光フィルターとしてのエタロンフィルターにおけるフィルター特性(反射特性、光透過特性等)は、光学膜の反射率により決まる。光学膜の反射率が高い場合は半値幅が狭くなり、光学膜の反射率が低い場合は半値幅が大きくなる。光学膜の反射率を制御することによって、エタロンフィルターのフィルター特性を制御することができる。エタロンの半値幅が狭いと所望の波長だけをとりだせるため、例えばエタロンを分光測定器として使用した場合には、測定精度を高めることができる。しかしながら、エタロンの半値幅が狭いと、エタロンを透過する光の光量が低下するため、受光部が光を感知するのが難しくなる場合がある。一方、エタロンの半値幅が大きいとエタロンを透過する光の光量が増大する。この場合は、受光部による光の感知は容易となるが、一方で、所望波長以外の光も感知してしまう。つまり、エタロンの波長分解能が低下する。エタロンの設計する場合、「半値幅」と「透過光量」の各々に関して所望の基準を満たす必要があるが、例えば、使用される光の波長帯域が広範囲の波長域にわたるような場合には、光学膜の設計が難しくなる場合がある。
上述のとおり、エタロンの半値幅を決定する要素は光学膜の反射率である。光学膜の反射率を制御する一般的な方法としては、光学膜の材料を変化させる、あるいは、光学膜を多層膜で構成し、多層膜における積層数を変化させるという方法がある。しかし、材料を変化させる場合、利用可能な材料の種類には限りがある。また、光学膜の積層数を変化させる場合も、反射率は積層数に対して離散的な値しかとれないため、目標とする反射率、すなわち、目標とする半値幅や透過光量になるような光学膜の設計ができない場合があり得る。
すなわち、積層数を変化させたとき、半値幅の値は離散的に変化するが、その離散値以外の値は、積層数の変化だけでは実現することができない。例えば、半値幅として、3±0.5nmというような仕様を満足したい場合、所定材料からなる光学膜における、積層層数の変化によって得られる離散的な反射率が、上記の所望範囲に入らない場合には、光学膜の適切な設計が困難となる。
本発明の少なくとも一つの態様によれば、例えば、光フィルターの特性設計を容易化することができる。
(1)本発明の光フィルターの一態様は、第1基板と、前記第1基板と対向する第2基板と、前記第1基板に設けられた第1光学膜と、前記第2基板に設けられ、前記第1光学膜と対向する第2光学膜と、を含み、前記第1光学膜の、光の反射帯域における各波長の光の反射率によって定まる反射特性と、前記第2光学膜の、前記反射帯域における各波長の光の反射率によって定まる反射特性とが異なる。
従来は、ミラーを構成する第1光学膜および第2光学膜の各々の反射特性が同じであることを前提として光学膜が設計されていたが、本態様では、第1光学膜の反射特性と第2光学膜の反射特性とを意図的に異ならせる。つまり、第1光学膜の反射特性と第2光学膜の反射特性とを非対称とする。これによって、同一特性の光学膜同士の組み合わせでは得ることができなかった光フィルター特性を実現することができる。
例えば、光学膜の多様な設計が可能となり、目標とする半値幅や透過光量を満足する光学膜を設計することが容易化される。つまり、光フィルターに求められる分光特性を、従来に比べて、より容易に実現することができ、光フィルターの設計負担が軽減される。なお、上述の「光学膜の反射特性」は、具体的には、「光学膜の反射帯域における各波長の光の反射率で定まる反射特性」のことである。
(2)本発明の光フィルターの他の態様では、前記第1光学膜の、ピークの光の反射率に対応する第1中心波長は、前記第2光学膜の、ピークの光の反射率に対応する第2中心波長とは異なる値に設定されていることを特徴とする光フィルター。
本態様では、第1光学膜単独の場合の中心波長を第1中心波長とし、第2光学膜単独の場合の中心波長を第2中心波長としたとき、第1中心波長は、第2中心波長とは異なる値に設定される。第1中心波長は、具体的には、第1光学膜の最大の光の反射率(ピークの光の反射率)に対応する波長であり、第2中心波長は、第2光学膜の最大の光の反射率(ピークの光の反射率)に対応する波長である。
各光学膜の中心波長を異ならせることによって、第1光学膜の反射特性と第2光学膜の反射特性とを非対称とし、これによって、例えば、目標とする半値幅および透過光量の双方を満足する光フィルターを実現し易くなる。
各光学膜の中心波長を異ならせる(ずらす)方法としては、例えば、各光学膜を、同一材料の誘電体多層膜で構成しつつ、各光学膜の積層数を異ならせるという方法を採用することができる。また、例えば、第1光学膜と第2光学膜の積層数は同じとして、積層される膜の厚みを異ならせるという手法を採ることもできる。また、積層数ならびに膜の膜厚の双方を異ならせるという手法を採ることもできる。また、各光学膜の構成材料を異ならせるという手法を採用することもできる。また、各光学膜の構造を異ならせるという手法を採用することもできる。
(3)本発明の光フィルターの他の態様では、前記第1光学膜の前記第1中心波長をλ1とし、前記第2光学膜の前記第2中心波長をλ2とし、前記光フィルターの分光帯域での中心波長をλ3としたとき、λ1<λ3<λ2が成立する。
本態様では、各光学膜の中心波長間の波長域、つまり、λ1からλ2までの波長域において、光フィルターの分光帯域での中心波長(光フィルターの中心波長)λ3を設定する。光フィルターが、例えば光透過型のフィルターである場合、中心波長λ3は、光透過帯域(すなわち、その時点で実現されている光フィルターの分光帯域)におけるピーク透過率に対応する波長である。
光フィルターの分光特性は、第1光学膜および第2光学膜の各々の、光フィルターの中心波長における反射率の積に依存して決まる。各光学膜の反射率の積の値が小さすぎると、半値幅が広くなりすぎて、所望の光フィルターの特性、すなわち波長分解能を確保することができない。本態様では、光フィルターの中心波長λ3は、第1光学膜のピークの反射率に対応する波長λ1と、第2光学膜のピークの反射率に対応する波長λ2との間の波長域において設定されているため、波長λ3における各光学膜の反射率を、最低限度以上の反射率とすることができる。よって、各光学膜の反射率の積が小さくなり過ぎることが防止される。
(4)本発明の光フィルターの他の態様では、前記第1光学膜の、前記光フィルターの分光帯域における反射率の最低値をα1とし、第2光学膜の、前記光フィルターの分光帯域における反射率の最低値をα2としたとき、α1・α2≧0.64が成立する。
分光帯域における第1光学膜の反射率の最低値をα1とし、第2光学膜の反射率の最低値をα2としたとき、α1・α2(α1とα2の積)をどのような値に設計するのかは、設計条件等によって適宜、決定されるため、基準を一律に定めることは困難である。但し、光フィルターの設計の経験からみて、例えば、α1=0.8、α2=0.8であれば、光フィルターの設計が可能であり、最低限、この程度の反射率が必要であると考えられる。すなわち、α1・α2の、経験則に基づく基準としては、0.64以上は必要であると考えられる。よって、本態様では、α1・α2≧0.64が成立するように、第1光学膜および第2光学膜の反射率を設定する。
