JP6008584B2 - マットの製造方法 - Google Patents
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Description
クリーニングには、一般的に業務用洗濯機が利用される。この業務用洗濯機による洗濯に良好に耐え得るレンタル用タイルカーペットについて、本願の出願人らは特許文献1に係る出願を行っている。
特許文献1に記載されたタイルカーペットは、パイル糸が植毛された基布に対するバッキング材を特定することで、洗濯による収縮をごく僅かにしたものである。
セパレートマットは、マットのみをマットベースから取り外しクリーニングできるため、特に大型のマットの場合に、クリーニングのための取り扱いが大変容易になる。
例えば、面ファスナーのフック側(以下、A側とも称する)をマットベースの上面に備え、ループ側(以下、B側とも称する)をマットのパイルが設けられた面とは反対側の面に設ける。
このようなセパレートマットの内の、靴拭き用マットの例が特許文献2に記載されている。
この靴拭きマットにおいて、面ファスナーは、組み合わされた際のマットとマットベースとの対向面に、互いに対応する複数の組として部分的に取り付けられている。
それぞれの面ファスナーは、例えば、マットの四隅に取り付けられる(特許文献2の第1図参照)。また、マットにおいて糸条による縫製で取り付けられる(特許文献2の第3図参照)。
具体的には、マットの基布の収縮と面ファスナーの基布の収縮との程度の違いから皺や波打ちが生じて実用上支障が出ること、面ファスナーを固定するための縫製の糸条が浮き出して外観品位が低下すること、などである。
このような背景から、レンタル用マットは、マットとマットベースとが着脱自在であり、かつマットが繰り返しのクリーニングに良好に耐えて長期使用が可能であることが望まれている。
1) 面ファスナを有するマットベースの前記面ファスナに離合可能な係止層を有し、前記係止層と前記面ファスナとの離合によって前記マットベースに着脱自在とされたマットを製造するための、マットの製造方法であって、
前記マットは、
パイル糸を植毛した基布の裏面にラテックスを塗布し、前記ラテックスを、予め調節された所定の条件で加熱硬化させて原反を形成する原反形成ステップと、
前記原反と、ゴムシートと、前記係止層となる生地と、を、前記パイル糸を前記ゴムシートの反対側としてこの順で重ね熱圧着により一体化する一体化ステップと、
を含み、
前記所定の条件を、
予めクリーニングに伴う前記原反の収縮度合いと前記生地の収縮度合いとを把握する収縮度合い把握ステップと、
温度、圧力、又は時間を、前記原反の収縮度合いと前記生地の収縮度合いとを一致させる方向に調節する条件調節ステップと、
を行って設定することを特徴とするマットの製造方法である。
2) 面ファスナを有するマットベースの前記面ファスナに離合可能な係止層を有し、前記係止層と前記面ファスナとの離合によって前記マットベースに着脱自在とされたマットを製造するための、マットの製造方法であって、
前記マットは、
任意数の単糸を寄り合わせて形成したパイル糸を予め調節された第1の条件で熱処理するパイル糸熱処理ステップと、
前記パイル糸熱処理ステップを経た前記パイル糸を植毛した基布の裏面にラテックスを塗布し、前記ラテックスを、予め調節された第2の条件で加熱硬化させて原反を形成する原反形成ステップと、
前記原反と、ゴムシートと、前記係止層となる生地と、を、前記パイル糸を前記ゴムシートの反対側としてこの順で重ね熱圧着により一体化する一体化ステップと、
を含み、
前記第1の条件及び前記第2の条件を、
予めクリーニングに伴う前記原反の収縮度合いと前記生地の収縮度合いとを把握する収縮度合い把握ステップと、
温度、圧力、又は時間を、前記原反の収縮度合いと前記生地の収縮度合いとを一致させる方向に調節する条件調節ステップと、
を行って設定することを特徴とするマットの製造方法である。
3) 前記一体化ステップは、前記生地を、前記原反における前記パイル糸が植設された側とは反対側の概ね全面に対応させて一体化することを特徴とする1)又は2)に記載のマットの製造方法である。
