ところで、従来のスクリーン印刷法でセラミックグリーンシートに導体パターンを形成する場合、ゴムスキージにてスクリーンマスクをスキージングする必要がある。この場合、位置合わせが難しいため、転写ピッチが狂ってしまい印刷位置ズレが発生することがある。また、セラミックグリーンシートに複数のビアが形成される場合、ビアのある箇所で凹凸が生じて平坦度が悪化する。このため、導体パターンの印刷性に問題が生じ、導体パターンを正確に印刷することが困難となる。さらに、セラミックグリーンシートの両面に導体パターンを形成する場合、表面側に形成した導体パターンによって平坦度が悪化するため、裏面側の導体パターンを正確に印刷することが困難となる。このようなことから、従来では、セラミックグリーンシートを所定圧力で面押しして、シート表面の凹凸をある程度解消してから、スクリーン印刷を行っている。さらに、導体パターンとセラミックグリーンシートとの密着性を高め、層間でのスキマやデラミネーションを防止するためにもセラミックグリーンシートの面押し工程が行われている。このように面押し工程を行う場合、導体パターンが潰れて線幅が広くなる。これに加え、シート自体にも圧力が加わることになるため、シート変形による寸法誤差も生じてしまう。
また、セラミックグリーンシートには、キャビティやキャスタレーション等の開口部が形成されているシートも存在し、その場合には導体パターンを印刷することが困難となる。さらに、スクリーンマスクの紗(SUS材等からなるメッシュ部)に乳剤を塗って導体パターンを塗布しているが、その紗や乳剤の部分にメタライズ残りが生じることがある。この場合には、導体パターンの印刷が不十分となって、パターンの断線、カケ、カスレ、ニジミ等の不具合が発生することも懸念される。
セラミック多層基板の製造時には、複数の製品領域を有するパネル状のものとして各工程に流動される。セラミックグリーンシートに導体パターンを印刷した後に、そのパターン修正は困難であるため、導体パターンの不具合が生じた場合には部分的に不良となったものが次工程に流動することとなる。この場合、印刷工程後の製造負荷が高くなってしまう。
また、特許文献1,2のように導体パターンをセラミックグリーンシートに転写する場合、転写時に加わる圧力(例えば、数百kg/cm2)が大きいため、導体パターンが潰れる。特許文献1,2では、積層コンデンサや積層インダクタなどのセラミック電子部品を製造するための技術として提案されており、比較的面積が大きな導体層を形成すればよい。このため、導体パターンの潰れはあまり問題になることはない。しかしながら、ICチップを搭載するために用いられるセラミック多層基板では、導体パターンが潰れて線幅が広くなると、ファインピッチのパターン形成が困難となってしまう。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ファインピッチの導体層を位置ズレがなく正確に形成することができるセラミック多層基板の製造方法を提供することにある。
そして上記課題を解決するための手段(手段1)としては、複数の導体層と複数のセラミック絶縁層とを積層して多層化した構造を有するセラミック多層基板の製造方法であって、前記セラミック絶縁層となるセラミック材料と、粘着剤と、加熱によって溶融する有機化合物とを少なくとも含んでシート状に成形された接着用セラミックシートを準備するシート準備工程と、転写用フィルムの表面に、前記導体層となる未焼成導体部を形成する転写用フィルム準備工程と、前記有機化合物の融点以上の温度に加熱し前記接着用セラミックシートに粘着力を発現させた状態で、前記接着用セラミックシートの表面に前記転写用フィルムを押し付けて前記未焼成導体部を埋め込むようにして、前記未焼成導体部を転写する導体部転写工程と、前記未焼成導体部を転写した後、前記有機化合物の融点以下の温度まで前記接着用セラミックシートを冷却し、前記転写用フィルムを剥離する導体部形成工程と、前記未焼成導体部が転写された前記接着用セラミックシートを複数積層した後、前記有機化合物の融点以上の温度に加熱し前記接着用セラミックシートに前記粘着力を発現させた状態で、各接着用セラミックシートを積層方向に加圧することにより、各接着用セラミックシートを一体化した未焼成セラミック積層体を形成する積層体形成工程とを含むことを特徴とするセラミック多層基板の製造方法がある。
手段1に記載の発明によると、転写用フィルム準備工程において、転写用フィルムの表面に、導体層となる未焼成導体部が形成される。この場合、転写用フィルムの表面はフラットであるため、位置精度よく確実に未焼成導体部を形成することができる。そして、導体部転写工程では、接着用セラミックシートが有機化合物の融点以上の温度に加熱される。この加熱によって溶融した有機化合物が粘着剤の溶剤として機能するため、加熱前には粘着力が発現していなかった接着用セラミックシートに粘着力が発現する。また、接着用セラミックシートは、有機化合物が溶融することで軟化する。このため、接着用セラミックシートの表面に転写用フィルムを押し付けると、そのフィルム表面に形成されている未焼成導体部は接着用セラミックシートに埋まり込むようにして転写される。この結果、接着用セラミックシートと未焼成導体部との密着性を十分に確保することができる。また、接着用セラミックシートの表面が十分に柔らかくなっているため、転写時に加える圧力を、従来技術よりも低い圧力(具体的には、1kgf/cm2以上5kgf/cm2以下の低圧力)に低減することができる。このため、未焼成導体部は、押し潰されることなく、その形状が保持された状態で接着用セラミックシートに転写される。そして、積層体形成工程では、未焼成導体部が転写された接着用セラミックシートを複数積層した後、有機化合物の融点以上の温度に加熱する。この加熱によって有機化合物が溶融して、接着用セラミックシートに粘着力が発現する。従って、比較的低い圧力で積層方向に加圧することにより、各接着用セラミックシートを一体化した未焼成セラミック積層体を形成することができる。
