そこで、裏面電極をファイヤースルー法を利用して形成することで、コストや工数の増大を抑制することが提案されている(例えば、特許文献2、3を参照。)。すなわち、シリコン基板の裏面全面に設けたパッシベーション膜の上に、アルミニウムペースト組成物を所定のパターンで塗布し、そのペーストに含まれるガラスの軟化点よりも十分に高い温度で焼成処理を施すことにより、パッシベーション膜を破って、生成される厚膜アルミニウム電極とシリコン基板との接続を確保する。この焼成処理の際に、基板裏面に電極を直接形成した場合と同様に、AlとSiの反応によりp+層が形成されると共にBSF層が形成されるので、良好な電池特性が得られる。
上記特許文献2に記載されたペースト組成物は、従来のアルミニウムペースト組成物ではパッシベーション膜のファイヤースルー性が不十分であることから、これを改善することを目的としたもので、ペースト組成物中に、導体成分として含まれるアルミニウム粉末の他に、ファイヤースルー性を確保するための他の金属成分を含むものである。上記他の金属成分としては、銀、パラジウム、白金、金、硼素、ガリウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモン、マグネシウム、チタン、カリウム、バナジウム、ニッケル、銅が挙げられている。
また、前記特許文献3に記載されたペースト組成物は、特許文献2のペースト組成物では未だファイヤースルー性が低く、良好なBSF効果が得られないことから、これらの改善を目的とするものである。このペースト組成物は、アルミニウム粉末と、ガラス粉末と、分散剤と、有機ビヒクルとを含むもので、分散剤が含まれることで、良好且つ均一なファイヤースルー性が発現するものとされている。
しかしながら、上記特許文献3に記載のペースト組成物でも、その目的に拘わらず、未だガラスによるパッシベーション膜の浸食やシリコン基板中へのアルミニウム原子の拡散が不十分であった。そのため、その結果、ファイヤースルー性とBSF層形成が十分ではないことから、一層の改善が望まれていた。
なお、前記特許文献1に記載されたペースト組成物は、銀粉末が導体成分として含まれた受光面電極形成に用いられるもので、受光面電極形成の際には、良好なファイヤースルー性を有し、シリコン基板との良好な電気的接続を実現できる。しかしながら、n+層上への電極形成とp型基板上への電極形成とでは、ペーストに要求される物性が異なるので、このペースト組成物において裏面用に導体成分をアルミニウム粉末に置き換えて用いても、十分なファイヤースルー性を得ることはできず、BSF層も形成されない。また、上記ペースト組成物に含まれるガラスフリットは硼素を含まないことから、この点でもp型基板との電気的接続には適さない。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、ファイヤースルー性に優れ且つBSF層が好適に形成される太陽電池の裏面ファイヤースルー用ペースト組成物を提供すると共に、電池特性の優れた太陽電池およびその製造方法を提供することにある。
斯かる目的を達成するため、第1発明の要旨とするところは、アルミニウム粉またはアルミニウムを含む複合粉と、ガラスフリットと、ベヒクルとを配合して成り、シリコン基板の裏面に設けられたパッシベーション膜上に塗布してファイヤースルーによって電極を形成するために用いられる太陽電池の裏面ファイヤースルー用ペースト組成物であって、前記ガラスフリットはAgを酸化物換算で0.05〜1.8(mol%)、アルカリ金属(Li 2 O+Na 2 O+K 2 O)を合計0.6〜23(mol%)、PbOを30〜70(mol%)、B 2 O 3 を1〜30(mol%)、SiO 2 を10〜40(mol%)、Al 2 O 3 を0〜12(mol%)、ZnOを0〜30(mol%)の範囲内の割合で含むガラスから成るものであることにある。
また、第2発明の太陽電池の製造方法の要旨とするところは、(a)前記第1発明のペースト組成物をシリコン基板の裏面に備えられたパッシベーション膜上に所定パターンで塗布してペースト膜を形成するペースト塗布工程と、(b)焼成処理を施すことにより前記ペースト膜から厚膜アルミニウムを生成すると共に前記パッシベーション膜を浸食して前記シリコン基板に接続された裏面ファイヤースルーアルミニウム電極を形成するファイヤースルー工程とを、含むことにある。
前記第1発明によれば、太陽電池の裏面電極用ペースト組成物は、ガラスフリットがAgを酸化物(すなわちAg2O)換算で0.05〜1.8(mol%)、アルカリ金属(Li 2 O+Na 2 O+K 2 O)を合計0.6〜23(mol%)、PbOを30〜70(mol%)、B 2 O 3 を1〜30(mol%)、SiO 2 を10〜40(mol%)、Al 2 O 3 を0〜12(mol%)、ZnOを0〜30(mol%)の範囲内の割合で含むガラスから成るものであることから、良好なファイヤースルー性を有する。このとき、ガラス中にAgが含まれていても、Al原子がシリコン基板中へ拡散してAlとSiとが反応してp+層が形成されること、すなわちBSF層が形成されることは何ら妨げられない。したがって、ファイヤースルー性に優れ且つBSF層を好適に形成し得る裏面ファイヤースルー用ペースト組成物が得られる。なお、前記アルミニウムを含む複合粉は、例えば、Al表面にSiをメカノケミカルやコーティングで固着した粉末、Al−Si化合物、或いはAl−B化合物である。これら複合粉において、Siはカーケンダール効果を抑制する作用を有するもので、固着或いは化合物として含まれることで、別途添加する場合よりも少ない量で効果が得られる。Al−Si化合物においては共融点577(℃)(11.3%Si/88.7%Al)までの範囲でAlの融点を低くする効果がある。Bは最も優秀なアクセプタである。また、Agは、十分に含まれていないとファイヤースルー性が得られないが、多すぎると侵食性が強くなり過ぎると共にファイヤースルー性に寄与しない割合が多くなって無駄が生じるので、上記範囲が必要であり、酸化物換算で0.05〜1.75(mol%)の範囲が一層好ましい。
