以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るめっき装置を模式的に示す平面図である。図1に示すように、このめっき装置には、装置フレーム1と、ウェーハ等の基板を収納したカセットを搭載する2台のロードポート2と、めっき装置の動作を制御する制御部3が備えられている。さらに、めっき装置は、基板のオリエンテーションフラットまたはノッチの位置を所定の方向に合わせるアライナ4と、めっき処理後の基板を高速回転させて乾燥させるスピン・リンス・ドライヤ(SRD)6と、基板ホルダ8(図2乃至図5参照)が水平に載置されるテーブル20と、基板を搬送する基板搬送ロボット22とを備えている。これらアライナ4、スピン・リンス・ドライヤ6、テーブル20、および基板搬送ロボット22は、装置フレーム1内に配置されている。
テーブル20の上方に位置して、テーブル20上に載置された基板ホルダ8を開閉して基板の該基板ホルダ8への着脱を行う基板ホルダ開閉機構24が配置されている。更に、テーブル20の側方には、基板ホルダ8を起倒させる基板ホルダ起倒機構26が配置されている。
装置フレーム1の内部には、基板ホルダ8の保管および一時仮置きを行うストッカ30、基板ホルダ8で保持した基板を純水等の前処理液で前洗浄(前処理)する前水洗槽32、基板ホルダ8で保持した基板にめっきを行うめっき槽34、めっき後の基板を基板ホルダ8と共にリンス液でリンスするリンス槽36、およびリンス後の基板の水切りを行うブロー槽38が配置されている。ストッカ30、前水洗槽32、めっき槽34、リンス槽36、およびブロー槽38は、この順に直列に配列されている。
前水洗槽32には、内部に純水等の前処理液を保持する1つの前水洗セル32aが備えられている。めっき槽34には、内部にめっき液を保持する複数(この例では10列)のめっきセル34aとオーバフロー槽34bが備えられている。リンス槽36には、内部にリンス液を保持する1つのリンスセル36aが備えられている。めっきセル34aは例えば電解めっきセルであり、内部にアノード電極を備える。基板ホルダ8は各めっきセル34a内に設置され、この状態で電解めっきが行われる。あるいは、めっきセル34aは基板に無電解めっきを行う無電解めっきセルであってもよい。本実施形態では、めっき槽34は1種類のめっき液を用いており、各めっきセル34aからオーバフローしためっき液は共通のオーバフロー槽34bに流れ込むようになっている。ストッカ30は、複数の基板ホルダ8を鉛直に並列に保持するように構成されている。ブロー槽38は、エアの吹き付けによって、基板ホルダ8で保持した基板の表面に残留した液滴を除去し乾燥させるように構成されている。
めっき槽34の一側方には、各めっきセル34a内のめっき液を攪拌するパドル(図示せず)を駆動するパドルモータユニット40が設けられている。めっき槽34の他側方には、排気ダクト42が設けられている。
基板ホルダ8は、図2乃至図5に示すように、矩形平板状の第1保持部材(固定保持部材)54と、この第1保持部材54にヒンジ56を介して開閉自在に取付けられた第2保持部材(可動保持部材)58とを有している。他の構成例として、第2保持部材58を第1保持部材54に対峙した位置に配置し、この第2保持部材58を第1保持部材54に向けて前進させ、また第1保持部材54から離間させることによって第2保持部材58を開閉するようにしてもよい。
第1保持部材54は例えば塩化ビニル製である。第2保持部材58は、基部60と、リング状のシールホルダ62とを有している。シールホルダ62は例えば塩化ビニル製であり、下記の押えリング64との滑りを良くしている。シールホルダ62の上部には環状の基板側シール部材66(図4および図5参照)が内方に突出して取付けられている。この基板側シール部材66は、基板ホルダ8が基板Wを保持した時、基板Wの表面外周部に圧接して第2保持部材58と基板Wとの隙間をシールするように構成されている。シールホルダ62の第1保持部材54と対向する面には、環状のホルダ側シール部材68(図4および図5参照)が取付けられている。このホルダ側シール部材68は、基板ホルダ8が基板Wを保持した時、第1保持部材54に圧接して第1保持部材54と第2保持部材58との隙間をシールするように構成されている。ホルダ側シール部材68は、基板側シール部材66の外側に位置している。
図5に示すように、基板側シール部材66は、シールホルダ62と第1固定リング70aとの間に挟持されてシールホルダ62に取付けられている。第1固定リング70aは、シールホルダ62にボルト等の締結具69aを介して取付けられる。ホルダ側シール部材68は、シールホルダ62と第2固定リング70bとの間に挟持されてシールホルダ62に取付けられている。第2固定リング70bは、シールホルダ62にボルト等の締結具69bを介して取付けられる。
