しかし、上記特許文献1に開示された従来技術の移線工事方法においては、上記移線用引き寄せ金車とは別に、第2の送電鉄塔における電線の架設位置の近傍から吊り下げられた吊り下げ部材(例えば図9に示す移線用吊り下げ金車120)を使用する必要があった。なお、図9は従来技術の移線工事方法を説明する説明図であり、第2の送電鉄塔91における電線の架設位置91Aの近傍での作業状態を表している。
すなわち、上記従来技術の移線工事方法においては、図9に示すように、移線用引き寄せ金車110に掛けられた電線90Bは、移線用引き寄せ金車110とともに引き寄せケーブル181(図5における第1ケーブル81に相当する構成)によって上方向あるいは横方向(後述する第1の方向に相当する方向)に引っ張られることで、第2の送電鉄塔91に設定された架設位置91Aの下側にまで引き寄せられる。この架設位置91Aの近傍からは、この近傍において第2の送電鉄塔91に取り付けられたシャックル91Bおよび吊り下げケーブル182(図7および図8における第1ケーブル81に相当する構成)を介して移線用吊り下げ金車120が吊り下げられている。
この状態において、移線工事を行う複数人の作業者のうち1人または複数人(図9では1人)である送電線架線工80は、電線90Bを移線用引き寄せ金車110から外して移線用吊り下げ金車120に掛けなおす掛けなおし作業を行う。ついで、送電線架線工80は、電線90Bが掛けられた移線用吊り下げ金車120を、所定のジャッキ(図示省略)によって吊り下げケーブル182を巻き上げる操作あるいは巻き戻す操作を行うことにより、引き寄せケーブル181の引っ張り方向とは異なる上方向あるいは横方向(後述する第2の方向に相当する方向)に引っ張る。これにより、送電線架線工80は、電線90Bが掛けられた移線用吊り下げ金車120を第2の送電鉄塔91における架設位置91Aの近くにまで移動させる。このとき、送電線架線工80は、必要に応じて電線90Bを上側から押さえる押さえ部材(例えば図9に仮想線で示す移線用押さえ金車121)を使用して、電線90Bの上下方向の位置決めを行う。そして、送電線架線工80は、第2の送電鉄塔91における架設位置91Aの近くにまで移動された移線用吊り下げ金車120から電線90Bを外して、第2の送電鉄塔91における架設位置91Aに架設する作業を行うことで、電線90Bの移線を完了させる。
ところで、電線90Bを移線用引き寄せ金車110から外して移線用吊り下げ金車120に掛けなおす掛けなおし作業は、一般に第2の送電鉄塔91において架設位置91Aに比較的近い足場の悪い高所で行われる作業であり、重機などの機械を使用することが難しく送電線架線工80の人力に頼らざるを得ない作業である。ここで、電線90Bは、図1に示すように、距離を置いて配置された送電鉄塔90の間に架設されたものであり、非常に重いものである。このため、上記掛けなおし作業には、足場の悪い高所において送電線架線工80に非常に大きな力を要求する作業となって、作業時間が非常に長い非常に困難な作業となってしまうという問題が発生していた。
本発明は、上記した問題を解決するものとして創案されたものである。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、電線の移線工事をより効率よく行うことを可能とする移線工事方法と、この移線工事方法を実現させるための移線工事用金車と、を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明の移線工事用金車および移線工事方法は次の手段をとる。
まず、第1の発明は、第1の電線支持体に架設されている電線を第2の電線支持体へと移し替える移線工事に使用される移線工事用金車である。この移線工事用金車は、上記移線工事の際に電線が掛けられる1個以上のホイールと、このホイールが回転可能に取り付けられる本体フレームと、を備えている。この本体フレームには、この移線工事用金車が所定のケーブルによって吊り下げられた吊り下げ状態とされたときに本体フレームの上部となる上側部分に、上方向あるいは横方向である第1の方向に移線工事用金車を引っ張るための第1ケーブルを接続することができる第1ケーブル接続部と、上記第1の方向とは異なる上方向あるいは横方向である第2の方向に移線工事用金車を引っ張るための第2ケーブルを接続することができる第2ケーブル接続部とが、それぞれ別々に設けられている。
