以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、ハイブリッド車両10の構成を模式的に示したもので、ハイブリッド車両10は、駆動源としてエンジン11およびモータジェネレータ12(本発明の電動機に相当)を備え、いずれか一方または両方により駆動輪16a、16bを駆動できるように構成されている。また、ハイブリッド車両10は、自動変速機13やクラッチ装置14などを備えている。
図2は、図1中のエンジン11、自動変速機13およびクラッチ装置14の概略構成を示す図である。図1および図2において、構成装置間を結ぶ破線の矢印は制御の流れを示している。エンジン11は、図1に示されるように、駆動輪16a、16bの車軸15a、15bよりも前側、かつ横置きに配設されている。エンジン11、クラッチ装置14および自動変速機13の三者は、記載した順番で車幅方向に並べて配設され、エンジン11のアウトプットシャフト17(本発明のエンジン出力軸に相当)から自動変速機13の入力軸31(本発明の変速機入力軸に相当)までの間は回転軸線を共有している。アウトプットシャフト17と入力軸31とはクラッチ装置14を介して一体回転可能に連結されている。
エンジン11のアウトプットシャフト17の近傍には、アウトプットシャフト17の回転数(本発明のエンジン出力軸回転数に相当)を検出する非接触式のエンジン回転数センサ27が設けられている。また、模式的に示した図2に示すように、エンジン11には、空気吸入量を調整するスロットルバルブ28、および空気吸入量に関連して燃料供給量を調整する図略のインジェクタが設けられている。スロットルバルブ28の下流に設けられた図略のダクト内にはスロットルバルブ28から吸入された空気の温度(本発明のエンジン吸気温に相当)を検出するエンジン吸気温センサ18が設けられている。また、スロットルバルブ28のスロットル開度を調整するスロットル用アクチュエータ29、およびスロットル開度を検出するスロットルセンサ30が設けられている。さらに、エンジン11の冷却水路(図略)には、エンジン冷却水のエンジン冷却水温を検出するエンジン冷却水温センサ19が設けられている。
クラッチ装置14は、乾式・単板式で油圧操作タイプの摩擦クラッチである。図2に示すように、クラッチ装置14は、フライホイール41、クラッチディスク42、クラッチフェージング43、プレッシャプレート44、ダイヤフラムスプリング45、クラッチカバー46、スレーブシリンダ47、およびクラッチアクチュエータ48などにより構成されている。図2に示されるように、フライホイール41は、厚い円板状で慣性を維持する質量を有し、エンジン11のアウトプットシャフト17に同軸に固定されている。略筒状のクラッチカバー46は、フライホイール41のエンジン11とは反対側の外周部から軸線方向に向けて立設されている。クラッチカバー46の内周側には、略円板状のクラッチディスク42がフライホイール41に隣接して配設されている。クラッチディスク42は、中心部で自動変速機13の入力軸31にスプライン結合されて一体的に回転し、その外周部の両面にはクラッチフェージング43が固着されている。また、クラッチディスク42に隣接して、略環状のプレッシャプレート44が軸線方向に移動可能に設けられている。プレッシャプレート44を軸線方向に駆動する部材として、ダイヤフラムスプリング45および環状のスレーブシリンダ47が設けられている。
さらに、クラッチ駆動機構として、スレーブシリンダ47を操作するクラッチアクチュエータ48が設けられている。クラッチアクチュエータ48は、直流モータ61(本発明のアクチュエータに相当)、ウォームギヤからなる減速機構62、出力ホイール63、出力ロッド64、マスタシリンダ65、アシストスプリング66、およびストロークセンサ67などにより構成されている。
クラッチアクチュエータ48の直流モ−タ61が回動駆動されると、減速機構62を介して出力ホイール63が回動され、出力ロッド64が前方(図2の左方)または後方(図2の右方)に進退移動される。これにより、出力ロッド64にピボットピンを介して連結されたピストンロッド65aが、制御部によって指令された量だけ進退移動されると、ピストンロッド65aの先端に設けられたピストン65bが進退移動する。そして、当該進退移動量に応じた油圧がマスタシリンダ65に発生する。
マスタシリンダ65で発生した油圧は、連通路68を介してスレーブシリンダ47に伝えられる。そして、スレーブシリンダ47の出力部材47aが、発生した油圧に応じて進退移動されて、ダイヤフラムスプリング45の内径部を付勢する。これにより、ダイヤフラムスプリング45の外径部によるプレッシャプレート44への付勢力が増減し、当該ダイヤフラムスプリング45を介してプレッシャプレート44が軸線方向に駆動されるようになっている。プレッシャプレート44は、フライホイール41との間にクラッチディスク42を挟み込んで押圧する。そして、プレッシャプレート44は、フライホイール41に対して摺動回転するクラッチディスク42のクラッチフェージング43の圧着荷重を変化させることができる。なお、アシストスプリング66は出力ロッド64の後方への復帰をアシストし、ストロークセンサ67は出力ロッド64のアクチュエータ作動量Maを検出する。