(5)本発明の光フィルターの他の態様では、前記第1光学膜の分光帯域の中心波長と前記第2光学膜の分光帯域の中心波長とが一致し、前記一致する中心波長を共通の中心波長とするとき、前記第1光学膜の、前記共通の中心波長の光の反射率は第1反射率に設定されており、前記第2光学膜の、前記共通の中心波長の光の反射率は、前記第1反射率とは異なる第2反射率に設定されている。
本態様では、第1光学膜と第2光学膜の各中心波長は一致するが、その中心波長(共通中心波長)における各光学膜の反射率が異なる値に設定される。第1光学膜と第2光学膜との間で、共通中心波長に対する反射率を異ならせる方法としては、例えば、各光学膜を、同一材料の誘電体多層膜で構成しつつ、各光学膜の積層数を異ならせるという方法を採用することができる。また、各光学膜の構成材料を異ならせるという手法を採用することもできる。また、各光学膜の構造を異ならせるという手法を採用することもできる。
(6)本発明の光フィルターの他の態様では、前記第1光学膜は、第1材料膜と第2材料膜とを一組とする層が、m層(mは1以上の整数)積層されて構成される第1積層膜であり、前記第2光学膜は、前記第1材料膜と前記第2材料膜とを一組とする層が、n層(nは2以上の整数であり、かつ、n≠m)積層されて構成される第2積層膜である。
本態様では、第1光学膜および第2光学膜の各々を積層膜で構成し、積層数を異ならせることによって、第1光学膜の反射特性と第2光学膜の反射特性とを非対称とする。例えば、屈折率が異なる第1材料膜(上層:屈折率小)と第2材料膜(下層:屈折率大)を一組(ワンペア)の層とし、その一組の層の積層数、すなわちペア数を、第1光学膜と第2光学膜との間で異ならせる。積層膜における積層数(ペア数)の変更は、製造工程の若干の変更によって達成でき、実現が容易である。
(7)本発明の光フィルターの他の態様では、前記第1光学膜は、第1材料膜と第2材料膜とを一組とする層が、m層(mは1以上の整数)積層されて構成される第1積層膜であり、前記第2光学膜は、前記第1材料膜と前記第2材料膜とを一組とする層が、m層積層されて構成され、かつ、前記一組の層の膜厚が、前記第1光学膜における前記一組の層の膜厚とは異なる第2積層膜である。
本態様では、第1光学膜および第2光学膜の各々を積層膜で構成し、各光学膜間で、積層数は同じとするが、第1材料層と第2材料層で構成される一組の層の厚みを異ならせ、これによって、第1光学膜の反射特性と第2光学膜の反射特性とを非対称とする。例えば、屈折率が異なる第1材料膜(上層:屈折率小)と第2材料膜(下層:屈折率大)を一組(ワンペア)の層とし、第1光学膜と第2光学膜との間で、第1材料膜と第2材料膜の少なくとも一方の膜厚を変更して、一組の層としての厚みに差を設ける。本態様の各光学膜の構成は、製造工程の若干の変更によって達成でき、実現が容易である。
(8)本発明の光フィルターの他の態様は、前記第1光学膜は、第1材料膜と第2材料膜とを一組とする層が、m層(mは1以上の整数)積層されて構成される第1積層膜であり、前記第2光学膜は、前記第1材料膜と前記第2材料膜とを一組とする層が、n層(nは1以上の整数であり、かつ、n≠m)積層されて構成され、かつ、前記一組の層の膜厚が、前記第1光学膜における前記一組の層の膜厚とは異なる第2積層膜である。
本態様では、第1光学膜および第2光学膜の各々を積層膜で構成し、各光学膜間で、積層数を異ならせ、かつ、第1材料層と第2材料層で構成される一組の層の厚みを異ならせ、これによって、第1光学膜の反射特性と第2光学膜の反射特性とを非対称とする。
例えば、屈折率が異なる第1材料膜(上層:屈折率小)と第2材料膜(下層:屈折率大)を一組(ワンペア)の層とし、その一組の層の積層数、すなわちペア数を、第1光学膜と第2光学膜との間で異ならせる。また、第1光学膜と第2光学膜との間で、第1材料膜と第2材料膜の少なくとも一方の膜厚を変更して、一組の層としての厚みに差を設ける。積層膜における積層数(ペア数)の調整ならびに一組の層の厚みの調整によって、光学膜の反射特性を、より多様に制御することができる。また、本態様の各光学膜の構成は、製造工程の若干の変更によって達成でき、実現が容易である。
(9)本発明の光フィルターの他の態様では、前記第1光学膜を構成する材料と、前記第2光学膜を構成する材料とが異なる。
本態様では、各光学膜間で、材料を異ならせて、第1光学膜の反射特性と第2光学膜の反射特性とを非対称とする。異なる材料によって構成される光学膜の組み合わせによって、より多様な特性をもつ光フィルターを設計することができる。例えば、第1光学膜として誘電体多層膜を使用し、第2光学膜として、Ag(銀)を主成分とする金属膜(Ag単体膜あるいはAgの合金膜)を使用することが考えられる。この場合、同一の材料同士の組み合わせでは得ることのできない光フィルターの特性を実現することができる。
(10)本発明の光フィルターの他の態様では、前記第1光学膜の構造と、前記第2光学膜の構造とが異なる。
本態様では、各光学膜間で構造を異ならせて、第1光学膜の反射特性と第2光学膜の反射特性とを非対称とする。例えば、第1光学膜を、第1材料層と第2材料層で構成される一組の層を構成単位とする積層膜とし、第2光学膜を、第1材料層、第2材料層ならびに第3材料層で構成される一組の層を構成単位とする積層膜とする場合があり得る。また、各光学膜として使用される材料の分子式は同じであるが、触媒等の化学的、物理的作用により化合物中の原子または基の結合の仕方を変え、分子式は同じであるが、構造式が異なる化合物(異性体)にする場合も、光学膜の構造が異なる場合に該当する。
(11)本発明の光フィルターの他の態様では、前記光フィルターは、可変ギャップエタロンフィルターであり、前記第1基板は、第1電極を有する固定基板であり、前記第2基板は、第2電極を有する可動基板であり、前記第1電極と前記第2電極との間に生じる静電力によって前記第1光学膜と前記第2光学膜との間のギャップが可変に制御され、これによって所望波長帯域内において分光帯域が切り替えられる。
可変ギャップエタロンフィルターは、ファブリペロー干渉計の原理を利用した、構成が簡易で、小型化、低価格化に適した、使い勝手のよい波長可変フィルターである。第1電極と第2電極との間に生じた静電力によって、第1光学膜と第2光学膜との間のギャップを精度よく制御することができる。本態様では、この可変ギャップエタロンフィルターに使用される、ミラーとして機能する一対の光学膜の各々の反射特性を非対称化する。これによって、可変ギャップエタロンフィルターの設計が容易化される。
(12)本発明の光フィルターの他の態様では、前記第1電極は、前記第1基板の基板厚み方向から見た平面視において、前記第1光学膜の周囲に形成されており、前記第2電極は、前記第2基板の基板厚み方向から見た平面視において、前記第2光学膜の周囲に形成されている。
本態様では、第1波長可変バンドパスフィルターの第1電極、第2電極はそれぞれ第1光学膜、第2光学膜の周囲に形成されている。光学膜と電極とがオーバーラップしないことから、電極が、光学膜の光反射特性(あるいは光透過特性)に影響を及ぼさない。よって、光学膜の設計が複雑化しない。
(13)本発明の光フィルターの他の態様では、前記可動基板としての前記第2基板に設けられる前記第2光学膜の膜厚は、前記固定基板としての前記第1基板に設けられる前記第1光学膜の膜厚よりも薄い。