この第1の発明によれば、第1ケーブル接続部に接続された第1ケーブルと、第2ケーブル接続部に接続された第2ケーブルと、によって、移線工事用金車を、第1の方向と第2の方向とのそれぞれの方向に引き寄せることが可能となる。これにより、移線工事用金車のホイールに掛けられた電線を第1ケーブルによって第2の電線支持体に設定された架設位置の下側に向かう上方向あるいは横方向である第1の方向に引き寄せた後で、第2ケーブルを上記架設位置から第2の方向である上方向あるいは横方向に引っ張ることで、上記ホイールから上記電線を外すことなくこの電線を上記架設位置の近傍から吊り下げられた状態とすることができる移線工事用金車が実現される。すなわち、第1の発明によれば、電線を移線工事用金車から外して別の吊り下げ部材に掛けなおす掛けなおし作業を省略して、電線の移線工事をより効率よく行うことを可能とした移線工事方法を実現させるための移線工事用金車を提供することができる。また、上記第1ケーブル接続部および上記第2ケーブル接続部は移線工事用金車の本体フレームにそれぞれ別々に設けられているため、上記第1ケーブルと上記第2ケーブルとが互いに干渉することを回避させることが可能となる。これにより、第1ケーブルと第2ケーブルとの干渉によって上記電線を引き寄せてこの電線を上記架設位置の近傍から吊り下げられた状態とする操作が妨げられることと、上記干渉によって上記第1ケーブルおよび第2ケーブルとが互いに擦れあって傷むことと、を抑えることができる。
ついで、第2の発明は、上述した第1の発明にかかる移線工事用金車であって、上記ホイールは複数個であり、上記本体フレームには、移線工事用金車が吊り下げ状態とされたときに本体フレームの下部となる下側部分に、下方向あるいは横方向である第3の方向に移線工事用金車を引っ張るための第3ケーブルを接続することができる第3ケーブル接続部が設けられているものである。
この第2の発明によれば、吊り下げ状態の移線工事用金車を、その第3ケーブル接続部に接続された第3ケーブルによって第3の方向に引っ張ることで、移線工事用金車のホイールに掛けられた電線の上下方向の位置を上側および下側の両側から規制して位置決めすることが可能となる。これにより、上記電線の上下方向の位置決めを行うために電線を上側から押さえる押さえ部材を省略することができる。すなわち、第2の発明によれば、上記押さえ部材を設置する作業を省略して、電線の移線工事をさらに効率よく行うことを可能とした移線工事方法を実現させることができる移線工事用金車を提供することができる。
さらに、第3の発明は、上述した第1または第2の発明にかかる移線工事用金車であって、上記ホイールは4個であり、上記本体フレームには、上記上側部分、および、移線工事用金車が吊り下げ状態とされたときに本体フレームの下部となる下側部分のそれぞれに、ホイールが2個ずつ、移線工事用金車が吊り下げ状態とされたときに横方向に直列に並ぶように取り付けられているものである。
この第3の発明によれば、移線工事用金車を引っ張ることでこの移線工事用金車に直列状に並ぶように取り付けられた2個のホイールに掛けられた電線を引き寄せる際に、この電線にかかる負荷が電線上の2箇所に分散される。これにより、上記電線を引き寄せる際にこの電線にかかる負荷によって、この電線がダメージを受けることを回避することができる移線工事用金車を提供することができる。
さらに、第4の発明は、上述した第1ないし第3の発明のいずれか1つの発明にかかる移線工事用金車を使用して、電線を第1の電線支持体から第2の電線支持体へと移し替える移線工事方法である。この移線工事方法は、移線工事用金車を、この移線工事用金車のホイールに第1の電線支持体に架設されている電線が掛けられ、かつ、移線工事用金車の第1ケーブル接続部に第1ケーブルが接続された状態に用意する用意工程と、この用意工程によって用意された移線工事用金車を、第1ケーブルを第1の方向に引っ張ることで、電線と一緒に、この電線の移線先として第2の電線支持体に設定された架設位置の下側にまで引き寄せる第1の引っ張り工程と、この第1の引っ張り工程によって第2の電線支持体における架設位置の下側にまで引き寄せられ、かつ、この架設位置の近傍から延ばされた第2ケーブルが第2ケーブル接続部に接続された状態の移線工事用金車を、上記第2ケーブルによって第2の方向に引っ張る第2の引っ張り工程と、この第2の引っ張り工程を経て上記第2の電線支持体における架設位置の近傍から吊り下げられた状態の移線工事用金車に対して、この移線工事用金車のホイールからこのホイールに掛けられた電線を外して、この電線を第2の電線支持体の架設位置に架設する架設工程と、を有している。また、第4の発明にかかる移線工事方法においては、上記用意工程によって移線工事用金車のホイールに掛けられた電線を上記ホイールから外すことなく、上記第1の引っ張り工程および上記第2の引っ張り工程を実行する。