シールホルダ62の外周部には段部が設けられており、この段部には押えリング64がスペーサ65を介して回転自在に装着されている。押えリング64は、第1固定リング70aの外周部によって脱出不能に装着されている。この押えリング64は、酸やアルカリに対して耐食性に優れ、十分な剛性を有する材料から構成される。例えば、押えリング64はチタンから構成される。スペーサ65は、押えリング64がスムーズに回転できるように、摩擦係数の低い材料、例えばPTFEで構成されている。
押えリング64の外側には、複数のクランパ74が押えリング64の円周方向に沿って等間隔で配置されている。これらクランパ74は第1保持部材54に固定されている。各クランパ74は、内方に突出する突出部を有する逆L字状の形状を有している。押えリング64の外周面には、外方に突出する複数の突起部64bが設けられている。これら突起部64bは、クランパ74の位置に対応する位置に配置されている。クランパ74の内方突出部の下面および押えリング64の突起部64bの上面は、押えリング64の回転方向に沿って互いに逆方向に傾斜するテーパ面となっている。押えリング64の円周方向に沿った複数箇所(例えば3箇所)には、上方に突出する凸部64aが設けられている。これにより、回転ピン(図示せず)を回転させて凸部64aを横から押し回すことにより、押えリング64を回転させることができる。
第2保持部材58を開いた状態で、第1保持部材54の中央部に基板Wを挿入し、ヒンジ56を介して第2保持部材58を閉じる。押えリング64を時計回りに回転させて、押えリング64の突起部64bをクランパ74の内方突出部の内部に滑り込ませることで、押えリング64とクランパ74にそれぞれ設けたテーパ面を介して、第1保持部材54と第2保持部材58とを互いに締付けて第2保持部材58をロックする。また、押えリング64を反時計回りに回転させて押えリング64の突起部64bをクランパ74から外すことで、第2保持部材58のロックを解くようになっている。
第2保持部材58をロックした時、基板側シール部材66の下方突出部は基板Wの表面外周部に圧接される。シール部材66は均一に基板Wに押圧され、これによって基板Wの表面外周部と第2保持部材58との隙間をシールする。同じように、第2保持部材58をロックした時、ホルダ側シール部材68の下方突出部は第1保持部材54の表面に圧接される。シール部材68は均一に第1保持部材54に押圧され、これによって第1保持部材54と第2保持部材58との間の隙間をシールする。
第1保持部材54の端部には、一対のホルダハンガ108が外方に突出して設けられている。このホルダハンガ108は、内側ハンガ部90と外側ハンガ部94から構成される。両側の内側ハンガ部90の間にはハンドレバー92が延びている。前水洗槽32、めっき槽34、リンス槽36、およびブロー槽38内では、基板ホルダ8は、ホルダハンガ108の内側ハンガ部90または外側ハンガ部94を介してそれらの周壁に吊下げられる。
第1保持部材54の上面には、基板Wの大きさにほぼ等しいリング状の突条部82が形成されている。この突条部82は、基板Wの周縁部に当接して該基板Wを支持する環状の支持面80を有している。この突条部82の円周方向に沿った所定位置に凹部84が設けられている。
図3に示すように、凹部84内には複数(図示では12個)の導電体(電気接点)86がそれぞれ配置されている。これら導電体86は、ホルダハンガ108の内側ハンガ部90に設けられた接続端子91から延びる複数の配線にそれぞれ接続されている。第1保持部材54の支持面80上に基板Wを載置した際、この導電体86の端部が基板Wの側方で飛び出して、図5に示す電気接点88の下部に弾性的に接触するようになっている。
導電体86に電気的に接続される電気接点88は、ボルト等の締結具89を介して第2保持部材58のシールホルダ62に固着されている。この電気接点88は、板ばね形状に形成されている。電気接点88は、基板側シール部材66の外方に位置した、内方に板ばね状に突出する接点部を有している。電気接点88はこの接点部において、その弾性力によるばね性を有して容易に屈曲するようになっている。第1保持部材54と第2保持部材58で基板Wを保持した時に、電気接点88の接点部が、第1保持部材54の支持面80上に支持された基板Wの外周面に弾性的に接触するように構成されている。
第2保持部材58の開閉は、図示しないエアシリンダと第2保持部材58の自重によって行われる。つまり、第1保持部材54には通孔54aが設けられ、テーブル20の上に基板ホルダ8を載置した時に通孔54aに対向する位置にエアシリンダ(図示せず)が設けられている。このエアシリンダのピストンロッドにより、通孔54aを通じて第2保持部材58のシールホルダ62を上方に押上げることで第2保持部材58を開き、ピストンロッドを収縮させることで、第2保持部材58をその自重で閉じるようになっている。
