JP6004258B2 - ポリエステル及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、ポリエステル及びその製造方法に関し、より詳細には、繰り返し単位中にフラン環を含むポリエステル及びその製造方法に関する。
繰り返し単位中にフラン環を含むポリエステルは以前から研究や提案がなされてきた(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1は、「耐衝撃性に優れた成形品を製造するために用いることができる、新規なポリエステル樹脂およびその製造方法を提供する」(特許文献1、段落番号0007)ためになされたもので、「上記の課題を解決するポリエステル樹脂は、下記一般式(1)および一般式(2)で表される構造単位を有し、前記一般式(2)で表される構造単位を、一般式(1)および一般式(2)の合計に対して50.1モル%以上99.9モル%以下含有することを特徴とする。」(特許文献1、段落番号0009。但し、一般式(1)および一般式(2)は特許文献1の段落番号0010〜0012を参照されたい。)ものや、「上記の課題を解決するポリエステル樹脂は、下記一般式(1)および一般式(3)で表される構造単位を有することを特徴とする。」(特許文献1、段落番号0013。但し、一般式(1)および一般式(3)は特許文献1の段落番号0014〜0017を参照されたい。)ものが開示されている。これらのポリエステル樹脂においては、「フラン環を有するポリエステル樹脂に関して、柔軟性を示すエーテル結合を導入することを特徴とする。・・・・すなわち、ジカルボン酸成分としてフラン環を有し、さらにジオール成分のうち、ジエチレングリコール含有量が50.1モル%以上99.9モル%以下のとき、柔軟性を示すエーテル結合を有する構造を持つことで、耐衝撃性の改善されたポリエステル樹脂とすることができる知見を得た。・・・・・また、ジカルボン酸成分としてフラン環を持つジカルボン酸を用い、ジオール成分としてポリアルキレンエーテルを導入することで耐衝撃性が改善されることが分かった。すなわち、ジカルボン酸成分としてフラン環を有し、さらに柔軟性を示すエーテル結合を有する構造を持つことで、耐衝撃性の改善されたポリエステル樹脂とすることができる知見を得た。」(特許文献1、段落番号0021後段〜0023)というものである。
特開2009−197110号公報(例えば、要約、発明の詳細な説明中の段落番号0006〜0020等)
このように繰り返し単位中にフラン環を含むポリエステルは以前から研究等がなされてきたが、繰り返し単位中にフラン環を含むポリエステルであって、その融液が液晶性を有するものはこれまで存在しない。
得られるポリマーの良好な物性(例えば、高耐熱性、高強度、高弾性率等)やポリマーを融解し成形する際の高流動性が期待できることから、ポリマーの融液が液晶性を有することが好ましい。
そこで、本発明では、繰り返し単位中にフラン環を含み、その融液が液晶性を示すポリエステルを提供することを目的とする。
本発明者は、フラン環と、このフラン環を連結するフェニレン基と、を繰り返し単位中に有するポリエステルにおいて、該フェニレン基がp−フェニレン基とm−フェニレン基との両方を含んでおり、そのp−フェニレン基とm−フェニレン基との割合を所定範囲とすることで、融液が液晶性を示すポリエステルになることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のポリエステルの製造方法(以下、「本製造方法」という。)は、(式1)で示される化合物fと、(式2)で示される化合物mと、(式3)で示される化合物pと、の3の化合物を混合し、化合物m及び化合物pと、化合物fと、を重合させ、(式4)で示される繰り返し単位を有し液晶性を有するポリエステルを生成させる重合ステップを含んでなる、製造方法である。













(式中、R1及びR2は、互いに同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。)






(式中、R3及びR4は、互いに同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。)





(式中、R5はp−フェニレン基と残余がm−フェニレン基である。)
また、本製造方法には、以下(イ)〜(ハ)の態様が含まれる。
(イ)重合ステップにて混合する化合物mのモル数Mmと化合物pのモル数Mpとの比Q=Mp/(Mp+Mm)のQの値が0.10〜0.60である、上記製造方法。
(ロ)重合ステップが、混合した前記3の化合物を220℃〜255℃にて保持する低温重合ステップと、低温重合ステップの後に260℃〜280℃にて保持する高温重合ステップと、を含んでなるものである、上記製造方法。
(ハ)高温重合ステップが減圧下で行われるものである、上記(ロ)の製造方法。
また、本発明は、ポリエステルを提供する。
第1の本発明のポリエステル(以下、「第1本ポリエステル」という。)は、前述の本製造方法により得られうる、ポリエステルである。
第2の本発明のポリエステル(以下、「第2本ポリエステル」という。)は、(式4)で示される繰り返し単位を有し、液晶性を有するポリエステルである。





(式中、R5はp−フェニレン基と残余がm−フェニレン基である。)
また、第1本ポリエステル及び第2本ポリエステルには、以下(ニ)及び(ホ)の態様が含まれる。
(ニ)R5を構成するフェニレン基全部のモル数Jに対する、R5に含まれるp−フェニレン基のモル数Jpの割合G(=Jp/J)が0.10〜0.65である、第1本ポリエステル又は第2本ポリエステル。
(ホ)窒素雰囲気中加熱による10%重量減少温度が、400℃以上である、第1本ポリエステル又は第2本ポリエステル。
FDCA、1,3−DAB、1,4−DAB及びDPEの化学式を示す図である。 第1状態の重合装置を示す概念図(断面図)である。 第2状態の重合装置を示す概念図(断面図)である。 第3状態の重合装置を示す概念図(断面図)である。 赤外分光法(IR)吸収スペクトルのチャートである。 光学的異方性相の偏光顕微鏡写真である。 赤外分光法(IR)吸収スペクトルのチャートである。 光学的異方性相の偏光顕微鏡写真である。 実験結果をまとめた表である。 広角X線回折チャートである。 広角X線回折チャートである。 広角X線回折チャートである。 広角X線回折チャートである。
本製造方法の重合ステップにおいては、(式1)で示される化合物fと、(式2)で示される化合物mと、(式3)で示される化合物pと、の3の化合物を混合し、化合物m及び化合物pと、化合物fと、を重合させ、(式4)で示される繰り返し単位を有し液晶性を有するポリエステルを生成させる。
このような化合物m及び化合物pと、化合物fと、を重合させ、(式4)で示される繰り返し単位を有し液晶性を有するポリエステルを生成させる製造方法は従来知られておらず、本製造方法は新規なポリエステルの製造方法である。
化合物mを示す上記の式(2)中、R1及びR2は、互いに同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。ここにいう「炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基を挙げることができ、「炭素数1〜5の分岐鎖状のアルキル基」としては、イソプロピル基やt−ブチル基を挙げることができる。R1及びR2として好ましくはメチル基、エチル基であり、最も好ましくはメチル基である。