図2、図4および図5に示すように、クラッチアクチュエータ48のマスタシリンダ65には、リザーバ69に接続されたアイドルポート70が開口されている。図4に示すように、アイドルポート70は、クラッチ装置14が係合状態に保持されているとき、すなわち、マスタシリンダ65のピストンロッド65aおよびピストン65bが、図2の右方端(後退端)に位置されているとき、マスタシリンダ65に開口されている。これによって、連通路68がアイドルポート70を介してリザーバ69に連通されている。
これに対し、マスタシリンダ65のピストンロッド65aおよびピストン65bが図2の左方に前進された場合(図5参照)には、ピストン65bの円筒外周面によってアイドルポート70が閉止される。アイドルポート70の閉止により、マスタシリンダ65には油圧が発生し始める。なお、円筒外周面によってアイドルポート70が閉止された、このタイミングをクラッチ装置14の切断開始時と称す。そして、マスタシリンダ65で発生した油圧は連通路68を介してスレーブシリンダ47に伝達され、スレーブシリンダ47が有する出力部材47aを前進させクラッチ装置14が切断状態にされるとともに保持される。
クラッチ装置14は、エンジン11のアウトプットシャフト17と自動変速機13の入力軸31とを回転連結する係合状態と、連結を切断する切断状態とに切り替え操作することができる。アウトプットシャフト17と入力軸31との係合は、調整が可能なクラッチトルクTcによって達成される。図3は、クラッチ装置14のクラッチトルク伝達特性の一例を示す図である。図3において、横軸はクラッチアクチュエータ48のアクチュエータ作動量Ma、すなわち、出力ロッド64のストローク量を示し、縦軸は伝達可能なクラッチトルクTcを示している。クラッチ装置14は、アクチュエータ作動量Ma=0でクラッチトルクTcが最大の完全係合状態となる常時係合タイプのクラッチである。クラッチ装置14は、アクチュエータ作動量Maが増加するにしたがって半接続状態における伝達可能なクラッチトルクTcが減少し、アクチュエータ作動量Ma=Mmaxで切断状態になる特性を有している。
自動変速機13は、ドライバのシフトレバー操作により複数のギヤトレーン33のうちの一つを選択的に噛合結合させる手動変速機に、各アクチュエータを付加して変速操作を自動化したAMT(オートメイテッドマニュアルトランスミッション)である。図1に破線で示されるように、自動変速機13は、平行配置された入力軸31と出力軸32との間に例えば前進5段・後進1段のギヤトレーン33を有する平行軸歯車噛合式の構造を有している。入力軸31は、クラッチ装置14を介して、エンジン11から出力されるエンジントルクTeによって回転駆動されるようになっている。入力軸31の近傍には、入力軸31の入力軸回転数(本発明の変速機入力軸回転数に相当する)を検出する入力軸回転数センサ37が設けられている。自動変速機13の出力軸32は、車幅方向の中央に配設された差動装置20の入力側とギヤ結合され、差動装置20を介して駆動輪16a、16bに回転連結されている。
また、図1及び図2に示されるように、自動変速機13は、ギヤトレーン33のうちの一つを選択的に噛合結合するギヤ切替機構として、シフトアクチュエータ34およびセレクトアクチュエータ35を有している。シフトアクチュエータ34およびセレクトアクチュエータ35の駆動方法については公知であるので詳細な説明は省略する(例えば、特開2004−176894号公報を参照)。
モータジェネレータ12(本発明の電動機に相当)は、図1に示されるように、駆動輪16a、16bの車軸15a、15bよりも後側に配設されている。モータジェネレータ12は、ハイブリッド車両で一般的に使用される三相交流回転電機である。モータジェネレータ12の図略のアウトプットシャフトは、図略の減速機構を介して差動装置20の入力側に回転連結されている。従って、モータジェネレータ12のアウトプットシャフトは、自動変速機13の出力軸32と、駆動輪16a、16bの両方に回転連結されていることになる。
モータジェネレータ12を駆動するために、インバータ55およびバッテリ56がハイブリッド車両10の例えば後側に搭載されている。インバータ55はモータジェネレータ12に接続されるとともに、バッテリ56に接続されている。インバータ55は、バッテリ56から出力される直流電力を周波数可変の交流電力に変換してモータジェネレータ12に供給する直流/交流変換機能を備えている。また、インバータ55はモータジェネレータ12で発電した交流電力を直流電力に変換してバッテリ56を充電する交流/直流変換機能を備えている。なお、バッテリ56は、走行駆動専用に設けてもよいし、他の用途と兼用するようにしてもよい。
モータジェネレータ12は、交流電力を供給されると電動機として機能し、エンジントルクTeに加算可能なアシストトルクを発生して駆動輪16a、16bをアシスト駆動することができる。また、モータジェネレータ12は、エンジントルクTeの一部の発電トルク分で駆動されると発電機として機能し、バッテリ56を充電することができる。
