JP6016562B2 - チューブ状カバー - Google Patents

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Description

本発明は、線材収納などに利用されるチューブ状カバーに関する。
従来、機械装置には電力供給や信号通信のための複数の線材が接続されている。しかしこれら線材がばらばらであると取り回しがしにくく、また振動などで線材同士が擦れ合い消耗劣化度合いも大きくなる。
そこで、これら複数の線材を束にしてまとめることで取り回しをしやすくし、また線材同士の擦れ合いも抑え、さらに、例えば難燃性の素材を用いることで線材の保護部材的な役割を果たすことができるチューブ状カバーが提供されている。
このチューブ状カバーは、例えば縦糸と横糸で織られた平面状の織物生地に対して熱処理を行い、生地が筒状になるようカールさせることで形成される。そして線材をチューブ状カバーの内部に収納する際には、生地をカールとは逆方向に展開して開口し、その開口部から線材を内部に装着する、という具合である。
特表2003−506579号公報
ここで上記チューブ状カバーの生地を構成する糸は、カール処理時の熱処理などによって収縮するが、その収縮の際に経糸に捻れが生じ開口部の辺が斜めになってしまい、そのため図5(a)に示すようにチューブ状カバーの開口部分の辺(0501)が螺旋状に蛇行する。すると図5(b)に示すように、線材のチューブ状カバーへの収納時には、直線である線材(0502)の長手方向と開口部の開口方向とが平行にならず、蛇行部分が邪魔となって線材を内部に装着しにくい、という課題が生じる。
以上の課題を解決するために、本発明は、糸の撚り方向を調整することで熱収縮でも経糸に捻れが生じない構造とし、それによって開口部の辺の直進性が維持できることを特徴とするチューブ状カバーを提供する。
具体的に、縦糸と横糸とから織りあげられた生地を熱処理によりカールさせてなるチューブ状カバーであって、前記縦糸又は/及び横糸は、S方向またはZ方向のいずれか一の巻き方向で撚られた糸をさらに複数撚り合わせて生成した合撚糸であり、前記合撚糸の生成の際の撚り合わせの巻き方向は、前記糸の巻き方向とは逆の方向であることを特徴とするチューブ状カバーを提供する。
また上記のような構成を備えるチューブ状カバーにおいて、さらに所定単位長での糸の撚り合わせ回転数と合撚糸の撚り合わせ回転数の比が3:10であることを特徴とするチューブ状カバーも提供する。
また、このようなチューブ状カバーの製造方法も提供する。具体的には、S方向またはZ方向のいずれか一の巻き方向で撚られた糸を生成する糸生成工程と、前記生成された複数の糸を、当該糸の巻き方向とは逆の方向で撚り合わせて合撚糸を生成する合撚糸生成工程と、前記生成された合撚糸を縦糸又は/及び横糸として生地を織り上げる生地織上工程と、前記織り上げられた生地を熱処理によりカールさせてチューブ状カバーとするカール工程と、を有するチューブ状カバーの製造方法を提供する。
また上記のような工程のチューブ状カバーの製造方法において、前記糸生成工程における所定単位長での糸の撚り合わせ回転数と、前記合撚糸生成工程における所定単位長での合撚糸の撚り合わせ回転数の比が3:10であることを特徴とするチューブ状カバーの製造方法も提供する。
以上のような構成をとる本発明によって、合撚糸である経糸の熱収縮による捻れの程度を、逆方向の2つの撚り合わせによって抑えることができ、チューブ状カバーの開口部の辺の直進性を維持することができる。
したがって、線材の装着の際に線材の長手方向と自身の開口方向とを平行にすることができ、チューブ状カバー内部への線材の収納を容易とすることができる。
実施例1のチューブ状カバーによる線材収納の一例を表す概略図 実施例1のチューブ状カバーにおける構造の一例を表す概略図 実施例1のチューブ状カバーの生地を構成する縦糸又は/及び横糸の構造の一例を説明するための概略図 実施例1のチューブ状カバーに関する製造工程の一例を表す図 従来のチューブ状カバーによる線材収納の一例を表す概略図
以下に、図を用いて本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明はこれら実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。
なお、実施例1は、主に請求項1から4について説明する。
≪実施例1≫
<概要>
図1は、本実施例のチューブ状カバーによる線材収納の一例を表す概略図である。
この図1(a)にあるように、本実施例のチューブ状カバーは、その開口部の辺(0101)の直線性が維持されているためその開口部の辺が線材の長手方向と平行であり、したがって図1(b)にあるように、カールされたチューブ状カバーを開口して各種ケーブルなどの線材(0102)をその内部に装着しやすく、チューブ状カバーで線材を被覆する際の装着作業効率が高いことを特徴とする。
<構造>
図2に示すのは、本実施例のチューブ状カバーにおける構造の一例を表す概略図である。この図にあるように、本実施例の「チューブ状カバー」(0201)は、生地(0202)を熱処理によりカールさせてなることを特徴とする。そして、この生地は「横糸」(0203)と「縦糸」(0204)とから織り上げられている。
図3に示すのは、この生地を構成する縦糸又は/及び横糸の構造の一例を説明するための概略図である。この図3にあるように、前記チューブ状カバーの生地を構成する「縦糸(又は/及び横糸)」(0301)は、複数の「糸」(0302a〜0302c)を撚り合わせて生成した「合撚糸」である。また、合撚糸を構成する複数の糸も単独又は複数の糸を撚り合わせて形成されている。
そしてこの図3にあるように、この糸の撚り合わせ方向はS又はZの一方向に揃えられている。そして複数の糸の撚り合わせがS方向であれば、合撚糸は、複数の糸をZ方向に撚り合わせて生成され、前記複数の糸の撚り合わせがZ方向であれば、合撚糸は、複数の糸をS方向に撚り合わせて生成される。つまり、前記合撚糸を生成する際の複数の糸の撚り合わせの巻き方向は、その複数の糸の巻き方向とは逆の方向であることを特徴とする。
なお、縦糸又は横糸のいずれか一方を合撚糸とする場合、合撚糸とするのは次のカール工程時にカール方向と平行に配置される糸である経糸となるべき縦糸又は横糸とする。
