以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る変速機を搭載した車両の概略構成図である。図2は、実施形態1に係る変速機における動力の伝達経路について説明する模式図である。図3、図4、図5は、実施形態1に係る変速機の変速動作の一例を表す共線図である。図6は、実施形態1に係る変速機における制御の一例を示すフローチャートである。
なお、以下の説明では、特に断りのない限り、回転軸線に沿った方向をそれぞれ軸方向といい、回転軸線に直交する方向、すなわち、軸方向に直交する方向をそれぞれ径方向といい、回転軸線周りの方向をそれぞれ周方向という。また、径方向において回転軸線側を径方向内側といい、反対側を径方向外側という。
本実施形態の車両用変速機としての変速機1は、図1に示すように、車両2に搭載されるパワートレーン3に適用される。変速機1は、典型的には、DCT(Dual Clutch Transmission)形式の変速機構10の入力2軸(奇数入力軸13、偶数入力軸14)に差動機構20を介して回転機30を連結し、両軸の差回転を回転機30で制御する。変速機1は、例えば、両軸を通過する動力の比率を制御することにより無段変速を可能とする。変速機1は、有段変速機として両軸に配された変速段をそれぞれ用いる状態と、無段変速機として回転機30によって差動機構20の差動回転を制御することで、例えば、現変速段と次変速段の中間段に相当する変速比を実現する状態とを切り替え可能である。これにより、変速機1は、DCTにおいてCVT(Continuously Variable Transmission)のような最適燃費線に近い走行を可能とし燃費性能の向上を図ることができる。そして、変速機1は、上記両状態での効率を比較し、より高効率となるように制御することで、燃費性能を向上させる。
変速機1が適用される車両2のパワートレーン3は、車両2を走行させる回転動力を発生させる機関4、当該機関4が発生させた回転動力を機関4から駆動輪6に伝達可能である動力伝達装置(トランスミッション)5等を含んで構成される。機関4は、典型的には、燃焼室で燃料を燃焼させることにより燃料のエネルギを機械的仕事に変換して動力として出力するエンジン(内燃機関)等の熱機関である。動力伝達装置5は、ダンパ7、変速機1、デファレンシャルギヤ8等を含んで構成される。動力伝達装置5は、機関4が発生させた動力がダンパ7に伝達され、当該ダンパ7に伝達された回転動力を変速機1に伝達する。動力伝達装置5は、例えば、機関4からの回転動力を変速機1によって変速して車両2の駆動輪6に伝達可能である。これら機関4、変速機1等は、ECU50によって制御される。したがって、車両2は、機関4の機関出力軸4aが回転駆動すると、その動力がダンパ7等を介して変速機1に入力されて変速され、デファレンシャルギヤ8等を介して各駆動輪6に伝達される。これにより、車両2は、各駆動輪6が回転することで前進または後退することができる。
そして、本実施形態の変速機1は、機関4から駆動輪6への動力の伝達経路に設けられ、機関4から駆動輪6に伝達される回転動力を変速して出力可能である。変速機1に伝達された動力は、この変速機1にて所定の変速比(=入力回転数/出力回転数)で変速されて各駆動輪6に伝達される。変速機1は、メイン係合装置C0と、奇数係合装置C1及び偶数係合装置C2を含んで構成されるデュアルクラッチ式の変速機構10と、差動機構20と、回転機30と、蓄電装置40と、第3係合装置としての差動部係合装置C3と、ブレーキとしての差動部ブレーキB1と、制御装置としてのECU50とを備える。
メイン係合装置C0は、機関4と変速機構10の奇数係合装置C1及び偶数係合装置C2との間に設けられ、機関4と奇数係合装置C1及び偶数係合装置C2との間の動力伝達を断接可能である。ここでは、メイン係合装置C0は、機関4の機関出力軸4aとダンパ7のダンパ入力軸7aとを動力伝達可能に係合した係合状態と当該係合を解除し動力伝達を遮断した解放状態とに切り替え可能である。これにより、メイン係合装置C0は、係合状態では機関4と奇数係合装置C1及び偶数係合装置C2との間の動力伝達を可能とし、解放状態では機関4と奇数係合装置C1及び偶数係合装置C2との間の動力伝達を遮断することができる。メイン係合装置C0は、例えば、自動式のクラッチ装置を用いることができるが、これに限らず、例えば、ドグクラッチ形式の係合装置等を用いてもよい。ここでは、メイン係合装置C0は、機関出力軸4aに連結された機関側係合部材C0aと、ダンパ入力軸7aに連結されたダンパ側係合部材C0bとを含んで構成される。メイン係合装置C0は、油圧等により作動するアクチュエータによって、係合状態あるいは解放状態に切り替え可能である。メイン係合装置C0は、供給される油圧に応じて、完全係合状態、半係合状態あるいは解放状態に制御可能である。
変速機構10は、第1変速段群としての奇数変速段群11、第2変速段群としての偶数変速段群12、第1入力軸としての奇数入力軸13、第2入力軸としての偶数入力軸14、出力軸15、第1係合装置としての奇数係合装置C1、第2係合装置としての偶数係合装置C2等を有する。変速機構10は、機関4からダンパ7等を介して奇数入力軸13、あるいは、偶数入力軸14に入力された回転動力を、奇数変速段群11、又は、偶数変速段群12のいずれか1つの変速段によって変速して出力軸15から駆動輪6側に出力可能である。
奇数変速段群11は、それぞれに所定の変速比が割り当てられた複数の変速段(ギヤ段)からなり、ここでは、奇数段として、前進用の第1速変速段61、第3速変速段63によって構成される。つまり、奇数変速段群11は、奇数段変速部(第1変速部)10Aを構成する。奇数段変速部10Aは、奇数変速段群11に加えて、さらに、切替部66等を含んで構成される。偶数変速段群12は、それぞれに所定の変速比が割り当てられた複数の変速段(ギヤ段)からなり、ここでは、偶数段として、前進用の第2速変速段62、第4速変速段64によって構成される。偶数変速段群12は、偶数段変速部(第2変速部)10Bを構成する。偶数段変速部10Bは、偶数変速段群12に加えて、さらに、後進用のリバース段65、切替部67、68等を含んで構成される。奇数変速段群11、及び、偶数変速段群12の各変速段は、変速比が大きい方から順に第1速変速段61、第2速変速段62、第3速変速段63、第4速変速段64となっている。
奇数入力軸13は、奇数変速段群11の入力軸を構成し、変速機1において機関4側からの回転動力が入力される入力回転部材である。偶数入力軸14は、偶数変速段群12の入力軸を構成し、変速機1において機関4側からの回転動力が入力される入力回転部材である。奇数入力軸13は、円筒状に形成される。偶数入力軸14は、円柱状に形成される。奇数入力軸13は、内周側に偶数入力軸14が挿入される。奇数入力軸13、偶数入力軸14は、ケーシング等に対して軸受けを介して回転可能に支持される。奇数入力軸13、偶数入力軸14は、機関4からの動力が伝達されて回転軸線X1を回転中心として回転可能に支持される。上記回転軸線X1は、機関4の機関出力軸4aの回転中心と一致している。つまり、機関出力軸4a、奇数入力軸13、及び、偶数入力軸14は、回転軸線X1に対して同軸上に配置される。
