以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(全体のシステム構成)
図1は、本発明の実施形態に係る車両企画支援システム100の構成を示す図である。図1に示すように、車両企画支援システム100は、ネットワーク接続されたコンピュータ1とデータベースサーバ2とを含む。コンピュータ1は、CPU11、ROM(Read Only Memory)13、RAM(Random Access Memory)14、HD(Hard Disk)15、入出力インタフェース(I/O)16、画像処理部18、及び通信部19をその本体に備えており、それぞれバス12によって互いに接続されている。本体外部には入力デバイス20及びディスプレイ17が設けられており、それぞれ入出力インタフェース16及び画像処理部18に接続されている。
CPU11は、コンピュータ1全体を制御する演算・制御用のプロセッサである。ROM13は、CPU11で実行するブートプログラムや固定値等を格納する不揮発性メモリである。RAM14は、データやプログラムを一時的に記憶するための揮発性メモリである。HD15は、コンピュータ1で実行するOS及び各種のプログラムモジュールを格納する記憶媒体である。入出力インタフェース16は、コンピュータ1本体と入力デバイス20との間でデータを入出力するためのインタフェースである。入力デバイス20は、命令やデータを入力するキーボードやマウスなどのデバイスである。ディスプレイ17は、CPU11からの制御指令に基づき画像処理部18で演算処理された文字や画像データを出力する液晶ディスプレイやCRTなどのデバイスである。画像処理部18は、プロジェクタ型表示装置6やディスプレイ17に表示するための画像データを演算処理するユニットである。通信部19は、無線又は有線の通信回線を介してデータベースサーバ2やプロジェクタ型表示装置6や視線方向検出装置7との間でデータを送受信するためのユニットである。
詳しくは、RAM14は、車両企画支援処理に際しCPU11で実行するプログラムを一時的に格納するためのプログラム実行領域14aと、ユーザから入力された車両の諸元値データを一時的に記憶しておく諸元値記憶領域14bと、企画車両に関する各種モデルを記憶する各種モデル記憶領域14cと、表示画像を一時的に記憶する表示画像記憶領域14dと、シミュレーション設定を記憶するシミュレーション設定記憶領域14eとを備えている。
HD15には、新型車両の企画を支援するためのプログラムモジュールが格納されている。具体的には、HD15には、車両の諸元値データをまとめた設計テーブルを生成するための設計テーブル作成モジュール15aと、設計テーブルを参照して基準モデル(「所定のモデル」に相当)を構築する基準モデル構築モジュール15bと、設計テーブルを参照して外形モデルを構築する外形モデル構築モジュール15cと、設計テーブルを参照して構造モデルを構築する構造モデル構築モジュール15dと、設計テーブルを参照してインテリアモデルを構築するインテリアモデル構築モジュール15eと、設定テーブルを参照して視認性関係部品モデルを構築する視認性関係部品モデル構築モジュール15fと、企画車両に含まれる部品を3次元データで表した部品モデルを生成する部品モデル構築モジュール15gと、構築された基準モデル、外形モデル、構造モデル、インテリアモデル、視認性関係部品モデルなどの組合せを登録する企画車両モデル登録モジュール15h(企画車両モデル生成手段に相当)、各種モデルを表示するモデル表示モジュール15iと、運転者(乗員に相当)の視点位置から見た、構築した運転席側フロントピラー(Aピラー)モデルの見開き角(見開き角度)が所定の範囲にあるときに、その旨を報知する、又は、その運転者の視点位置から見た見開き角が所定の範囲の部分を表示する報知モジュール15j(報知手段に相当)と、構築した運転席側フロントピラーモデルの見開き角が所定の範囲にある場合であって、報知モジュール15jが上記の報知又は表示を行ったにも拘わらず、その見開き角が変更されないときに、その運転席側フロントピラーモデルを変形(形状変更)することを促す催促モジュール15k(催促手段に相当)と、生成した企画車両モデルの走行時における運転者の視界をシミュレーションするとともに、構築した視認性関係部品モデルが、その運転者から車外への視認性に与える影響度を算出するシミュレーションモジュール15lとが車両企画支援プログラムとして格納されている。なお、基準モデル構築モジュール15b、外形モデル構築モジュール15c、構造モデル構築モジュール15d、インテリアモデル構築モジュール15e、視認性関係部品モデル構築モジュール15f、及び部品モデル構築モジュール15gは、車両構成部品モデル構築手段に相当する。また、基準モデル、外形モデル、構造モデル、インテリアモデル、視認性関係部品モデル、及び部品モデルは、車両構成部品モデルに相当する。
また、HD15には、設計テーブル作成モジュール15aによって生成された設計テーブルファイル(以下、設計テーブルという)15mと、各種モデル構築モジュール15b〜15gによって生成された各種モデルファイル(以下、各種モデルという)15nと、シミュレーションモジュール15lにおいて生成されたシミュレーション画像ファイル15oとがさらに格納されている。
なお、設計テーブル作成モジュール15aは、完全にオリジナルのプログラムモジュールでなくても、例えば、オペレーティングシステム上で動作する表計算ソフトの一部の機能を利用したモジュールでもよい。
また、視認性関係部品モデル構築モジュール15f以外の各種モデル構築モジュール15b〜15g、及びモデル表示モジュール15iは、3次元CADソフトの一部の機能を利用したモジュールでもよい。この場合、視認性関係部品モデル以外の各種モデル15nは、3次元CADソフトが設計テーブル15mから車両の諸元値を抽出して所定の計算を行うことによって構築される。
また、設計テーブル作成モジュール15a、基準モデル構築モジュール15b、外形モデル構築モジュール15c、構造モデル構築モジュール15d、インテリアモデル構築モジュール15e、視認性関係部品モデル構築モジュール15f、部品モデル構築モジュール15g、企画車両モデル登録モジュール15h、モデル表示モジュール15i、報知モジュール15j、催促モジュール15k、及びシミュレーションモジュール15lをまとめて1つの車両企画支援アプリケーションとしてパッケージングしてもよい。
また、HD15は、シミュレーション表示及び視認性影響度算出の両方を行うシミュレーションモジュール15lを備えているが、シミュレーション表示を行うモジュールと視認性影響度算出を行うモジュールを別々に備えてもよい。
また、コンピュータ1は、不揮発性の大容量記憶媒体としてHD15を備えているが、本実施形態はこれに限定されるものではない。HDに代わる他の記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD(DVD−ROM,DVD−R)などが挙げられる。つまり、CD−ROMなどの記憶媒体に車両企画支援プログラムが格納されており、その記憶媒体に対応したドライブを用いて車両企画支援プログラムを読み出して実行することにより、車両企画支援処理が実現されてもかまわない。
(データ構成及びモデルの構築処理)
図2は、コンピュータ1とデータベースサーバ2に含まれるデータを示す図である。図2に示すように、データベースサーバ2は、乗員・シート・車輪データベース2aと、外形データベース2bと、構造データベース2cと、インテリアデータベース2dと、視認性関係部品データベース2eと、汎用部品データベース2fと、完成車両データベース2gと、仮想空間データベース2hとを含む。
乗員・シート・車輪データベース2aは、国内外の規格に準じた乗員サイズ(大人や子供の標準規格)により定義された乗員の形状を3次元データで表した乗員ベースモデル、シートの形状を3次元データで表したシートベースモデル、及び車輪の形状を3次元データで表した車輪ベースモデルを蓄積し、管理している。外形データベース2bは、車両の典型的な外部形状を3次元データで表現した外形ベースモデルを、車型毎に分類して蓄積し、管理している。外形ベースモデルは、ハッチバック、ミニバン、セダン、スポーツ、オープン、トラックといった車型毎に、外形的な特徴のない、最も一般的な形状の3次元データで表現される。なお、外形ベースモデルは、ドアやボンネットやリアハッチとして属性が付加された複数の面データを含んでおり、各面の表示/非表示を選択可能である。
構造データベース2cは、車両の典型的な骨組みを3次元データで表現した構造ベースモデルを、同じ車型毎に分類して蓄積し、管理している。インテリアデータベース2dは、車内に設けられる典型的なインテリアを3次元データで表現したインテリアベースモデルを蓄積し、管理している。