第2基板は、可動基板であることから、可動部(ダイヤフラム)が、第1電極と第2電極との間に生じた静電力に応じて、適切に撓む(変形する)ことが重要である。そこで、本態様では、可動基板である第2基板に設けられる第2光学膜の膜厚を、固定基板である第1基板に設けられる第1光学膜の膜厚よりも薄く設定する。これによって、可動基板である第2基板における第2光学膜による応力が軽減され、可動部の良好な撓み性を確保し易くなる。
(14)本発明の光フィルターモジュールの一態様は、上記いずれかの光フィルターと、前記光フィルターを透過した光を受光する受光素子と、を含む。
光フィルターモジュールは、例えば、例えば光通信装置の受信部(受光光学系と受光素子を含む)として使用することができ、また、例えば、分光測定器の受光部(受光光学系と受光素子とを含む)として使用することができる。本態様によれば、小型で、使い勝手のよい光フィルターモジュールが実現される。
(15)本発明の分光測定器の一態様は、上記いずれかの光フィルターと、前記光フィルターを透過した光を受光する受光素子と、前記受光素子から得られる信号に基づく信号処理に基づいて所与の信号処理を実行する信号処理部と、を含む。
本態様によれば、例えば、簡素化された構成を備え、小型軽量で、使い勝手のよい分光測定器を実現することができる。信号処理部は、受光素子から得られる信号(受光信号)に基づいて所定の信号処理を実行し、例えば、サンプルの分光光度分布を測定する。分光光度分布の測定によって、例えば、サンプルの測色、サンプルの成分分析等を行うことができる。
(16)本発明の光機器の一態様は、上記いずれかの光フィルターを含む。
これによって、例えば、簡素化された構成を備え、小型軽量で、使い勝手のよい光機器(例えば、各種センサーや光通信応用機器)が実現される。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
(第1実施形態)
図1(A)〜図1(D)は、光フィルターの構成要素である一対の光学膜の反射特性の一例、ならびに光フィルターの分光特性の一例を示す図である。図1(A)に示されるように、エタロンフィルター300は、互いに平行に保持された第1基板20および第2基板30と、第1基板20上に設けられた第1光学膜40と、第2基板30上に設けられた第2光学膜50と、を有する。第1基板20及び第2基板30は、例えば、所望の波長帯域の光に対する透過性を有するガラス基板である。
また、第1光学膜40と第2光学膜50とは対向し、かつ、所定のギャップG1を有するように形成されている。第1光学膜40と第2光学膜50は、所望波長帯域の光に対する反射特性と透過特性とを兼ね備えており、各々は、エタロンフィルター300におけるミラーを構成する。なお、第1光学膜は第1反射膜と言い換えることができ、また、第2光学膜は第2反射膜と言い換えることができる。
また、ギャップG1は固定であってもよく、ギャップG1を可変とすることもできる。なお、エタロンフィルターの原理、ならびに可変ギャップエタロンの構造と動作等については後述する。
本実施形態では、第1光学膜40の反射特性は、第2光学膜50の反射特性とは異なる特性に設定されている。なお、「光学膜の反射特性」とは、具体的には、「各光学膜の、反射帯域における各波長の光の反射率で定まる反射特性」のことである。
上述のとおり、従来例では、ミラーを構成する第1光学膜および第2光学膜の各々の反射特性が同じであることを前提として光学膜が設計されていたが、本実施形態では、第1光学膜40の反射特性と第2光学膜50の反射特性とを意図的に異ならせる。
つまり、第1光学膜40の反射特性と第2光学膜50の反射特性とを非対称とする。これによって、同一特性の光学膜同士の組み合わせでは得ることができなかった光フィルター特性を実現することができる。例えば、光学膜の多様な設計が可能となり、目標とする半値幅や透過光量を満足する光学膜を設計することが容易化される。つまり、光フィルターに求められる分光特性を、従来に比べて、より容易に実現することができ、光フィルターの設計負担が軽減される。
図1(B)に、第1光学膜40と第2光学膜50の各々の反射特性の設計の一例を示す。図1(B)において、第1光学膜40の反射特性を示す特性線L1は実線で示され、第2光学膜50の反射特性を示す特性線L2は破線で示されている。図1(B)に示される例では、第1光学膜40の、ピークの反射率に対応する第1中心波長λ1は、第2光学膜50の、ピークの反射率に対応する第2中心波長λ2とは異なる値に設定されている。すなわち、図1(B)の例では、各光学膜の中心波長が、所定波長だけずれている。ここでは、第1光学膜40単独の場合の中心波長を第1中心波長λ1とし、第2光学膜50単独の場合の中心波長を第2中心波長λ2とする。第1中心波長λ1は、具体的には、第1光学膜40の最大の反射率(ピークの反射率)に対応する波長であり、第2中心波長λ2は、第2光学膜50の最大の反射率(ピークの反射率)に対応する波長である。
各光学膜40,50の中心波長(λ1,λ2)を異ならせることによって、つまり第1光学膜40の反射特性と第2光学膜50の反射特性とを非対称とすることによって、例えば、目標とする半値幅および透過光量の双方を満足するエタロンフィルター300を実現し易くなる。なお、エタロンフィルター300における反射率と半値幅との関係、ならびに、反射率と半値幅との関係については、後述する。
各光学膜40,50の中心波長(λ1,λ2)を異ならせる(ずらす)方法としては、例えば、第1光学膜40と第2光学膜50の積層数は同じとして、積層される膜の厚みを異ならせるという手法を採ることができる。また、各光学膜の構成材料を異ならせるという手法を採用することもできる。また、各光学膜の構造を異ならせるという手法を採用することもできる。
また、図1(B)の例では、エタロンフィルター300の分光帯域での中心波長(エタロンフィルター300の中心波長)をλ3としたとき、λ1<λ3<λ2が成立するのが好ましい。図1(B)の例では、λ1は450nmに設定され、λ2は500nmに設定され、λ3は460nmに設定されている。このとき、分光帯域における光透過特性は図1(D)に示すように中心波長λ3(430nm)で半値幅Wを有する。
エタロンフィルター300の分光特性は、第1光学膜40および第2光学膜50の各々の反射特性に依存して定まる。図1(D)に、エタロンフィルター300の分光特性の一例が示される。図1(D)に示される例では、エタロンフィルター300の分光帯域は450nm〜470nmの波長域に設定されている。波長460nmにおいて、エタロンフィルター300は、最大の透過率を示す。このピーク透過率に対応する波長(ピーク透過率をもつ波長)が、エタロンフィルター300の分光帯域での中心波長λ3である。
なお、「分光帯域での中心波長」という表現をしているのは、以下の理由による。すなわち、波長可変フィルターの場合には、複数の分光帯域を実現することが可能であり、分光帯域毎に中心波長が存在する。つまり、波長可変フィルターの場合には、エタロンフィルター300の中心波長が複数あることになる。この点を考慮し、「エタロンフィルター300に実現されている分光帯域における中心波長」という意味で、「エタロンフィルター300の分光帯域での中心波長λ3」という、正確な表現を使用している。但し、本明細書では、単に、光フィルターの中心波長λ3と記載する場合もある。
