以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。図1には、第1の実施形態に係る画像表示装置としてのプロジェクタ装置10の概略構成が示されている。
プロジェクタ装置10は、一例として、水平面(XY平面)と平行な床上に設置された設置台の上面上(若しくは床上)に載置されて使用される。
プロジェクタ装置10は、一例として、光源装置15、位相分布付与手段25、光走査手段40及びこれらを収容する筐体12などを備えている。
光源装置15は、一例として、3つのレーザダイオードLD1〜LD3、3つのコリメートレンズCR1〜CR3、3つのダイクロイックミラーDM1〜DM3などを含む。
レーザダイオードLD1は、一例として、赤色レーザであり、赤色光(波長640nm)を−X方向に射出するように配置されている。
レーザダイオードLD2は、一例として、青色レーザであり、青色光(波長450nm)を−X方向に射出するように、レーザダイオードLD1の+Z側に配置されている。
レーザダイオードLD3は、一例として、緑色レーザであり、緑色光(波長520nm)を−X方向に射出するように、レーザダイオードLD2の+Z側に配置されている。
各レーザダイオードは、LD制御回路50によって制御される。
コリメートレンズCR1は、一例として、レーザダイオードLD1の−X側に配置されており、レーザダイオードLD1から射出された赤色光を略平行光とする。
コリメートレンズCR2は、一例として、レーザダイオードLD2の−X側に配置されており、レーザダイオードLD2から射出された青色光を略平行光とする。
コリメートレンズCR3は、一例として、レーザダイオードLD3の−X側に配置されており、レーザダイオードLD3から射出された緑色光を略平行光とする。
3つのダイクロイックミラーDM1〜DM3は、それぞれ、例えば誘電体多層膜などの薄膜から成り、特定の波長の光を反射し、それ以外の波長の光を透過させる。
ダイクロイックミラーDM1は、一例として、コリメートレンズCR1の−X側に、X軸及びY軸に対して例えば45°傾斜して配置されており、コリメートレンズCR1を介した赤色光を+Z方向に反射させる。
ダイクロイックミラーDM2は、一例として、ダイクロイックミラーDM1の+Z側、かつコリメートレンズCR2の−X側に、X軸及びY軸に対して例えば45°傾斜して配置されており、ダイクロイックミラーDM1を介した赤色光を+Z方向に透過させ、コリメートレンズCR2を介した青色光を+Z方向に反射させる。
なお、ダイクロイックミラーDM1を介した赤色光及びコリメートレンズCR2を介した青色光は、それぞれダイクロイックミラーDM2の中央付近に入射する。
ダイクロイックミラーDM3は、一例として、ダイクロイックミラーDM2の+Z側かつコリメートレンズCR3の−X側に、X軸及びY軸に対して例えば45°傾斜して配置されており、ダイクロイックミラーDM2を介した赤色光及び青色光を+Z方向に透過させ、コリメートレンズCR3を介した緑色光を+Z方向に反射させる。
なお、ダイクロイックミラーDM2を介した赤色光及び青色光、並びにコリメートレンズCR3を介した緑色光は、それぞれダイクロイックミラーDM3の中央付近に入射する。
ダイクロイックミラーDM3を介した3つの光(赤色光、青色光及び緑色光)は、1つの光に合成される。この場合、3つのレーザダイオードLD1〜LD3の発光強度の強弱のバランスにより、合成された光の色が表現されようになっている。
結果として、光源装置15は、3つのレーザダイオードLD1〜LD3からの3つのレーザ光が合成されてなるレーザ光(合成光)を+Z方向に射出する。
位相分布付与手段25は、一例として、光偏向素子20、位相分布付与構造素子30などを有する。
光偏向素子20は、ダイクロイックミラーDM3からのレーザ光(合成光)をX軸方向に偏向させる。
詳述すると、光偏向素子20は、ダイクロイックミラーDM3の+Z側に配置されている。光偏向素子20は、電気光学効果を有する強誘電体結晶からなり、電圧が印加されることにより屈折率が変化する。
詳述すると、光偏向素子20には、一例として、強誘電体材料が部分的に分極反転されてなる複数のプリズム形状の分極反転部88がZ軸方向に並べて形成されている。光偏向素子20では、分極反転方向の違いにより電圧印加時の屈折率変化量が異なるため、レーザ光をX軸方向に偏向させることができる。以下に、光偏向素子20の構成を、詳細に説明する。