視認性関係部品データベース2eは、車両の典型的な視認性関係部品を3次元データで表現した視認性関係部品ベースモデルを蓄積し、管理している。視認性関係部品ベースモデルは、実在する視認性関係部品を3Dスキャンにより高い精度(細かいスキャンピッチ)でスキャンし、そのスキャンデータに基づいて生成されている。つまり、視認性関係部品ベースモデルの外形形状は、実在する視認性関係部品の外形形状と近似している。なお、視認性関係部品ベースモデル以外のベースモデルは、例えば、それらの実在物を3Dスキャンにより低い精度(粗いスキャンピッチ)でスキャンし、そのスキャンデータに基づいて生成されていたりする。
汎用部品データベース2fは、ハンドルやリアスポイラー等の汎用部品の画像を蓄積し、管理している。ここで管理されている画像は、3次元画像に限らず、2次元画像も含んでいる。完成車両データベース2gは、完成した企画車両モデルの他、実在車両を3次元データで表現した実在車両モデルなどを蓄積し、管理している。
仮想空間データベース2hは、企画車両モデルや実在車両モデルを仮想的に走行させる仮想空間を表す3次元仮想空間データを蓄積し、管理している。仮想空間データベース2hは、例えば一般道路や駐車場や高速道路や山岳道路など、実在する道路をモデルに生成された複数種類の3次元仮想空間データを含んでいる。各仮想空間データは、仮想一般道路、仮想駐車場、仮想高速道路、仮想山岳道路、仮想柱状物、仮想車両、仮想建築物、及び仮想歩行者などを仮想物体として有している。仮想柱状物は、歩行者や二輪車などを模擬した円柱状のものである。仮想柱状物pは、例えば、仮想一般道路の側縁部や交差点の横断歩道や(図3及び図4参照)、仮想駐車場の駐車スペースの側縁部や、仮想高速道路などに互いに所定間隔で複数配置されたりしている。仮想車両は、例えば、仮想駐車場の駐車スペースなどに配置されている。
また、仮想空間データベース2hは、各仮想空間データに対応して、その仮想空間内を車両が走行した場合に、運転者が注視する位置を表す注視点データを格納している。注視点データは、時間経過に伴う注視点の位置の変化を示すデータである。この注視点データは、注視点の位置として、車両進行方向(又は画面中央)からの振れ角(注視角度)をパラメータとしてもっている。また、この注視点データは、車両タイプ毎に用意されていることが望ましい。
図5を参照しながら、注視点データについて詳細に説明する。図5に示すように、注視点データ903は、仮想道路のモデルとなった実在道路を所定の車両で走行した際に計測した運転者の眼球位置(眼球運動)データ901と頭部回転データ902とを組み合わせて生成した、企画車両の運転者からの視線位置を表すデータである。グラフ903は、縦軸を車両進行方向からの水平方向の振れ角とし、横軸を経過時間としている。ここでは、説明の簡略化のため、注視点位置の水平方向成分にのみ着目した足し合わせの様子を示しているが、注視点データは、注視点位置の垂直方向成分も有していることはいうまでもない。このように、注視点データを眼球位置データと頭部回転データとの組合せによって生成したため、現実の運転者とほぼ同じ注視行動をシミュレーションすることができる。
コンピュータ1は、ユーザの入力に基づき、設計テーブル作成モジュール15aを実行する。設計テーブル作成モジュール15aは、図6に示す入力画面を表示し、シート数、シート位置、全長、全高、全幅などの基本的な諸元値の入力を促す。図6(a)は、諸元値の入力テーブルであり、図6(b)及び(c)は、それぞれ、入力テーブルで入力する諸元値の対応部位を示す車両前方視画像及び側面視画像であり、「…」の部分に数値を入力することができる。これらの図で入力可能な諸元値は、ホイールベース1101、全幅1102、全高1103、フロントオーバハング1105、リアオーバハング1106、カウルポイントCWの水平位置1107、カウルポイントCWの垂直位置1108、フロントガラス傾斜1109である。なお、入力する諸元値はこれに限定されるものではなく、他の様々な諸元値を入力するため、図6に類似する複数の画面が用意されてもよい。そして、入力された諸元値に基づき、設計テーブル15mを作成する。即ち、設計テーブル15mには、乗員の着座位置情報など、企画車両に関する各種諸元値が含まれる。
コンピュータ1は、ユーザの入力に基づき、基準モデル構築モジュール15bを実行する。基準モデル構築モジュール15bは、設計テーブル15mにおいて設定された諸元値に基づいて、車両の居住空間を表現する基準モデル1aを構築する。この基準モデル1aは、乗員の乗車姿勢を示すラインデータを含む。このラインデータは、乗員の頭頂位置を示すヘッドポイントと、尻位置を示すヒップポイントと、膝位置を示すニーポイントと、かかと位置を示すヒールポイントとを結ぶ線分を含む。乗員・シート・車輪データベース2aから乗員の姿勢を立体的に表した乗員ベースモデルを読み出し、このラインデータに沿って変形することにより、乗員モデルを基準モデル1aに含めることもできる。
また、基準モデル1aは、ハンドル位置を示す点データ、国内外の規格に準じた乗員サイズ(大人や子供の標準規格)により定義された運転者の視点位置を示す点データ、並びに運転者の前方視界及び後方視界を示すラインデータを含む。さらに、基準モデル構築モジュール15bは、乗員・シート・車輪データベース2aから読み出したシートベースモデルを、設計テーブル15mにおいて設定されたヒップポイントのデータなどに基づいて変形・配置し、シートモデルとして基準モデル1aの一部とすることができる。また、運転者の視点位置を示す点データを、例えば、乗員モデルに含めることもできる。
コンピュータ1は、ユーザの入力に基づき、外形モデル構築モジュール15cを実行する。外形モデル構築モジュール15cは、外形データベース2bから外形ベースモデルを読み出し、設計テーブル15mにおいて設定された諸元値に基づいて変形して外形モデル1bを構築する。即ち、コンピュータ1は、設計テーブル15mに設定された、車型(ハッチバック、ミニバン、セダン、スポーツ、オープン、トラックの何れか)に基づいて外形データベース2bから外形ベースモデルを読み出す。そして、設計テーブル15mに格納された各種諸元(全長、全幅、全高、ホイールベース、フロント、及びリアオーバハング)を用いて、外形ベースモデルに含まれる所定の外形パラメータ(バンパー先端位置の座標やルーフトップの座標など)を変更して、諸元に沿った大まかな外形モデル1bを構築する。逆にいうと、それらの諸元値に応じて自動変形可能な3次元外形ベースモデルをデータベースに用意しておく。
また、コンピュータ1は、外形モデル1bを、入力デバイス20からの入力に応じて局所的に変形することができる。外形ベースモデルは、互いに相関関係を有する複数の制御点の3次元データに基づいて構成されており、外形モデルを画像表示した状態で入力デバイス20によりその制御点の移動を指示すると、外形モデルが局所的に変形される。具体的には、外形ベースモデルは制御点として、入力される諸元値によってその位置が定義される定義点と、車両の形状が不自然なものとならないようにそのような定義点に追従して移動する追従点とを有する。そして、諸元値によって大まかに形状が決められた外形モデルを画像表示した状態で、その画像上に表示された追従点をポインティングデバイスを用いて自由に移動可能として企画車両の外形形状を微調整する。
コンピュータ1は、ユーザの入力に基づき、構造モデル構築モジュール15dを実行する。構造モデル構築モジュール15dは、構造データベース2cから構造ベースモデルを読み出し、設計テーブル15mにおいて設定された諸元値に基づいて変形して構造モデル1cを構築する。
コンピュータ1は、ユーザの入力に基づき、インテリアモデル構築モジュール15eを実行する。インテリアモデル構築モジュール15eは、インテリアデータベース2dからインテリアベースモデルを読み出し、設計テーブル15mにおいて設定された諸元値に基づいて変形してインテリアモデル1dを構築する。インテリアモデルとしては、フロントピラーのトリム、センターピラーのトリム、リアピラーのトリム、ドアトリム、インストルメントパネル、ルーフトリムなどを含む。ハンドルをもつ運転者モデルのうち腕モデルのみインテリアモデルとして含んでもよい。また、設計テーブル15mでこれらの各インテリアパーツについて色を設定する構成でもよい。