このようにすると、未焼成セラミック積層体における内部応力を低く抑えることができ、焼成時におけるセラミック多層基板の反りを抑えることができる。また、積層体形成工程では、接着用セラミックシートは有機化合物が溶融することで軟化しているため、積層時の応力が未焼成導体部に集中することなくシート全体に分散する。このため、未焼成導体部は潰れることはなく、その未焼成導体部のパターン形状(線幅)の変形が少なくなる。従って、本発明の製造方法でセラミック多層基板を製造すると、ファインピッチの導体層を位置ズレがなく正確に形成することができる。また、導体層とセラミック絶縁層との密着力を十分に確保することができ、さらに基板表面における平坦度を低く抑えることができる。このように、本発明の製造方法によれば、接続信頼性に優れたセラミック多層基板を製造することができる。
上記課題を解決するための別の手段(手段2)としては、複数の導体層と複数のセラミック絶縁層とを積層して多層化した構造を有するセラミック多層基板の製造方法であって、前記セラミック絶縁層となるセラミック材料を用いて表面及び裏面を有するシート状に成形された未焼成セラミックシートを準備するとともに、前記未焼成セラミックシートよりも薄く、前記セラミック材料と、粘着剤と、加熱によって溶融する有機化合物とを少なくとも含んでシート状に成形された接着用セラミックシートを準備するシート準備工程と、転写用フィルムの表面に、前記導体層となる未焼成導体部を形成する転写用フィルム準備工程と、前記未焼成セラミックシートの表面及び裏面の少なくも一方に前記接着用セラミックシートを貼り付けた後、前記有機化合物の融点以上の温度に加熱し前記接着用セラミックシートに粘着力を発現させた状態で、前記接着用セラミックシートの表面に前記転写用フィルムを押し付けて前記未焼成導体部を埋め込むようにして、前記未焼成導体部を転写する導体部転写工程と、前記未焼成導体部を転写した後、前記有機化合物の融点以下の温度まで前記接着用セラミックシートを冷却し、前記転写用フィルムを剥離する導体部形成工程と、前記未焼成導体部が転写された前記接着用セラミックシートを介して前記未焼成セラミックシートを複数積層した後、前記有機化合物の融点以上の温度に加熱し前記接着用セラミックシートに前記粘着力を発現させた状態で、各セラミックシートを積層方向に加圧することにより、前記接着用セラミックシートを介して各未焼成セラミックシートを一体化した未焼成セラミック積層体を形成する積層体形成工程とを含むことを特徴とするセラミック多層基板の製造方法がある。
手段2に記載の発明によると、転写用フィルム準備工程において、転写用フィルムの表面に、導体層となる未焼成導体部が形成される。この場合、転写用フィルムの表面はフラットであるため、位置精度よく確実に未焼成導体部を形成することができる。そして、導体部転写工程では、未焼成セラミックシートの表面及び裏面の少なくも一方に接着用セラミックシートが貼り付けられた後、有機化合物の融点以上の温度に加熱される。この加熱によって溶融した有機化合物が粘着剤の溶剤として機能するため、加熱前には粘着力が発現していなかった接着用セラミックシートに粘着力が発現する。また、接着用セラミックシートは有機化合物が溶融することで軟化する。このため、接着用セラミックシートの表面に転写用フィルムを押し付けると、そのフィルム表面に形成されている未焼成導体部は接着用セラミックシートに埋まり込むようにして転写される。この結果、接着用セラミックシートと未焼成導体部との密着性を十分に確保することができる。また、接着用セラミックシートの表面が十分に柔らかくなっているため、転写時に加える圧力を、従来技術よりも低い圧力(具体的には、1kgf/cm2以上5kgf/cm2以下の低圧力)に低減することができる。このため、未焼成導体部は、押し潰されることなく、その形状が保持された状態で接着用セラミックシートに転写される。そして、積層体形成工程では、未焼成導体部が転写された接着用セラミックシートを介して未焼成セラミックシートを複数積層した後、有機化合物の融点以上の温度に加熱する。この加熱によって有機化合物が溶融して、接着用セラミックシートに粘着力が発現する。従って、比較的低い圧力で積層方向に加圧することにより、各セラミックシートを一体化した未焼成セラミック積層体を形成することができる。
このようにすると、未焼成セラミック積層体における内部応力を低く抑えることができ、焼成時におけるセラミック多層基板の反りを抑えることができる。また、積層体形成工程では、接着用セラミックシートは有機化合物が溶融することで軟化するため、積層時の応力が未焼成導体部に集中することなくシート全体に分散する。このため、未焼成導体部は潰れることはなく、その未焼成導体部のパターン形状(線幅)の変形が少ない。従って、本発明の製造方法でセラミック多層基板を製造すると、ファインピッチの導体層を位置ズレがなく正確に形成することができる。また、導体層とセラミック絶縁層との密着力を十分に確保することができ、さらに基板表面における平坦度を低く抑えることができる。このように、本発明の製造方法によれば、接続信頼性に優れたセラミック多層基板を製造することができる。
転写用フィルムとしては、未焼成導体部の離型性や転写性を有するものであれば、その材質には特に限定されるものではない。具体的には、例えば透明な樹脂製のフィルムを転写フィルムとして用いてもよい。転写用フィルムが透明なフィルムである場合、転写用フィルムに形成された未焼成導体部の形成パターンをフィルムの透過光によって検査し、未焼成導体部が正常に形成されている転写用フィルムを選別するフィルム選別工程を行ってもよい。そして、導体部転写工程では、選別された転写用フィルムを使用して、接着用セラミックシートの表面に未焼成導体部を転写する。この場合、転写用フィルムが透明なフィルムであるため、その表面に形成した未焼成導体部の形成パターンを2値化して精度良く確実に検査することができる。また、未焼成導体部が正常に形成されている転写用フィルムのみを選別して使用することができる。このため、形成パターンが不良となった未焼成導体部が接着用セラミックシートに転写されて後工程に流動するといった問題が回避される。この結果、導体層の形成不良に伴う製品不良率を低く抑えることができる。
