転リング11が腕時計ケース1内でその径方向にガタツクことがないので、内転リング11の回転性能を向上させることができる。
また、この内転機構10では、台座部30とガイド保持部14のガイド溝27との間に緩衝部材31を設けた構成であるから、内転リング11の台座部30およびラック24の各内周面とガイド保持部14のガイド溝27の内周面との間に隙間を設けることができる。このため、腕時計ケース1のガイド保持部14と内転リング11との熱膨張係数の違いによって、内転リング11のラック24および台座部30がガイド保持部14のガイド溝27の内面を締め付ける際に、内転リング11の台座部30の内周面を緩衝部材31に圧接させることができる。
これにより、この内転機構10では、ガイド保持部14のガイド溝27に対する内転リング11のラック24および台座部30による締め付けを緩衝することができるので、内転リング11の台座部30およびラック部24をガイド保持部14のガイド溝27内で円滑にかつ良好に回転移動させることができる。この場合、緩衝部材31は、ガイド溝27の内周面に沿って設けられたリング部材であることにより、ガイド保持部14のガイド溝27に対する内転リング11のラック24および台座部30による締め付けを確実にかつ良好に緩衝することができる。
(第3実施形態)
次に、図5および図6を参照して、この発明を腕時計に適用した第3実施形態について説明する。この場合には、図4に示された第2実施形態と同一部分に同一符号を付して説明する。
この腕時計は、図5および図6に示すように、内転リング11の回転体25に設けられた台座部30とガイド保持部14のガイド溝27との間に配置される緩衝部材32が、第2実施形態と異なる構成であり、これ以外は第2実施形態とほぼ同じ構成になっている。
すなわち、この緩衝部材32は、図5および図6に示すように、複数の円柱部材であり、それぞれ天然ゴム、合成ゴムなどの弾力を有する材料で形成されている。この緩衝部材32は、腕時計ケース1の内部の中心側に位置するガイド溝27の内周面に沿って所定間隔で設けられている。この場合、ガイド溝27の内周面には、複数の取付凹部27bが所定間隔で設けられている。
これにより、緩衝部材32は、図5および図6に示すように、ガイド溝27の内周面に設けられた複数の取付凹部27b内にそれぞれ配置された状態で、ガイド溝27の複数の取付凹部27bに対応する内転リング11の台座部30の内周面に接触して摺動するように構成されている。
この場合にも、緩衝部材32は、図5および図6に示すように、腕時計ケース1のガイド保持部14と内転リング11との熱膨張係数の違いによって、内転リング11のラック24および台座部30がガイド保持部14のガイド溝27内でその内周面を締め付ける際に、内転リング11の台座部30の内周面が圧接するように構成されている。
これにより、緩衝部材32は、図5および図6に示すように、ガイド保持部14のガイド溝27に対する内転リング11の台座部30による締め付けを緩衝し、内転リング11の台座部30およびラック部24をガイド保持部14のガイド溝27内で円滑に回転移動させるように構成されている。
このような腕時計の内転機構10によれば、内転リング11の回転体25の下面に設けられた台座部30とガイド保持部14のガイド溝27との間にその円周方向に沿って円柱状の複数の緩衝部材32を所定間隔で設けた構成であるから、第2実施形態と同様、内転リング11の台座部30およびラック24の各内周面とガイド保持部14のガイド溝27の内周面との間に隙間を設けることができる。
このため、この内転機構10では、腕時計ケース1のガイド保持部14と内転リング11との熱膨張係数の違いによって、内転リング11のラック24および台座部30がガイド保持部14のガイド溝27の内周面を締め付ける際に、内転リング11の台座部30の内周面を複数の緩衝部材32にそれぞれ圧接させることができる。
これにより、この内転機構10においても、ガイド保持部14のガイド溝27に対する内転リング11のラック24および台座部30による締め付けを複数の緩衝部材32によって緩衝することができるので、内転リング11の台座部30およびラック部24をガイド保持部14のガイド溝27内で円滑にかつ良好に回転移動させることができる。
なお、上述した第2、第3の各実施形態では、腕時計ケース1の中心部側に位置するガイド溝27の内周面とこれに対向する台座部30の内周面との間に緩衝部材31、32を設けた場合について述べたが、これに限らず、例えば腕時計ケース1の外部側に位置するガイド溝27の内周面とこれに対向する台座部30の外周面との間に緩衝部材を設けても良く、またその両方に緩衝部材を設けて良い。
(第4実施形態)
次に、図7を参照して、この発明を腕時計に適用した第4実施形態について説明する。この場合には、図1〜図3に示された第1実施形態と同一部分に同一符号を付して説明する。
この腕時計は、図7に示すように、ガイド保持部14のガイド溝27にラック24の逃げ部35を設けた構成であり、これ以外は第1実施形態とほぼ同じ構成になっている。