このように本実施例のチューブ状カバーでは、例えばS方向に撚られた複数の糸を今度はZ方向に撚り合わせて合撚糸を経糸として利用することで、熱収縮による撚り方向への捻れを相殺し、捻れなく理想的な状態でカールさせることができる。
また、所定長単位での前記複数の糸の撚り合わせ回転数と合撚糸の撚り合わせ回転数の比を3:10とすることで、生地の捻れを抑え、より理想的な状態でカールさせることができる。具体的に、例えばカール方向の経糸の太さが1800d(デニール)であれば、太さ300dでZ方向に12回転/m(1メートルあたり12回転)で撚り合わされた糸を6本用意し、それらを40回転/mで、今度はS方向に撚り合わせることで太さが1800d(デニール)の合撚糸とする。
そして、このような合撚糸を経糸として利用して織り上げられた生地であれば、カール時などの熱処理で各糸はZ方向に収縮される一方で合撚糸全体としてはS方向に収縮されるため、その収縮が相殺されて捻れのない理想的な生地によるチューブ状カバーとすることができる、という具合である。
なお、合撚糸を構成する複数の糸は、単糸を撚り合わせたものであってもよいし、この糸自体が複数の糸を撚り合わせたものであってもよい。また、この糸の素材は特に限定せず、例えばアラミド繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、アクリル繊維、PET(ポリエチレンテレフタラート)繊維、ポリウレタン繊維、フッ素樹脂繊維などの合成繊維、炭素繊維などが挙げられる。また、植物由来の樹脂繊維などであっても良い。
また、これら繊維を難燃性繊維や耐摩耗性繊維とすることで、チューブ状カバー自体の耐火性や耐摩擦性を高めるようにしても良い。
そして、このようなチューブ状カバーを、例えばワイヤ収納に利用した自動車などとすることができる。
<製造工程>
図4は、本実施例のチューブ状カバーに関する製造工程の一例を表す図である。この図にあるように、本実施例のチューブ状カバーの製造工程は「糸生成工程」(0401)と、「合撚糸生成工程」(0402)と、「生地織上工程」(0403)と、「カール工程」(0404)と、からなる。
「糸生成工程」(0401)は、S方向またはZ方向のいずれか一の巻き方向で撚られた糸を複数生成する工程である。具体的には、例えばボビンなどに巻かれた糸を撚糸機に対して繰り出し、撚糸機内の回転機構によって糸が撚り合わされる、という具合である。
なお、ここで生成され次の合撚糸生成工程で利用される複数の糸は、基本的には全て同じS又はZ方向のいずれかの方向に揃えて撚り合わされていることが望ましい。
「合撚糸生成工程」(0402)は、前記生成された複数の糸を、当該糸の巻き方向とは逆の方向で撚り合わせて合撚糸を生成する工程である。具体的には、上記生成された複数の糸をガイド機構などで揃えながら、合撚機に対して複数本同時に繰り出し、合撚機内の回転機構によってこれら複数の糸が撚り合わされる、という具合である。
そしてこの合撚糸生成工程では、その合撚機内の回転機構の回転方向が、上記糸生成工程における撚糸機における巻き方向とは逆方向に回転するよう制御されていることを特徴とする。
また、前記糸生成工程における所定長単位での前記複数の糸の撚り合わせ回転数と、前記合撚糸生成工程における合撚糸の撚り合わせ回転数の比を3:10とすることで、生地の捻れを抑え、より理想的な状態でカールさせることができる。具体的には、前述の通り例えばカール方向の経糸の太さが1800d(デニール)であれば、太さ300dでZ方向に12回転/m(1メートルあたり12回転)で撚り合わされた糸を6本用意し、それらを40回転/mで、今度はS方向に撚り合わせることで太さが1800d(デニール)の合撚糸とする、という具合である。
「生地織上工程」(0403)は、上記合撚糸生成工程で生成された合撚糸を少なくとも縦糸又は横糸の一方として、ニードル織機などの各種織機を利用して生地を織り上げる工程である。なお、縦糸又は横糸のいずれか一方を合撚糸とする場合、合撚糸とするのは次のカール工程時にカール方向と平行に配置される糸である経糸となるべき縦糸又は横糸とする。
「カール工程」(0503)は、前記生地織り上げ工程で織り上げられた生地に対して熱加工装置などによる熱処理によって生地をカールさせてチューブ状とする、あるいはチューブ状となる癖をつける工程である。
具体的には、例えば前記生地織上工程にて織り上げられた平板状の生地が、円形の穴の開いた複数のプレートなどを通過することで丸められ(カールされ)、そのカールされた状態で焼成(熱処理)用のヒーター装置内部へと挿入される。またヒーター装置内部には筒状の芯棒が設けられており、カールされた生地はその芯棒によって内径が保持された状態で焼成処理されるよう構成されていると良い。そして焼成処理後の生地を冷却装置に挿入することで、生地はカール形状で固定又は癖がつけられた状態(形状記憶された状態)となる、という具合である。
そして、このときの熱処理によって合撚糸は熱収縮するが、合撚糸を構成する複数の糸が例えばZ方向に収縮される一方で合撚糸全体としてはS方向に収縮されるため、その収縮が相殺されて捻れが少なく、その開口部の辺の直進性を維持することができる。
その後、裁断装置などを用い、前記カールされた生地を、線材の束の長さなど、ユーザの各種使用用途に応じて長手方向に裁断する。そして裁断されたチューブ状カバーの生地をカールとは逆方向に展開して開口し、その開口部から線材を内部に装着する。そしてこのとき、開口部の辺の直進性が維持されているので線材の長手方向と開口部の辺方向とを平行にすることができ、チューブ状カバー内部への線材の収納を容易とすることができる、という具合である。
<効果の簡単な説明>
以上のように、本実施例のチューブ状カバーでは、合撚糸である経糸の熱収縮による捻れの程度を、逆方向の2つの撚り合わせによって抑えることができ、チューブ状カバーの開口部の辺の直進性を維持することができる。
したがって、線材の装着の際に線材の長手方向と自身の開口方向とを平行にすることができ、チューブ状カバー内部への線材の収納を容易とすることができる。
0200A チューブ状カバー
0200B 生地
0201 横糸
0202 縦糸