コンピュータ1は、ユーザの入力に基づき、視認性関係部品モデル構築モジュール15fを実行する。視認性関係部品モデル構築モジュール15fは、視認性関係部品データベース2eから視認性関係部品ベースモデルを読み出し、設計テーブル15mにおいて設定された諸元値に基づいて変形して視認性関係部品モデル1eを構築する。視認性関係部品モデル1eとは、運転者から車外への視認性に与える影響が大きいモデルである。視認性関係部品モデル1eとしては、運転者から車両前方への視認性に与える影響が大きいフロントピラー及びドアミラーモデルや、運転者から車両後方への視認性に与える影響が大きいリアピラー、バックシートのヘッドレスト、及びバックウィンドウモデルや、運転者から車両斜め後方への視認性に与える影響が大きいドアのベルトラインモデルなどが挙げられる。
視認性関係部品モデル1eの外形形状は、これ以外の各モデル1a〜1dの外形形状よりも高い精度で造形される。このように視認性関係部品モデル1eの立体形状を精密に作れるのは、視認性関係部品ベースモデルを、実在する視認性関係部品を3Dスキャナにより高い精度でスキャンして得られたスキャンデータに基づいて生成しているからである。これにより、視認性関係部品モデル1eの外形形状は、実在する視認性関係部品の外形形状と近似する。
ここでは、視認性関係部品モデル1eの外形形状のみ精度よく造形するが、各モデル1a〜1eのうち少なくとも視認性関係部品モデル1eの立体形状を高い精度で作ればよく、例えば、すべてのモデル1a〜1eの外形形状を精密に造形してもよい。さらに、視認性関係部品モデル1eの立体形状を精度よく作る手段は、上記の方法に限らず、如何なる手段であってもよい。
このようにして構築された基準モデル1a、外形モデル1b、構造モデル1c、インテリアモデル1d、視認性関係部品モデル1eは、モデル表示モジュール15iを用いて、図7(a)〜(e)に示すように、それぞれ単独にディスプレイ17に表示することもできるし、図7(f)に示すように、すべて組み合わせて表示することもできるし、全モデルのうち指定したモデルのみ組み合わせて表示することもできる。組合せ表示では、視認性関係部品モデル構築モジュール15fによって生成された視認性関係部品モデル1eを、これ以外の各モジュール15b〜15eによって生成された各モデル1a〜1dに含まれる視認性関係部品モデル1eよりも優先的に表示する。つまり、視認性関係部品モデル構築モジュール15fによって構築された視認性関係部品モデル1eを表示し、これ以外の各モジュール15b〜15eによって構築された各モデル1a〜1dに含まれる視認性関係部品モデル1eを部分的に非表示にする。これは、以下のシミュレーション表示においても同様である。
このように視認性関係部品モデル構築モジュール15fによって構築された視認性関係部品モデル1eを優先的に表示するが、これに限らない。例えば、視認性関係部品ベースモデル以外の各ベースモデルから視認性関係部品を予め取り除いておいてもよい。
そして、組合せ表示により各モデルの干渉の有無を確認する。即ち、乗員のヘッドクリアランスや運転者の視界確保などが不十分であることを視覚的に検証し、この検証結果に基づいて各モデルを変更する。外形モデルや構造モデルによって設定される車室空間に対して、基準モデルによって決定された乗員の着座位置、着座姿勢に無理がある場合には、着座位置をずらしたり、着座姿勢を変えたり、ルーフ位置を上げたりといった調整を行う。このようにすれば、外形モデルを居住空間モデルと独立に構築でき、内部空間の制約に縛られることなく、自由な発想で効果的に外形の設定を行うことができる。また逆に、外形形状に囚われず自由な発想で居住空間の企画立案を行うことができる。
ここで、外形モデル1bは、ワイパーなどの付属品等を全く含まない、非常にプレーンな外形を表すデータである。従って、単に、基準モデル1a、外形モデル1b、構造モデル1cを組み合わせただけの企画車両モデル1gを表示した場合には、実際の車両を見慣れたユーザにどこか物足りない印象を与えてしまい、評価が正確に行えない場合がある。そこで、本システム100では、実際の車両に近い印象を与えるため、ワイパーを付加して表示したり、インテリアモデルに含まれるありきたりのハンドルを、他の特徴的なハンドルに替えて表示したりする機能を有する。
具体的には、モデル表示モジュール15iで企画車両モデル1gの投影画像を表示する場合には、ユーザの入力に応じて、汎用部品データベース2fから読み出した部品画像を重ねて表示する。即ち、ユーザは、汎用部品データベース2fから企画車両に付加したい汎用部品を選択し、簡易的に企画車両モデル1gに取り付けることができる。これにより、様々な部品の付属した車両を容易に視覚化することができ、企画車両の表示に際し実際の車両に近い印象を与えることができる。このような部品画像データが用意される汎用部品としては、ドア、ワイパー、カーナビゲーションシステムの操作パネル、メーター、オーディオシステムの操作パネル、又はハンドルなどが挙げられる。
一方、外形データベース2bや構造データベース2cは、あらゆる企画車両のベースになるものであるため、特徴のない一般的な形状のデータとなっている。従って、全く斬新なデザインの車両を企画しようとする場合には、その変形だけでは対応しきれないことが想定できる。そこで、本システム100では、全く新しいデザインの部品モデルを別個に作成可能とし、外形モデルや構造モデルを部分的に非表示にして、新規に作成した部品モデルを結合して表示できる機能を有する。
具体的には、データベースサーバ2から読み出したベースモデルの変形だけでは対応しきれない場合には、部品モデル構築モジュール15gを実行して新規作成部品モデル1fを作成し、企画車両モデル1gに組み込むことができる。
このように、企画車両に含まれ得る部品を3次元データで表した部品モデルを新たに生成し、外形ベースモデル及び乗員ベースモデルを、諸元値データに応じてそれぞれ変形して生成したモデルに結合することによって、既存の概念を越えた全く新しいコンセプトの車両を3次元空間に表現することが可能となる。
(企画車両モデル登録)
以上のように、各モデル構築モジュール15b〜15gによって構築された基準モデル1a、外形モデル1b、構造モデル1c、インテリアモデル1d、視認性関係部品モデル1e、及び部品モデル1fは、各種モデル15nとしてそれぞれHD15に格納される。ただし、1つの車両の企画において構築されるモデルは、1つに限られるものではなく、同じ企画について複数の基準モデル1a、外形モデルb、構造モデル1c、インテリアモデル1d、視認性関係部品モデル1e、及び部品モデル1fを構築することが望ましい。
HD15に、少なくとも複数の基準モデル1aと複数の外形モデル1bとを記憶すれば、企画車両モデル登録モジュール15hは、ユーザの入力指示に応じ、HD15に格納された複数の基準モデル1aと複数の外形モデル1bとを任意に組み合わせて企画車両モデル1gとして登録する。
1つの基準モデル1aに対してそれぞれ異なる外形モデル1bを結合した複数の企画車両モデル1gを表示したり、1つの外形モデル1bに対してそれぞれ異なる基準モデル1aを結合した複数の企画車両モデル1gを表示したりすることで、外形が同じで車内の居住空間が異なる企画車両モデル1gや居住空間が同じで外形が異なる企画車両モデル1gを容易に生成でき、それらの企画車両モデル1gを比較して最適な車両を企画することができる。
(企画検証処理)
図8は、各モジュール15a〜15mを用いた企画検証処理の全体的な流れを示すフローチャートである。
まず、ステップS1401において、設計テーブル15mを作成する。次に、ステップS1402〜S1406において、設計テーブル15mに入力されたデータを用いて、基準モデル1a、外形モデル1b、構造モデル1c、インテリアモデル1d、及び視認性関係部品モデル1eを構築する。ベースモデルの変形だけでは対応できない場合には、ステップS1407において、新規作成部品モデル1fを構成する。
そして、ステップS1408において、各モデル1a〜1fを組み合わせてディスプレイ17に重畳表示する。その際、ステップS1409において、汎用部品を付加して表示してもよい。重畳表示の結果、乗員と外形との干渉などがないことが確認できれば、ステップS1410からステップS1411に進み、全モデル1a〜1fを組み合わせた企画車両モデル1gを生成し、保存する。
ステップS1408で重畳表示した結果、問題がある場合には、ステップS1410からステップS1401に戻り、設計テーブル15mを変更するか、表示画面上で各モデル1a〜1fを変形して修正する。
ステップS1411において企画車両モデル1gが生成されると、ステップS1412に進んで、シミュレーションモジュール15lを起動し、企画車両モデル1gの仮想空間内での走行条件として、走行シーン、日照方向、天候、走行スピードなどを設定する。走行シーンとしては、例えば、一般道路の交差点の右左折シーンや、市街地にある一般道路の走行シーンや、駐車場における駐車シーンや、高速道路における車線変更シーンや、高速道路の走行シーンや、山岳道路の右カーブの走行シーンなどが選択可能に表示される。走行スピードとして、例えば、その数値を入力する入力画面が表示されたり、低速、中速、高速が選択可能に表示されたりする。