図2には、光偏向素子20のYZ断面図が示されている。光偏向素子20は、一例として、基板81上に、接着層82、下部電極層83、下部クラッド層84、レーザ光を通過させるコア層85、上部クラッド層86及び上部電極層87がY軸方向に順次積層された積層体を含む。
ここで、下部電極層83、下部クラッド層84、コア層85、上部クラッド層86及び上部電極層87は、光源装置15からのレーザ光を通過させる薄膜導波路を構成している。
コア層85には、一例として、薄膜導波路内でレーザ光を偏向させるための、上述した分極反転部88が形成されている。
一例として、分極反転部88が形成されるコア層85の材料として、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)が用いられ、基板81の材料として、熱膨張による影響を低減させるため、同様にLiNbO3が用いられている。
薄膜導波路内でのレーザ光の偏向は、コア層85に電圧を印加することによって行う。電圧印加時に、分極反転部88と分極反転されていない領域との間に屈折率差が生じるため、薄膜導波路に入射されたレーザ光は、薄膜導波路内で偏向されることになる。
電圧印加されるコア層85の材料としては、ニオブ酸リチウムの他、酸化マグネシウム添加ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタルなどを用いても同様の効果が得られる。
ここで、電圧による屈折率変化Δnは、次の(1)式で与えられる。
Δn=−1/2×r×n3×V/d・・・(1)
なお、rは電気光学定数(ポッケルス定数)、nはコア層の材料の屈折率、Vは電圧、dはコア層の厚さである。
上記(1)式から分かるように、dを小さく、すなわちコア層85を薄くすることで、薄膜導波路内での光偏向を低電圧で(低消費電力で)行うことができる。そこで、コア層85は、一例として、約30μmの厚さに研磨されている。
また、コア層85にレーザ光を導波させるための上部クラッド層86及び下部クラッド層84は、共に、膜厚が1μmのTa2O5膜とされている。
また、コア層85に電圧をかけるために形成される上部電極層87及び下部電極層83は、共に、膜厚が200nmのTi膜とされている。
以上のように構成される光偏向素子20では、上部電極層87と下部電極層83との間に電圧が印加されることにより、薄膜導波路内での光偏向を行うことができる。一例として、±10Vの電圧印加により、結晶長15mmにおいて1.8mradの偏向角が得られた。
光偏向素子20は、光偏向制御回路60(図1参照)によって制御される。すなわち、光偏向素子20は、光偏向制御回路60から制御信号が出力されているときに光源装置15からのレーザ光を偏向し、制御信号が出力されていないときに光源装置15からのレーザ光を偏向することなく透過させる(直進させる)。光偏向素子20の動作に関しては、後に詳述する。
以上説明したように、光偏向素子20は、電気光学効果を有する強誘電体結晶の薄膜導波路内にZ軸方向に並ぶ複数のプリズム形状の分極反転部88が形成された構造を有している。光偏向素子20に電圧が印加されると、電圧印加量に応じた屈折率変化が生じ、薄膜導波路内に入射したレーザ光がX軸方向に偏向される。光偏向素子20は、このような機能を有するため、電圧印加パターンに応じた光偏向が可能となり、例えば、不連続な、任意の偏向動作も可能となる。
また、本実施形態では、印加電圧を下げるために光偏向素子20の結晶厚を薄くし、強誘電体結晶の薄膜導波路内でレーザ光を伝搬させることとした。導波路構造を採用する場合、光偏向素子20の前段又は後段にレーザ光を厚さ方向(Y軸方向)に結合させ、射出されたレーザ光の形状を戻すためのカップリングレンズが必要になる。
また、電気光学効果を有する強誘電体結晶としては、上述したように、一例として、結晶厚30μm、結晶長15mmのLiNbO3が用いられており、レーザ光のビーム径が1mmの場合、結晶厚さ方向(Y軸方向)に±10Vの電圧印加を行なうことにより1画素分の偏向角が得られる。なお、光偏向素子20には波長が異なる3つのレーザ光が合成された1つの光(合成光)が入射されるが、偏向角の波長依存性は10%以内であるため、特に、問題にはならない。
