JP6004846B2 - 吸音材 - Google Patents

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Description

本発明は、薄くて軽量でありながら幅広い周波数領域において優れた吸音性能を持つ吸音材に関し、さらには、車輌、電気製品、建築材などのスペースを有効利用する必要のある分野おいて好適な吸音材に関するものである。
現在、車両、電気製品、建築材などの吸音材において、軽量性・厚み低減・吸音性・成形性・環境性等が要求されている。従来用いられているウレタン等の発泡樹脂体を芯材にして、その両面に補強用の面材を積層及び接合した吸音材がある(特許文献1)。しかし、ポリウレタンを燃焼すると猛毒のシアンガスが発生し、ウレタン自身環境性の点で問題となりやすいため、最近では脱ウレタンの要求がある。また、ガラス繊維のニードルパンチマットを芯材にして、その両面に補強用の面材を積層及び接合した吸音材がある(特許文献2、3)。しかしながら、ガラス繊維は有機繊維と比較して比重が高いためガラス繊維のみから成る吸音材を利用することは、軽量化の観点から望ましくない。そこで近年では、より軽量な有機繊維構造体を用いた種々の吸音材が提案されている。
このような繊維構造体による吸音現象は、気体の通過する連続孔の形状による吸収や繊維自体による振動の吸収などが複雑に絡み合ったものであると説明されている。一般に、繊維構造体においては、繊維の種類が同じであればその径が細い方が、比表面積が大きくなることに起因して吸音性が向上することが知られており、このような繊維構造体を比較的容易に製造できる方法として、熱可塑性溶融ポリマーをオリフィスから吐出し、その近傍より噴出する高温高速気体によって細化繊維化し、これを金網等のベルトコンベアー上に捕集して不織布を得る、いわゆるメルトブロー法で得られた各種ポリオレフィン、ポリエステル不織布や、分割繊維などの極細繊維用いる方法が提案されている。
例えば、断面直径が6μm以下の極細繊維を含有する目付が30〜200g/mの不織布と、断面直径が7〜40μmで目付が50〜2000g/mの短繊維不織布とがこれらの繊維の交絡により一体化されていることを特徴とする吸音材(特許文献4)や繊度1.0〜10dtexで面密度100〜500g/mのニードルパンチ有機繊維不織布の片側一面に、主に繊度1.0dtex以下で面密度20〜100g/mのメルトブロー熱可塑性繊維不織布が積層され、さらにニードルパンチされて、積層体全体の厚みが2〜30mmであることを特徴とする吸音材(特許文献5)が提案されている。これらの吸音材は、2種以上の不織布を積層するのにニードルパンチ処理を施している。一般的に十分にニードルパンチをした場合、ヘタリによる厚みの減少が問題になるのに加え、ニードルの針孔による吸音性能の低下も懸念される。
特開平7−1636号公報 特開平6−183303号公報 特開平4−308264号公報 特開2001−279567号公報 特開2002−200687号公報
本発明は、上記従来技術を背景になされたもので、その目的は、薄くて軽量であり、幅広い周波数領域において優れた吸音性能を有する吸音材を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の繊維直径、平均見掛け密度、空隙率を有する不織布としたとき、それらの効果が相まって、薄い形状としても幅広い周波数領域において極めて高い吸音性能を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば、不織布を含む吸音材であって、該不織布が、連続繊維で構成され、目付300g/m以下、厚み10mm以下であり、該吸音材のJIS A 1405の垂直入射法により測定された周波数3000Hzの吸音率が30%以上、周波数4000Hzの吸音率が60%以上、かつ周波数6000Hzの吸音率が80%以上であり、該連続繊維の平均繊維直径が0.1〜5μmであり、該連続繊維の融点もしくは熱分解温度が300℃以上であり、かつ該不織布の200℃での乾熱収縮率が2%以下であることを特徴とする吸音材が提供される。
本発明の吸音材は、薄くて軽量であるにもかかわらず、幅広い周波数領域において優れた吸音性能を発揮することができる。