因みに、前記特許文献2には、ファイヤースルー性を確保するためにペースト中にAlに加えて他の金属成分を添加することが示されており、その「他の金属成分」としてAgも挙げられている。しかしながら、このようにペースト中にAgを添加しても、一応のファイヤースルー性の改善は認められるものの、十分ではなく、しかも、ファイヤースルー性を改善するためには多量のAg粉を添加する必要があることから、太陽電池の製造コストが著しく増大する不都合がある。本発明者等は、Agがガラス中に含まれていると、ペースト中に添加する場合に比較して微量でもファイヤースルーに大きな影響を及ぼすことを見出し、本発明を完成させたものである。
また、前記第2発明によれば、ペースト塗布工程において、前記第1発明のペースト組成物がシリコン基板の裏面に備えられたパッシベーション膜上に所定パターンで塗布されると、ファイヤースルー工程において、これに焼成処理が施されることにより、塗布形成されたペースト膜から厚膜アルミニウムが生成されると同時に、パッシベーション膜を浸食してシリコン基板に接続された裏面ファイヤースルーアルミニウム電極が形成される。そのため、太陽電池の裏面電極も、受光面電極と同様に簡便なファイヤースルー法を利用して形成することができる。しかも、上記第1発明のペースト組成物は、前述したようにAgを0.05〜1.8(mol%)の範囲で微量含むガラスが用いられたものであるため、製造コストの増大を伴うことなく、しかも、BSF層の形成を妨げることなく、ファイヤースルー性が高められているので、良好な電気的接続状態およびBSF効果が得られ、延いては電気特性の優れた太陽電池が得られる。
なお、上記ガラス組成において、アルカリ金属はガラスの軟化点を低下させる成分で、0.6(mol%)以上含まれていれば、十分に軟化点が低くなって、パッシベーション膜への浸食が容易になる。一方、23(mol%)以下に留められていれば、浸食性が強くなりすぎず、容易に浸食制御できる。
また、PbOは、ガラスの軟化点を低下させて低温焼成を可能とするための成分である。良好なファイヤースルー性を得るためには、PbO量を30(mol%)以上とすることが好ましい。PbOが少なくなると、軟化点が高くなってガラス化が困難になると共にパッシベーション膜へ浸食し難くなり、延いては基板との電気的接続が困難になる傾向が生ずる。一方、70(mol%)を越えると軟化点が低くなって浸食性が強くなるため、浸食量制御が困難になる。
また、B2O3は、ガラス形成酸化物(すなわちガラスの骨格を作る成分)であり、ガラスの軟化点を低くするための成分で、良好なファイヤースルー性を得るためには、1(mol%)以上とすることが好ましい。B2O3量が少なくなると、軟化点が高くなってパッシベーション膜へ浸食し難くなり、延いては基板との電気的接続が困難になる傾向が生ずると共に、耐湿性も低下するが生ずる。一方、30(mol%)よりも多くなると、軟化点が低くなって浸食性が強くなるため、浸食量制御が困難になる。
また、SiO2は、ガラス形成酸化物であり、不足するとガラス形成が困難になる。また、ガラスの耐化学性を高くするための成分で、十分な耐化学性を得るためには、10(mol%)以上とすることが好ましい。一方、40(mol%)を越えると軟化点が高くなってパッシベーション膜へ浸食し難くなり、延いては基板との電気的接続が困難になる傾向が生ずる。
また、Al2O3は、ガラスの安定性を得るために有効な成分で、12(mol%)以下に留めれば特性には殆ど影響しないので、含まれていることが好ましい。
また、ZnOは、前記範囲ではファイヤースルー性に影響せず、且つ、信頼性に悪影響のない成分であり、ガラス成分の調整の目的で必要に応じて含まれる。
また、好適には、前記ガラスフリットは、AgをAg2OおよびAgIとして含むものである。このようにすれば、1種の化合物で含む組成とする場合に比較して、ガラス中に含み得るAg量を多くできるので、ファイヤースルー性が一層高められる。すなわち、例えばAg2Oのみで含み得る限界は1.5(mol%)程度であるが、AgIと併用することにより、1.8(mol%)程度まで限界が拡大する。なお、Ag量を多くすると、ファイヤースルー性を良好に維持したまま、ペースト組成物中のガラス量を減じることができる利点がある。
また、好適には、前記裏面ファイヤースルーアルミニウム電極は、基板裏面の5〜30(%)の範囲内の面積割合で設けられる。十分な導通確保のためには5(%)以上とすることが好ましく、受光面から入射した光の閉じ込め効率を十分に高くするためには、パッシベーション膜の面積が可及的に大きくなるように裏面ファイヤースルーアルミニウム電極の面積を30(%)以下に留めることが好ましい。
また、好適には、前記裏面ファイヤースルーアルミニウム電極は、シリコン基板の裏面に島状またはライン状に設けられる。裏面ファイヤースルーアルミニウム電極は、パッシベーション膜に孔を明けて形成されることになるため、パッシベーション膜の機能を可及的に損なわないように、島状またはライン状が好ましい。可及的に高いFF値を得るためには、裏面ファイヤースルーアルミニウム電極を島状に設け、個々の島の面積および中心間隔を小さくして、島の個数を多くすることが好ましい。
また、好適には、前記裏面には、前記パッシベーション膜および前記裏面ファイヤースルーアルミニウム電極を覆う集電用電極が備えられる。集電用電極は、例えば導体成分としてアルミニウム粉末を含み、裏面ファイヤースルーアルミニウム電極を形成するために用いられるガラスフリットに代えて、ファイヤースルー性のないガラスフリットが用いられたペースト組成物から生成される。
なお、前記パッシベーション膜は、Siと屈折率の異なる材料で構成される絶縁膜であり、アルミナ(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)、二酸化珪素(SiO2)および窒化珪素(SiNx)よりなる群より選ばれた1種または2種以上の化合物を含有する層とすることが好ましい。SiO2膜は例えば5〜30(nm)の範囲内の厚みで、Al2O3膜は例えば5〜80(nm)の範囲内の厚みで、SiNx膜は例えば60〜100(nm)の範囲内の厚みで設けられる。また、例えば、SiO2薄膜を形成した後、これにAl2O3或いはSiNxの薄膜を積層したもの、或いは、Al2O3膜を形成した後、これにSiNx膜を積層したものも好適である。このような積層構造の場合には、例えば、5〜10(nm)のSiO2膜に30(nm)程度のAl2O3膜を積層したもの、10〜30(nm)のAl2O3膜に60〜80(nm)のSiNx膜を積層したもの等が挙げられる。