Claims (4)

  1. 縦糸と横糸とから織りあげられた生地を熱処理によりカールさせてなるチューブ状カバーであって、
    前記縦糸又は/及び横糸は、S方向またはZ方向のいずれか一の巻き方向で撚られた糸をさらに複数撚り合わせて生成した合撚糸であり、
    前記合撚糸の生成の際の撚り合わせの巻き方向は、前記糸の巻き方向とは逆の方向であることを特徴とするチューブ状カバー。
  2. 所定単位長での糸の撚り合わせ回転数と合撚糸の撚り合わせ回転数の比が3:10であることを特徴とする請求項に記載のチューブ状カバー。

  3. S方向またはZ方向のいずれか一の巻き方向で撚られた糸を複数生成する糸生成工程と、
    前記生成された複数の糸を、当該糸の巻き方向とは逆の方向で撚り合わせて合撚糸を生成する合撚糸生成工程と、
    前記生成された合撚糸を縦糸又は/及び横糸として生地を織り上げる生地織上工程と、
    前記織り上げられた生地を熱処理によりカールさせてチューブ状カバーとするカール工程と、
    を有するチューブ状カバーの製造方法。
  4. 前記糸生成工程における所定単位長での糸の撚り合わせ回転数と、前記合撚糸生成工程における所定単位長での合撚糸の撚り合わせ回転数の比が3:10であることを特徴とする請求項3に記載のチューブ状カバーの製造方法。
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