導体部転写工程では、未焼成導体部を転写した後、有機化合物の融点以下の温度に冷却して転写用フィルムを剥離してもよい。この場合、有機化合物の融点以下の温度に接着用セラミックシートを冷却すると、有機化合物が固化するため、接着用セラミックシートの粘着性がなくなる。このため、接着用セラミックシートの表面から転写用フィルムを容易に剥離することができる。
積層体形成工程では、接着用セラミックシートが引張強度で50gF以上の粘着力を発現させた状態で各セラミックシートを積層方向に加圧する必要がある。この場合、例えば100gF以上の粘着力を発現させた状態で加圧してもよく、150gF以上の粘着力を発現させた状態で加圧してもよい。このように、接着用セラミックシートの粘着力を高めることで、より低い加圧力で未焼成セラミック積層体を形成することが可能となる。
積層体形成工程では、生産性の低下を伴わない範囲で加圧時の圧力及び時間を適宜設定することが可能であるが、例えば1kgf/cm2以上5kgf/cm2以下の低圧力、かつ1秒以上120秒以下の短時間の条件で、各セラミックシートを積層方向に加圧してもよい。このように、比較的低い圧力、かつ短時間で未焼成セラミック積層体を形成することにより、未焼成セラミック積層体における内部応力を低く抑えることができる。また、積層体形成工程での加圧時間が短いため、セラミック多層基板を効率よく製造することができる。さらに、高圧プレス機などの大掛かりな装置が不要となる。このため、セラミック多層基板の製造コストを低く抑えることができる。
シート準備工程で準備される接着用セラミックシートは、例えば、セラミック材料に対して粘着剤及び有機化合物を前記セラミック材料よりも少ない重量で含有させたものであってもよく、セラミック材料、粘着剤及び有機化合物の順に重量が少なくなるようにこれらを含有させたものであってもよい。さらには、セラミック材料100重量部に対して、粘着剤を25重量部以上の割合で含有させ、かつ、有機化合物を3重量部以上15重量部以下の割合で含有させたものであってもよい。このような割合で粘着剤や有機化合物を接着用セラミックシートに含ませることで、引張強度で50gF以上の粘着力を確実に発現させることができる。
未焼成セラミックシートは、樹脂材料からなる有機バインダを含んで成形され、接着用セラミックシートは、有機バインダを含まずに成形されていてもよい。この場合、接着用セラミックシートにおいて粘着剤をより多く含ませることができ、粘着力を十分に確保することができる。
セラミック多層基板には、複数のセラミック絶縁層においてその厚さ方向に貫通するビア穴内にビア導体が設けられ、ビア導体によって各導体層が接続されていてもよい。このセラミック多層基板を製造する場合、積層体形成工程の前に、接着用セラミックシートの厚さ方向に貫通するビア穴を形成するとともにそのビア穴内にビア導体となる未焼成ビア導体部を形成するビア導体部形成工程を行ってもよい。このようにすると、各接着用セラミックシートの所望の位置にビア導体を形成することができ、それらビア導体を介して各導体層を確実に接続することができる。また、未焼成セラミック積層体において全ての接着用セラミックシートを貫通する未焼成ビア導体部を形成する場合には、積層体形成工程の後にビア導体部形成工程を行ってもよい。このようにすれば、セラミック多層基板において、全てのセラミック絶縁層を貫通するビア導体を位置ズレがなく確実に形成することができる。
セラミック多層基板の側面には、何らかの構造物が設けられていてもよく、例えばキャスタレーションが設けられていてもよい。このセラミック多層基板を製造する場合、積層体形成工程の前に、接着用セラミックシートの厚さ方向に貫通するキャスタレーション形成用穴を形成する工程を行ってもよいし、積層体形成工程の後に、未焼成セラミック積層体の積層方向に貫通するキャスタレーション形成用穴を形成する工程を行ってもよい。
シート準備工程で準備される接着用セラミックシートは、離型材上に形成される。ビア導体部形成工程では、接着用セラミックシートから離型材を剥離した後に未焼成ビア導体部を形成してもよいし、接着用セラミックシートに離型材を取り付けたままで、未焼成ビア導体部を形成してもよい。
有機化合物は、60℃以上の温度で溶融する有機化合物であり、常温にて固体状である高沸点アルコールを用いてもよい。具体的な有機化合物としては、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコールなどの高沸点アルコールを挙げることができる。また、高沸点アルコール以外には、ラウリン酸、ミリスチン酸などの有機化合物を挙げることができる。
セラミック絶縁層としては、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化珪素、窒化珪素などといった高温焼成セラミックの焼結体が好適に使用される。また、ホウケイ酸系ガラスやホウケイ酸鉛系ガラスにアルミナ等の無機セラミックフィラーを添加したガラスセラミックのような低温焼成セラミックの焼結体をセラミック絶縁層として使用してもよい。さらに、用途に応じて、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ストロンチウムなどの誘電体セラミックの焼結体をセラミック絶縁層として使用してもよい。