化合物pを示す上記の式(3)中、R3及びR4は、互いに同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。ここにいう「炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基を挙げることができ、「炭素数1〜5の分岐鎖状のアルキル基」としては、イソプロピル基やt−ブチル基を挙げることができる。R3及びR4として好ましくはメチル基、エチル基であり、最も好ましくはメチル基である。
本製造方法により得られるポリエステルは、(式4)で示される繰り返し単位を有している。(式4)中のR5はp−フェニレン基(パラフェニレン基)と残余がm−フェニレン基(メタフェニレン基)であるが、このp−フェニレン基は化合物pに由来し、m−フェニレン基は化合物mに由来するものである。
このように重合ステップにおいて、化合物fと化合物mと化合物pとを混合し、化合物m及び化合物pと、化合物fと、を重合させることで、(式4)で示される繰り返し単位におけるR5のフェニレン基がp−フェニレン基とm−フェニレン基との両方を含むようにできる。即ち、重合ステップにおいては化合物m及び化合物pと、化合物fと、が交互に連なって重合する(化合物m及び化合物pを化合物Zとすると、化合物Zと化合物fとが交互にカルボン酸が脱離する縮合重合により交互に連なる(化合物Zは化合物m又は化合物pのいずれかである。)。)。
後述するように、R5のフェニレン基を構成するp−フェニレン基の割合があまり高いと、得られるポリエステルの軟化点が上昇し、融解することなく熱分解を生じて融液を得ることはできない(無論、液晶性を示す融液は得られない)。逆に、R5のフェニレン基を構成するm−フェニレン基の割合があまり高いと(p−フェニレン基の割合が低い)、融液が液晶性を示さなくなる(加えて、得られるポリエステルの耐熱性が低くなるので、耐熱性を要求する用途には使用できない。)。
従って、(式4)で示される繰り返し単位中のR5のフェニレン基を構成するp−フェニレン基とm−フェニレン基との割合をこれら両条件を満足する範囲にすることで、(式4)で示される繰り返し単位を有し融液が液晶性を示すポリエステルとすることができる。
なお、(式4)で示される繰り返し単位中のR5のフェニレン基を構成するp−フェニレン基とm−フェニレン基との割合は、本製造方法の重合ステップにおいて混合する化合物mと化合物pとの割合によって変化させることができる。詳述すれば、重合ステップにおいて混合する化合物mと化合物pとのうち化合物pの割合を増加させれば、(式4)で示される繰り返し単位中のR5のフェニレン基を構成するp−フェニレン基の割合を増加させることができる。逆に、重合ステップにおいて混合する化合物mと化合物pとのうち化合物pの割合を減少させれば(化合物mの割合を増加させれば)、(式4)で示される繰り返し単位中のR5のフェニレン基を構成するp−フェニレン基の割合を減少させることができる(m−フェニレン基の割合を増加させることができる。)。
また、本発明にいう「液晶性を有する」とは、ポリエステルが融解後に分子の重心位置の三次元的規則性が失われた後も、分子配向の秩序が残っている状態を取り得ることをいい、具体的には、融解した融液が光学的に異方性を示す状態を取り得るか否かで液晶性を有するか(光学的異方性を示す状態を取る場合)、液晶性を有しないか(光学的異方性を示す状態を取らない場合)、を判断することができる。
重合ステップにおいて用いる化合物f、化合物m及び化合物pは、いずれも含有する不純物が少ないものを用いる方が重合反応が促進されることから好ましい。化合物f、化合物m及び化合物pいずれも、十分な純度(例えば、99%以上)のものが入手できない場合には、重合ステップに供する前に精製するようにしてもよい。精製工程は、化合物f、化合物m及び化合物pそれぞれの性質に応じて適宜選択されてよく、例えば、減圧蒸留や常圧蒸留のような蒸留操作、水や有機溶媒又はこれらの混合物等のような溶媒を用いた晶析操作(再結晶操作)等を用いることもできる。
重合ステップにおいては、化合物f、化合物m及び化合物pが溶融(後述のような溶媒を用いない場合)や溶解(後述のような溶媒を用いる場合)して液相を形成し、該液相中で化合物m及び化合物pと、化合物fと、が交互に連なって重合し、(式4)で示される繰り返し単位を有するポリエステルが生成する。生成するポリエステルは、該液相から固体として析出することもあるし、均一な液相中にそのまま存在することもある。生成したポリエステルを含む組成物を室温まで冷却すると、生成したポリエステルが固体として析出する。通常、かかる固体には、生成したポリエステルのみならず、未反応の化合物f、化合物m及び化合物p等のような不要物を含むため、生成したポリエステルを含む固体(適宜、粉砕等してもよい)をこれら不要物を溶解する洗浄液(例えば、化合物f、化合物m及び化合物pを溶解する有機溶媒(例えば、メタノールとアセトンとの混合物))により洗浄してポリエステルを得るようにしてもよい。
重合ステップでの重合温度は、あまり低いと化合物f、化合物m及び化合物pの重合反応がうまく進まず(重合反応速度が小さくなりすぎる)、重合反応が起こらなかったり反応時間が長くかかりすぎたりする問題を生じうるし、あまり高いと化合物f、化合物m及び化合物pの熱分解や散逸を生じうるので、使用する化合物f、化合物m及び化合物pの種類等に応じ、これらを両立する範囲とされることが好ましく、通常、(下限として)好ましくは200℃以上であり、より好ましくは210℃以上であり、最も好ましくは220℃以上であり、逆に(上限として)好ましくは300℃以下であり、より好ましくは290℃以下であり、最も好ましくは280℃以下である(従って、通常、好ましくは200℃〜300℃、より好ましくは210℃〜290℃、最も好ましくは220℃〜280℃である。)。
重合ステップでの重合時間は、所望程度のポリエステルが得られるように適宜定められればよく何ら制限されるものではないが、あまり短いと化合物f、化合物m及び化合物pの重合反応がうまく進まず十分なポリエステルを得ることができず、あまり長いと得られるポリエステル量があまり増加しないのに無駄な時間を要するので、使用する化合物f、化合物m及び化合物pの種類や重合温度等に応じ、これらを両立する範囲とされることが好ましく、通常、(下限として)好ましくは6時間以上であり、より好ましくは9時間以上であり、最も好ましくは12時間以上であり、逆に(上限として)好ましくは60時間以下であり、より好ましくは48時間以下であり、最も好ましくは36時間以下である(従って、通常、好ましくは6時間〜60時間、より好ましくは9時間〜48時間、最も好ましくは12時間〜36時間である。)。
重合ステップにて混合する化合物fのモル数Mf、化合物mのモル数Mm及び化合物pのモル数Mpについての比率C=(Mm+Mp)/MfのCの値は通常1(C=1付近(例えば、0.98〜1.02程度)とすることで生成するポリマーの重合度を高く保つことができる。)であるが、化合物fが有するカルボキシル基の割合が多すぎると生成するポリマーが不安定になる(具体的には、耐熱性が低下したり、耐加水分解性が低下するような現象を生じる)ことがあるので、それを防止する必要があればCを0.95〜1としてもよい。
重合ステップにおいて化合物f、化合物m及び化合物pを混合する際、重合ステップにて混合する化合物mのモル数Mmと化合物pのモル数Mpとすると、Q=Mp/(Mp+Mm)のQの値によって、(式4)で示される繰り返し単位中のR5のフェニレン基を構成するp−フェニレン基の割合が変化する。前述の通り、R5のフェニレン基を構成するp−フェニレン基の割合があまり高いと、得られるポリエステルの軟化点が上昇し、融解することなく熱分解を生じ融液を得ることはできない(無論、液晶性を示す融液は得られない)し、逆に、R5のフェニレン基を構成するp−フェニレン基の割合があまり低いと、融液が液晶性を示さなくなる(得られるポリエステルの耐熱性も低くなる)ので、Qはこれらを両立する範囲とされることが好ましい(融液が液晶性を示す)。
