JP6007175B2 - イントロデューサー用シース - Google Patents

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Description

本発明は、イントロデューサー用シースに関する。
近年医療において、カテーテルと呼ばれる細長い中空管状の医療器具を用いて様々な形態の治療や検査が行われている。このような治療方法としては、カテーテルの長尺性を利用して直接患部に薬剤を投与する方法、加圧によって拡張するバルーンを先端に取り付けたカテーテルを用いて生体管腔内の狭窄部を押し広げて開く方法、先端部にカッターが取り付けられたカテーテルを用いて患部を削り取って開く方法、逆にカテーテルを用いて動脈瘤や出血箇所あるいは栄養血管に詰め物をして閉じる方法などがある。また、生体管腔内の狭窄部を開口した状態に維持するために、側面が網目状になっている管形状をしたステントをカテーテルを用いて生体管腔内に埋め込んで留置する治療方法などがある。さらに、体内の体にとって過剰となった液体を吸引することなどがある。
カテーテルを用いて治療・検査などを行う場合には、一般的に、カテーテルイントロデューサーを使用して、腕または脚に形成された穿刺部位にイントロデューサー用シースを導入し、イントロデューサー用シースの内腔を介してカテーテル等を経皮的に血管等の病変部に挿入している。腕からイントロデューサー用シースを導入するTRI(Trans Radial intervention)は、足から導入するTFI(Trans Femoral intervention)に比べて、止血が容易である、安静時間が短い、出血合併症が少ない等の患者および病院側双方への利点がある。
イントロデューサー用シースは、カテーテルなどの長尺体を挿通自在な中空部を備える管状部材であるシースチューブから形成されている(特許文献1を参照)。イントロデューサー用シースは、穿刺部位への導入時に先端側となる先端部と、先端部の基端側に位置する本体部とを備えている。
特開平8−131552号公報
シース外径を小さくしたり、大きい外径を有する長尺体を挿通可能としたりするためには、イントロデューサー用シースの肉厚を薄くすることが好ましい。
その一方、イントロデューサー用シースの肉厚を薄くすると、穿刺部位にイントロデューサー用シースを導入するときに、先端部がめくれやすくなるという問題が生じる。
さらに、イントロデューサー用シースの肉厚を薄くする場合においても、カテーテル等の長尺体の通過性を高めるために、本体部の柔軟性を確保することが必要である。本体部の柔軟性を確保することによって、キンクの防止や、キンクしても元の形状に戻りやすい復元性を得ることができる。
従来のイントロデューサー用シースには、肉厚を薄くしても先端部のめくれの改善や本体部の柔軟性の確保を図ったものは見あたらない。
そこで、本発明の目的は、肉厚を薄くしても先端部のめくれを抑え得るイントロデューサー用シースを提供することにある
上記目的は、以下の手段により達成される。
(1)上記目的を達成するための本発明の一様相は、長尺体を挿通自在な中空部を備える管状部材から形成され、先端部と本体部とを備えるイントロデューサー用シースであって、前記管状部材は、結晶性ポリマーを含み、かつ、一の材料から形成された単層であり、前記先端部は、前記本体部よりも硬く形成されている。前記先端部の結晶化度は、前記本体部の結晶化度よりも大きくなるように構成されており、前記先端部は、外表面が先細りとなるテーパー部を有している。そして、前記先端部と前記本体部との境界部では、徐々に硬さが変わり、かつ、徐々に結晶化度が変わる。
(2)上記目的を達成するための本発明の他の様相は、長尺体を挿通自在な中空部を備える管状部材から形成され、先端部と本体部とを備えるイントロデューサー用シースであって、前記本体部が、結晶性ポリマーを含み結晶性ポリマーの結晶化の程度を抑制したポリマー組成物から形成されてなるイントロデューサー用シースである。
本発明によれば、先端部を本体部よりも硬くすることによって、肉厚を薄くしても、穿刺部位にイントロデューサー用シースを導入するときに、先端部のめくれを抑制することができる。
前記先端部の軸方向の押し潰し強度が、前記本体部の軸方向の押し潰し強度よりも大きいことが好ましい。この場合、先端部が本体部よりも硬くなり、肉厚を薄くしても、穿刺部位にイントロデューサー用シースを導入するときに、先端部のめくれを抑制することができる。