導体層、ビア導体及びキャスタレーションとしては特に限定されないが、例えば、メタライズ導体であってもよい。なお、メタライズ導体となる未焼成導体部は、金属粉末を含む導体ペーストを従来周知の手法、例えばスクリーン印刷法やグラビア印刷法などの方法で塗布することで、転写用フィルムに形成される。そして、その未焼成導体部をセラミックグリーンシートに転写した後に焼成することにより、メタライズ導体が形成される。同時焼成法によってメタライズ導体及びセラミック絶縁層を形成する場合、メタライズ導体中の金属粉末は、セラミック絶縁層の焼成温度よりも高融点である必要がある。例えば、セラミック絶縁層がいわゆる高温焼成セラミック(例えばアルミナ等)からなる場合には、メタライズ導体中の金属粉末として、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)等やそれらの混合系が選択可能である。セラミック絶縁層がいわゆる低温焼成セラミック(例えばガラスセラミック等)からなる場合には、メタライズ導体中の金属粉末として、銅(Cu)または銀(Ag)等やそれらの混合系が選択可能である。
本発明のセラミック多層基板は、水晶パッケージ、SAWフィルタ用パッケージ、MPUパッケージ、C−MOSパッケージ、CCDパッケージ、LEDパッケージ、チップサイズパッケージ(CSP)、セラミックチップサイズパッケージ(CCSP)などの様々なパッケージに利用することができる。
[第1の実施の形態]
以下、本発明をセラミック多層基板に具体化した第1の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1に示されるように、本実施の形態のセラミック多層基板11は、上面12及び下面13を有する矩形平板状の部材であり、ICチップなどの電子部品を実装するために用いられる。セラミック多層基板11は、複数のセラミック絶縁層14,15と導体層18とを交互に積層してなる多層配線基板である。本実施の形態において、各セラミック絶縁層14,15は、いずれもアルミナ焼結体からなる。また、導体層18は、例えばタングステンを主体とするメタライズ導体層である。なお、本実施の形態のセラミック多層基板11では2層構造としたが、3層以上の多層構造を採用しても構わない。
セラミック多層基板11(セラミック絶縁層14)の上面12には、ICチップ等の電子部品搭載用の複数の端子パッド21が形成されている。また、セラミック多層基板11(セラミック絶縁層15)の下面13には、図示しないマザーボードと電気的に接続するための複数の端子パッド22が形成されている。端子パッド21は、その表面が基板上面12と面一となるようセラミック絶縁層14に埋まり込んでいる。また、端子パッド22は、その表面が基板下面13と面一となるようセラミック絶縁層15に埋まり込んでいる。これら端子パッド21,22もタングステンを主体とするメタライズ導体層である。また、セラミック絶縁層14,15の界面に、所定形状の導体層18が形成されている。各導体層18は、セラミック絶縁層15側に埋まり込んでいる。
各セラミック絶縁層14,15には、複数のビア穴24が形成されており、各ビア穴24内にはタングステンを主体とするビア導体25が設けられている。ビア導体25は、各導体層18、端子パッド21,22を相互に電気的に接続している。
次に、上記セラミック多層基板11を製造する方法について図2〜図8に基づいて説明する。
まず、セラミック材料としてのアルミナ粉末、液状の粘着剤、溶剤、加熱によって溶融する有機化合物等を混合してスラリーを作製する。このスラリー形成時には、アルミナ粉末の100重量部に対して、粘着剤を25重量部以上100重量部以下の割合で含有させ、かつ加熱によって溶融する有機化合物を3重量部以上15重量部以下の割合で含有させている。そしてこのスラリーを従来周知の手法(例えばドクターブレード法やカレンダーロール法)によりシート状に成形し、乾燥後、所定サイズに切断する。この結果、図2に示すような表面31及び裏面32を有するシート状の接着用セラミックシート33を準備する(シート準備工程)。
なお、本実施の形態において、接着用セラミックシート33は、フィルム状の離型材34(キャリアフィルム)の上面に、例えば30μmの厚さで形成される。その後、接着用セラミックシート33から離型材34が剥離される。接着用セラミックシート33に含まれる粘着剤としては、例えばアクリル系溶剤タイプの接着剤(ビックテクノス社製AR-2040)を用いる。また、有機化合物としては、例えば融点が56℃程度のセチルアルコール(高沸点アルコール)を用いている。具体的には、シート準備工程において、スラリーを離型材34にキャステイングする際に、スラリー自体を乾燥させる。その際の接着剤の溶剤が抜けて、接着剤の接着性能が低下する。さらに、セチルアルコール自体もスラリー中では溶剤に溶けているが、この乾燥においては融点以下なので固化する。このとき、固化したセチルアルコールは、シート表面側に集まった状態となる。従って、接着用セラミックシート33の表面は、粘着性のないセチルアルコールが大半を占め、接着性能の落ちた接着剤が少し露出している状態となる。その結果、常温では、粘着性を発現しない接着用セラミックシート33が形成され、シートの工程流動は容易となる。また、接着用セラミックシート33が粘着性を発現しない状態ではその表面から離型材34を容易に剥離することができる。
そして、各接着用セラミックシート33における複数箇所に、そのセラミックシート33の厚さ方向に貫通するビア穴24を形成する(図3参照)。これらビア穴24は、例えばレーザを用いたレーザ穴あけ加工にて形成される。なお、レーザ穴あけ加工以外に、パンチング(打ち抜き)加工などの他の手法によってビア穴24を形成してもよい。またここでは、接着用セラミックシート33の接着性が発現していないので、上記工程を流動する際に、治具などに接着用セラミックシート33が張り付いてしまうといった不具合はない。
その後、従来周知のペースト印刷装置を用い、図4に示されるように、ビア穴24内に導体ペーストを充填することで、ビア導体25となる未焼成ビア導体部40を形成する(ビア導体部形成工程)。なおここでは、導体ペーストとして、タングステンの金属粉末を含んだタングステンペーストが用いられる。また、接着用セラミックシート33の接着性が発現していないので、上記工程を流動する際に、治具などに接着用セラミックシート33が張り付いてしまうといった不具合はない。