λ1<λ3<λ2が成立するということは、すなわち、各光学膜40,50の中心波長間の波長域、つまり、λ1からλ2までの波長域において、エタロンフィルター300の分光帯域での中心波長λ3を設定するということである。これによって、波長λ3における各光学膜40,50の反射率を、最低限度以上の反射率とすることができる。
すなわち、エタロンフィルター300の分光特性は、第1光学膜40および第2光学膜50の各々の、光フィルターの分光帯域内の各波長の反射率の積に依存して決まる。各光学膜40,50の反射率の積の値が小さすぎると、半値幅が広くなりすぎて、所望の光フィルターの特性(波長分解能等)を確保することができない。
図1(B)の例では、第1光学膜40の分光帯域における反射率の最低値はα1であり、第2光学膜50の分光帯域における反射率の最低値はα2である。λ1<λ3<λ2が成立する場合には、図1(B)に示されるように、各光学膜40,50の反射率α1,α2の各々を、最低限度以上の反射率とすることができる。すなわち、各光学膜40,50の反射率の積(α1・α2)が小さくなり過ぎることが防止される。よって、所望のエタロンフィルター300の特性(分解能)を得ることができる。
ここで、比較例として、図1(C)を参照する。図1(C)では、λ3は520nmに設定されており、λ1<λ2<λ3となっている。この場合、第1光学膜40の中心波長λ1と、エタロンフィルター300の中心波長λ3とが離れすぎることから、第1光学膜40の、λ3における反射率α2’はかなり小さくなってしまう。なお、第2光学膜50の、λ3における反射率をα1’とする。図1(C)の例では、各光学膜40,50の、λ3における反射率の積(α1’・α2’)は、α2’の値が小さいことから、結果的にかなり小さくなり、最低限度必要と考えられる反射率を確保することができない。
実際の光学膜の設計において、α1・α2(α1とα2の積)をどのような値に設計するのかは、設計条件等によって適宜、決定されるため、基準を一律に定めることは困難である。但し、光フィルターの設計の経験からみて、例えば、α1=0.8、α2=0.8であれば、光フィルターの設計が可能であり、最低限、この程度の反射率が必要であると考えられる。すなわち、α1・α2の、経験則に基づく基準としては、0.64以上は必要であると考えられる。よって、図1(B)に示される例では、α1・α2≧0.64が成立するように、第1光学膜および第2光学膜の反射率を設定するのが好ましい。
図2(A)および図2(B)は、光フィルターの構成要素である一対の光学膜の反射特性の他の例を示す図である。図2(A)において、第1光学膜40の反射特性を示す特性線L3は実線で示され、第2光学膜50の反射特性を示す特性線L4は破線で示されている。図2(A)に示される例では、第1光学膜40の、ピークの反射率に対応する第1中心波長λ1は450nmであり、第2光学膜50の、ピークの反射率に対応する第2中心波長λ2も450nmであり、各中心波長は一致している。ここでは、一致する中心波長を、共通の中心波長という。
第1光学膜40の、共通の中心波長における光の反射率は第1反射率α3に設定されている。また、第2光学膜50の、共通の中心波長における光の反射率は、第1反射率とは異なる第2反射率α4に設定されている。すなわち、図2(A)に示される例では、第1光学膜40と第2光学膜50の各中心波長λ1,λ2は一致するが、その中心波長(共通中心波長)における各光学膜40,50の反射率α3,α4が異なる値に設定されている。第1光学膜40と第2光学膜50との間で、共通中心波長に対する反射率を異ならせる方法としては、例えば、各光学膜40,50を、同一材料の誘電体多層膜で構成しつつ、各光学膜40,50における積層数を異ならせるという方法を採用することができる。また、各光学膜40,50の構成材料を異ならせるという手法を採用することもできる。また、各光学膜40,50の構造を異ならせるという手法を採用することもできる。
図2(B)に示される例では、第1光学膜40を構成する材料と、第2光学膜50を構成する材料とを異ならせている。例えば、第1光学膜40として誘電体多層膜を使用し、第2光学膜50を、Ag(銀)を主成分とする膜(Ag単体膜あるいはAg合金膜)で構成している。以下の説明では、第2光学膜50として、Ag単体膜を使用するものとして説明する。
図2(B)において、第1光学膜(誘電体多層膜)40の反射特性を示す特性線L5は実線で示され、第2光学膜(Ag単体膜)50の反射特性を示す特性線L6は破線で示されている。各光学膜40,50の中心波長は、共に450nmであり、共通の中心波長(450nm)における各光学膜40,50の反射率α5,α6が異なっており、この点では、図2(A)の例と共通の特徴を有している。
但し、図2(B)の例では、第2光学膜50の反射特性を示す特性線L6が、かなり広い波長域において、ほぼフラット(平坦)となる特性を示している。つまり、Ag単体膜を使用した第2光学膜50は、例えば、425nm〜475nmの波長域において、反射率がほぼR1に維持されている。
通常の光学膜の設計の場合、第1光学膜40および第2光学膜50の各々の反射率が波長毎に異なるため、注目する波長における、第1光学膜40および第2光学膜50の各々の反射率を常に考慮する必要がある。これに対して、図2(B)に示される例では、第2光学膜50の反射率をR1に固定した上で、第1光学膜40の反射率のみを適切な値に調整すればよいことから、光学膜の設計が容易である。このように、異種材料の組み合わせによって、同一の材料同士の組み合わせでは得ることのできない光フィルターの特性を実現することができる。
(第2実施形態)
本実施形態では、第1光学膜および第2光学膜の設計の具体例について説明する。図3(A)〜図3(D)は、エタロンフィルターにおける光学膜の設計の具体例を説明するための図である。以下の説明では、光学膜として誘電体多層膜を使用する場合を想定する。また、以下の説明では、比較例として、本発明のミラー構造を採用しない場合の例を適宜、参照する。
図3(A)に示すように、光源100から照射された光(赤色光、青色光、黄色光を含む)がサンプル200で反射され、あるいはサンプル200を透過し、その光がエタロンフィルター300に入力される。エタロンフィルター300は分光器として機能し、入力される光(赤色光、青色光、黄色光を含む)のうち、所望の波長域の光のみを通過させる。図3(A)の例では、エタロンフィルター300は、青色光のみを通過させている。エタロンフィルター300を通過した光(透過光)は、フォトダイオードPD等で構成される受光部400に入射する。受光部400は、光電変換によって光信号を電気信号に変換する。得られた電気信号に基づいて、例えば、サンプル200の測色、サンプル200の成分分析等が実行される。
分光測定器の測定感度、測定精度等は、エタロンフィルター300の透過特性により決まる。エタロンフィルター300の透過特性は、上述のとおり、第1光学膜40および第2光学膜50の反射率により決まる。各光学膜40,50の反射率が高い場合は、半値幅が狭くなり、各光学膜40,50の反射率が低い場合は、半値幅が大きくなる。ここで、図10を参照する。図10は、光学膜の反射率と、光フィルターの半値幅との関係の一例を示す図である。図10から明らかなように、光学膜の反射率が高い場合は、半値幅が狭くなり、光学膜の反射率が低い場合は、半値幅が大きくなる。