この第4の発明によれば、移線工事用金車のホイールに掛けられた電線は、第1の引っ張り工程によって第2の電線支持体における電線の架設位置の下側にまで引き寄せられて、その後で上記ホイールから外されることなく第2の引っ張り工程を経て、上記第2の電線支持体における架設位置の近傍から吊り下げられた状態とされる。すなわち、移線工事用金車のホイールに掛けられた電線を、上記移線工事用金車から外して別の吊り下げ部材に掛けなおすことなく、第2の電線支持体における架設位置の近傍から吊り下げられた状態とすることができる。これにより、電線を移線工事用金車から外して別の吊り下げ部材に掛けなおす掛けなおし作業を省略して、電線の移線工事をより効率よく行うことを可能とした移線工事方法を実現することができる。
さらに、第5の発明は、上述した第2の発明にかかる移線工事用金車を使用して、電線を第1の電線支持体から第2の電線支持体へと移し替える移線工事方法である。この移線工事方法は、移線工事用金車を、この移線工事用金車のホイールに第1の電線支持体に架設されている電線が掛けられ、かつ、移線工事用金車の第1ケーブル接続部に第1ケーブルが接続された状態に用意する用意工程と、この用意工程によって用意された移線工事用金車を、第1ケーブルを第1の方向に引っ張ることで、電線と一緒に、この電線の移線先として第2の電線支持体に設定された架設位置の下側にまで引き寄せる第1の引っ張り工程と、この第1の引っ張り工程によって第2の電線支持体における架設位置の下側にまで引き寄せられ、かつ、この架設位置の近傍から延ばされた第2ケーブルが第2ケーブル接続部に接続された状態の移線工事用金車を、上記第2ケーブルによって第2の方向に引っ張る第2の引っ張り工程と、この第2の引っ張り工程を経て第2の電線支持体における架設位置の近傍から吊り下げられた状態とされ、かつ、第3ケーブル接続部に第2の電線支持体における架設位置よりも下側の位置から延ばされた第3ケーブルが接続された状態の移線工事用金車に対して、この移線工事用金車を第3ケーブルによって第3の方向に引っ張ることで、移線工事用金車の上下方向の位置決めを行う第3の引っ張り工程と、第3の引っ張り工程によって上下方向の位置決めが行われた状態の移線工事用金車に対して、この移線工事用金車のホイールからこのホイールに掛けられた電線を外して、この電線を第2の電線支持体の架設位置に架設する架設工程と、を有している。また、第5の発明にかかる移線工事方法においては、上記用意工程によって移線工事用金車のホイールに掛けられた電線を上記ホイールから外すことなく、上記第1の引っ張り工程および上記第2の引っ張り工程ならびに上記第3の引っ張り工程を実行する。
この第5の発明によれば、上記第4の発明と同じく、移線工事用金車のホイールに掛けられた電線は、第1の引っ張り工程によって第2の電線支持体における電線の架設位置の下側にまで引き寄せられて、その後で上記ホイールから外されることなく第2の引っ張り工程を経て、上記第2の電線支持体における架設位置の近傍から吊り下げられた状態とされる。これにより、電線を移線工事用金車から外して別の吊り下げ部材に掛けなおす掛けなおし作業を省略して、電線の移線工事をより効率よく行うことを可能とした移線工事方法を実現することができる。また、移線工事用金車のホイールに掛けられた電線は、上記第3の引っ張り工程において、上記ホイールから外されることなく、その上下方向の位置が、上側および下側の両側から規制されて位置決めされる。これにより、電線の上下方向の位置決めを行うためにこの電線を上側から押さえる押さえ部材を設置する作業を省略して、電線の移線工事をさらに効率よく行うことを可能とした移線工事方法を実現することができる。
本発明の一実施形態にかかる移線工事用金車10の構成について、主に図2ないし図4を用いて説明する。なお、以下において、本体フレーム11に設けられたドア11Cの開閉をロックするドアロック機構11D(図2ないし図4を参照)などの付随的かつ従来から用いられている構成については、その詳細な説明を省略する。
移線工事用金車10は、第1の送電鉄塔90Aに架設されている送電線である電線90Bを第2の送電鉄塔91へと引き寄せて移し替える移線工事(図1参照。以下、単に「移線工事」とも称する。)に使用される移線工事用金車である。ここで、第1の送電鉄塔90Aは、本発明における「第1の電線支持体」に相当する。また、第2の送電鉄塔91は、本発明における「第2の電線支持体」に相当する。