ステップS1413では、図9に示す画面において「視認対象指定評価モード」ボタン601と「実測値注視点評価モード」ボタン602と「評価者注視点評価モード」ボタン603の何れが選択されたかに応じて、視認性評価モードとして、視認対象指定評価モードと実測値注視点評価モードと評価者注視点評価モードの何れかを選択する。
視認対象指定評価モードが選択されると、図9に示す画面において「視認対象静止モード」ボタン604と「視認対象移動モード」ボタン605の何れが選択されたかに応じて、視認対象指定評価モードとして、視認対象静止モードと視認対象移動モードの何れかを選択する。
実測値注視点評価モードが選択されると、運転者の特性として、運転者の年齢などを設定する。運転者の年齢として、例えば、その数値を入力する入力画面が表示されたり、青年期、中年、老年期が選択可能に表示されたりする。
次に、ステップS1414に進んで、ステップS1412において設定された走行条件に合わせて、データベースサーバ2から読み出した風景データと企画車両モデル1gの3次元データとを組み合わせる。そして、企画車両モデル1gの運転者の視点から見えるシミュレーション映像をディスプレイ17やプロジェクタ型表示装置6に表示して、評価者により視認性の評価を行う。ステップS1413で視認対象指定評価モードが選択されている場合には、シミュレーション映像に丸や十字の画像を埋め込む。ステップS1413で実測値注視点評価モードが選択されている場合には、シミュレーション映像に運転者の注視点及び有効視野の画像を埋め込む。さらに、視認性影響度算出処理を行う。
シミュレーション表示及び視認性影響度算出の結果、全走行条件で視認性に問題がなければ、企画書の作成、デザイン開発に進む。他の走行条件で再評価を行う場合には、ステップS1415からステップS1412に戻り、走行条件を変更してシミュレーション表示及び視認性影響度算出を再度行う。何らかの問題があれば、ステップS1416からステップS1401に戻って設計テーブル15mを修正し、問題がある視認性関係部品モデル1eを変形・修正したり、表示画面上でその視認性関係部品モデル1eを変形して修正したり、その視認性関係部品モデル1eをHD15に格納された別の視認性関係部品モデル1eに取り替えて変形・修正したりする。
(報知処理及び催促処理)
次に、報知モジュール15jを用いた報知処理及び催促モジュール15kを用いた催促処理について詳細に説明する。
報知処理方法及び催促処理方法は、以下の実験解析に基づいて決定している。即ち、車両寸法と空間感覚との関係を定量化することを目的として、運転席側フロントピラーの寸法変化を被験者へ提示し、感覚受容器を通して知覚する実験を行い、空間感覚のうち”広さ感”について車両寸法に基づいた解析を行い、この解析に基づいて報知処理方法及び催促処理方法を決めた。その実験解析の詳細について以下、説明する。
<フロントピラーによる車室内の広さ感覚特性の実験解析>
まず、フロントピラーによる車室内の広さ感覚特性の実験解析について詳細に説明する。
≪実験装置≫
図10にフロントピラーによる車室内の広さ感覚特性を解析するために用いた実験システムの概略を示す。この実験システム8は、車室内の3D画像を表示する表示部と、その3D画像を見る被験者の視線を計測する視線計測部とを備えている。表示部では、プロジェクタ80を使って、スクリーン5面に囲まれた空間内に画像を立体表示する多面立体表示システム81が用いられている。被験者は、シートに着座している。被験者の頭部は、光学式モーションキャプチャカメラ82によってトラッキングされており、被験者に対してその視点に応じた立体画像を歪みなくシャッター眼鏡83を通して提示するようになっている。モーションキャプチャカメラ82は、コンピュータ84に接続されている。視線計測部では、被験者の注視点を計測する注視点計測システムとしてキャップ式アイカメラ85が用いられている。このキャップ式アイカメラ85はレコーダ86に接続されている。このレコーダ86には、マイク87が接続されている。
≪実験方法≫
実験は、被験者が提示画像に対してその主観を口述する口頭諮問形式とした。被験者から見たフロントピラーの画像の例を図11(a)に示す。実験条件は、図11(b)に示すように、被験者の視点位置(アイポイント)からフロントピラーのA−A断面(図11(a)参照)までの距離La一定で、フロントピラーの見開き角Θa=18〜30度(ピッチ3度)で、その視点位置を中心にxy平面上でフロントピラーが回転した5種類の車室内を3D表示し、それぞれ10分程度の主観評価と視線計測からフロントピラーの広さ感覚を解析するものとした。なお視点位置は、被験者の両目の中心とし、A−A断面は、被験者の視点位置の高さとした。またフロントピラーの見開き角は、被験者の正面からA−A断面の中心までの角度とした。
≪実験結果≫
被験者は成年男性2名で、上記の実験条件を用いてフロントピラーの見開き角Θaの違いによる広さ感覚の解析を行った。被験者には、その実験内容を十分に説明してから計測した。
図12(a)及び(b)は、それぞれ、被験者1の記録した主観評価のうち、Θa=21、24度において、フロントピラーを目障りとコメントした発話中の10秒間の視線の動きを抽出した結果である。図12(a)及び(b)の横軸及び縦軸は、それぞれ、前方画像座標系のx軸及びz軸である。また、図12(a)及び(b)の白実線は注視点位置、白破線は窓枠を意味する。さらに、その表示画像は計測中の被験者の顔向き方向の前方画像であり、この前方画像は頭部回転によって回転するようになっている。
図12(a)及び(b)は、同じコメントでも、その見開き角が21度ではフロントピラー右上を、24度ではフロントピラー全体を見て回答したことを示している。
図13(a)及び(b)は、それぞれ、フロントピラーの広さ感覚のうち「見開きが広い」と「目障りな」の項目を、見開き角21度を基準にVAS(Visual-Analog-Scale)法を用いて主観評価し、被験者2名分を平均した結果である。図13(a)及び(b)の横軸はフロントピラーの見開き角、縦軸は主観評価値である。
図13(a)及び(b)は、フロントピラーの見開き角が大きくなるにつれて「見開きが広い」と感じているが、その見開き角が21〜25度の範囲でフロントピラーを「目障りな」ものと感じ、24度で最も「目障りな」ものと感じていることを示している。なお、両方の被験者とも同様の傾向であった。
本実験の結果から、フロントピラーの見開き角が大きくなると、見開きの広さに関する主観値は単調増加するが、その一部でフロントピラーを目障りに感じている範囲があり、その範囲ではフロントピラー全体の確認動作のため視線を上下させることが分かった。そして本実験から視線の動きの変化と広さ感覚の変化には密接な関係があると考えられる。
<見開き角の知覚能力特性の実験解析>
続いて、見開き角の知覚能力特性の実験解析について詳細に説明する。
≪実験装置≫
図14に見開き角の知覚能力特性を実験解析するために用いた実験システムの概略を示す。この実験システム9は、車室内の2D画像を表示する表示部と、その2D画像を見る被験者の視線を計測する視線計測部とを備えている。表示部では、プロジェクタ90を使って、スクリーン91に画像を表示するシステムが用いられている。被験者は、シートに着座している。視線計測部では、被験者の注視点を計測する注視点計測システムとしてキャップ式アイカメラ92が用いられている。このキャップ式アイカメラ92は、レコーダ93に接続されている。このレコーダ93には、マイク94が接続されている。
≪実験方法≫
実験は、被験者が提示画像に対して数値を口述する口頭諮問形式とした。実験条件は、図15(a)及び(b)に示すように、被験者の正面から見開き角θa=8〜30度(ピッチ2度)で、水平にxy平面上で回転した12種類の角度で、3.5cmの十字視標のをランダムに300回提示し、被験者の見開き角の回答から知覚能力を解析するものとした。
≪実験結果≫
被験者は成年男女2名で、上記の実験条件を用いて十字視標位置の見開き角θaの知覚能力の解析を行った。被験者には、実験前にθaを示しながらその感覚を覚えさせた。また本実験で用いる見開き角の上限値が分からないように練習させた。なお、本実験中には、提示した実際の見開き角は被験者には教えなかった。
図16(a)及び(b)は、それぞれ、被験者3及び被験者4のθa=16〜30度における正答率の結果である。図16(a)及び(b)の横軸は十字視標位置の見開き角、縦軸は正答率である。また、図16(a)及び(b)の破線は3次多項式での近似曲線を意味する。