上記の中でも、Al2O3膜およびSiO2膜が好ましく、Al2O3膜が最も好ましい。Al2O3膜の形成方法としては、例えば、300〜400(℃)の温度で処理するALD(Atomic Layer Deposition:原子層堆積)法、常温で処理するオゾン使用ALD法、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学蒸着)法、スパッタ等が挙げられる。ALD法は、製膜速度が遅いが優れた膜質が得られる利点がある。また、SiO2膜の形成方法としては、熱酸化法、CVD法が挙げられる。熱酸化法の方が緻密な膜が得られ、パッシベーション効果が高いが、1000(℃)近い高温の処理が必要となる問題がある。また、SiNx膜の形成方法としては、CVD法が主に用いられる。
また、好適には、前記ガラス粉末は、軟化点が660(℃)以下のガラスフリットから成るものである。すなわち、アルミニウムの融点よりも低い軟化点を有するガラスフリットを用いることが好ましい。
また、好適には、前記アルミニウム粉またはアルミニウムを含む複合粉は、芋状を成す粒子を含むものである。これらの粉末は一般に球状或いはアスペクト比がそれよりも大きい芋状を成すものが用いられるが、芋状粉の方が焼成処理の際に表面の酸化膜が破られ易く、シリコン基板に拡散し易いので好ましい。したがって、芋状粉の割合が球状粉よりも多いことが好ましく、全体が芋状粉であってもよい。
また、好適には、前記アルミニウム粉またはアルミニウムを含む複合粉は、平均粒径が1(μm)以上、10(μm)以下の範囲内にある。このような粒径範囲とすれば、裏面ファイヤースルーアルミニウム電極を容易に印刷形成できる。平均粒径がこの範囲を外れると印刷性が劣ることになる。
また、好適には、前記ガラスフリット量は、前記アルミニウム粉またはアルミニウムを含む複合粉100重量部に対して、3重量部以上、40重量部以下の範囲内である。このようにすれば、ファイヤースルー性に優れ且つ導電性に優れた電極形成が可能なペースト組成物が得られる。十分なファイヤースルー性を得るためには、ガラスフリットが3重量部以上含まれることが好ましく、十分な導電性を得るためには、ガラスフリットが40重量部以下に留められることが好ましい。なお、前述したように集電用電極が備えられる構造では、その集電用電極にAg量が多く導電性の高いペースト組成物が用いられるので、裏面電極形成のためのペースト組成物には高い導電性が求められない。したがって、ガラス量を十分に多くして、ファイヤースルー性を高めることも容易である。
また、前記ガラスフリットは、平均粒径が0.5〜3(μm)の範囲内であることが好ましい。平均粒径がこの範囲内にあれば、良好な印刷性が得られると共に、印刷した際に基板との界面近傍における存在確率が十分に高くなる。
ペースト組成物中のガラス量は、パッシベーション膜の構成材料と厚みに応じて適宜変更することが好ましく、例えば、10(nm)程度の厚さ寸法のAl2O3膜が設けられる場合には、3重量部で足りる。10(nm)程度の厚さ寸法のSiO2膜が設けられる場合には、5重量部以上が好ましい。また、80(nm)程度の厚さ寸法のSiNx膜に対しては、8〜20重量部のガラス範囲が最適である。
また、ペースト組成物中のガラスフリットは、前述した組成を備えたファイヤースルーに好適な1種類で足りるが、これに加えて異なる特性を有する他のガラスフリットを含むことができる。他のガラスフリットとしては、例えば、ファイヤースルー性が低いがアルミニウム粉末の酸化皮膜を破って界面にアルミニウムを供給する目的のガラスや、耐水性を付与するためのガラス等が挙げられる。
また、好適には、前記ペースト組成物は、硼素またはAl-B複合粉を含むものである。太陽電池の裏面側はp+層となるため、アクセプタ濃度を十分に高めるためにペースト組成物中に硼素が含まれることが好ましい。なお、基板裏面の表面近傍においては、硼素が1020(個/cm2)以上であることが好ましい。
また、好適には、前記ペースト組成物は、珪素またはAl-Siを含むものである。珪素を十分に含むペースト組成とすることにより、カーケンダール・ボイドの発生を十分に抑制することができ、良好な導電性が得られると共に、接合界面の劣化が抑制される。なお、珪素は、ガラスとは別にペースト中に適宜の化合物の形態で含まれていてもよいが、ガラス中に十分な量が含まれているものでも差し支えない。
また、好適には、前記太陽電池の製造方法は、(c)前記ファイヤースルー工程の後に、前記シリコン基板の裏面に前記裏面ファイヤースルーアルミニウム電極を覆う所定パターンで厚膜アルミニウムペーストを塗布して集電用ペースト膜を形成する集電用ペースト塗布工程と、(d)前記ファイヤースルー工程よりも低温で焼成処理を施すことにより前記集電用ペースト膜から厚膜アルミニウムから成る裏面集電電極を形成する集電電極焼成工程とを、含むものである。前記ファイヤースルー工程は、上記裏面集電電極を同時に焼成するものであってもよく、製造コスト的には同時焼成が好ましい。しかしながら、例えば、裏面ファイヤースルーアルミニウム電極と裏面集電電極とを同時に焼成すると、ファイヤースルー性が得られない等、不都合がある場合には、このように焼成工程を分けることが好ましい。
なお、上記集電電極焼成工程は、アルミニウムの融点よりも高い温度で行うことが好ましい。これにより、ペースト組成物中のアルミニウムが十分に溶融し、良好な接続状態が得られる。
また、好適には、前記太陽電池の製造方法は、前記裏面集電電極に一部が重なり残部がそれよりも露出する厚膜銀から成るバス電極を、前記ファイヤースルー工程または前記集電電極焼成工程の何れかにおいて同時に焼成するものである。このようにすれば、裏面のバス電極形成のための焼成処理が別途必要とされないので、焼成回数が減じられて製造コスト的に一層好ましい。上記裏面のバス電極は、例えば、前記ペースト塗布工程の前後何れかにおいて実施され、或いは、前記集電用ペースト塗布工程の前後何れかにおいて実施される。