そして、奇数入力軸13は、機関4側の端部に奇数係合装置C1が設けられる。奇数入力軸13は、機関4とは反対側の端部、すなわち、奇数係合装置C1とは反対側の端部が差動機構20に接続される。奇数入力軸13は、機関4側から順に、奇数係合装置C1、ドライブギヤ61a、ドライブギヤ63aが配置される。偶数入力軸14は、機関4側の端部に偶数係合装置C2が設けられる。偶数入力軸14は、機関4とは反対側の端部、すなわち、偶数係合装置C2とは反対側の端部が奇数入力軸13から露出するようにして突出している。偶数入力軸14は、機関4側から順に、偶数係合装置C2、差動機構20、ドライブギヤ62a、ドライブギヤ64a、ドライブギヤ65aが配置される。偶数入力軸14は、奇数入力軸13から露出した部分に差動機構20、ドライブギヤ62a、ドライブギヤ64a、ドライブギヤ65aが設けられる。
出力軸15は、変速機1において駆動輪6側へ回転動力を出力する出力回転部材である。出力軸15は、ケーシング等に対して軸受けを介して回転可能に支持される。出力軸15は、機関4からの動力が伝達されて回転軸線X1と平行な回転軸線X2を回転中心として回転可能に支持される。出力軸15は、奇数段変速部10Aと偶数段変速部10Bとの共通の出力部材として機能する。出力軸15は、ドライブギヤ16、ドリブンギヤ17、デファレンシャルギヤ8等を介して駆動輪6に動力伝達可能に接続される。出力軸15は、機関4側の一端部にドライブギヤ16が一体回転可能に結合され、他端にドリブンギヤ65bが一体回転可能に結合される。出力軸15は、機関4側から順に、ドライブギヤ16、ドリブンギヤ61b、切替部66、ドリブンギヤ63b、ドリブンギヤ62b、切替部67、ドリブンギヤ64b、切替部68、ドリブンギヤ65bが配置される。
上記奇数変速段群11の各変速段は、それぞれ、ドライブギヤ61a、63aが奇数入力軸13に一体回転可能に結合され、ドリブンギヤ61b、63bがブッシュ等を介して出力軸15に相対回転可能に支持される。ドライブギヤ61aとドリブンギヤ61bとは、互いに噛み合う第1速変速段61のギヤ対である。ドライブギヤ63aとドリブンギヤ63bとは、互いに噛み合う第3速変速段63のギヤ対である。偶数変速段群12の各変速段は、それぞれ、ドライブギヤ62a、64aが偶数入力軸14に一体回転可能に結合され、ドリブンギヤ62b、64bがブッシュ等を介して出力軸15に相対回転可能に支持される。ドライブギヤ62aとドリブンギヤ62bとは、互いに噛み合う第2速変速段62のギヤ対である。ドライブギヤ64aとドリブンギヤ64bとは、互いに噛み合う第4速変速段64のギヤ対である。また、リバース段65は、ドライブギヤ65aが偶数入力軸14に一体回転可能に結合され、ドリブンギヤ65bがブッシュ等を介して出力軸15に相対回転可能に支持される。ドライブギヤ65aとドリブンギヤ65bとは、カウンタギヤを介して噛み合うリバース段65のギヤ対である。ここでは、この変速機構10は、回転軸線X1に対して同軸上に配置される差動機構20を基準として、機関4側に奇数段変速部10Aが配置され、反対側に偶数段変速部10Bが配置される。
奇数段変速部10A、偶数段変速部10Bを構成する切替部66、67、68は、それぞれ同期噛合機構等を含んで構成され、第1速変速段61、第2速変速段62、第3速変速段63、第4速変速段64、リバース段65の係合/解放状態を切り替えるものである。切替部66は、ドリブンギヤ61bとドリブンギヤ63bのうちのいずれか1つを出力軸15に選択的に結合する。奇数段変速部10Aは、切替部66の係合部材が中立位置に位置すると、ドリブンギヤ61b、ドリブンギヤ63bのすべてと出力軸15との結合が解除され、ドリブンギヤ61b、ドリブンギヤ63bがすべて空転状態となる。これにより、奇数段変速部10Aは、奇数入力軸13と出力軸15との動力の伝達を遮断することができる。切替部67は、ドリブンギヤ62bとドリブンギヤ64bのうちのいずれか1つを出力軸15に選択的に結合する。切替部68は、係合部材がドリブンギヤ65b側に位置すると、ドリブンギヤ65bが出力軸15に結合される。偶数段変速部10Bは、切替部67、68の係合部材が中立位置に位置すると、ドリブンギヤ62b、64b、65bのすべてと出力軸15との結合が解除され、ドリブンギヤ62b、64b、65bがすべて空転状態となる。これにより、偶数段変速部10Bは、偶数入力軸14と出力軸15との動力の伝達を遮断することができる。
奇数係合装置C1は、機関4と奇数変速段群11の奇数入力軸13との間に設けられ、機関4と奇数入力軸13との間の動力伝達を断接可能である。奇数係合装置C1は、機関4と奇数入力軸13とを動力伝達可能に係合した係合状態と当該係合を解除し動力伝達を遮断した解放状態とに切り替え可能である。偶数係合装置C2は、機関4と偶数変速段群12の偶数入力軸14との間に設けられ、機関4と偶数入力軸14との間の動力伝達を断接可能である。偶数係合装置C2は、機関4と偶数入力軸14とを動力伝達可能に係合した係合状態と当該係合を解除し動力伝達を遮断した解放状態とに切り替え可能である。奇数係合装置C1、偶数係合装置C2は、例えば、自動式のクラッチ装置を用いることができるが、これに限らず、例えば、ドグクラッチ形式の係合装置等を用いてもよい。ここでは、奇数係合装置C1は、ダンパ7、及び、メイン係合装置C0等を介して機関出力軸4aに連結される機関側係合部材Caと、奇数入力軸13に連結された変速機側係合部材C1bとを含んで構成される。偶数係合装置C2は、奇数係合装置C1と兼用される機関側係合部材Caと、偶数入力軸14に連結された変速機側係合部材C2bとを含んで構成される。奇数係合装置C1、偶数係合装置C2は、油圧等により作動するアクチュエータによって、係合状態あるいは解放状態に切り替え可能である。奇数係合装置C1、偶数係合装置C2は、供給される油圧に応じて、完全係合状態、半係合状態あるいは解放状態に制御可能である。
差動機構20は、回転機30の回転軸31と奇数入力軸13と偶数入力軸14とを差動回転可能に接続するものである。本実施形態の差動機構20は、それぞれ複数の回転要素を含んで構成される第1遊星歯車機構としての奇数側遊星歯車機構20A及び第2遊星歯車機構としての偶数側遊星歯車機構20Bを有する。本実施形態の奇数側遊星歯車機構20A、偶数側遊星歯車機構20Bは、いわゆるシングルピニオン式の遊星歯車機構により構成されるものとして説明するが、これに限らず、例えば、ダブルピニオン式の遊星歯車機構により構成されてもよい。
奇数側遊星歯車機構20A、偶数側遊星歯車機構20Bは、それぞれ第1回転要素、第2回転要素、及び、第3回転要素を含んで構成される。奇数側遊星歯車機構20A、偶数側遊星歯車機構20Bは、それぞれ相互に差動回転可能な各回転要素の回転中心が回転軸線X1と同軸で配置される。各回転要素は、動力が伝達されて回転軸線X1を回転中心として回転可能である。奇数側遊星歯車機構20A、偶数側遊星歯車機構20Bは、回転軸線X1の軸方向に対して対向して設けられる。奇数側遊星歯車機構20A、偶数側遊星歯車機構20Bは、奇数側遊星歯車機構20Aが奇数段変速部10A側、偶数側遊星歯車機構20Bが偶数段変速部10Bに配置される。
より具体的には、奇数側遊星歯車機構20Aは、相互に差動回転可能な複数の回転要素として、第1回転要素としての奇数側キャリヤCa1、第2回転要素としての奇数側サンギヤS1、第3回転要素としての奇数側リングギヤR1を含んで構成される。偶数側遊星歯車機構20Bは、相互に差動回転可能な複数の回転要素として、第1回転要素としての偶数側キャリヤCa2、第2回転要素としての偶数側サンギヤS2、第3回転要素としての偶数側リングギヤR2を含んで構成される。奇数側サンギヤS1は、外歯歯車である。奇数側リングギヤR1は、奇数側サンギヤS1と同軸上に配置された内歯歯車である。奇数側キャリヤCa1は、奇数側サンギヤS1、又は、奇数側リングギヤR1、ここでは両方に噛合する複数のピニオンギヤP1を自転可能かつ公転可能に保持する。同様に、偶数側サンギヤS2は、外歯歯車である。偶数側リングギヤR2は、偶数側サンギヤS2と同軸上に配置された内歯歯車である。偶数側キャリヤCa2は、偶数側サンギヤS2、又は、偶数側リングギヤR2、ここでは両方に噛合する複数のピニオンギヤP2を自転可能かつ公転可能に保持する。
