JP6014487B2 - (2e,6e)−ファルネサールの富化方法 - Google Patents

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本発明は、(2Z,6E)−ファルネサールをピペリジン−1−オキシル化合物の存在下に加熱することにより、(2E,6E)−ファルネサールを製造する方法に関する。
ファルネサール(3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリエナール)は、医薬、農薬及び香料などの製造中間体として用いられる重要な化合物であることが知られている。特に、(2E,6E)−ファルネサールは、抗癌剤などとして有用であるポリイソプレノイド誘導体の製造中間体となりうる(例えば、特許文献1参照)。ファルネサールには、(2E,6E)−体、(2Z,6E)−体、(2E,6Z)−体及び(2Z,6Z)−体の4種の異性体が存在するため、(2E,6E)−ファルネサールを選択的に製造する方法について各種検討がなされている。
ファルネサールの異性体混合物から、(2E,6E)−体を富化する方法の検討もなされている。例えば、テルペノイドの異性体混合物をメタシクロファンで処理し、全トランス体とメタシクロファンとの包接組成物を形成させることにより、全トランス体のみを分離・回収する方法が報告されており、またその一実施態様として、ファルネサールの異性体混合物(全トランス体(すなわち、(2E,6E)−体)含有率26%)をメタシクロファンで処理し、異性体比率が98%にまで富化された、全トランス−ファルネサールの包接体を得たことが報告されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この方法では、他の異性体は廃棄されるため、効率的とは言い難い。したがって、異性体混合物中の他の異性体を(2E,6E)−体に異性化することにより、(2E,6E)−体を富化する方法が望ましいが、ファルネサールには複数の二重結合が存在するために、一般的な二重結合の異性化方法を採用しても、位置選択的に異性化することは困難である。
特開2003−40826号公報 特開昭60−16938号公報
従来の(2E,6E)−ファルネサール製造方法はいずれも効率が悪く、これらの方法で得られる(2E,6E)−ファルネサールは高価となる。本発明の課題は、ファルネサールの異性体混合物を用い、異性化により、混合物中の(2E,6E)−ファルネサールを富化し、効率的に(2E,6E)−ファルネサールを得る方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を鑑み鋭意検討を重ねた結果、(2Z,6E)−ファルネサールを、ピペリジン−1−オキシル化合物の存在下に加熱することにより異性化させると、(2E,6E)−ファルネサールが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(2Z,6E)−ファルネサールを、下記一般式(1)
Figure 0006014487

[式中、
は、水素原子であり;Rは、水素原子、シアノ基、カルボキシ基、イソチオシアナト基、マレイミド基、リン酸基、−OR′基又は−NHR″基(ここで、R′は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アシル基又は炭素数1〜4のアルカンスルホニル基であり;R″は、水素原子、アセチル基又はハロアセチル基である)であるか;あるいは
及びRは、一緒になってオキソ基を形成する]
で表わされるピペリジン−1−オキシル化合物の存在下、加熱することを特徴とする、(2E,6E)−ファルネサールの製造方法に関するものである。
本発明は、医薬、農薬及び香料の製造中間体として有用な(2E,6E)−ファルネサールを、安価に、効率良く製造する方法として有効である。
実施例1において、(2E,6E)−ファルネサールの割合をガスクロマトグラフィー分析により測定し、異性化の進行を経時的にモニタリングした結果を示す。
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の製造方法では、(2Z,6E)−ファルネサールは、それ自体を単独で用いてもよいが、(2Z,6E)−ファルネサールと共に、他のファルネサール異性体、例えば、(2E,6E)−体、(2E,6Z)−体及び/又は(2Z,6Z)−体を含む異性体混合物であってもよい(以下、「(2Z,6E)−ファルネサールを含む異性体混合物」という)。(2Z,6E)−ファルネサールを含む異性体混合物は、Sigma-Aldrich社等の試薬供給会社から市販されており、容易に入手することができる。また、そのような異性体混合物は、公知の方法により調製することもできる。例えば、(2E,6E)−ファルネソール及び(2Z,6E)−ファルネソールの異性体混合物から、例えば、特開2007−332105号公報、工程1に記載の方法に従い、(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールを含む異性体混合物を調製することができる。また、(E)−ネロリドールから、例えば、Synthesis, (5), 356−364; 1979に記載の方法に従い、(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールを含む異性体混合物を調製することができる。反応調製物をそのまま用いることができる点から、(2Z,6E)−ファルネサールを含む異性体混合物、特に(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールを含む異性体混合物を用いるのが好ましい。そのような異性体混合物は、ファルネサールの全異性体の総量に対して(2E,6E)−体及び(2Z,6E)−体を合計で80%以上、好ましく90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上の割合で含むものであればよい。
富化の効率が良い点で、(2Z,6E)−ファルネサールを含む異性体混合物中の(2E,6E)−ファルネサール/(2Z,6E)−ファルネサールの比(以下、「異性体比」という)が9以下であることが好ましい。なお、本発明における「富化」とは、異性体比が向上することを意味する。
本発明の製造方法は溶媒中で行ってもよく、用いることのできる溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されず、所望する反応温度に応じて適宜選択される。例えば、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、ジブロモメタン、クロロホルム、四塩化炭素、エチレンジクロリド、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒などが使用でき、これらの溶媒のうち2種類以上を混合して用いても差し支えない。反応が速い点で、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒及び芳香族炭化水素系溶媒から選択される少なくとも一種の溶媒を用いることが好ましく、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、トルエン、キシレン又はこれらの混合溶媒を用いることがさらに好ましい。溶媒の使用量は、特に制限はないが、(2Z,6E)−ファルネサール又は(2Z,6E)−ファルネサールを含む異性体混合物に対して3〜150重量倍が好ましく、20〜100重量倍が好ましい。