前記先端部の結晶化度が、前記本体部の結晶化度よりも大きいことが好ましい。この場合、先端部が本体部よりも硬くなり、肉厚を薄くしても、穿刺部位にイントロデューサー用シースを導入するときに、先端部のめくれを抑制することができる。
前記先端部の外径が先端側に向かって漸次小さく形成され、軸方向との角度が15度未満であることが好ましい。この場合、先端部の先端角度を鋭角化にすることによって、ダイレーターによって皮膚を拡張させた後の皮膚孔への挿入時にめくれを発生し難くさせることができる。
前記本体部における基端側の肉厚が、前記本体部における先端側の肉厚よりも大きいことが好ましい。この場合、コシを持たせた構成となることによって、本体部が折れにくくなり、キンクを防止することができる。
前記管状部材は、一の材料から形成された単層によって形成して、先端部を本体部よりも硬くすることができる。
図1は、本発明の実施形態に係るイントロデューサー用シースを適用したイントロデューサー組立体を示す平面図である。 図2は、イントロデューサー組立体のイントロデューサー用シース、およびダイレーターを分解して示す平面図である。 図3は、穿刺部位に導入されたイントロデューサー用シースを介してカテーテルを挿入している状態を示す図である。 図4は、穿刺部位にイントロデューサー用シースを導入した状態を示す図である。 図5(A)(D)は、肉厚が比較的厚いイントロデューサー用シースを示す断面図、図5(B)(C)は、肉厚が比較的薄いイントロデューサー用シースを示す断面図である。 図6(A)は、実施形態に係るイントロデューサー用シースを示す断面図、図6(B)は、イントロデューサー用シースにおける先端部の硬さと本体部の硬さとの大小関係を示す模式図、図6(C)は、先端部の軸方向の押し潰し強度と本体部の軸方向の押し潰し強度との大小関係を示す模式図、図6(D)は、先端部の結晶化度と本体部の結晶化度との大小関係を示す模式図である。 図7は、イントロデューサー用シースの先端部の軸方向の押し潰し強度を測定するための方法を示す模式図である。 図8は、シース先端部を示す断面図である。 図9は、本体部の耐キンク性を高めたイントロデューサー用シースを示す断面図である。 図10は、シースチューブを形成する素材であって、異なる材料から形成された複数層によって形成された素材を示す断面図である。 図11(A)(B)は、シースチューブを形成する素材であって、混合物中の第1と第2の材料の含有率を示す模式図である。
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
(第1の実施形態)
イントロデューサー組立体10は、生体管腔内へのアクセスルートを確保するためのデバイスである。なお、以下の説明において、デバイスの手元操作部側を「基端側」、生体管腔内へ挿通される側を「先端側」と称す。
図1は、本発明の実施形態に係るイントロデューサー用シース20を適用したイントロデューサー組立体10を示す平面図、図2は、イントロデューサー組立体10のイントロデューサー用シース20、およびダイレーター30を分解して示す平面図、図3は、穿刺部位に導入されたイントロデューサー用シース20を介してカテーテル70を挿入している状態を示す図、図4は、穿刺部位にイントロデューサー用シース20を導入した状態を示す図である。
図1および図2を参照して、イントロデューサー組立体10は、概説すると、イントロデューサー用シース20と、ダイレーター30とを有している。イントロデューサー用シース20は、シースチューブ21と、シースチューブ21の基端側に取り付けられるシースハブ22と、シースハブ22の基端側に取り付けられた止血弁23とを備えている。ダイレーター30は、ダイレーターチューブ31と、ダイレーターチューブ31の基端側に取り付けられるダイレーターハブ32を備えている。図3および図4を参照して、穿刺部位にイントロデューサー用シース20を導入した後、ダイレーター30を抜き去り、イントロデューサー用シース20の内腔を介してカテーテル70等の長尺体を経皮的に血管等の病変部に挿入する。以下、イントロデューサー組立体10について詳述する。
イントロデューサー用シース20は、生体管腔内へ留置されて、その内部に、例えばカテーテル70、ガイドワイヤ、塞栓物等の長尺体を挿通して、生体管腔内へ導入するためのものである。
シースチューブ21は、経皮的に生体管腔内へ導入される。シースチューブ21の構成材料については後述する。