図1に戻って、ストッカ30、前水洗槽32、めっき槽34、リンス槽36、ブロー槽38、および基板ホルダ起倒機構26の間で基板ホルダ8を基板とともに搬送するトランスポータ100が設けられている。このトランスポータ100は、装置フレーム1に固定されて水平方向に延びる固定ベース102と、固定ベース102上を水平方向に移動可能に構成されたリフタ101と、リフタ101に連結されたアーム104とを備えている。アーム104は、基板ホルダ8を把持するグリッパ103を有している。アーム104とリフタ101は一体に水平方向に移動し、アーム104はリフタ101によって上昇および下降される。リフタ101およびアーム104を水平方向に移動させる駆動源としてはリニアモータまたはラックピニオンを採用することができる。
次に、上記のように構成されためっき装置による処理動作を説明する。まず、トランスポータ100のアーム104により、ストッカ30から鉛直姿勢の基板ホルダ8を取り出す。基板ホルダ8を把持したアーム104は、水平方向に移動して、基板ホルダ起倒機構26に基板ホルダ8を渡す。基板ホルダ起倒機構26は、基板ホルダ8を鉛直姿勢から水平姿勢に転換し、テーブル20の上に載置する。そして、基板ホルダ開閉機構24によりテーブル20に載置された基板ホルダ8を開く。
基板搬送ロボット22は、ロードポート2に搭載されたカセットから基板を1枚取出し、アライナ4に載せる。アライナ4はオリエンテーションフラットまたはノッチの位置を所定の方向に合わせる。基板搬送ロボット22は、基板をアライナ4から取り出し、テーブル20上に載置された基板ホルダ8に挿入する。この状態で、基板ホルダ開閉機構24により基板ホルダ8を閉じ、基板ホルダ8をロックする。
次に、基板ホルダ起倒機構26は、基板ホルダ8を水平姿勢から鉛直姿勢に転換する。アーム104のグリッパ103は、この起立した状態の基板ホルダ8を把持し、この状態でアーム104は前水洗槽32の上方位置まで基板ホルダ8を水平方向に移動させる。さらに、トランスポータ100のリフタ101は、基板ホルダ8とともにアーム104を下降させて、水洗槽32内の所定の位置に基板ホルダ8をセットする。この状態で、基板の前水洗が行われる。基板の前水洗が終了した後、アーム104のグリッパ103は基板ホルダ8を把持し、リフタ101がアーム104を上昇させることで基板ホルダ8を水洗槽32から引き上げる。
アーム104は、めっき槽34の上方位置まで水平方向に基板ホルダ8を移動させる。さらに、トランスポータ100のリフタ101は、基板ホルダ8とともにアーム104を下降させて、めっき槽34のめっきセル34a内の所定の位置に基板ホルダ8をセットする。この状態で、基板のめっきが行われる。めっきが終了した後、アーム104のグリッパ103は基板ホルダ8を把持し、リフタ101がアーム104を上昇させることで基板ホルダ8をめっき槽34から引き上げる。
アーム104は、リンス槽36の上方位置まで水平方向に基板ホルダ8を移動させる。さらに、トランスポータ100のリフタ101は、基板ホルダ8とともにアーム104を下降させて、リンス槽36内の所定の位置に基板ホルダ8をセットする。この状態で、基板のめっき後のリンスが行われる。リンスが終了した後、アーム104のグリッパ103は基板ホルダ8を把持し、リフタ101がアーム104を上昇させることで基板ホルダ8をリンス槽36から引き上げる。
アーム104は、ブロー槽38の上方位置まで水平方向に基板ホルダ8を移動させる。さらに、トランスポータ100のリフタ101は、基板ホルダ8とともにアーム104を下降させて、ブロー槽38内の所定の位置に基板ホルダ8をセットする。ブロー槽38は、エアの吹き付けによって、基板ホルダ8で保持した基板の表面に付着した水滴を除去し乾燥させる。ブロー処理が終了した後、アーム104のグリッパ103は基板ホルダ8を把持し、リフタ101がアーム104を上昇させることで基板ホルダ8をブロー槽38から引き上げる。
アーム104は、水平方向に移動して、基板ホルダ8を基板ホルダ起倒機構26に渡す。基板ホルダ起倒機構26は、前述と同様にして、基板ホルダ8をテーブル20の上に水平に載置し、基板ホルダ開閉機構24により基板ホルダ8を開く。基板搬送ロボット22は、基板ホルダ8から処理後の基板を取出し、この基板をスピン・リンス・ドライヤ6に搬送する。スピン・リンス・ドライヤ6は基板を高速で回転させることで基板を乾燥させる。基板搬送ロボット22は、乾燥された基板をスピン・リンス・ドライヤ6から取り出し、ロードポート2のカセットに戻す。これによって、1枚の基板に対する処理が終了する。