本実施形態の差動機構20は、奇数側キャリヤCa1と偶数側キャリヤCa2とが差動部係合装置C3を介して接続される要素であると共に、奇数側キャリヤCa1が差動部ブレーキB1と接続される要素、偶数側キャリヤCa2が回転機30の回転軸31と接続される要素となっている。また、差動機構20は、奇数側リングギヤR1が奇数入力軸13と接続される要素、偶数側リングギヤR2が偶数入力軸14と接続される要素となっている。
奇数側サンギヤS1、偶数側サンギヤS2は、円環状に形成され、一体回転可能に接続される。ここでは、奇数側サンギヤS1と偶数側サンギヤS2とは、一体形成される。奇数側リングギヤR1は、円環状に形成され、奇数入力軸13に一体回転可能に結合される。偶数側リングギヤR2は、円環状に形成され、偶数入力軸14に一体回転可能に結合される。つまり、差動機構20は、奇数側遊星歯車機構20Aの奇数側リングギヤR1に奇数入力軸13が接続され、偶数側遊星歯車機構20Bの偶数側リングギヤR2に偶数入力軸14が接続される。奇数側キャリヤCa1は、円環状に形成され、ピニオン軸に外歯歯車であるピニオンギヤP1を自転可能かつ公転可能に支持する。偶数側キャリヤCa2は、円環状に形成され、ピニオン軸に外歯歯車であるピニオンギヤP2を自転可能かつ公転可能に支持する。奇数側キャリヤCa1と偶数側キャリヤCa2とは、差動部係合装置C3を介して接続される。差動機構20は、奇数側キャリヤCa1又は偶数側キャリヤCa2の一方に差動部ブレーキB1が設けられ、他方に回転機30の回転軸31が接続される。ここでは、差動機構20は、奇数側キャリヤCa1に差動部ブレーキB1が設けられ、偶数側キャリヤCa2にギヤ32、ギヤ33等を介して回転機30の回転軸31が接続される。ギヤ32は、当該偶数側キャリヤCa2に一体回転可能に結合される。ギヤ33は、回転軸31に一体回転可能に結合され当該ギヤ32と噛み合う。
そして、本実施形態の差動機構20は、奇数側遊星歯車機構20Aのギヤ比ρ1と偶数側遊星歯車機構20Bのギヤ比ρ2とに微少差が設定される。ギヤ比ρ1は、奇数側サンギヤS1の歯数を「Zs1」、奇数側リングギヤR1の歯数を「Zr1」とした場合、「ρ=Zs1/Zr1」で表すことができる。ギヤ比ρ2は、偶数側サンギヤS2の歯数を「Zs2」、偶数側リングギヤR2の歯数を「Zr2」とした場合、「ρ=Zs2/Zr2」で表すことができる。ここでは、上記微少差は、例えば、ギヤ比ρ1をギヤ比ρ2で除した値が0.8以上1.0未満、又は、1.0より大きく1.2以下の範囲内となる差である(0.8≦ρ1/ρ2<1.0、又は、1.0<ρ1/ρ2≦1.2)。より好ましくは、上記微少差は、例えば、ギヤ比ρ1をギヤ比ρ2で除した値が0.9以上1.0未満、又は、1.0より大きく1.1以下の範囲内となる差である(0.9≦ρ1/ρ2<1.0、又は、1.0<ρ1/ρ2≦1.1)。本実施形態の差動機構20は、奇数変速段群11及び偶数変速段群12の変速段のうちの最高速変速段である第4速変速段64を含む偶数変速段群12側の偶数側遊星歯車機構20Bのギヤ比ρ2が奇数側遊星歯車機構20Aのギヤ比ρ1より大きい(ρ2>ρ1)。そして、ギヤ比ρ1とギヤ比ρ2との微少差は、0より大きくかつ、歯面の強度等を勘案して設計上許容できる可能な限り最小の差となっている。例えば、ギヤ比ρ1とギヤ比ρ2との微少差は、奇数側遊星歯車機構20Aと偶数側遊星歯車機構20Bとの歯数において、歯1枚分程度の差となっている。
差動部係合装置C3は、奇数側遊星歯車機構20Aの奇数側キャリヤCa1と偶数側遊星歯車機構20Bの偶数側キャリヤCa2との間に設けられ、奇数側キャリヤCa1と偶数側キャリヤCa2との間の動力伝達を断接可能である。差動部係合装置C3は、奇数側キャリヤCa1と偶数側キャリヤCa2とを動力伝達可能に係合した係合状態と当該係合を解除し動力伝達を遮断した解放状態とに切り替え可能である。差動部係合装置C3は、例えば、自動式のクラッチ装置を用いることができるが、これに限らず、例えば、ドグクラッチ形式の係合装置等を用いてもよい。ここでは、差動部係合装置C3は、奇数側キャリヤCa1に連結される奇数側係合部材C3aと、偶数側キャリヤCa2に連結される偶数側係合部材C3bとを含んで構成される。差動部係合装置C3は、油圧等により作動するアクチュエータによって、係合状態あるいは解放状態に切り替え可能である。差動部係合装置C3は、供給される油圧に応じて、完全係合状態、半係合状態あるいは解放状態に制御可能である。
差動部ブレーキB1は、奇数側キャリヤCa1の回転を制動可能である。差動部ブレーキB1は、ケーシング9等の固定部と奇数側キャリヤCa1との間に設けられ、ケーシング9と奇数側キャリヤCa1との連結を断接可能である。差動部ブレーキB1は、ケーシング9と奇数側キャリヤCa1とを係合し奇数側キャリヤCa1の回転を停止させる制動状態(係合状態)と当該係合を解除した解放状態とに切り替え可能である。奇数側キャリヤCa1は、例えば、自動式のクラッチ装置を用いることができるが、これに限らない。差動部ブレーキB1は、油圧等により作動するアクチュエータによって、制動状態あるいは解放状態に切り替え可能である。差動部ブレーキB1は、供給される油圧に応じて、完全制動状態、半制動状態あるいは解放状態に制御可能である。
回転機30は、モータ(電動機)としての機能と、発電機としての機能とを備えた回転電機である。回転機30は、インバータなどを介してバッテリ等の蓄電装置40から供給された電力を機械的動力に変換する力行機能と、入力された機械的動力を電力に変換しインバータなどを介して蓄電装置40に充電する回生機能とを兼ね備える。回転機30によって発電された電力は、蓄電装置40に蓄電可能である。回転機30としては、例えば、交流同期型のモータジェネレータを用いることができる。蓄電装置40は、回転機30によって発電された電力を蓄電可能である。回転機30は、力行時には電力を消費してトルクを出力し、出力トルクによって回転軸31を回転駆動することができる。また、回転機30は、回生時には回転軸31に伝達されるトルクによって回転駆動されて発電を行い、発電負荷に応じた負荷トルク(反力トルク)を回転軸31に作用させることができる。
ECU50は、車両2の各部の駆動を制御するものであり、CPU、ROM、RAM及びインターフェースを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路を含んで構成される。ECU50は、例えば、種々のセンサ、検出器類が電気的に接続され、検出結果に対応した電気信号が入力される。また、ECU50は、機関4、回転機30、変速機1のメイン係合装置C0、奇数係合装置C1、偶数係合装置C2、差動部係合装置C3、差動部ブレーキB1、切替部66、67、68等を作動させるアクチュエータ、蓄電装置40などの車両2の各部に電気的に接続される。ECU50は、各種センサ、検出器類等から入力された各種入力信号や各種マップに基づいて、格納されている制御プログラムを実行することにより、車両2の各部に駆動信号を出力しこれらの駆動を制御する。