シースハブ22には、シースチューブ21の内部と連通するサイドポート24が形成されている。サイドポート24には、例えばポリ塩化ビニル製の可撓性を有するチューブ25の一端が液密に接続されている。チューブ25の他端は、例えば三方活栓26が装着されている。この三方活栓26のポートからチューブ25を介してイントロデューサー用シース20内に、例えば生理食塩水のような液体を注入する。
シースハブ22の構成材料としては、特に限定されないが、硬質樹脂のような硬質材料が好適である。硬質樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン等が挙げられる。
止血弁23は、略楕円形の膜状(円盤状)をなす弾性部材から構成され、シースハブ22に対して液密に固定されている。
止血弁23の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、弾性部材であるシリコーンゴム、ラテックスゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム等が挙げられる。
ダイレーター30は、イントロデューサー用シース20を血管内に挿入するときに、シースチューブ21の折れを防いだり、皮膚の穿孔を拡径したりするために用いられる。
ダイレーターチューブ31は、シースチューブ21内に挿通される。図1に示すように、ダイレーターチューブ31の先端33が、シースチューブ21の先端から突出した状態となる。
ダイレーターチューブ31の構成材料としては、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、またはこれら二種以上の混合物など)、ポリオレフィンエラストマー、ポリオレフィンの架橋体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミドなどの高分子材料またはこれらの混合物などを用いることができる。
ダイレーターハブ32は、シースハブ22に対して着脱自在に保持されている。
ダイレーターハブ32の構成材料としては、特に限定されないが、硬質樹脂のような硬質材料が好適である。硬質樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン等が挙げられる。
図4を参照して、穿刺部位にイントロデューサー用シース20を導入するときには、先端側20aは、皮膚への挿入性を向上させるために硬いことが要求され、一方、基端側20bは、デバイス挿入性を向上させるために柔軟であることが要求されている。基端側20bではさらに、折れにくく、また折れても広がり易く、穿刺後にシースがキンクしても元の形状に戻り易くする観点からも、柔軟であることが要求されている。
図5(A)(D)は、肉厚(t=T1)が比較的厚いイントロデューサー用シース100、103を示す断面図、図5(B)(C)は、肉厚(t=T2、T3)が比較的薄いイントロデューサー用シース101、102を示す断面図である。
図5(A)(B)に示すように、イントロデューサー用シース101の肉厚(t=T2、T1>T2)を薄くすることによって、内径寸法φ1を同じにしたまま、外径寸法φ3を例えば1Frサイズダウンすることができる(φ2>φ3)。また、図5(A)(C)に示すように、イントロデューサー用シース102の肉厚(t=T3、T1>T3)を薄くすることによって、外径寸法φ2を同じにしたまま、内径寸法φ4が大きくなり(φ4>φ1)、より大きい外径を有する長尺体を挿通することが可能となる。一方、図5(A)(D)に示すように、イントロデューサー用シース103の肉厚(t=T1)を維持したまま外径寸法φ3を1Frサイズダウンしても(φ2>φ3)、内径寸法φ5もサイズダウン(φ1>φ5)するので、結局のところ小さい外径寸法を有する長尺体しか挿入できなくなる。
イントロデューサー用シース20の肉厚を薄くすることによって、応用範囲がつぎのように広がる。7Frサイズのデバイスを挿通するシース外径(7Frサイズ)が、とう骨動脈の血管径(2.9±0.6mm程度)よりも大きかったため、7Frサイズのカテーテル70などのデバイスを用いてTRI手技を行うことができなかった。ここで、イントロデューサー用シース20の肉厚を薄くすることによって、内径寸法を同じにしたまま、外径寸法を1Frサイズダウンさせることができる(6Frサイズ)。これによって、7Frサイズのデバイスを用いてTRI手技を行うことが可能となる。外径が6Frサイズのシースの中に、外径が7Frサイズのデバイスを挿通可能になる。本明細書においては、このようなデバイスサイズ−シースサイズの組み合わせを「7in6」と表記する。