ハイブリッド車両10を制御するために、複数の電子制御装置(以下、ECUと略称する)が設けられている。すなわち、図1に示されるように、エンジンECU21、変速機ECU22、モータECU23、およびバッテリECU24が設けられている。さらに、ハイブリッド車両10の全体を総括的に制御するハイブリッドECU25が設けられている。各部をそれぞれ受け持つECU21〜24は、ハイブリッドECU25にCAN接続されて相互に必要な情報を交換するとともに、ハイブリッドECU25によって管理および制御されている。各ECU21〜25はそれぞれ、演算処理を実行するCPU部と、プログラムや各種マップなどを保存するROMやRAMなどの記憶部と、情報を交換するための入出力部とを備えて構成されている。
また、ハイブリッドECU25は、ハイブリッド車両10の走行モードを選択するモード選択部を備えている。モード選択部は、図略のバッテリ状態検出センサによって検出されるバッテリ状態、図略の車速センサによって検出される車速、図略のアクセル操作検出センサによって検出されるアクセルペダルの操作量、図略のブレーキ操作検出センサによって検出されるブレーキペダルの操作量等に応じて、適切な走行モードの選択及び各走行モードにおける変速段の選択を行う。
実施の形態において、ハイブリッド車両10は、モード選択部で選択されるモードとして、モータジェネレータ12のモータトルクのみが駆動輪16a,16bに伝達されるエンジン停止でのモータ走行モード(以下、EVモードという)を備えている。また、ハイブリッド車両10は、エンジン11のエンジントルクTeのみが駆動輪16a,16bに伝達されるエンジンモードを備えている。また、ハイブリッド車両10は、モータジェネレータ12のモータトルクとエンジン11のエンジントルクTeとの両方がパラレルに駆動輪16a、16bに伝達されるパラレルモードを備えている。さらに、ハイブリッド車両10は、モータジェネレータ12のモータトルクのみが駆動輪16a、16bに伝達され、エンジン11のエンジントルクTeによってエアコン用のコンプレッサ(図示せず)、オルタネータ等の補機類が駆動されるエンジン動作でのモータ走行モード(以下、シリーズモードという)を備えている。そして、モード選択部によっていずれか1つの走行モードが選択される。
エンジンECU21は、図略のイグニッションスイッチの操作に応じてスターター26(図1参照)を駆動し、エンジン11を始動させる。また、エンジンECU21は、エンジン回転数センサ27からアウトプットシャフト17のエンジン出力軸回転数Neの信号を取得するとともに、スロットルセンサ30からスロットル開度の信号を取得する。そして、エンジンECU21は、アウトプットシャフト17のエンジン出力軸回転数Neを監視しながら、スロットル用アクチュエータ29に指令を発してスロットルバルブ28を開閉する。また、エンジンECU21は、図略のインジェクタを制御する。これらの制御によって、エンジンECU21は、エンジントルクTeおよびエンジン出力軸回転数Neを制御する。なお、本実施の形態においては、エンジン出力軸回転数Neは、ドライバが踏み込むアクセルペダルの踏み込み操作量のみによって制御されるものではなく、ハイブリッドECU25からの指令により優先制御される構成となっている。
変速機ECU22は、クラッチ装置14および自動変速機13を関連付けて制御することにより、変速制御を実行する。変速機ECU22は、クラッチアクチュエータ48の直流モ−タ61を駆動して、伝達可能なクラッチトルクTcを制御する。また、変速機ECU22は、ストロークセンサ67から出力ロッド64のアクチュエータ作動量Maの信号を取得して、その時点におけるクラッチトルクTcを把握する。また、変速機ECU22は、自動変速機13の入力軸回転数センサ37から変速機入力軸回転数Niを取得する。さらに、変速機ECU22は、シフトアクチュエータ34およびセレクトアクチュエータ35を駆動して、ギヤトレーン33のうちの一つを選択的に噛合結合して変速段を切り替え制御する。
このように構成された本実施の形態に係るハイブリッド車両10は、ハイブリッドECU25のモード選択部によって、例えばEVモードが選択されると、モータジェネレータ12が起動され、モータジェネレータ12のモータトルクによって駆動輪16a、16bが駆動される。また、モード選択部によって、エンジンモードが選択されると、エンジン11が起動され、クラッチ装置14が係合状態に保持される。これにより、エンジン11のエンジントルクTeがクラッチ装置14を介して自動変速機13に伝達され、ギヤトレーン33を介して駆動輪16a、16bが駆動される。また、モード選択部によって、パラレルモードが選択されると、モータジェネレータ12およびエンジン11が起動されて、モータジェネレータ12およびエンジン11の両トルクによって車両が走行される。一方、モード選択部によって、シリーズモードが選択されると、モータジェネレータ12が起動されるとともに、エンジン11がアイドル回転数にて回転されるが、駆動輪16a、16bにはモータジェネレータ12のモータトルクのみが伝達される。そして、エンジン11のアイドル回転によって、エアコン用のコンプレッサ(図示せず)、オルタネータ等の補機類が駆動される。