また、好適には、前記太陽電池の製造方法は、前記ファイヤースルー工程に先立って前記シリコン基板の表面に厚膜銀ペーストを所定パターンで塗布する表面側ペースト塗布工程を含み、そのファイヤースルー工程の際に、その厚膜銀ペーストから受光面電極をファイヤースルーにより形成するものである。このようにすれば、表面および裏面の電極が別々に焼成される場合に比較して製造コストが一層低くなる利点がある。なお、裏面側の焼成処理が前記のようにファイヤースルー工程と集電電極焼成工程を含む2回以上に分けられる場合には、受光面電極の焼成は何れにおいて同時に行われてもよい。
また、好適には、前記太陽電池の製造方法は、前記集電電極焼成工程の後に、前記集電電極に一部が重なるように前記裏面のバス電極を形成するものである。このように集電電極焼成工程の後にバス電極を形成する場合には、バス電極を厚膜銀以外の適宜の材料、例えば、厚膜銅や熱硬化導電性ペースト等の耐熱性の低い材料で構成することもできる。
また、好適には、前記太陽電池は、前記裏面ファイヤースルーアルミニウム電極の上に、厚膜銀から成る集電用グリッドラインおよびバス電極を備えたものである。前記集電用ペースト塗布工程および集電電極焼成工程を含む製造方法により製造される太陽電池では、シリコン基板の裏面に厚膜アルミニウムから成る裏面集電電極および厚膜銀から成るバスバーが備えられることとなるが、上記のように、厚膜アルミニウムの裏面集電電極に代えて厚膜銀から成る集電用グリッドラインを設けた構造とすることもできる。集電用グリッドラインは、例えば、バス電極に直交する多数本の細線や網目パターン等で構成することができる。
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例のペースト組成物を用いて裏面電極を形成したシリコン系太陽電池素子10の断面構造を示す模式図である。図1において、太陽電池素子10は、p型多結晶半導体から成るシリコン基板12と、その表面側に形成されたn+層14と、その裏面側に形成されたp+層16と、n+層14上に形成された反射防止膜18および受光面電極20と、p+層16上に形成されたパッシベーション膜22、裏面ファイヤースルーAl電極24、集電用Al電極28とを備えている。なお、太陽電池素子10は、通常は封止材で封止された状態で用いられるが、図1ではこれを省略した。
上記シリコン基板20の厚さ寸法は例えば100〜200(μm)程度である。また、上記のn+層14は、シリコン基板12の上面に不純物濃度の高い層を形成することで設けられたもので、厚さ寸法は例えば70〜100(nm)程度である。n層14は、一般的なシリコン系太陽電池では100〜200(nm)程度であるが、本実施例ではそれよりも薄くなっており、シャローエミッタと称される構造を成している。また、上記不純物は、n型のドーパント、例えば燐(P)である。
また、前記の反射防止膜18は、例えば、窒化珪素(SiNx)等から成る薄膜で、例えば可視光波長の1/4程度の光学的厚さ、例えば80(nm)程度で設けられることによって10(%)以下、例えば2(%)程度の極めて低い反射率に構成されている。
また、前記の受光面電極20は、例えばAgを導体成分として含む一様な厚さ寸法の厚膜導体(厚膜銀)から成るもので、図示は省略するが、受光面の略全面に、多数本の細線部を有する櫛状を成す平面形状を有している。また、厚膜導体は、前記反射防止膜18を貫通してn+層14に接続して形成されている。この厚膜導体には、例えば、Ag 100重量部に対してガラスが1〜10重量部の範囲内、例えば、4.5重量部程度の割合で含まれる。このガラスは、例えば、PbO-SiO2-B2O3系の鉛ガラスであり、これら主要成分の他にS、Li、P、Al等を含むものが好ましいが、その組成は特に限定されず、一般に太陽電池の電極用とされる適宜のものが用いられ得る。
また、上記の厚膜導体の厚さ寸法は例えば10〜30(μm)の範囲内、例えば20(μm)程度で、細線部の各々の幅寸法は例えば40〜120(μm)の範囲内、例えば60(μm)程度で、十分に高い導電性を備えている。
また、前記のパッシベーション膜22は、例えば、SiO2薄膜とAl2O3薄膜とが積層されたもので、SiO2薄膜の厚さ寸法は5〜10(nm)程度、Al2O3薄膜の厚さ寸法は30(nm)程度である。このパッシベーション膜22は、シリコン基板12に屈折率の異なる層が積層されることにより形成され、受光面から入射した光(赤外光)が95(%)以上の高い反射率を以てその受光面側に反射することにより、入射光の利用効率を高め、延いては電池の効率を高めるためのものである。パッシベーション膜22は、上記構成の他、SiO2、Al2O3、SiNx等の単独材料、或いは、Al2O3+SiNx等の積層材料等で構成されていてもよい。
また、前記の裏面ファイヤースルーAl電極24は、例えばアルミニウムを導体成分として含む一様な厚さ寸法の厚膜導体(厚膜アルミニウム)から成るものである。この厚膜導体には、アルミニウム100重量部に対して、ガラスが3〜40重量部の範囲内の割合で含まれる。このガラスは、例えば、PbO-SiO2-B2O3系の鉛ガラスであり、これら主要成分の他にAl2O3、アルカリ成分(Li2O、Na2O、K2O)、TiO2、ZnO、Ag2O、AgI、Bi2O3、GeO2、SO2等を適宜含む組成のものが用いられている。すなわち、本実施例においては、裏面ファイヤースルーAl電極24を構成する厚膜導体に含まれるガラスは、通常のガラス構成成分に加えて、Ag2OおよびAgIを含んでいる。
なお、上記ガラスは、例えば、PbOを30〜60(mol%)、B2O3を1〜30(mol%)、SiO2を10〜40(mol%)、Al2O3を0〜12(mol%)、アルカリ成分(Li2O、Na2O、K2Oの合計量)を0.6〜23(mol%)、TiO2を0〜15(mol%)、ZnOを0〜30(mol%)、Ag2OおよびAgIを酸化物(Ag2O)換算で0.01〜1.8(mol%)、Bi2O3を0〜3(mol%)、GeO2を0〜3(mol%)、SO2を0〜5(mol%)の範囲でそれぞれ含む組成を有している。