図1に戻り、位相分布付与構造素子30は、一例として、光偏向素子20の射出端から+Z側に50mm程度離れた位置に配置されている。
位相分布付与構造素子30は、レーザ光(合成光)を透過させる部材から成り、光偏向素子20を介したレーザ光に、X軸方向の位相分布を付与する。ここで、「位相分布」とは、位相のばらつきを意味する。
詳述すると、位相分布付与構造素子30は、図3に示されるように、射出面に、X軸方向に並ぶ複数の段付き凹部が形成されている。なお、図3では、2つの段付き凹部の間に1つの凹部が形成されている。すなわち、位相分布付与構造素子30は、X軸方向に並ぶZ軸方向の寸法(光学的距離)が互いに異なる複数の領域を有している。すなわち、位相差分布付与構造素子30は、入射されるレーザ光の進行方向に関する光学的距離が互いに異なる複数の領域を有している。なお、位相分布付与構造素子30は、X軸方向の位相分布に加えて、例えばY軸方向などのX軸方向以外の方向の位相分布を付与する構造を有していても良い。
この場合、光偏向素子20からの波面が揃ったレーザ光は、位相分布付与構造素子30を透過するとき、各領域の光学的距離に応じた位相で、すなわち波面が不揃いの(X軸方向に位相分布を有する)レーザ光として射出される。
ここで、図4に示されるように、光偏向素子20によってX軸方向に偏向されたレーザ光は、位相分布付与構造素子30の入射面のX軸方向の異なる位置に連続的に入射し、位相分布付与構造素子30の射出面のX軸方向の異なる位置からX軸方向の異なる位相分布が付与された状態で連続的に射出される。
すなわち、光偏向素子20による偏向により、位相分布付与構造素子30から射出されるレーザ光のX軸方向の位相分布を時間的(時系列的)に変化させることができる。換言すると、光偏向素子20による光偏向により、位相分布付与構造素子30から異なるX軸方向の位相分布を有するレーザ光を順次(連続的に)射出することができる。
ここで、位相分布付与構造素子30では、透過光にランダムな位相分布を付与するために、各領域のZ軸方向の長さは、一例として、レーザ光のビーム径1mmに対して、10μm〜100μm(例えば50μm程度)とされている(図3参照)。
また、位相分布付与構造素子30を透過することによるレーザ光の各領域間での位相のずれ量を十分に得るために、一例として、位相分布付与構造素子30の射出面に形成されている段付き凹部の各段の深さが、最大450nmの3段階とされている(図3参照)。
また、位相分布付与構造素子30の材質は、各波長のレーザ光を透過させる材料であれば良い。なお、表面反射を抑えるために、位相分布付与構造素子30の表面(例えば入射面)に無反射コート膜を形成することが好ましい。
このような位相分布付与構造素子30をレーザ光が透過することにより、当初位相が揃っていた(位相分布がない)レーザ光にランダムなX軸方向の位相分布が付与されて射出されることになる。そのため、図4に示されるような光偏向角度によってX軸方向の位相分布が異なる射出光を得ることができる。
図1に戻り、光走査手段40は、一例として、位相分布付与構造素子30の+Z側に配置されており、位相分布付与構造素子30を介したレーザ光を、スクリーンSに向けて偏向することで、スクリーンS上を2次元走査する。なお、光走査手段40で偏向されたレーザ光は、筐体12に形成された射出窓からスクリーンSに向けて射出される。
光走査手段40としては、一例として、図5に示されるように、MEMSミラーを含む2軸のスキャナが用いられている。このスキャナは、MEMSミラーの各軸周りの振れ角を検出する角度検出器を有しており、該角度検出器は、MEMSミラーの各軸周りの振れ角に応じた信号を、ミラー制御回路70(図1参照)に出力する。ミラー制御回路70は、MEMSミラーの各軸周りの振れ角に応じた信号を、LD制御回路50に出力する。
そして、LD制御回路50から各レーザダイオードにMEMSミラーの振れ角に合わせた画像信号が送られ、該レーザダイオードから画像信号に応じて強度変調されたレーザ光が射出される。光走査手段40は、ミラー制御回路70からの駆動信号に基づいてMEMSミラーを各軸周りに揺動させ、3つのレーザダイオードから射出され合成されたレーザ光をスクリーンSに向けて主走査方向(Y軸方向)及び副走査方向(Z軸方向)に偏向して、スクリーンS上を主走査方向及び副走査方向に2次元走査する。以下では、主走査方向に対応する方向を主走査対応方向と称し、副走査方向に対応する方向を副走査対向方向と称する。