ところで、上記のEVモードあるいはシリーズモードでハイブリッド車両10が走行している状態においては、クラッチ装置14が切断状態に保持され、マスタシリンダ65とスレーブシリンダ47とを連通する連通路68が密閉状態(図5参照)に保持される。従って、この状態で連通路68中の作動油の温度(作動油温)が変動すると、連通路68中の作動油の熱膨張あるいは熱収縮によって、マスタシリンダ65とスレーブシリンダ47との関係が変化する。
すなわち、ハイブリッド車両10の走行中に発生するクラッチディスク42の滑りによる発熱およびエンジン11の熱等によって雰囲気温度があがり、連通路68中の作動油の温度が上昇すると、連通路68中の作動油が熱膨張する。あるいは、エンジン11が停止され、エンジン11による走行からモータジェネレータ12のみによる走行に切替わると、クラッチディスク42およびエンジン11が冷える。これにより、雰囲気温度が低下して連通路68中の作動油の温度が下降すると、連通路68中の作動油が熱収縮する。この結果、マスタシリンダ65が作動されていないにも係らず、スレーブシリンダ47の出力部材47aが作動(進退移動)してしまい、クラッチアクチュエータ48の作動量に対するクラッチトルクTcが変化してしまうことになる。
そこで、本実施の形態では、作動油温の変化によるクラッチトルクTcの変化に対応するため、図2に示すように、ハイブリッドECU25に、クラッチ温度演算部51と、作動油温度演算部52と、基準温度記憶部53と、補正進退移動量演算部54と、補正進退移動量駆動部57と、を有している。クラッチ温度演算部51は、エンジン出力軸回転数Ne、変速機入力軸回転数NiおよびエンジントルクTeに基づき熱源となるクラッチ温度TmCを演算する演算部である。
クラッチ温度TmCは、下記式(数1)によって求められる。
(数1)
TmC=∫0 クラッチ係合(上昇温度ΔT1−下降温度ΔT2)dt
ここで、上昇温度ΔT1および下降温度ΔT2は、ともにクラッチディスク42に係る各温度である。
上昇温度ΔT1は、下記式(数2)で演算される。
(数2)
ΔT1=クラッチエネルギーEc/2/(クラッチカバー46の比熱×クラッチカバー46の重量)
上記、式(数2)において、クラッチエネルギーEcは、下記式(数3)で演算される。
(数3)
Ec=∫0 クラッチ係合(Ne−Ni)×Tcdt
なお、Neはエンジン出力軸回転数、Niは変速機入力軸回転数、Tcはクラッチトルクである。そして、クラッチトルクTcは、Tc=Te−Iwによって演算され、このとき、Teはエンジントルク、Iはエンジン慣性、wはエンジン回転加速度である。
上記式を見てわかるように、クラッチエネルギーEcは、クラッチ装置14が切断された状態であるTc=0から、クラッチディスク42が係合されクラッチ装置14が接続状態となる(Ne−Ni)=0までの間において演算される。
次に、下降温度ΔT2は下記式(数4)で演算される。
(数4)
ΔT2=放熱エネルギー/(クラッチカバー46の比熱×クラッチカバー46の重量)
ここで、放熱エネルギーは、下記式(数5)で演算される。
(数5)
放熱エネルギー=(クラッチディスク42の熱伝達率)×温度差×クラッチディスク42の放熱面積
上記において、クラッチディスク42の熱伝達率は、自然対流時の熱伝達率、基準熱伝達率、エンジン出力軸回転数Ne、および車速等に基づき演算される。また、温度差は推定クラッチディスク温度−周囲の雰囲気温度から演算される。なお、このようにしてクラッチ温度TmCを演算することは周知であるので、詳細な説明については省略する。
作動油温度演算部52は、演算されたクラッチ温度TmC、雰囲気温度取得空間Aの雰囲気温度TmAおよびクラッチディスク42からスレーブシリンダ47までの基準距離L1に基づいてスレーブシリンダ47内の作動油の作動油温TmOを演算する演算部である。図6に示すように、実施形態において、雰囲気温度取得空間Aはクラッチディスク42からの距離が基準距離L1よりも遠い位置L2に配置されている。雰囲気温度取得空間Aの大きさおよび位置は、任意であり、雰囲気温度TmAは、例えば雰囲気温度取得空間Aの中心位置の温度とすればよい。なお、雰囲気温度取得空間Aはクラッチディスク42からの距離が基準距離L1よりも小さな位置に配置してもよい。
作動油温TmOを変動させる大きな要因の一つであるクラッチディスク42から放熱された熱は、クラッチディスク42からの距離Lに対して1次関数的に減少していくことが判っている。そこで、発明者は、図6のグラフに示すように、演算されたクラッチ温度TmCと雰囲気温度TmAとをグラフ上にプロットして直線で結び、クラッチディスク42と雰囲気温度取得空間Aとの間に配置されるスレーブシリンダ47の温度をグラフから読み取って推定(演算)するようにした。そして、スレーブシリンダ47の温度≒作動油温TmOであるとした。