移線工事用金車10は、図2ないし図4に示すように、上記移線工事の際に電線90B(図2参照)が掛けられる複数個(本実施形態では4個)のホイール12と、各ホイール12が内部に組み込まれるように取り付けられて、この各ホイール12をそれぞれ回転可能に支持する本体フレーム11と、を備えている。ここで、本体フレーム11には、所定数(本実施形態では2つ)のドア11Cがそれぞれ開閉可能(図3参照)に設けられている。
また、本体フレーム11は、その各ドア11Cを開状態(図3の仮想線を参照)とすることで、本体フレーム11の内部に位置された各ホイール12に電線90Bを掛けることを可能とするようになっている。なお、本実施形態の各ドア11Cには、それぞれドアロック機構11Dが設けられることで、各ドア11Cが作業者の操作によらずに開閉されることがないようになっている。
また、本体フレーム11は、移線工事用金車10が所定のケーブル(例えば図2に示す第1ケーブル81)によって吊り下げられた吊り下げ状態とされたときに本体フレーム11の上部となる上側部分11Aと、上記吊り下げ状態において本体フレーム11の下部となる下側部分11Bと、を有している。この下側部分11Bおよび上側部分11Aには、図2および図3に示すように、それぞれ、ホイール12が2個ずつ、移線工事用金車10が上記吊り下げ状態とされたときに横方向(図2で見て左右方向)に直列に並ぶように取り付けられている。ここで、電線90Bは、上側部分11Aまたは下側部分11B(図2および図3では下側部分11B)に並ぶ2個のホイール12に掛け渡された状態に掛けられるようになっている。
上記構成によれば、移線工事用金車10を引っ張ることでこの移線工事用金車10に直列状に並ぶように取り付けられた2個のホイール12に掛けられた電線90Bを引き寄せる際に、この電線90Bにかかる負荷が電線90B上の2箇所に分散される。これにより、電線90Bを引き寄せる際にこの電線90Bにかかる負荷によって、この電線90Bがダメージを受けることを回避することができる移線工事用金車10を提供することができる。
ところで、本体フレーム11の上側部分11Aには、図2ないし図4に示すように、第1ケーブル接続部10Aと第2ケーブル接続部10Bとがそれぞれ別々に設けられている。ここで、第1ケーブル接続部10Aは、図2に示すように、上方向あるいは横方向である第1の方向(図2では上方向)に移線工事用金車10を引っ張るための第1ケーブル81を、この第1ケーブル81の端部に取り付けられた接続金具81Bを介して接続させることができるようになっている。また、第2ケーブル接続部10Bは、上記第1の方向とは異なる上方向あるいは横方向である第2の方向(図2では右上方向)に移線工事用金車10を引っ張るための第2ケーブル82を、この第2ケーブル82の端部に取り付けられた接続金具82Bを介して接続させることができるようになっている。
上記構成によれば、第1ケーブル接続部10Aに接続された第1ケーブル81と、第2ケーブル接続部10Bに接続された第2ケーブル82と、によって、移線工事用金車10を、上記第1の方向と上記第2の方向とのそれぞれの方向に引き寄せることが可能となる。これにより、図5ないし図8に示すように、移線工事用金車10のホイール12に掛けられた電線90Bを第1ケーブル81によって第2の電線支持体91に設定された架設位置91Aの下側に向かう上方向あるいは横方向である第1の方向(図5参照)に引き寄せた後で、第2ケーブル82を第2の電線支持体91の架設位置91Aから第2の方向である上方向あるいは横方向に引っ張る(図6参照)ことで、ホイール12から電線90Bを外すことなくこの電線90Bを第2の電線支持体91における架設位置91Aの近傍から吊り下げられた状態(図6ないし図8を参照)とすることができる移線工事用金車10が実現される。すなわち、上記構成によれば、電線90Bを移線工事用金車10から外して別の吊り下げ部材(例えば図9に示す移線用吊り下げ金車120)に掛けなおす掛けなおし作業を省略して(図5ないし図7を参照)、電線90Bの移線工事をより効率よく行うことを可能とした移線工事方法を実現させるための移線工事用金車10を提供することができる。
また、第1ケーブル接続部10Aおよび第2ケーブル接続部10Bは移線工事用金車10の本体フレーム11にそれぞれ別々に設けられているため、第1ケーブル81と第2ケーブル82とが互いに干渉することを回避させることが可能となる。これにより、第1ケーブル81と第2ケーブル82との干渉によって電線90Bを引き寄せてこの電線90Bを第2の電線支持体91における架設位置91Aの近傍から吊り下げられた状態(図6参照)とする操作が妨げられることと、上記干渉によって第1ケーブル81と第2ケーブル82とが互いに擦れあって傷むことと、を抑えることができる。