本実施形態の変速機1は、種々のセンサ、検出器類として、例えば、変速機1が搭載される車両2の状態を検出する車両状態検出装置51を備える。車両状態検出装置51は、例えば、車速センサ、アクセル開度センサ、スロットル開度センサ、機関回転数センサ、奇数入力軸回転数センサ、偶数入力軸回転数センサ、出力軸回転数センサ、回転軸回転数センサ、充電状態検出器等のうちの少なくとも1つを含んでいてもよいが、これだけに限られない。車速センサは、車両2の車速を検出する。アクセル開度センサは、運転者による車両2のアクセルペダルの操作量(アクセル操作量、加速要求操作量)に相当するアクセル開度を検出する。スロットル開度センサは、車両2のスロットル開度を検出する。機関回転数センサは、機関4の機関出力軸4aの回転数である機関回転数(以下、「エンジン回転数」という場合がある。)を検出する。奇数入力軸回転数センサは、変速機1の奇数入力軸13の回転数(以下、「奇数入力軸回転数」という場合がある。)を検出する。偶数入力軸回転数センサは、変速機1の偶数入力軸14の回転数(以下、「偶数入力軸回転数」という場合がある。)を検出する。出力軸回転数センサは、変速機1の出力軸15の回転数(以下、「出力軸回転数」という場合がある。)を検出する。回転軸回転数センサは、回転機30の回転軸31の回転数(以下、「回転機回転数」という場合がある。)を検出する。充電状態検出器は、蓄電装置40の蓄電量(充電量)等に応じた蓄電状態SOC(State of Charge)を検出する。
ECU50は、例えば、アクセル開度、車速等に基づいて機関4のスロットル装置を制御し、吸気通路のスロットル開度を調節し、吸入空気量を調節して、その変化に対応して燃料噴射量を制御し、燃焼室に充填される混合気の量を調節して機関4の出力を制御する。また、ECU50は、例えば、アクセル開度、車速等に基づいて油圧制御装置等のアクチュエータを制御し、変速機1の変速段(変速比)等を制御する。
そして、本実施形態のECU50は、機関4、回転機30、奇数係合装置C1、偶数係合装置C2、差動部係合装置C3、差動部ブレーキB1を制御し、変速機1の状態を、有段変速状態と、無段変速状態とに切り替え可能である。ECU50は、回転機30、奇数係合装置C1、偶数係合装置C2、差動部係合装置C3、差動部ブレーキB1を制御することで、変速機1における動力の伝達経路として異なる複数の経路(ここでは4つの経路)を形成し、これらを使い分けることで、有段変速状態と、無段変速状態とを実現する。
ここで、変速機1の有段変速状態とは、機関4からの回転動力を奇数変速段群11、又は、偶数変速段群12のいずれか1つの変速段によって変速して出力軸15から出力可能である状態であり、いずれか1つの変速段に固定した固定ギヤ段状態である。つまり、変速機1の有段変速状態は、機関4からの回転動力を奇数入力軸13、又は、偶数入力軸14のいずれか一方を介して変速する状態である。
さらに言えば、変速機1の有段変速状態は、典型的には、メイン係合装置C0を係合状態とした上で、図2に示すように、機関4からの動力を、以下で説明する第1経路r1、又は、第2経路r2を介して、駆動輪6側に伝達する状態である。ECU50は、有段変速状態では、例えば、差動部ブレーキB1を解放状態、差動部係合装置C3を係合状態とする。上記第1経路r1は、奇数係合装置C1を係合状態、偶数係合装置C2を解放状態、切替部67、68を中立位置とし、切替部66により第1速変速段61、第3速変速段63のいずれか1つを締結状態(動力を伝達する状態)とした場合に形成される動力の伝達経路である。つまり、第1経路r1は、少なくとも機関4から奇数係合装置C1、奇数入力軸13、奇数変速段群11(第1速変速段61、第3速変速段63)のいずれか1つの変速段、出力軸15を順に介して駆動輪6側に動力を伝達する経路である。上記第2経路r2は、奇数係合装置C1を解放状態、偶数係合装置C2を係合状態、切替部66、68を中立位置とし、切替部67により第2速変速段62、第4速変速段64のいずれか1つを締結状態(動力を伝達する状態)とした場合に形成される動力の伝達経路である。つまり、第2経路r2は、少なくとも機関4から偶数係合装置C2、偶数入力軸14、偶数変速段群12(第2速変速段62、第4速変速段64)のいずれか1つの変速段、出力軸15を順に介して駆動輪6側に動力を伝達する経路である。なおこの場合、機関4からの動力は、メイン係合装置C0、ダンパ7等を介して奇数係合装置C1、又は、偶数係合装置C2に伝達される。
ECU50は、変速機1の有段変速状態では、例えば、アクセル開度センサが検出するアクセル開度(あるいはスロットル開度センサが検出するスロットル開度)、車速センサが検出した車速等に基づいて、目標出力を算出し、その目標出力を最小の燃費で達成する目標制御量、例えば、目標エンジントルク及び目標エンジン回転数を算出する。そして、ECU50は、機関4の燃料噴射弁の燃料噴射タイミングや点火プラグの点火時期、スロットル装置のスロットル開度などを制御して機関4から取り出される出力を制御し、機関4のエンジントルクが目標エンジントルクとなり、エンジン回転数が目標のエンジン回転数となるように機関4の出力を制御する。また、ECU50は、変速機1の有段変速状態では、例えば、アクセル開度センサが検出するアクセル開度、車速センサが検出した車速等に基づいて、変速機1の各部を制御し変速段を制御するようにしてもよい。この場合、ECU50は、例えば、アクセル開度と車速とに応じて複数の変速線等が規定された変速マップ等に基づいて、変速機1の変速制御を実行する。
図1に戻って、一方、変速機1の無段変速状態とは、機関4からの回転動力を奇数変速段群11、及び、偶数変速段群12を構成する各変速段の変速比の間の変速比で変速して出力軸15から出力可能であると共に当該変速比を無段階に変更可能である状態である。すなわち、変速機1は、無段変速状態では、少なくとも奇数変速段群11、偶数変速段群12の各段の中間段に相当する変速比を実現可能である。ここでは、変速機1の無段変速状態は、機関4からの回転動力を奇数入力軸13、偶数入力軸14、及び、差動機構20を介して変速する状態であり、ECU50は、回転機30を回転制御し差動機構20の差動回転を調節することで変速機1の無段変速状態を実現する。
さらに言えば、変速機1の無段変速状態は、典型的には、メイン係合装置C0を係合状態とした上で、図2に示すように、機関4からの動力を、以下で説明する第3経路r3、又は、第4経路r4を介して、駆動輪6側に伝達する状態である。ECU50は、無段変速状態では、差動部ブレーキB1を制動状態、差動部係合装置C3を解放状態とする。上記第3経路r3は、奇数係合装置C1を係合状態、偶数係合装置C2を解放状態、切替部66、68を中立位置とし、切替部67により第2速変速段62、第4速変速段64のいずれか1つを締結状態(動力を伝達する状態)とした場合に形成される動力の伝達経路である。つまり、第3経路r3は、少なくとも機関4から奇数係合装置C1、奇数入力軸13、差動機構20、偶数入力軸14、偶数変速段群12(第2速変速段62、第4速変速段64)のいずれか1つの変速段、出力軸15を順に介して駆動輪6側に動力を伝達する経路である。上記第4経路r4は、奇数係合装置C1を解放状態、偶数係合装置C2を係合状態、切替部67、68を中立位置とし、切替部66により第1速変速段61、第3速変速段63のいずれか1つを締結状態(動力を伝達する状態)とした場合に形成される動力の伝達経路である。つまり、第4経路r4は、少なくとも機関4から偶数係合装置C2、偶数入力軸14、差動機構20、奇数入力軸13、奇数変速段群11(第1速変速段61、第3速変速段63)のいずれか1つの変速段、出力軸15を順に介して駆動輪6側に動力を伝達する経路である。そして、ECU50は、変速機1が機関4からの動力を第3経路r3、又は、第4経路r4を介して駆動輪6側に伝達する状態で、回転機30を回転制御し差動機構20の差動回転を調節することで変速機1の変速比を無段階に変更することができる。典型的には、ECU50は、変速機1が無段変速状態である場合に回転機30による発電量を制御することで、無段変速状態における変速比を変更する。なおこの場合も上記と同様に、機関4からの動力は、メイン係合装置C0、ダンパ7等を介して奇数係合装置C1、又は、偶数係合装置C2に伝達される。