なお、実施の形態では、雰囲気温度取得空間Aの雰囲気温度TmAは、エンジン吸気温TmEおよびエンジン冷却水温TmWから求めている。つまり、事前の実験によって、エンジン吸気温TmEおよびエンジン冷却水温TmWと雰囲気温度TmAとの関係を把握してマップを作成し図略の記憶部に記憶させておく。そして、検出されたエンジン吸気温TmEおよびエンジン冷却水温TmWをマップにあてはめ雰囲気温度TmAを導出する。ただし、この態様に限らず、温度センサによって直接、雰囲気温度TmAを検出してもよい。
基準温度記憶部53は、出力ロッド64の前進移動によってアイドルポート70が閉止されたときの作動油温TmO1を基準温度Tbaseとして図略の記憶部に記憶する。このとき、作動油温TmO1は、作動油温度演算部52によって演算された温度である。
補正進退移動量演算部54は、出力ロッド64の補正進退移動量ΔLamを演算する演算部である。補正進退移動量ΔLamは、基準温度Tbaseが記憶された後に演算された作動油温TmO2と基準温度Tbase(TmO1)との間の温度差ΔTにより生じる作動油の体積変化量ΔVによって進退移動される出力部材47aの変動進退移動量ΔLfrを相殺するためのものである。出力部材47aの変動進退移動量ΔLfrは、下記式(数6)によって演算される。
(数6)
ΔLfr=ΔV/As
ここで、ΔVは作動油温TmO2と基準温度Tbase(TmO1)との間の差により生じる作動油の体積変化量であり、Asは出力部材47aの作動油圧受圧面積である。なお、上記において、体積変化量ΔVは、実際に使用する作動油の熱膨張率のカタログデータから求めても良い。また、作動油の熱膨張率を実験によって求め、当該熱膨張率から求めても良い。
そして、出力ロッド64の補正進退移動量ΔLamは、出力部材47aの変動進退移動量ΔLfrを相殺するよう演算される。なお、変動進退移動量ΔLfrを相殺する出力ロッド64の補正進退移動量ΔLamは、出力ロッド64の進退移動量と出力部材47aの進退移動量との関係を事前に取得し、当該取得したデータに基づいて求めればよい。
補正進退移動量駆動部57は、出力ロッド64を、演算された補正進退移動量ΔLamに応じた分だけ作動させる。これにより、出力部材47aは変動進退移動量ΔLfrと逆方向に同じ分だけ作動されて、出力部材47aの体積変化量ΔV分の作動が相殺される。そして、作動油の熱膨張あるいは熱収縮が作動油に発生しても補正されたクラッチアクチュエータ48の作動量によって所望のクラッチトルクTcを得ることができる。
以下、図7、図8、および図6に基づいて、本実施の形態におけるクラッチ装置14の制御動作を説明する。図6のグラフでは、横軸をクラッチディスク42からの距離とし、縦軸を温度(油温または雰囲気温度)とする。図7のフローチャート1は、アイドルポート70が閉止されたときの作動油の基準温度Tbaseを演算する基になるクラッチ温度TmC1、エンジン吸気温TmE1およびエンジン冷却水温TmW1を記憶部に記憶するためのプログラムである。図8のフローチャート2は、フローチャート1で得たデータに基づき、出力ロッド64の補正進退移動量ΔLamを演算するためのプログラムである。フローチャート1およびフローチャート2は、同時に実行されている。
本実施の形態においては、車両10はモータ走行モードの一つであるシリーズモードで走行しているものとする。つまり、駆動輪16a、16bには、モータジェネレータ12のモータトルクのみが伝達されている。このとき、エンジン11は作動され、エンジン11のエンジントルクTeによってエアコン用のコンプレッサ(図示せず)、オルタネータ等の補機類が駆動されている。
まず、フローチャート1について説明する。フローチャート1では、ステップS10において、マスタシリンダ65のアイドルポート70が閉口され、クラッチ装置14の切断制御が開始されたか否かが判定される。アイドルポート70の閉口は、ストロークセンサ67によって検出される出力ロッド64のストロークの大きさによって判断される。
図4に示すように、アイドルポート70が開口された状態であれば、ステップS12に進む。そして、クラッチ温度TmC、エンジン吸気温TmEおよびエンジン冷却水温TmWを取得し図略の記憶部に記憶してデータを更新する。クラッチ温度TmCはクラッチ温度演算部51によって演算される。エンジン吸気温TmEは、エンジン吸気温センサ18によって検出され、エンジン冷却水温TmWはエンジン冷却水温センサ19によって検出される。そして、プログラムを終了する。なお、ステップS12は、クラッチ温度演算部51を有している。
ステップS10において、アイドルポート70の閉口状態が確認されれば、ステップS14に進む。そして、前回、ステップS12で更新した最新のクラッチ温度TmC、エンジン吸気温TmEおよびエンジン冷却水温TmWデータを、基準となるクラッチ温度TmC1、エンジン吸気温TmE1およびエンジン冷却水温TmW1として記憶部に記憶しプログラムを終了する。
次に、図8のフローチャート2について説明する。フローチャート2では、まず、ステップS20において、フローチャート1のステップS10と同様に、アイドルポート70が閉口しているか否かが判定される。アイドルポート70が開口していれば、ステップS29に進み、補正進退移動量ΔLam=0として補正は行なわずプログラムを終了する。
