以下に、添付図面を参照して、本発明にかかる弁整備設備および弁整備方法の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下では、整備対象の負荷制御弁の一例として往復圧縮機の圧力調整弁を例示して本発明を説明するが、本実施の形態により、本発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一構成部分には同一符号を付している。
(往復圧縮機)
まず、本発明の実施の形態における整備対象の圧力調整弁が用いられる往復圧縮機について説明する。図1は、本発明の実施の形態における整備対象の圧力調整弁が用いられる往復圧縮機の一構成例を示す図である。図1に示すように、この往復圧縮機1は、2つの圧縮機本体2,3と、圧縮機本体2,3の駆動部4と、インタークーラー5と、アフタークーラー6と、レシーバタンク7と、圧力調整弁11とを備える。この往復圧縮機1には、ガス経路を形成する配管8a〜8dが設けられる。また、レシーバタンク7と圧力調整弁11と圧縮機本体2,3のアンローダ2e,2f,3e,3fとには、配管10a〜10cが設けられる。
圧縮機本体2は、コークス炉等の工場内設備から供給される実ガスG1に対して1段階目の圧縮処理を行う低圧側の圧縮機である。具体的には、圧縮機本体2は、シリンダ内を往復動作するピストンの作用によって圧縮室内のガスを圧縮処理するガス圧縮機構を有する。この圧縮機本体2のガス圧縮機構の入側(下部側)には、ガスの吸入弁2a,2bが設けられ、このガス圧縮機構の出側(上部側)には吐出弁2c,2dが設けられる。圧縮機本体2は、その入側に配管8aが接続され、配管8aを通じて実ガスG1を受け入れる。圧縮機本体2は、モータ等の駆動部4を駆動源としてガス圧縮機構を動作させつつ、この受け入れた実ガスG1を吸入弁2a,2bから圧縮室内に吸入し、ガス圧縮機構の作用によって、この圧縮室内の実ガスG1を所定の圧力まで加圧し圧縮する。圧縮後の実ガスG1は、通常、吐出弁2c,2dを通じて圧縮室から圧縮機本体2の出側に吐出される。
また、圧縮機本体2は、吸入弁2a,2b側にアンローダ2e,2fを有する。アンローダ2eは、圧力調整弁11の制御に基づいて、内側(駆動部4側)の吸入弁2aの開状態を維持し、または、この開状態の維持を解除する。同様に、アンローダ2fは、圧力調整弁11の制御に基づいて、外側の吸入弁2bの開状態を維持し、または、この開状態の維持を解除する。例えば、アンローダ2e,2fが吸入弁2a,2b双方を開状態に維持した場合、圧縮機本体2は、駆動部4の負荷が可及的に低減された無負荷状態の運転(無負荷運転)を行う。一方、アンローダ2e,2fが上述した開状態の解除等によって吸入弁2a,2b双方を開状態に維持していない場合、圧縮機本体2は、駆動部4に通常(例えば100%)の負荷が掛かる負荷状態の運転(負荷運転)を行う。
圧縮機本体2は、負荷運転時において、受け入れた実ガスG1を加圧、圧縮し、この実ガスG1の圧縮ガスを、配管を通じてインタークーラー5に順次送出する。なお、実ガスG1は、一酸化炭素等を含むコークス炉ガスまたは窒素ガス等であり、例えば、工場設備の実操業時に得られる。
インタークーラー5は、予め設定された温度に圧縮ガスを冷却する装置である。具体的には、インタークーラー5は、配管を通じて一方の圧縮機本体2と他方の圧縮機本体3とに接続される。インタークーラー5は、一方の圧縮機本体2から配管を通じて圧縮後の実ガスG1を受け入れ、この受け入れた実ガスG1の圧縮ガスを、他方の圧縮機本体3側へ流通させつつ冷却する。インタークーラー5は、この実ガスG1の圧縮ガスを圧縮機本体3による圧縮処理に適した温度に冷却した後、この冷却後の圧縮ガスを、配管を通じて圧縮機本体3に送出する。
圧縮機本体3は、上述した実ガスG1に対して2段階目の圧縮処理を行う高圧側の圧縮機である。具体的には、圧縮機本体3は、上述した圧縮機本体2と略同様に、シリンダ内を往復動作するピストンの作用によって圧縮室内のガスを圧縮処理するガス圧縮機構を有する。この圧縮機本体3のガス圧縮機構の入側(上部側)には、ガスの吸入弁3a,3bが設けられ、このガス圧縮機構の出側(下部側)には吐出弁3c,3dが設けられる。圧縮機本体3は、インタークーラー5から配管を通じて実ガスG1の圧縮ガスを受け入れる。圧縮機本体3は、モータ等の駆動部4を駆動源としてガス圧縮機構を動作させつつ、この受け入れた圧縮ガスを吸入弁3a,3bから圧縮室内に吸入し、ガス圧縮機構の作用によって、この圧縮室内の圧縮ガスを所定の圧力まで更に加圧し圧縮する。このようにして生成された圧縮ガスG2は、通常、吐出弁3c,3dを通じて圧縮室から圧縮機本体3の出側に吐出される。
また、圧縮機本体3は、吸入弁3a,3b側にアンローダ3e,3fを有する。アンローダ3eは、圧力調整弁11の制御に基づいて、内側(駆動部4側)の吸入弁3aの開状態を維持し、または、この開状態の維持を解除する。同様に、アンローダ3fは、圧力調整弁11の制御に基づいて、外側の吸入弁3bの開状態を維持し、または、この開状態の維持を解除する。例えば、アンローダ3e,3fが吸入弁3a,3b双方を開状態に維持した場合、圧縮機本体3は無負荷運転を行う。一方、アンローダ3e,3fが上述した開状態の解除等によって吸入弁3a,3b双方を開状態に維持していない場合、圧縮機本体3は負荷運転を行う。