本発明を以下の好適例により説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明の吸音材は、不織布を含む吸音材であって、該不織布が、連続繊維で構成され、目付300g/m以下、好ましくは200g/m以下、より好ましくは180g/m以下、厚みが、10mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは1mm以下、特に好ましくは0.5mm以下である。
本発明の吸音材においては、JIS A 1405の垂直入射法により測定された周波数3000Hzの吸音率が30%以上、好ましくは40%以上、周波数4000Hzの吸音率が60%以上、好ましくは70%以上、周波数6000Hzの吸音率が80%以上、好ましくは85%以上であることが肝要である。本発明においては、前記の極めて薄い吸音材であるにも関わらず、広い周波数領域において高い吸音特性を有していることが特徴である。
本発明においては、かかる記要件を満たす上で、前記不織布が、次の要件を全て満足していることが好ましい。
(a)不織布を構成する連続繊維の平均繊維直径が0.1〜5μm
(b)不織布の平均見掛け密度が0.14〜1.24g/cm
(c)不織布の空隙率が10〜90%
以下、(a)〜(c)の各要件について詳述する。本発明においては、(a)不織布を構成する連続繊維の平均繊維直径が、好ましくは0.1〜5μmであり、より好ましくは0.3〜4μm、さらに好ましくは0.4〜3μm、特に好ましくは0.6〜3μmである。平均繊維直径が0.1μm未満の場合は、得られる不織布の強力が小さく、破損し易くなる。一方、平均繊維直径が5μmを超える場合は、不織布を構成する繊維の比表面積が小さくなり、目的とする吸音性能が得られ難くなる傾向にある。また、本発明においては、平均繊維直径を上記範囲とし、不織布にカレンダー加工等を行い、表面粗さを前記のようにコントロールすることが容易になる。これにより、表面粗さの適正化により音を封じ込める効果と繊維の比表面積が向上していることの効果が相まって、高い吸音特性を発揮することができる。なお、本発明の不織布を構成する繊維の平均繊維直径は、不織布の電子顕微鏡写真で確認することのできる繊維の直径を意味し、具体的には100本の繊維の巾を計測して得ることができる。
本発明においては、(b)不織布の見かけ密度は、好ましくは0.14〜1.24g/cmであり、より好ましくは0.21〜1.1g/cm、さらに好ましくは0.27〜0.97g/cmである。不織布の見掛け密度が0.14g/cm未満では、外圧がかかった時に、厚みの低下し易く、取扱い性が悪くなる傾向にある。一方、不織布の見掛け密度が1.24g/cmを越えると、所望の厚みを得るのに、繊維集積量を多くする必要があり、硬くなって、吸音材を設置するときの柔軟性に欠ける傾向にあり、また、不経済である。
(c)不織布の空隙率は、好ましくは10〜90%であり、より好ましくは20〜85%、さらに好ましくは30〜80%である。該不織布においては、不織布中に多くの空気が含まれていることで、この空気の粘性抵抗により音波が熱エネルギーに変換されて、音が吸収され易くなる。よって、不織布の空隙率が10%より小さいと、期待する吸音効果が得られない。一方、不織布の空隙率が90%より大きいと、外圧がかかった時に、厚みの低下や形体が変形し易い傾向にあり、取扱い性が悪い。
本発明で用いる不織布を構成する連続繊維の融点または熱分解温度は300℃以上であることが好ましい。これは、車両エンジンルームやモーターなどの発熱体に近接あるいは接触する用途での使用する際は、150〜200℃にもなる高温環境であり、その部位で用いられる部材は高い耐熱性が要求される。不織布を構成する連続繊維の融点または熱分解温度が300℃以上であれば、高温で高摩擦を受ける過酷な使用環境においても、繊維屑や溶融劣化物等異物の発生が極めて少なく、有用な吸音材となりえる。また、単一の耐熱性不織布のみで吸音材を構成することができるため、他成分との偏在がない、均一な不織布となって、安定した吸音性能を有するという利点もある。不織布を構成する連続繊維の融点または熱分解温度は、より好ましくは350℃以上、さらに好ましくは400℃以上である。