図6は、めっき装置の一部を示す正面図である。図6に示すように、アーム104は、処理液を溜める処理槽(以下、前水洗槽32、めっき槽34、リンス槽36を総称して処理槽110と呼ぶ)の上方に位置している。アーム104は、基板ホルダ8を把持するグリッパ103を備えている。このグリッパ103は、基板ホルダ8を下から支持するフック105と、ホルダハンガ108を下方に押圧する2つの押圧機構106を備えている。フック105は基板ホルダ8のハンドレバー92を引っ掛ける形状を有している。
押圧機構106は、ホルダハンガ108の上面に接触する押圧部材107と、押圧部材107を下方に移動させるエアシリンダ109とを備えている。エアシリンダ109のピストンロッド109aが下降すると、押圧部材107は下方に移動し、ホルダハンガ108を下方に押圧する。ハンドレバー92がフック105に引っ掛けられた状態で、押圧部材107がホルダハンガ108を下方に押圧することで、基板ホルダ8はグリッパ103に把持される。グリッパ103に把持された基板ホルダ8は、揺れ動くことなくトランスポータ100によって鉛直方向および水平方向に搬送される。
図6に示すように、めっき装置は、基板ホルダ8の基板側シール部材66と基板Wとの接触部近傍に溜まっている処理液を吸引する第1の吸引機構112と、基板Wの表面上の広い領域に残留する処理液を吸引する第2の吸引機構116と、吸引された処理液を回収する処理液回収機構120と、第1の吸引機構112および第2の吸引機構116を基板ホルダ8に対して相対的に移動させる移動機構124とを備えている。
後述するように、基板Wを保持した基板ホルダ8を垂直姿勢で処理槽110から引き上げると、基板側シール部材66が基板Wに接触している基板Wの外周最下部には、特に処理液が溜まりやすい。第1の吸引機構112は、この領域に溜まっている処理液を吸引する。
図7は、図6に示すトランスポータ100、基板ホルダ8、第1の吸引機構112、第2の吸引機構116、および移動機構124の斜視図である。図7において、処理液回収機構120は省略されている。図7に示すように、第1の吸引機構112は1つの第1の吸引ノズル130と第1の吸引管131とを備えている。第2の吸引機構116は複数の第2の吸引ノズル136と第2の吸引管137とを備えている。第1の吸引ノズル130は、第1の吸引管131に接続され、第1の吸引管131から基板ホルダ8に保持された基板Wに向かって延びている。第2の吸引ノズル136は、第2の吸引管137に接続され、第2の吸引管137から基板ホルダ8に保持された基板Wに向かって延びている。第1の吸引ノズル130および第2の吸引ノズル136は、円筒状のノズルである。
図7に示すように、移動機構124は、第1の吸引ノズル130を基板Wの表面と垂直な方向、すなわち基板Wの表面に近接および離間する方向(以下、この方向をX軸方向と呼ぶ)に移動させる第1のX軸アクチュエータ140と、第2の吸引ノズル136をX軸方向に移動させる第2のX軸アクチュエータ142とを備えている。移動機構124は、さらに、第1のX軸アクチュエータ140、第1の吸引機構112、第2のX軸アクチュエータ142、および第2の吸引機構116を水平方向に、かつ基板Wの表面と平行(以下、この方向をY軸方向と呼ぶ)に移動させるY軸アクチュエータ144を有している。さらに、移動機構124は、第1のX軸アクチュエータ140、第2のX軸アクチュエータ142、Y軸アクチュエータ144、第1の吸引機構112、および第2の吸引機構116を鉛直方向(以下、この方向をZ軸方向と呼ぶ)に移動させるZ軸アクチュエータ146を備えている。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は互いに直交する方向である。
リフタ101は、鉛直に延びるベース部101aと、このベース部101aに対して相対的に上下動する上下動部101bとを備えている。アーム102は上下動部101bに固定されている。第1の吸引機構112、第2の吸引機構116、および移動機構124はトランスポータ100に取り付けられている。より具体的には、Z軸アクチュエータ146はトランスポータ100のリフタ101のベース部101aに取り付けられており、Y軸アクチュエータ144はZ軸アクチュエータ146に取り付けられており、第1のX軸アクチュエータ140および第2のX軸アクチュエータ142はY軸アクチュエータ144に取り付けられている。移動機構124の動作は制御部3により制御される。