4) 前記生地をトリコット生地にしたことを特徴とする1)〜3)のいずれか一つに記載のマットの製造方法である。
図2(a),(b)は、セパレートマットSのA1−A1位置での断面図であり、図2(a)はマットMTをマットベースMBに取り付ける直前の状態を示し、図2(b)は取り付けた状態を示している。
図3は、マットMTの模式的な部分断面図である。
図4は、マットMTの製造に際して行われる収縮調節条件Jの設定を説明するためのフロー図である。
マットベースMBは、例えばNBR(ニトリル−ブタジエンゴム)で形成され、枠状の突縁部1と、突縁部1で囲まれて突縁部1よりも凹んだ凹部2と、を有して形成されている。
突縁部1の外形形状及び凹部2の周縁形状(突縁部1の内縁形状)は、例えば矩形に形成されている。これらの形状は矩形に限らず、円形、楕円形、異形など種々の形状であってもよい。
凹部2には、その周縁近傍の所定範囲に所定形状となるように、複数の面ファスナー3が両面テープ4により貼付されている。所定形状の例は、図1に示されるような連続した枠状であり、この貼付形状は、取り付けたマットMTの表面が波のようにうねる所謂波打ち現象の発生防止に有効である。面ファスナー3は、フック側(A側)である。
面ファスナー3は、両面テープ4により貼付されていることにより、容易に交換可能である。何らかの理由で面ファスナー3の係止性能が劣化した際には、本来の性能を発揮する面ファスナーと交換することで、マットベースMBを継続して使用することができる。従って、マットベースMBの長期使用が可能となる。
パイル糸11が植設された基布12及びラテックス層13を原反14と称する。
係止層16は、原反14に対し部分的ではなくその全面に対応し、ゴム層15を介して原反14と一体的に設けられている。
例えば、パイル糸として、ポリエステル繊維、アクリル繊維等を用い、パイル糸が植設される基布としてポリエステル繊維等を用いる。パイル糸は単糸でも撚り合わせたものでもよい。
また,生地素材についても限定されないが、耐久性の観点からポリエステル素材のものが良好である。
以下、係止層16として、ポリエステル製の起毛トリコットを用いた場合を説明する。
この係止層16は、起毛側(B側として機能する側)が外表面側(図3の下方側)となる向きで原反14と一体化されている。
従って、マットMTをマットベースMBから引き剥がす際に面ファスナー3がマットベースMBから剥がれることはない。面ファスナー3と係止層16との係合力は、人手により無理なく分離できる程度とされている。
この工程前に、基布12,ゴム層15となる架橋前ゴムシート,及び係止層16となる生地Kは、製品として得るマットMTの外形よりも大きい形状に予めカットしておく。
ポリエステルの単糸を任意数撚り合わせてパイル糸11を形成する。形成したパイル糸11に対して、その撚り合わせが戻らないように、また、基布12への植設後の寸法を安定させるために、熱圧処理を所定の温度tp1及び時間tm1で施す。例えば、tp1=200℃、tm1=1分である。
このパイル糸11への熱圧処理における所定の温度tp1と所定の時間tm1とは、それぞれ後述する係止層16に応じて調整する収縮調節条件Jに含めて管理する。
ポリエステル繊維からなる不織布を基布12とし、ポリエステル繊維からなる熱処理後のパイル糸11を周知条件の内の任意の植毛条件で植毛する。そして、パイル糸11と基布12との強固な固着のために、必要最小限のラテックスを塗布した後、熱圧処理を所定の温度tp2及び時間tm2で施しラテックスを硬化させる。例えば、tp2=180℃、tm2=4分である。このラテックス硬化処理を施してラテックス層13を備えた原反14を得る。ラテックス層13は、基布12の全面に塗布されてなくてもよく、例えば格子状、平行線状、等のパターンで塗布されていてもよい。すなわち、基布12の裏面が部分的に露出していてもよい。
この原反14への熱圧処理における所定の温度tp2と所定の時間tm2とは、それぞれ後述する係止層16に応じて調整する収縮調節条件Jに含めて管理する。
一般的な熱圧着装置の受け部材と押圧部材間に、係止層16となる生地K(例えばトリコット),ゴム層15となる架橋前のゴムシート,及び原反14をこの順で重ねて配置し、所定の温度tp3,圧力pr3,及び時間tm3で熱圧着し架橋により一体化する。