そして次に、図5に示されるように、転写用フィルム45の表面に、未焼成導体部41を形成する(転写用フィルム準備工程)。なおここでは、透明な転写用フィルム45の表面上にマスク(図示略)を用いてタングステンペーストを印刷することで、導体層18となる未焼成導体部41をパターン形成する。また同様に、タングステンペーストを印刷することで、転写用フィルム45の表面上に端子パッド21,22となる未焼成導体部41をパターン形成する。この後、所定の温度に加熱して、各転写用フィルム45に形成した未焼成導体部41を乾燥させる。
次に、転写用フィルム45を透過する透過光によって、転写用フィルム45に形成した未焼成導体部41の画像を取得し、さらに2値化処理を行って未焼成導体部41の形成パターンを検査する。この検査結果に基づいて、未焼成導体部41が正常に形成されている転写用フィルム45を選別する(フィルム選別工程)。
そして、選別した転写用フィルム45を用いて次工程の導体部転写工程を行う。なお、フィルム選別工程において、未焼成導体部41にパターン異常があり選別から漏れた転写用フィルム45は、別工程である回収工程に送られる。そして、その転写用フィルム45において未焼成導体部41に溶剤を加えることにより、その未焼成導体部41が導体ペーストとして回収され、上述した印刷工程で再利用される。
導体部転写工程では、先ず、図示しないヒーターブロック等を用いて、各接着用セラミックシート33をセチルアルコールの融点以上の温度(例えば、70℃)に加熱する。このとき、接着用セラミックシート33においてセチルアルコールが溶解して液状化する。そして、液状化したセチルアルコールは接着剤の溶剤となってその接着剤の接着性能が復活し、さらに接着用セラミックシート33の表面は、接着剤が大半をしめるので、粘着性が発現する。具体的には、引張強度で50gF以上の粘着力を接着用セラミックシート33に発現させる。そして、2kgf/cm2程度の低圧力かつ5秒間の短時間の条件で、下側のセラミック絶縁層15となる接着用セラミックシート33の表面31及び裏面32に転写用フィルム45を押し付けて未焼成導体部41を埋め込むようにして、未焼成導体部41を転写する(図6参照)。その後、接着用セラミックシート33が粘着性を発現しない温度、つまり有機化合物の融点以下の温度(例えば、50℃)まで接着用セラミックシート33を冷却し、転写用フィルム45を剥離する。この結果、下側のセラミック絶縁層15となる接着用セラミックシート33の表面31及び裏面32に未焼成導体部41を形成する(図7参照)。
一方、上側のセラミック絶縁層14となる接着用セラミックシート33も同様に、上述したビア導体部形成工程や導体部転写工程を行う。これら工程を経て、接着用セラミックシート33のビア穴24に未焼成ビア導体部40を形成するとともにセラミックシート33の表面31に未焼成導体部41を形成する(図7参照)。なお、本実施の形態では、下側のセラミック絶縁層15となる接着用セラミックシート33の表面31に導体層18となる未焼成導体部41を形成した。この下側の接着用セラミックシート33の表面31に未焼成導体部41を転写しないで、上側のセラミック絶縁層14となる接着用セラミックシート33の裏面32に未焼成導体部41を転写するように変更してもよい。
その後、積層体形成工程を行う。具体的には、図8に示されるように、下側の接着用セラミックシート33において未焼成導体部41を形成した表面31上に上側の接着用セラミックシート33を重ね合わせて各接着用セラミックシート33を積層する。
そして、図示しないヒーターブロック等を用いて、各接着用セラミックシート33をセチルアルコールの融点以上の温度(例えば、70℃)に加熱する。この加熱により、引張強度で50gF以上の粘着力を接着用セラミックシート33に発現させる。その後、1kgf/cm2以上5kgf/cm2以下の低圧力、かつ、1秒以上120秒以下の短時間の条件で、各接着用セラミックシート33を積層方向に加圧する。より具体的には、2kgf/cm2の圧力、5秒の加圧時間で各セラミックグリーンシート43を加圧する。この結果、各接着用セラミックシート33を一体化して未焼成セラミック積層体42を形成する(図8参照)。
なおこの積層体形成工程において、ヒーターブロックと接着用セラミックシート33との間には離型材を介在させ、その離型材を介して各接着用セラミックシート33を加熱するとともに加圧する。この離型材としては、シート準備工程で使用したものを用いてもよし、それとは別に用意してもよい。
さらに、転写用フィルム45を離型材として使用してもよい。この場合、導体部転写工程では、上側の接着用セラミックシート33の表面31に転写用フィルム45を貼り付けたまま残すとともに、下側の接着用セラミックシート33の裏面32に転写用フィルム45を貼り付けたまま残す。一方、下側の接着用セラミックシート33の表面31から転写用フィルム45を剥離する。そして、それら接着用セラミックシート33を重ね合わせた状態で、転写用フィルム45を介してヒーターブロックにより各接着用セラミックシート33を加熱するとともに加圧して未焼成セラミック積層体42を形成する。その後、未焼成セラミック積層体42を形成した後、粘着性を発現しない温度まで冷却した状態で転写用フィルム45を剥離する。
次に、未焼成セラミック積層体42をアルミナが焼結しうる所定の温度(例えば1500℃〜1800℃程度の温度)に加熱する焼成工程を行う。この焼成工程を経ると、各接着用セラミックシート33が焼結してセラミック多層基板11が得られる。またこのとき、タングステンペーストの焼結によって、導体層18、端子パッド21,22、ビア導体25が形成される。なお、セラミック焼成時には、接着用セラミックシート33の粘着剤が脱脂されて焼失される。その後、接着用セラミックシート33のアルミナが焼結し、各セラミック絶縁層14,15が一体化したセラミック多層基板11が得られる。
なお、本発明者らは、上記製造方法で製造したセラミック多層基板11を厚さ方向に切断し、その基板断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。その結果、各セラミック絶縁層14,15間では、接着用セラミックシート33が介在したことによる境界の見極めが困難であり、クラックがなく均一にセラミックが焼結されていることが確認された。