デバイスサイズ−シースサイズの組み合わせは「7in6」に限られるものではなく、すべてのFrに適用することが可能である。例えば、「11in10」、「10in9」、「9in8」、「8in7」、「7in6」、「6in5」、「5in4」、「4in3」、「3in2」のように、すべての外径サイズを1Frサイズダウンすることができる。「3in2」の場合、シースの外径寸法は、例えば約φ1.39mm程度である。
さらには、シース外径寸法を1Frサイズダウンさせることにより、人体の挿入痕が小さくなり、止血時間が短くなる。これによって病院滞在時間が短くなるので、患者の肉体的負担とともに病院の経済的負担も軽くなる。
上記のように、イントロデューサー用シース20の肉厚を薄くすることによって、内径寸法を同じにしたまま、外径寸法を1Frサイズダウンさせることができる。しかしながら、単にシースを薄肉化した場合、先端部がめくれたり、座屈したりして、シースとして使用することができない。また、腰強度や剛性がなくなり、すぐにキンクしてしまう。例えば、シースの先端部がめくれるとは、穿刺部位にイントロデューサー用シースを導入する際、シースの肉厚の薄いがため、シース先端部の素材が伸び、シース先端部の外側に巻きあがる場合が挙げられる。また、シースの先端部が座屈するとは、穿刺部位にイントロデューサー用シースを導入する際、シース先端部に対して縦方向の圧力が加わってシースが横方向に変形をおこす現象をいい、例えば、シースが蛇腹状に折れ曲がる場合などが挙げられる。
肉厚を薄くしたときの上記の課題を解決した本実施形態のイントロデューサー用シース20について詳述する。
図6(A)は、イントロデューサー用シース20を示す断面図、図6(B)は、イントロデューサー用シース20における先端部50の硬さと本体部60の硬さとの大小関係を示す模式図、図6(C)は、先端部50の軸方向の押し潰し強度と本体部60の軸方向の押し潰し強度との大小関係を示す模式図、図6(D)は、先端部50の結晶化度と本体部60の結晶化度との大小関係を示す模式図である。
図6(A)を参照して、イントロデューサー用シース20は、概説すれば、カテーテル70などの長尺体を挿通自在な中空部21aを備えるシースチューブ21(管状部材に相当する)から形成され、シース先端部50(先端部に相当する)とシース本体部60(本体部に相当する)とを備えている。シース先端部50とシース本体部60とは一体成形等により一体的に構成されており、接着や融着等によって接合されたものではないことが望ましい。シース先端部50は、先細りとなるテーパー部51と、軸線とほぼ平行に伸びるストレート部52とを有している。このイントロデューサー用シース20は、シース先端部50がシース本体部60よりも硬く形成されている(図6(B)を参照)。
シース先端部50をシース本体部60よりも硬くすることによって、肉厚を薄くしても、穿刺部位にイントロデューサー用シース20を導入するときに、シース先端部50のめくれを抑制することができる。
シース先端部50がシース本体部60よりも硬いとは、具体的には、シース先端部50の軸方向の押し潰し強度が、シース本体部60の軸方向の押し潰し強度よりも大きいことをいう(図6(C)を参照)。
図6(B)乃至(C)によって図示したように、シース先端部50とシース本体部60との機械的特性は異なっているが、その境界部では徐々に特性が移行するのが好ましい。シース先端部50とシース本体部60との境界部では徐々に硬さが変わっていることが好ましい。シース先端部50とシース本体部60との境界部では徐々に軸方向の押し潰し強度が変わっていることが好ましい。シース先端部50とシース本体部60との境界部では徐々に結晶化度が変わっていることが好ましい。これにより、境界部における機械的特性の急激な変化をなくすることが可能となり、穿刺部位にイントロデューサー用シース20を導入するときにキンクを抑制できる。
この場合におけるシースチューブ21の構成材料は、結晶性ポリマーを含むポリマー組成物に限られるものではなく、通常の素材を適用することができる。シースチューブ21の構成材料としては、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、またはこれら二種以上の混合物など)、ポリオレフィンエラストマー、ポリオレフィンの架橋体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミドなどの高分子材料またはこれらの混合物などを用いることができる。エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)を好適に用いることができる。