その際、係止層16となる生地Kは、ループとなるB側をゴムシートの反対側とし、原反14は、植設されたパイル糸11側をゴムシートの反対側とする。
生地Kの例としては、ポリエステル100%製の12本撚りで110dt(デシテックス)と33dtとの糸により編まれ、例えば生地目付が450g/m2のものを使用できる。
この熱圧着により、ゴム層15は、係止層16の編み目の凹凸と原反14のラテックス層13及び基布12の凹凸に食い込んで原反14と係止層16とが良好に一体化される。
この一体化の後、周縁を所定のサイズにカットして商品としてのマットMTが形成される。
マットMTは、係止層16と原反14との収縮度合いが、収縮調節条件Jを最適に設定することでほぼ一致している、あるいは実用上支障が生じない程度内に収まるようになっている。
例えば、ある条件のクリーニングを同じ回数実施したときの、生地Kの寸法収縮率がK%、原反14の寸法収縮率がM%であった場合、少なくとも原反14に対して一体化前に付与する熱圧処理の条件を調節して、両寸法収縮率が概ね同じ、すなわちK≒M となるようにする。
これにより、クリーニングで収縮が生じても、マットMT全体が表裏含めて同じ程度で一様に縮まり、皺及び波打ちが極めて生じ難くなっている。
マットMTの製造において、係止層16となる生地Kを市販品から選定したら(Step1)、その生地Kの洗濯による収縮度合いSDKを予め測定して把握する(Step2)。ここで、収縮度合いは、例えば収縮寸法の絶対値又は比率で把握するとよい。
その生地Kの収縮度合いSDKと、別途予め把握済みの原反14のクリーニングによる収縮度合いSDGとを比較する(Step3)。
この比較に基づき、生地Kと同じ度合いで原反14がクリーニングにより収縮するように、係止層16と一体化する前の原反14に対する熱圧処理等の条件である収縮調節条件Jを設定する。
例えば、生地Kの収縮度合いSDKが、ある収縮調節条件で前処理した原反14の収縮度合いSDGよりも大きい場合(Step4のYes)、収縮調節条件Jにおける温度,圧力,又は時間を増加させて収縮が大きくなる方向に仮設定する(Step5)。
この仮設定で再度Step4の比較へ戻る。
(Step4のNo)の場合、収縮度合いSDKと収縮度合いSDGとがほぼ同じであるか否かを判定する(Step6)。
(Step6のNo)の場合、収縮調節条件Jにおける温度,圧力,又は時間を減少させて原反14の収縮が小さくなる方向に仮設定する(Step7)。
この仮設定で再度Step4の比較へ戻る。
ほぼ同じであれば(Step6のYes)、収縮調節条件を設定(決定)する(Step8)。
すなわち、係止層16となる生地Kの収縮度合いSDKと、原反14の収縮度合いSDGの概ねの合致は、<パイル糸11の熱処理>及び<原反14の作成>において調節可能な収縮調節条件Jにおけるのいずれか一つあるいは組み合わせを調節することで行うことができる。
例えば、温度若しくは圧力を高く、又は時間を長くすると、クリーニングによる収縮が生じ難くなる。逆に、温度若しくは圧力を低く、又は時間を短くすると、クリーニングによる収縮が生じ易くなる。
係止層16の生地Kの種類が異なる、あるいは原反の種類が異なるマットを製造する場合は、収縮調節条件Jをその異なる生地の収縮度合いSDKあるいは異なる原反の収縮度合いSDGに応じて調節すればよい。
従って、マットMTを繰り返しクリーニングしても、糸条はもちろん縫製に起因する浮き出しが生じることはないので、マットMT及びセパレートマットSは長期間使用することができる。
また、マットMTは、クリーニングに伴う、原反14の収縮度合いSDKと係止層16の収縮度合いSDGとがほぼ同じになっているので、繰り返しクリーニングしても皺及び波打ちが極めて生じ難い。従って、マットMT及びセパレートマットSは、長期間使用することができる。
例えば、A側のフック状部が形成された、床に敷かれたカーペット状部材や壁面等に設けられた貼付台などの被貼着部材に着脱自在とされるものでもよい。
マットMT及びセパレートマットSはレンタル用に限定されない。