ステップS20において、アイドルポート70の閉口が確認されれば、ステップS22(作動油温度演算部52および基準温度記憶部53)に進む。そして、フローチャート1のステップS14で記憶されたクラッチ温度TmC1、エンジン吸気温TmE1およびエンジン冷却水温TmW1から、作動油温度演算部52によって、クラッチ切断制御開始時の作動油温TmO1を演算する。つまり、エンジン吸気温TmE1およびエンジン冷却水温TmW1に基づき演算する雰囲気温度取得空間Aの雰囲気温度TmA1と、クラッチ温度TmC1とから作動油温TmO1を演算する。
具体的には、図6に示すグラフにクラッチ温度TmC1および雰囲気温度TmA1をプロットし、直線の温度特性Qを得る。ここで、スレーブシリンダ47のクラッチディスク42からの距離である基準距離L1をグラフに当てはめると、L1と温度特性Qとの交点からスレーブシリンダ47の温度が推定できる。そして、推定したスレーブシリンダ47の温度≒作動油温TmO1とし、作動油温TmO1を基準温度Tbaseとして記憶する。
次に、ステップS24(クラッチ温度演算部51)では、クラッチ温度演算部51によって演算される現在のクラッチ温度TmC2と、各センサによって取得されるエンジン吸気温TmE2およびエンジン冷却水温TmW2とを取得する。
ステップS26(作動油温度演算部52)では、ステップS22と同様の方法で、ステップS24で取得したクラッチ温度TmC2、エンジン吸気温TmE2およびエンジン冷却水温TmW2に基づいて現在の作動油温度TmO2を演算する。
ステップS27(補正進退移動量演算部54)では、出力ロッド64の補正進退移動量ΔLamを演算する。このため、ステップS22で基準温度Tbase(作動油温TmO1)が記憶された後に演算された現在の作動油温TmO2と基準温度Tbaseとの間の温度差ΔT(=TmO2−TmO1)を演算する。次に、温度差ΔTにより生じる作動油の体積変化量ΔVによって進退移動される出力部材47aの変動進退移動量ΔLfrを上記の式(数6)によって演算する。その後、変動進退移動量ΔLfrを相殺するための出力ロッド64の補正進退移動量ΔLamを演算する。
そして、ステップS28(補正進退移動量駆動部57)においては、演算した補正進退移動量ΔLamに応じた分だけ出力ロッド64をクラッチアクチュエータ48によって作動させる。これにより、出力部材47aの変動進退移動量ΔLfrがキャンセル(相殺)される。このため、切断状態にあるクラッチ装置14において、作動油の熱膨張あるいは熱収縮に係らず、所望のクラッチトルクTcが確保できるようになる。
上述の説明から明らかなように、本実施の形態によれば、クラッチ装置14の切断状態において、補正進退移動量演算部54が、出力ロッド64の補正進退移動量ΔLamを演算する。補正進退移動量ΔLamは、作動油の温度変化による体積変化量ΔVによって進退移動される出力部材47aの変動進退移動量ΔLFrを相殺するよう演算される。そして、出力ロッド64が補正進退移動量ΔLamに応じた分だけ作動される。このように、従来技術のように、作動油の体積変化量ΔVが発生したときに出力ロッド64をわざわざ移動させてクラッチ装置14を接続状態とし、アイドルポート70を開放する必要がない。これにより、クラッチ装置14は切断状態を維持したまま、所望のクラッチトルクを高精度に適宜、得ることができるので、効率的であるとともに高性能化を図ることができる。また、クラッチ装置14は切断状態を維持したままであるので、ドライバビリティの悪化も抑制される。
また、本実施の形態によれば、作動油温度演算部52では、クラッチ温度TmCだけでなく、雰囲気温度TmAも加えて作動油温TmOを演算するので、より高精度に作動油温TmOを取得することができる。これにより、作動油温TmOから演算される出力ロッド64の補正進退移動量ΔLamも高精度に得ることができクラッチ装置14の高性能化を図ることができる。
また、本実施の形態によれば、雰囲気温度TmAは、エンジン冷却水温TmWおよびエンジン吸気温TmEに基づき演算する。このため、既に車両が有している温度センサをそのまま利用でき、効率的であるとともに、低コストに対応できる。
次に、上記実施形態の変形例について、フローチャート3、4に基づき説明する。変形例では、車両10がシリーズモードで走行しているときに、エンジン11が停止され、EVモードで走行される場合を想定している。つまり、駆動輪16a、16bには、モータジェネレータ12のモータトルクのみが伝達されている。ただし、この態様に限らず、パラレルモード或いはエンジンモードで走行中にエンジン11が停止され、EVモードで走行されるようになった場合を想定してもよい。
このとき、エンジン11が停止された直後では、エンジン11はデッドソーク状態となる。このため、エンジン冷却水温TmWおよびエンジン吸気温TmEと、雰囲気温度TmAと、の関係が相関性を有さなくなる。そこで、デッドソークの影響を受けるエンジン11の停止直後では、クラッチディスク42のクラッチ温度TmCのみを演算(推定)し、当該クラッチ温度TmCのみによってスレーブシリンダ47の温度、つまり作動油温TmOを推定するものとする。このように、変形例では、エンジン11のデッドソークの影響の有無を考慮にいれて、補正進退移動量ΔLamの演算を行なうものである。これら以外は上記実施の形態と同様であり、以降においては変更部分のみについて説明する。また、同じ構成には同じ符号を付して説明する。