図2は、太陽電池素子10の裏面を前記集電用Al電極28を省略して示す図である。図2に示すように、裏面ファイヤースルーAl電極24は、個々が微小な円形を成して縦横に等間隔で配置されている。個々の裏面ファイヤースルーAl電極24の直径は例えば0.126(mm)程度、配列ピッチは例えば縦横両方向に0.5(mm)程度である。前記図1に示されるように、この裏面ファイヤースルーAl電極24は、例えば20〜40(μm)程度の厚さ寸法を備え、パッシベーション膜22を貫通してp+層16に接続して形成されている。このp+層16は、シリコン基板12の表面であって、その裏面ファイヤースルーAl電極24との界面に形成されており、裏面ファイヤースルーAl電極24は、シリコン基板12の表面に僅かに侵入した状態で設けられている。すなわち、p+層16は、シリコン基板12の裏面において、裏面ファイヤースルーAl電極24の個々の形状に応じて島状に形成されている。
上記のp+層16は、製造方法を後述するように、厚膜アルミニウムから成る裏面ファイヤースルーAl電極24を形成するに際して、その厚膜材料からシリコン基板12にアルミニウムが拡散することによって、Al-Si合金が生成されると同時に形成された不純物層であり、p型のドーパントであるアルミニウムがシリコン基板12に高濃度でドーピングされることにより、アクセプタ濃度の高いp+層16となったものである。このp+層16の存在により、太陽電池素子10の裏面側にはp−p+層が積層された構造が備えられるので、BSF効果が得られるようになっている。p+層16の厚さ寸法は例えば1〜10(μm)程度である。
また、前記図2において、太陽電池素子10の裏面には、例えば図の上下方向に沿って伸びる複数本のAgバス電極26が備えられている。このAgバス電極26は、例えば銀およびガラスを含む厚膜導体(厚膜銀)から成るもので、前記集電用Al電極28に代えて半田リボンや導線等をはんだ付けできるように設けられている。本実施例においては、前記裏面ファイヤースルーAl電極24および集電用Al電極28と上記Agバス電極26によって裏面電極が構成されている。前記図1は、上記図2におけるI−I視断面を表しており、Agバス電極26は現れていない。
図1に戻って、前記の集電用Al電極28は、上記複数本のAgバス電極26に例えば一部が重なるようにそれらの相互間に、前記のパッシベーション膜22および上記裏面ファイヤースルーAl電極24を覆って設けられている。集電用Al電極28は、前記裏面ファイヤースルーAl電極24と同様にアルミニウムを導体成分として含む厚膜導体(厚膜アルミニウム)から成るものであり、例えば、5〜20(μm)程度の厚さ寸法を備えている。この集電用Al電極28は発生した電力を裏面ファイヤースルーAl電極24を介して取り出すためのもので、その裏面ファイヤースルーAl電極24に電気的に接続されており、太陽電池素子10の集電極として機能する。
上記の太陽電池素子10は、例えば、以下のようにして製造される。図3は、製造工程の概略を説明するための工程図である。図3において、裏面パッシベーション膜形成工程P1では、予め用意したシリコン基板12に例えばn+層14を形成するためのドーピング処理を施した後、その裏面側に前記パッシベーション膜22を形成する。パッシベーション膜22は、例えば、CVD法で5〜10(nm)程度の厚さ寸法のSiO2膜を製膜した後、その上に、例えばALD法を用いて厚さ寸法が30(nm)程度のAl2O3膜を製膜することで形成される。
次いで、表面反射防止膜形成工程P2では、上記シリコン基板12のパッシベーション膜22側とは反対側の表面に前記反射防止膜18を形成する。反射防止膜18は、例えば、CVD法で前記厚さ寸法のSiNx膜を製膜することで形成される。
次いで、裏面バス用Agペースト塗布工程P3では、前記パッシベーション膜22上に、Agバス電極26を形成するための銀を導体成分として含む厚膜銀ペーストを、例えば厚膜スクリーン印刷法を用いて所定パターンで塗布し、乾燥処理を施す。
次いで、裏面ファイヤースルーペースト塗布工程P4では、前記のパッシベーション膜22の上に例えばスクリーン印刷法を用いて、例えば、前記図2に示すパターンで、アルミニウムを導体成分として含む厚膜導体ペースト組成物を塗布し、乾燥処理を施す。本実施例においては、この工程がペースト塗布工程に対応する。上記厚膜導体ペースト組成物は、前記厚膜銀ペーストに重ならない位置に塗布される。
上記の厚膜導体ペースト組成物は、例えば、アルミニウム粉末と、ガラス粉末と、分散剤と、有機ビヒクルとを含むもので、アルミニウム粉末100重量部に対して、ガラス粉末が3〜40重量部の範囲で含まれる。アルミニウム粉末は、例えば、平均粒径(D50)が1〜10(μm)の範囲内、例えば3〜6(μm)程度の範囲内、例えば4.5(μm)程度の芋状粉等が用いられる。また、ガラス粉末は、裏面ファイヤースルーAl電極24を構成する厚膜導体に含まれる前述したPbO-SiO2-B2O3系ガラスであり、Ag2OおよびAgIを酸化物(Ag2O)換算で合計0.01〜1.8(mol%)含み、平均粒径が0.5〜3(μm)のものである。また、分散剤は、カルボン酸系または燐酸系、例えばBYK-110(ビックケミー製 燐酸系分散剤)、テキサホール873konz(サンノプコ製 カルボン酸系分散剤)が用いられる。有機ビヒクルは、エチルセルロースまたはアクリル等を有機結合剤として含むもので、例えば、エチルセルロース(EC#100)とα-テルピネオールとを20:80(重量比)で混合したものや、EMB001(三菱レーヨン製 アクリル樹脂)とブチルカルビトールアセテートを40:60(重量比)で混合したもの等が用いられる。
次いで、表面Ag電極ペースト塗布工程P5では、前記反射防止膜18の上に、前記受光面電極20を形成するための厚膜銀ペーストを、例えば厚膜スクリーン印刷法を用いて所定パターンで塗布し、乾燥処理を施す。
次いで、焼成工程P6では、上記のようにして表面および裏面に厚膜銀ペーストや厚膜導体ペースト組成物(厚膜アルミニウムペースト)を塗布したシリコン基板12に、それらペースト組成物に応じた所定温度で焼成処理を施す。この焼成処理温度は、本実施例においては、ペースト組成物に含まれるガラス組成の軟化点等で決定されるが、少なくともアルミニウムの融点よりも高い660(℃)以上の温度、例えば、800(℃)程度である。これにより、ペースト組成物から厚膜アルミニウムが生成され、同時に、ペースト組成物中の溶融したガラスフリットがパッシベーション膜22を侵食するので、前記図1に示されるようにそのパッシベーション膜22を貫通して、ファイヤースルーにより裏面ファイヤースルーAl電極24が形成される。また、同時に、裏面バス用の厚膜銀ペーストから前記Agバス電極26が形成されると共に、表面側に塗布された厚膜銀ペーストから前記受光面電極20が形成される。これら厚膜銀ペーストに含まれるガラスフリットも、上記焼成温度で十分に軟化するように選択されており、表面側においても、反射防止膜18が浸食されてファイヤースルーにより受光面電極20がシリコン基板12に接続される。本実施例においては、この工程がファイヤースルー工程に対応する。