この場合、腕時計ケース1の第1ケース2は、第1実施形態と同様、金属で形成されており、内転リング11は、ポリカーボネート樹脂(PC)、ABS樹脂などの合成樹脂で形成されている。このため、第1ケース2と内転リング11とは、熱膨張係数が異なった構成になっている。
この第1ケース2に設けられたガイド保持部14のガイド溝27は、第1実施形態と同様、内転リング11のラック24が回転移動可能に挿入する溝であり、第1ケース2の内周面に沿ってリング状に形成されている。このガイド溝27には、図7に示すように、ラック24のガイド溝27に対する締りを逃す逃げ部35が設けられている。
この逃げ部35は、図7に示すように、ガイド保持部14が設けられた第1ケース2と内転リング11との熱膨張係数の差によるラック24のガイド溝27に対する締りを逃すためのものである。すなわち、この逃げ部35は、ガイド溝27の底部側からその上部開放側に向けて、ガイド溝27の溝幅、つまりガイド溝27の互いに対向する内周面間の長さが次第に広くなるように構成されている。
この場合、この逃げ部35は、図7に示すように、ガイド溝27内における互いに対向する内周面のうち、第1ケース2の内部側に位置するガイド溝27の内周面にテーパ状に形成されている。この逃げ部35は、第1ケース2の内部側に位置するガイド溝27の内周面の傾き角度が、10度〜20度の角度範囲で、好ましくは15度の角度で傾斜するように形成されていることが望ましい。
これにより、この逃げ部35は、図7に示すように、ガイド保持部14が設けられた第1ケース2と内転リング11との熱膨張係数の差によって、ラック24が収縮変形してガイド溝27の内周面を締め付ける際に、ガイド溝27に対するラック24の締りを逃すように構成されている。
すなわち、第1ケース2と内転リング11とは、常温(20℃)の状態に対して±30℃の温度変化が生じると、膨張・収縮変形する。このときには、第1ケース2に対して内転リング11が、大きく膨張・収縮変形する。このため、ラック24は、気温が−20℃の状態になると、ガイド溝27に対して大きく収縮変形する。このときには、逃げ部35によってガイド溝27に対するラック24の締りを逃す。
このような腕時計の内転機構10によれば、ガイド保持部14のガイド溝27に、ガイド保持部14と内転リング11との熱膨張係数の差によるラック24のガイド溝27に対する締りを逃す逃げ部35が設けられていることにより、温度変化によってガイド保持部14のガイド溝27と内転リング11のラック24とに寸法変化が生じても、逃げ部35によってラック24のガイド溝27に対する締りを逃すことができ、これにより内転リング11をガイド溝27に沿って円滑にかつ良好に回転させることができる。
すなわち、この内転機構10では、ガイド保持部14と内転リング11との熱膨張係数に差があるため、常温環境下から低温環境下への温度変化によって、ガイド保持部14のガイド溝27と内転リング11のラック24との収縮に差が生じ、これらの収縮の差によって寸法変化が生じても、その寸法変化によるラック24のガイド溝27に対する締りを逃げ部35によって確実にかつ良好に逃すことができるので、内転リング11をガイド溝27に沿って円滑にかつ良好に回転させることができる。
この場合、逃げ部35は、ガイド溝27の底部側からその開放側に向けてガイド溝27の溝幅、つまりガイド溝27の互いに対向する内周面間の長さが、次第に広くなるテーパ状に形成されていることにより、構造が簡単であるばかりか、第2実施形態の緩衝部材31および第3実施形態の緩衝部材32などのような別部品を必要としないため、部品点数が少なく、組立作業も容易で、生産性が良く、低コスト化を図ることができる。
また、このテーパ状の逃げ部35は、ガイド溝27の互いに対向する内周面のうち、ガイド保持部14の内部側に位置するガイド溝27の内周面に設けられていることにより、例えば−20℃程度の低温環境下でラック24が収縮して寸法変化した際に、ラック24のガイド溝27に対する締りを確実にかつ良好に逃すことができ、これにより内転リング11をガイド溝27に沿って円滑にかつ良好に回転させることができる。
なお、上述した第4実施形態では、テーパ状の逃げ部35を、ガイド溝27の互いに対向する内周面のうち、ガイド保持部14の内部側に位置するガイド溝27の内周面に設けた場合について述べたが、この発明はこれに限らず、例えばテーパ状の逃げ部をガイド保持部14の外部側に位置するガイド溝27の内周面に設けても良い。
この場合には、例えば常温(20℃)よりも+30℃程度高い50℃の高温環境下で、ラック24が膨張変形した際に、ガイド保持部14の外部側に位置するガイド溝27の内周面に設けられた逃げ部によって、ラック24のガイド溝27に対する締りを確実にかつ良好に逃すことができ、これにより内転リング11をガイド溝27に沿って円滑にかつ良好に回転させることができる。