また、本発明者らは、積層体形成工程における接着用セラミックシート33の引張強度(接着力)を図9に示す試験装置50を用いて確認した。その結果を表1に示している。
具体的には、接着用セラミックシート33を70℃に加熱して接着用セラミックシート33に粘着性を発現させる。その後、図9に示されるように、接着用セラミックシート33を離型材34を介して平坦なテーブル51上に置くとともに、そのセラミックシート33の表面31に分銅52(具体的には、5gの分銅)を置く。さらに、接着用セラミックシート33が浮かび上がらないように分銅52の周囲部分を円筒状の押さえ治具53で押さえつける。この後、バネ秤54を上昇させることでワイヤ55を介して分銅52を引っ張り、接着用セラミックシート33から分銅52が剥がれた時点の荷重を接着用セラミックシート33の引張強度として測定する。ここでは、3種類の異なる粘着剤をそれぞれ含ませて接着用セラミックシート33のサンプル1〜3を形成し、それらサンプル1〜3の接着用セラミックシート33について、3回ずつ引張強度を確認した。
表1に示されるように、各サンプル1〜3の接着用セラミックシート33では、引張強度で70gF以上の粘着力を有することが確認された。特に、サンプル1またはサンプル2の接着用セラミックシート33では、150gF以上の粘着力が発現されることを確認することができた。なお、常温においても同様に引張強度を測定した。その結果、常温の場合では、各サンプル1〜3の接着用セラミックシート33の粘着力が0gFであり、粘着力が発現していないことを確認した。上記した製造方法では冷却/加熱を繰り返しているが、接着用セラミックシート33における粘着性の発生の繰り返しは5回程度まで復元できることを確認した。
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施の形態の製造方法では、転写用フィルム準備工程において、転写用フィルム45の表面に、未焼成導体部41が形成される。この場合、転写用フィルム45の表面はフラットであるため、位置精度よく確実に未焼成導体部41を形成することができる。そして、導体部転写工程において、接着用セラミックシート33が有機化合物の融点以上の温度に加熱される。この加熱によって溶融した有機化合物が粘着剤の溶剤として機能して接着用セラミックシート33に粘着力が発現する。また、接着用セラミックシート33は、有機化合物が溶融することで軟化する。このため、接着用セラミックシート33の表面31及び裏面32に転写用フィルム45を押し付けると、そのフィルム表面に形成されている未焼成導体部41は接着用セラミックシート33に埋まり込むようにして転写される。この結果、接着用セラミックシート33と未焼成導体部41との密着性を十分に確保することができる。またこのとき、接着用セラミックシート33の表面が十分に柔らかくなっているため、従来の転写時よりも低い圧力(具体的には、2kgf/cm2程度の低圧力)で加圧される。このため、未焼成導体部41は、押し潰されることなく、その形状が保持された状態で接着用セラミックシート33に転写される。そして、積層体形成工程では、未焼成導体部41が転写された接着用セラミックシート33を複数積層した後、有機化合物の融点以上の温度に加熱する。この結果、接着用セラミックシート33に粘着力が発現するため、比較的低い圧力で積層方向に加圧することにより、各接着用セラミックシート33を一体化した未焼成セラミック積層体42を形成することができる。また、積層体形成工程では、接着用セラミックシート33は有機化合物が溶融することで軟化しているため、積層時の応力が未焼成導体部41に集中することなくシート全体に分散する。このため、未焼成導体部41は潰れることはなく、その未焼成導体部41のパターン形状(線幅)の変形が少なくなる。従って、本実施の形態の製造方法でセラミック多層基板11を製造すると、ファインピッチの導体層18を位置ズレがなく正確に形成することができる。また、導体層18及び端子パッド21,22とセラミック絶縁層14,15との密着力を十分に確保することができ、さらに基板表面における平坦度を低く抑えることができる。このように、本実施の形態の製造方法によれば、接続信頼性に優れたセラミック多層基板11を製造することができる。
(2)本実施の形態の製造方法では、導体部転写工程において、未焼成導体部41は接着用セラミックシート33に埋まり込むようにして転写されるため、接着用セラミックシート33の平坦度を十分に確保することができる。従って、従来技術のような面押し工程を行う必要がなく、製造工程の簡素化を図ることができる。
(3)本実施の形態では、転写用フィルム45が透明なフィルムであるため、転写用フィルム45の表面に形成した未焼成導体部41の形成パターンを2値化して精度良く確実に検査することができる。また、未焼成導体部41が正常に形成されている転写用フィルム45のみを選別して使用することができる。このため、形成パターンが不良となった未焼成導体部41が接着用セラミックシート33に転写され後工程に流動するといった問題が回避される。この結果、導体層18や端子パッド21,22の形成不良に伴う製品不良率を低く抑えることができる。
(4)本実施の形態では、1kgf/cm2以上5kgf/cm2以下の低圧力、かつ、1秒以上120秒以下の短時間の条件で、各接着用セラミックシート33を積層方向に加圧することで、未焼成セラミック積層体42を形成している。このようにすると、未焼成セラミック積層体42における内部応力を低く抑えることができ、焼成時におけるセラミック多層基板11の反りを抑えることができる。また、各接着用セラミックシート33の積層時における加圧時間が短いため、セラミック多層基板11を効率よく製造することができる。さらに、高圧プレス機などの大掛かりな装置が不要となるため、セラミック多層基板11の製造コストを低く抑えることができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明を具体化した第2の実施の形態を図面に基づき説明する。本実施の形態では、セラミック多層基板11の製造方法が上記第1の実施の形態と異なる。なお、セラミック多層基板11は、上記第1の実施の形態と同じ構成である。以下、本実施の形態の製造方法について詳述する。