本発明の製造方法は、下記一般式(1)
Figure 0006014487

[式中、
は、水素原子であり;Rは、水素原子、シアノ基、カルボキシ基、イソチオシアナト基、マレイミド基、リン酸基、−OR′基又は−NHR″基(ここで、R′は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アシル基又は炭素数1〜4のアルカンスルホニル基であり;R″は、水素原子、アセチル基又はハロアセチル基である)であるか;あるいは
及びRは、一緒になってオキソ基を形成する]
で表わされるピペリジン−1−オキシル化合物の存在下で実施することが必須である。
ここで、「炭素数1〜4のアルキル基」は、他に断りのない限り、炭素数1〜4の、直鎖状又は分岐状の脂肪族飽和炭化水素の一価の基を意味し、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等を例示することができる。好ましくは、メチル基を例示することができる。また、「炭素数2〜4のアルケニル基」は、他に断りのない限り、炭素数2〜4の、直鎖状又は分岐状の脂肪族不飽和炭化水素の一価の基を意味し、ビニル基、アリル基、イロプロペニル基、1−プロペニル基、2−ブテニル基等を例示することができる。好ましくは、イロプロペニル基を例示することができる。
「アシル基」は、他に断りのない限り、式:RCO−の基(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基又はフェニル基である)を意味し、アセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基等を例示することができる。好ましくは、メタクリロイル基又はベンゾイル基を例示することができる。
「炭素数1〜4のアルカンスルホニル基」は、他に断りのない限り、式:RSO−の基(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基である)を意味し、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等を例示することができる。好ましくは、メタンスルホニル基を例示することができる。
「ハロアセチル基」は、他に断りのない限り、アセチル基の水素原子の1〜3個、好ましくは1個が、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素から選択されるハロゲン原子で置き換えられた基を意味し、クロロアセチル基、ブロモアセチル基、ヨードアセチル基等を例示することができる。好ましくは、ブロモアセチル基又はヨードアセチル基を例示することができる。
一般式(1)で表わされるピペリジン−1−オキシル化合物は、Sigma-Aldrich社等の試薬供給会社から市販されており、容易に入手することができる。入手が容易な点及び富化の効率が良い点で、Rが水素原子であり;Rが水素原子、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アセチルアミノ基、カルボキシ基又はベンゾイルオキシ基であるか、あるいはR及びRが一緒になってオキソ基を形成するものが好ましく、Rが水素原子であり;Rが水素原子又はヒドロキシ基であるものがさらに好ましい。
一般式(1)で表わされるピペリジン−1−オキシル化合物の使用量は特に制限はないが、(2Z,6E)−ファルネサール又は(2Z,6E)−ファルネサールを含む異性体混合物1モルに対して、0.005〜2モル量が好ましく、0.01〜1モル量がさらに好ましく、0.1〜0.5モル量がさらに好ましい。
本発明の製造方法は、30℃から180℃の範囲から適宜選ばれた温度で行うことができる。反応が速い点で、80℃から150℃の範囲が好ましく、100℃から130℃の範囲がさらに好ましい。
反応時間に、特に制限はなく、用いる(2Z,6E)−ファルネサールの量に応じて適宜設定すればよい。また下記実施例に示すような測定条件を用いるガスクロマトグラフィー分析により、異性化の進行をモニタリングしながら、反応時間を設定してもよい。例えば、反応は、1〜120時間、好ましくは2〜96時間の範囲で実施される。
必要に応じて反応後の溶液から、(2E,6E)−ファルネサール又は(2E,6E)−体が富化されたファルネサールの異性体混合物を単離・精製することができる。単離・精製する方法は特に限定はないが、溶媒抽出、蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー等の汎用的な方法で(2E,6E)−ファルネサール又は(2E,6E)−体が富化されたファルネサールの異性体混合物を単離・精製することができる。
以下に本発明の様態を明らかにするために実施例を示すが、本発明はここに示す実施例のみに限定されるわけではない。
実施例及び参考例で得られた反応溶液は、ガスクロマトグラフィー分析を行い、(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールの異性体比を測定した。測定条件は以下の通りである。
装置:GC−14A(島津製作所)
カラム:HP−ULTRA1(Agilent Technologies)
25m×I.D.0.32mm、0.52μmdf
カラム温度:100℃→[10℃/min]→250℃
インジェクション温度:250℃
キャリヤーガス:ヘリウムガス
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
また、参考例で単離した化合物のNMRスペクトルの測定条件は以下のとおりである。
化合物と重CDCl(Cambrige Isotope Laboratories, Inc.製、0.05%TMS含有)とを混合した溶液を調製し、NMR(ブルカー(株)製 AVANCE 400)にて、H−NMR測定を行った。
実施例1
(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールからなる異性体混合物((2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=2.5:97.5(異性体比=0.03);22mg,0.1mmol)をクロロベンゼン(1g)に溶解し、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(1.4mg,0.01mmol)を加えて130℃に加熱し、還流しながら撹拌した。ガスクロマトグラフィー分析により異性化の進行をモニタリングしながら、72時間反応を行った。反応液を室温まで冷却した後、ガスクロマトグラフィー分析した結果、(2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=77.5:22.5(異性体比=3.44)であった。また、反応の経時変化を図1に示す。