押し潰し強度の評価は次のようにして行う。図7は、シース先端部50の軸方向の押し潰し強度を測定するための方法を示す模式図である。
シース先端部の加工品71を7cmにカッティングし、株式会社島津製作所製のオートグラフにチャックにて垂直に固定する。シースチューブ内にはシース内径相当の芯金、あるいはダイレーターをカッティングしたものを挿入する。シース先端部から15mm程度は隙間を空けておく。固定したシース先端加工品71の下にウレタンシート72を設置し、5mm/minのスピードで垂直に押し付けてゆき、先端が潰れる際の強度を測定する。実験室内雰囲気は室温(RT(Room Temperature)約23℃)、相対的湿度(RH(Relative Humidity)約50%)とした。同様にシース本体部の軸方向の押し潰し強度についても、シース本体部の加工品に対して行う。
シース先端部50のめくれは次のようにして確認する。
まず、ウレタンシートを斜め45度にセットして、針とワイヤーとによってパンクチャーする。そこへ、ダイレーターを組み合わせた状態で、オートグラフによって押し込み、シース先端部のめくれ有無を確認する。
押し潰し強度に代えて、シース先端部50がシース本体部60よりも硬いとは、シース先端部50の結晶化度が、シース本体部60の結晶化度よりも大きいことをいう(図6(D)を参照)。
非晶化チューブの成形は次のようにして行う。
第1の成形方法は、結晶性ポリマーを含むポリマー組成物を押し出し成形するときに、ダイスにおいて急冷し、非晶化チューブを成形する。シリンダー成形温度はポリマーの融点〜ポリマーの融点プラス150℃程度、ダイス温度は50〜300℃である。
第2の成形方法は、結晶性ポリマーを含むポリマー組成物を押し出し成形された後に水槽において急冷し、非晶化チューブを成形する。シリンダー成形温度はポリマーの融点〜ポリマーの融点プラス150℃程度、ダイス温度は100〜300℃、水槽温度は0〜80℃である。
結晶性ポリマーであるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)における温度と結晶化度の関係は次のとおりである。PEEKのガラス転移点Tgは約145度、融点Tmは、約345度である。PEEKを融点Tm近辺から融点Tmより数十度低い温度で成形すると結晶化度が高くなる。なお、アニーリングも通常、融点Tmより数十度低い温度で行っている。第1の成形方法にあっては、ガラス転移点Tgよりも数十度高い温度で成形する。これによって、結晶化度が下がる。第2の成形方法にあっては、融点Tmよりも数十度低い温度で成形しても、成形されたチューブを水槽に入れるなど急冷することによって、結晶化度が下がる。
シース先端部50の形状付け加工を行うときには、シース先端部50のテーパー形状に合致した内面形状を有する凹所が形成された金型を使用する。金型は、高周波電源によって加熱されている。シースチューブ21の先端を金型の凹所に押し込む。すると、凹所の内面形状がシースチューブ21の先端に転写され、シース先端部50に、外表面が先細りとなるテーパー部51が形成される。このような形状付け加工によって、熱および圧力が加えられたシース先端部50における結晶化度が、シース本体部60における結晶化度よりも高められる。シース素材がPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)の場合、金型の温度は、ガラス転移点Tg以上、融点Tmプラス150℃以下が好ましい。
結晶性ポリマーの結晶化度は、例えば、X線回折、熱分析法、密度法、赤外線法、核磁気共鳴吸収法等により測定できる。
なお、結晶性を有するポリマーといえども100%結晶になることはなく、お互いの分子構造の中に分子の主鎖や側鎖が規則的に並んだ結晶性領域と、規則的に並んでいない非結晶(アモルファス)領域とを含んでいる。したがって、結晶性ポリマーとしては、分子構造の中に少なくとも結晶性領域を含んでいればよく、結晶性領域と非結晶領域とが混在していてもよい。
イントロデューサー用シースに一般的に使用されている樹脂は、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)やFEPといったフッ素系樹脂や、PEといった汎用樹脂が主である。しかし、これらの樹脂は、薄肉化させると腰強度・剛性ともに機械強度が十分なものではなく、シースとしての機能を果たすことが非常に難しい。