かかる点からは、通常、Qは、好ましくは0.10以上であり、より好ましくは0.15以上であり、最も好ましくは0.18以上であり、そして好ましくは0.60以下であり、より好ましくは0.55以下であり、最も好ましくは0.50以下である(例えば、好ましくは0.10〜0.60であり、より好ましくは0.15〜0.55であり、最も好ましくは0.18〜0.50である。)。
重合ステップが、混合した前記3の化合物を220℃〜255℃にて保持する低温重合ステップと、低温重合ステップの後に260℃〜280℃にて保持する高温重合ステップと、を含んでなるものであってもよい。
このように化合物f、化合物m及び化合物pの前記3の化合物を混合し220℃〜255℃にて保持する低温重合ステップを行い、その後、260℃〜280℃にて保持する高温重合ステップを行うことで、低温重合ステップにおいてモノマー(化合物f、化合物m及び化合物p)が熱分解や散逸することを防止又は減少させつつ重合反応させ、低温重合ステップにて生じた重合物を高温重合ステップにてさらに重合させることができるので、得られるポリエステルの収率を高く維持しつつ高重合度のポリエステルを得ることができる。
低温重合ステップとして220℃〜255℃にて保持する時間は、あまり短いと化合物f、化合物m及び化合物pの重合反応がうまく進まず、あまり長いと効果があまり増加しないのに無駄な時間を要するので、使用する化合物f、化合物m及び化合物pの種類や重合温度等に応じ、これらを両立する範囲とされることが好ましく、通常、(下限として)好ましくは4時間以上であり、より好ましくは5時間以上であり、最も好ましくは6時間以上であり、逆に(上限として)好ましくは36時間以下であり、より好ましくは24時間以下であり、最も好ましくは12時間以下である(従って、通常、好ましくは4時間〜36時間、より好ましくは5時間〜24時間、最も好ましくは6時間〜12時間である。)。
高温重合ステップとして260℃〜280℃にて保持する時間は、あまり短いと重合反応がうまく進まず高重合度のポリエステルが得られず、あまり長いと重合度(ポリエステルの分子量)があまり増加しないのに無駄な時間を要するので、重合温度等に応じ、これらを両立する範囲とされることが好ましく、通常、(下限として)好ましくは2時間以上であり、より好ましくは6時間以上であり、最も好ましくは12時間以上であり、逆に(上限として)好ましくは48時間以下であり、より好ましくは36時間以下であり、最も好ましくは30時間以下である(従って、通常、好ましくは2時間〜48時間、より好ましくは6時間〜36時間、最も好ましくは12時間〜30時間である。)。
なお、低温重合ステップは、化合物f、化合物m及び化合物pのみを系内に存在させて行う場合(溶融重合)と、化合物f、化合物m及び化合物pとそれらを溶解させる溶媒とを系内に共存させて行う場合(溶液重合)と、のいずれでも行うことができる。
かかる溶媒としては、化合物f、化合物m及び化合物pと不要な反応を起こさずこれら化合物f、化合物m及び化合物pを溶解させ、化合物f、化合物m及び化合物pが互いに重合する条件(例えば、重合温度)にて安定であるものを用いることが好ましい。このような点からは、高沸点(重合温度よりも高い)の有機溶媒が好ましく、芳香族化合物を含むものであることが好ましい(溶媒が芳香族化合物からなる場合はさらに好ましい。)。該芳香族化合物としては、ジフェニルエーテル、ジイソプロピルナフタレン、ジエチルナフタレン、エチルーイソプロピルナフタレン、シクロヘキシルジフェニル、ジエチルビフェニル、トリエチルビフェニル、ジベンジルトルエンよりなる群より選ばれる1又は2以上のものの混合物であってもよく、とりわけ溶媒がジフェニルエーテル(DPE)であれば溶媒に要求される上述の性質を溶媒が有するので好ましい。
低温重合ステップを化合物f、化合物m及び化合物pとそれらを溶解させる溶媒とを系内に共存させて行う場合(溶液重合)においては、化合物f、化合物m及び化合物pのみを系内に存在させて行う場合(溶融重合)に比し、重合速度の制御(化合物f、化合物m及び化合物pの溶媒中の濃度を大きくすれば重合速度を大きくでき、該濃度を小さくすれば重合速度を小さくできる。)が可能といった利点がある。また、溶融重合は、溶液重合に比し、溶媒を用いないのでポリエステルの製造費用を削減できる。
溶液重合においては、溶媒に対する化合物f、化合物m及び化合物pの割合(即ち、モノマーたる化合物f、化合物m及び化合物pの溶媒中の濃度)は、あまり大きいと化合物f、化合物m及び化合物pがうまく溶媒に溶解せず溶媒を用いる意義が減少する問題が生じうるし、あまり小さいと、化合物f、化合物m及び化合物pの重合反応がうまく進まず(重合反応速度が小さくなりすぎる)、重合反応が起こらなかったり反応時間が長くかかりすぎたりする問題を生じうるので、これらを両立する範囲とされることが好ましい。重合に用いる化合物f、化合物m及び化合物pから100%の収率にてポリエステル((式4)で示される繰り返し単位を有するポリエステル)が生成すると仮定した場合に生成するポリエステルの重量W(g)(即ち、Wは、重合に用いる化合物f、化合物m及び化合物pが重合によりポリエステルとなる際、100%収率にてポリエステルとなったと仮定した場合に脱離する成分を除いた質量である。)を、溶媒の体積V(ml)にて除した値に100を乗じた値((W/V)×100)(単位:g/ml))としてモノマーたる化合物f、化合物m及び化合物pの溶媒中の濃度を示せば、通常、(下限として)好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.5以上であり、最も好ましくは1以上であり、逆に(上限として)好ましくは50以下であり、より好ましくは40以下であり、最も好ましくは30以下である(従って、通常、好ましくは0.1〜50、より好ましくは0.5〜40、最も好ましくは1〜30である。)。
なお、低温重合ステップを化合物f、化合物m及び化合物pを溶解させる溶媒中で行う場合(溶液重合)、低温重合ステップと高温重合ステップとの間に、溶媒を除去する溶媒除去ステップを有してもよい。溶媒除去ステップは、低温重合ステップにて生成したポリエステルやその後の重合反応等に悪影響を与えないものであればいかなる方法によってもよく、例えば、溶媒を留去するようにしてもよい。
上述のように、重合ステップが低温重合ステップと高温重合ステップとを含んでなる場合、高温重合ステップが減圧下で行われるものであってもよい。
高温重合ステップにおいては、重合系が固相になったり粘度が高くなることがあり、重合反応によって脱離生成するカルボン酸が系内から抜け出しにくくなることで重合反応の進行が妨げられることがある。このとき高温重合ステップを減圧下で行えば、系内のカルボン酸が留去されやすくなるので、重合時間を短縮すると共に高重合度のポリエステルを得ることができる。
本製造方法により得られうる第1本ポリエステルと、(式4)で示される繰り返し単位を有する液晶性の第2本ポリエステルと、のいずれも繰り返し単位(式4)中にフラン環を含み、その融液が液晶性を示すポリエステル樹脂である。このような(式4)で示される繰り返し単位を有する液晶性ポリエステルは、良好な物性(高耐熱性、高強度、高弾性率等)やポリマー融液の高流動性に基づく良成形性によってこれまでのプラスチック材料と同様に種々の樹脂成形原料として用いることができる(所謂、エンジニアリングプラスチックとして用いることもできる)。