図16(a)及び(b)から被験者3は見開き角が増加するに従って正答率が増加し、被験者4は見開き角の正答率の変化が20〜24度の範囲に極大値をもつ凸関数となることが分かった。
図17は、被験者4の回答中の頭部回転角を見開き角が16〜24度の間と26〜30度の間で平均した結果である。図17の縦軸は頭部回転角度である。図17は見開き角が26〜30度の頭部回転が大きいことを示している。なお被験者3は頭部運動に有意差は見られなかった。
この結果から、眼球運動の可動域に近い範囲(両目で見える視野領域)となる見開き角20〜24度程度までは見開き角を知覚し易く、頭部の動きにより見開き角の知覚が悪化することが分かった。
上記のように、フロントピラーによる車室内の広さ感覚特性及び見開き角の知覚能力特性について実験解析したところ、フロントピラーの見開き角が24度のときに、フロントピラーを最も目障りに感じることが分かった。
そこで、報知モジュール15jが、例えば、図8のステップS1408で各モデル1a〜1fを組み合わせて重畳表示した場合であって、基準モデル1aに含まれる運転者の視点位置から見た、フロントピラーモデルの見開き角が24度(「所定の範囲」に相当)であるときには、その旨を報知する。これにより、この報知に基づいて、ステップS1408からステップS1401に戻り、設計テーブル15mを変更するか、表示画面上で各モデル1a〜1fを修正することにより、フロントピラーモデルの見開き角を24度から外して、最も目障りに感じるフロントピラーモデルを構築しないようにすることができる。従って、フロントピラーを目障りに感じない車両を効率的に企画することができる。
上記の報知は、例えば、視覚的に行ったり、聴覚的に行ったりする。視覚的な報知の例を図18に示す。図18は、フロントピラーモデルの見開き角が24度であることを警告する警告メッセージを示す図である。この警告メッセージは、各モデル1a〜1fの重畳表示とともに表示される。また、聴覚的な報知では、例えば、図18の警告メッセージとほぼ同じ内容のメッセージが音声出力される。
上記の報知は、図8のステップS1411で企画車両モデル1gを生成する前に行っているが、その生成後に行ってもよい。
上記では、フロントピラーモデルの見開き角が24度であるときに、その旨を報知しているが、例えば、図8のステップS1408で各モデル1a〜1fを組み合わせて重畳表示したときに、運転者の視点位置から見た見開き角が24度の部分を重ねて表示してもよい。これにより、この表示に基づいて、ステップS1408からステップS1401に戻り、設計テーブル15mを変更するか、表示画面上で各モデル1a〜1fを修正することにより、フロントピラーモデルの見開き角を24度から外して、最も目障りに感じるフロントピラーモデルを構築しないようにすることができる。従って、フロントピラーを目障りに感じない車両を効率的に企画することができる。
見開き角が24度の部分を表示する例を図19に示す。図19の斜線部分は、見開き角が24度のフロントピラーモデルを意味する。
また、上記のように、フロントピラーによる車室内の広さ感覚特性及び見開き角の知覚能力特性について実験解析したところ、フロントピラーの見開き角が20〜25度の範囲にあるときに、フロントピラーを目障りに感じることが分かった。
そこで、フロントピラーモデルの見開き角が20〜25度の範囲(「所定の範囲」に相当)にあるときに、その旨を報知したり、運転者の視点位置から見た見開き角が20〜25度の範囲の部分を表示したりしてもよい。これにより、この報知又は表示に基づき、フロントピラーモデルの見開き角を20〜25度の範囲から外して、最も目障りに感じるフロントピラーモデルを含む、目障りに感じるフロントピラーモデルを構築しないようにすることができる。従って、フロントピラーを目障りに感じない車両を効率的かつ確実に企画することができる。
上記の報告は、例えば、図18の警告メッセージを用いて視覚的に行ったり、聴覚的に行ったりする。見開き角が20〜25度の範囲の部分を表示する場合、例えば、見開き角が20〜25度の範囲にあるフロントピラーモデルを重ねて表示したり、見開き角が20〜25度の範囲の部分をべた塗りで表示したりする。
また、見開き角が24度に近いほど、上記の報知又は表示を強調して行ってもよい。これにより、フロントピラーモデルの目障り感の程度を簡単に知ることができ、フロントピラーを目障りに感じない車両をより一層効率的に企画することができる。
上記の報知を視覚的に強調して行う場合、見開き角が24度に近いほど、例えば、図18の警告メッセージを連続的に表示する(そのメッセージの表示時間を長くする)。また上記の報知を聴覚的に強調して行う場合、見開き角が24度に近いほど、例えば、その音量を大きくする。さらに上記の表示を強調して行う場合、見開き角が24度に近いほど、例えば、その表示色を段階的に濃い色にする。
ところで、図20に示すように、運転者のサイズ(体格)が相違すると、その視点位置も相違し、各運転者の視点位置から見た、同じフロントピラーの見開き角も相違する。
そこで、基準モデル1aが、サイズの相違する複数の運転者の視点位置を示す点データを含み、その各運転者の視点位置から見た、フロントピラーモデルの見開き角が24度又は20〜25度の範囲にあるときに、その旨を報知したり、その各運転者の視点位置から見た見開き角が24度又は20〜25度の範囲の部分を同時に表示したりしてもよい。これにより、この報知又は表示に基づき、その各運転者の視点位置から見た、フロントピラーモデルの見開き角を24度又は20〜25度の範囲から外して、各運転者が最も目障りに感じるフロントピラーモデルを含む、各運転者が目障りに感じるフロントピラーモデルを構築しないようにすることができる。従って、幅広い運転者がフロントピラーを目障りに感じない車両を効率的に企画することができる。
ところで、車両デザインや車両強度等の観点から、フロントピラーモデルの見開き角を24度又は20〜25度の範囲から変更することができない場合がある。
そこで、催促モジュール15kが、フロントピラーモデルの見開き角が24度又は20〜25度の範囲にある場合であって、報知モジュール15jにより上記の報知又は表示を行ったにも拘わらず、その見開き角が変更されないときには、そのフロントピラーモデルを変形して修正することを促す。これにより、この催促に基づき、ステップS1401に戻り、設計テーブル15mを変更するか、表示画面上で各モデル1a〜1fを修正することにより、フロントピラーモデルを変形して、たとえ目障りに感じても、総合的な広さ感を感じるフロントピラーモデルを構築するようにすることができる。従って、たとえフロントピラーを目障りに感じても、総合的な広さ感を感じる車両を企画することができる。
上記の催促は、例えば、視覚的に行ったり、聴覚的に行ったりする。視覚的な催促の例を図21に示す。図21は、フロントピラーモデルを変形することを促す催促メッセージを示す図である。この催告メッセージは、各モデル1a〜1fの重畳表示とともに表示される。また、聴覚的な報知では、例えば、図21の催促メッセージとほぼ同じ内容のメッセージが音声出力される。
上記では、フロントピラーモデルの見開き角が24度又は20〜25度の範囲にあるときに、その旨を報知したり、運転者の視点位置から見た見開き角が24度の部分又は20〜25度の範囲の部分を表示したりしているが、24度を含む範囲である限り、その範囲はこれに限定されない。例えば、その範囲を、フロントピラーを最も目障りに感じる見開き角24度と、その前後1度とを含む、23〜25度の範囲にしてもよく、フロントピラーを知覚し易く、目障りに感じ易い見開き角20〜24度の範囲、又は、上記の実験解析からフロントピラーを目障りに感じるという評価を得た21〜25度の範囲(図13(b)参照)にしてもよい。これにより、上記の報知又は表示に基づき、フロントピラーモデルの見開き角を24度を含む所定の範囲から外して、最も目障りに感じるフロントピラーモデルを構築しないようにすることができる。従って、フロントピラーを目障りに感じない車両を効率的に企画することができる。なおフロントピラーの最低見開き角は、レギュレーションによって17度と決定されている。
(シミュレーション表示処理)
次に、図8のステップS1414に示すシミュレーション表示処理について詳細に説明する。
<視認対象指定評価モード>
視認対象指定評価モードでは、シミュレーションの対象となる企画車両モデル1gを完成車両データベース2gから読み出し、ステップS1412で選択された走行シーンに基づいて、仮想空間データベース2hから仮想空間データと、それに対応する注視点データを読み出す。企画車両モデル1gにおいては、運転者の視点位置が定義されており、注視点データに基づいてその視点位置からの視線方向を決定し、その方向の視界画像を表示しつつ、評価者に注視を促すための丸や十字の画像を表示する。