また、この発明は、上述した第4実施形態およびその変形例に限らず、例えばガイド溝27内の互いに対向する両方の内周面に逃げ部を設けても良い。この場合には、常温(20℃)よりも±30℃程度気温が変化した低温環境下および高温環境下において、ラック24が収縮変形しても、また膨張変形しても、ガイド溝27内の互いに対向する両方の内周面に設けられた逃げ部によって、ラック24のガイド溝27に対する締りを確実にかつ良好に逃すことができる。
また、上述した第1〜第4の各実施形態では、腕時計ケース1が上部側の第1ケース2と下部側の第2ケース3とで構成されている場合について述べたが、これに限らず、例えば第1ケースと第2ケースとを一体に形成した構成であっても良い。
また、上述した第1〜第4の各実施形態では、腕時計ケース1の貫通孔1aに円筒部材15を設け、この円筒部材15に操作部材12を取り付けた場合について述べたが、これに限らず、腕時計ケース1の貫通孔1aに操作部材12を直接取り付けた構成であっても良い。
さらに、上述した第1〜第4の各実施形態では、内転リング11に方位位置表示や時間計測表示などの目盛(図示せず)を表示した場合について述べたが、これに限らず、内転リングはワールドタイムにおける世界の各都市を表示しても良く、日付を表示した日車や曜日を表示した曜日車などに適用することができる。
なおまた、上述した第1〜第4の各実施形態では、腕時計に適用した場合について述べたが、必ずしも腕時計である必要はなく、例えばトラベルウオッチ、目覚まし時計、置き時計、掛け時計などの各種の時計に適用することができる。また、時計に限らず、例えば携帯情報端末機などの電子機器にも適用することができる。
以上、この発明のいくつかの実施形態について説明したが、この発明は、これらに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記)
請求項1に記載の発明は、ケースの側部に回転操作可能に設けられた操作部材と、前記ケースの内部に突出した前記操作部材の内端部に取り付けられた歯車と、前記ケースの内部に回転移動可能に配置され、かつ前記歯車に向けて突出した状態で設けられて前記歯車が噛み合うラックを備える内転リングと、前記ケースの内部に設けられて前記内転リングが配置され、かつ前記ラックが回転移動可能に挿入するガイド溝を備えるガイド保持部と、を備えていることを特徴とする内転機構である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内転機構において、前記内転リングは、前記ガイド保持部に回転移動可能に配置される回転体を有し、前記ラックは、前記歯車に対応する前記回転体の一面に前記歯車に向けて突出して設けられていることを特徴とする内転機構である。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の内転機構において、前記内転リングは、前記回転体と前記ラックとの間に設けられ、前記ガイド保持部の前記ガイド溝に前記ラックと共に挿入する台座部を備えていることを特徴とする内転機構である。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の内転機構において、前記内転リングの前記台座部と前記ガイド保持部の前記ガイド溝との間には、弾力を備える緩衝部材が設けられていることを特徴とする内転機構である。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の内転機構において、前記緩衝部材は、前記ケースの内部の中心側に位置する前記ガイド溝の内周面に設けられ、これに対面する前記台座部の内周面に接触して摺動することを特徴とする内転機構である。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の内転機構において、前記緩衝部材は、前記ガイド溝の内周面に沿って設けられたリング部材であることを特徴とする内転機構である。
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の内転機構において、前記緩衝部材は、前記ガイド溝の内周面に沿って所定間隔で設けられた複数の円柱部材であることを特徴とする内転機構である。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の内転機構において、前記ガイド保持部の前記ガイド溝には、前記ガイド保持部と前記内転リングとの熱膨張係数の差による前記ラックの前記ガイド溝に対する締りを逃す逃げ部が設けられていることを特徴とする内転機構である。
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の内転機構において、前記逃げ部は、前記ガイド溝の底部側からその開放側に向けて前記ガイド溝の溝幅が次第に広くなるテーパ状に形成されていることを特徴とする内転機構である。
請求項10に記載の発明は、請求項1〜請求項9のいずれかに記載された内転機構を備えていることを特徴とする時計である。