圧縮機本体3は、負荷運転時において、受け入れた実ガスG1の圧縮ガスを更に加圧、圧縮し、これによって生成した圧縮ガスG2を、配管8bを通じてアフタークーラー6に順次送出する。なお、圧縮ガスG2は、上述した圧縮機本体2による圧縮後の実ガスG1を圧縮機本体3によって更に圧縮した高圧の圧縮ガスである。この圧縮ガスG2は、工場内使用(ガス圧機器の使用)に応じて要求される圧力範囲内の圧力を有する。
アフタークーラー6は、予め設定された温度に圧縮ガスを冷却する装置である。具体的には、アフタークーラー6は、配管8bを通じて圧縮機本体3の出側(下部側)と接続され、配管8cを通じてレシーバタンク7の入側とに接続される。アフタークーラー6は、圧縮機本体3から配管8bを通じて圧縮ガスG2を受け入れ、この受け入れた圧縮ガスG2を、レシーバタンク7側へ流通させつつ冷却する。アフタークーラー6は、圧縮ガスの実使用(例えばガス圧機器の使用)に適した温度に圧縮ガスG2を冷却した後、この冷却後の圧縮ガスG2を、配管8cを通じてレシーバタンク7に送出する。
レシーバタンク7は、往復圧縮機1による圧縮ガスG2を貯えて吐出する吐出側圧力タンクとして機能する。具体的には、図1に示すように、レシーバタンク7には、上述したアフタークーラー6に通じる配管8cと、の往復圧縮機1の外部(工場等)に通じる配管8dと、圧力調整弁11に通じる配管10aとが設けられる。レシーバタンク7は、アフタークーラー6から配管8cを通じて圧縮ガスG2を順次受け入れ、この受け入れた圧縮ガスG2を一時的に貯える。その後、レシーバタンク7は、配管10aを通じて圧力調整弁11に圧縮ガスG2を供給する。これに並行して、レシーバタンク7は、工場内の動力源(例えばガス圧機器の動力源)として適宜、配管8dを通じ往復圧縮機1の外部に圧縮ガスG2を供給する。
圧力調整弁11は、往復圧縮機1の負荷を制御する負荷制御弁として機能する。具体的には、図1に示すように、圧力調整弁11には、上述したレシーバタンク7に通じる配管10aと、圧縮機本体2,3の各アンローダ2e,2f,3e,3fに通じる配管10bと、排気のための配管10cとが設けられる。この配管10cの出力端部には、電磁弁9cが設けられる。圧力調整弁11は、配管10aを通じてレシーバタンク7から圧縮ガスG2を受け入れ、この受け入れた圧縮ガスG2の圧力に応じて弁開閉作動を行う。例えば、圧力調整弁11は、予め設定された所定の圧力設定値に比して圧縮ガスG2の圧力が大きい場合、弁開作動を行い、配管10bを通じアンローダ2e,2f,3e,3fに対して圧縮ガスG2を送出する。圧力調整弁11は、この圧縮ガスG2の圧力によってアンローダ2e,2f,3e,3fを適宜作動させ、これにより、圧縮機本体2,3の吸入弁2a,2b,3a,3bを開状態に維持する。この結果、圧力調整弁11は、駆動部4に掛かる負荷を適度に低減して、圧縮機本体2,3の運転モードを無負荷運転(0%負荷運転)に切り替える。一方、圧力調整弁11は、圧縮ガスG2の圧力が所定の圧力設定値以下である場合、弁閉作動を行う。この場合、圧力調整弁11は、アンローダ2e,2f,3e,3fに対する圧縮ガスG2の供給を停止するとともに、アンローダ2e,2f,3e,3fの動力源としての圧縮ガスG2を、配管10cを通じ電磁弁9cから排気する。これにより、圧力調整弁11は、圧縮機本体2,3の吸入弁2a,2b,3a,3bを開状態に維持せず自由にする。この結果、圧力調整弁11は、駆動部4に掛かる負荷を通常時の負荷に制御して、圧縮機本体2,3の運転モードを負荷運転(例えば100%負荷運転)に切り替える。
上述したように、圧力調整弁11は、レシーバタンク7内の圧縮ガスG2の圧力、すなわち、往復圧縮機1における吐出側の圧力に応じて、圧縮機本体2,3の駆動部4に掛かる負荷を制御する。圧力調整弁11は、この負荷制御を通して、圧縮機本体2,3の運転モードを負荷運転または無負荷運転に切り替える。あるいは、圧力調整弁11は、往復圧縮機1における吐出側の圧力に応じて、圧縮機本体2,3の運転モードを停止状態に切り替える。
一方、図1に示す往復圧縮機1において、入側の配管8aに設けられた入側弁9a、並びに、出側の配管8cに設けられた出側弁9bは、往復圧縮機1のメンテナンス等の整備作業を行う際に閉じられる弁である。すなわち、往復圧縮機1の運転モード(無負荷運転または負荷運転等)に関わらず往復圧縮機1の操業期間、常に、入側弁9aおよび出側弁9bは開状態である。
なお、上述した往復圧縮機1は、図1に示すように、2つの圧縮機本体2,3と、1つの圧力調整弁11とを備えていたが、圧縮機本体数および圧力調整弁数は特に上記の数に限定されず、1つであってもよいし、複数であってもよい。同様に、圧縮機本体2,3の吸入弁数および吐出弁数は、特に2つに限定されず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。すなわち、本発明において、圧縮機本体数、圧力調整弁数、吸入弁数、および吐出弁数は、特に問われない。例えば、上述した圧力調整弁11と同様の構成を有する複数の圧力調整弁を往復圧縮機1に取り付け、これら複数の圧力調整弁を用いて往復圧縮機の運転モードを切り替えることも可能である。具体的には、これら複数の圧力調整弁のうち、一方の圧力調整弁と内側のアンローダ2e,3eとを配管接続し、他方の圧力調整弁と外側のアンローダ2f,3fとを配管接続する。この構成において、レシーバタンク7から供給される圧縮ガスG2の圧力に応じ、これら複数の圧力調整弁は、アンローダ2e,2f,3e,3fの少なくとも一つに圧縮ガスG2を送出する。この圧縮ガスG2の圧力により、アンローダ2e,2f,3e,3fは適宜作動し、この結果、吸入弁2a,2b,3a,3bの少なくとも一つを開状態に維持する。このようなアンローダの作用により、これら複数の圧力調整弁は、圧縮機本体2,3の運転モードを無負荷運転または部分負荷運転に切り替える。なお、部分負荷運転は、通常時に比して低い負荷が駆動部4に掛かる部分負荷状態の運転であり、例えば、吸入弁2a,2b,3a,3bのうちの半数(2つ)を開状態に維持して、駆動部4に掛かる負荷を通常時の50%程度に低減した50%負荷運転等が挙げられる。