ここで、第1ケーブル接続部10Aおよび第2ケーブル接続部10Bは、図2ないし図4に示すように、揺動機構および旋回機構の両方を兼ね備えた揺動旋回機構10Dを介して本体フレーム11の上側部分11Aに取り付けられて設けられている。これにより、第1ケーブル接続部10Aおよび第2ケーブル接続部10Bは、図2に示すように、互いに離間した状態を保ちながら、本体フレーム11に対して矢印A1の方向に揺動運動し、かつ、本体フレーム11に対して矢印A2の方向に旋回運動することができるようになっている。これにより、上記第1ケーブル81と第2ケーブル82との干渉をさらに抑えて、この干渉によって電線90Bを引き寄せてこの電線90Bを第2の電線支持体91における架設位置91Aの近傍から吊り下げられた状態とする操作(図6参照)が妨げられることと、上記干渉によって第1ケーブル81と第2ケーブル82とが互いに擦れあって傷むことと、をさらに抑えることができる。
ところで、本体フレーム11の下側部分11Bには、図2ないし図4に示すように、第3ケーブル接続部10Cが設けられている。ここで、第3ケーブル接続部10Cは、図2に示すように、下方向あるいは横方向である第3の方向(図2では下方向)に移線工事用金車10を引っ張るための第3ケーブル83を、この第1ケーブル83の端部に取り付けられた接続金具83Bを介して接続させることができるようになっている。なお、本実施形態では、第3ケーブル接続部10Cは、本体フレーム11に対して矢印A3(図2参照)の方向に旋回運動ができるように、この本体フレーム11の下側部分11Bにボルト(図3参照)を介して取り付けられて設けられている。
上記構成によれば、図8に示すように、第2ケーブル82によって吊り下げられた状態の移線工事用金車10を、その第3ケーブル接続部10Cに接続された第3ケーブル83によって第3の方向(図8では右下方向)に引っ張ることで、移線工事用金車10のホイール12に掛けられた電線90Bの上下方向の位置を上側および下側の両側から規制して位置決めすることが可能となる。これにより、電線90Bの上下方向の位置決めを行うために電線90Bを上側から押さえる押さえ部材(例えば図9に仮想線で示す移線用押さえ金車121)を省略することができる。すなわち、上記構成によれば、上記押さえ部材を設置する作業を省略して、電線90Bの移線工事をさらに効率よく行うことを可能とした移線工事方法(図5ないし図8を参照)を実現させることができる移線工事用金車10を提供することができる。
ここで、移線工事用金車10を使用した移線工事の移線工事方法について、主に図5ないし図8を用いて説明する。なお、以下においては、送電線架線工80の足場として第2の送電鉄塔91に設置されるはしご(図5ないし図7参照)などの付随的かつ従来から用いられている構成については、その詳細な説明を省略する。また、以下においては、上記はしごを第2の送電鉄塔91に設置する工程などの付随的かつ従来から用いられている工程については、その詳細な説明を省略する。
上記移線工事においては、まず、移線工事を行う複数人の作業者のうち1人または複数人(例えば図5および図6に示す送電線架線工80。以下、単に「作業者」とも記載する。)は、第1の送電鉄塔90A(図1参照)に架設されて移線の対象とされている1本または複数本(本実施形態では2本)の電線90Bへの送電を停止させる。
ついで、作業者は、移線工事用金車10の第1ケーブル接続部10Aに接続金具81Bを介して第1ケーブル81を接続させる(図2参照)作業を行う。また、作業者は、移線工事用金車10において、各ドアロック機構11Dのロックを解除して各ドア11Cを開状態とし、本体フレーム11の下側部分11Bに並ぶ2個のホイール12(図2参照)に第1の送電鉄塔90Aに架設された電線90Bを掛け、各ドア11Cを閉めなおして各ドアロック機構11Dのロックをかけなおす作業を行う。ここで、上記2つの作業は、どちらの作業を先に行ってもよいものであり、上記2つの作業をあわせた工程が本発明における「用意工程」に相当する。
上記用意工程に続いて、作業者は、図5に示すように、第2の送電鉄塔91において架設位置91Aに比較的近い高所に滑車ブロック91Cを設置し、この滑車ブロック91Cに第1ケーブル81を掛ける。また、作業者は、第2の送電鉄塔91において地表面に比較的近い低所に滑車ブロック91Dを設置し、この滑車ブロック91Dに第1ケーブル81を掛ける。さらに、作業者は、第2の送電鉄塔91の上記低所に比較的近い地表面上に巻き上げ装置81Aを設置し、この巻き上げ装置81Aに第1ケーブル81を接続させる。