本実施の形態では、シート準備工程において、セラミックグリーンシートと接着用セラミックシートとを作製する。詳しくは、セラミック材料としてのアルミナ粉末、有機バインダ、溶剤等を混合してスラリーを作製する。そしてこのスラリーを従来周知の手法(例えばドクターブレード法やカレンダーロール法)によりシート状に成形し、所定サイズに切断することで、図10に示すようなセラミックグリーンシート61(未焼成セラミックシート)を複数枚準備する。なお、本実施の形態において、セラミックグリーンシート61は、例えば70μm以上の厚さで形成される。
また、上記第1の実施の形態と同じ形成材料及び形成方法によって、図10に示すような接着用セラミックシート62を準備する。なお、本実施の形態において、接着用セラミックシート62は、フィルム状の離型材34の上面に、例えば10μm以上50μm以下の厚さで形成されている。
そして、セラミックグリーンシート61の表面63及び裏面64に接着用セラミックシート62をそれぞれ配置する。そして、60℃に加熱したヒーターブロック(図示略)により離型材34を介して低圧(例えば、3kgf/cm2以下の圧力)でプレスする(シート貼付工程)。このとき、接着用セラミックシート62においてセチルアルコールが溶解して液状化する。そして、液状化したセチルアルコールは接着剤の溶剤となってその接着剤の接着性能が復活するため、接着用セラミックシート62に粘着性が発現する。この結果、低圧のプレスにより、接着用セラミックシート62をセラミックグリーンシート61の表面63及び裏面64に圧着させることができる。その後、常温まで冷却し接着用セラミックシート62から離型材34を剥離する(図11参照)。このとき、室温まで冷却されているので、接着用セラミックシート62の離型材34があった面は粘着性が発現していない。
このように、セラミックグリーンシート61の表面63及び裏面64に接着用セラミックシート62を貼り付けた状態で、ビア導体部形成工程や導体部形成工程を行う。具体的には、各セラミックグリーンシート61における複数箇所に、そのシートの厚さ方向に貫通するビア穴24を形成する(図12参照)。ここでは、セラミックグリーンシート61の表面63及び裏面64に配置されている接着用セラミックシート62にもビア穴24が貫通形成される。これらビア穴24は、例えばレーザを用いたレーザ穴あけ加工にて形成される。なお、レーザ穴あけ加工以外に、パンチング(打ち抜き)加工などの他の手法によってビア穴24を形成してもよい。また、接着用セラミックシート62の接着性が発現していないので、上記工程を流動する際に、治具などにグリーンシート61が張り付いてしまうといった不具合はない。
その後、従来周知のペースト印刷装置を用い、図13に示されるように、ビア穴24内にタングステンペーストを充填することで、ビア導体25となる未焼成ビア導体部40を形成する(ビア導体部形成工程)。なおここでは、接着用セラミックシート62の接着性が発現していないので、上記工程を流動する際に、治具などにグリーンシート61が張り付いてしまうといった不具合はない。
そして、第1の実施の形態と同様の転写用フィルム準備工程を行うことで、転写用フィルム45の表面に、未焼成導体部41を形成する(図6参照)。また、第1の実施の形態と同様にフィルム選別工程を行う。
その後、導体部転写工程では、先ず、セラミックグリーンシート61の表面63及び裏面64に貼り付けた各接着用セラミックシート62を図示しないヒーターブロック等を用いてセチルアルコールの融点以上の温度(例えば、70℃)に加熱する。この加熱によって、接着用セラミックシート62の表面に粘着性が発現する。そして、2kgf/cm2程度の低圧力かつ5秒間の短時間の条件で、各接着用セラミックシート62の表面に転写用フィルム45を押し付けて未焼成導体部41を埋め込むようにして、未焼成導体部41を転写する(図14参照)。その後、接着用セラミックシート62が粘着性を発現しない温度、つまり有機化合物の融点以下の温度(例えば、50℃)まで接着用セラミックシート62を冷却し、転写用フィルム45を剥離する。この結果、下側のセラミック絶縁層15となるセラミックグリーンシート61の表面63及び裏面64に未焼成導体部41を形成する(図15参照)。
一方、上側のセラミック絶縁層14となるセラミックグリーンシート61も同様に、上述したシート貼付工程を行って、セラミックグリーンシート61の表面63に接着用セラミックシート62を貼り付けた後、ビア導体部形成工程及び導体部転写工程を行う。これら工程を経て、セラミックグリーンシート61及び接着用セラミックシート62のビア穴24に未焼成ビア導体部40を形成するとともにセラミックグリーンシート61の表面63側において接着用セラミックシート62に埋め込むようにして未焼成導体部41を形成する(図15参照)
その後、上記第1の実施の形態と同様に、積層体形成工程を行う。具体的には、図16に示されるように、下側のセラミックグリーンシート61の表面63側(未焼成導体部41を形成した接着用セラミックシート62の表面)の上に、上側のセラミックグリーンシート61を重ね合わせて各セラミックグリーンシート61を積層する。そして、図示しないヒーターブロック等を用いてセチルアルコールの融点以上の温度(例えば、70℃)に加熱する。この加熱により、引張強度で50gF以上の粘着力を接着用セラミックシート62に発現させる。その後、1kgf/cm2以上5kgf/cm2以下の低圧力、かつ、1秒以上120秒以下の短時間の条件で、各セラミックグリーンシート61を積層方向に加圧する。この結果、接着用セラミックシート62を介して各セラミックグリーンシート61を一体化して未焼成セラミック積層体65を形成する(図16参照)。