第1本ポリエステル及び第2本ポリエステルいずれも、広角X線散乱(WAXS)測定を行うと結晶性であることを示し、メタノール、アセトン、クロロホルム、テトラヒドロフラン等のような汎用有機溶媒に24時間浸漬しても不溶であり、十分な重合度と高結晶性と耐薬品性とを有するものである。
第1本ポリエステル及び第2本ポリエステルにおいては、(式4)で示される繰り返し単位中のR5を構成するフェニレン基全部のモル数Jに対する、R5に含まれるp−フェニレン基のモル数Jpの割合G(=Jp/J)が0.10〜0.65であってもよい。
前述の通り、R5のフェニレン基を構成するp−フェニレン基の割合があまり高いと、得られるポリエステルの軟化点が上昇し、融解することなく熱分解を生じ融液を得ることはできない(無論、液晶性を示す融液は得られない)し、逆に、R5のフェニレン基を構成するp−フェニレン基の割合があまり低いと、融液が液晶性を示さなくなる(得られるポリエステルの耐熱性も低くなる)ので、Gはこれらを両立する範囲とされることが好ましい(融液が液晶性を示す)。
かかる点からは、(式4)で示される繰り返し単位中のR5を構成するフェニレン基全部のモル数Jに対する、R5に含まれるp−フェニレン基のモル数Jpの割合G(=Jp/J。なお、R5に含まれるm−フェニレン基のモル数をJmとするとJ=Jp+Jmである。)は、好ましくは0.10以上であり、より好ましくは0.15以上であり、最も好ましくは0.20以上であり、そして好ましくは0.65以下であり、より好ましくは0.60以下であり、最も好ましくは0.55以下である(例えば、好ましくは0.10〜0.65であり、より好ましくは0.15〜0.60であり、最も好ましくは0.20〜0.55である。)。 なお、割合Gの測定方法は、赤外分光法(IR)吸収スペクトルにおける1,4-フェニレン基の吸光度Ip(フェニレン環のC=C伸縮として波数1500カイザー付近)と1,3-フェニレン基の吸光度Im(フェニレン環のC=C伸縮として波数1485カイザー付近)とでG=Ip/(Ip+Im)にて算出できる。
第1本ポリエステル及び第2本ポリエステルにおいては、窒素雰囲気中加熱による10%重量減少温度が400℃以上であってもよい。
窒素雰囲気中加熱による10%重量減少温度が400℃以上であれば、所謂、スーパーエンジニアリングプラスチックと呼ばれるような高耐熱性が要求される分野にも使用可能である。
窒素雰囲気中加熱による10%重量減少温度の測定は、まずJIS K 7100(プラスチックの状態調節及び試験場所の標準状態)の標準温度状態2級及び標準湿度状態2級(温度 23±2℃及び相対湿度 50±5%)において24時間以上状態調節して試験片を作成し、その作成した試験片をJIS K 7120‐1987に規定される試験方法にて試験し得られる温度をいう。
窒素雰囲気中加熱による10%重量減少温度については、ポリエステルの分子量(重合度)が増加するにつれて増加するので、重合時間を長くすれば重合が促進され分子量が増加することで10%重量減少温度を上昇させることができる。なお、10%重量減少温度の上限は特にないが、通常は500℃以下である。
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例を挙げる。しかしながら、これら実施例によって、本発明は何ら制限されるものではない。
(モノマー等の準備)
モノマーとして2,5−フランジカルボン酸(以下、「FDCA」ということもある)と、1,3−ジアセトキシベンゼン(以下、「1,3−DAB」ということもある)と、1,4−ジアセトキシベンゼン(以下、「1,4−DAB」ということもある)と、を準備した。また、溶媒を用いた重合(低温重合ステップを溶媒中で行う場合(溶液重合)であり、これを半溶液重合という)を行う際に用いる溶媒としてジフェニルエーテル(以下、「DPE」ということもある)を準備した。
具体的には、FDCAは東京化成工業株式会社のものを用い、水を用いて再結晶して精製したものを重合実験に供した。このFDCAの再結晶による精製工程は、購入したFDCA7gと水1000gとを100℃にて混合しFDCA水溶液を調製し、そのFDCA水溶液を100℃から25℃まで3時間かけて冷却した。冷却後のFDCA水溶液中にはFDCA固体が析出していたので、旭製作所株式会社の定量濾紙によって濾過し、濾過残として得られたFDCA固体を減圧乾燥器内にて50℃にて12時間乾燥させて精製FDCAを得た。
1,3−DABは東京化成工業株式会社のものを用い、フラスコにト字管(蒸留ヘッド)を経由してリービッヒ冷却器を取り付けた蒸留装置を使用して0.3Torr、75℃の減圧蒸留により精製したものを重合実験に供した。
1,4−DABは東京化成工業株式会社のものを用い、水とエタノールとの等量混合溶媒を用いて再結晶して精製したものを重合実験に供した。この1,4−DABの再結晶による精製工程は、購入した1,4−DAB5gと水エタノール等量混合溶媒1000gとを100℃にて混合し1,4−DAB溶液を調製し、その1,4−DAB溶液を100℃から25℃まで3時間かけて冷却した。冷却後の1,4−DAB溶液中には1,4−DAB固体が析出していたので、旭製作所株式会社の定量濾紙によって濾過し、濾過残として得られた1,4−DAB固体を減圧乾燥器内にて50℃にて12時間乾燥させて精製1,4−DABを得た。 DPEはナカライテスク株式会社のものを用い、フラスコにト字管(蒸留ヘッド)を経由してリービッヒ冷却器を取り付けた蒸留装置を使用して60℃、0.3Torrの減圧蒸留により精製したものを重合実験に供した。
以上のようにして精製したFDCA、1,3−DAB、1,4−DAB及びDPEはそれぞれ純度が99.9%、99.5%、99.9%及び99.5%であった。参考のため、FDCA、1,3−DAB、1,4−DAB及びDPEの化学式を図1にまとめて示す。なお図1中の「Ac」はアセチル基(CHCO−)を示している。
(重合装置)
図2は、第1状態の重合装置11を示す概念図(断面図)である。図2を参照して、第1状態の重合装置11について説明する。第1状態の重合装置11は、三口のフラスコ21と、フラスコ21を温度制御下にて加熱する加熱器31(所謂、マントルヒータをここでは使用している。)と、フラスコ21の内部23に挿入された撹拌器41と、フラスコ21の内部23に窒素ガスを導入する窒素導入管51と、フラスコ21の内部23からの気体を導出する気体導出管61と、を有してなる。
フラスコ21は、下部が加熱器31の加熱面に包囲されており、内部23に存する内容物14に先端(検出端)が潜入した熱電対温度計(図示せず)によって加熱器31は内部23温度を検知し温度制御する。加熱器31は、電気ヒータによりフラスコ21を外面から熱するものであり、スイッチ33を入れた後、温度調節つまみ35を操作することで設定温度を調整することができ(設定温度表示窓37に設定温度が表示される。)、該熱電対温度計(図示せず)により検出される温度(現在温度表示窓39に表示される。)が設定温度になるよう発熱量が制御される。
フラスコ21が有する最も大きな口には、上端が回転装置(図示せず)に連結された撹拌棒43が貫入されており、撹拌棒43の下端には撹拌羽根45が取り付けられており、該回転装置により回転されるこれら撹拌棒43及び撹拌羽根45によって撹拌器41が構成されている。