即ち、シミュレーションモジュール15lが、企画した仮想車両である企画車両モデル1gを、予め仮想空間データベース2hに記憶された3次元仮想空間内の仮想道路で走行させ、その運転者の視界をディスプレイ17の画面上にシミュレーション表示し、このシミュレーション表示画面に例えば丸や十字の画像を重ねて表示する。この丸によって囲まれた部分やこの十字の交差付近に位置する部分が、仮想空間内の所定の視認対象である。視認対象は、運転者が視認すると推定されるものである。このように、視認性の評価を行う評価者に対して、ただ漫然と映像を見るのではなく、視認対象に注目することを促している。これにより、精度の高い視認性の評価を行うことができる。シミュレーション表示画面中においては、運転者の注視点がほぼ中央になるように表示する。
シミュレーション表示画面の例を図22〜図24に示す。図22は、企画車両モデル1gが仮想一般道路の交差点を右折する際のシミュレーション表示画面を示す図である。図23は、企画車両モデル1gが仮想山岳道路の右カーブを走行している際のシミュレーション表示画面を示す図である。図24は、企画車両モデル1gが仮想駐車場の駐車スペースに後ろ向きに駐車する際のシミュレーション表示画面を示す図である。
視認対象は、選択された走行シーンに基づいて決定される。例えば、企画車両モデル1gが仮想一般道路の交差点を右折する場面では、その交差点の前方右手の横断歩道に配列された複数の仮想柱状物pが視認対象として選ばれ(図22参照)、仮想山岳道路の右カーブを走行する場面では、その右カーブの車両進行側が視認対象として選ばれ(図23参照)、仮想駐車場の駐車スペースに後ろ向きに駐車する場面では、その駐車スペースの左隣りの駐車スペースに駐車した仮想車両の右前端部が視認対象として選ばれる(図24参照)。また、企画車両モデル1gが仮想一般道路の交差点を左折する場面では、その交差点の手前の左側縁部に配列された複数の仮想柱状物が視認対象として選ばれ、仮想高速道路を走行中に車線変更する場面では、その車線に配列された複数の仮想柱状物が視認対象として選ばれる。さらに、仮想駐車場の駐車スペースに後ろ向きに駐車する場面では、その駐車スペースの左隣りの駐車スペースの右側縁部に配列された複数の仮想柱状物が視認対象として選ばれてもよい。以上により、視認対象を走行シーンに即したものにすることができる。
シミュレーション表示画像に丸や十字の画像を重畳表示しているが、視認対象に注目することを促すことができる限り、シミュレーション表示画像に如何なる表示を行ってもよい。
ステップS1413で視認対象移動モードが選択されている場合には、その視認対象は仮想空間内で所定速度で移動する。これにより、移動する視認対象の視認性の評価をより高い精度で行うことができる。一方、ステップS1413で視認対象静止モードが選択されている場合には、その視認対象は仮想空間内で静止する。
視認対象を変形可能にしてもよい。例えば、図24のシミュレーション表示画像中においては、企画車両が駐車しようとする駐車スペースの左隣りの駐車スペースに駐車したセダン型の仮想車両を、ユーザの入力に基づき、ハッチバック型のものに変更することができる。これにより、様々な仮想車両の視認性の評価を高い精度で行うことができる。
企画車両モデル1gの運転者の視界を表すシミュレーション表示画像に丸や十字の画像を重ねて表示するのに加えて、例えばデータベースサーバ2に格納された実在車両モデルや仮想空間データや注視点データなどに基づいて、丸や十字の画像を表示しつつ、ステップS1412で選択された走行シーンにおける実在車両モデルの運転者の視界をシミュレーション表示するのが望ましい。実在車両モデルの視認対象の決め方は、企画車両モデル1gの視認対象の決め方と同様である。このように実在車両の運転者の視界をシミュレーション表示することにより、企画車両の運転者の視界を実在車両の運転者の視界と比較することができる。これにより、より精度の高い視認性の評価を行うことができる。また、企画車両の運転者の視界を表す映像と、実在車両の運転者の視界を表す映像とを、同時に並列表示したり、同時に重畳表示したりすることも可能である。
視認対象を走行シーンに応じて決めているが、これに限らない。例えば、少なくとも運転者の視線方向に基づいて運転者の視認範囲(例えば、運転者の有効視野や注視安定視野など)を決定し、仮想空間内の仮想物体のうちその視認範囲内に存在するものを視認対象と決定してもよい。視認範囲は、運転者の視認可能な範囲である。これにより、視認対象を運転者の視認範囲に即したものにすることができる。
図22〜図24のシミュレーション表示画像中においては、企画車両モデル1gのうちフロントピラー、ドアミラー、リアピラー、バックシートのヘッドレスト、バックウィンドウ、ドアのベルトラインといった視認性関係部品モデル1eの外形形状を、これ以外の各モデル1a〜1d,1fの外形形状よりも正確なものとして表示する。このように視認性関係部品モデル1eの立体形状が正しく表示されるのは、実在する視認性関係部品を3Dスキャンにより高い精度でスキャンして得られたスキャンデータに基づいて視認性関係部品ベースモデルを生成し、その視認性関係部品ベースモデルに基づいて視認性関係部品モデル1eを構築しているからである。これにより、精度の高い視認性の評価を行うことができる。
企画車両モデル1gの外形形状の例を図25及び図26に示す。図25は、企画車両モデル1gの外形形状を示す図である。図25から明らかなように、フロントピラー、ドアミラー、リアピラー、バックウィンドウ、ドアのベルトラインといった視認性関係部品モデル1eの外形形状は綿密であるが、インテリアモデル1dのインストルメントパネルなどの外形形状は粗くなっている。図26(a)は、ある視認性関係部品モデル1eの外形形状を示す拡大図であり、図26(b)は、外形モデル1bに含まれるある部品の外形形状を示す拡大図である。図26から明らかなように、視認性関係部品モデル1eの外形形状は滑らかであるが、外形モデル1bの部品の外形形状はごつごつしている。
なお、視認性関係部品モデル1eの外形形状のみ正確に表示するのは、実測値注視点評価モード及び評価者注視点モードでも同様である。また、上記のように、すべてのモデル1a〜1eの立体形状を高い精度で造形した場合、各モデル1a〜1fの立体形状が正確なものとして表示される。さらに、上記のように、実在車両の運転者の視界をシミュレーション表示する場合も、視認性関係部品の外形形状だけ正確に表示する。
<実測値注視点評価モード>
実測値注視点評価モードでは、企画車両モデル1gを完成車両データベース2gから読み出し、ステップS1412で選択された走行シーンに基づいて、仮想空間データベース2hから仮想空間データと、それに対応する注視点データを読み出す。企画車両モデル1gにおいては、運転者の視点位置が定義されており、注視点データに基づいてその視点位置からの視線方向を決定し、その方向の視界画像を表示しつつ、評価者に注視を促すための運転者の注視点(中心視)及び有効視野の画像を表示する。有効視野とは、運転者が頭を動かさなくても見える周辺視野である。
即ち、シミュレーションモジュール15lが、企画車両モデル1gを、予め仮想空間データベース2hに記憶された3次元仮想空間内の仮想道路で走行させ、その運転者の視界をディスプレイ17の画面上にシミュレーション表示し、このシミュレーション表示画像に運転者の注視点及び有効視野の画像を重ねて表示する。このように、視認性の評価を行う評価者に対して、ただ漫然と映像を見るのではなく、有効視野に注目することを促している。これにより、精度の高い視認性の評価を行うことができる。
シミュレーション表示画面の例を図27に示す。図27は、企画車両モデル1gが仮想山岳道路の右カーブを走行している際のシミュレーション表示画面を示す図である。
図28に示すように、有効視野は、運転者の視線方向、視距離、及び視野角に基づいて決定される。
ここでは、視距離は、運転者の視点位置から、企画車両モデル1gの車頭(前端)が所定時間(例えば、2秒)後に到達すると予測される位置までの距離である。これにより、視距離は、走行スピードが大きいほど長くなる。そして、有効視野は、運転者の視点位置から視線方向に視距離だけ離れた点に基づいて決定される。
視野角は、所定の基準視野角、運転者の年齢、走行シーン、及び走行スピードに基づいて設定される。視野角θは、θ0を基準視野角とすると、以下の式に基づいて決定される。
θ=θ0×k1×k2×k3
図29(a)に示すように、k1は、年齢が増すほど小さく設定される。これにより、視野角θは、年齢が進むほど小さくなる。