その後、未焼成セラミック積層体65をアルミナが焼結しうる所定の温度(例えば1500℃〜1800℃程度の温度)に加熱する焼成工程を行う。この焼成工程を経ることで、各セラミックグリーンシート61が焼結して図1のセラミック多層基板11が得られる。
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施の形態の製造方法でも、第1の実施の形態と同様に、ファインピッチの導体層18を位置ズレがなく正確に形成することができる。また、導体層18及び端子パッド21,22とセラミック絶縁層14,15との密着力を十分に確保することができる。従って、本実施の形態の製造方法によれば、接続信頼性に優れたセラミック多層基板11を製造することができる。さらに、導体部転写工程において、未焼成導体部41は接着用セラミックシート62に埋まり込むようにして転写されるため、未焼成導体部41の凹凸を接着用セラミックシート62にて吸収することができる。従って、セラミック多層基板11の平坦度を十分に確保することができる。この場合、従来技術のような面押し工程を行う必要がなく、製造工程を簡素化することができる。さらに、セラミックグリーンシート61は、積層体形成工程中には軟化しないため加圧によって不用意に変形することはなく、未焼成導体部41間のピッチ等のズレやセラミックグリーンシート61間の積層ズレを低く抑えることができる。この結果、セラミック多層基板11の寸法ズレを低減することができる。
(2)本実施の形態の製造方法では、各セラミックグリーンシート61を比較的低圧力で積層方向に加圧することで、未焼成セラミック積層体65を形成することができる。このため、未焼成セラミック積層体65における内部応力を低く抑えることができ、焼成時におけるセラミック多層基板11の反りを抑えることができる。さらに、高圧プレス機などの大掛かりな装置が不要となるため、セラミック多層基板11の製造コストを低く抑えることができる。
(3)本実施の形態の場合では、セラミックグリーンシート61は、樹脂材料からなる有機バインダを含んで成形され、接着用セラミックシート62は、有機バインダを含まずに成形されている。この場合、接着用セラミックシート62において粘着剤をより多く含ませることができ、接着用セラミックシート62の粘着力を十分に確保することができる。
(4)本実施の形態では、セラミックグリーンシート61の表面63及び裏面64に接着用セラミックシート62を貼り付けることにより、セラミックグリーンシート61の常温における強度を高めることができる。従って、各工程間でのシート流動時にセラミックグリーンシート61の変形を抑制することができ、作業性を向上させることができる。
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施の形態では、積層体形成工程の前にビア導体部形成工程を行っていたが、積層体形成工程の後にビア導体部形成工程を行うようにしてもよい。具体的には、先ず、導体部転写工程を施した複数の接着用セラミックシート33やセラミックグリーンシート61を積層して未焼成セラミック積層体42,65を形成する。そして、未焼成セラミック積層体42,65において全ての接着用セラミックシート33,62やセラミックグリーンシート61を貫通するビア穴24及び未焼成ビア導体部40を形成した後、焼成工程を行う。このようにすると、セラミック多層基板11において、全てのセラミック絶縁層14,15を貫通するビア導体25を位置ズレがなく確実に形成することができる。
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した各実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)手段1または2において、前記導体部転写工程では、前記未焼成導体部を転写した後、前記有機化合物の融点以下の温度に冷却して前記転写用フィルムを剥離すること特徴とするセラミック多層基板の製造方法。
(2)手段1または2において、前記積層体形成工程では、前記接着用セラミックシートが引張強度で50gF以上の粘着力を発現させた状態で、各セラミックシートを積層方向に加圧することを特徴とするセラミック多層基板の製造方法。
(3)手段1または2において、前記積層体形成工程では、前記接着用セラミックシートが引張強度で150gF以上の粘着力を発現させた状態で、各セラミックシートを積層方向に加圧することを特徴とするセラミック多層基板の製造方法。
(4)手段1または2において、前記積層体形成工程では、1kgf/cm2以上5kgf/cm2以下の低圧力、かつ、1秒以上120秒以下の短時間の条件で、各セラミックシートを積層方向に加圧することを特徴とするセラミック多層基板の製造方法。
(5)手段1または2において、前記シート準備工程で準備される前記接着用セラミックシートは、前記セラミック材料100重量部に対して、前記粘着剤を25重量部以上の割合で含有させ、かつ、前記有機化合物を3重量部以上15重量部以下の割合で含有させたものであることを特徴とするセラミック多層基板の製造方法。
(6)手段2において、前記未焼成セラミックシートは、樹脂材料からなる有機バインダを含んで成形され、前記接着用セラミックシートは、前記有機バインダを含まずに成形されることを特徴とするセラミック多層基板の製造方法。
(7)手段1または2において、前記積層体形成工程の後に、前記未焼成セラミック積層体を焼結させて、前記セラミック絶縁層及び前記導体層を形成する焼成工程をさらに含むことを特徴とするセラミック多層基板の製造方法。
(8)手段1または2において、前記有機化合物は、60℃以上の温度で溶融する有機化合物であることを特徴とするセラミック多層基板の製造方法。
(9)手段1または2において、前記有機化合物は、常温にて固体状である高沸点アルコールであることを特徴とするセラミック多層基板の製造方法。