このようにして、各レーザダイオードに対する画像信号に応じた光強度変調と光走査手段40による光走査とを同期させることにより、スクリーンS上に所望のカラー画像が表示される。
また、一例として、光走査手段40の主走査方向の全走査角度は30°、副走査方向の全走査角度は10°に設定されている。
また、光走査手段40は、主走査方向(Y軸方向)に関して高速に光走査を行い、副走査方向(Z軸方向)に関して低速に光走査を行なう。主走査方向は、MEMSミラーの共振を利用した約25kHzでの正弦波による光走査であり、副走査方向は、MEMSミラー共振を利用しない約60Hzでの鋸波による光走査である。
そこで、スクリーン上の副走査方向の画素数を100画素とすると、副走査方向の1画素分の走査時間は、約160μsecとなる。主走査方向の走査時間は、片側で約20μsecとなるため、結果的に、副走査方向の1画素分の走査時間に、主走査方向の走査が8回程度行われることになる。
ここで、図6(A)に示される第1の比較例のように、光走査手段(2軸のスキャナ)のMEMSミラーの角度変化のみによってスクリーン上を光走査すると、副走査方向の1画素分を走査している間に主走査方向の走査が複数回行なわれるため、走査位置が副走査方向に連続的にずれていくことになる。
本実施形態では、光偏向素子20の動作を光走査手段40の動作に組み合わせて、図7(A)に示されるような動作とする。
具体的には、光走査手段40が所定の速度で角度を変えて光走査するときに、光偏向素子20は、レーザ光をスクリーンS上の各画素の副走査方向の中央に位置させた状態で主走査方向の走査が行われるように、副走査対応方向に関して、光走査手段40の走査方向とは逆の方向に光偏向する。
つまり、光偏向素子20は、光走査手段40による副走査方向の1画素分の走査時間に、副走査対応方向に関して、光走査手段40の走査方向とは逆方向に連続的に光偏向する。そして、光偏向素子20は、光走査手段40の走査角度が隣接する画素領域に進んだときには、レーザ光がその隣接する画素内の副走査方向の中央に位置するように、不連続な光偏向を行なう。
このようにスクリーンS上の各画素の副走査方向の中央にレーザ光を位置させるように不連続的にレーザ光を走査するために、光偏向素子20は、図7(C)に示されるように、1周期が副走査方向の1画素分の走査時間となる鋸波となるような動作をする。このときの光走査手段40の動作は、図7(B)のような時間変化をしており、これらの動作を組み合わせることで、スクリーンS上では、図7(A)に示されるような各画素の副走査方向の中央をレーザ光が跳び跳びに移っていくような光走査を行うことができる。
すなわち、本実施形態では、副走査方向の1画素分の走査時間に、副走査方向の1画素領域の中央にレーザ光が重ね合わされるように光偏向素子20を動作させる。光走査手段40による副走査方向の1画素分の走査角度は、副走査方向の全走査角度(例えば10°)と画素数(例えば100画素)から、約1.8mradとなる。そして、光偏向素子20は、光走査手段40によるスクリーンS上での副走査方向の走査をキャンセルするように、光走査手段40の副走査方向の1画素分の走査角度(約1.8mrad)だけ光偏向させる。
このような光走査がスクリーンS上で行なわれることにより、以下の作用・効果が得られる。上述したように、光走査手段40と光偏向素子20の動作が組み合わされて、スクリーンS上では、所定時間、各画素の副走査方向の中央で重ねて主走査方向に光走査されている。
詳述すると、光偏向素子20による光偏向により、位相分布付与構造素子30へのレーザ光の入射方向がX軸方向(副走査対応方向)にずれる。この結果、位相分布付与構造素子30を透過したレーザ光のX軸方向の位相分布が副走査方向の1画素の走査時間内に変化する。1画素内でのレーザ光の位相分布の変化の速さは人間の目で認識できる速さを超えているため、1画素内でのレーザ光は、光偏向による副走査方向(Z軸方向)の位相分布が変化した複数のレーザ光の重ね合わせとなる。結果として、1画素内で形成されるスペックルパターンが平均化されるため、観察者には均一な光として認識され、スペックルノイズの低減を実現することができる。
