JP6007461B2 - 空気調和機、及びコンプレッサ制御装置 - Google Patents
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Description
この点、従来の空気調和機は、基本的には、どのような環境状態や負荷状態でもコンプレッサが安定的に起動できるように、モータの起動電流や最大回転速度を高めに設定していた。しかし、従来の空気調和機は、あらかじめ設定した起動電流が多かったり、最大回転速度が高すぎたりすると、コンプレッサの起動時に音や振動が発生してしまう。したがって、従来の空気調和機は、ある程度過酷な環境状態や負荷状態でも起動でき、かつ、コンプレッサの起動時の音や振動も抑えられるように、モータの起動電流、最大回転速度、及び回転速度加速レートを試験上から決定していた。
本発明に係る空気調和機は、コンプレッサ制御装置(制御部)と、インバータ(三相インバータ)と、モータとを備え、コンプレッサ制御装置が起動時のモータの位置決めの後に、V/f制御を行い、さらにベクトル制御を行うように構成されている。また、空気調和機は、室外機のコンプレッサを起動、又は再起動する場合に、コンプレッサの各種状態(冷媒温度及び再起動時間間隔)から該コンプレッサの負荷状態を推定する。そして、コンプレッサ制御装置は、推定したコンプレッサの負荷状態に応じて最適な起動制御量(起動電流、最大回転速度、回転速度加速レート、及び最大回転速度保持時間の何れか一つ又はこれらの複数)を設定してコンプレッサの制御を行う。
〈第1実施形態に係る空気調和機の構成〉
図1は、本発明の第1実施形態に係る空気調和機の回路構成図であり、相電流検出センサを備え、起動時にV/f制御を行う場合を示している。
図1に示すように、空気調和機1aは、DC電源装置3、IPM(Intelligent Power Module:高機能パワーモジュール)5、モータ7、シャント抵抗13a、CTセンサ15v、15w、誘起電圧検出部16、及びコンプレッサ制御装置(制御部)としてのマイコン17を備え、モータ7がコンプレッサ9を駆動させるように構成されている。なお、モータ7とコンプレッサ9とは、モータ7の冷却のため構造的に一体化されていることが多い。
IPM5は、PWM(Pulse Width Modulation)駆動を行う三相インバータ(図示せず)を備えて構成されている。また、シャント抵抗13aは、過電流検出用の相電流検出信号をIPM5の過電流検出回路(図示せず)に送信する。さらに、CTセンサ15v、15wは、モータ7に流れるV相、W相の相電流を検出する相電流検出センサである。なお、相電流の和はゼロであるので、U相の相電流は演算可能である。また、誘起電圧検出部16は、モータ7の回転子の回転位置を検出する回転子位置検出部として機能し、所定の位相角で相間の誘起電圧を検出する。
マイコン17は、CTセンサ15v、15wが検出したモータ7のV相、W相の相電流情報を入力する電流検出部17a1と、モータ7の起動電流指令と電流検出部17a1からのV相、W相の相電流情報とを入力する電流制御部17bと、最大回転速度指令とV/f制御の回転速度加速レート指令とを入力し、電流制御部17bからの電流制御情報に基づいて電圧指令演算を行う電圧指令演算部17cと、電圧指令演算部17cからの電圧指令に基づいて生成されたPWM信号によってIPM5の三相インバータをPWM制御するPWM制御部17dと、起動制御量演算部18と、負荷状態判定部10と、冷媒温度推定部12と、タイマ11とを備えて構成されている。電圧指令演算部17cは、位置決め後の起動時にモータ7の回転子の位置決めを行う位置決め制御部19aと、起動時にV/f制御を行うV/f制御部19bと、通常時のモータ7の回転速度が目標回転速度の設定値になるように帰還制御するベクトル制御部19cとを備える。