フラスコ21が有する他の2の口には、所定の流量によって窒素ガスを供給する窒素ガス供給装置(図示せず)に接続された窒素導入管51(窒素導入管51には、図示しない弁が取り付けられており、窒素ガスの流量を制御できると共に、窒素導入管51の流路を完全に遮断することもできる。)と、フラスコ21の内部23からの気体を導出する気体導出管61の基端と、が内部23に連通するように取り付けられている。気体導出管61の先端側は、図示しない真空ポンプに接続されており、該真空ポンプによってフラスコ21の内部23は常圧760Torr(該真空ポンプによる減圧を行わない)から0.1Torrまでの任意の圧力に保持することができる。これによってフラスコ21の内部23は0.1Torr〜760Torrの範囲に存する任意圧力に圧力保持しつつ、内部23の雰囲気を窒素導入管51からの窒素ガスによって置換することができる(かかる窒素ガス置換により、縮合重合する際に生じる酢酸が内部23から除かれる。)。
図3は、第2状態の重合装置12を示す概念図(断面図)である。図3を参照して、第2状態の重合装置12について説明する。第2状態の重合装置12は、第1状態の重合装置11に比し、第1状態の重合装置11が備える気体導出管61に替えて凝縮器71を備えることが異なるのみでその余りは第1状態の重合装置11と同様であるので、ここでは第1状態の重合装置11と同じ説明は省略する(第1状態の重合装置11の要素と同じ要素には同じ参照番号を付しているので、適宜、第1状態の重合装置11の説明を参照されたい。)。
第2状態の重合装置12においては、フラスコ21が有する口のうち第1状態の重合装置11では気体導出管61が取り付けられていた口に水冷式の凝縮器71が取り付けられている。凝縮器71の内部には、冷却水が内部を通過する冷却コイル73が配設されており、フラスコ21の内部23から凝縮器71の内部に流入した蒸気(主として溶媒の蒸気)はこの冷却コイルによって冷却され凝縮することで液体になり、再びフラスコ21の内部23へ流下する(これによってフラスコ21の内部23から溶媒が散逸することなく、フラスコ21の内部23に溶媒を保持することができる。)。
なお、縮合重合する際に生じる酢酸は、窒素導入管51により導入される窒素により同伴され、内部23の雰囲気から除去される(酢酸は凝縮器71において凝縮せず、外部へ導出される。)。
図4は、第3状態の重合装置13を示す概念図(断面図)である。図4を参照して、第3状態の重合装置13について説明する。第3状態の重合装置13は、第1状態の重合装置11に比し、第1状態の重合装置11が備える気体導出管61に替えて溶媒留去部81を備えることが異なるのみでその余りは第1状態の重合装置11と同様であるので、ここでは第1状態の重合装置11と同じ説明は省略する(第1状態の重合装置11の要素と同じ要素には同じ参照番号を付しているので、適宜、第1状態の重合装置11の説明を参照されたい。)。
第3状態の重合装置13においては、フラスコ21が有する口のうち第1状態の重合装置11では気体導出管61が取り付けられていた口に、ト字管(蒸留ヘッド)83が取り付けられている。ト字管83の上端には、図示しない栓が取り付けられると共に、ト字管83の枝管にはリービッヒ冷却器85が取り付けられている。溶媒留去部81は、ト字管83とリービッヒ冷却器85とを含んで構成されている。フラスコ21の内部23からト字管83を経由してリービッヒ冷却器85のチューブ側に流入した蒸気(主として溶媒の蒸気)はリービッヒ冷却器85のシェル側を流れる冷却水86によって冷却され凝縮することで液体になり、該チューブを流下してナスフラスコ87に回収される(なお、窒素導入管51から導入された窒素ガスはフラスコ21の内部23からト字管83を経由してリービッヒ冷却器85のチューブ側を流通しガス出口88から流出する。)。
これによってフラスコ21の内部23から溶媒を留去することができる。
(重合操作)
上述のような重合装置を用いて、大略次のように重合を行った。
モノマーとしてのFDCAと、1,4−DAB及び/又は1,3−DABと、をフラスコ21の内部23に装入し重合させるが、フラスコ21内部23に装入するモノマーと一緒に溶媒(ここではDPE)をフラスコ21内部23に装入するか、しないかの2つの重合方法を行った。溶媒をフラスコ21内部23に装入せずに重合を行う場合(溶融重合)と、溶媒をフラスコ21内部23に装入して重合を行う場合(半溶液重合)と、の2つの場合を以下説明する。
(1)溶融重合
FDCAと、1,4−DAB及び/又は1,3−DABと、の原料をフラスコ21の内部23に室温下で装入し、第1状態の重合装置11を組み立てた。
原料装入後、フラスコ21の内部23の雰囲気を窒素導入管51からの窒素ガスによって置換した。
フラスコ21内部23への窒素導入管51からの窒素ガス導入を継続しつつ(内部23は略760Torr)、加熱器31のスイッチ33を入れ、温度調節つまみ35を操作して設定温度表示窓37の表示を第1設定温度T1(℃)とした(加熱開始)。現在温度表示窓39の表示が設定温度表示窓37の表示(T1(℃))に近づく過程(加熱過程)において、固体の原料が融解して液体(溶融)状態になった。なお、原料の状態をみて、前記回転装置により撹拌器41を適宜回転させ撹拌しつつ加熱した(以下、撹拌は撹拌停止まで継続した)。
原料が第1設定温度T1(℃)まで加熱されたら(現在温度表示窓39の表示と、設定温度表示窓37の表示と、が略一致する。)、窒素ガス導入を継続しつつ(内部23は略760Torr)、フラスコ21内部23の温度が第1設定温度T1(℃)から第2設定温度T2(℃)までt1(時間)をかけて緩やかに上昇するように温度調節つまみ35を操作して設定温度をゆっくり上昇させた。
原料が第2設定温度T2(℃)まで加熱されたら(現在温度表示窓39の表示が第2設定温度T2(℃)に略一致する。)、窒素ガス導入を継続しつつ(内部23は略760Torr)、第2設定温度T2(℃)でt2(時間)保持した。
第2設定温度T2(℃)で時間t2が経過後、温度調節つまみ35を操作して設定温度表示窓37の表示を低い温度に下げ、系内の温度が下がったら(現在温度表示窓39の表示が設定した低い温度とほぼなる。)、窒素ガス導入を中止した後(窒素導入管51の図示しない弁を閉とし、窒素導入管51の流路を完全に遮断した)、前記真空ポンプを起動し、フラスコ21の内部23を0.1Torrまで約15分間かけてゆっくり減圧した。減圧後、温度調節つまみ35を操作して設定温度表示窓37の表示を第3設定温度T3とした。第3設定温度T3まで加熱されたら(現在温度表示窓39の表示が第3設定温度T3(℃)に略一致する。)、その0.1Torrの減圧下にて第3設定温度T3(℃)でt3(時間)保持した。なお、0.1Torrの第3設定温度T3(℃)でt3(時間)保持する間に、フラスコ21内部23の内容物が液体(溶融)状態から固体状態に変化した場合は、前記回転装置による撹拌器41の回転を停止し(撹拌停止)、その後は固相にて重合反応させた。
0.1Torrで第3設定温度T3(℃)にてt3(時間)保持後、窒素ガス導入を再開しつつ前記真空ポンプを停止し、フラスコ21の内部23を760Torr(常圧)まで戻し、フラスコ21の内容物を取り出した。
該取り出した内容物(固体)を粉砕し、メタノールとアセトンとの混合物で粉砕物を洗浄し(メタノールとアセトンとの混合物には、未反応のFDCA、1,4−DAB、1,3−DABが溶解するので、これら未反応物を溶解除去できる)、反応物P1(g)を得た。
(2)半溶液重合
FDCAと、1,4−DAB及び/又は1,3−DABと、溶媒のDPEと、をフラスコ21の内部23に室温下で装入し、第2状態の重合装置12を組み立てた。
原料装入後、フラスコ21の内部23の雰囲気を窒素導入管51からの窒素ガスによって置換した。フラスコ21内部23への窒素導入管51からの窒素ガス導入を継続しつつ(内部23は略760Torr)、前記回転装置により撹拌器41を回転させ、撹拌を開始した(以下、撹拌は撹拌停止まで継続した)。