アクチュエータ144,146は、ボールねじ機構とサーボモータとの組み合わせからなる電動アクチュエータから構成されている。これにより、制御部3は、第1の吸引ノズル130および第2の吸引ノズル136の動きを高精度に制御することができる。より具体的には、第1の吸引ノズル130および第2の吸引ノズル136を、基板Wと平行な平面内で予め設定した経路に沿って移動させることができる。第1のX軸アクチュエータ140および第2のX軸アクチュエータ142は、エアシリンダで構成してもよいし、アクチュエータ144,146のように電動アクチュエータで構成してもよい。
図6に示すように、処理液回収機構120は、第1の吸引管131および第2の吸引管137に接続される真空ライン150と、真空ライン150に取り付けられる吸引切替バルブ152A,152Bと、吸引された処理液を回収する回収タンク154と、回収タンク154に接続される真空装置VPとを備えている。真空ライン150は、第1の吸引管131に接続される第1の真空ライン150aと、第2の吸引管137に接続される第2の真空ライン150bとから構成されている。第1の真空ライン150aには吸引切替バルブ152Aが設けられており、第2の真空ライン150bには吸引切替バルブ152Bが設けられている。吸引切替バルブ152Aおよび吸引切替バルブ152Bは同一の構成を有している。吸引切替バルブ152Aおよび吸引切替バルブ152Bの開閉動作は制御部3により制御される。真空ライン150は回収タンク154に接続されている。真空装置VPを駆動することで、基板ホルダ8の基板側シール部材66上および基板Wの表面上に残留した処理液が第1の吸引機構112および第2の吸引機構116を通じて吸引される。
本実施形態では、真空装置VPは回収タンク154の下流側に配置されているが、真空装置VPを回収タンク154の上流側に配置することも可能である。この場合、液体がその内部を通過することができる真空装置を採用する必要がある。一例として、バイモルフ素子を使用したバイモルフポンプが好適に使用される。
第1の吸引ノズル130を用いて処理液を吸引するときは、吸引切替バルブ152Bが閉じられ、吸引切替バルブ152Aが開かれる。真空装置VPの駆動により、回収タンク154、第1の真空ライン150a、第1の吸引管131、および第1の吸引ノズル130内に真空が形成され、これにより第1の吸引ノズル130は基板Wおよび基板側シール部材66上に残留した処理液を吸引する。処理液は、第1の吸引ノズル130、第1の吸引管131、第1の真空ライン150aをこの順に通って回収タンク154内に移送される。
第2の吸引ノズル136を用いて処理液を吸引するときは、吸引切替バルブ152Aが閉じられ、吸引切替バルブ152Bが開かれる。真空装置VPの駆動により、回収タンク154、第2の真空ライン150b、第2の吸引管137、および第2の吸引ノズル136内に真空が形成され、これにより第2の吸引ノズル136は基板Wの表面上に残留した処理液を吸引する。処理液は、第2の吸引ノズル136、第2の吸引管137、第2の真空ライン150bをこの順に通って回収タンク154内に移送される。
回収タンク154には、排液管160および処理液回収管161が接続されている。回収タンク154に溜まった処理液は、排液管160または処理液回収管161を通って回収タンク154から排出される。例えば、回収された処理液がめっき液である場合、めっき液は処理液回収管161を通ってめっき槽34に戻され、基板のめっきに再利用される。処理液が純水(例えば、リンス液および前処理液)である場合は、排液管160を通って外部に移送され、廃棄される。排液管160および処理液回収管161には開閉バルブ162,162が取り付けられている。
図8は、第1の吸引機構112、第2の吸引機構116、および移動機構124の一部を示す拡大図である。図9(a)は図8に示す第1の吸引機構112のA線矢視図であり、図9(b)は図8に示す第2の吸引機構116のA線矢視図である。本実施形態において、第1のX軸アクチュエータ140および第2のX軸アクチュエータ142は、エアシリンダである。図8、図9(a)、および図9(b)に示すように、第1の吸引ノズル130は第1の吸引管131に取り付けられており、第2の吸引ノズル136は第2の吸引管137に取り付けられている。
図9(a)に示すように、第1のX軸アクチュエータ140はY軸アクチュエータ144に固定されている。第1のX軸アクチュエータ140のピストンロッド140aは、連結部材141を介して第1の吸引管131に連結されている。このような構成により、ピストンロッド140aが伸縮すると、第1の吸引ノズル130および第1の吸引管131は図9(a)に示す矢印方向(X軸方向)に移動する。
図9(b)に示すように、第2のX軸アクチュエータ142はY軸アクチュエータ144に固定されている。第2のX軸アクチュエータ142のピストンロッド142aは、連結部材143を介して第2の吸引管137に連結されている。このような構成により、ピストンロッド142aが伸縮すると、第2の吸引ノズル136および第2の吸引管137は図9(b)に示す矢印方向(X軸方向)に移動する。