図3に戻って説明を続ける。エタロンフィルター300の半値幅が狭い場合、所望の波長の光だけを取り出せるため、測定精度を向上することが可能である。しかしながら、エタロンフィルター300を透過する光の光量が低下するため、受光部400が、光を感知できなくなる場合もあり得る。一方で、エタロンフィルター300の半値幅が大きいと、透過光の光量が増大し、受光部400による光の感知は行い易くなる。しかし、その反面、所望の波長以外の光も感知してしまうことから、波長分解能が低下するのは否めない。そのため、半値幅と光量の双方を満足するように、光学膜の設計を行う必要がある。
エタロンフィルターの半値幅を決定する要素は、光学膜の反射率であり、反射率を制御する一般的な方法として、材料を変化させる、光学膜の積層数を変化させるという方法がある。しかし、材料を変化する場合にも、利用可能な材料の種類に限りがある。また、光学膜の積層数を変化させる場合も、反射率は積層数に対して離散的な値しかとれないため、狙いの反射率(あるいは半値幅や光量)を設計できないということがある。
図3(B)に示すように、光学膜として使用される誘電体多層膜は、高屈折率層(H)と低屈折率層(L)とが交互に積層された構成を有する。図3(B)に示される例では、高屈折率層(H)として、TiO2膜(屈折率n=2.5)が使用され、低屈折率層(L)として、SiO2膜(屈折率n=1.5)が使用される。但し、この例は一例であり、これに限定されるものではない。
図3(B)の例は比較例であり、ミラーの非対称構造は採用されていない。すなわち、図3(B)の例では、第1基板20上の第1光学膜40および第2基板30上の第2光学膜50は、同じ反射特性を有する。一層のTiO2膜と一層のSiO2膜の組み合わせをワンペアとする場合、第1光学膜40は3ペアの積層膜であり、第2光学膜50も3ペアの積層膜である。つまり、各光学膜40,50の積層数は共に3である。また、TiO2膜の膜厚も、各光学膜40,50間で同じであり、SiO2膜の膜厚も、各光学膜40,50間で同じである。
また、各光学膜40,50の設計に関しては、λ/4設計という手法が採用されている。例えば、第1光学膜40を構成するTiO2膜の屈折率をnとし、設計波長λ1を450nmとし、膜厚をdとしたとき、nd=λ1/4が成立するように、TiO2膜の膜厚dが決定される。第1光学膜40を構成するSiO2膜の膜厚も同様に決定される。図3(B)の例では、第1光学膜40と第2光学膜50の反射特性は対称であるため、第2光学膜50においても、設計波長λ2を450nmとしたλ/4設計によって、TiO2膜の膜厚ならびにSiO2膜の膜厚が決定される。
図3(C)は、第1光学膜と第2光学の積層数と半値幅との関係を示している。図3(B)の対称のミラー構造において、第1光学膜40および第2光学膜50の各々のペア数(積層数)を10層とした例(10−10層の例)における半値幅は、A1となる。第1光学膜40および第2光学膜50の各々のペア数(積層数)を8層とした例(8−8層の例)における半値幅は、A2となる。第1光学膜40および第2光学膜50の各々のペア数(積層数)を6層とした例(6−6層の例)における半値幅は、A3となる。
図3(D)は、エタロンフィルターの半値幅と透過光の光量との関係を示している。図3(D)の光量B1は、図3(C)に示される半値幅A1に対応しており、光量B2は、図3(C)に示される半値幅A2に対応しており、光量B3は、図3(C)に示される半値幅A3に対応している。
図3(C)および図3(D)から明らかなように、積層数を変化させたとき、半値幅ならびに光量は離散的にしか変化させることができない。したがって、例えば、エタロンフィルターの半値幅を3nmに設定し、かつ許容誤差が±0.5nmである場合に、図3(B)に示される比較例における積層数の変化だけでは、要求仕様を満足することができない場合がある。
そこで、本実施形態では、第1光学膜40および第2光学膜50の各反射特性を意図的に非対称化し、図1や図2に示したような各光学膜の非対称の特性を実現し、従来、実現できなかった光フィルターの特性を実現する。
図4(A)〜図4(C)は、第1光学膜と第2光学膜との間で、誘電体多層膜の膜厚を異ならせたミラー構造を採用した例を説明するための図である。図4(A)に示される例では、高屈折率層(H)として、TiO2膜(屈折率n=2.5)が使用され、低屈折率層(L)として、SiO2膜(屈折率n=1.5)が使用される。TiO2膜は第1材料層(第1材料膜)であり、SiO2膜は第2材料層(第2材料膜)である。
第1光学膜40は、第1材料膜(TiO2膜)と第2材料膜(SiO2膜)とが積層されてなる一組(ワンペア)の層が、m層(mは1以上の整数)積層されて構成される第1積層膜である。図4(A)の例では、m=3に設定されている。つまり、第1光学膜40の積層数は3である。
また、第2光学膜50は、第1材料膜(TiO2膜)と第2材料膜(SiO2膜)とが積層されてなる一組(ワンペア)の層が、m層積層されて構成され(本例ではm=3)、かつ、一組(ワンペア)の層の膜厚h2が、第1光学膜40における一組(ワンペア)の層の膜厚h1とは異なる第2積層膜である。
上述のとおり、第1光学膜40および第2光学膜50は、共にλ/4設計という手法で設計されるが、図4(A)の例の場合、第1光学膜40と第2光学膜50との間で、設計波長に差を設けている。つまり、第1光学膜40における設計波長λ1は500nmに設定され、第2光学膜50における設計波長λ2は400nmに設定されている。この結果、第1光学膜40における、一組(ワンペア)の層の膜厚はh1となり、第2光学膜50における一組(ワンペア)の層の膜厚は、h1とは異なる値のh2となる。この例では、h1>h2となる。
このように、図4(A)の例では、第1光学膜40および第2光学膜50の各々を積層膜で構成し、各光学膜40,50間で、積層数は同じとするが、第1材料層(TiO2膜)と第2材料層(SiO2膜)で構成される一組の層の厚みを異ならせ、これによって、第1光学膜40の反射特性と第2光学膜50の反射特性とを非対称とする。積層膜における膜厚の変更は、製造工程の若干の変更によって達成でき、実現が容易である。
なお、第1材料層(TiO2膜)と第2材料層(SiO2膜)のうちのいずれか一方の膜厚を変更することによって、一組(ワンペア)の層としての厚みを変化させることができ、このような場合も、本例に含まれるものとする。
図4(B)は、光学膜の反射特性の非対称化の効果の一例を示している。図4(B)には、先に説明した図3(B)の比較例(設計波長λ1,λ2が共に450nm)の場合の、エタロンフィルターの特性(ピーク波長、透過率、半値幅、光量比)と、図4(A)の例(設計波長λ1が400nm,設計波長λ2が500nm)の場合の、エタロンフィルターの特性(ピーク波長、透過率、半値幅、光量比)が示されている。
光学膜の反射特性の非対称化によって、ピーク波長は変化しないが、中心波長における透過率は、93.1から82.9に変化し、半値幅は1.6nmから2.6nmに変化し光量比は、1から1.36に変化する。
