JP6011144B2 - 金管楽器用弱音器 - Google Patents
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Description
金管楽器を吹鳴した際の演奏音のピッチ、音質は、楽器の共鳴特性との関連が深い。従来の金管楽器用弱音器を装着した場合の共鳴特性は、金管楽器用弱音器を付けない場合の共鳴特性に比べ、低音域で余分な共鳴ピークが追加されるのが影響し、低音側の共鳴ピークが高周波数側に追いやられ、共鳴周波数が高くなってしまう。即ち、金管楽器に金管楽器用弱音器を取り付けると、低音域でピッチが高くなってしまう。
図1は、実施形態における金管楽器用弱音器100が取り付けられる管楽器1の構成を説明する図である。管楽器1は、一般的なトランペット、トロンボーンなどの金管楽器であり、音高調整部41、マウスピース51およびベル管71を有する。音高調整部41は、操作されることにより迂回管への経由の有無を変化させて管楽器1における管長を変化させるピストンバルブおよび迂回管を有する。音高調整部41は、予め決められた音階のいずれかの音高の発音をするように、管楽器1において共鳴する気柱の長さを調整する。
ベル管71は、テーパ部72とベル部73とを有する。テーパ部72は、ベル管71のうち、予め決められたテーパ率のテーパ管の形状をしている部分をいう。ベル部73は、ベル管71のうち、管軸方向の位置が変化するとテーパ率が変化していく形状、すなわち、ある曲率(曲率が位置によって変化してもよい)を有するベルの形状をしている部分をいう。以下の説明において、ベル管71のベル部73側の開口部分を端部75Lという。演奏者によってマウスピース51から吹き込まれる息は、管楽器1の内部空間に流入し、端部75Lから外部に流出する。なお、マウスピース51から吹き込まれる息は、演奏者によるものに限らず、機械的に吹き込まれた気体であってもよい。
続いて、管楽器1に着脱可能に取り付けられる金管楽器用弱音器100について説明する。
副管部21は、主管部10と内部空間が連結されている。副管部21は、その管軸方向が主管部10の管軸方向と平行になるように、曲がった形状の管体である。副管部21は、下流側の端部(第3の開口部)が開口している。
主管部10に流入する演奏者の息は、主管部10と副管部21との内部空間の連結部分である連結部分P1において副管部21に分岐して流入する。図3(以降の図についても同様)におけるFは、息の流れを示している。したがって、主管部10の上流側端部15Uから流入する演奏者の息は、主管部10の下流側端部15L、および副管部21の下流側端部から外部に流出する。
また、金管楽器用消音器100は必ずしも固定部31を備えていなくてもよく、例えば別部品として用意され予め管楽器内に挿入された固定部に対し主管部10が挿入されることで、管楽器1に対し金管楽器用消音器100が固定される構成が採用されても良い。
続いて、金管楽器用弱音器100が管楽器1に取り付けられた状態について説明する。
なお、管楽器が、トロンボーンの場合には、音高調整部41によって、共鳴する気柱の長さを連続的に変更させることができるため、分岐管110を構成する主管部10および副管部21の管長、断面積および連結位置が決められる自由度が、トランペットにおける場合に比べて高くなる。すなわち、同じ音高を発音させるためのスライド管の位置は、管楽器1に金管楽器用弱音器100が取り付けられている場合と取り付けられていない場合とで異なっていてもよい。
図4の金管楽器用弱音器100では、従来の金管楽器用弱音器と異なり、低音域で余分な共鳴ピークが追加されないので、特に低次ピークに対応するピッチや音色を良好に出来る。
図5の副管部21aは、図4の副管部21に比べ、その設置位置を楽器の手前側とする自由度を有する。これにより、副管21aの移動範囲が拡大し、所望のピッチや音色を発生するよう演奏性を向上する。
このように、演奏者は、管楽器1のベル管71に金管楽器用弱音器100を取り付けることにより、取り付ける前に比べて、音質が変化しないようにしつつ、音量を抑えた演奏をすることができる。また、演奏者に与える吹込み感の変化も少なくすることができる。また、固定部31がベル管71の奥にあるテーパ部72と接触して主管部10と管楽器1との間を閉塞するように金管楽器用弱音器100を固定し、分岐管110を支持することにより、金管楽器用弱音器100が管楽器1から脱落しにくくなる。
このような場合には、演奏者は、金管楽器用弱音器100を管楽器1に取り付けることにより、トランペットの演奏方法により様々な音での演奏をすることができる。