また、誘起電圧検出部16は、モータ7に発生する誘起電圧に基づいて回転子位置(位相)を正確に検出する。さらに、PWM制御部17dは、誘起電圧検出部16が誘起電圧によってモータ7の回転子位置を検出するので、モータ回転速度が演算され、位置センサレスでモータ7をベクトル制御することができる。
本実施形態に係る空気調和機1aは、CTセンサ15v、15wが検出したV相、W相の相電流、及び誘起電圧検出部16が検出した回転子位置に基づいて、IPM5に内蔵された三相インバータをPWM制御してモータ7を駆動制御するように構成されている。このとき、起動制御量演算部18は、起動直前のコンプレッサ9の各種状態(冷媒温度、再起動時間間隔)から空気調和機10の室外機に配設されているコンプレッサ9の負荷状態を推定する。そして、電圧指令演算部17cは、推定した負荷状態からコンプレッサ9を起動するのに最適な起動制御量を求めてモータ7の制御に反映させる。このとき、起動直前のコンプレッサ9の各種状態である冷媒温度及び再起動時間間隔は、以下に示すような条件から判断する。
コンプレッサ9の冷媒温度は、コンプレッサ9の内部に配設されているモータ7の巻線に直流電圧を印加し、冷媒温度推定部12がその巻線に流れる直流電流の値からモータ7の巻線抵抗値を算出することにより求められる。そして、冷媒温度推定部12は、算出された巻線抵抗値を用いて、巻線線材の温度係数から巻線温度(つまり、巻線周囲の冷媒温度)を推定する。
Ta=〔(Ra−Rb)/Rb〕×(234.5+Tb)+Tb (1)
但し、Taは求める冷媒温度(℃)であり、Tbは基準冷媒温度(℃)であり、Raは求める冷媒温度における巻線抵抗値(Ω)であり、Rbは基準冷媒温度における巻線抵抗値(Ω)であり、
1/(234.5+Tb)は基準冷媒温度Tb(℃)における銅の温度係数(Ω/℃)である。
(2)負荷状態判定部10は、冷媒温度が通常状態(α≦T≦β)のときは、空気調和機1aを停止した後の再起動、あるいは真冬以外の季節の温度環境下における再起動であって、コンプレッサ9の起動時の負荷は比較的軽いと判断する。
(3)負荷状態判定部10は、冷媒温度が高温状態(β<T)のときは、高温環境下における再起動のような高負荷状態であって、コンプレッサ9の起動時の負荷は重いと判断する。
タイマ11は、コンプレッサ9の再起動時間間隔を測定するものであり、図2示すタイマ11が、コンプレッサ9の停止から次の起動(再起動)までの時間をカウントする。この再起動時間間隔は、次の2種類の負荷状態を想定することができる。なお、tは再起動時間間隔であり、γは所定の時間とする。
(1)負荷状態判定部10は、コンプレッサ9の再起動時間間隔が通常状態(t≦γ)のときは、コンプレッサ9の再起動時間間隔が一定時間以下の場合であって、単なる通常の再起動で負荷は比較的軽いと判断する。
(2)負荷状態判定部10は、コンプレッサ9の再起動時間間隔が長い寝込み状態(t>γ)のときは、コンプレッサ9の再起動時間間隔が一定時間以上であって、通常より起動時の負荷が重いと判断する。
次に、起動制御量演算部18は、前記した負荷状態判定部10によるコンプレッサ9の負荷状態の判断結果を用いて、コンプレッサ9の起動設定内容(すなわち、起動制御量の設定内容)を決定する。このとき、コンプレッサ9の負荷状態の判断結果から可変させる起動設定内容(起動制御量の設定内容)は次の4種類とする。すなわち、起動設定内容は、
(1)起動電流、(2)V/f制御の最大回転速度、(3)V/f制御の回転速度加速レート、(4)V/f制御の最大回転速度保持時間、
の4種類である。
a.起動制御量演算部18は、冷媒温度が通常状態(α≦T≦β)のとき、通常の起動制御量の設定を行う。
b.起動制御量演算部18は、冷媒温度が低温状態(T<α)、又は高温状態(β<T)のとき、次のような4つの起動制御量の設定を行う。すなわち、起動制御量演算部18は、
1.モータ7の起動電流を増加させる。