図4(C)は、図4(B)に示される2つの例における、エタロンフィルターの分光特性を示す。図4(C)において、比較例(反射特性が対称である例)の特性を示す特性線は実線で示されており、本実施形態(反射特性が非対称である例)の特性を示す特性線は破線で示されている。半値幅w1は1.6nmであり、半値幅w2は2.6nmである。図4(C)から明らかなように、第1光学膜40および第2光学膜50の各反射特性を非対称化することによって、各反射特性が対称である場合には得られないエタロンフィルター300の分光特性を実現することができる。
図5(A)および図5(B)は、第1光学膜と第2光学膜との間で、誘電体多層膜の積層数(ペア数)を異ならせたミラー構造を採用した例を説明するための図である。図5(A)に示される例では、各光学膜40,50間で、積層数(ペア数)を異ならせて、各光学膜の反射特性を非対称化している。
すなわち、図5(A)の例において、高屈折率層(H)として、TiO2膜(屈折率n=2.5)が使用され、低屈折率層(L)として、SiO2膜(屈折率n=1.5)が使用される。TiO2膜は第1材料層(第1材料膜)であり、SiO2膜は第2材料層(第2材料膜)である。
第1光学膜40は、第1材料膜(TiO2膜)と第2材料膜(SiO2膜)とが積層されてなる一組(ワンペア)の層が、m層(mは1以上の整数)積層されて構成される第1積層膜である。図5(A)の例では、m=4に設定されている。つまり、第1光学膜40の積層数は4であり、積層される層の層数は8である。
一方、第2光学膜50は、第1材料膜(TiO2膜)と第2材料膜(SiO2膜)とが積層されてなる一組(ワンペア)の層が、n層(nは2以上の整数であり、かつ、n≠m)積層されて構成される第2積層膜である。図5(A)の例では、n=3に設定されている。つまり、第1光学膜40の積層数は3であり、積層される層の層数は6である。積層膜における積層数(ペア数)の変更は、製造工程の若干の変更によって達成でき、実現が容易である。
なお、第1光学膜40の積層数と第2光学膜50の積層数とを入れ替えても、エタロンフィルターにおける分光特性に変化はない。例えば、第1光学膜40の積層数(ペア数)を「2」とし、第2光学膜50の積層数を「1」としたときと、第1光学膜40の積層数(ペア数)を「1」とし、第2光学膜50の積層数を「2」としたときとでは、エタロンフィルターの分光特性に差は生じない。
図5(A)に示される例では、図3(B)の比較例における光フィルター特性、図4(A)の例における光フィルター特性のいずれとも異なる光フィルター特性を実現することができる。図5(B)には、光フィルターの半値幅と光量との対応関係の例が複数、示されている。
図5(B)に示されるC1およびC2の各点が、図5(A)に示される例(積層数を異ならせて反射特性を異ならせる例)における特性を示している。点C1は、第1光学膜40の積層数を10層とし、第2光学膜50の積層数を8層としたとき(10層−8層の例)の、半値幅と光量との関係を示している。また、点C2は、第2光学膜50の積層数を8層とし、第2光学膜50の積層数を6層としたときの、半値幅と光量との関係を示している。つまり、点C2が、図5(A)に示されるミラー構造(8層−6層の例)を採用したときに得られる光フィルター300の特性を示している。
また、図5(B)における、点D1は、図4(A)に示した、各光学膜間で膜厚を異ならせるミラー構造を採用したときに得られる光フィルター300の特性を示している。なお、A1〜A3の各点は、先に図3(D)で示した、反射特性が対称であるミラー構造を使用したときに得られる光フィルター300の特性を示している。
図5(B)から明らかなように、各光学膜40,50間で反射特性を非対称化することによって、従来得られなかった特性(点C1,点C2,点D1)が得られる。したがって、光学膜の設計の自由度が向上し、より多様な光フィルター特性を実現することが可能となる。
以上、膜厚を異ならせる例と、積層数を異ならせる例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、各光学膜40,50間で、膜厚を異ならせ、かつ、積層数も変化させてもよい。すなわち、積層膜における積層数(ペア数)の調整ならびに一組の層の厚みの調整によって、光学膜の反射特性を、より多様に制御することができる。また、各光学膜の構成は、製造工程の若干の変更によって達成でき、実現が容易である。
図6(A)〜図6(C)は、第1光学膜を構成する材料と、第2光学膜を構成する材料とを異ならせた例を説明するための図である。
図6(A)では、第1光学膜40として、設計波長λ1を450nmとして設計された、3ペアの誘電体多層が使用され、第2光学膜50として、Ag膜(ここでは、Ag単体膜とする)を使用する。各光学膜40,50間で、材料を異ならせることによって、第1光学膜40の反射特性と第2光学膜50の反射特性とを非対称とすることができる。異なる材料によって構成される光学膜の組み合わせによって、より多様な特性をもつエタロンフィルター300を設計することができる。
図6(B)において、第1光学膜(誘電体多層膜)40の反射特性を示す特性線L5は実線で示され、第2光学膜(Ag単体膜)50の反射特性を示す特性線L6は破線で示されている。各光学膜40,50の中心波長は、共に450nmであり、共通の中心波長(450nm)における各光学膜40,50の反射率はα5,α6である。図6(B)の例では、第2光学膜50の反射特性を示す特性線L6が、かなり広い波長域において、ほぼフラット(平坦)となる特性を示している。つまり、Ag単体膜を使用した第2光学膜50は、例えば、425nm〜475nmの波長域において、反射率がほぼR1に維持されている。
通常の光学膜の設計の場合、第1光学膜40および第2光学膜50の各々の反射率が波長毎に異なるため、注目する波長における、第1光学膜40および第2光学膜50の各々の反射率を常に考慮する必要がある。これに対して、図6(B)に示される例では、第2光学膜50の反射率をR1に固定した上で、第1光学膜40の反射率のみを適切な値に調整すればよいことから、光学膜の設計が容易である。このように、異種材料の組み合わせによって、同一の材料同士の組み合わせでは得ることのできない光フィルターの特性を実現することができる。
図6(C)に、異種材料の組み合わせによって得られる、光フィルターの特性の例を示す。図6(C)は、エタロンフィルター300における、半値幅の変化の例を示している。図6(C)には、3つの特性例が示されている。特性線K1は、第1光学膜40および第2光学膜50として、共にAg膜を使用したときに得られる、エタロンフィルター300の半値幅の特性を示す。特性線K2は、第1光学膜40および第2光学膜50として、共に誘電体多層膜を使用したときに得られる、エタロンフィルター300の半値幅の特性を示す。特性線K3は、第1光学膜40として誘電体多層膜を使用し、第2光学膜50として、Ag膜を使用したときに得られる、エタロンフィルター300の半値幅の特性を示す。各光学膜の材料を選び、また、その材料の組み合わせを選ぶことによって、注目する波長λpに関して、異なる3つの半値幅を実現することができる。よって、多様な特性をもつエタロンフィルター300を設計することができる。