(圧力調整弁)
つぎに、本発明の実施の形態における整備対象の圧力調整弁11について説明する。図2は、本発明の実施の形態における整備対象の圧力調整弁の一構成例を示す断面模式図である。
図2に示すように、本実施の形態における整備対象の圧力調整弁11は、開口部が形成された入口部12と、流通口13aが形成された上側筒体13と、排出口14aが形成された下側筒体14とを備える。また、圧力調整弁11は、弁体15と、ストレーナ15aと、圧力幅調整部16と、作動圧力調整部17と、Oリング18aと、シール部材18b,18cと、ナット19a,19bとを備える。
入口部12は、圧力調整弁11の筐体上端部をなす部材であり、ガスの流入を許容する開口部が形成される。この入口部12の開口部には、例えば図2に示すように、レシーバタンク7に通じる配管10a(図1参照)が締結等によって取り付けられる。入口部12は、上側筒体13に螺着され、これにより、圧力調整弁11内へのガス流入経路を形成する。
上側筒体13は、圧力調整弁11の筐体の上側をなす筒状部材である。上側筒体13は、その側部の所定位置に、ガスを流出または流入するための流通口13aを有する。この流通口13aには、例えば図2に示すように、アンローダ2e,2f,3e,3fに通じる配管10b(図1参照)が締結等によって取り付けられる。
下側筒体14は、圧力調整弁11の筐体の下側をなす筒状部材である。下側筒体14は、その側部の所定位置に、ガス等を排出するための排出口14aを有する。この排出口14aには、例えば図2に示すように、上述した往復圧縮機1の外部に通じる配管10cが締結等によって取り付けられる。下側筒体14は、シール部材18bを介して上側筒体13の下端部に押圧接続される。
弁体15は、圧力調整弁11を開閉するための部材(例えば箱状部材)である。弁体15は、図2に示すように、上側筒体13の内部に摺動可能に配置される。また、この弁体15と入口部12との間には、ストレーナ15aが配置される。ストレーナ15aは、入口部12側から上側筒体13の内部側へ埃等の異物が侵入することを防止する。弁体15は、上側筒体13の内部において、ストレーナ15aに接近する方向またはストレーナ15aから離隔する方向(すなわち圧力幅調整部16の上端部に接近する方向)に移動する。弁体15は、ストレーナ15aの下側開口端に接触することにより、この下側開口端を閉塞する。この結果、弁体15は、入口部12の開口部と上側筒体13の流通口13aとの間の流通経路を遮断するとともに、この流通口13aと下側筒体14の排出口14aとの流通経路を開放する。一方、弁体15は、ストレーナ15aから離隔して圧力幅調整部16の上端部に接触することにより、圧力幅調整部16の上端部を閉塞する。この結果、弁体15は、入口部12の開口部と上側筒体13の流通口13aとの間の流通経路を開放するとともに、この流通口13aと下側筒体14の排出口14aとの流通経路を遮断する。
圧力幅調整部16は、圧力調整弁11の開閉作動に要する圧力(作動圧力)の幅、すなわち、作動圧力の上限値と下限値との差(以下、作動圧力幅という)を調整するための部材である。具体的には、図2に示すように、圧力幅調整部16は、上側筒体13および下側筒体14の内部に収容可能な筒状部材であり、下側筒体14の内部を通って上側筒体13の内部に螺着される。その際、圧力幅調整部16の上端部は、上側筒体13の流通口13aに比して下側から下側筒体14の排出口14aに比して上側までの範囲内に配置される。圧力幅調整部16は、この上側筒体13の内部へのねじ込み量を調整することによって、弁体15のリフト量を調整する。圧力幅調整部16は、この弁体15のリフト量の調整によって、圧力調整弁11の作動圧力幅を調整する。なお、弁体15のリフト量は、ストレーナ15aの下端部から圧力幅調整部16の上端部までの距離と弁体15の往復移動方向(圧力調整弁11の長手方向)の長さとの差である。すなわち、弁体15は、上側筒体13の内部においてリフト量分、往復移動可能である。
作動圧力調整部17は、圧力調整弁11の作動圧力を調整するための部材である。具体的には、図2に示すように、作動圧力調整部17は、弁体支持軸17aと、ばね17bと、軸受け部17cとを備える。弁体支持軸17aは、その長手方向に対して垂直な方向に幅広なフランジ形状の上端部(例えば円錐状の出っ張り部分)を有し、圧力幅調整部16の内部を通って上側筒体13の内部に配置される。弁体支持軸17aは、その上端部を弁体15の内部に挿入して、弁体15をその内側から支持する。ばね17bは、この弁体支持軸17aの軸部分に挿通される。軸受け部17cは、圧力幅調整部16の内部に螺着され、弁体支持軸17aをその下端部側から受け入れて支持する。この状態において、ばね17bの一端(上端)は、弁体支持軸17aの上端部に接触し、ばね17bの他端(下端)は、軸受け部17cの上端部に接触する。弁体支持軸17aは、このような状態のばね17bの付勢力によって、ストレーナ15a側に接近する方向に弁体15を押圧する。上述した構成を有する作動圧力調整部17は、上側筒体13および下側筒体14の内部に配置された圧力幅調整部16に対する軸受け部17cのねじ込み量を調整することにより、弁体支持軸17aに作用するばね17bの付勢力を調整する。作動圧力調整部17は、このばね17bの付勢力の調整によって、ストレーナ15aに対する弁体15の押圧力、すなわち、圧力調整弁11の作動圧力(具体的には作動圧力の上下限値)を調整する。