2.V/f制御の最大回転速度を増加させる。
3.V/f制御の回転速度加速レートを減少させる。
4.V/f制御の最大回転速度保持時間を増加させる。
a.起動制御量演算部18は、再起動時間間隔が通常状態(t≦γ)のとき、通常の起動制御量を設定する。
b.起動制御量演算部18は、再起動時間間隔が長い寝込み状態(t>γ)のとき、次のような4つの起動制御量を設定する。すなわち、起動制御量演算部18は、
1.モータ7の起動電流を増加させる。
2.V/f制御の最大回転速度を増加させる。
3.V/f制御の回転速度加速レートを減少させる。
4.V/f制御の最大回転速度保持時間を増加させる。
なお、起動制御量演算部18は、これらの4つの起動制御量の1つ以上を設定する。また、上記の4つの起動制御量を設定するときの条件は、モータ7の特性や負荷の状況によって適宜決定する。
a.起動制御量演算部18は、冷媒温度が通常状態(α≦T≦β)であって、かつ再起動時間間隔が通常状態(t≦γ)のとき、通常の起動制御量を設定する。
b.起動制御量演算部18は、冷媒温度が低温状態(T<α)又は高温状態(β<T)のとき、あるいは再起動時間間隔が寝込み状態(t>γ)のとき、すなわち、冷媒温度か再起動時間間隔の何れかが通常状態でないときは、次のような4つの起動制御量を設定する。
1.モータ7の起動電流を増加させる。
2.V/f制御の最大回転速度を増加させる。
3.V/f制御の回転速度加速レートを減少させる。
4.V/f制御の最大回転速度保持時間を増加させる。
なお、これらの4つの設定内容は1つ以上が実施される。また、上記の4つの起動制御量の変更条件は、モータ7の特性や負荷の状況によって適宜決定される。さらに、上記4つの起動制御量の各設定値は、冷媒温度と再起動時間間隔とのそれぞれの判定結果の状態により、別々の値にしてもよい。
図6において、位置決め制御部19aは、モータ7の位置決め処理を開始する(ステップS1)。そして、起動制御量演算部18は、モータ7の起動電流が規定電流に到達したか否かの判定を行う(ステップS2)。ここで、モータ7の起動電流が未だ規定電流に到達していなければ(ステップS2でFalse)、起動制御量演算部18は、モータ7の起動電流を増加(up)させる(ステップS3)。
前記した第1実施形態は、図1に示すように、相電流検出センサであるCTセンサ15v、15wの検出電流に基づいて相電流を検出して、IPM5の三相インバータをPMW制御してモータ7を駆動制御する構成である。第2実施形態では、CTセンサ15v、15wを用いないで、入力側のシャント抵抗が検出した直流電流の瞬時値を検出することによって相電流を推定する構成である。
具体的には、図10に示される電流検出部17a2は、電圧指令演算部17cが演算する電圧指令値とPWM制御部17dの内部で生成される三角波のキャリア信号とを比較することにより得られるPWMスイッチングパターンに基づいて、シャント抵抗が検出した直流バス電流の値が、何れの相に流れる電流値であるかを特定することにより、相電流を推定(復元)する。
このような構成においても、前記した第1実施形態と同様に、コンプレッサの各種状態(冷媒温度T、及び再起動時間間隔t)から該コンプレッサの負荷状態を推定し、その負荷状態に応じて最適な起動制御量(起動電流、最大回転速度、回転速度加速レート、及び最大回転速度保持時間)を設定してコンプレッサの起動制御を行うことができる。
3 DC電源装置
5 IPM(Intelligent Power Module)
7 モータ
9 コンプレッサ
10 負荷状態判定部
11 タイマ(計時手段)
12 冷媒温度推定部
13a、13b シャント抵抗
15v、15w CTセンサ
16 誘起電圧検出部(回転子位置検出部)
17、17B マイコン(コンプレッサ制御装置、制御部)
17a1、17a2 電流検出部
17b 電流制御部
17c 電圧指令演算部
17d PWM制御部