また、第1光学膜40と第2光学膜50との間で、構造を異ならせて、第1光学膜40の反射特性と第2光学膜50の反射特性とを非対称化することもできる。これによって、エタロンフィルター300の設計の自由度が向上する。
例えば、第1光学膜40を、第1材料層と第2材料層で構成される一組の層を構成単位とする積層膜とし、第2光学膜50を、第1材料層、第2材料層ならびに第3材料層で構成される一組の層を構成単位とする積層膜とする場合があり得る。
また、各光学膜40,50として使用される材料の分子式は同じであるが、触媒等の化学的、物理的作用により、化合物中の原子または基の結合の仕方を変え、分子式は同じであるが、構造式が異なる化合物(異性体)にする場合も、光学膜の構造が異なる場合に該当する。
(第3実施形態)
次に、可変ギャップエタロンフィルターの具体的な構造例について説明する。図7(A)〜図7(C)は、可変ギャップエタロンフィルターの具体的な構造の一例と、その動作を説明するための図である。図7(A)は、駆動電圧を印加しない状態(初期ギャップG1)における可変ギャップエタロンフィルターの断面構造を示す図である。また、図7(B)は、第1基板20上に形成される第1光学膜40および第1電極60のレイアウト例を示す図である。図7(C)は、駆動電圧を印加した状態(ギャップG3)における可変ギャップエタロンフィルターの断面構造を示す図である。図7に示される、エタロンフィルター300としての可変ギャップエタロンフィルターには、前掲の実施形態で説明した、非対称の反射特性をもつ一対の光学膜からなるミラーが採用される。
図7(A)において、第1基板20と例えば一体で、第2基板30を可動に支持する支持部22が形成されている。支持部22は、第2基板30に設けてもよく、あるいは第1基板20および第2基板30とは別体で形成してもよい。
第1基板20および第2基板30の各々は、例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などにより形成することができる。これらの中でも、各基板20,30の構成材料として、例えばナトリウム(Na)やカリウム(K)などのアルカリ金属を含有したガラスが好ましく、このようなガラスにより各基板20,30を形成することで、光学膜(反射膜)40,50や、第1電極60ならびに第2電極70の密着性や、基板同士の接合強度を向上させることが可能となる。そして、これらの2つの基板20,30は、例えばプラズマ重合膜を用いた表面活性化接合などにより接合されることで、一体化されている。第1基板20および第2基板30の各々は、一辺が例えば10mmの正方形に形成され、ダイヤフラムとして機能する部分の最大直径は例えば5mmである。
第1基板20は、例えば、厚みが500μmに形成されるガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。
なお、可動基板としての第2基板30は、薄肉部(ダイヤフラム)34と、厚肉部32および36を有する。薄肉部34が設けられることによって、より小さい駆動電圧によって、第2基板30に所望の撓み(変形)を生じさせることができる。よって、省電力化が実現される。
第1基板20における、第2基板30と対向する対向面のうちの中央の第1対向面に、例えば円形の第1光学膜40が形成されている。同様に、第2基板30は、厚みが例えば200μmに形成されるガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。第2基板30は、第1基板20と対向する対向面の中央位置に、第1光学膜40と対向する例えば円形の第2光学膜50が形成されている。図7(B)には、第1光学膜40と、その周囲に形成された第1電極60が示されている。第1電極60には、第1配線61が接続されている。
なお、第1光学膜40および第2光学膜50は、例えば直径が約3mmの円形状に形成されている。第1光学膜40および第2光学膜50は、例えば、スパッタリングなどの手法により形成することができる。各光学膜の膜厚寸法は、例えば0.03μm程度とすることができる。本実施形態では、第1光学膜40および第2光学膜50として、例えば、可視光全域を分光できる特性をもつ光学膜を用いることができる。
第1光学膜40および第2光学膜50は、図7(A)に示す電圧非印加状態においては、第1ギャップG1を介して対向配置されている。なお、ここでは第1光学膜40を固定鏡とし、第2光学膜50を可動鏡とするが、逆でもよく、また、双方を可動鏡とすることもできる。
第1基板20の厚み方向からみた平面視において、第1光学膜40の周囲には、第1電極60が形成されている。なお、以下の説明において、平面視とは各基板の基板厚み方向から基板平面を見た場合をいう。同様に、第2基板30上には、第1電極60と対向して第2電極70が設けられている。第1電極60と第2電極70は、第2ギャップG2を介して、対向配置されている。なお、第1電極60および第2電極70の表面は、絶縁膜にて被覆することができる。
図7(B)に示されるように、第1電極60は、平面視で、第1光学膜40にオーバーラップしない。よって、第1光学膜40の光学特性の設計が容易である。このことは、第2電極70ならびに第2光学膜50についても同様である。
また、例えば、第2電極70を共通電位(例えば接地電位)とし、第1電極60に電圧を印加することによって、図7(C)に示すように、各電極間に矢印で示す静電力(ここでは静電引力)F1を生じさせることができる。すなわち、第1電極60および第2電極70は、静電アクチュエーター80を構成する。静電引力F1によって、第1光学膜40と第2光学膜50との間のギャップを、初期ギャップ(G1)よりも小さいギャップ(G3)となるように可変に制御することができる。各光学膜間のギャップの大きさによって透過光の波長が決まる。よって、ギャップを変化させることで透過波長を選択することが可能となる。
なお、図7(A)において太線で示されるように、第1電極60には第1配線61が接続されており、また、第2電極70には第2配線71が接続されている。
上述のとおり、本実施形態では、第1光学膜40および第2光学膜50の反射特性を非対称化するが、その結果として、第1光学膜40の膜厚と第2光学膜50の膜厚が異なる場合には、可動基板である第2基板30上に形成される第2光学膜50の膜厚が薄くなるように設計するのが好ましい。
すなわち、第2基板30は、可動基板であることから、可動部(ダイヤフラム)が、第1電極と第2電極との間に生じた静電力に応じて、適切に撓む(変形する)ことが重要である。そこで、可動基板である第2基板30に設けられる第2光学膜50の膜厚を、固定基板である第1基板20に設けられる第1光学膜40の膜厚よりも薄く設定するのがよい。これによって、可動基板である第2基板30における第2光学膜50による応力が軽減され、可動部の良好な撓み性を確保し易くなる。
また、同様の理由で、第2基板30側の第2光学膜50の残留応力(膜応力)は、第1基板20側の第1光学膜40の残留応力(膜応力)よりも小さく設定するのが好ましい。
(第4実施形態)
図8(A)および図8(B)は、可変ギャップエタロンフィルターを用いた光フィルターの構造の一例ならびに分光測定器の構成の一例を示す図である。