Oリング18aは、上述した圧力幅調整部16と作動圧力調整部17との間における気密性を確保するためのシール部材である。具体的には、図2に示すように、Oリング18aは、作動圧力調整部17の軸受け部17cの下端部における側壁に固定配置され、軸受け部17cの外壁と圧力幅調整部16の内壁との隙間を閉塞する。これによって、Oリング18aは、圧力幅調整部16と作動圧力調整部17との間からのガス漏れを防止する。
シール部材18bは、図2に示すように、上側筒体13の下端部と下側筒体14の上端部との間に介在するように圧力幅調整部16の外壁に沿って配置される。シール部材18bは、ナット19aの締結を強固にするに伴い、上側筒体13の下端部と下側筒体14の上端部とによって一層強く押圧される。この結果、シール部材18bは、上側筒体13の下端部と下側筒体14の上端部との間(上側筒体13と下側筒体14とのつなぎ目)における気密性を確保して、この部分からのガス漏れを防止する。
シール部材18cは、図2に示すように、下側筒体14の下端部と圧力幅調整部16の外壁との間に介在するように圧力幅調整部16の外壁に沿って配置される。シール部材18cは、ナット19aの締結を強固にするに伴い、下側筒体14の下端部と圧力幅調整部16の外壁との間に一層強く押圧される。この結果、シール部材18cは、下側筒体14の下端部と圧力幅調整部16の外壁との間における気密性を確保して、この部分からのガス漏れを防止する。
ナット19aは、図2に示すように、圧力幅調整部16の外壁に強固に締結されて、上側筒体13と下側筒体14と圧力幅調整部16との接続をロックする。また、ナット19aは、その強固な締結により、シール部材18b,18cを介して上側筒体13に下側筒体14を押圧接続し、この結果、上述したようにシール部材18b,18cによる上側筒体13と下側筒体14と圧力幅調整部16の外壁との各間の気密性を確保する。一方、ナット19bは、図2に示すように、作動圧力調整部17の下端部の外壁に強固に締結され、これにより、圧力幅調整部16と作動圧力調整部17との接続をロックする。
つぎに、圧力調整弁11の開閉作動について説明する。図3は、本実施の形態における整備対象の圧力調整弁の開閉作動を説明するための図である。圧力調整弁11は、図1に示したレシーバタンク7内の圧縮ガスG2の圧力(往復圧縮機1の吐出側の圧力)に応じ開閉作動して、往復圧縮機1の負荷を制御する。具体的には、圧力調整弁11は、入口部12に取り付けられた配管10aを通じてレシーバタンク7から圧縮ガスG2を受け入れる。この圧縮ガスG2は、入口部12からストレーナ15aを通じて弁体15の上端面に達する。弁体15は、弁体支持軸17aの押圧力(ばね17bの付勢力)により、ストレーナ15aに押し付けられてストレーナ15aの開口部を閉塞している。
圧縮ガスG2の圧力が往復圧縮機1における吐出側の圧力設定値を超過する場合、ストレーナ15aを閉塞する弁体15の押圧力は、この圧縮ガスG2の圧力に比して小さくなる。すなわち、圧力調整弁11の作動圧力は、この圧縮ガスG2に比して小さくなる。この場合、圧縮ガスG2は、図3に示すように、ばね17bの付勢力に抗して弁体15をストレーナ15aから離間させ、これにより、上側筒体13の内部空間を介してストレーナ15aと流通口13aとを連通状態にする。圧縮ガスG2は、圧力幅調整部16の上端部に向けて弁体15を押し動かしながら上側筒体13の内部空間に流入し続ける。その後、圧縮ガスG2は、圧力幅調整部16の上端部に弁体15を押圧して圧力幅調整部16の開口部を閉塞し、これにより、圧力幅調整部16の内部空間を介した流通口13aと排出口14aとの間の流通経路が遮断される。これに並行して、圧縮ガスG2は、流通口13aから配管10bを通じて往復圧縮機1のアンローダ(図1に示したアンローダ2e,2f,3e,3fの少なくとも一つ)に供給される。この結果、圧力調整弁11は、この圧縮ガスG2が供給されたアンローダの作用により、往復圧縮機1(具体的には図1に示した圧縮機本体2,3)の負荷を制御して、その運転モードを無負荷運転または部分負荷運転に切り替える。
上述したように往復圧縮機1の運転モードを無負荷運転または部分負荷運転に切り替える圧力調整弁11の開閉状態をアンロード状態(図3参照)と定義する。アンロード状態の圧力調整弁11において、弁体5は、ストレーナ15aから離間する方向に移動し、これにより、ストレーナ15aおよび上側筒体13の内部空間を介して入口部12と流通口13aとを連通させている。さらには、弁体5は、圧力幅調整部16の上端部に接近する方向に移動して圧力幅調整部16の開口部を閉塞し、これにより、圧力幅調整部16の内部空間を介した流通口13aと排出口14aとの連通を遮断している。