なお、本発明における「融点または熱分解温度」とは、JIS K 7121、または、JIS K 7120に準じ、示差走査熱量測定により得られるDSC曲線の融解ピークの頂点の温度、もしくは、熱重量測定より得られるTG曲線にて、試料の重量減少が始まる温度から求めた。
本発明に使用する不織布の200℃での乾熱収縮率は、好ましくは2%以下、より好ましくは1.75%以下、さらに好ましくは1.5%以下である。これは、乾熱収縮率が2%より大きいと、高温で使用される環境下においてもシワの発生が起こり易く、吸音材として用いた場合、吸音性能が低下する傾向にある。
本発明に用いる連続繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維等の無機繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、全芳香族ポリエステル繊維、アクリル繊維、塩化ビニル繊維、ポリケトン繊維、セルロース繊維、パルプ繊維等の有機繊維等を挙げることができ、これらの一種を、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、メタ型アラミド繊維であるポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維や、パラ型アラミド繊維であるポリパラフェニレンテレフタラミドやコポリパラフェニレン・3,4’オキシジフェニレン・テレフタラミド等は、高強力で高い耐熱性を有するので好ましい。
本発明の吸音材として使用される不織布の製造方法については、例えば有機繊維を用いる場合、メルトブローン法、そのポリマー溶液の紡糸によって得ることができる。その好適な製造方法としては、メルトブロー法、有機ポリマー溶液をバーストさせ細繊化する爆裂紡糸技術(WO02/052070記載)や、特開2005−200779号公報のエレクトロスピニング法などが挙げられる。また、アラミドなどの耐熱性ポリマーを使用する場合、溶融性ポリマーで行われているメルトブローン技術を改良した、効果的に細繊化する技術(US6013223)が、本発明の不織布を製造するのに適用できる。本製造方法によれば、ポリマー溶液を吐出させる紡糸装置のノズルの同心円上に設置された圧空吐出孔から圧空を吐出させて、ポリマー溶液を伸張し細化させるが、このノズルの孔径を変更することにより、構成する繊維の繊維径を調整することができる。上記方法では、爆裂紡糸技術等のように吐出ポリマーをバーストさせ切断させることなく、安定して均一な繊維径の連続繊維を成形し、さらにこれを捕集して不織布とすることができる。また、吐出ポリマーは、空気などの気体と接触させるか、凝固液と接触させて固化させることができる。凝固液としては、水、水とアミド系極性溶媒の混合液、水とアルコール類との混合液、アルコール類などを挙げることができる。特に、この方法で得られるアラミド繊維からなる不織布は、耐熱性を有しながら、後述するカレンダー加工などにより、容易に前記の平滑な表面を有する不織布とすることができる。
このようにして吸音材に用いる不織布を製造できるが、前記表面粗さに調整する場合、さらに得られた不織布をその軟化温度よりも10〜20℃程度低い温度でカレンダー処理を行うことが好ましい。これにより不織布がカレンダーロールに接触時、凸部位が優先的にロールと接触すると同時に接触した凸部位が適度に収縮し、平均見掛け密度や空隙率とし易く、平面性も向上して、前記の各周波数における吸音率を容易に実現できる。なお、カレンダー温度が軟化点温度より高すぎると、熱収縮が顕著になり望みの形状を維持することが難しくなる傾向にある。一方で、カレンダー処理における圧力は、表面凹凸のバラツキの程度、所望の見掛密度によって異なるため、上記温度で、圧力実験を数回繰り返すことによって、適正条件を見つけて適宜設定することができる。
例えば、アラミド連続繊維不織布、特に前記のアラミドポリマー溶液を吐出孔から吐出させて、これに気流(圧空等)を吹き付けてポリマー溶液を伸張し細化させ、これを固化してなる連続繊維からなるアラミド不織布の場合は、好ましくはカレンダー温度を200〜260℃、より好ましくは200〜240℃とし、ポリエステルメルトブローン不織布ではカレンダー温度を好ましくは30〜80℃、より好ましくは30〜70℃とし、ポリオレフィンメルトブローン不織布ではカレンダー温度を好ましくは30〜70℃、より好ましくは30〜60℃として、線圧を好ましくは30〜300kg/cm、より好ましくは30〜200kg/cmの範囲で設定すればよい。