図29(b)に示すように、k2は、企画車両モデル1gが仮想駐車場の駐車スペースに駐車する場面のときは仮想高速道路を走行する場面のときよりも大きく設定される一方、仮想高速道路を走行する場面のときは仮想一般道路のうち市街地に存在するものを走行する場面のときよりも大きく設定される。これにより、視野角θは、駐車場における駐車シーンのときは高速道路の走行シーンのときよりも大きくなる一方、高速道路の走行シーンのときは市街地にある一般道路の走行シーンのときよりも大きくなる。
図29(c)に示すように、k3は、走行スピードが大きいほど小さく設定される。これにより、視野角θは、走行スピードが速いほど小さく設定なる。
以上により、視野角を年齢や走行シーンや走行スピードに即したものにすることができ、有効視野を年齢や走行シーンや走行スピードに即したものにすることができる。
このように視野角を、基準視野角、運転者の年齢、走行シーン、及び走行スピードに基づいて設定しているが、少なくとも、基準視野角と運転者の特性及び走行条件のうち少なくとも一方とに基づいて設定すればよい。
運転者の有効視野をその運転者の周辺視野と決めているが、これに限らない。例えば、図30に示すように、走行シーンに基づいて、その運転者の有効視野又は注視安定視野をその運転者の周辺視野と決めてもよい。注視安定視野とは、運転者が頭を少しだけ動かせば見える、有効視野よりも広い周辺視野である。具体的には、企画車両モデル1gが仮想一般道路のうち市街地に存在するものを走行する場面では、有効視野が周辺視野として選ばれ、仮想高速道路を走行する場面では、注視安定視野が周辺視野として選ばれる。これにより、周辺視野をその走行シーンに即したものにすることができる。
運転者の有効視野をその運転者の視認範囲と決めているが、少なくとも運転者の視線方向に基づいて決定される限り、如何なる範囲をその運転者の視認範囲と決めてもよい。
企画車両モデル1gの運転者の視界を表すシミュレーション表示画像にその運転者の注視点及び有効視野の画像を重畳表示するのに加えて、例えばデータベースサーバ2に格納された実在車両モデルや仮想空間データや注視点データなどに基づいて、ステップS1412で選択された走行シーンにおける実在車両モデルの運転者の注視点及び有効視野の画像を表示しつつ、その運転者の視界を表す映像を表示するのが望ましい。実在車両モデルの運転者の有効視野の決め方は、企画車両モデル1gの運転者の有効視野の決め方と同様である。このように実在車両の運転者の視界をシミュレーション表示することにより、企画車両の運転者の視界を実在車両の運転者の視界と比較することができる。これにより、より精度の高い視認性の評価を行うことができる。また、企画車両の運転者の視界を表す映像と、実在車両の運転者の視界を表す映像とを、同時に並列表示したり、同時に重畳表示したりすることも可能である。
<評価者注視点モード>
評価者注視点評価モードでは、企画車両モデル1gを完成車両データベース2gから読み出し、ステップS1412で選択された走行シーンに基づいて仮想空間データベース2hから仮想空間データを読み出す。企画車両モデル1gにおいては、運転者の視点位置が定義されており、その視点位置と視線方向検出装置7によって検出された検出データに基づいてその視点位置からの運転者の視線方向を決定し、その方向の視界画像を表示する。
即ち、シミュレーションモジュール15lが、企画車両モデル1gを、予め仮想空間データベース2hに記憶された3次元仮想空間内の仮想道路で走行させ、視線方向検出装置7からの検出データに基づいてその運転者の視界をプロジェクタ型表示装置6の画面上にシミュレーション表示する。
図31に示すように、プロジェクタ型表示装置6は、平面スクリーン61と、プロジェクタ62とを備えている。プロジェクタ62は、その走行シーンにおいて運転者の視点から見えるシミュレーション画像を平面スクリーン61上に投影する。そして、平面スクリーン61の前方の椅子に座る評価者rは、そのシミュレーション表示画面を見ることができる。
視線方向検出装置7は、評価者rの頭部に装着されたヘッドトラック71(図32参照)と、2つの位置検出カメラ72,72とを有している。ヘッドトラック71には、位置基準マーク71aと、評価者rが注視する位置を表す注視点データを検出する注視点検出センサ(図示せず)が取り付けられている。注視点データは、時間経過に伴う注視点の位置の変化を示すデータである。注視点データは、注視点の位置として、車両進行方向(又は画面中央)からの振れ角をパラメータとしてもっている。位置基準マーク71aの位置は、位置検出カメラ72,72によって検出される。
そして、評価者rが平面スクリーン61(シミュレーション表示画面)に対して真正面に向いた状態で位置検出カメラ72,72によって検出された位置基準マーク71aの位置に対して、所定の位置を評価者rの視点位置と決定し、その視点位置の真向かいに運転者の視点位置が来るようにシミュレーション表示画面をスクロールする。それから、評価者rの視点位置と注視点検出センサによって検出された注視点データに基づいてその視点位置からの評価者rの視線方向を決定し、その方向を運転者の視線方向と仮定し、その方向の視界画像を平面スクリーン61上に表示する。 シミュレーション表示画面の例を図32に示す。図32は、企画車両モデル1gの前進シーンにおける運転者の前方視界のシミュレーション表示画面を示す図である。なお、後退シーンにおいて、評価者rが平面スクリーン61に対して後ろ向きに座り、その状態で振り返れば、運転者の後方視界のシミュレーション画面が表示される。
評価者rの視点位置の真正面に運転者の視点位置が来るようにシミュレーション表示画面を移動させているが、これに限らない。例えば、評価者rが、その視点位置が運転者の視点位置と対向するように座ってもよい。また、位置基準マーク71aの位置と注視点データに基づいて評価者rの視線方向を決めているが、これに限らない。例えば、位置基準マーク71aの位置に基づいて評価者rの注視点を推定し、評価者rの視点位置とその注視点データに基づいて評価者rの視線方向を決定してもよい。さらに、運転者の視線方向を決める手段は、少なくとも評価者rの注視点データに基づいて決定する限り、如何なる方法であってもよい。
走行シーンとしては、一般道路の交差点の右左折シーンや、駐車場における駐車シーンや、高速道路における車線変更シーンや、高速道路の走行シーンが選択されるのが望ましい。これにより、視認性を評価すべき走行シーンにおける視認性の評価を高い精度で行うことができる。
視認対象指定評価モードと同様、例えば走行シーンに基づいて仮想空間内の視認対象を決定し、シミュレーション表示画面にその視認対象に注目することを促す表示を行ってもよい(図22〜図24参照)。これにより、視認性の評価を行う評価者rに対して、ただ漫然と映像を見るのではなく、視認対象に注目することを促すことができ、より精度の高い視認性の評価を行うことができる。
実測値注視点評価モードと同様、少なくとも運転者の視線方向に基づいて運転者の視認範囲(例えば、運転者の有効視野や注視安定視野など)を決定し、シミュレーション表示画像にその視認範囲の画像を重ねて表示してもよい(図27参照)。これにより、視認性の評価を行う評価者rに対して、ただ漫然と映像を見るのではなく、視認範囲に注目することを促すことができ、より精度の高い視認性の評価を行うことができる。
企画車両モデル1gの運転者の視界をシミュレーション表示するのに加えて、ステップS1412で選択された走行シーンにおける実在車両モデルの運転者の視界をシミュレーション表示するのが望ましい。このように実在車両の運転者の視界をシミュレーション表示することにより、企画車両の運転者の視界を実在車両の運転者の視界と比較することができる。これにより、より精度の高い視認性の評価を行うことができる。
以上に説明したようなシミュレーション表示において視認性に問題があれば、視認性関係部品の太さや構造などを変更して視認性を改善する。
(視認性影響度算出処理)
次に、図8のステップS1414に示す視認性影響度算出処理について詳細に説明する。
<視認対象指定評価モード>
視認対象指定評価モードでは、シミュレーションモジュール15lが、例えばシミュレーション表示画面、又はデータベースサーバ2に格納された企画車両モデル1gや仮想空間データなどに基づいて、ステップS1412で選択された走行シーンにおいて企画車両モデル1gの視認性関係部品モデル1eが仮想空間内の所定の視認対象の視認性に与える影響度を算出する。具体的には、その走行シーンにおいてその視認性関係部品モデル1eがその視認対象の視認を妨害する妨害時間をその影響度として算出する。このように企画車両の視認性関係部品と仮想空間内の視認対象との干渉時間を算出することにより、より明確な指標として、視認性の評価を行うことができる。