そして、作業者は、巻き上げ装置81Aに第1ケーブル81を巻き上げさせることで、この第1ケーブル81を第2の電線支持体91に電線90Bの移線先として設定された架設位置91Aに向かう上方向あるいは横方向(図5で見て右上方向。本発明における「第1の方向」に相当する方向)に引っ張る。この際、作業者は、第1の送電鉄塔90A(図1参照)からこの第1の送電鉄塔90Aに架設された電線90Bを外して、この電線90Bを巻き上げ装置81Aによる第1ケーブル81の巻き上げにあわせて緩める作業を行う。これにより、作業者は、上記用意工程によって用意された移線工事用金車10を、電線90Bと一緒に、第2の電線支持体91における架設位置91Aの下側にまで引き寄せる。この工程は、本発明における「第1の引っ張り工程」に相当する。
上記第1の引っ張り工程に続いて、作業者は、第2の送電鉄塔91における架設位置91Aの近傍に第1ケーブル81を接続させることができるシャックル91B(図6ないし図8を参照)を取り付け、このシャックル91Bに滑車ブロック91Eを取り付けることで、この滑車ブロック91Eを第2の送電鉄塔91に設置する。また、作業者は、図6に示すように、第2の送電鉄塔91において滑車ブロック91Eに比較的近い高所に滑車ブロック91Fを設置する。
そして、作業者は、第2ケーブル82を、第2の送電鉄塔91に設置された滑車ブロック91Eおよび滑車ブロック91Fを介して第2の送電鉄塔91に掛けて、この第2の送電鉄塔91における架設位置91Aの近傍から延ばされた状態とする。また、作業者は、第2の送電鉄塔91において地表面に比較的近い低所に第1ケーブル81が掛けられた滑車ブロック91E、91Fとは別の滑車ブロック91Gを設置し、この滑車ブロック91Gに第2ケーブル82を掛ける。さらに、作業者は、第2の送電鉄塔91の上記低所に比較的近い地表面上に巻き上げ装置82Aを設置し、この巻き上げ装置82Aに第2ケーブル82を接続させる。
そして、作業者のうちの1人または複数人(図6では1人)である送電線架線工80は、上記したように用意された第2ケーブル82を、上述した第1の引っ張り工程によって第2の電線支持体91における架設位置91Aの下側にまで引き寄せられた移線工事用金車10の第2ケーブル接続部10Bに、接続金具82B(図2参照)を介して接続させる。さらに、送電線架線工80は、移線工事用金車10の第3ケーブル接続部10Cから第3ケーブル83がぶら下げられた状態となるように、この第3ケーブル83を移線工事用金車10の第3ケーブル接続部10Cに接続金具83B(図2参照)を介して接続させる。
この状態から、作業者は、巻き上げ装置82Aに第2ケーブル82を巻き上げさせることによって、移線工事用金車10を、第2の電線支持体91における架設位置91Aの近傍に向かう上方向あるいは横方向(図6で見て右上方向。本発明における「第2の方向」に相当する方向)に引っ張る。この際、作業者は、上記巻き上げ装置82Aの巻き上げにあわせて巻き上げ装置81Aの巻き戻しを行う。このため、図6に仮想線で示すように、移線工事用金車10およびこの移線工事用金車10のホイール12に掛けられた電線90Bは、第2の電線支持体91における架設位置91Aの近くにまで引っ張り上げられて、この架設位置91Aの近傍から吊り下げられた状態となる。この工程は、本発明における「第2の引っ張り工程」に相当する。
ところで、送電線架線工80を含む作業者は、上述した用意工程によって移線工事用金車10の各ホイール12に掛けられた電線90Bを各ホイール12から外すことなく、上述した第1の引っ張り工程および上記第2の引っ張り工程を実行する。すなわち、移線工事用金車10の各ホイール12に掛けられた電線90Bは、上述した第1の引っ張り工程によって第2の電線支持体91における電線90Bの架設位置91Aの下側にまで引き寄せられて(図5参照)、その後に移線工事用金車10の各ホイール12から外されることなく第2の引っ張り工程を経て、第2の電線支持体91における電線90Bの架設位置91Aの近くにまで引っ張り上げられて、この架設位置91Aの近傍から吊り下げられた状態(図6の仮想線を参照)とされる。