本発明の吸音材は、以上に説明した不織布からなる単一素材による単層(1層)構造でも使用できるが、さらに取扱い性を向上させたり、厚みを増す目的で、2種以上の素材からなる多層構造であっても良い。つまり、前記不織布からなる層と、織物、編物、または前記不織布とは異なる不織布のいずれか、あるいはこれらの組合せからなる繊維構造体からなる層の、少なくとも2層が積層されてなる吸音材をとすることができる。
本発明においては、上記繊維構造体を構成する繊維は、特に限定されるものではないが、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維等の無機繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、全芳香族ポリエステル繊維、アクリル繊維、塩化ビニル繊維、ポリケトン繊維、セルロース繊維、パルプ繊維等の有機繊維等を挙げることができ、これらの一種を、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、ガラス繊維、セラミック繊維、メタ型アラミド繊維であるポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維や、パラ型アラミド繊維であるポリパラフェニレンテレフタラミドやコポリパラフェニレン・3,4’オキシジフェニレン・テレフタラミド等は、高強力で高い耐熱性を有するので好ましい。
本発明においては、上記のような2層以上の構造とする方法としては、不織布と繊維構造体とを積層させた後、熱処理、加圧加熱処理などを施すことにより、これらを強固に接着させることができる。また、不織布と繊維構造体とを積層させる際、不織布を積層させる繊維構造体の一方の面に接着剤を塗布しておき、これらをより強固に接着させてもよい。かかる接着加工を施すことにより、不織布と繊維構造体の密着性が向上し、より加工性、取扱い性に優れた吸音複合体を得ることができる。
上記接着剤は、特に限定されるものではないが、アクリル系樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂エマルジョン接着剤、酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤、シリコーン系接着剤、などの有機系接着剤でもよく、シリカ系接着剤などの無機系接着剤が挙げられる。
上記熱処理方法は、特に限定されるものではないが、スルーエアー加工などの熱処理、カレンダー加工などの加圧加熱処理などが挙げられる。該加圧加熱処理では、加工条件として、温度30〜350℃、線圧30〜300kg/cmを好ましく採用することができる。カレンダー温度に関しては、ポリマーの熱耐性により適宜調整する必要がある。
本発明の吸音材は、不織布および繊維構造体をそれぞれ複数層積層したものであってもよい。さらに、繊維構造体層上に積層した不織布層の上に、さらに繊維構造体層を設け、不織布層を繊維構造体層で挟んだ構造としてもよい。
本発明の吸音材においては、例えば、上記のように不織布層と繊維構造体層とからなる場合でも、吸音材全体の、目付は、好ましくは300g/m以下、より好ましくは280g/m以下、さらに好ましくは250g/m以下、厚みは、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは1mm以下とするのが望ましい。
以上により得られる吸音材は、薄く軽量でありながら高い吸音性能を有しており、吸音材の素材として耐熱性ポリマーを使用した場合は、耐熱性、難燃性に優れ、高温雰囲気下においても使用が可能である。
以下実施例により、本発明を具体的に説明する。しかしながら本発明はこれによって限定されるものではない。なお以下の実施例などの評価および特性値は、以下の測定法により求めた。
(1)繊維径(μm)
吸音材として使用される不織布を走査型電子顕微鏡JSM6330F(JEOL社製)にて観察し、繊維100本を任意に選出して測長した。なお、観察は1000倍で行った。