ここで、「スペックルノイズ」は、コヒーレント光であるレーザ光が例えばスクリーンなどに照射され、その反射光が干渉することによって発生する。
スペックルノイズの発生原理について、より詳しく説明する。例えばスクリーン、コンバイナなどの画像が投影される部材の表面(被投影面)は、完全な平面ではなく小さな凹凸が形成されている。被投影面に照射されたレーザ光は、被投影面上の凹凸において散乱(乱反射)されるが、散乱による各反射光の光路差が波長の整数倍となるところでは、干渉により光の強度が高くなる。一方、散乱による各反射光の光路長が半波長ずれたところでは、干渉により光の強度が低くなる。この場合、投影された画像に強度ムラが生じ、明暗の模様が見えたり、ギラギラして見えたりする。このようなコヒーレント光(レーザ光)に起因して発生する現象がスペックルノイズであり、結果として、画像品質が低下し、見るものに不快感を与える。
以上説明した本実施形態のプロジェクタ装置10では、レーザ光を射出する3つのレーザダイオードLD1〜LD3を含む光源装置15と、該光源装置15からのレーザ光の光路上に配置され、該レーザ光に、時系列的に異なる副走査対応方向の位相分布を付与する位相分布付与手段25と、該位相分布付与手段25を介したレーザ光によりスクリーンSの被走査面を主走査方向及び副走査方向に走査する光走査手段40と、を備えている。
この場合、異なる位相分布を有するレーザ光を被走査面上で連続的に反射させて干渉させることで、反射光の強度を平均化できるため、被走査面上に画像の強度ムラが発生すること、すなわちスペックルノイズが発生することを抑制できる。
ところで、特許文献1に開示されている2次元画像表示装置では、レーザ光源からのビームをビーム振動手段で微小振動させることで、スペックルパターンを高速に変化させ、観察者に時間平均されたスペックルノイズのない画像を認知させることとしている。詳述すると、この2次元画像表示装置では、ビーム振動手段によりビームが微小に振動され、被走査面上の異なる場所に次々にビームが照射されるため、散乱光により発生するスペックルパターンも変動する。そのため、人間の目にはノイズパターンが時間平均されるため、スペックルノイズが低減された画像表示が可能になる。
しかしながら、この2次元画像表示装置では、被走査面上で光スポットを高速にスポットサイズ(光スポットの大きさ)以上の距離移動させる必要がある。そこで、スポットサイズを画素サイズ程度とする場合には、スペックルノイズ低減のために光スポットを高速に画素サイズ程度移動させるため、画像がぼけてしまう。また、画素サイズをスポットサイズよりも大きくする場合には、画像がぼけることはないが、被走査面上で高画素(高解像度)での表示を行なうことが難しくなる。結果として、要求水準からの画像品質の向上を図ることが困難である。
一方、プロジェクタ装置10では、スポットサイズを画素サイズ程度とする場合であっても、スペックルノイズ低減のために、被走査面上で光スポットを高速に画素サイズ程度移動させる必要はない。このため、画素サイズをスポットサイズよりも大きくする必要もない。結果として、要求水準からの画像品質の向上を図ることができる。
また、位相分布付与手段25は、副走査対応方向(X軸方向)に並ぶ、入射位置と射出位置との光学的距離、すなわち入射されるレーザ光の進行方向に関する光学的距離が互いに異なる複数の領域を有する位相分布付与構造素子30と、光源装置15と位相分布付与構造素子30との間のレーザ光の光路上に配置され、光源装置15からのレーザ光を、位相分布付与構造素子30の副走査対応方向の異なる位置に入射するように偏向する光偏向素子20と、を有している。
この場合、機械的な可動部を設けることなく、レーザ光を位相分布付与構造素子30の副走査対応方向の異なる箇所に順次(連続的に)入射させ、異なる副走査対応方向の位相分布を有する順次(連続的に)射出させることができる。この結果、振動の発生を抑制しつつ、スペックルノイズの発生を抑制でき、ひいては画像品質の更なる向上を図ることができる。
また、光偏向素子20は、スクリーンSの被走査面上に主走査方向に1列に並ぶ複数の画素を含む画素列を形成するために主走査方向に走査される複数のレーザ光が、前記画素列の副走査方向の中央(所定位置)に位置するように、光源装置15からのレーザ光を偏向する。