実施例2
(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールからなる異性体混合物((2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=60.7:39.3(異性体比=1.54);22mg,0.1mmol)をクロロベンゼン(1g)に溶解し、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(1.4mg,0.01mmol)を加えて130℃に加熱し、還流しながら撹拌した。ガスクロマトグラフィー分析により異性化の進行をモニタリングしながら、37時間反応を行った。反応液を室温まで冷却した後、ガスクロマトグラフィーにより異性体比を測定した結果、(2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=84.7:15.3(異性体比=5.54)であった。
実施例3
(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールからなる異性体混合物((2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=34.0:66.0(異性体比=0.52);22mg,0.1mmol)をクロロベンゼン(1g)に溶解し、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(1.4mg,0.01mmol)を加えて130℃に加熱し、還流しながら撹拌した。ガスクロマトグラフィー分析により異性化の進行をモニタリングしながら、50時間反応を行った。反応液を室温まで冷却した後、ガスクロマトグラフィーにより異性体比を測定した結果、(2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=73.3:26.7(異性体比=2.75)であった。
実施例4
(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールからなる異性体混合物((2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=78.4:21.6(異性体比=3.63);22mg,0.1mmol)をクロロベンゼン(1g)に溶解し、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(1.4mg,0.01mmol)を加えて130℃に加熱し、還流しながら撹拌した。ガスクロマトグラフィー分析により異性化の進行をモニタリングしながら、18時間反応を行った。反応液を室温まで冷却した後、ガスクロマトグラフィーにより異性体比を測定した結果、(2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=94.5:5.5(異性体比=17.2)であった。
実施例5
(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールからなる異性体混合物((2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=87.8:12.2(異性体比=7.20);22mg,0.1mmol)をクロロベンゼン(1g)に溶解し、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(1.4mg,0.01mmol)を加えて130℃に加熱し、還流しながら撹拌した。ガスクロマトグラフィー分析により異性化の進行をモニタリングしながら、17.5時間反応を行った。反応液を室温まで冷却した後、ガスクロマトグラフィーにより異性体比を測定した結果、(2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=98.0:2.0(異性体比=49.0)であった。
実施例6
(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールからなる異性体混合物((2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=55.2:44.8(異性体比=1.23);22mg,0.1mmol)をクロロベンゼン(1g)に溶解し、4−カルボキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(2.0mg,0.01mmol)を加えて130℃に加熱した。ガスクロマトグラフィー分析により異性化の進行をモニタリングしながら、22時間反応を行った。反応液を室温まで冷却した後、ガスクロマトグラフィーにより異性体比を測定した結果、(2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=68.5:31.5(異性体比=2.17)であった。
実施例7
(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールからなる異性体混合物((2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=55.2:44.8(異性体比=1.23);22mg,0.1mmol)をクロロベンゼン(1g)に溶解し、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(2.1mg,0.01mmol)を加えて130℃に加熱した。ガスクロマトグラフィー分析により異性化の進行をモニタリングしながら、22時間反応を行った。反応液を室温まで冷却した後、ガスクロマトグラフィーにより異性体比を測定した結果、(2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=72.0:28.0(異性体比=2.57)であった。
実施例8
(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールからなる異性体混合物((2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=55.2:44.8(異性体比=1.23);22mg,0.1mmol)をクロロベンゼン(1g)に溶解し、4−シアノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(1.8mg,0.01mmol)を加えて130℃に加熱した。ガスクロマトグラフィー分析により異性化の進行をモニタリングしながら、22時間反応を行った。反応液を室温まで冷却した後、ガスクロマトグラフィーにより異性体比を測定した結果、(2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=73.2:26.8(異性体比=2.73)であった。
実施例9