係止層16となる生地Kは、汎用の市販品に限定されず、カスタム品であってももちろんよい。また、生地Kに対して前処理(熱処理)して収縮度合いSDKを調節してもよい。
実施例では、マットベースMB側にA側(フック側)の面ファスナーを、マットMT側にB側(ループ側)の面ファスナーに相当する係止層16を配置した例を説明したが、マットベースMB側がB側で、マット側がA側であってもよい。
係止層16は、原反14の裏面側を一枚の生地で覆うものに限らない。複数枚で原反14の裏面側のほぼ全面を覆うように設けられていてもよい。この場合、隣接する生地間に生じるある程度の隙間は許容され得る。また、一枚の生地であっても、細い切れ込みや僅かな開口は許容される。すなわち、原反14の裏面側の概ね全面を覆うものであればよい。
また、係止層16と原反14とを一体化する際に、一体化後に製品サイズとするためにカットする周縁部分には、係止層16を設けてなくてもよい。カットした後の製品となる範囲に係止層16が設けられていれば、係止層16により原反14の一方の面のほぼ全面が覆われているとされる。
2 凹部
3 面ファスナー
4 両面テープ
11 パイル糸、 11G パイル糸群
12 基布
13 ラテックス層
14 原反
15 ゴム層
16 係止層
J 収縮調節条件
MB マットベース、 MT マット
S セパレートマット
SDK,SDG 収縮度合い
tm1〜tm3 時間、 tp1〜tp3 温度、 pr3 圧力
Claims (4)
- 面ファスナを有するマットベースの前記面ファスナに離合可能な係止層を有し、前記係止層と前記面ファスナとの離合によって前記マットベースに着脱自在とされたマットを製造するための、マットの製造方法であって、
前記マットは、
パイル糸を植毛した基布の裏面にラテックスを塗布し、前記ラテックスを、予め調節された所定の条件で加熱硬化させて原反を形成する原反形成ステップと、
前記原反と、ゴムシートと、前記係止層となる生地と、を、前記パイル糸を前記ゴムシートの反対側としてこの順で重ね熱圧着により一体化する一体化ステップと、
を含み、
前記所定の条件を、
予めクリーニングに伴う前記原反の収縮度合いと前記生地の収縮度合いとを把握する収縮度合い把握ステップと、
温度、圧力、又は時間を、前記原反の収縮度合いと前記生地の収縮度合いとを一致させる方向に調節する条件調節ステップと、
を行って設定することを特徴とするマットの製造方法。 - 面ファスナを有するマットベースの前記面ファスナに離合可能な係止層を有し、前記係止層と前記面ファスナとの離合によって前記マットベースに着脱自在とされたマットを製造するための、マットの製造方法であって、
前記マットは、
任意数の単糸を寄り合わせて形成したパイル糸を予め調節された第1の条件で熱処理するパイル糸熱処理ステップと、
前記パイル糸熱処理ステップを経た前記パイル糸を植毛した基布の裏面にラテックスを塗布し、前記ラテックスを、予め調節された第2の条件で加熱硬化させて原反を形成する原反形成ステップと、
前記原反と、ゴムシートと、前記係止層となる生地と、を、前記パイル糸を前記ゴムシートの反対側としてこの順で重ね熱圧着により一体化する一体化ステップと、
を含み、
前記第1の条件及び前記第2の条件を、
予めクリーニングに伴う前記原反の収縮度合いと前記生地の収縮度合いとを把握する収縮度合い把握ステップと、
温度、圧力、又は時間を、前記原反の収縮度合いと前記生地の収縮度合いとを一致させる方向に調節する条件調節ステップと、
を行って設定することを特徴とするマットの製造方法。 - 前記一体化ステップは、前記生地を、前記原反における前記パイル糸が植設された側とは反対側の概ね全面に対応させて一体化することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のマットの製造方法。
- 前記生地をトリコット生地にしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のマットの製造方法。
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