この場合、副走査方向の1画素分の走査時間に位相分布付与構造素子30から連続的に射出された異なる副走査対応方向の位相分布を有するレーザ光を全て重ね合わせることができるため、スペックルパターンの発生をより確実に抑制することができる。
また、位相分布付与構造素子30は、射出面に、副走査対応方向に並ぶ複数の段付き凹部が形成されている。
この場合、例えば、プラスチック製の透明部材を加工して、入射位置と射出位置との間の光学的距離が互いに異なる複数の領域を容易に形成することができるため、位相分布付与構造素子30の製造が容易となる。
また、プロジェクタ装置10では、光源としてレーザダイオードを用いている。この場合、色域が拡大され、色再現性の向上が実現できる。また、光源としてランプなどを用いる場合と比べて、消費電力の大幅な低減、及び装置の小型化を図ることができる。
また、プロジェクタ装置10は、精密な位置調整機構や機械的な駆動部を有していないため、装置の更なる小型化を図ることが可能である。
上記実施形態では、光偏向素子20の偏向方向、及び位相分布付与構造素子30における複数の段付き凹部の並び方向は、副走査対応方向(X軸方向)とされているが、これに代えて、例えば、主走査対応方向(Y軸方向)とされても良い。すなわち、光偏向素子20の動作を、光走査手段40の主走査方向の動作と組み合わせても良い。
仮に、光偏向素子20が設けられていない場合、若しくは光偏向素子20による偏向を行なわない場合、図8(A)に示される第2の比較例のように、レーザ光は、光走査手段40の走査角度の変化によってスクリーン上を移動する。
光偏向素子20の動作を光走査手段40の主走査方向の動作と組み合わせると、図9(A)に示される第1の変形例のような動作となる。
すなわち、光走査手段40によって所定の速度で角度を変えて主走査方向に光走査を行なうときに、光偏向素子20は、スクリーンS上の主走査方向の1画素内の中央に位置するように、主走査対向方向に関して、光走査手段40の走査方向とは逆の方向にレーザ光を偏向させる。
つまり、光偏向素子20は、光走査手段40による主走査方向の1画素分の走査の間に、光走査手段40の走査方向と逆方向に連続的に光偏向させ、光走査手段40の主走査方向の走査角度が隣接する画素領域に進んだときに、その隣接する画素内の中央に位置させるために不連続な光偏向動作をする。
このようにスクリーンS上の各画素の主走査方向の中央にレーザ光を位置させるように不連続的にレーザ光を走査するために、光偏向素子20に、図9(C)に示されるように、周期が主走査方向の1画素分の走査時間となる鋸波となるような動作をさせている。
このときの光走査手段40の動作は、図9(B)に示されるような時間変化をしており、これらを組み合わせることで、スクリーンSは、図9(A)に示されるような主走査方向の各画素の中央をレーザ光が跳び跳びに移っていくように光走査される。つまりスクリーンS上の主走査方向のレーザ光の移動は、図9(D)に示されるような階段状になる。
第1の変形例では、上記実施形態の場合(光偏向素子20が副走査対応方向に光偏向する場合)と同様に、光偏向素子20によりレーザ光を、複数の段付き凹部がY軸方向に並ぶように配置された位相分布付与構造素子30の主走査対応方向の異なる位置に連続的に入射させ、異なる主走査対応方向の位相分布を有するレーザ光を連続的に射出させる。これにより、スクリーンS上の各画素は複数の異なる主走査方向の位相分布を有するレーザ光の重ね合わせとなるため、スペックルパターンが平均化され、観察者には均一なスペックルノイズのない画像として認識される。なお、位相分布付与構造素子30は、主走査対応方向(Y軸方向)の位相分布に加えて、例えば主走査対応方向以外(例えば副走査対応方向(X軸方向))の位相分布を付与する構造を有していても良い。
また、第1変形例では、複数の段付き凹部は、Y軸方向に並べて配置されているが、これに限らず、要は、XY平面内の一軸方向(但し、X軸方向を除く)に離間して配置されていれば良い。この場合、上記一軸方向を含み、XY平面に直交する平面に沿ってレーザ光を偏向させて、位相分布付与構造素子30に入射させることが好ましい。