このとき、ペースト組成物中のAlがシリコン基板12中に拡散してAl-Si合金を生成し、同時に、p型不純物であるそのアルミニウムが拡散することでp+層16が形成される。これにより、前述したように太陽電池素子10の裏面側においてBSF効果が得られる。前述した組成範囲にあるガラスを含むペースト組成物が用いられることから、焼成過程においてアルミニウム粉末の酸化膜が容易に破られるので、そのアルミニウムが容易に基板12中に拡散するのである。
しかも、本実施例においては、ガラス粉末がAg2OおよびAgIを含む鉛ガラスから成ることから、そのガラス中のAgの存在により、裏面パッシベーション膜22に対して高いファイヤースルー性が得られるようになっている。すなわち、従来から裏面電極形成に用いられていたガラスを、Agが含まれる組成に変更することにより、電池効率の向上に必要なBSF効果を何ら犠牲にすることなく、裏面においても良好なファイヤースルー性が得られている。
このようにして受光面電極20および裏面ファイヤースルーAl電極24を形成した後、裏面集電用Alペースト塗布工程P7では、アルミニウムを導体成分として含む厚膜アルミニウムペーストをその厚膜銀ペースト間の所定位置に塗布し、乾燥処理を施す。次いで、焼成工程P8において、上記アルミニウムペーストの仕様に応じた所定温度で焼成処理を施すことにより、厚膜アルミニウムペーストから前記集電用Al電極28が形成される。これにより、前記図1に示した太陽電池素子10が得られる。上記焼成工程P8における焼成温度は、前記焼成工程P6における焼成温度よりも低温、すなわち800(℃)よりも低い温度である。
なお、上述した製造方法では、焼成処理が2回実施されているが、図4に示すように、焼成処理を1回にすることも可能である。図4において、工程P1〜P4は図3の場合と同様である。この実施例においては、裏面ファイヤースルーペースト塗布工程P4に続いて、裏面集電用Alペースト塗布工程P5’、表面Ag電極ペースト塗布工程P6’、焼成工程P7’が順次に実施される。上記裏面集電用Alペースト塗布工程P5’は、前記裏面集電用Alペースト塗布工程P7と同様に処理される。上記表面Ag電極ペースト塗布工程P6’は、前記表面Ag電極ペースト塗布工程P5と同様に処理される。また、上記焼成工程P7’は、前記焼成工程P8と同様に処理される。すなわち、この実施例では、表面Ag電極ペースト塗布工程P5と裏面集電用Alペースト塗布工程P7の順序が反対になると共に、焼成処理が1回になっているが、他は図3に示される製造方法と何ら変わりがない。なお、上記製造工程において、裏面集電用Alペースト塗布工程P5’および表面Ag電極ペースト塗布工程P6’の順序は反対、すなわち図3の場合と同様でもよい。
また、図5は、焼成工程を3回、または焼成工程2回と熱硬化工程1回を含む製造方法の工程図である。この実施例においては、表面反射防止膜形成工程P2に続いて、裏面ファイヤースルーペースト塗布工程P3’、表面Ag電極ペースト塗布工程P4’、焼成工程P5”、裏面集電用Alペースト塗布工程P6”、焼成工程P7”、裏面バス用ペースト塗布工程P8’、焼成(熱硬化)工程P9が順次に実施される。上記裏面ファイヤースルーペースト塗布工程P3’は、前記裏面ファイヤースルーペースト塗布工程P4と同様に処理される。上記表面Ag電極ペースト塗布工程P4’は、前記表面Ag電極ペースト塗布工程P5と同様に処理される。上記焼成工程P5”は、前記焼成工程P6と同様に処理される。上記裏面集電用Alペースト塗布工程P6”は、前記裏面集電用Alペースト塗布工程P7と同様に処理される。上記焼成工程P7”は、前記焼成工程P8と同様に処理される。すなわち、ここまでの工程は、裏面バス用ペースト塗布工程P3が実施されない他は、前記図3と同様である。そして、裏面バス用ペースト塗布工程P8’では、ペースト塗布工程が裏面バス用ペースト塗布工程P3と同様に実施され、或いは、厚膜銀ペーストに代えて厚膜銅ペーストが塗布され、或いは、これらに代えて熱硬化導電性ペーストが塗布される。焼成(熱硬化)工程P9では、厚膜銀ペースト或いは厚膜銅ペーストが用いられた場合には、それらのペースト仕様に合わせた焼成温度で焼成処理が施され、熱硬化導電性ペーストが用いられた場合には、そのペースト仕様に合わせた温度で熱硬化処理が施される。
下記の表1は、ペースト組成物に含まれるガラスフリットの組成を種々変更して前記裏面ファイヤースルーAl電極24を形成し、太陽電池特性を評価した結果をまとめたものである。表1において、「No.」欄はガラスの試料番号、「判定」欄は太陽電池特性の評価結果、「組成」欄は各ガラスの成分(mol%)である。上記「判定」欄の評価は、太陽電池素子10の発電試験を実施してFF値を求め、FF値>77を「◎」、FF値>75を「○」、FF値≦75を「×」として判定した。
上記の表1において、No.1,5,6,9,10,13,14,17,18,22,24,26は比較例、他は実施例である。No.1〜5は、Ag量の適切な範囲を検討したもので、PbOを47.5〜60.0(mol%)、B2O3を2.6〜8.0(mol%)、SiO2を17.0〜37.8(mol%)、Al2O3を0〜3.0(mol%)、Li2Oを6.0〜12.0(mol%)、Na2Oを0〜0.5(mol%)、K2Oを0、アルカリ酸化物合計量を6.0〜12.5(mol%)、TiO2を0〜3.0(mol%)、ZnOを0〜6.0(mol%)、Ag2Oを0〜1.5(mol%)、AgIを0〜1.0(mol%)、Agの合計量をAg2O換算で0〜2.0(mol%)、Bi2O3を0、GeO2を0〜3.0(mol%)、SO2を0の範囲で評価したところ、Ag2O合計量が0.01〜1.5(mol%)の範囲のNo.2〜4では、FF値が75を越える良好な結果が得られたが、Agを含まないNo.1およびAgが2.0(mol%)のNo.5では、FF値が75以下に留まった。