加熱器31のスイッチ33を入れ、温度調節つまみ35を操作して設定温度表示窓37の表示を第1設定温度T5(℃)とした(加熱開始)。原料が第1設定温度T5(℃)まで加熱されたら(現在温度表示窓39の表示と、設定温度表示窓37の表示と、が略一致する。)、窒素ガス導入を継続しつつ(内部23は略760Torr)、第1設定温度T5(℃)でt5(時間)保持した。
第1設定温度T5(℃)でt5(時間)保持後、温度調節つまみ35を操作して設定温度表示窓37の表示を低い温度に下げ、系内の温度が下がったら(現在温度表示窓39の表示が設定した低い温度とほぼなる。)、第2状態の重合装置12が有する凝縮器71をフラスコ21から取り外し、凝縮器71の替わりに溶媒留去部81を取り付けて第3状態の重合装置13とした。第3状態の重合装置13において約80℃のまま、窒素導入管51の図示しない弁を閉として窒素導入管51の流路を完全に遮断した後、前記真空ポンプを起動し、フラスコ21の内部23を0.1Torrまで約15分間かけてゆっくり減圧した。これによってフラスコ21の内部23から溶媒(DPE)を留去した(リービッヒ冷却器85からナスフラスコ87に溶媒がほとんど滴下しなくなるまで溶媒のほとんどを留去した)。その後、0.1Torrの減圧下にて、温度調節つまみ35により設定温度を第3設定温度T6(℃)とし、第3設定温度T6(℃)まで内部23が加熱された後、第3設定温度T6(℃)でt6(時間)保持した。
0.1Torrで第3設定温度T6(℃)にてt6(時間)保持後、窒素ガス導入を再開しつつ前記真空ポンプを停止し、フラスコ21の内部23を760Torr(常圧)まで戻し、フラスコ21の内容物を取り出した。
該取り出した内容物は室温で固体であったので、この固体を粉砕し、メタノールとアセトンとの混合物で粉砕物を洗浄し(メタノールとアセトンとの混合物には、未反応のFDCA、1,4−DAB、1,3−DABが溶解するので、これら未反応物を溶解除去できる)、反応物P1(g)を得た。
(赤外分光分析:赤外分光法(IR)吸収スペクトル)
得られた反応物を赤外分光計(日本分光社製の型番FT/IRー410を用いた。)にて分光分析した。得られたチャートにおいては、横軸に波数(Wavenumber)(単位:cmー1:(カイザー))をとり、縦軸に透過率(Transmittance)(単位:a.u.)(上方向に透過率が大きくなるよう描いている。なお、かっこ内の「a.u.」は任意強度(arbitrary unit)を意味している。)をとっている。
なお、この赤外分光分析の測定条件は、測定領域4000cmー1〜500cmー1、透過モード、KBr錠剤法であった。
また、反応物における割合Gの算出は、このようにして得られた赤外分光法(IR)吸収スペクトルにおける1,4-フェニレン基の吸光度Ip(フェニレン環のC=C伸縮として波数1500カイザー付近)と1,3-フェニレン基の吸光度Im(フェニレン環のC=C伸縮として波数1485カイザー付近)とでG=Ip/(Ip+Im)として算出した。
(軟化点測定)
得られた反応物の軟化温度Tsを融点測定器を用い、次のように測定した。
融点測定器はヤナコ機器開発研究所株式会社製の型番MP−500Dを用い、その測定条件は空気中で5℃/分にて昇温した。
(窒素雰囲気中加熱による10%重量減少温度測定)
得られた反応物を、まずJIS K 7100(プラスチックの状態調節及び試験場所の標準状態)の標準温度状態2級及び標準湿度状態2級(温度 23±2℃及び相対湿度 50±5%)において24時間以上状態調節して試験片を作成し、その作成した試験片をJIS K 7120‐1987に規定される試験方法にて試験し得られた温度とした。JIS K 7120‐1987に規定される試験方法において用いた熱重量分析装置(TGA)はPerkin−Elmer社製の型番TGA7を用い(昇温速度20℃/分、窒素気流下)、室温(25℃)における重量から10%重量が減少(即ち、室温での重量の90%になる)する温度(単位:℃)を測定した。
(広角X線回折)
得られた反応物を用いて広角X線回折を行った。ここに広角X線回折分析はいずれもリガク社製の型番「MiniFlex」(線源:CuKα)を用い、その測定条件は5〜50°まで検出速度1°/分とした。グラフには、横軸に2θ(単位:度)をとり、縦軸に強度(任意強度(arbitrary unit)、なお、上方向が強度大である。)をとって示している。
(液晶性評価)
得られた反応物の融液が液晶性を有するか否かは、融液が光学的異方性を示すか否かで判断した。融液の光学的異方性の性質は、直交偏光子を用いた偏光検査方法により確認できる。具体的には、融液の光学的異方性の確認は、オリンパス社製の偏光顕微鏡(型番:BX−50)を使用し、リンカム社製ホットステージに載せた試料を融解し、窒素雰囲気下で10倍の倍率で観察する。融液が光学的異方性を有すれば(液晶性有り)、直交偏光子間に挿入したとき光を透過させるので、偏光顕微鏡の視野の明暗によって液晶性の有無を判断した。
(実験番号m1:溶融重合)
上述の重合操作における(1)溶融重合にて説明した通り、次のように重合を行った。
30gのFDCAと、14.9gの1,4−DABと、22.4gの1,3−DABと、の原料をフラスコ21の内部23に室温下で装入し、第1状態の重合装置11を組み立てた。
原料装入後、フラスコ21の内部23の雰囲気を窒素導入管51からの窒素ガスによって置換した。
フラスコ21内部23への窒素導入管51からの窒素ガス導入を継続しつつ(内部23は略760Torr)、加熱器31のスイッチ33を入れ、温度調節つまみ35を操作して設定温度表示窓37の表示を第1設定温度T1=230℃とした(加熱開始)。現在温度表示窓39の表示が設定温度表示窓37の表示(T1(℃))に近づく過程(加熱過程)において、固体の原料が融解して液体(溶融)状態になったので、前記回転装置により撹拌器41を回転させ撹拌しつつ加熱した(以下、撹拌は撹拌停止まで継続した)。
原料が第1設定温度T1(=230℃)まで加熱されたら(現在温度表示窓39の表示と、設定温度表示窓37の表示と、が略一致する。)、窒素ガス導入を継続しつつ(内部23は略760Torr)、フラスコ21内部23の温度が第1設定温度T1(=230℃)から第2設定温度T2(=250℃)までt1(=2時間)をかけて緩やかに上昇するように温度調節つまみ35を操作して設定温度をゆっくり上昇させた。
原料が第2設定温度T2(=250℃)まで加熱されたら(現在温度表示窓39の表示が第2設定温度T2(℃)に略一致する。)、窒素ガス導入を継続しつつ(内部23は略760Torr)、第2設定温度T2(=250℃)でt2(=4時間)保持した。
第2設定温度T2で時間t2が経過後、温度調節つまみ35を操作して設定温度表示窓37の表示を約80℃に下げ、系内の温度が下がったら(現在温度表示窓39の表示が約80℃となる。)、窒素ガス導入を中止した後(窒素導入管51の図示しない弁を閉とし、窒素導入管51の流路を完全に遮断した)、前記真空ポンプを起動し、フラスコ21の内部23を0.1Torrまで約15分間かけてゆっくり減圧した。減圧後、温度調節つまみ35を操作して設定温度表示窓37の表示を第3設定温度T3(=270℃)とした。第3設定温度T3(=270℃)まで加熱されたら(現在温度表示窓39の表示が第3設定温度T3(℃)に略一致する。)、0.1Torrにて第3設定温度T3(℃)でt3(=24時間)保持した。なお、0.1Torrの第3設定温度T3(℃)でt3(時間)保持する間に、フラスコ21内部23の内容物が液体(溶融)状態から固体状態に変化したので、前記回転装置による撹拌器41の回転を停止し(撹拌停止)、その後は固相にて重合反応させた。