ECU50は、変速機1が無段変速状態である場合には、例えば、機関4をいわゆる最適燃費線上で運転させることができ、これにより、燃費性能の向上を図ることができる。最適燃費線は、機関4を搭載した車両2が単位燃料量で走行できる距離を優先して機関4を運転できる機関回転数(以下、「エンジン回転数」という場合がある。)と機関トルク(以下、「エンジントルク」という場合がある。)とに基づいて設定され、機関4の出力特性に応じて予め定まるものである。ECU50は、変速機1が無段変速状態である場合には、典型的には、機関4の動作点が当該機関4の最適燃費線上に位置するように当該機関4の出力を制御する。
ECU50は、変速機1の無段変速状態では、例えば、アクセル開度センサが検出するアクセル開度(あるいはスロットル開度センサが検出するスロットル開度)、車速センサが検出した車速等に基づいて算出される目標出力と最適燃費線とから目標エンジン回転数及び目標エンジントルクを算出する制御を基本とする。ECU50は、例えば、目標出力に対応する等出力線と最適燃費線との交点(動作点)を求め、これに応じて目標エンジン回転数及び目標エンジントルクを算出する。そして、ECU50は、機関4のエンジントルクが目標エンジントルクとなり、エンジン回転数が目標のエンジン回転数となるように、機関4の出力を制御すると共に、出力軸15の回転数(言い換えれば車速)に応じて変速機1の各部(ここでは回転機30の発電量)を制御して変速比を制御する。
以下、図3、図4、図5の共線図を参照して、ECU50による変速機1の有段変速状態と無段変速状態との切り替えについて説明する。図3、図4、図5は、差動機構20の各回転要素の回転速度の相対関係を直線で表した共線図の一例である。図3、図4、図5は、縦軸を奇数側遊星歯車機構20Aの奇数側キャリヤCa1、奇数側サンギヤS1及び奇数側リングギヤR1、偶数側遊星歯車機構20Bの偶数側キャリヤCa2、偶数側サンギヤS2及び偶数側リングギヤR2のそれぞれの回転数を表すR1軸、Ca1軸、S1・S2軸、Ca2軸、R2軸とし、横軸に沿った互いの間隔がギヤ比ρ1、ρ2に応じた間隔となるように各回転要素をそれぞれ配置した速度線図である。すなわち、奇数側サンギヤS1と奇数側キャリヤCa1との間隔を「1」とすると奇数側キャリヤCa1と奇数側リングギヤR1との間隔は、ギヤ比ρ1に対応する。偶数側サンギヤS2と偶数側キャリヤCa2との間隔を「1」とすると偶数側キャリヤCa2と偶数側リングギヤR2との間隔は、ギヤ比ρ2に対応する。差動機構20の奇数側キャリヤCa1、奇数側サンギヤS1、奇数側リングギヤR1、偶数側キャリヤCa2、偶数側サンギヤS2及び偶数側リングギヤR2は、図3、図4、図5等に示す共線図に基づいた回転速度(回転数に相当)で作動する。ここでは、例えば、奇数側リングギヤR1の回転数は、奇数入力軸13の回転数に相当し、偶数側リングギヤR2の回転数は、偶数入力軸14の回転数に相当する。
ECU50は、例えば、車両2を発進させる際には、切替部66により発進段である第1速変速段61を締結状態とし、切替部67、68を中立位置とした上で、奇数係合装置C1を係合状態、偶数係合装置C2を解放状態とし、機関4の出力制御を行い、車両2を発進させる。このとき、ECU50は、メイン係合装置C0を係合状態、差動部ブレーキB1を解放状態、差動部係合装置C3を係合状態としている。この場合、変速機1は、上記第1経路r1(図2参照)によって動力を伝達する有段変速状態(固定ギヤ段状態)となっている。
そして、ECU50は、車両2の加速に伴って次の変速段である第2速変速段62に変速する際には、無段変速状態を介して第2速変速段62に変速する。この場合、ECU50は、差動部ブレーキB1を制動状態、差動部係合装置C3を解放状態とした上で、回転機30の速度制御を行い、偶数入力軸14の回転数を現時点での出力軸15の回転数(出力軸回転速度)に応じた回転数に同期させる。ここでは、ECU50は、例えば、切替部67にて、偶数入力軸14の第2速変速段62のドリブンギヤ62bの回転数と、出力軸15の回転数とが同期し、両者がほぼ同等になるように回転機30の回転軸31の回転数を制御する。
そして、ECU50は、回転数を同期させた後、機関4から差動機構20を介した回転動力を第2速変速段62によって変速する状態とする。この場合、ECU50は、奇数係合装置C1を係合状態、偶数係合装置C2を解放状態のままで維持した上で、切替部67により第2速変速段62を締結状態とすると共に、切替部66を中立位置とし第1速変速段61を空転状態とする。つまり、ECU50は、変速機1を上記第3経路r3(図2参照)によって動力を伝達する状態とする。図3は、第2速変速段62の同期が完了し第2速変速段62が締結状態とされた時の差動機構20の差動状態の一例を表している。
そして、ECU50は、この状態で回転機30の発電量を制御し差動機構20の差動回転を調節して変速比を変更することで、無段変速状態を実現する。ECU50は、無段変速状態で変速比を変更する場合には、回転機30の発電量を調節し、発電負荷に応じて回転軸31に作用する負荷トルクを調節することで、差動機構20の差動回転の状態を調節する。
そして、ECU50は、回転機30の発電量を制御して奇数側リングギヤR1と偶数側リングギヤR2との回転数を同期し、奇数入力軸13と偶数入力軸14との回転数を同期させる。そして、ECU50は、同期完了後、偶数係合装置C2を係合状態、奇数係合装置C1を解放状態とし、変速機1を上記第2経路r2(図2参照)によって動力を伝達する状態とする。これにより、ECU50は、第2速変速段62による有段変速状態を実現することができる。図4は、無段変速状態において奇数入力軸13と偶数入力軸14との同期が完了し奇数係合装置C1、偶数係合装置C2の係合状態を切り替えた状態での差動機構20の差動状態の一例を表している。なお、第3速変速段63から第4速変速段64への変速も上記とほぼ同様である。
ECU50は、次の変速段である第3速変速段63に変速する際も上記と同様に、無段変速状態を介して第3速変速段63に変速する。この場合、ECU50は、差動部ブレーキB1を制動状態、差動部係合装置C3を解放状態とした上で、回転機30の速度制御を行い、奇数入力軸13の回転数を現時点での出力軸15の回転数(出力軸回転速度)に応じた回転数に同期させる。ここでは、ECU50は、例えば、切替部66にて、奇数入力軸13の第3速変速段63のドリブンギヤ63bの回転数と、出力軸15の回転数とが同期し、両者がほぼ同等になるように回転機30の回転軸31の回転数を制御する。