図9のフローチャート3は、アイドルポート70が閉止されたときの作動油の基準温度Tbaseを演算する基となるクラッチ温度TmCを記憶部に記憶するためのプログラムである。図10のフローチャート4は、出力ロッド64の補正進退移動量ΔLamを演算するためプログラムである。フローチャート3およびフローチャート4は、同時に実行されている。
まず、フローチャート3について説明する。フローチャート3では、ステップS30において、マスタシリンダ65のアイドルポート70が閉口されて、クラッチ装置14の切断制御が開始されたか否かが判定される。
図4に示すように、アイドルポート70が開口された状態であれば、ステップS32に進む。そして、クラッチ温度TmCを演算するとともに、各センサによってエンジン吸気温TmEおよびエンジン冷却水温TmWを取得し、図略の記憶部に記憶して更新する。そして、プログラムを終了する。なお、ステップS32は、クラッチ温度演算部51を有している。
ステップS30において、アイドルポート70の閉口が確認されれば、ステップS34に進む。ステップS34では、エンジン11が停止されているか否かを判定する。停止されていれば、ステップS36に進む。エンジン11が停止されていなければ、ステップS39に進む。そして、前回、ステップS32で更新した最新のクラッチ温度TmC1、エンジン吸気温TmE1およびエンジン冷却水温TmW1を基準となる温度として記憶部に記憶し、プログラムを終了する。
ステップS36では、エンジン11の停止後の経過時間が、デッドソークの影響を受ける虞がある時間の範囲内であるとして設定された時間Ta(例えば2分)内であるか否かを判定する。このように、変形例においては、ステップS36でエンジン11によるデッドソークの影響の有無を判定する。なお、時間Taは任意に設定可能である。
判定時が、設定された時間Ta内であるならば、エンジン11は温度上昇を続けておりデッドソークの影響があると判定し、ステップS38に進む。ステップS38(クラッチ温度演算部51)では、ステップS32と同様にクラッチ温度TmCを演算するとともに、エンジン吸気温TmEおよびエンジン冷却水温TmWを取得し、記憶して更新する。
ステップS36で、判定時が、設定された時間Ta外であるならば、エンジン11によるデッドソークの影響はもうないとし、ステップS39(基準温度記憶部53)に進む。そして、前回、ステップS32またはステップS38で更新した最新のクラッチ温度TmC、エンジン吸気温TmEおよびエンジン冷却水温TmWデータを、基準となるクラッチ温度TmC1、エンジン吸気温TmE1およびエンジン冷却水温TmW1として記憶部に記憶し、プログラムを終了する。
次に、フローチャート4について説明する。フローチャート4では、まず、ステップS40において、フローチャート3のステップS30と同様に、アイドルポート70が閉口しているか否かを判定する。アイドルポート70が開口された状態であれば、ステップS66に進み、補正進退移動量ΔLam=0として補正は行なわずプログラムを終了する。
ステップS40において、アイドルポート70の閉口が確認されれば、ステップS42に進む。ステップS42では、エンジン11が停止されているか否かを判定する。停止されていれば、ステップS44に進む。エンジン11が停止されていなければ、上記実施の形態と同様の処理を行なうために、フローチャート2のステップS22に進み、ステップS22〜ステップS29で処理を行なう。そして、その後、フローチャート4のスタートに戻る。なお、ステップS22で使用するクラッチ温度TmC1、エンジン吸気温TmE1およびエンジン冷却水温TmW1は、フローチャート3のステップS39で取得したデータを用いればよい。
ステップS44では、フローチャート3のステップS36と同様の処理が行なわれる。ステップS44で、判定時におけるエンジン11の停止後の経過時間が、設定された時間Taを越えているときには、デッドソークの影響はないので、上記と同様にフローチャート2のステップS22に進み、ステップS22〜ステップS29で処理を行なう。このときも、ステップS22では、フローチャート3のステップS39で取得した温度データを使用すればよい。そして、その後、フローチャート4のスタートに戻る。
ステップS44で、判定時におけるエンジン11の停止後の経過時間が、設定された時間Ta内であるとき(デッドソークの影響があるとき)には、ステップS46に進む。ステップS46では、ステップS58で設定される前回の補正進退移動量ΔLamを、切替前補正進退移動量PΔLamに置き換える。このとき、今回が初めての補正であれば、前回の補正進退移動量ΔLamは0であるので、切替前補正進退移動量PΔLam=0である。