そこで、この場合におけるシースチューブ21の構成材料として、シース素材に一般的には使用されないエンジニアプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックを使用している。例えば、融点が約340℃と非常に高いが、剛性強度が極めて高く、安定性も高いPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)や、PEK(ポリエーテルケトン)、PEKK(ポリエーテルケトンケトン)、PEEKK(ポリエーテルエーテルケトンケトン)、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、PES(ポリエーテルスルフォン)、PSF(ポリスルフォン)、PI(ポリイミド)、PEI(ポリエーテルイミド)、PAR(非晶ポリアリレート)やこれらの派生スーパーエンプラ等が挙げられる。また、機械強度を増大させるために、繊維状の補強材を添加させたもの等があり、例えば、ガラス繊維やカーボン繊維、ウィスカ、マイカ、アラミド繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維等を添加させたものがある。具体的には、FRP、FRTP、GFRP、GFRTP、CFRP、CFRTP、BFRP、BFRTP、KFRP、KFRTP等がある。さらには、これらスーパーエンプラにPTFEやETFE等を相溶させたコンパウンドも有用である。また、ナイロン(ポリアミド)やポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタラート等のエンジニアプラスチックも挙げることができる。
図8は、シース先端部50を示す断面図である。
図8を参照して、イントロデューサー用シース20は、シース先端部50の外径φaが先端側に向かって漸次小さく形成されている。シース先端部50が軸方向となす角度θは、15度未満であることが望ましい。より好ましくは5度である。
シース先端部50の先端角度を鋭角化にすることによって、ダイレーター30によって皮膚を拡張させた後の皮膚孔への挿入時にめくれを発生し難くさせることができる。
素材が肉薄であるため、シース先端部50の角度は10度以下であることがより望ましい。例えば、肉厚が約70μmの場合、シース先端角度が15度の場合、皮膚への挿入が困難であるが、5度にした場合には、皮膚への挿入が容易になる。
図9は、シース本体部60の耐キンク性を高めたイントロデューサー用シース20を示す断面図である。
図9を参照して、シース本体部60における基端側の肉厚t2を、シース本体部60における先端側の肉厚t1よりも大きくするのが好ましい。
剛性素材を用いて肉薄なシースを実現しようとした場合、シース基端部でシースが折れると復元性に乏しくなる。このため、シース本体部60における基端側の肉厚t2を、シース本体部60における先端側の肉厚t1よりも大きくし、コシを持たせてある。かかる構成によって、シース本体部60が折れにくくなり、キンクを防止することができる。作製方法として、例えば、溶融樹脂の引落しや、金型による矯正を挙げることができる。なお、剛性素材のみの単層チューブの場合の他、多層素材のチューブに適用してもよい。
シースチューブ21は、一の材料から形成された単層によって形成され、上述した措置のいずれかによってシース先端部50をシース本体部60よりも硬くすることができる。
図10は、シースチューブ21を形成する素材であって、異なる材料から形成された複数層によって形成された素材を示す断面図である。
図10を参照して、シースチューブ21を形成する素材80は、第1の材料から形成された第1の層81と、第1の材料よりも柔らかい第2の材料から形成された第2の層82とを含んでいる。そして、シース先端部50における第1の層81の厚みがシース本体部60における第1の層81の厚みよりも大きく、シース先端部50における第2の層82の厚みがシース本体部60における第2の層82の厚みよりも小さい。図示例では、シースチューブ21を形成する素材は、外層/中間層/内層の3層構造を有し、それぞれ、第1の材料である剛性素材/第2の材料である柔軟素材/第1の材料である剛性素材/から形成されている。