また、No.6〜9は、Pb量の適切な範囲を検討したもので、PbOを28.0〜71.0(mol%)、B2O3を4.0〜17.0(mol%)、SiO2を12.0〜24.8(mol%)、Al2O3を0、Li2Oを0.6〜15.0(mol%)、Na2Oを0、K2Oを0、アルカリ酸化物合計量を0.6〜15.0(mol%)、TiO2を0〜7.4(mol%)、ZnOを0〜20.0(mol%)、Ag2Oを0.05〜0.25(mol%)、AgIを0〜0.25(mol%)、Agの合計量をAg2O換算で0.05〜0.38(mol%)、Bi2O3を0、GeO2を0、SO2を0.5(mol%)の範囲で評価したところ、PbOが30.0〜70.0(mol%)の範囲のNo.7,8では、FF値が75を越える良好な結果が得られたが、PbOが28.0(mol%)または71.0(mol%)のNo.6,9では、FF値が75以下に留まった。
また、No.10〜13は、B量の適切な範囲を検討したもので、PbOを44.0〜53.5(mol%)、B2O3を0〜33.0(mol%)、SiO2を12.0〜30.0(mol%)、Al2O3を0.5〜3.0(mol%)、Li2Oを8.0〜10.0(mol%)、Na2Oを0〜0.5(mol%)、K2Oを0〜0.5(mol%)、アルカリ酸化物合計量を9.0〜10.0(mol%)、TiO2を0〜3.0(mol%)、ZnOを0、Ag2Oを0〜0.5(mol%)、AgIを0〜0.5(mol%)、Agの合計量をAg2O換算で0.25〜0.50(mol%)、Bi2O3を0、GeO2を0、SO2を0の範囲で評価したところ、B2O3が1.0〜30.0(mol%)の範囲のNo.11,12では、FF値が75を越える良好な結果が得られたが、B2O3が0または33.0(mol%)のNo.10,13では、FF値が75以下に留まった。
また、No.14〜17は、Si量の適切な範囲を検討したもので、PbOを40.0〜50.0(mol%)、B2O3を1.0〜21.0(mol%)、SiO2を8.0〜41.5(mol%)、Al2O3を0〜1.0(mol%)、Li2Oを6.0〜12.0(mol%)、Na2Oを0、K2Oを0、アルカリ酸化物合計量を6.0〜12.0(mol%)、TiO2を0〜3.0(mol%)、ZnOを0〜15.0(mol%)、Ag2Oを0.5〜1.0(mol%)、AgIを0〜0.5(mol%)、Agの合計量をAg2O換算で0.50〜1.00(mol%)、Bi2O3を0、GeO2を0、SO2を0の範囲で評価したところ、SiO2が10.0〜40.0(mol%)の範囲のNo.15,16では、FF値が75を越える良好な結果が得られたが、SiO2が8.0(mol%)または41.5(mol%)のNo.14,17では、FF値が75以下に留まった。
また、No.18〜22は、アルカリ量の適切な範囲を検討したもので、PbOを52.0〜70.0(mol%)、B2O3を1.0〜6.0(mol%)、SiO2を17.5〜24.8(mol%)、Al2O3を0〜2.9(mol%)、Li2Oを0〜24.0(mol%)、Na2Oを0〜1.0(mol%)、K2Oを0〜1.0(mol%)、アルカリ酸化物合計量を0〜24.0(mol%)、TiO2を0(mol%)、ZnOを0〜4.0(mol%)、Ag2Oを0.10〜0.50(mol%)、AgIを0、Agの合計量をAg2O換算で0.10〜0.50(mol%)、Bi2O3を0、GeO2を0、SO2を0の範囲で評価したところ、アルカリ酸化物量が0.6〜23.0(mol%)のNo.19〜21では、FF値が75を越える良好な結果が得られたが、アルカリ酸化物量が0(mol%)または24.0(mol%)のNo.18,22では、FF値が75以下に留まった。
また、No.23、24は、Zn量の適切な範囲を検討したもので、PbOを34.0(mol%)、B2O3を3.0(mol%)、SiO2を21.5〜26.5(mol%)、Al2O3を0、Li2Oを6.0(mol%)、Na2Oを0、K2Oを0、アルカリ酸化物合計量を6.0(mol%)、TiO2を0(mol%)、ZnOを30.0〜35.0(mol%)、Ag2Oを0.50(mol%)、AgIを0、Agの合計量をAg2O換算で0.50(mol%)、Bi2O3を0、GeO2を0、SO2を0の範囲で評価したところ、ZnO量が30.0(mol%)のNo.23では、FF値が75を越える良好な結果が得られたが、ZnO量が34(mol%)のNo.22では、FF値が75以下に留まった。
また、No.25〜26は、Al量の適切な範囲を検討したもので、PbOを44.0(mol%)、B2O3を3.0(mol%)、SiO2を25.5〜28.5(mol%)、Al2O3を12.0〜15.0(mol%)、Li2Oを12.0(mol%)、Na2Oを0、K2Oを0、アルカリ酸化物合計量を12.0(mol%)、TiO2を0(mol%)、ZnOを0、Ag2Oを0.25(mol%)、AgIを0.25(mol%)、Agの合計量をAg2O換算で0.38(mol%)、Bi2O3を0、GeO2を0、SO2を0の範囲で評価したところ、Al2O3量が12.0(mol%)のNo.25では、FF値が75を越える良好な結果が得られたが、Al2O3量が15.0(mol%)のNo.26では、FF値が75以下に留まった。
また、No.27〜43は、最適組成を検討したもので、PbOを38.0〜59.5(mol%)、B2O3を1.0〜24.0(mol%)、SiO2を15.0〜31.8(mol%)、Al2O3を0〜6.0(mol%)、Li2Oを1.0〜20.0(mol%)、Na2Oを0〜0.5(mol%)、K2Oを0〜0.5(mol%)、アルカリ酸化物合計量を1.0〜20.7(mol%)、TiO2を0〜15.0(mol%)、ZnOを0〜15.0(mol%)、Ag2Oを0〜1.50(mol%)、AgIを0〜1.50(mol%)、Agの合計量をAg2O換算で0.05〜1.80(mol%)、Bi2O3を0〜3.0(mol%)、GeO2を0、SO2を0〜5.0(mol%)の範囲で評価した。
No.27は、アルカリ酸化物が複数種類含まれる場合の最適組成と思われる。Li2Oを6.0(mol%)、Na2Oを0.5(mol%)、K2Oを0.5(mol%)、アルカリ酸化物合計量を7.0(mol%)で、FF値が77を越える結果が得られた。