図8(A)に示すように、エタロンフィルター300としての可変ギャップエタロンフィルターは、対向して配置される第1基板(例えば固定基板)20と、第2基板(例えば可動基板)30と、第1基板20の主面(表面)に設けられる第1光学膜40と、第2基板30の主面(表面)に設けられる第2光学膜50と、各基板によって挟持された、各基板間のギャップ(距離)を調整するためのアクチュエーター(例えば静電アクチュエーターや圧電素子等)80a,80bと、を有する。
なお、第1基板20および第2基板30の少なくとも一方が可動基板であればよく、双方を可動基板とすることも可能である。アクチュエーター80aおよびアクチュエーター80bは各々、駆動部(駆動回路)301aおよび駆動部(駆動回路)301bの各々によって駆動される。また、各駆動部(駆動回路)301a,301bの動作は、制御部(制御回路)303によって制御される。
所定角度θで外部から入射する光Linは、ほとんど散乱されることなく第1光学膜40を通過する。第1基板20に設けられた第1光学膜40と第2基板30に設けられた第2光学膜50との間で、光の反射が繰り返され、これによって、光の干渉が生じ、特定の条件を満たす波長の光のみが強められ、その強められた波長の光の一部は、第2基板30上の第2光学膜50を通過して、受光部(受光素子等を含む)400に到達する。干渉によってどの波長の光が強め合うかは、第1基板20と第2基板30との間のギャップG1に依存する。よって、ギャップG1を可変に制御することによって、通過する光の波長帯域を変化させることができる。
この可変ギャップエタロンフィルターを使用すると、図8(B)に示すような分光測定器を構成することができる。なお、分光測定器の例としては、例えば、測色器、分光分析器、分光スペクトラムアナライザー等があげられる。
図8(B)に示される分光測定器において、例えば、サンプル200の測色を行う場合には光源100が用いられ、また、サンプル200の分光分析を行う場合には、光源100’が用いられる。
分光測定器は、光源100(あるいは100’)と、複数の波長可変バンドパスフィルター(可変BPF(1)〜可変BPF(4))を備える光フィルター(分光部)300と、フォトダイオード等の受光素子PD(1)〜PD(4)を含む受光部400と、受光部400から得られる受光信号(光量データ)に基づいて、所与の信号処理を実行して分光光度分布等を求める信号処理部600と、可変BPF(1)〜可変BPF(4)の各々を駆動する駆動部301と、可変BPF(1)〜可変BPF(4)の各々の分光帯域を可変に制御する制御部303と、を有する。信号処理部600は、信号処理回路501を有し、必要に応じて、補正演算部500を設けることも可能である。
分光光度分布の測定によって、例えば、サンプル200の測色や、サンプル200の成分分析等を行うことができる。また、光源100(100’)としては、例えば、白熱電球、蛍光灯、放電管、LED等の固体発光素子を用いた光源(固体発光素子光源)等を使用することができる。
なお、エタロンフィルター300および受光部400によって、光フィルターモジュール350が構成される。光フィルターモジュール350は、分光測定器に適用できる他、例えば、光通信装置の受信部(受光光学系と受光素子を含む)としても使用可能である。この例については、図5を用いて後述する。本実施形態における光フィルターモジュール350は、光学膜の特性劣化が抑制されて信頼性が高く、また、透過光の波長範囲を広くとることができ、小型軽量で、かつ使い勝手がよいという利点がある。
図8(B)の例では、複数の波長可変バンドパスフィルター(可変BPF(1)〜可変BPF(4))が使用されている。すなわち、分光帯域が異なる第1可変ギャップエタロンBPF(1)と、第2可変ギャップエタロンBPF(2)とが使用されている。この場合、第1可変ギャップエタロンBPF(1)では、第1光学膜40と第2光学膜50の反射特性を非対称とし、第2可変ギャップエタロンBPF(2)では、第1光学膜40と第2光学膜50の反射特性を対称とする構成を採用することができる。反射特性が非対称であるミラーを用いた可変ギャップエタロンと、反射特性が対称であるミラーを用いた可変ギャップエタロンとを混在させることによって、従来にない、多様な分光特性をもつ光フィルターモジュール350を実現することができる。
また、図8(B)の例では、分光帯域が異なる第1〜第3の可変ギャップエタロン(BPF(1)〜BPF(3))が使用されている。ここで、反射特性が第1の非対称であるミラーを用いた可変ギャップエタロンと、反射特性が第2の非対称であるミラーを用いた可変ギャップエタロンと、反射特性が対称であるミラーを用いた可変ギャップエタロンとを混在させることによって、従来にない、多様な分光特性をもつ光フィルターモジュール350を実現することができる。
(第5実施形態)
図9は、光機器の一例である波長多重通信システムの送信機の概略構成を示すブロック図である。波長多重(WDM: Wavelength Division Multiplexing)通信では、波長の異なる信号は干渉し合わないという特性を利用して、波長が異なる複数の光信号を一本の光ファイバー内で多重的に使用すれば、光ファイバー回線を増設せずにデータの伝送量を向上させることができるようになる。
図9において、波長多重送信機800は、光源100からの光が入射されるエタロンフィルター300を有し、エタロンフィルター300(上記いずれかのミラー構造が採用されたエタロン素子を具備する)からは、複数の波長λ0,λ1,λ2,…の光が透過される。波長毎に送信器311,312,313が設けられる。送信器311,312,313からの複数チャンネル分の光パルス信号は、波長多重装置321にて1つに合わせられて一本の光ファイバー伝送路331に送出される。
本発明は光符号分割多重(OCDM: Optical Code Division Multiplexing)送信機にも同様に適用できる。OCDMは、符号化された光パルス信号のパターンマッチングによってチャンネルを識別するが、光パルス信号を構成する光パルスは、異なる波長の光成分を含んでいるからである。このように、本発明を光機器に適用することによって、光学膜の特性劣化が抑制された、信頼性の高い光機器(例えば、各種センサーや光通信応用機器)が実現される。
以上説明したように、本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、例えば、光学膜の設計の自由度を向上させることができる。また、例えば、小型で、使い勝手のよい光フィルターモジュールが実現される。また、例えば、簡素化された構成を備え、小型軽量で、使い勝手のよい分光測定器を実現することができる。また、例えば、簡素化された構成を備え、小型軽量で、使い勝手のよい光機器(例えば、各種センサーや光通信応用機器)が実現される。
本発明は、例えば、エタロンのような光フィルターに適用して好適である。但し、この例に限定されるものではなく、本発明は、ミラー構造として、光の反射特性ならびに光の透過特性を併せ持つ一対の光学膜からなるミラーを使用する構造体(素子や機器)全般に適用可能である。
以上、幾つかの実施形態について本発明を説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。