(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールからなる異性体混合物((2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=55.2:44.8(異性体比=1.23);22mg,0.1mmol)をクロロベンゼン(1g)に溶解し、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(1.7mg,0.01mmol)を加えて130℃に加熱した。ガスクロマトグラフィー分析により異性化の進行をモニタリングしながら、22時間反応を行った。反応液を室温まで冷却した後、ガスクロマトグラフィーにより異性体比を測定した結果、(2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=67.5:32.5(異性体比=2.08)であった。
実施例10
(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールからなる異性体混合物((2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=55.2:44.8(異性体比=1.23);22mg,0.1mmol)をクロロベンゼン(1g)に溶解し、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(1.7mg,0.01mmol)を加えて130℃に加熱した。ガスクロマトグラフィー分析により異性化の進行をモニタリングしながら、22時間反応を行った。反応液を室温まで冷却した後、ガスクロマトグラフィーにより異性体比を測定した結果、(2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=68.4:31.6(異性体比=2.16)であった。
実施例11
(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールからなる異性体混合物((2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=55.2:44.8(異性体比=1.23);22mg,0.1mmol)をクロロベンゼン(1g)に溶解し、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(1.7mg,0.01mmol)を加えて130℃に加熱した。ガスクロマトグラフィー分析により異性化の進行をモニタリングしながら、22時間反応を行った。反応液を室温まで冷却した後、ガスクロマトグラフィーにより異性体比を測定した結果、(2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=69.7:30.3(異性体比=2.30)であった。
実施例12
(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールからなる異性体混合物((2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=55.2:44.8(異性体比=1.23);22mg,0.1mmol)をクロロベンゼン(1g)に溶解し、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(2.8mg,0.01mmol)を加えて130℃に加熱した。ガスクロマトグラフィー分析により異性化の進行をモニタリングしながら、22時間反応を行った。反応液を室温まで冷却した後、ガスクロマトグラフィーにより異性体比を測定した結果、(2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=73.0:27.0(異性体比=2.70)であった。
実施例13
(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールからなる異性体混合物((2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=55.2:44.8(異性体比=1.23);22mg,0.1mmol)をクロロベンゼン(1g)に溶解し、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(1.6mg,0.01mmol)を加えて100℃に加熱した。ガスクロマトグラフィー分析により異性化の進行をモニタリングしながら、23時間反応を行った。反応液を室温まで冷却した後、ガスクロマトグラフィーにより異性体比を測定した結果、(2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=61.6:38.4(異性体比=1.60)であった。
実施例14
(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールからなる異性体混合物((2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=55.2:44.8(異性体比=1.23);22mg,0.1mmol)をクロロベンゼン(1g)に溶解し、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(7.8mg,0.05mmol)を加えて130℃に加熱した。ガスクロマトグラフィー分析により異性化の進行をモニタリングしながら、23時間反応を行った。反応液を室温まで冷却した後、ガスクロマトグラフィーにより異性体比を測定した結果、(2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=87.2:12.8(異性体比=6.81)であった。
実施例15
(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールからなる異性体混合物((2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=55.2:44.8(異性体比=1.23);22mg,0.1mmol)を1,2−ジクロロベンゼン(1.3g)に溶解し、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(7.8mg,0.01mmol)を加えて130℃に加熱した。ガスクロマトグラフィー分析により異性化の進行をモニタリングしながら、23時間反応を行った。反応液を室温まで冷却した後、ガスクロマトグラフィーにより異性体比を測定した結果、(2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=72.9:27.1(異性体比=2.69)であった。
実施例16