以上、本発明の実施形態およびその実施例について説明したが、本発明は以下のように、さまざまな態様で実施可能である。
上述した実施形態においては、副管部21が主管部10の周囲を覆うように構成されていてもよい。
10a2のある角度範囲を覆い、副管部21aの内部空間は、第2主管部10a2の表面形状に沿った形状になっている。このような場合には、副管部21aは、第1主管部10a1および第2主管部10a2の双方と接続されているから、上記の支柱は不要である。
上述した実施形態においては、主管部10の側面に他の管体の連結部分P1が設けられていたが、主管部10の内部空間に連結部分が設けられるようにしてもよい。
この場合、主管部10bに流入する演奏者の息は、連結部分P1において分岐して副管部21bに流入し、また、主管部10bと副管部21bとの間に形成される空間に流入する。副管部21bと主管部10bとは、変形例1における図5(b)に説明したように、支柱により接続されている。
上述した実施形態においては、主管部10の断面積は、連結部分P1の上流側と下流側とで断面積が変化していなかったが、変化してもよい。連結部分P1の上流側における主管部の外周と、下流側における主管部と副管部とをあわせた外周とが概ね一致した形状になるように構成されていてもよい。この場合、主管部10の内部空間の断面積が、連結部分P1の上流側と下流側とで異なっている。この場合の例について、図7を用いて説明する。
上述した実施形態においては、主管部10および副管部21は、内部空間の断面積が概ね変化しないストレート管であったが、テーパ管であってもよいし、ベル形状のように一定の曲率を有した管体であってもよいし、その他の形状の管体であってもよい。また、ストレート管とテーパ管などを組み合わせた管体であってもよいし、他の形状の管体であってもよい。以下、複数の例について説明する。まず、主管部10の一部がテーパ管である例について説明する。
続いて、副管部21の一部がテーパ管である例について説明する。
なお、上記の例は、金管楽器用弱音器の分岐管が取りうる様々な形状のうちの一例である。その他の例として、主管部が順テーパ管と逆テーパ管とストレート管とが接続されたものであってもよい。また、連結部分P1は、主管部のストレート管部分に設けられるだけでなく順テーパ管、逆テーパ管に設けられていてもよい。なお、主管部からの分流箇所が1箇所である場合、固定部の位置は、第1の開口部と第3の開口部の間であれば、どこにあっても良い。
上述した実施形態においては、金管楽器用弱音器100の分岐管110は、主管部10と副管部21とを有し、1つの連結部分P1を有していたが、さらに多くの管体と連結されていてもよい。以下、副管部が2つある場合の分岐管を有する金管楽器用弱音器について、複数の例を用いて説明する。なお、副管部2つある場合には、分岐管を構成する管体は3つであるが、さらに多くの管体が接続されて分岐管を構成していてもよい。
連結部分P2において、主管部10gに流入する演奏者の息が分岐して第2副管部22gに流入する。それぞれの管体の接続関係については、変形例1において説明したものと同様であるため、その説明を省略する。
このような連結部分を複数設けた分岐管を持つ金管楽器用弱音器の場合、固定部の位置は、第1の開口部と最上流側の分岐管における第3の開口部の間であれば、どこにあっても良い。
このように、連結部分を複数設けた分岐管を持つ金管楽器用弱音器を用いると、連結部分が単数の分岐管に比べて、さらに様々な形状の管体における共鳴特性を再現することができる。
なお、第2主管部10k2は、連結部分P2の上流側と下流側とで内部空間の断面積が異なる管体が接続されたものであってもよい。
上述した実施形態における固定部31は、演奏者によって吹き込まれた息を主管部10に全て流入させるように主管部10とベル管71との間を塞ぐように設けられていたが、一部の息が主管部10とベル管71との間に流入するように設けられていてもよい。
図14を用いて、一部の息を主管部10とベル管71との間に流入させる固定部を実現する例について説明する。
続いて、固定部を用いて、第1主管部10m1とテーパ部72との間に内部空間が構成される他の例について図15を用いて説明する。
上述した変形例5における金管楽器用弱音器100gにおいて、第1副管部21gおよび第2副管部22gは、内部空間が連結された管体により構成されてもよい。