例えば、企画車両モデル1gが仮想一般道路の交差点を右折するシーンでは、フロントピラーが、その交差点の前方右手の横断歩道に配列された複数の仮想柱状物pの視認を妨げる時間が求められ(図22参照)、仮想山岳道路の右カーブを走行するシーンでは、そのフロントピラーが、その右カーブの車両進行側の視認を妨げる時間が求められ(図23参照)、仮想駐車場の駐車スペースに後ろ向きに駐車するシーンでは、そのリアピラーが、その駐車スペースの左隣りの駐車スペースに駐車した仮想車両の右前端部の視認を妨げる時間が求められる(図24参照)。また、企画車両モデル1gが仮想一般道路の交差点を左折するシーンでは、そのフロントピラーが、その交差点の手前の左側縁部に配列された複数の仮想柱状物の視認を妨げる時間が求められ、仮想高速道路を走行中に車線変更するシーンでは、そのフロントピラーが、その車線に配列された複数の仮想柱状物の視認を妨げる時間が求められる。
企画車両モデル1gの視認性関係部品モデル1eの妨害時間を算出するのに加えて、例えばシミュレーション表示画面、又はデータベースサーバ2に格納された実在車両モデルや仮想空間データなどに基づいて、選択された走行シーンにおいて実在車両モデルの視認性関係部品モデルが仮想空間内の所定の視認対象の視認を妨害する妨害時間を算出するのが望ましい。このように実在車両の視認性関係部品と仮想空間内の視認対象との干渉時間を算出することにより、企画車両の視認性関係部品の干渉時間を実在車両の視認性関係部品の干渉時間と比較することができる。これにより、より精度の高い視認性の評価を行うことができる。
視認性関係部品モデル1eの妨害時間を算出しているが、これに限らない。例えば、視認性関係部品モデル1eの妨害回数を算出してもよい。
複数の視認性関係部品モデル1eの妨害時間をそれぞれ算出するのが望ましい。例えば、仮想駐車場の駐車スペースに後ろ向きに駐車する場面では、そのリアピラー、ウィンドウのディビィジョン、バックシートのヘッドレスト、及びセンターピラーが、その駐車スペースの左隣りの駐車スペースに駐車した仮想車両の右前端部に重なる時間がそれぞれ求められるのが望ましい(図24参照)。このように各視認性関係部品と仮想空間内の視認対象との干渉時間を算出することにより、より精度の高い視認性の評価を行うことができる。
そして、算出結果をディスプレイ17の画面上に表示する。この算出結果表示画面の例を図33及び図34に示す。図33は、企画車両モデル1gが仮想一般道路の交差点を右折する際にそのフロントピラー、及びドアミラーがその交差点の前方右手の横断歩道に配列された4つの仮想柱状物と干渉する干渉時間を表示する表示画面を示す図であり、(a)は、フロントピラーを変形・修正する前における干渉時間を表示する表示画面を示す図であり、(b)は、フロントピラーを変形・修正した後における干渉時間を表示する表示画面を示す図である。図33は、縦軸を経過時間としており、斜線部分の範囲が、フロントピラー又はドアミラーの各仮想柱状物との干渉時間を表している。図33に示すように、フロントピラーの変形・修正後、フロントピラーの仮想柱状物Bとの干渉時間が短くなっている。
図34は、2つの企画車両モデル1g及び1つの実在車両モデルがそれぞれ仮想駐車場の駐車スペースに後ろ向きに駐車する際にそれらのリアピラー、ウィンドウのディビィジョン、バックシートのヘッドレスト、及びセンターピラーがその駐車スペースの左隣りの駐車スペースの右側縁部に配列された複数の仮想柱状物と干渉する干渉時間を表示する表示画面を示す図である。図34は、横軸を経過時間としている。図34に示すように、各車両のリアピラー、ディビィジョン、バックシートのヘッドレスト、及びセンターピラーは、その順に仮想柱状物と干渉し、「企画車両2」では、リアピラーが仮想柱状物と干渉しない。
このように算出結果を表示するが、これに限らない。例えば、縦軸を干渉時間とする棒グラフを表示したり、干渉時間をそのまま数値として表示してもよい。
<実測値注視点評価モード>
実測値注視点評価モードでは、シミュレーションモジュール15lが、例えばシミュレーション表示画面、又はデータベースサーバ2に格納された企画車両モデル1gや仮想空間データや注視点データなどに基づいて、ステップS1412で選択された走行シーンにおいて企画車両モデル1gの視認性関係部品モデル1eが車外の視認性に与える影響度を算出する。具体的には、その走行シーンにおいてその視認性関係部品モデル1eがその運転者の有効視野を遮る遮断時間をその影響度として算出する。このように企画車両の視認性関係部品と運転者の有効視野との干渉時間を算出することにより、より明確な指標として、視認性の評価を行うことができる。
例えば、企画車両モデル1gが仮想山岳道路の右カーブを走行するシーンでは、そのフロントピラーが運転者の有効視野と干渉する時間が求められる(図27参照)。この干渉とは、フロントピラーが、運転者の有効視野のうち所定割合(例えば、7割)以上の部分を遮ることをいう。
企画車両モデル1gの視認性関係部品モデル1eの遮断時間を算出するのに加えて、例えばシミュレーション表示画像、又はデータベースサーバ2に格納された実在車両モデルや仮想空間データや注視点データなどに基づいて、ステップS1412で選択された走行シーンにおいて実在車両モデルの視認性関係部品モデルが実在車両モデルの運転者の有効視野を遮る遮断時間を算出するのが望ましい。このように実在車両の視認性関係部品と運転者の有効視野との干渉時間を算出することにより、企画車両の視認性関係部品の干渉時間を実在車両の視認性関係部品の干渉時間と比較することができる。これにより、より精度の高い視認性の評価を行うことができる。
そして、算出結果をディスプレイ17の画面上に表示する。この算出結果表示画面の例を図35に示す。図35は、1つの企画車両モデル1g及び1つの実在車両モデルがそれぞれ仮想山岳道路の右カーブを走行している際にそれらのフロントピラーがその運転者の有効視野に重なる時間を棒グラフ状に表示する表示画面を示す図である。図35は、縦軸を干渉時間としている。
このように算出結果を棒グラフ状に表示しているが、これに限らない。例えば、干渉時間をそのまま数値として表示してもよい。
<評価者注視点評価モード>
評価者注視点評価モードでは、ステップS1412で選択された走行シーンにおいて企画車両モデル1gの視認性関係部品モデル1eが車外の視認性に与える影響度を算出する。例えば、視認対象指定評価モードや実測値注視点評価モードと同様、視認対象や有効視野との干渉時間を算出する。
以上に説明したような視認性影響度算出において視認性に問題があれば、視認性関係部品の太さや構造などを変更して視認性を改善する。
(評価システム)
以上のように、図8に示すフローチャートの処理によって生成されたシミュレーション画像15oは、例えば、図36に示す評価システムにおいて表示され、複数の評価者が企画車両の視認性を評価するために用いられる。
図36に示す評価システムでは、ネットワーク接続された複数の評価用端末1501にそれぞれシミュレーション画像15oを表示し、各端末1501で入力されたマークやコメントやコメントの対象となる静止画像などをオペレータ用の端末1502に集約する。
以上のように、企画車両の3次元モデルを構築し、仮想的に仮想道路上を移動させて、企画車両モデル1gの運転者の視点から見えた映像をシミュレーション表示したり、その企画車両モデル1gの視認性関係部品モデル1eと仮想空間内の視認対象又はその運転者の視認範囲との干渉時間を算出したりすれば、企画者は、試作車を作成することなく、運転者の視認性を視覚的に評価することができる。これにより、車両の企画立案に必要な時間及びコストを、大幅に削減することができる。
(その他の実施形態)
本発明は、システムに対し、前述した実施形態の機能を実現するプログラムを、直接又は遠隔から供給することによっても達成される。プログラムを直接供給するための記録媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD−ROM,DVD−R)などがある。プログラムを遠隔から供給する方法としては、クライアントコンピュータのブラウザを用いてウェブサーバにアクセスし、本発明に係るプログラム又はその圧縮ファイルを、クライアントコンピュータに内蔵されたハードディスク等の記録媒体にダウンロードする方法がある。このとき、本発明に係るプログラムを構成する複数のファイルを、複数のサーバからダウンロードした後、クライアントコンピュータ内で結合する場合もある。このような場合には、これら各ファイル、各サーバ、及びクライアントコンピュータに最終的に格納されたプログラムも、本発明を実施したものとなる。
また、各視認性評価モードでは、シミュレーション表示及び視認性影響度算出の両方を行っているが、そのうち少なくともシミュレーション表示を行えばよい。
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。