(2)目付(g/m
JIS L 1906の単位面積当りの重量試験方法に準じて測定を行った。
(3)厚さ(mm)
小野測器 デジタルリニアゲージDG−925(測定端子部の直径1cm)を用い、任意に選択した20箇所において厚さを測定し、平均値を求めた。
(4)見掛け密度(g/cm
(目付)/(厚み)から算出し、単位容積あたりの重量を求めた。
(5)空隙率(%)
不織布の目付および厚みから不織布の密度を求め、「{1−(不織布の密度/不織布を構成する繊維自体の密度)}×100(%)」で不織布の空隙率を求めた。
(6)取扱い性
打ち抜き加工機を使用して、吸音材を裁断しても、型崩れすることなく、形状を維持するものを○、型崩れし、形状を維持できないものを×とした。
(7)吸音性能
JIS A 1405に準じて、垂直の入射法の測定器で50〜6300Hzの周波数におけるそれぞれの吸音率を測定し、6300Hzで吸音率50%以上のものを○、50%未満のものを×とした。
[実施例1]
特公昭47−10863号公報記載の方法に準じた界面重合法により製造した固有粘度(IV)=1.35のポリメタフェニレンイソフタルアミド粉末(帝人テクノプロダクツ製、比重1.38g/cm)20重量部を、0℃に冷却したジメチルアセトアミド(DMAc)80重量部中に投入し、スラリー状にした後、45℃まで昇温して溶解させ、ポリマー溶液を得た。
上記のポリマー溶液を、ギアポンプを使ってUS6013223の紡糸装置に120g/minで供給し、紡糸温度40℃とし、10m/minで圧空を供給して紡糸を行った。ここで、US6013223の紡糸装置は、ポリマー溶液吐出孔の孔径が0.3mmで、ポリマー溶液吐出ノズルが、100×5列の配列で500本が、5mmピッチで等間隔となるように配置されたものを使用した。
凝固液供給装置は、ウェブの搬送方向の反対側(上流側)と、ウェブの搬送方向側(下流側)の両方に、ポリマー溶液吐出孔から下方向に50mm、紡糸線から50mmの位置に対となるように設置し、凝固液供給スプレーは二流体スプレーノズル(株式会社いけうち製、VEシリーズ)を用い、吐出後のポリマー溶液に、ポリマー溶液吐出孔から紡糸線上の下方200mmの地点で、細化された糸条と凝固液が接触するようにスプレーノズルの噴射角度を調整した。
凝固液として温度を30℃に温調された水を使用し、一対の二流体スプレーノズルに供給した水は5L/minで、供給した圧縮空気圧は0.5MPaとした。
ギアポンプによりポリマー溶液吐出孔から吐出された糸条は、直ちに周囲の圧空と凝固液と共に、紡糸線上の下方向に捕集面に向かって流下させながら細化と凝固を行い、紡糸装置の下方500mmに設置された捕集ベルト上に、連続繊維を堆積しながらベルトの搬送速度を0.25m/minとし、未処理の不織布を得た。
得られた未処理の不織布を金属製カレンダーロールにて温度230℃、設定線圧50kg/cmで熱処理し、上下ロール間のクリアランスを設けることによって、任意に線圧を調整し、表1記載の厚みの不織布1層のみからなる吸音材を得た。結果を表1に示す。
[実施例2]
繊維長51mm、繊維径14μmのポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維からなる短繊維をカードで紡出し、目付10g/mのウェブとし、これを5枚積層したあと針密度150本/cmのニードルパンチ加工処理をし、厚み5mm、目付40g/mの不織布である繊維構造体を得た。次に、実施例1において得られた不織布の一方の表面にエポキシ樹脂エマルジョン接着剤を塗布し、これを上記繊維構造体に積層して強固に接着し、不織布層と繊維構造体層の2層からなる吸音材を得た。結果を表1に示す。
[実施例3]
ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維からなる短繊維に代えて、繊維長51mm、繊維径14μmのポリパラフェニレンイソフタルアミド繊維からなる短繊維を用いた以外は実施例2と同様にして繊維構造体を得、さらに不織布層と繊維構造体層の2層からなる吸音材を得た。結果を表1に示す。
[実施例4]