連結された第1副管部21p、第1副管部21pと内部空間が連結部分P2で連結された第2副管部22p、および固定部31pを有する。第1副管部21pと第2副管部22pとが連結された管体が、主管部10pを覆っている。主管部10pは、互いに分離した第1主管部10p1および第2主管部10p2により構成されている。この例においては、第1副管部21pは、第2主管部10p2の一部を覆う形状になっている。一方、第2副管部22pは、第1主管部10p1の一部を覆う形状になっている。
なお、第1副管部21pと第2副管部22pとが連結された管体と主管部10pとは、変形例1における図5(b)に説明したように、支柱により接続されている。
上述した実施形態において、金管楽器用弱音器100を構成する管体は、分離可能に構成されていてもよい。例えば、主管部10が分離可能に構成された金管楽器用弱音器100rについて、図18を用いて説明する。
なお、第1主管部10r2と副管部21rとが分離可能に構成されていてもよい。
上述した実施形態においては、固定部31は、テーパ部72と主管部10との間に挟まれるようになっていたが、ベル部73と主管部10との間に挟まれるようになっていてもよい。この場合には、演奏者の息が、ベル管71の大きな断面積の内部空間に一旦広がった状態で、内部空間の断面積の小さい主管部10に流入することになるため、実施形態における構成の場合と比べて演奏者の吹き込み感を変化させることもできる。
上述した実施形態においては、金管楽器用弱音器100の分岐管110を構成する各管体は、端部においてのみ開口していたが、側面に開口部が設けられていてもよい。この場合、開口部が側面に設けられた管体の端部においては開口していなくてもよい。
上述した実施形態においては、主管部10および副管部21は、管長は変化しなかったが、管長が変化するように構成されてもよい。管長の変化は、例えば、スライド管により実現する。また、移動させたスライド管の位置を固定するストッパなどを有していてもよい。これにより、演奏者は、スライド管を移動させてから、ストッパなどによりその位置を固定しておくことで、金管楽器用弱音器の共鳴特性を変化させることができる。そのため、演奏者は、共鳴特性を変化させた金管楽器用弱音器を管楽器1に取り付けることで、様々な音で演奏することができる。
上述した実施形態においては、各管体の断面形状は円形であったが、楕円、多角形など他の形状であってもよい。また、管体の断面形状が管軸方向の位置により異なっていてもよい。なお、管体の内部空間の断面積が管軸方向に沿って連続的にまたは不連続的に変化するものであってもよい。
上述した実施形態または各変形例においては、各管体の管軸方向は、互いに垂直、または概ね平行の関係であったが、互いの管体における管軸のなす角は0度、90度以外であってもよい。例えば、主管部10の管軸方向に対して副管部21の管軸方向が斜め方向に伸びていてもよい。
以下に、上述した実施形態およびその変形例の金管楽器用弱音器を用いた金管楽器の共鳴特性につき補足する。
図21は、本発明の実施形態およびその変形例の金管楽器用弱音器の一例として、変形例5の2つの分岐管を具備する金管楽器用弱音器100gを用いた金管楽器の共鳴特性を示すグラフである。図21において、P0は金管楽器用弱音器100gを用いない金管楽器の共鳴ピークを表す特性カーブを示し、Pmは金管楽器用弱音器100gを用いた金管楽器の共鳴ピークを表す特性カーブを示す。
図22は、従来の金管楽器用弱音器を用いた金管楽器の共鳴特性を示すグラフである。図22において、Cmは従来の金管楽器用弱音器を用いた金管楽器の共鳴ピークを表す特性カーブを示し、P0は金管楽器用弱音器を用いない金管楽器の共鳴ピークを表す特性カーブを示す。
図21から明らかなように、金管楽器用弱音器100gを用いた金管楽器の共鳴特性は、金管楽器用弱音器を用いない金管楽器の共鳴特性からのずれが小さい。
また、図22に示されるように、従来の金管楽器用弱音器を用いた金管楽器では、金管楽器用弱音器を用いない本来の金管楽器の共鳴特性に対して、ずれが大きく、また低音域において不要な共鳴ピークを生じさせている。これに対し、図21に示すように金管楽器用弱音器100gを用いた金管楽器においては不要な共鳴ピークが生じていない。
従って、金管楽器用弱音器100gによれば、金管楽器用弱音器を用いない場合の共鳴特性とのずれが小さく、また従来の金管楽器用弱音器を用いた場合のような不要な共鳴ピークが生じないため、従来の金管楽器用弱音器の使用に伴うピッチの不安定化や、音色変化等の不都合が少なく、、金管楽器用弱音器を用いない本来の金管楽器の共鳴特性をより忠実に再現することができる。