0.1Torrで第3設定温度T3(℃)にてt3(時間)保持後、窒素ガス導入を再開しつつ前記真空ポンプを停止し、フラスコ21の内部23を760Torr(常圧)まで戻し、フラスコ21の内容物(固体)を取り出した。
該取り出した内容物(固体)を粉砕し、メタノールとアセトンとの混合物で粉砕物を洗浄し(メタノールとアセトンとの混合物には、未反応のFDCA、1,4−DAB、1,3−DABが溶解するので、これら未反応物を溶解除去できる)、茶褐色の反応物P1(=24g)を得た。
得られた反応物の赤外分光法(IR)吸収スペクトルのチャートを図5に示す。
チャートにおいては、横軸に波数(Wavenumber)(単位:cmー1)をとり、縦軸に透過率(Transmittance)(単位:a.u.:任意強度、上方向に透過率が大きくなるよう描いている。)をとっている。
この図5のチャートは、モノマーが有する末端基のカルボキシル基及びアセトキシ基の振動吸収がほとんど観察されないことに加え、エステル結合の振動吸収が観察されることから、モノマーが重合して、目的とするポリエステルが生成していることを示している。
また、このチャートからGを算出すると、1,4-フェニレン基の吸光度Ip(フェニレン環のC=C伸縮として波数1500カイザー付近)と1,3-フェニレン基の吸光度Im(フェニレン環のC=C伸縮として波数1485カイザー付近)とを用いてG=Ip/(Ip+Im)として、G=0.5を得た。
得られた反応物について、上述した「窒素雰囲気中加熱による10%重量減少温度」を測定したところ、446℃であった。
さらに、得られた反応物に関し軟化点測定を行ったところ215℃であり、液晶性評価を行ったところ光学的異方性相を示し液晶性を有することが明らかになった。このときの光学的異方性相の偏光顕微鏡写真を図6に示す。
得られた反応物の広角X線回折チャートを図10に示す。
(実験番号s1:半溶液重合)
上述の重合操作における(2)半溶液重合にて説明した通り、次のように重合を行った。
60gのFDCAと、14.9gの1,4−DABと、59.7gの1,3−DABと、500gのDPE(溶媒)と、をフラスコ21の内部23に室温下で装入し、第2状態の重合装置12を組み立てた。
原料装入後、フラスコ21の内部23の雰囲気を窒素導入管51からの窒素ガスによって置換した。フラスコ21内部23への窒素導入管51からの窒素ガス導入を継続しつつ(内部23は略760Torr)、前記回転装置により撹拌器41を回転させ、撹拌を開始した(以下、撹拌は撹拌停止まで継続した)。
加熱器31のスイッチ33を入れ、温度調節つまみ35を操作して設定温度表示窓37の表示を第1設定温度T5(=230℃)とした(加熱開始)。原料が第1設定温度T5(=230℃)まで加熱されたら(現在温度表示窓39の表示と、設定温度表示窓37の表示と、が略一致する。)、窒素ガス導入を継続しつつ(内部23は略760Torr)、第1設定温度T5(=230℃)でt5(=6時間)保持した。
第1設定温度T5(=230℃)でt5(=6時間)保持後、温度調節つまみ35を操作して設定温度表示窓37の表示を80℃に下げ、系内の温度が下がったら(現在温度表示窓39の表示が約80℃となる。)、第2状態の重合装置12が有する凝縮器71をフラスコ21から取り外し、凝縮器71の替わりに溶媒留去部81を取り付けて第3状態の重合装置13とした。第3状態の重合装置13において約80℃のまま、窒素導入管51の図示しない弁を閉として窒素導入管51の流路を完全に遮断した後、前記真空ポンプを起動し、フラスコ21の内部23を0.1Torrまで約15分間かけてゆっくり減圧した。これによってフラスコ21の内部23から溶媒(DPE)を留去した(リービッヒ冷却器85からナスフラスコ87に溶媒がほとんど滴下しなくなるまで溶媒のほとんどを留去した)。その後、0.1Torrの減圧下にて、温度調節つまみ35により設定温度を第3設定温度T6(=270℃)とし、第3設定温度T6(=270℃)まで内部23が加熱された後、第3設定温度T6(=270℃)でt6(=24時間)保持した。なお、0.1Torrの第3設定温度T6(℃)でt6(時間)保持する間に、フラスコ21内部23の内容物は溶融状態のままであった。
0.1Torrで第3設定温度T6(℃)にてt6(時間)保持後、窒素ガス導入を再開しつつ前記真空ポンプを停止し、フラスコ21の内部23を760Torr(常圧)まで戻し、フラスコ21の内容物を取り出した。
該取り出した内容物は室温まで冷却する間に固体となったので、この固体を粉砕し、メタノールとアセトンとの混合物で粉砕物を洗浄し(メタノールとアセトンとの混合物には、未反応のFDCA、1,4−DAB、1,3−DABが溶解するので、これら未反応物を溶解除去できる)、黄土色の反応物P1(=28g)を得た。
得られた反応物の赤外分光法(IR)吸収スペクトルのチャートを図7に示す。
チャートにおいては、横軸に波数(Wavenumber)(単位:cmー1)をとり、縦軸に透過率(Transmittance)(単位:a.u.:任意強度、上方向に透過率が大きくなるよう描いている。)をとっている。
この図7のチャートは、モノマーが有する末端基のカルボキシル基及びアセトキシ基の振動吸収がほとんど観察されないことに加え、エステル結合の振動吸収が観察されることから、モノマーが重合して、目的とするポリエステルが生成していることを示している。
また、このチャートからGを算出すると、1,4-フェニレン基の吸光度Ip(フェニレン環のC=C伸縮として波数1500カイザー付近)と1,3-フェニレン基の吸光度Im(フェニレン環のC=C伸縮として波数1485カイザー付近)とを用いてG=Ip/(Ip+Im)として、G=0.3を得た。
得られた反応物について、上述した「窒素雰囲気中加熱による10%重量減少温度」を測定したところ、429℃であった。
さらに、得られた反応物に関し軟化点測定を行ったところ158℃であり、液晶性評価を行ったところ光学的異方性相を示し液晶性を有することが明らかになった。このときの光学的異方性相の偏光顕微鏡写真を図8に示す。
得られた反応物の広角X線回折チャートを図11に示す。
(実験番号m2:比較例:溶融重合)
上述の重合操作における(1)溶融重合にて説明した通り、次のように重合を行った。
30gのFDCAと、37.3gの1,4−DABと、の原料をフラスコ21の内部23に室温下で装入し、第1状態の重合装置11を組み立てた。
そして、実験番号m1と同様の操作で重合を行い、茶褐色の反応物P1(=20g)を得た。
これまでと同様、得られた反応物の赤外分光法(IR)吸収スペクトルのチャートを得た。このチャートからGを算出すると、G=1.0を得た。
得られた反応物について、上述した「窒素雰囲気中加熱による10%重量減少温度」を測定したところ、450℃であった。
さらに、得られた反応物に関し軟化点測定を行ったが、昇温によっても軟化せず、液晶性評価を行ったが融解せず融液は得られなかった(無論、液晶性を有する融液は得られなかった。)。
得られた反応物の広角X線回折チャートを図12に示す。
(実験番号m3:比較例:溶融重合)
上述の重合操作における(1)溶融重合にて説明した通り、次のように重合を行った。
30gのFDCAと、37.3gの1,3−DABと、の原料をフラスコ21の内部23に室温下で装入し、第1状態の重合装置11を組み立てた。
そして、実験番号m1と同様の操作で重合を行い、茶褐色の反応物P1(=26g)を得た。
これまでと同様、得られた反応物の赤外分光法(IR)吸収スペクトルのチャートを得た。このチャートからGを算出すると、G=0を得た。
得られた反応物について、上述した「窒素雰囲気中加熱による10%重量減少温度」を測定したところ、400℃であった。
さらに、得られた反応物に関し軟化点測定を行ったところ157℃であり、液晶性評価を行ったが光学的異方性相を示さなかった(液晶性なし)。