繊維構造体として、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維の短繊維からなる不織布に代えて、Aガラスファイバー不織布(旭ファイバーグラス製、厚み5mm、目付100g/m)を用いた以外は、実施例2と同様にして不織布層と繊維構造体層の2層からなる吸音材を得た。結果を表1に示す。
[実施例5、6]
ポリエチレンテレフタレート樹脂(帝人ファイバー製)を、メルトブローン法により、紡糸温度300℃で捕集ネットに向けて押し出した。メルトブローンノズルから連続長繊維ウェブまでの距離は100mmとし、単孔吐出量0.3g/min、空気流量1000Nm/hr/mの条件で紡糸し、200g/mの目付の未処理の不織布を得た。得られた未処理の不織布を金属製カレンダーロールにて温度60℃、設定線圧50kg/cmで熱処理し、上下ロール間のクリアランスを調整し、それぞれ0.50mm(実施例5)、0.165mm(実施例6)の厚みの不織布1層のみからなる吸音材を得た。結果を表1に示す。
[実施例7]
繊維長51mm、繊維径14μmのポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維からなる短繊維をカードで紡出し、目付10g/mのウェブとし、これを5枚積層したあと針密度150本/cmのニードルパンチ加工処理をし、厚み5mm、目付40g/mの不織布である繊維構造体を得た。次に、実施例5において得られた不織布の一方の表面にエポキシ樹脂エマルジョン接着剤を塗布し、これを上記繊維構造体に積層して強固に接着し、不織布層と繊維構造体層の2層からなる吸音材を得た。結果を表1に示す。
[実施例8]
ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維からなる短繊維に代えて、繊維長51mm、繊維径14μmのポリパラフェニレンイソフタルアミド繊維からなる短繊維を用いた以外は実施例7と同様にして繊維構造体を得、さらに不織布層と繊維構造体層の2層からなる吸音材を得た。結果を表1に示す。
[実施例9]
繊維構造体として、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維の短繊維からなる不織布に代えて、Aガラスファイバー不織布(旭ファイバーグラス製、厚み5mm、目付100g/m)を用いた以外は、実施例7と同様にして不織布層と繊維構造体層の2層からなる吸音材を得た。結果を表1に示す。
[実施例10]
ポリプロピレン樹脂をメルトブローン法により、紡糸温度280℃で捕集ネットに向けて押し出した。メルトブローンノズルから連続長繊維ウェブまでの距離は100mmとし、単孔吐出量0.3g/min、空気流量400Nm/hr/mの条件で紡糸し、未処理の不織布を得た。得られた未処理の不織布を金属製カレンダーロールにて温度50℃、設定線圧50kg/cmで熱処理し、上下ロール間のクリアランスを設けることによって、任意に線圧を調整し、表1記載の厚みの不織布1層のみからなる吸音材吸音材となる不織布を得た。結果を表1に示す。
[実施例11]
繊維長51mm、繊維径14μmのポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維からなる短繊維をカードで紡出し、目付10g/mのウェブとし、これを5枚積層したあと針密度150本/cmのニードルパンチ加工処理をし、厚み5mm、目付40g/mの不織布である繊維構造体を得た。次に、実施例10において得られた不織布の一方の表面にエポキシ樹脂エマルジョン接着剤を塗布し、これを上記繊維構造体に積層して強固に接着し、不織布層と繊維構造体層の2層からなる吸音材を得た。結果を表1に示す。
[実施例12]
ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維からなる短繊維に代えて、繊維長51mm、繊維径14μmのポリパラフェニレンイソフタルアミド繊維からなる短繊維を用いた以外は実施例11と同様にして繊維構造体を得、さらに不織布層と繊維構造体層の2層からなる吸音材を得た。結果を表1に示す。
[実施例13]