また、第1変形例の位相分布付与構造素子では、Y軸方向に並ぶ深さが互いに異なる複数の凹部をそれぞれが有する複数の段付き凹部がY軸方向に並べて配置されているが、これに限らず、要は、深さが互いに異なる複数の凹部が少なくともY軸方向に離間して配置されていれば良い。
なお、光偏向素子20を、レーザ光が各画素の主走査方向の中央以外の所定位置に位置するように動作させても良い。
また、上記実施形態では、位相分布付与手段25は、光偏向素子20を有しているが、有していなくても良い。この場合、例えば、位相分布付与構造素子30を、光源装置15からのレーザ光の入射方向に対して交差する方向(例えば直交する方向)に振動させるようにしても良い。この場合、位相分布付与構造素子30から異なる位相分布を有するレーザ光を連続的に射出させ、被走査面上で一部重ね合わせることができ、ひいてはスペックルノイズの発生を抑制することができる。
また、上記実施形態では、位相分布付与構造素子30は、射出面に、複数の段付き凹部が形成されているが、これに限られない。要は、位相分布付与構造素子は、入射位置と射出位置との間の光学的距離(光路長)が互いに異なる複数領域を有していれば良い。位相分布付与構造素子としては、例えば、入射面及び射出面の少なくとも一方に、複数の段付き凸部、大きさがランダムな鋸刃形状(ギザギザ形状)等が形成されたものでも良い。また、位相分布付与構造素子としては、例えば、入射面又は射出面に、深さが同じ複数の凹部又は溝が形成され、それらの内部に屈折率が互いに異なる材料が充填されたものであっても良い。
また、上記実施形態では、位相分布付与構造素子30は、光偏向素子20と光走査手段40との間の光路上に1つ配置されているが、該光路上に、該光路に平行な方向に又は交差する方向に離間して複数配置されていても良い。
また、上記実施形態では、位相分布付与構造素子30の複数の段付き凹部は、X軸方向に並べて配置されているが、これに限らず、要は、XY平面に平行な一軸方向(但し、Y軸方向を除く)に離間して配置されていれば良い。この場合、上記一軸方向を含み、XY平面に直交する平面に沿ってレーザ光を偏向させて、位相分布付与構造素子30に入射させることが好ましい。
また、上記実施形態の位相分布付与構造素子では、X軸方向に並ぶ深さが互いに異なる複数の凹部をそれぞれが有する複数の段付き凹部がX軸方向に並べて配置されているが、これに限らず、要は、深さが互いに異なる複数の凹部が少なくともX軸方向に離間して配置されていれば良い。
また、上記実施形態では、位相分布付与手段25において、光偏向素子20と位相分布付与構造素子30は、別体とされているが、一体化されても良い。
また、上記実施形態では、光走査手段40として、MEMSミラーを含む2軸のスキャナが採用されているが、これに限られない。例えば、図10に示される第2の変形例のように、MEMSミラーを含む1軸のスキャナを2つ組み合わせても良い。また、MEMSミラーを含む1軸のスキャナ、ポリゴンスキャナ、ガルバノスキャナなどを適宜組み合わせても良い。
また、上記実施形態では、光偏向素子20を、レーザ光が各画素の副走査方向の中央に位置するように動作させているが、これに限られない。光偏向素子20を、例えば、レーザ光が各画素の副走査方向の中央以外の少なくとも1つの所定位置に位置するように動作させても良いし、副走査方向の中央を含む複数の所定位置に位置するように動作させても良い。
上記実施形態における光源装置15の構成は、適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、光源として、3つのレーザダイオードが用いられたが、2つ以下又は4つ以上用いられても良い。すなわち、プロジェクタ装置は、カラー画像に限らず、モノクロ画像を表示するものであっても良い。そして、レーザダイオードの数に応じて、ダイクロイックミラーの数を適宜変更しても良い。なお、レーザダイオードを1つ用いる場合には、ダイクロイックミラーは、必要ない。
上記実施形態では、各レーザダイオードに対応してコリメートレンズが設けられているが、設けなくても良い。
上記実施形態では、レーザ光によりスクリーン上を走査しているが、これに限らず、例えば、レーザ光によりコンバイナ(半透過板)上、車両のフロントガラス上などを走査しても良い。
上記実施形態では、画像表示装置の一例として、プロジェクタ装置が採用されているが、これに限らず、例えば、ヘッドアップディスプレイを採用しても良い。