なお、金管楽器用弱音器100gにつき上述した共鳴特性に関する効果は、本発明の実施形態およびその変形例の他の金管楽器用弱音器100(例えば、単一の分岐管を有する変形例1の金管楽器用弱音器100a)においても同様に得られることが確認されている。
Claims (6)
- 金管楽器のベル管内に配置される金管楽器用弱音器であって、
前記金管楽器に吹き込まれる空気の少なくとも一部の移動経路を形成する管部を備え、
前記管部は、前記金管楽器に吹き込まれる空気の少なくとも一部の流入を許容する第1の開口部と、前記第1の開口部から流入した空気の一部の流出を許容する第2の開口部と、前記第1の開口部から流入した空気のうち前記金管楽器に吹き込まれる空気の流れの方向における前記第1の開口部と前記第2の開口部との間の位置から分流する一部の空気の流出を許容する第3の開口部とを備え、
前記管部は、前記第1の開口部から流入した空気の一部を前記第2の開口部へ導く経路である主経路と、前記主経路から分岐し前記第1の開口部から流入した空気の一部を前記第3の開口部へ導く経路である副経路とを形成し、
前記管部は、前記副経路の少なくとも一部において、前記副経路を流れる空気の流れの上流側から下流側に向かい前記副経路の断面積が小さくなるように前記副経路を形成する
金管楽器用弱音器。 - 前記管部は、前記副経路が前記主経路の外周を囲むように前記主経路および前記副経路を形成する
請求項1に記載の金管楽器用弱音器。 - 金管楽器のベル管内に配置される金管楽器用弱音器であって、
前記金管楽器に吹き込まれる空気の少なくとも一部の移動経路を形成する管部を備え、
前記管部は、前記金管楽器に吹き込まれる空気の少なくとも一部の流入を許容する第1の開口部と、前記第1の開口部から流入した空気の一部の流出を許容する第2の開口部と、前記第1の開口部から流入した空気のうち前記金管楽器に吹き込まれる空気の流れの方向における前記第1の開口部と前記第2の開口部との間の位置から分流する一部の空気の流出を許容する第3の開口部とを備え、
前記管部を前記ベル管のテーパ部に着脱可能に取り付ける固定部を更に備え、
前記固定部は、前記金管楽器に吹き込まれる空気の一部を前記管部を経由せずに前記ベル管内に導く経路を形成する
金管楽器用弱音器。 - 金管楽器のベル管内に配置される金管楽器用弱音器であって、
前記金管楽器に吹き込まれる空気の少なくとも一部の移動経路を形成する管部を備え、
前記管部は、前記金管楽器に吹き込まれる空気の少なくとも一部の流入を許容する第1の開口部と、前記第1の開口部から流入した空気の一部の流出を許容する第2の開口部と、前記第1の開口部から流入した空気のうち前記金管楽器に吹き込まれる空気の流れの方向における前記第1の開口部と前記第2の開口部との間の位置から分流する一部の空気の流出を許容する第3の開口部とを備え、
前記管部は、前記第1の開口部から流入した空気の一部を前記第2の開口部へ導く経路である主経路と、前記主経路から分岐し前記第1の開口部から流入した空気の一部を前記第3の開口部へ導く経路である副経路とを形成し、
前記管部は複数の前記副経路を形成する
金管楽器用弱音器。 - 前記管部は、前記金管楽器に吹き込まれる空気の流れの方向において互いに異なる位置に配置された複数の前記副経路を形成する
請求項4に記載の金管楽器用弱音器。 - 金管楽器のベル管内に配置される金管楽器用弱音器であって、
前記金管楽器に吹き込まれる空気の少なくとも一部の移動経路を形成する管部を備え、
前記管部は、前記金管楽器に吹き込まれる空気の少なくとも一部の流入を許容する第1の開口部と、前記第1の開口部から流入した空気の一部の流出を許容する第2の開口部と、前記第1の開口部から流入した空気のうち前記金管楽器に吹き込まれる空気の流れの方向における前記第1の開口部と前記第2の開口部との間の位置から分流する一部の空気の流出を許容する第3の開口部とを備え、
前記管部は、前記第1の開口部から流入した空気の一部を前記第2の開口部へ導く経路である主経路と、前記主経路から分岐し前記第1の開口部から流入した空気の一部を前記第3の開口部へ導く経路である副経路とを形成し、
前記管部は、前記主経路を形成する管体である主管部と、前記主管部から前記主管部の外側に分岐し前記副経路を形成する管体である副管部を有し、前記主管部の管軸方向と前記副管部の管軸方向は平行である
金管楽器用弱音器。
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