イントロデューサー用シース20の長手方向に沿う部位ごとに層の厚みを変化させることによって、先端側においては剛性素材リッチとし、基端側においては柔軟素材リッチとすることができる。言い換えれば、先端側は厚み方向において剛性素材の割合が基端側よりも大きい。これによって、シース先端部50からシース本体部60の基端側に向けて、剛性から柔軟性まで段階的な変化あるいは傾斜を持たせることが可能となる。剛性から柔軟性まで連続的に変化あるいは傾斜を持たせることも可能である。
このようなシースチューブ形成素材によれば、シース先端部50において剛性を確保することによって、薄肉なイントロデューサー用シース20であっても、シース先端部50のめくれを抑制しつつ、皮膚や血管への挿入性を高めることが可能である。また、シース本体部60において基端部に向けて柔軟性を確保することによって、カテーテル70等のデバイス通過性を高めることができる。シース本体部60は、折れにくく、また折れても広がり易い。したがって、穿刺後にシースがキンクしても、元の形状に戻り易くなる(キンク復元性)、という利点がある。
図11(A)(B)は、シースチューブ21を形成する素材であって、混合物中の第1と第2の材料の含有率を示す模式図である。
図11(A)(B)を参照して、シースチューブ21を形成する素材85は、第1の材料と、第1の材料よりも柔らかい第2の材料との混合物である。シースチューブ21はこの混合物から形成された単層チューブである。そして、シース先端部50における先端側からシース本体部60における基端側に向かって混合物中の第1の材料の含有率86が低下し、かつ、第2の材料の含有率87が増加している。図示例では、シース先端部50における先端側の端部は第1の材料である剛性素材のみから形成され、シース本体部60における基端側の端部は第2の材料である柔軟素材のみから形成されている。
イントロデューサー用シース20の長手方向に沿う部位ごとに第1と第2の材料の含有率86、87を変化させることによって、先端側においては剛性素材リッチとし、基端側においては柔軟素材リッチとすることができる。これによって、シース先端部50からシース本体部60の基端側に向けて、剛性から柔軟性まで連続的な変化あるいは傾斜を持たせることが可能となる。剛性から柔軟性まで段階的に変化あるいは傾斜を持たせることも可能である。ここで、剛性素材リッチとは剛性素材の含有率が高い状態を示し、柔軟素材リッチとは柔軟素材の含有率が高い状態を示している。
剛性素材リッチから柔軟素材リッチへの変化の仕方は、徐々に双方の比率が変わっていく形態(図11(A)を参照))と、双方の樹脂が相溶した状態88を経て変化していく形態(図11(B)を参照))とがある。具体的には、図11(A)では、シース先端部50における先端側からシース本体部60における基端側に向かって混合物中の第1の材料の含有率86が低下し、かつ、第2の材料の含有率87が増加している。例えば、第1の材料及び第2の材料が混合されていない場合、図11(A)のようにシース先端部50における先端からシース本体部60における基端に向かって、素材85中の第1の材料からなる部材86の厚みが減少し、かつ、素材85中の第2の材料からなる部材87の厚みが増加する。また、第1の材料および第2の材料が混合された混合物の場合、図11(A)のようにシース先端部50における先端からシース本体部60における基端に向かって、素材85を構成する混合物の第1の材料の含有率86が低下し、かつ、素材85を構成する混合物の第2の材料の含有率87が増加する。また、図11(B)では、シース先端部50における先端側からシース本体部60における基端側に向かって混合物中の第1の材料の含有率86が低下し、双方の樹脂が相溶した状態88を経て、第2の材料の含有率87が増加している。すなわち、図11(B)のようにシース先端部50における先端からシース本体部60における基端に向かって、素材85中の第1の材料からなる部材86の厚みが減少し、かつ、素材85中の第2の材料からなる部材87の厚みが増加し、かつ、第1の材料からなる部材86及び第2の材料からなる部材87の境界面では双方の部材が相溶した状態の一定の厚みを有する層が形成されている。含有率86、87の調整は、押出成形技術の方法によって行うことができる。
このようなシースチューブ形成素材によれば、シース先端部50において剛性を確保することによって、薄肉なイントロデューサー用シース20であっても、シース先端部50のめくれを抑制しつつ、皮膚や血管への挿入性を高めることが可能である。また、シース本体部60において基端部に向けて柔軟性を確保することによって、カテーテル70等のデバイス通過性を高めることができる。シース本体部60は、折れにくく、また折れても広がり易い。したがって、穿刺後にシースがキンクしても、元の形状に戻り易くなる(キンク復元性)、という利点がある。