一方、圧縮ガスG2の圧力が往復圧縮機1における吐出側の圧力設定値以下である場合、ストレーナ15aを閉塞する弁体15の押圧力は、この圧縮ガスG2の圧力以上となる。すなわち、圧力調整弁11の作動圧力は、この圧縮ガスG2以上となる。この場合、入口部12からの圧縮ガスG2は、ばね17bの付勢力が作用する弁体15を押し下げることができず、この結果、弁体15は、図3に示すように、ストレーナ15aを閉塞する。これにより、上側筒体13の内部空間を介したストレーナ15aと流通口13aとの連通が遮断される。これに並行して、弁体15は、圧力幅調整部16の上端部から離間して圧力幅調整部16の開口部の閉塞を解除する。これにより、圧力幅調整部16の内部空間を介して流通口13aと排出口14aとが連通状態となる。この状態において、圧力調整弁11は、作動状態のアンローダ(図1に示したアンローダ2e,2f,3e,3fの少なくとも一つ)から配管10bを通じて圧縮ガスG2を回収する。このアンローダからの圧縮ガスG2は、図3に示すように、流通口13aから上側筒体13および圧力幅調整部16の各内部空間を通って排出口14aに至る。排出口14aには配管10cが接続されている。圧力調整弁11は、このアンローダからの圧縮ガスG2を、排出口14aから配管10cを通じて圧力調整弁11の外部に排出する。この結果、圧力調整弁11は、アンローダ作動を解除して往復圧縮機1の負荷を制御し、これにより、往復圧縮機1の運転モードを負荷運転に切り替える。
上述したように往復圧縮機1の運転モードを負荷運転に切り替える圧力調整弁11の開閉状態をアンロード解除状態(図3参照)と定義する。アンロード解除状態の圧力調整弁11において、弁体5は、ストレーナ15aに接近する方向に移動し、これにより、ストレーナ15aおよび上側筒体13の内部空間を介した入口部12と流通口13aとの流通経路を遮断する。さらには、弁体5は、圧力幅調整部16の上端部から離間する方向に移動して圧力幅調整部16の開口部を開放し、これにより、圧力幅調整部16の内部空間を介して流通口13aと排出口14aとを連通させている。
(弁整備設備)
つぎに、本発明の実施の形態にかかる弁整備設備について説明する。図4は、本発明の実施の形態にかかる弁整備設備の一構成例を示す図である。図4に示すように、本実施の形態にかかる弁整備設備21は、上述した往復圧縮機1の負荷制御弁(圧力調整弁11)の整備に用いる設備であり、圧縮空気を貯えて吐出する圧力タンク22と、圧力タンク22の圧力計23と、アンロード圧力計24と、圧縮空気の供給圧力を調整するための入口弁25aおよび空気抜き弁25bとを備える。また、図4に示すように、弁整備設備21には、必要箇所に配管26a〜26c,27a〜27d,28a,28bが設けられる。弁整備設備21は、これら各配管の必要箇所に、第1エアー元弁29aと、第2エアー元弁29bと、ブロー弁29c,29g,29h,29iと、連通弁29d,29eと、安全弁29fと、洗浄液弁29jとを備える。さらに、弁整備設備21は、整備対象の負荷制御弁を配管に固定するための固定部30を備える。
圧力タンク22は、圧力調整弁11を整備するために圧力調整弁11に圧縮空気を供給する圧力容器である。具体的には、圧力タンク22は、往復圧縮機1から取り外された圧力調整弁11と配管27aを通じて接続される。配管27aは、例えばU字状またはコの字状の折り返し配管であり、一端が圧力タンク22に接続され、他端が圧力調整弁11の入口部12の開口部に接続される。配管27aには、図4に示すように、連通弁29dが設けられる。連通弁29dは、圧力調整弁11を整備する期間、詳細には、圧力調整弁11に圧縮空気G7を供給する期間、常に開状態であり、配管27aを介して圧力タンク22と圧力調整弁11とを連通状態にする。連通弁29dは、圧力調整弁11の整備完了後等、必要に応じて閉じられる。圧力タンク22は、往復圧縮機1による圧縮ガスG2を貯えて吐出するレシーバタンク7(図1参照)を模擬して、圧力調整弁11に圧縮空気G7を供給する。すなわち、圧力タンク22は、配管27aを通じて入口部12から圧力調整弁11の内部に圧縮空気G7を供給する。
なお、圧力タンク22は、レシーバタンク7の上限圧力等、往復圧縮機1の設備仕様における圧縮ガスG2の上限圧力以上の圧力に耐え得る圧力容器であることが望ましい。また、圧力タンク22の容量は、レシーバタンク7と同程度であることが望ましい。
圧力計23は、圧力調整弁11に対する圧縮空気G7の供給圧力を表示するものである。具体的には、圧力計23は、配管27bを通じて圧力タンク22と接続される。配管27bには連通弁29eが設けられる。連通弁29eは、圧力調整弁11を整備する期間、常に開状態であり、圧力調整弁11の整備完了後等、必要に応じて閉じられる。圧力計23は、配管27bを通じて圧力タンク22から流通する圧縮空気G7の圧力を計測し、この計測した圧力を、圧力タンク22から圧力調整弁11への圧縮空気G7の供給圧力として表示する。また、圧力計23は、後述するアンロード圧力計24が圧力調整弁11のアンロード状態の旨を表示する期間、計測した圧縮空気G7の供給圧力を、アンロード状態に要する圧力調整弁11の作動圧力として表示する。このような圧力計23は、図4に示すようにアンロード圧力計24と並んで配置されることが望ましい。これにより、圧力計23の表示内容とアンロード圧力計24の表示内容とを作業者が同時に確認し易くなるからである。