No.28,29は、SO2を含む場合の最適組成と思われる。SO2が1.0〜2.5(mol%)の範囲で、FF値が77を越える結果が得られた。また、No.28はAg2Oが1.5(mol%)の組成であり、この試験結果によれば、Ag2Oを少なくとも1.5(mol%)までは含有し得ると言える。
No.30は、AgをAgIのみで0.50(mol%)添加した組成であるが、No.12と同様に、FF値が75を越える良好な結果が得られた。
No.31、34は、Bi2O3を含有する組成であるが、1.0〜3.0(mol%)の含有量で、FF値が75を越える良好な結果が得られた。Bi2O3を1.0(mol%)の含有量としたNo.34ではFF値が77を越える特に好ましい結果であった。
また、No.32〜37、40〜42に示すように、PbOを35.0〜59.5(mol%)、B2O3を1.0〜24.0(mol%)、SiO2を15.0〜31.8(mol%)、Al2O3を0〜3.0(mol%)、Li2Oを1.0〜20.0(mol%)、Na2Oを0〜0.5(mol%)、K2Oを0〜0.5(mol%)、アルカリ酸化物合計量を1.0〜20.7(mol%)、TiO2を0〜3.0(mol%)、ZnOを0〜15.0(mol%)、Ag2Oを0〜1.00(mol%)、AgIを0〜1.50(mol%)、Agの合計量をAg2O換算で0.05〜1.75(mol%)、Bi2O3を0〜1.0(mol%)、GeO2を0、SO2を0〜2.5(mol%)含む組成とすることにより、FF値が77を越える極めて良好な結果を得ることができた。
また、No.38は、TiO2量の上限を検討したもので、PbOを40.0(mol%)、B2O3を8.0(mol%)、SiO2を20.8(mol%)、Al2O3を3.0(mol%)、Li2Oを12.0(mol%)、Na2Oを0.5(mol%)、K2Oを0、アルカリ酸化物合計量を12.5(mol%)、ZnOを0、Ag2Oを0.50(mol%)、AgIを0.10(mol%)、Agの合計量をAg2O換算で0.55(mol%)、Bi2O3を0、GeO2を0、SO2を0.1(mol%)含む組成において、TiO2を15.0(mol%)としても、FF値が75を越える良好な結果を得ることができた。
No.39は、SO2量の上限を検討したもので、PbOを44.0(mol%)、B2O3を8.5(mol%)、SiO2を21.0(mol%)、Al2O3を3.0(mol%)、Li2Oを15.0(mol%)、Na2Oを0、K2Oを0、アルカリ酸化物合計量を15.0(mol%)、TiO2を0、ZnOを3.0(mol%)、Ag2Oを0.50(mol%)、AgIを0、Agの合計量をAg2O換算で0.50(mol%)、Bi2O3を0、GeO2を0含む組成において、SO2を5.0(mol%)としても、FF値が75を越える良好な結果を得ることができた。
No.43は、Ag量の上限を再検討したもので、PbOを39.0(mol%)、B2O3を6.0(mol%)、SiO2を27.0(mol%)、Al2O3を3.0(mol%)、Li2Oを15.0(mol%)、Na2Oを0.5(mol%)、K2Oを0、アルカリ酸化物合計量を15.5(mol%)、TiO2を3.0(mol%)、ZnOを3.7(mol%)、Ag2Oを1.30(mol%)、AgIを1.00(mol%)、Agの合計量をAg2O換算で1.80(mol%)、Bi2O3を0、GeO2を0、SO2を0.5(mol%)含む組成において、FF値が75を越える良好な結果を得ることができた。上記No.43および前記No.4、5は、Ag2OにAgIを併用することにより、Ag量の上限を検討したもので、単一形態で添加するよりも、2種以上の形態で添加する方が含有し得るAg量が多くなる可能性がある。AgIを併用しない組成で良好な結果を得ることができたAg2O量は前記No.28の1.5(mol%)が最大であり、No.43の評価結果によれば、併用することでこれよりも多くできている。Ag2Oが2(mol%)の組成ではガラスができなかったため評価データがないが、2種を併用すれば、No.5に示すようにAg2O換算で2(mol%)含む組成としてもガラスを作ることができたので、この結果からも併用する効果は明らかである。但し、No.5ではFF値が75以下の不十分な結果に留まっており、No.4、43に示すように、2種を併用してAg2O換算で合計1.5〜1.8(mol%)の組成とすれば、FF値が75を越える良好な結果を得ることができる。すなわち、Ag量の上限は、Ag2O換算で1.80(mol%)程度と考えられる。なお、No.4はGeO2を含む組成としていることから、この試料で1.5(mol%)が好結果となったのは、GeO2が影響している可能性もある。
以上の結果から、適切なガラス組成は、アルカリ合計が1〜21(mol%)、PbOが35〜59.5(mol%)、B2O3が1〜24(mol%)、SiO2が15〜37.8(mol%)、Ag2O(Ag2O、AgI併用の場合は酸化物換算量)が0.1〜1.75(mol%)と考えられる。
上述したように、本実施例によれば、ガラスフリットがAg2O換算で0.01〜1.8(mol%)含むペースト組成物を用いて裏面ファイヤースルーAl電極24を形成することから、良好なファイヤースルー性を有する。このとき、ガラス中にAgが含まれていても、Al原子がシリコン基板12中へ拡散してAlとSiとが反応してp+層が形成されること、すなわちBSF層が形成されることは何ら妨げられない。したがって、本実施例のペースト組成物は、ファイヤースルー性に優れ且つBSF層を好適に形成し得る利点がある。
また、本実施例によれば、裏面ファイヤースルーペースト塗布工程P4において、上記ペースト組成物がシリコン基板12の裏面に備えられたパッシベーション膜22上に塗布され、焼成工程P6において、これに焼成処理が施されることにより、塗布形成されたペースト膜から裏面ファイヤースルーAl電極24が生成されると同時に、パッシベーション膜22を浸食してその裏面ファイヤースルーAl電極24がシリコン基板12に接続される。そのため、太陽電池素子10の裏面ファイヤースルーAl電極24も、受光面電極20と同様に簡便なファイヤースルーにより形成することができる。
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。