得られた反応物の広角X線回折チャートを図13に示す。
以下、実験番号m1、実験番号m2、実験番号m3及び実験番号s1の実験結果を図9にまとめた。なお、半溶液重合における時間t6(時間)は、溶融重合における時間t3(時間)に該当し、これらt6及びt3を併せて「高温重合時間」ということもある。
なお、ここでは重合ステップにて混合するFDCA(化合物f)のモル数Mf、1,3−DAB(化合物m)のモル数Mm及び1,4−DAB(化合物p)のモル数Mpについての比率C=(Mm+Mp)/Mf=1とした。Qは、重合ステップにて混合する1,3−DAB(化合物m)のモル数Mm及び1,4−DAB(化合物p)のモル数Mpとの比Q=Mp/(Mp+Mm)を示す。時間t3は第3設定温度T3(℃)での保持時間(時間)を示し、時間t6は第3設定温度T6(℃)での保持時間(時間)を示す。Gは、得られた反応物における(式4)で示される繰り返し単位中のR5を構成するフェニレン基全部のモル数Jに対する、R5に含まれるp−フェニレン基のモル数Jpの割合G(=Jp/J)であり、具体的には、前述のように赤外分光法(IR)吸収スペクトルにおける1,4-フェニレン基の吸光度Ip(フェニレン環のC=C伸縮として波数1500カイザー付近)と1,3-フェニレン基の吸光度Im(フェニレン環のC=C伸縮として波数1485カイザー付近)とによりG=Ip/(Ip+Im)として算出した。軟化点Tsと、窒素雰囲気中加熱による10%重量減少温度T10と、は前述の通りである。光学的異方性は、前述の通り、得られた反応物の融液が液晶性を示すか否かを判断するものである(光学的異方性が「有」であれば該融液が液晶性を有し、光学的異方性が「無」であれば該融液が液晶性を有さないことを示す。)。
図9において、「×」は、昇温しても軟化や融解せず、融液が得られなかったことを示している(無論、液晶性を有する融液は得られなかった)。
図9に示す通り、軟化点Ts(℃)は、Gに大きく依存しており、Gの増加に伴いTsが上昇し、Gの減少に伴いTsが降下する。従って、軟化点Tsを高めるためには、重合時のQを増加させればよく、逆にTsを下げるためには重合時のQを減少させればよい。
一方、窒素雰囲気中加熱による10%重量減少温度T10(℃)は、ポリエステルの分子量(重合度)が増加するにつれて上昇するので、t6及びt3の高温重合時間を増加させることで重合が促進され分子量が増加することで10%重量減少温度を上昇させることができる(図9においては、高温重合時間はいずれも24時間であるが、これを24時間から短縮するとT10が低下する傾向が観察された。)。
以上説明の通り、実験番号m1及びs1については、(式1)で示される化合物f(ここではFDCA)と、(式2)で示される化合物m(ここでは1,3−DABであり、式2中のR1及びR2はいずれもメチル基である。)と、(式3)で示される化合物p(ここでは1,4−DABであり、式3中のR3及びR4はいずれもメチル基である。)と、の3の化合物を混合し、化合物m(1,3−DAB)及び化合物p(1,4−DAB)と、化合物f(FDCA)と、を重合させ、(式4)(但し、R5はp−フェニレン基と残余がm−フェニレン基である。)で示される繰り返し単位を有し液晶性を有するポリエステルを生成させる重合ステップを含んでなる、製造方法である。
実験番号m1及びs1については、重合ステップにて混合する化合物m(1,3−DAB)のモル数Mmと化合物p(1,4−DAB)のモル数Mpとすると、Q=Mp/(Mp+Mm)のQの値が0.10〜0.60である(さらに、実験番号m1及びs1については、Q=0.18〜0.50である。)。
実験番号m1及びs1については、重合ステップが、混合した前記3の化合物(化合物fたるFDCAと、化合物mたる1,3−DABと、化合物pたる1,4−DAB)を220℃〜255℃にて保持する低温重合ステップ(溶融重合においては第1設定温度T1から第2設定温度T2を経て昇温される220℃〜255℃の過程であり、半溶液重合においては第1設定温度T5を経て昇温される220℃〜255℃の過程)と、低温重合ステップの後に260℃〜280℃にて保持する高温重合ステップ(溶融重合においては第3設定温度T3での保持過程を含み、半溶液重合においては第3設定温度T6での保持過程を含む)と、を含んでなるものである。そして、ここでは、高温重合ステップが減圧下(ここでは0.1Torr)で行われるものである。
実験番号m1及びs1の製造方法によって得られたポリエステルは、(式4)(但し、R5はp−フェニレン基と残余がm−フェニレン基である。)で示される繰り返し単位を有し、液晶性を有するポリエステルであった。
実験番号m1及びs1の製造方法によって得られたポリエステルは、(式4)におけるR5を構成するフェニレン基全部のモル数Jに対する、R5に含まれるp−フェニレン基のモル数Jpの割合G(=Jp/J)が0.10〜0.65であった(さらに、実験番号m1及びs1については、G=0.20〜0.55)。
実験番号m1及びs1の製造方法によって得られたポリエステルは、窒素雰囲気中加熱による10%重量減少温度(T10)が、400℃以上であった。
11 第1状態の重合装置
12 第2状態の重合装置
13 第3状態の重合装置
14 内容物
21 フラスコ
23 内部
31 加熱器
33 スイッチ
35 温度調節つまみ
37 設定温度表示窓
39 現在温度表示窓
41 撹拌器
43 撹拌棒
45 撹拌羽根
51 窒素導入管
61 気体導出管
71 凝縮器
73 冷却コイル
81 溶媒留去部
83 ト字管(蒸留ヘッド)
85 リービッヒ冷却器
86 冷却水
87 ナスフラスコ
88 ガス出口

Claims (5)

  1. (式1)で示される化合物fと、




    (式2)で示される化合物mと、






    (但し、式中、R1及びR2は、互いに同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。)
    (式3)で示される化合物pと、




    (但し、式中、R3及びR4は、互いに同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。)
    の3の化合物を混合し、化合物m及び化合物pと、化合物fと、を重合させ、(式4)




    (但し、R5はp−フェニレン基と残余がm−フェニレン基である。)で示される繰り返し単位を有し液晶性を有するポリエステルを生成させる重合ステップを含んでなり、
    重合ステップにて混合する化合物mのモル数Mmと化合物pのモル数Mpとすると、Q=Mp/(Mp+Mm)のQの値が0.10〜0.60である、製造方法。
  2. 重合ステップが、混合した前記3の化合物を220℃〜255℃にて保持する低温重合ステップと、低温重合ステップの後に260℃〜280℃にて保持する高温重合ステップと、を含んでなるものである、請求項1に記載の製造方法。
  3. 高温重合ステップが減圧下で行われるものである、請求項2に記載の製造方法。
  4. (式4)




    (但し、R5はp−フェニレン基と残余がm−フェニレン基である。)で示される繰り返し単位を有し、
    R5を構成するフェニレン基全部のモル数Jに対する、R5に含まれるp−フェニレン基のモル数Jpの割合G(=Jp/J)が0.10〜0.65である、液晶性を有するポリエステル。
  5. 窒素雰囲気中加熱による10%重量減少温度が、400℃以上である、請求項4に記載のポリエステル。
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