アンロード圧力計24は、圧縮空気G7の供給圧力に応じて、圧力調整弁11が往復圧縮機1を無負荷状態に制御可能なアンロード状態に作動した旨を表示する表示計としての機能を有する。具体的には、アンロード圧力計24は、配管28aを通じて圧力調整弁11と接続される。配管28aは、図4に示すように、一端が圧力調整弁11の流通口13aに接続され、他端がアンロード圧力計24に接続される。なお、配管28aの一端近傍には、ブロー弁29hが設けられる。ブロー弁29hは、圧力調整弁11を整備する期間、常に開状態であり、圧力調整弁11の整備完了後等、必要に応じて閉じられる。アンロード圧力計24は、圧力調整弁11がアンロード状態(図3参照)である場合、配管28aを通じて圧力調整弁11から流通する圧縮空気G7の圧力を、アンロード状態に要する圧力調整弁11の作動圧力として計測し、計測した作動圧力を表示する。アンロード圧力計24は、この作動圧力を表示することにより、圧力調整弁11がアンロード状態に作動した旨を表示する。この場合、上述した圧力計23は、アンロード圧力計24によって表示される圧力調整弁11の作動圧力と同等の圧縮空気G7の供給圧力を表示する。一方、アンロード圧力計24は、圧力調整弁11がアンロード状態ではない場合、圧力調整弁11がアンロード状態である旨を表示しない。この場合、アンロード圧力計24は、上述した圧力計23と異なる圧力計測結果(例えば圧力値「0」)を表示する。
入口弁25aおよび空気抜き弁25bは、圧力調整弁11に対する圧縮空気G7の供給圧力を調整して圧力調整弁11を作動させる圧力調整手段を構成する。具体的には、図4に示すように、入口弁25aは、圧力タンク22の内部に圧縮空気G7を流入するための配管26aに設けられる。配管26aは、一端が工場内の圧縮機(図示せず)に接続され、他端が圧力タンク22の入口部に接続される。配管26aの分岐管にはブロー弁29cが設けられる。ブロー弁29cは、圧力調整弁11を整備する期間、常に開状態であり、圧力調整弁11の整備完了後等、必要に応じて閉じられる。また、配管26aには、入口弁25aに比して上流側の箇所に第1エアー元弁29aが設けられ、この第1エアー元弁29aと入口弁25aとの間の位置において別の配管26bが合流する。配管26bには、第2エアー元弁29bとエアーボンベ31とが設けられる。このような配管26aは、工場内の圧縮機による圧縮空気G5を圧力タンク22に向けて流通させる。この途中、配管26aは、配管26bを通じてエアーボンベ31から噴出された圧縮空気G6と工場からの圧縮空気G5とを合流させ、これにより、高圧の圧縮空気G7を得る。この圧縮空気G7は、圧縮空気G6によって圧縮空気G5の圧力を増強した圧縮空気である。入口弁25aは、圧力タンク22に対する圧縮空気G7の流入量を調整し、この流入量の調整を通して、圧力調整弁11に対する圧縮空気G7の供給圧力の増加を調整する。
一方、空気抜き弁25bは、図4に示すように、圧力タンク22内に圧縮空気G7を流入する配管26aから圧縮空気G7の一部を抜き取り排気するための配管26cに設けられる。配管26cは、入口弁25aと圧力タンク22との間の位置において配管26aから分岐し、弁整備設備21の外部(例えば大気中)に通じる。また、配管26cには、圧力タンク22に通じる配管27dが接続され、この配管27dにはブロー弁29gが設けられる。ブロー弁29gは、圧力調整弁11を整備する期間、常に開状態であり、圧力調整弁11の整備完了後等、必要に応じて閉じられる。空気抜き弁25bは、図4に示すように、配管26cにおける配管26a,26cの分岐部分の近傍に設けられる。空気抜き弁25bは、圧力タンク22に対する圧縮空気G7の流入量を減ずるよう調整し、この流入減量の調整を通して、圧力調整弁11に対する圧縮空気G7の供給圧力の減少を調整する。なお、空気抜き弁25bは、入口弁25aの近傍に配置されることが望ましい。何故ならば、入口弁25aと空気抜き弁25bとを互いに近傍に配置することにより、圧力調整弁11に対する圧縮空気G7の供給圧力の増減を調整し易くなるからである。
ここで、上述した入口弁25aおよび空気抜き弁25bは、ニードル弁を用いて構成される。これにより、入口弁25aおよび空気抜き弁25bは、圧力タンク22に対する圧縮空気G7の流入量を容易に微調整することができ、この流入量の微調整を通して、圧力調整弁11に対する圧縮空気G7の供給圧力を容易に微調整することができる。本実施の形態において、圧縮空気G7の供給圧力の微調整は、整備すべき圧力調整弁11に要求される作動圧力の最小桁の1/10についてまで調整することである。例えば、圧力調整弁11の作動圧力として少数第1位を最小桁とする圧力値(例えば7.5[MPa])が要求される場合、圧縮空気G7の供給圧力を小数第2位についてまで調整することが圧力値の微調整となる。なお、入口弁25aおよび空気抜き弁25bを構成する弁は、玉形弁等のニードル弁以外の弁であってもよいが、上述した圧力値の微調整のし易さの観点から、ニードル弁であることが望ましい。
なお、配管26aに設けられた第1エアー元弁29aは、圧力調整弁11の整備を行う期間、常に開状態にして圧力タンク22に対する圧縮空気G5,G7の供給を可能にする。配管26bに設けられた第2エアー元弁29bは、エアーボンベ31からの圧縮空気G6を供給する期間、常に開状態にする。これら第1エアー元弁29aおよび第2エアー元弁29bは、圧力調整弁11の整備完了後等、必要に応じて閉じられる。