第1の吸引ノズル130および第2の吸引ノズル136は、処理槽110から引き上げられた基板Wの表面に対向して配置される。第2の吸引ノズル136および第2の吸引管137に接触しないように、第1の吸引ノズル130および第1の吸引管131は、これら第2の吸引ノズル136および第2の吸引管137の上方に配置されている。
図10(a)は第1の吸引ノズル130および第1の吸引管131の上面図であり、図10(b)は第2の吸引ノズル136および第2の吸引管137の上面図である。本実施形態において第1の吸引ノズル130の本数は1本であり、第2の吸引ノズル136の本数は7本である。第2の吸引ノズル136は水平方向に沿って等間隔に並んでいる。ただし、第1の吸引ノズル130の本数および第2の吸引ノズル136の本数は本実施形態に限定されない。図8に示す第1のX軸アクチュエータ140および第2のX軸アクチュエータ142は、第1の吸引機構112および第2の吸引機構116をそれぞれ独立にX軸方向に移動させることができる。
移動機構124はリフタ101のベース部(静止部分)101aに固定されており、第1の吸引機構112および第2の吸引機構116は移動機構124に連結されている。第1の吸引機構112、第2の吸引機構116、および移動機構124は、アーム104に把持された基板ホルダ8とともには上下動しないが、アーム104に把持された基板ホルダ8と一体に水平方向に移動する。したがって、基板ホルダ8が1つの処理槽から他の処理槽にトランスポータ100によって搬送されるときに、第1の吸引機構112、第2の吸引機構116、および移動機構124は基板ホルダ8と一体に水平方向に移動する。
アーム104に把持された基板ホルダ8上の基板Wと第1の吸引ノズル130との距離は、第1のX軸アクチュエータ140によって変更される。アーム104に把持された基板ホルダ8上の基板Wと第2の吸引ノズル136との距離は、第2のX軸アクチュエータ142によって変更される。第1のX軸アクチュエータ140および第2のX軸アクチュエータ142は、独立に動作することが可能となっている。したがって、第1の吸引ノズル130および第2の吸引ノズル136は、それぞれ独立に基板Wに近接し、および基板Wから離間することができる。
図11(a)は、第1の吸引ノズル130および第2の吸引ノズル136が基板Wから離間した所定の退避位置にある状態を示す図であり、図11(b)は、第1の吸引ノズル130が基板Wに近接した所定の吸引位置にあり、第2の吸引ノズル136が退避位置にある状態を示す図であり、図11(c)は、第1の吸引ノズル130が退避位置にあり、第2の吸引ノズル136が吸引位置にある状態を示す図である。このように、第1の吸引ノズル130および第2の吸引ノズル136は、交互に基板Wに近づいて処理液を吸引する。
X軸アクチュエータ140,142は、吸引ノズル130,136が基板ホルダ8に保持された基板Wの表面に接触しない範囲内でこれら吸引ノズル130,136を基板Wに向かって移動させる。第1の吸引機構112および第2の吸引機構116は、基板ホルダ8が移動している最中に、基板W上の処理液を吸引することができる。より具体的には、第2の吸引機構116は、基板ホルダ8が処理槽110からトランスポータ100によって引き上げられているときに基板W上の処理液を吸引し、第1の吸引機構112は、基板ホルダ8がトランスポータ100によって水平に移動(搬送)されているときに基板W上の処理液を吸引するようになっている。
第2の吸引ノズル136の動作について図12(a)乃至図12(c)を参照しつつ説明する。第1の吸引ノズル130の動作については後述する。図12(a)は基板Wの表面から離れた退避位置にある第2の吸引ノズル136を示す模式図であり、図12(b)は基板Wに向かって移動し、基板Wの表面上の処理液を吸引する第2の吸引ノズル136を示す模式図であり、図12(c)は処理液の吸引後、再び退避位置に移動された第2の吸引ノズル136を示す模式図である。第2の吸引ノズル136は、図12(a)乃至図12(c)に示すように、第2のX軸アクチュエータ142によって基板Wの表面に近接および離間する方向に移動される。