18 起動制御量演算部
19a 位置決め制御部
19b V/f制御部
19c ベクトル制御部
Claims (6)
- モータがコンプレッサを回転させる空気調和機であって、
前記コンプレッサの冷媒温度と前記コンプレッサの再起動時間間隔との少なくとも一つの情報に基づいて起動制御量を決定し、決定された起動制御量を用いて前記モータを起動制御するコンプレッサ制御装置を備え、
前記起動制御量は、前記モータを起動するときの起動電流、前記モータの起動時における前記コンプレッサの最大回転速度、前記モータの起動時における前記コンプレッサの回転速度加速レート、及び前記モータの起動時における前記コンプレッサの最大回転速度保持時間であり、
前記コンプレッサ制御装置は、
モータ回転速度が前記コンプレッサの最大回転速度に到達するまで前記回転速度加速レートで増加させた駆動周波数で、前記起動電流を維持しつつ前記モータをV/f制御し、さらに、前記コンプレッサの最大回転速度保持時間が到達するまで、前記最大回転速度の駆動周波数で前記モータをV/f制御する
ことを特徴とする空気調和機。 - 前記モータに流れる相電流を検出する電流センサと前記モータを駆動するインバータとをさらに備え、
前記コンプレッサ制御装置は、
前記起動電流の値と前記最大回転速度の設定値と前記回転速度加速レートの設定値を用いて、前記V/f制御された電圧指令情報を出力する電圧指令演算部と、
前記電圧指令情報に基づいてPWM信号を生成し、前記インバータをPWM制御するPWM制御部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。 - 前記冷媒温度が第1の温度閾値以上であって前記第1の温度閾値より高い第2の温度閾値以下である通常温度状態であり、かつ、前記再起動時間間隔が所定の時間間隔以下である通常時間間隔状態である場合は、前記起動電流、前記最大回転速度、前記回転速度加速レート、及び前記最大回転速度保持時間として、通常の起動制御量の値が前記電圧指令演算部に入力されることを特徴とする請求項2に記載の空気調和機。
- 前記冷媒温度が第1の温度閾値より低い低温状態の場合、前記冷媒温度が第2の温度閾値より高い高温状態の場合、及び前記再起動時間間隔が所定の時間間隔を超過した寝込み状態の場合の何れか又はこれらが複合された場合は、前記起動電流の増加、前記最大回転速度の増加、前記回転速度加速レートの減少、及び前記最大回転速度保持時間の増加、の少なくとも一つが変更された起動制御量が前記電圧指令演算部に入力されることを特徴とする請求項2に記載の空気調和機。
- 前記モータに巻回された巻線の抵抗値に基づいて前記コンプレッサの冷媒温度を推定する冷媒温度推定部をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の空気調和機。
- モータを介してコンプレッサを制御するコンプレッサ制御装置であって、
前記コンプレッサの冷媒温度と前記コンプレッサの再起動時間間隔との少なくとも一つの情報に基づいて起動制御量を決定し、決定された起動制御量を用いて前記モータを起動制御するものであり、
前記起動制御量は、前記モータを起動するときの起動電流、前記モータの起動時における前記コンプレッサの最大回転速度、前記モータの起動時における前記コンプレッサの回転速度加速レート、及び前記モータの起動時における前記コンプレッサの最大回転速度保持時間であり、
モータ回転速度が前記コンプレッサの最大回転速度に到達するまで前記回転速度加速レートで増加させた駆動周波数で、前記起動電流を維持しつつ前記モータをV/f制御し、さらに、前記コンプレッサの最大回転速度保持時間が到達するまで、前記最大回転速度の駆動周波数で前記モータをV/f制御する
ことを特徴とするコンプレッサ制御装置。
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