イントロデューサー用シース20において、肉厚を薄くしてもシース本体部60の柔軟性を確保するためには次のような構成も採用できる。
すなわち、イントロデューサー用シース20は、カテーテル70などの長尺体を挿通自在な中空部21aを備えるシースチューブ21(管状部材に相当する)から形成され、シース先端部50とシース本体部60とを備えている。シース本体部60は、結晶性ポリマーを含み結晶性ポリマーの結晶化の程度を抑制したポリマー組成物から形成されている。
結晶性ポリマー自体の剛性によってシース本体部60の剛性を確保し、かつ、結晶性ポリマーの結晶化の程度を抑制することによってシース本体部60における柔軟性を確保することができる。したがって、シース本体部60の肉厚を薄くしつつ、シース本体部60の柔軟性を確保したイントロデューサー用シース20を得ることができる。
結晶化の抑制は、急冷工程を備える前述した第1の成形方法や第2の成形方法を適用すればよい。また、急冷工程に代えて、あるいは急冷工程とともに、結晶化を抑制する薬剤を添加するようにしてもよい。
なお、結晶性ポリマーの抑制された結晶化の程度は、チューブ径、肉厚、長さなどによって変わるので一義的に定まるものではなく、トライアンドエラーによって最適な結晶化の程度を選択している。したがって、抑制された結晶化の程度を、結晶化度を用いて特定する必要ない。
結晶性ポリマーには、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を好適に用いることができる。剛性強度が極めて高く、安定性も高いからである。
シースチューブ21の肉厚は、0.01〜0.20mm、好ましくは、0.03〜0.15mmである。また、シースチューブ21の内径は、0.10〜5.00mmである。
以上、本発明のイントロデューサー用シース20を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図10には、シースチューブ21を形成する素材80として3層構造を有する形態を示したが、2層構造、もしくは4層、5層構造を有するものでもよい。
また、シース先端部50における先端側の端部を第1の材料である剛性素材のみから形成し、シース本体部60における基端側の端部を第2の材料である柔軟素材のみから形成した例を示したが(図11)、それぞれの端部において第1と第2の材料を含んでいてもよい。
本出願は、2011年6月29日に出願された日本特許出願番号2011−144697号に基づいており、それらの開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。
10 イントロデューサー組立体、
20 イントロデューサー用シース、
21 シースチューブ(管状部材)、
21a 中空部、
30 ダイレーター、
50 シース先端部(先端部)、
60 シース本体部(本体部)、
81 第1の層、
82 第2の層、
86 第1の材料の含有率、
87 第2の材料の含有率、
φa シース先端部の外径。

Claims (4)

  1. 長尺体を挿通自在な中空部を備える管状部材から形成され、先端部と本体部とを備えるイントロデューサー用シースであって、
    前記管状部材は、結晶性ポリマーを含み、かつ、一の材料から形成された単層であり、
    前記先端部は、前記本体部よりも硬く形成され、
    前記先端部の結晶化度は、前記本体部の結晶化度よりも大きくなるように構成されており、
    前記先端部は、外表面が先細りとなるテーパー部を有し、
    前記先端部と前記本体部との境界部では、徐々に硬さが変わり、かつ、徐々に結晶化度が変わる、イントロデューサー用シース。
  2. 前記先端部は、前記本体部よりも軸方向の押し潰し強度大きく形成され、
    前記先端部と前記本体部との境界部では、徐々に軸方向の押し潰し強度が変わる請求項1に記載のイントロデューサー用シース。
  3. 前記先端部の外径が先端側に向かって漸次小さく形成され、軸方向との角度が15度未満である請求項1または請求項2に記載のイントロデューサー用シース。
  4. 前記本体部における基端側の肉厚が、前記本体部における先端側の肉厚よりも大きい請求項1〜請求項3の何れか1つに記載のイントロデューサー用シース。
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