言い換えると、上述した用意工程から第2の引っ張り工程までの各工程によれば、移線工事用金車10の各ホイール12に掛けられた電線90Bを、移線工事用金車10から外して別の吊り下げ部材(例えば図9に示す移線用吊り下げ金車120)に掛けなおすことなく、第2の電線支持体91における電線90Bの架設位置91Aの近傍から吊り下げられた(図6の仮想線を参照)状態とすることができる。これにより、電線90Bを移線工事用金車10から外して上記別の吊り下げ部材に掛けなおす掛けなおし作業を省略して(図5ないし図7を参照)、電線90Bの移線工事をより効率よく行うことを可能とした移線工事方法を実現することができる。
さて、上述した第2の引っ張り工程を行った送電線架線工80(図7では図示省略)は、第2の引っ張り工程に続いて、第1ケーブル81を第2の電線支持体91における架設位置91Aの近傍に取り付けられたシャックル91Bから延びて移線工事用金車10の第1ケーブル接続部10Aに接続された状態(図7参照)となるように繋ぎなおす繋ぎなおし作業を行う。さらに、送電線架線工80は、移線工事用金車10の第2ケーブル接続部10Bから第2ケーブル82を外して、この第2ケーブル82および滑車ブロック91Eならびに滑車ブロック91Fを撤去する作業(図示省略)を行う。この2つの作業によって、移線工事用金車10は、第1ケーブル81によって第2の電線支持体91における架設位置91Aの近傍に取り付けられたシャックル91Bから吊り下げられた状態(図示省略)となる。なお、移線工事用金車10を吊り下げられた状態とするための第1ケーブル81は、上述した第1の引っ張り工程において移線工事用金車10を引っ張るために使用された第1ケーブル81とは別のケーブルを用意して使用するものであっても、上記第1の引っ張り工程において使用された第1ケーブル81と同じケーブルを使いまわして使用するものであってもよい。
続いて、送電線架線工80(図8では図示省略)は、第2の電線支持体91における架設位置91Aよりも下側の位置にレバーブロック(登録商標)83A(図8参照)を取り付ける作業を行う。さらに、送電線架線工80は、レバーブロック(登録商標)83Aに移線工事用金車10の第3ケーブル接続部10Cからぶら下げられた状態の第3ケーブル83を接続させる作業を行う。上記2つの作業により、第3ケーブル83は、第2の電線支持体91における架設位置91Aよりも下側の位置から、移線工事用金車10の第3ケーブル接続部10Cに向かって延ばされて、この第3ケーブル接続部10Cと上記架設位置91Aよりも下側の位置とを繋いだ状態となる。
この状態から、送電線架線工80は、図8に示すように、レバーブロック(登録商標)83Aを操作することで、このレバーブロック(登録商標)83Aに向かう下方向あるいは横方向(図8で見て右下方向。本発明における「第3の方向」に相当する方向)に移線工事用金車10を引っ張る。この際、送電線架線工80は、上記レバーブロック(登録商標)83Aの操作にあわせて、所定のジャッキ(図示省略)によって第1ケーブル81を巻き上げる操作あるいは巻き戻す操作を行う。この巻き上げおよび巻き戻しにおいては、上記ジャッキから第1ケーブル81にこの第1ケーブル81をねじる力が与えられることがあるが、この力は移線工事用金車10において揺動旋回機構10Dが本体フレーム11に対して旋回運動すること(図2参照)で逃がされる。そして、移線工事用金車10およびこの移線工事用金車10の各ホイール12に掛けられた電線90Bは、第2の電線支持体91における架設位置91Aに対する上下方向の位置決めがなされる。この工程は、本発明における「第3の引っ張り工程」に相当する。
ここで、上記第3の引っ張り工程においては、電線90Bは、移線工事用金車10の上側部分11Aに並ぶ2個のホイール12(図2参照)による上側からの規制(図8参照)、または、移線工事用金車10の下側部分11Bに並ぶ2個のホイール12(図2参照)による下側からの規制(図示省略)によって、その上下方向の位置決めがなされる。この構成によれば、移線工事用金車10のホイール12に掛けられた電線90Bの位置を上側および下側のどちら側から規制する場合でも、この規制によって電線90Bが受ける負荷はこの電線90B上の2箇所に分散される。これにより、電線90Bを移線工事用金車10によって上下方向に位置決めする際にこの電線90Bにかかる負荷によって、この電線90Bがダメージを受けることを回避することができる移線工事方法を実現することができる。