(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールからなる異性体混合物((2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=55.2:44.8(異性体比=1.23);22mg,0.1mmol)をo−キシレン(0.9g)に溶解し、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(7.8mg,0.01mmol)を加えて130℃に加熱した。ガスクロマトグラフィー分析により異性化の進行をモニタリングしながら、23時間反応を行った。反応液を室温まで冷却した後、ガスクロマトグラフィーにより異性体比を測定した結果、(2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=75.2:24.8(異性体比=3.03)であった。
実施例17
(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールからなる異性体混合物((2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=55.2:44.8(異性体比=1.23);22mg,0.1mmol)を1,2,4−トリクロロベンゼン(1.5g)に溶解し、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(7.8mg,0.01mmol)を加えて130℃に加熱した。ガスクロマトグラフィー分析により異性化の進行をモニタリングしながら、22時間反応を行った。反応液を室温まで冷却した後、ガスクロマトグラフィーにより異性体比を測定した結果、(2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=73.2:26.8(異性体比=2.73)であった。
参考例1
(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールからなる異性体混合物の合成
(E)−ネロリドール(2.0g,9.0mmol)を無水ジクロロメタン(40ml)に溶解し、モレキュラーシーブ4A(7.7g)、クロロクロム酸ピリジニウム(7.7g,36mmol)を加えて、室温で24時間撹拌した。反応液をセライトろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールを異性体比((2E,6E)−ファルネサール/(2Z,6E)−ファルネサール)=1.9で得たことを確認した。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1 Rf値=0.5)で精製し、さらに得られた(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールを分取薄層クロマトグラフィーで精製して、(2E,6E)−ファルネサール((2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=97.2:2.8)、(2Z,6E)−ファルネサール((2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=2.5:97.5)を得た。
また、上記の方法で得られた(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールを混合することで、実施例1〜17で用いたファルネサール異性体混合物を調製した。
(2E,6E)−ファルネサール:H−NMR(400MHz,CDCl)δ9.99(d,1H,J=8.0Hz),5.89(d,1H,J=8.0Hz),5.03−5.13(m,2H),2.18−2.29(m,4H),2.17(d,3H,J=1.2Hz),2.02−2.11(m,2H),1.94−2.02(m,2H),1.68(s,3H),1.61(s,3H),1.60(s,3H)
(2Z,6E)−ファルネサール:H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):9.92(d,1H,J=8.2Hz),5.88(d,1H,J=8.2Hz),5.03−5.16(m,2H),2.60(t,2H,J=7.5Hz),2.21−2.30(m,2H),2.01−2.10(m,2H),1.94−2.01(m,2H),1.99(d,3H,J=1.2Hz),1.68(s,3H),1.60(s,6H)
本発明の製造方法によれば、簡易な操作により、(2Z,6E)−ファルネサールから(2E,6E)−ファルネサールを製造することができる。したがって、(2Z,6E)−ファルネサールを含む異性体混合物から、(2E,6E)−ファルネサール又は(2E,6E)−ファルネサールが富化されたファルネサールの異性体混合物を得ることが可能となる。

Claims (8)

  1. (2Z,6E)−ファルネサールを、下記一般式(1)
    Figure 0006014487

    [式中、
    は、水素原子であり;Rは、水素原子、シアノ基、カルボキシ基、−OR′基又は−NHR″基(ここで、R′は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はアシル基であり;R″は、水素原子、アセチル基又はハロアセチル基である)であるか;あるいは
    及びRは、一緒になってオキソ基を形成する]
    で表わされるピペリジン−1−オキシル化合物の存在下、加熱することを特徴とする、(2E,6E)−ファルネサールの製造方法。
  2. (2Z,6E)−ファルネサールが、(2Z,6E)−ファルネサールを含む異性体混合物である、請求項1の製造方法。
  3. が、水素原子であり、Rが、水素原子、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アセチルアミノ基、カルボキシ基又はベンゾイルオキシ基であるか;あるいは、R及びRが、一緒になってオキソ基を形成する、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 一般式(1)で表わされるピペリジン−1−オキシル化合物の使用量が、(2E,6E)−ファルネサール又は(2Z,6E)−ファルネサールを含む異性体混合物1モルに対して、0.1〜0.5モル量である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 加熱温度が、80〜150℃である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 加熱温度が、100〜130℃である、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. ハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒及び芳香族炭化水素系溶媒から選択される少なくとも一種の溶媒の存在下で実施される、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 溶媒が、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、トルエン、キシレン又はこれらの混合溶媒である、請求項7に記載の製造方法。
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