そして、ECU50は、回転数を同期させた後、機関4から差動機構20を介した回転動力を第3速変速段63によって変速する状態とする。この場合、ECU50は、奇数係合装置C1を解放状態、偶数係合装置C2を係合状態のままで維持した上で、切替部66により第3速変速段63を締結状態とすると共に、切替部67を中立位置とし第2速変速段62を空転状態とする。つまり、ECU50は、変速機1を上記第4経路r4(図2参照)によって動力を伝達する状態とする。そして、ECU50は、その上で回転機30の発電量を制御し差動機構20の差動回転を調節して変速比を変更することで、無段変速状態を実現する。
そして、ECU50は、回転機30の発電量を制御して奇数側リングギヤR1と偶数側リングギヤR2との回転数を同期し、奇数入力軸13と偶数入力軸14との回転数を同期させる。そして、ECU50は、同期完了後、奇数係合装置C1を係合状態、偶数係合装置C2を解放状態とし、変速機1を上記第1経路r1(図2参照)によって動力を伝達する状態とする。これにより、ECU50は、第3速変速段63による有段変速状態を実現することができる。
そして、本実施形態のECU50は、上記のような各変速段による有段変速状態で、差動部ブレーキB1を解放状態、差動部係合装置C3を係合状態とすることで、差動機構20の差動状態を図5に示すような状態とすることができる。すなわち、変速機1は、奇数側遊星歯車機構20Aのギヤ比ρ1と偶数側遊星歯車機構20Bのギヤ比ρ2とに微少差が設定された上で、差動部ブレーキB1が解放状態、差動部係合装置C3が係合状態とされることで、有段変速状態で、差動機構20において差動回転がほぼ発生しない状態とし、奇数入力軸13、偶数入力軸14、奇数側遊星歯車機構20A、偶数側遊星歯車機構20Bを一本の棒のように一体回転させることができる。
なお、ECU50は、上記のように、有段変速状態で差動部ブレーキB1を解放状態、差動部係合装置C3を係合状態とした場合には、奇数係合装置C1と偶数係合装置C2との両方を係合状態としておいてもよい。これにより、変速機1は、奇数係合装置C1、偶数係合装置C2それぞれにおけるトルク伝達量を分散することができ、寿命を向上することができる。
上記のように構成される変速機1、ECU50は、DCT形式の変速機構10の奇数入力軸13、偶数入力軸14に差動機構20を介して回転機30を接続し、奇数係合装置C1、偶数係合装置C2を制御すると共に両軸の差回転を回転機30で制御する。これにより、変速機1、ECU50は、当該変速機1の状態を、デュアルクラッチ式の有段変速状態と、無段変速状態とに切り替えることができる。この結果、変速機1、ECU50は、DCTにおいてCVTのような最適燃費線に近い走行を実現することができるので、燃費性能の向上を図ることができる。
そして、本実施形態の変速機1は、奇数側遊星歯車機構20Aのギヤ比ρ1と偶数側遊星歯車機構20Bのギヤ比ρ2とに微少差が設定されると共に、差動部ブレーキB1、差動部係合装置C3が設けられる。これにより、変速機1、ECU50は、各変速段による有段変速状態の際に差動部ブレーキB1が解放状態、差動部係合装置C3が係合状態とされることで、図5で示したように、差動機構20において差動回転がほぼ発生しない状態とし、奇数入力軸13、偶数入力軸14、奇数側遊星歯車機構20A、偶数側遊星歯車機構20Bを一本の棒のように一体回転させることができる。この結果、変速機1、ECU50は、各変速段での有段変速状態の際に、差動機構20における差動回転ロスを抑制することができ、エネルギ損失を抑制できるので、この点でも燃費性能を向上することができる。
さらに、ECU50は、有段変速状態において、同じ変速段を締結状態とした上で、図3で示すように差動部ブレーキB1を制動状態、差動部係合装置C3を解放状態とした無段変速状態と、図5で示すように差動部ブレーキB1を解放状態、差動部係合装置C3を係合状態とした有段変速状態とを使い分けることができる。ECU50は、これを利用して、例えば、変速機1において、高速モードとして、準高速モードと、完全巡航高速モードとを実現することができる。ECU50は、最高速変速段である第4速変速段64を締結状態とした上で、差動部ブレーキB1を制動状態、差動部係合装置C3を解放状態とした無段変速状態(図3参照)とすることで、準高速モードを実現することができる。また、ECU50は、最高速変速段である第4速変速段64を締結状態とした上で、差動部ブレーキB1を解放状態、差動部係合装置C3を係合状態とした有段変速状態(図5参照)とすることで、完全巡航高速モードを実現することができる。
なお、本実施形態の変速機1は、典型的には、当該完全巡航高速モードにおいて、最高燃費が得られるように相対的にハイギヤ化されると共に、より高い動力特性を得るために相対的にローギヤ化されており、ギヤ比幅が相対的にワイドとなっている。そして、変速機1は、上述したように、各変速段の間の変速比を無段変速状態にて実現することで、燃費性能を確保と良好な動力性能の確保とを両立している。
そして、ECU50は、図5で示したように、有段変速状態で差動部ブレーキB1を解放状態、差動部係合装置C3を係合状態とした場合(例えば、完全巡航高速モードの場合)に、回転機30をいわゆるオルタネータとして利用し、発電することができる。この場合、ECU50は、回転機30をトルク制御し、機関4が発生させる動力によって回転機30で発電し蓄電装置40に蓄電する制御を実行可能である。上述したように、本実施形態の変速機1は、典型的には、主に無段変速状態である場合に回転機30によって発電する。このため、変速機1は、例えば、最高速変速段である第4速変速段64等での完全巡航高速モード時等では長期間に渡って有段変速状態で維持される傾向にあることから、このままでは発電が不足し、蓄電量が不足するおそれがある。これに対して、本実施形態の変速機1は、ECU50は、有段変速状態で差動部ブレーキB1を解放状態、差動部係合装置C3を係合状態とした場合に回転機30をトルク制御し回転機30で発電し蓄電装置40に蓄電する制御を実行することで、蓄電装置40を適正な蓄電状態で維持することができる。
同様に、ECU50は、図5で示したように、有段変速状態で差動部ブレーキB1を解放状態、差動部係合装置C3を係合状態とした場合(例えば、完全巡航高速モードの場合)に、回転機30をいわゆる原動機として利用し、当該回転機30を力行させることができる。この場合、ECU50は、回転機30をトルク制御し、回転機30が発生させる回転動力を用いて車両2を走行させる制御を実行可能である。これにより、変速機1、ECU50は、例えば、蓄電装置40に蓄電されている余剰の電力を用いて回転機30を力行させることで、効率的に余剰電力を処理すると共に動力性能を向上することができる。
この結果、変速機1、ECU50は、走行に必要な発電量を確保しつつ、高い燃費と優れた動力性能を有する車両2を提供することができる。
また、本実施形態の変速機1は、ギヤ比ρ1とギヤ比ρ2との微少差が0より大きくかつ可能な限り最小の差とされることで、奇数側リングギヤR1と偶数側リングギヤR2との間での動力伝達におけるギヤ比を1に近似させることができる。これにより、変速機1は、変速動作の際に、回転軸31の回転数を制御し奇数入力軸13、又は、偶数入力軸14の回転数を出力軸15の回転数に応じた回転数に同期させ、次の変速段を締結状態とし、奇数側リングギヤR1と偶数側リングギヤR2との回転数を同期させ、奇数係合装置C1、偶数係合装置C2の状態を切り替える際の制御量が、変速段ごとにばらついてしまうことを抑制することができる。この結果、変速機1、ECU50は、回転機30を用いた上記制御における制御幅(回転数幅)を各変速段においてほぼ均等になるように抑制することができるので、回転機30の大型化等を抑制することができると共に、制御を簡単にすることができる。したがって、変速機1、ECU50は、小型化を図り搭載性を向上することができ、また、製造コストを抑制することができる。