ステップS48では、ステップS48を通過するのが1回目であるか否かを確認する。1回目であれば、ステップS50に進む。2回目以降であれば、ステップS62に進む。ステップS50(作動油温度演算部52および基準温度記憶部53)では、クラッチ切断開始時における作動油温TmO1を演算し記憶する。このとき、作動油温TmO1は、クラッチ温度TmCのみに基づいて演算する。つまり、エンジン11の停止によるデッドソークの影響のため、精度よく得ることができない雰囲気温度TmAを用いず、クラッチ温度TmCのみを用いて演算するものである。
このため、図11に示す温度特性Rは、事前の実験によって取得し、図略の記憶部に記憶させておく。クラッチ温度TmCが得られれば温度特性Rの始点とする。そして、スレーブシリンダ47の温度、即ち作動油温TmO1を温度特性Rに基づいて求める。このように、事前に取得した温度特性Rに基づいて作動油温TmO1を求めるので、若干の精度の低下はあるが、デッドソーク時にも作動油温TmO1を良好に演算できる。
ステップS52(作動油温度演算部52)では、フローチャート3のステップS38で取得したクラッチ温度TmCに基づいて現在の作動油温TmO2を演算する。
ステップS54(補正進退移動量演算部54)では、フローチャート2のステップS27と同様に、クラッチ切断開始時における作動油温TmO1と、現在の作動油温TmO2とに基づき出力ロッド64の補正進退移動量ΔLamを演算する。そして、ステップS56に進む。
一方、ステップS62(作動油温度演算部52)では、ステップS52と同様に現在の作動油温TmO2を演算する。ステップS64(補正進退移動量演算部54)は、ステップS60で設定される「前回の現在の作動油温TmO2」と現在の作動油温TmO2とに基づき出力ロッド64の補正進退移動量ΔLamを演算する。なお、演算方法についてはステップS54と同様である。このように、ステップS62およびステップS64にて、常に前回の作動油温と今回の作動油温との差に基づき補正進退移動量ΔLamを演算する。そして、ステップS56に進む。
ステップS56では、ステップS54、あるいはステップS64で演算された補正進退移動量ΔLamに、切替前補正進退移動量PΔLamを加算して補正進退移動量ΔLamを演算する。このとき、切替前補正進退移動量PΔLamは、これまで演算された補正進退移動量ΔLamを積算したものである。このように演算することによって、補正進退移動量ΔLamは、アイドルポート70が閉口された位置からのトータルの補正進退移動量ΔLamとなっている。
ステップS57(補正進退移動量駆動部57)においては、演算した補正進退移動量ΔLamに応じた分だけ、出力ロッド64をクラッチアクチュエータ48によって作動させる。これにより、出力部材47aの変動進退移動量ΔLfrがキャンセル(相殺)される。このため、切断状態にあるクラッチ装置14において、作動油の熱膨張あるいは熱収縮に係らず、所望のクラッチトルクTcが確保できるようになる。
ステップS58では、ステップS56で演算された補正進退移動量ΔLamを前回補正進退移動量ΔLamに置き換える。ステップS60では、ステップS52、あるいはステップS62で演算された現在の作動油温TmOを「前回の現在の作動油温TmO」に置き換え、プログラムを終了する。
このように、精度は少しおちるものの、変形例によっても、クラッチ装置14は切断状態を維持したまま、所望のクラッチトルクを適宜、得ることができるので、効率的であるとともに高性能化を図ることができる。
なお、上記変形例では、フローチャート4において、エンジン11のデッドソークの影響がなくなれば、フローチャート2に移動して、雰囲気温度TmAも含めて精度のよい補正進退移動量ΔLamを演算した。しかし、これに限らず、エンジン11のデッドソークの影響がなくなったときにも、デッドソークの影響が有る場合と同様に、雰囲気温度TmAを演算せずに、クラッチ温度TmCのみによって補正進退移動量ΔLamを演算してもよい。これによっても、相応の効果は得られる。
また、上記変形例では、フローチャート3のステップS32、ステップS38にて、クラッチ温度TmC、エンジン冷却水温TmWおよびエンジン吸気温TmEを取得している。また、ステップS39にて、クラッチ温度TmC、エンジン冷却水温TmWおよびエンジン吸気温TmEを保持している。そして、エンジン11のデッドソークの影響がないときに、フローチャート2に移動して、当該データを使用するようにしている。しかし、この態様に限らず、ステップS32、ステップS38およびステップS39にて、クラッチ温度TmCのみを取得または保持するようにしてもよい。そして、フローチャート4において、エンジン11のデッドソークの影響がないと判定された時には、フローチャート1によって、クラッチ温度TmC、エンジン冷却水温TmWおよびエンジン吸気温TmEを取得するようにしてもよい。
また、本実施形態においては、補正進退移動量駆動部57での出力ロッドの作動制御を、制御の1サイクル毎におこなうようにしているが、この態様に限らず、一定時間毎に行なっても良い。また、作動油に、設定された一定の温度差が生じたときだけ、補正進退移動量駆動部57での制御を行なうようにしてもよい。
さらに、上記した実施の形態においては、自動変速機13を平行軸歯車噛合式で構成した例で述べたが、遊星ギヤを用いたものであってもよい。