繊維構造体として、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維の短繊維からなる不織布に代えて、Aガラスファイバー不織布(旭ファイバーグラス製、厚み5mm、目付100g/m)を用いた以外は、実施例11と同様にして不織布層と繊維構造体層の2層からなる吸音材を得た。結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において得られた不織布を、表1記載の厚みになるよう手で揉み解し厚みを調整した。結果を表1に示す。
[比較例2]
US6013223の紡糸装置で100本×5列の配列で500本が設置されたポリマー溶液吐出ノズルとして、孔径0.2mmを200本、孔径0.6mmを300本、それぞれ5mmピッチで等間隔となるように配置したものを用いた以外は、実施例1と同様にして表1記載の厚みの不織布1層のみからなる吸音材を得た。結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例5において得られた不織布を、表1記載の厚みになるよう手で揉み解し厚みを調整した。結果を表1に示す。
[比較例4]
繊維長51mm、繊維径14μmのポリエチレンテレフタレートからなる短繊維をカードで紡出し、目付10g/mのウェブを12枚積層したあと針密度150本/cmのニードルパンチ加工処理をし、目付100g/mの未処理の不織布を得た。得られた未処理の不織布を金属製カレンダーロールにて温度60℃、設定線圧50kg/cmで熱処理し、上下ロール間のクリアランスを設けることによって、任意に線圧を調整し、表1記載の厚みの不織布1層のみからなる吸音材を得た。結果を表1に示す。
本発明の実施例1〜13の吸音材は、薄くて軽量であるにも関わらず吸音性能に優れることが認められた。
Figure 0006004846
本発明の吸音材は、薄く軽量であるにも関わらず吸音性能が高いため、スペースを有効利用する必要のある車両、電気製品、建築材などの吸音材として用いるのに適している。また耐熱性ポリマーを使用した場合、車両エンジンルームやモーターなどの発熱体に近接あるいは接触する用途での使用することもできる。特に、繊維として、メタ型アラミド繊維を用いる場合には、耐薬品性も兼ね備えているため、酸性、アルカリ条件下でも使用することができ、その工業的価値は極めて大きい。

Claims (7)

  1. 不織布を含む吸音材であって、該不織布が、連続繊維で構成され、目付300g/m以下、厚み10mm以下であり、該吸音材のJIS A 1405の垂直入射法により測定された周波数3000Hzの吸音率が30%以上、周波数4000Hzの吸音率が60%以上、かつ周波数6000Hzの吸音率が80%以上であり、該連続繊維の平均繊維直径が0.1〜5μmであり、該連続繊維の融点もしくは熱分解温度が300℃以上であり、かつ該不織布の200℃での乾熱収縮率が2%以下であることを特徴とする吸音材。
  2. 前記不織布が、下記要件を全て満足する請求項1に記載の吸音材。
    (a)不織布の平均見掛け密度が0.21〜1.24g/cm
    (b)不織布の空隙率が10〜90%
  3. 前記連続繊維がアラミド繊維である請求項1または2に記載の吸音材。
  4. 前記連続繊維がポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維である請求項1〜3のいずれかに記載の吸音材。
  5. 前記連続繊維がポリパラフェニレンテレフタラアミド繊維、またはコポリパラフェニレン3,4’−オキシジフェニレンテレフタラアミド繊維である請求項1〜3のいずれかに記載の吸音材。
  6. 前記吸音材が、前記不織布からなる層と、織物、編物、または前記不織布とは異なる不織布のいずれか、あるいはこれらの組合せからなる繊維構造体からなる層の、少なくとも2層が積層されてなる請求項1〜5のいずれかに記載の吸音材。
  7. 前記繊維構造体が、ポリパラフェニレンテレフタラアミド繊維、コポリパラフェニレン3,4’−オキシジフェニレンテレフタラアミド繊維、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維、ガラス繊維、セラミック繊維の少なくとも1種からなる請求項6記載の吸音材。
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