また、本実施形態の変速機1は、最高速変速段である第4速変速段64側の偶数側遊星歯車機構20Bのギヤ比ρ2が奇数側遊星歯車機構20Aのギヤ比ρ1より大きく設定される。これにより、変速機1は、例えば、第4速変速段64の同期が完了し当該第4速変速段64が締結状態とされた状態から、奇数入力軸13と偶数入力軸14との回転数を同期させる際に、当該同期が完了するまで回転機30を発電機として制御することができ、すなわち、発電制御と力行制御とを切り替えなくても当該同期を完了させることができる。この結果、変速機1は、ECU50による制御を簡単にすることができ、確実に奇数入力軸13と偶数入力軸14との回転数を同期させることができる。
また、変速機1は、上記のように差動機構20を奇数側遊星歯車機構20A及び偶数側遊星歯車機構20Bによって構成して奇数側リングギヤR1と偶数側リングギヤR2との間での動力伝達におけるギヤ比を1に近似させる構成を実現する。これにより、変速機1は、例えば、本実施形態の差動機構20のような平歯車(あるいははすば歯車)と比較して相対的に効率が低い傘歯車を用いずに上記構成を実現することができるので、この点でも燃費性能を向上することができる。
なお、ECU50は、有段変速状態で差動部ブレーキB1を解放状態、差動部係合装置C3を係合状態とする場合、上記のように先に奇数係合装置C1、又は、偶数係合装置C2のうち現在の変速段に対応する方を係合状態とした後に、差動部ブレーキB1を解放状態、差動部係合装置C3を係合状態とするとよい。ここで、奇数係合装置C1、又は、偶数係合装置C2のうち現在の変速段に対応する方とは、現在の変速段が奇数段(第1速変速段61、第3速変速段63)である場合には奇数係合装置C1、偶数段(第2速変速段62、第4速変速段64)である場合には偶数係合装置C2である。この結果、変速機1は、差動部ブレーキB1を解放状態、差動部係合装置C3を係合状態とする際に当該解放動作、係合動作をゆっくり行うことができるので、滑らかな走行を実現することができる。
次に、図6フローチャートを参照してECU50による制御の一例を説明する。なお、これらの制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。ここでは、上述した準高速モードから完全巡航高速モードへの切り替えについて説明する。変速機1は、準高速モードである状態では、メイン係合装置C0、奇数係合装置C1が係合状態、偶数係合装置C2、差動部係合装置C3が解放状態、差動部ブレーキB1が制動状態、最高速変速段である第4速変速段64が締結状態となっている。
まず、ECU50は、車両状態検出装置51による検出結果に基づいて、車両2の情報を収集する(ステップST1)。ECU50は、例えば、奇数入力軸回転数センサ、偶数入力軸回転数センサ、アクセル開度センサ、車速センサ等による検出結果に基づいて、奇数入力軸回転数N1、偶数入力軸回転数N2、アクセル開度、車速等を把握する。
次に、ECU50は、準高速モードから完全巡航高速モードへの切り替え指示があるか否かを判定する(ステップST2)。ECU50は、例えば、アクセル開度、車速等、現在の車両2の状態に応じて現在の走行状態が高速での定常走行状態であるか否かを判定し、当該判定結果に応じて準高速モードと完全巡航高速モードとの切り替えの有無を判定する。ECU50は、準高速モードから完全巡航高速モードへの切り替え指示がないと判定した場合(ステップST2:No)、今回の制御周期を終了し、次回の制御周期に移行する。
ECU50は、準高速モードから完全巡航高速モードへの切り替え指示があると判定した場合(ステップST2:Yes)、回転機30にて、偶数入力軸14の回転数上昇制御を実施し、奇数入力軸回転数N1と偶数入力軸回転数N2とを同期させる(ステップST3)。
次に、ECU50は、奇数入力軸回転数N1と偶数入力軸回転数N2との差分の絶対値|N1−N2|が予め設定される許容収束誤差Ntより小さいか否かを判定することで、奇数入力軸回転数N1と偶数入力軸回転数N2とが同期したか否かを判定する(ステップST4)。ここで、許容収束誤差Ntは、許容される収束誤差であり、予め適宜に設定されればよい。ECU50は、差分の絶対値|N1−N2|が許容収束誤差Nt以上であり、奇数入力軸回転数N1と偶数入力軸回転数N2とが同期していないと判定した場合(ステップST4:No)、ステップST3の処理に戻って以降の処理を繰り返し実行する。
ECU50は、差分の絶対値|N1−N2|が許容収束誤差Ntより小さく、奇数入力軸回転数N1と偶数入力軸回転数N2とが同期したと判定した場合(ステップST4:Yes)、まず、偶数係合装置C2を係合状態(ON)とする(ステップST5)。
次に、ECU50は、差動部ブレーキB1を解放状態(OFF)とし(ステップST6)、差動部係合装置C3を係合状態(ON)として(ステップST7)、完全巡航高速モードへの切り替えを完了する。そして、ECU50は、回転機30をいわゆるオルタネータとして利用するオルタモードとし(ステップST8)、今回の制御周期を終了し、次回の制御周期に移行する。
以上で説明した実施形態に係る変速機1によれば、変速機構10と、差動機構20と、差動部係合装置C3と、差動部ブレーキB1とを備える。変速機構10は、車両2を走行させる回転動力を発生させる機関4と奇数変速段群11の奇数入力軸13との間の動力伝達を断接可能である奇数係合装置C1と、機関4と偶数変速段群12の偶数入力軸14との間の動力伝達を断接可能である偶数係合装置C2とを有する。差動機構20は、それぞれ第1回転要素としての奇数側キャリヤCa1、偶数側キャリヤCa2、第2回転要素としての奇数側サンギヤS1、偶数側サンギヤS2、及び、第3回転要素としての奇数側リングギヤR1、偶数側リングギヤR2を含んで構成される奇数側遊星歯車機構20A及び偶数側遊星歯車機構20Bを有し、回転機30の回転軸31と第1入力軸13と第2入力軸14とを差動回転可能に接続する。差動部係合装置C3は、奇数側遊星歯車機構20Aの奇数側キャリヤCa1と偶数側遊星歯車機構20Bの偶数側キャリヤCa2との間の動力伝達を断接可能である。差動部ブレーキB1は、奇数側遊星歯車機構20Aの奇数側キャリヤCa1又は偶数側遊星歯車機構20Bの偶数側キャリヤCa2の一方に設けられ当該一方の回転を制動可能である。差動機構20は、奇数側遊星歯車機構20Aの奇数側キャリヤCa1又は偶数側遊星歯車機構20Bの偶数側キャリヤCa2の他方に回転機30の回転軸31が接続される。差動機構20は、奇数側遊星歯車機構20Aの奇数側サンギヤS1と偶数側遊星歯車機構20Bの偶数側サンギヤS2とが一体回転可能に接続される。差動機構20は、奇数側遊星歯車機構20Aの奇数側リングギヤR1に奇数入力軸13が接続され、偶数側遊星歯車機構20Bの偶数側リングギヤR2に偶数入力軸14が接続される。そして、差動機構20は、奇数側遊星歯車機構20Aのギヤ比ρ1と偶数側遊星歯車機構20Bのギヤ比ρ2とに微少差が設定される。したがって、変速機1、ECU50は、デュアルクラッチ式の有段変速状態と無段変速状態とを適切に使い分けることができると共に、各変速段による有段変速状態の際に差動部ブレーキB1が解放状態、差動部係合装置C3が係合状態とされることで、差動機構20における差動回転ロスを抑制し、燃費性能を向上することができる。
[実施形態2]