基板Wおよび基板ホルダ8が処理槽110内に浸漬され、基板Wが処理されると、リフタ101によりアーム104を上昇させ、基板Wおよび基板ホルダ8を処理槽110から引き上げる。上昇する基板ホルダ8の第2保持部材58が第2の吸引ノズル136にぶつからないように、図12(a)に示すように、第2の吸引ノズル136(および第1の吸引ノズル130)は退避位置に配置される。第2保持部材58が第2の吸引ノズル136を通過すると、図12(b)に示すように、第2のX軸アクチュエータ142は第2の吸引ノズル136を基板Wに向かって移動させ、第2の吸引ノズル136の先端を基板Wの表面上に残留した処理液に接触させる。この吸引位置にある第2の吸引ノズル136と基板Wの表面との距離はおよそ0.5mmである。なお、この距離は一例であり、第2の吸引ノズル136と基板Wの表面との距離はこの例に限定されない。また、吸引能力の高い真空装置VPを用いれば、必ずしも第2の吸引ノズル136を処理液に接触させる必要はない。
第2の吸引ノズル136が図12(b)に示す吸引位置に移動するとき、吸引切替バルブ152Bが開かれる。このとき、吸引切替バルブ152Aは閉じられたままである。真空装置VPの駆動により、第2の吸引ノズル136内が減圧され、これにより処理液は第2の吸引ノズル136内に吸引される。処理液の吸引中、基板Wは上昇するが、第2の吸引ノズル136の位置は固定されている。また、別の実施形態として、Y軸アクチュエータ144およびZ軸アクチュエータ146により第2の吸引ノズル136を基板Wの上昇とは独立して基板Wに平行な面内で移動させてもよい。例えば、基板Wを保持した基板ホルダ8をトランスポータ100が水平に移動させている間、第2の吸引ノズル136が基板W上の処理液を吸引することもできる。
第2の吸引ノズル136の吸引動作は、第2の吸引ノズル136の移動と同時、または第2の吸引ノズル136の移動前に開始してもよい。基板Wおよび基板ホルダ8が上昇しながら、第2の吸引ノズル136は基板Wの表面上の処理液を広範囲に亘って吸引する。具体的に第2の吸引ノズル136は、図13の網線で示す矩形状の領域内の処理液を吸引する。基板Wがさらに上昇して第2保持部材58が第2の吸引ノズル136に近づいたときに、図12(c)に示すように、第2の吸引ノズル136は基板Wから離れ、退避位置に移動される。
このように、第2の吸引ノズル136は、基板ホルダ8の引き上げ動作中に基板Wの広い領域上の処理液を吸引することができるので、基板ホルダ8の引き上げ速度を速くしても、基板Wに付着する処理液を少なくすることができる。さらに、基板Wに付着した処理液を液切りするための時間がかからないので、タクトタイムを短くすることができ、結果として、スループットが向上する。
基板Wの周縁部および基板側シール部材66の表面に残留する処理液は、重力の作用により流下し、基板側シール部材66の下部の上に溜まる。しかしながら、第2の吸引ノズル136は、図13に示す基板表面の中心側矩形領域上の処理液を吸引することはできるが、基板表面の下部領域および基板側シール部材66の下部に残留する処理液を吸引することはできない。より具体的には、第2の吸引機構116は図14の網線で示す三日月状の領域に残留する処理液を吸引することはできない。そこで、第1の吸引ノズル130により基板表面の下部領域および基板側シール部材66上に溜った処理液を吸引する。
図15は基板ホルダ8と第1の吸引ノズル130との位置関係を示す図であり、図16は第1の吸引ノズル130、基板W、および基板側シール部材66を示す拡大断面図である。図16において、基板側シール部材66は基板Wの周縁部に接触している。上述したように、基板側シール部材66が接触している基板Wの外周部に残留する処理液は、基板側シール部材66の縁に沿って回り込むように重力により流下し、基板側シール部材66と基板Wとが接触している外周最下部に集中的に溜まる。
第1の吸引機構112は、基板側シール部材66の下部に溜まった処理液を吸引する。具体的には、第2の吸引ノズル136による上述した処理液の吸引が終了した後、すなわち、基板ホルダ8の上昇動作が終了した後、第1の吸引ノズル130は、第1のX軸アクチュエータ140により基板Wに近接し、処理液に接触する。このとき、吸引切替バルブ152Aが開かれる。吸引切替バルブ152Bは第2の吸引ノズル136による上述した処理液の吸引が終了したときに閉じられる。そして、真空装置VPの駆動により、第1の吸引ノズル130内が減圧され、これにより処理液は第1の吸引ノズル130内に吸引される。第1の吸引ノズル130の吸引動作は、第1の吸引ノズル130の移動と同時、または第1の吸引ノズル130の移動前に開始してもよい。
図17に示すように、第1の吸引ノズル130は、Y軸方向およびZ軸方向に移動しながら、網線で示す三日月状の領域上の処理液を吸引する。この第1の吸引ノズル130のY軸方向およびZ軸方向の移動は、予めプログラム化される。特に、Y軸アクチュエータ144およびZ軸アクチュエータ146を同時に駆動することで、第1の吸引ノズル130を基板側シール部材66に沿って移動させることができる。したがって、第1の吸引ノズル130は基板側シール部材66の下部に溜まった処理液を吸引することができる。処理液の吸引中は、第1のX軸アクチュエータ140は動作せず、第1の吸引ノズル130と基板Wとの距離は、例えば、0.5mmに維持される。