ところで、送電線架線工80を含む作業者は、上述した用意工程によって移線工事用金車10の各ホイール12に掛けられた電線90Bを各ホイール12から外すことなく、上述した第1の引っ張り工程から上記第3の引っ張り工程までの各工程を実行する。すなわち、移線工事用金車10のホイール12に掛けられた電線90Bは、上記第3の引っ張り工程において、ホイール12から外されることなく、その上下方向の位置が、上側および下側の両側から規制されて位置決めされる。これにより、電線90Bの上下方向の位置決めを行うためにこの電線90Bを上側から押さえる押さえ部材(例えば図9に仮想線で示す移線用押さえ金車121)を設置する作業を省略して(図5ないし図8を参照)、電線90Bの移線工事をさらに効率よく行うことを可能とした移線工事方法を実現することができる。
なお、上述した第3の引っ張り工程は、例えば第2の送電鉄塔91が他の送電鉄塔90(図1参照)よりも標高の低い盆地に建てられて、第2の送電鉄塔91における電線90Bの架設位置91Aが比較的低い位置になる場合など、電線90Bを上側から規制して位置決めする必要があるときに適宜行われる工程である。すなわち、上記第3の引っ張り工程は、電線90Bを上側から規制して位置決めする必要がない場合には、送電線架線工80が移線工事用金車10の第3ケーブル接続部10Cに第3ケーブル83をぶら下げた状態とする作業(図6参照)と一緒に省略することができる工程である。
さて、送電線架線工80は、上述した第3の引っ張り工程に続いて、この第3の引っ張り工程によって上下方向の位置決めが行われた状態の移線工事用金車10に対して、この移線工事用金車10のホイール12からこのホイール12に掛けられた電線90Bを外す作業(図示省略)を行う。ここで、上記第3の引っ張り工程が省略されている場合においては、送電線架線工80は、移線工事用金車10を第1ケーブル81によって第2の電線支持体91における架設位置91Aの近傍から吊り下げられた状態とする作業(図示省略)に続いて、吊り下げられた状態の移線工事用金車10のホイール12からこのホイール12に掛けられた電線90Bを外す作業(図示省略)を行う。
続いて、送電線架線工80は、上記したいずれかの作業によって移線工事用金車10のホイール12から外された電線90Bを、第2の送電鉄塔91の架設位置91Aに架設する作業を行う。ここで、上記各作業をあわせた工程は、本発明における「架設工程」に相当する。そして、この架設工程が終了すると、電線90Bは第1の送電鉄塔90Aから第2の送電鉄塔91に移し替えられた状態(図1の仮想線を参照)となり、電線90Bの移線工事は完了される。
本発明は、上述した一実施形態の移線工事用金車10により説明した外観もしくは構成、または、上述した一実施形態の移線工事方法に限定されない。すなわち、本発明の要旨を変更しない範囲において、本発明の移線工事用金車および移線工事方法に対して種々の変更、追加、および、削除が可能である。具体的には、例えば以下のような各種の形態を実施することができる。
例えば、移線工事用金車の本体フレームに取り付けられるホイールの数および配置は上述したものに限定されない。すなわち、例えば本体フレームの上側部分または下側部分の一方または両方において、大径のホイールを1個だけ取り付けるなど、移線工事用金車の本体フレームに取り付けられるホイールの数を適宜変更することができる。また、上述した一実施形態の移線工事方法において第3の引っ張り工程が省略できる場合に、移線工事に使用する移線工事用金車の本体フレームの上側部分からホイールを省略するなど、移線工事用金車の本体フレームに取り付けられるホイールの配置を適宜変更することができる。
また、本発明の移線工事方法および移線工事用金車は、第1の送電鉄塔90Aに架設されている電線90Bを第2の送電鉄塔91に移し替える移線工事(図1参照)でなくても適用することができる。すなわち、本発明の移線工事方法および移線工事用金車は、例えばコンクリート製または木製である複数本の電柱のうち、第1の電柱に架設されている電線を第2の電柱に移し替える移線工事など、任意の第1の電線支持体に架設されている電線を第2の電線支持体へと移し替える移線工事に適用することができる。
また、本発明の移線工事方法および移線工事用金車によって移線させることができる電線は、送電線に限定されない。すなわち、本発明の移線工事方法および移線工事用金車によって移線させることができる電線は、例えばアンテナの空中線として使用される電線および光ファイバー複合架空地線として使用される電線など、任意の電線とすることができる。
また、上述した本発明の一実施形態の移線工事方法を説明する際に示された具体的な作業手順は、本発明の一実施例に過ぎない。すなわち、例えば移線工事用金車の第1ケーブル接続部に第1ケーブルを接続させる前に、この第1ケーブルを巻き上げ装置に接続させておくなど、本発明の移線工事方法における具体的な作業手順を適宜変更することができる。