安全弁29fは、圧力タンク22内に流入した圧縮空気G7の圧力が過剰に増大することを防止するためのものである。具体的には、安全弁29fは、配管27cを通じて圧力タンク22に接続される。安全弁29fは、圧力タンク22内の圧縮空気G7の圧力が圧力タンク22の上限圧力未満である場合、閉状態である。一方、この圧縮空気G7の圧力が圧力タンク22の上限圧力に達した際、安全弁29fは、開状態になって、圧力タンク22内の圧縮空気G7を配管27cから外部に排気し、これにより、圧力タンク22内の圧縮空気G7を減圧する。このようにして、安全弁29fは、圧力タンク22内の圧縮空気G7の圧力が圧力タンク22の上限圧力を超過することを防止する。
一方、整備対象の圧力調整弁11には、図4に示すように、排出口14aに配管28bが接続される。配管28bは、その出口端の近傍にオリフィス部28cを有する。配管28bの出口端には、ブロー弁29iが設けられる。配管28bは、圧力調整弁11がアンロード解除状態(図3参照)である場合に、圧力調整弁11内から外部(大気中)へ圧縮空気G7を排出する。その際、オリフィス部28cは、圧力調整弁11から配管28bを通じて外部に圧縮空気G7が微量ずつ排出されるように圧縮空気G7の排出量を制限する。ブロー弁29iは、圧力調整弁11を整備する期間、常に開状態であり、圧力調整弁11の整備完了後等、必要に応じて閉じられる。
洗浄液弁29jは、圧力調整弁11の内部を適宜洗浄する際に用いる弁である。具体的には、図4に示すように、洗浄液弁29jは、圧力調整弁11に通じる配管27eに開閉可能に設けられる。配管27eは、圧力タンク22と圧力調整弁11とを連通する配管27aから分岐した管であり、圧力調整弁11の入口部12の開口部に直線的に通じる。洗浄液弁29jは、開状態となることにより、圧力調整弁11内への洗浄液の噴射を許容する。なお、洗浄液弁29jは、圧力調整弁11の洗浄期間において開状態であり、それ以外の期間、閉状態である。
固定部30は、圧力調整弁11を配管27aに固定するための部材である。具体的には、図4に示すように、固定部30は、一端が圧力調整弁11の外壁に取り付けられ、他端が圧力調整弁11に対して並行配置状態の配管27aの部分に取り付けられる。固定部30は、互いに並行状態の圧力調整弁11と配管27aとを固定し、これにより、圧力調整弁11の整備の際に配管27aから圧力調整弁11が意図せず外れる事態を防止する。さらに、固定部30は、圧力調整弁11の整備の際に発生する回転力によって配管27aが曲がる事態と、圧力調整弁11が意図せず揺れ動く事態とを防止する。
(弁整備方法)
つぎに、本発明の実施の形態にかかる弁整備方法について説明する。図5は、本発明の実施の形態にかかる弁整備方法の一例を示すフローチャートである。図6は、本実施の形態における整備対象の圧力調整弁の作動圧力調整を説明するための図である。以下、図4〜6を参照しつつ、図4に示した弁整備設備21を用いて圧力調整弁11を整備する場合を例示して、本実施の形態にかかる弁整備方法を説明する。
本実施の形態にかかる弁整備方法では、図5に示すように、まず、整備対象の圧力調整弁11を往復圧縮機1(図1参照)から取り外し、この取り外した圧力調整弁11を弁整備設備21に取り付ける(ステップS101)。ステップS101においては、図4に示すように、圧力タンク22に通じる配管27aを圧力調整弁11の入口部12に接続し、アンロード圧力計24に通じる配管28aを圧力調整弁11の流通口13aに接続する。さらに、外部に通じる配管28bを圧力調整弁11の排出口14aに接続する。また、この圧力調整弁11と配管27aとを固定部30によって固定する。このようにして、弁整備設備21に圧力調整弁11を取り付ける。
なお、弁整備設備21に圧力調整弁11を取り付ける前の段階において、弁整備設備21の入口弁25a、空気抜き弁25b、第1エアー元弁29a、第2エアー元弁29b、連通弁29d,29e、および洗浄液弁29jは閉状態である。一方、弁整備設備21のブロー弁29c,29g,29h,29iは開状態である。ステップS101において、上述したように圧力調整弁11を弁整備設備21に取り付けた後、連通弁29d,29eは開状態にし、ブロー弁29c,29g,29hは閉状態にする。
ステップS101後、上述したように弁整備設備21に取り付けられた状態の圧力調整弁11に圧縮空気を供給する(ステップS102)。ステップS102においては、まず、第1エアー元弁29aおよび第2エアー元弁29bを開状態にして、配管26a,26bを通じ入口弁25aまで圧縮空気G7を流通させる。ついで、入口弁25aを徐々に開き、配管26aを通じて圧力タンク22内に圧縮空気G7を流入する。続いて、配管27aを通じ圧力タンク22に接続した状態の圧力調整弁11に対し、往復圧縮機1による圧縮ガスG2を貯えて吐出するレシーバタンク7(図1参照)を模擬して圧力タンク22から圧縮空気G7を供給する。すなわち、圧力タンク22は、配管27aを通じて圧力調整弁11の入口部12から圧力調整弁11の内部に圧縮空気G7を供給する。