第1の吸引機構112の吸引動作は、基板ホルダ8の処理槽110からの引き上げ作業が完了した後であれば、基板ホルダ8および基板Wの搬送中も可能である。基板ホルダ8および基板Wを処理槽110から引き上げた後、基板ホルダ8はトランスポータ100により基板Wとともに次の処理槽に水平方向に搬送される。この搬送の間、第1の吸引機構112は、基板Wおよび基板側シール部材66上に残留した処理液を吸引することができる。したがって、基板ホルダ8を処理槽110の上方で待機させる必要がなくなり、タクトタイムをより短くすることができる。結果として、スループットが向上する。
上述したように、ブロー槽38において、ブローノズル(図示しない)によりエアを基板Wに吹き付けることで、基板Wの表面に残留した液滴が除去され、乾燥される。上述した実施形態によれば、第1の吸引ノズル130および第2の吸引ノズル136は基板Wのほぼ全面から処理液を吸引することができる。したがって、ブロー槽38での処理液の飛散を極力抑えることができ、基板Wの汚染を防ぐことができる。
図18(a)は第1の吸引ノズル130の変形例を示す上面図であり、図18(b)は図18(a)のB線矢視図である。図18(a)および図18(b)に示すように、第1のノズル130の本数を3本にしてもよい。この場合、それぞれの第1のノズル130は、基板側シール部材66の周方向に沿って配列される。このような配置により、第1の吸引ノズル130はより多くの処理液を吸引することができる。
図19(a)は第1の吸引ノズル130のさらに他の変形例を示す上面図であり、図19(b)は図19(a)のC線矢視図である。図19(a)および図19(b)に示すように、第1の吸引ノズル130は、スリット130aが先端に形成されたスリットノズルから構成されている。このスリット130aは、基板側シール部材66の周方向に沿って湾曲した円弧形状を有しており、基板側シール部材66上の処理液はスリット130aから吸い込まれる。このようなスリット130aを有する第1の吸引ノズル130を基板Wに近接させるだけで、第1の吸引ノズル130は基板側シール部材66上に残留した処理液を吸引することができる。すなわち、第1の吸引ノズル130が所定の吸引位置に配置された後は、Y軸アクチュエータ144およびZ軸アクチュエータ146を駆動する必要がない。
図20(a)は第2の吸引ノズル136の他の変形例を示す斜視図であり、図20(b)は図20(a)のD線矢視図である。図20(a)および図20(b)に示すように、第2の吸引ノズル136は、スリット136aが先端に形成されたスリットノズルから構成されている。このスリット136aは、基板ホルダ8に保持された基板Wの表面と平行に、かつ水平に延びている。このようなスリット136aを有する第2の吸引ノズル136は、基板Wの表面上に残留した処理液をより確実に吸引することができる。
上述した種々のノズルを組み合わせることにより、本発明の目的をより効果的に達成することができる。例えば、第1の吸引ノズル130および第2の吸引ノズル136の両方を上述したスリットノズルから構成することにより、基板Wに残留する処理液をより効率よく吸引することができる。
図15に示すように、第1の吸引ノズル130が基板Wおよび基板側シール部材66の下部の対向する位置にある間に、第2の吸引ノズル136を基板ホルダ8の下端部に対向する位置(図6参照)に移動させてもよい。そして、第1の吸引ノズル130による吸引と第2の吸引ノズル136による吸引とを交互に、または同時に行って、基板ホルダ8の下端部およびその周辺に集まった処理液を除去するようにしてもよい。
上記の例では、基板Wの表面および基板側シール部材66の接触部に付着した処理液を吸引する例を示したが、同様の構成により、基板ホルダ8の表面に付着した処理液を吸引するようにしてもよい。これにより、基板ホルダ8の表面に付着した処理液を減少させ、次の工程で処理液による汚染を減少させることができる。本実施形態の構成によれば、基板ホルダ8を水平方向に搬送する間にも処理液の吸引除去を行うことができるので、液切りするための待機は必要なく、スループットを向上することができる。
なお、本発明は、処理槽110での基板ホルダ8の上昇下降動作を、トランスポータ100とは別に設けられた昇降機構により行うめっき装置にも適用することができる。このタイプのめっき装置でも、処理槽110から上昇する基板ホルダ8に対向する位置に吸引ノズルを配置し、この吸引ノズルが基板ホルダ8とともに水平移動しながら処理液を吸引することができる。
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。