図7は、実施形態2に係る変速機を搭載した車両の概略構成図である。実施形態2に係る車両用変速機、制御装置は、各遊星歯車機構の回転要素の組み合わせが実施形態1とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略する(以下で説明する実施形態でも同様である。)。
図7に示す本実施形態の車両用変速機としての変速機201が備える差動機構20は、第1遊星歯車機構としての奇数側遊星歯車機構20A及び第2遊星歯車機構としての偶数側遊星歯車機構20Bを有する。そして、本実施形態の差動機構20は、奇数側遊星歯車機構20A、偶数側遊星歯車機構20Bにおいて、それぞれ奇数側キャリヤCa1、偶数側キャリヤCa2が第1回転要素、奇数側リングギヤR1、偶数側リングギヤR2が第2回転要素、奇数側サンギヤS1、偶数側サンギヤS2が第3回転要素である。
本実施形態の差動機構20は、奇数側キャリヤCa1と偶数側キャリヤCa2とが差動部係合装置C3を介して接続される要素であると共に、奇数側キャリヤCa1が差動部ブレーキB1と接続される要素、偶数側キャリヤCa2が回転機30の回転軸31と接続される要素となっている。また、差動機構20は、奇数側サンギヤS1が奇数入力軸13と接続される要素、偶数側サンギヤS2が偶数入力軸14と接続される要素となっている。
奇数側サンギヤS1は、奇数入力軸13に一体回転可能に結合される。偶数側サンギヤS2は、偶数入力軸14に一体回転可能に結合される。奇数側リングギヤR1と偶数側リングギヤR2とは、一体形成される。奇数側キャリヤCa1と偶数側キャリヤCa2とは、差動部係合装置C3を介して接続される。差動機構20は、奇数側キャリヤCa1又は偶数側キャリヤCa2の一方に差動部ブレーキB1が設けられ、他方に回転機30の回転軸31が接続される。ここでは、差動機構20は、奇数側キャリヤCa1に差動部ブレーキB1が設けられ、偶数側キャリヤCa2にギヤ32、ギヤ33等を介して回転機30の回転軸31が接続される。
本実施形態の変速機201は、上記のように構成される場合であっても、ギヤ比ρ1とギヤ比ρ2とに微少差が設定されると共に、差動部ブレーキB1、差動部係合装置C3が設けられることで、各変速段での有段変速状態の際に、差動機構20における差動回転ロスを抑制することでき、エネルギ損失を抑制できるので、燃費性能を向上することができる。
また、本実施形態の変速機201は、奇数側リングギヤR1と偶数側リングギヤR2とが一体形成される構成であることから、奇数側リングギヤR1と偶数側リングギヤR2の回転慣性質量を相対的に小さくすることができ、同期制御等の制御性を向上することができる。これにより、変速機201は、例えば、回転機30等の小型化を図り搭載性を向上することができ、また、製造コストを抑制することができる。
以上で説明した実施形態に係る変速機201、ECU50は、デュアルクラッチ式の有段変速状態と無段変速状態とを適切に使い分けることができると共に、各変速段による有段変速状態の際に差動部ブレーキB1が解放状態、差動部係合装置C3が係合状態とされることで、差動機構20における差動回転ロスを抑制し、燃費性能を向上することができる。
[実施形態3]
図8は、実施形態3に係る変速機を搭載した車両の概略構成図である。実施形態3に係る車両用変速機、制御装置は、回転機、及び、ブレーキの設置位置が実施形態1とは異なる。
図8に示す本実施形態の車両用変速機としての変速機301が備える差動機構20は、第1遊星歯車機構としての奇数側遊星歯車機構20A及び第2遊星歯車機構としての偶数側遊星歯車機構20Bを有する。そして、本実施形態の差動機構20は、奇数側遊星歯車機構20A、偶数側遊星歯車機構20Bにおいて、それぞれ奇数側キャリヤCa1、偶数側キャリヤCa2が第1回転要素、奇数側サンギヤS1、偶数側サンギヤS2が第2回転要素、奇数側リングギヤR1、偶数側リングギヤR2が第3回転要素である。そして、本実施形態の差動機構20は、偶数側キャリヤCa2に差動部ブレーキB1が設けられ、奇数側キャリヤCa1に回転機30の回転軸31が接続される。差動機構20は、奇数側キャリヤCa1にギヤ32、ギヤ33等を介して回転機30の回転軸31が接続される。ギヤ32は、当該奇数側キャリヤCa1に一体回転可能に結合される。ギヤ33は、回転軸31に一体回転可能に結合され当該ギヤ32と噛み合う。
本実施形態の変速機301は、上記のように構成される場合であっても、ギヤ比ρ1とギヤ比ρ2とに微少差が設定されると共に、差動部ブレーキB1、差動部係合装置C3が設けられることで、各変速段での有段変速状態の際に、差動機構20における差動回転ロスを抑制することでき、エネルギ損失を抑制できるので、燃費性能を向上することができる。
以上で説明した実施形態に係る変速機301、ECU50は、デュアルクラッチ式の有段変速状態と無段変速状態とを適切に使い分けることができると共に、各変速段による有段変速状態の際に差動部ブレーキB1が解放状態、差動部係合装置C3が係合状態とされることで、差動機構20における差動回転ロスを抑制し、燃費性能を向上することができる。
なお、上述した本発明の実施形態に係る車両用変速機及び制御装置は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本実施形態に係る車両用変速機及び制御装置は、以上で説明した各実施形態の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。
以上で説明した車両用変速機は、変速機1では奇数側キャリヤCa1、偶数側キャリヤCa2が第1回転要素、奇数側サンギヤS1、偶数側サンギヤS2が第2回転要素、奇数側リングギヤR1、偶数側リングギヤR2が第3回転要素であり、変速機201では奇数側キャリヤCa1、偶数側キャリヤCa2が第1回転要素、奇数側リングギヤR1、偶数側リングギヤR2が第2回転要素、奇数側サンギヤS1、偶数側サンギヤS2が第3回転要素であるものとして説明したがこれに限らない。各遊星歯車機構の回転要素の組み合わせは、上記以外の組み合わせであってもよい。
以上の説明では、差動機構20は、最高速変速段である第4速変速段64を含む偶数変速段群12側の偶数側遊星歯車機構20Bのギヤ比ρ2が奇数側遊星歯車機構20Aのギヤ比ρ1より大きいものとして説明したが、ギヤ比ρ1の方がギヤ比ρ2より大きい(ρ1>ρ2)構成であってもよい。
また、以上で説明した変速機構10は、回転軸線X1に対して同軸上に配置される差動機構20を基準として、機関4側に偶数段変速部10Bが配置され、反対側に奇数段変速部10Aが配置される構成であってもよい。
また、第2変速段群は、最高速変速段を含む方の変速段群であり、以上の説明では、偶数変速段群12であるものとして説明したがこれに限らない。例えば、最高速変速段が第5速変速段である場合には、当該第2変速段群は、奇数変速段群11となる。この場合、第1変速段群、第1入力軸、第1遊星歯車機構と第2変速段群、第2入力軸、第2遊星歯車機構との関係が入れ替わることになる。すなわちこの場合、車両用変速機は、偶数変速段群12、偶数入力軸14、偶数側遊星歯車機構20Bが第1変速段群、第1入力軸、第1遊星歯車機構となり、奇数変速段群11、奇数入力軸13、奇数側遊星歯車機構20Aが第2変速段群、第2入力軸、第2遊星歯車機構となる。
以上の説明では、車両用変速機の制御装置は、ECU50によって兼用されるものとして説明したがこれに限らない。例えば、制御装置は、ECU50とは別個に構成され、相互に検出信号や駆動信号、制御指令等の情報の授受を行う構成であってもよい。