続いて、圧力タンク22から圧力調整弁11に供給する圧縮空気G7の供給圧力を調整する(ステップS103)。ステップS103においては、ニードル弁等の入口弁25aおよび空気抜き弁25bを適宜用いて、圧力タンク22に対する圧縮空気G7の流入量を調整し、この流入量の調整を通して、圧力調整弁11に対する圧縮空気G7の供給圧力を調整する。具体的には、入口弁25aの開度を徐々に増やすことにより、圧力タンク22に対する圧縮空気G7の流入増量を調整して圧力調整弁11に対する圧縮空気G7の供給圧力の増加を調整する。また、必要に応じて、空気抜き弁25bの開度を操作することにより、圧力タンク22に対する圧縮空気G7の流入量を減ずるよう調整する。これにより、圧力調整弁11に対する圧縮空気G7の供給圧力の減少を調整する。この状態において、圧力タンク22は、入口弁25aおよび空気抜き弁25bによって増圧調整されている圧縮空気G7を圧力調整弁11に供給し続ける。これに並行して、圧力タンク22の圧力計23は、この圧力調整弁11に対する圧縮空気G7の供給圧力を表示する。この圧縮空気G7の供給圧力を圧力計23に表示しながら、入口弁25aおよび空気抜き弁25bによって圧縮空気G7の供給圧力を調整し、これにより、圧力調整弁11を作動させる。
この時点において、圧縮空気G7は、圧力タンク22から圧力調整弁11に供給され続けているが、この圧縮空気G7の供給圧力が圧力調整弁11の作動圧力以下である場合、圧力調整弁11はアンロード状態にならない。なお、アンロード状態は、図3に示したように、往復圧縮機1を無負荷状態に制御可能な圧力調整弁11の状態である。この場合、アンロード圧力計24は、圧力値「0」等を表示して、圧力調整弁11がアンロード状態である旨を表示しない。
アンロード圧力計24が圧力調整弁11のアンロード状態の旨を表示していない場合(ステップS104,No)、圧力計23に表示される圧縮空気G7の供給圧力を確認し、この供給圧力が所定値に比して過剰に増大しているか否かを判断する(ステップS105)。この供給圧力が所定値に比して過剰ではない場合(ステップS105,No)、圧力タンク22から圧力調整弁11に対する圧縮空気G7の供給処理において特に問題が発生していない。このため、上述したステップS102に戻り、このステップS102以降の処理ステップを繰り返す。
一方、ステップS105において、圧縮空気G7の供給圧力が所定値に比して過剰である場合(ステップS105,Yes)、圧力調整弁11の内部に油分等の異物が付着して圧力調整弁11が正常に作動できない状態になっている可能性がある。この場合、圧力調整弁11に通じる配管27eに設けた洗浄液弁29jを開状態にし、洗浄液弁29jが圧力調整弁11内への洗浄液の噴射を許容した状態にする。この洗浄液弁29jから配管27e等を通じて圧力調整弁11の内部に有機溶剤等の洗浄液を噴射する。この噴射した洗浄液によって圧力調整弁11の内部を洗浄し(ステップS106)、圧力調整弁11内の異物を除去する。その後、洗浄液弁29jを閉状態にし、上述したステップS102に戻って、このステップS102以降の処理ステップを繰り返す。
他方、上述したステップS104において、圧力タンク22から圧力調整弁11に対する圧縮空気G7の供給圧力が圧力調整弁11の作動圧力を超過した場合、圧力調整弁11は、図3に示したアンロード状態になる。このように圧縮空気G7の供給圧力に応じて圧力調整弁11がアンロード状態に作動した場合、アンロード圧力計24は圧力調整弁11のアンロード状態の旨を表示する(ステップS104,Yes)。この場合、アンロード圧力計24は、アンロード状態に要する圧力調整弁11の作動圧力を計測して表示する。
続いて、圧力タンク22の圧力計23とアンロード圧力計24とを見比べて、圧力計23に表示されている圧縮空気G7の現在の供給圧力と、アンロード圧力計24に表示されている圧力調整弁11の現在の作動圧力とが同等であるか否かを判断する(ステップS107)。
ステップS107においては、圧力調整弁11に要求される作動圧力の最小桁まで圧力計23に表示の供給圧力とアンロード圧力計24に表示の作動圧力とが同じである場合、これら供給圧力と作動圧力とは同等であると定義する。例えば、圧力調整弁11に対して小数第1位を最小桁とする作動圧力が要求された場合、圧力計23に表示の供給圧力とアンロード圧力計24に表示の作動圧力とは、小数第2位以下の数値が異なっていても、最上桁から小数第1位までの数値が同じであれば、互いに同等である。
圧力計23に表示の供給圧力とアンロード圧力計24に表示の作動圧力とが同等ではない場合(ステップS107,No)、圧力調整弁11にガス漏れが発生している可能性がある。このため、圧力調整弁11のガス漏れを点検および修復する(ステップS108)。ステップS108においては、圧力調整弁11に対して石鹸水等の発泡性のあるテスト液を噴霧し、このテスト液の発泡の有無によって、圧力調整弁11のガス漏れを点検する。点検の結果、圧力調整弁11にガス漏れが発見された場合、圧力調整弁11と配管27a,28a,28bとの取り付け具合や圧力調整弁11のナット19a,19b(図6参照)の締結具合等を調整して、ガス漏れを修復する。その後、上述したステップS102に戻り、このステップS102以降の処理ステップを繰り返す。
一方、圧力計23に表示の供給圧力とアンロード圧力計24に表示の作動圧力とが同等である場合(ステップS107,Yes)、圧力タンク22の圧力計23によって、圧力調整弁11の作動圧力を表示する(ステップS109)。ステップS109においては、アンロード圧力計24によって圧力調整弁11のアンロード状態の旨を表示する期間、圧縮空気G7の供給圧力を、圧力調整弁11の作動圧力として圧力計23に表示する。すなわち、圧力計23は、圧力調整弁11がアンロード状態である場合、アンロード圧力計24が表示する圧力調整弁11の作動圧力と同等の圧縮空気G7の供給圧力を、圧力調整弁11の作動圧力として表示する。作業者は、このように圧力計23に表示される作動圧力(アンロード圧力計24に表示の作動圧力と同等の圧縮空気G7の供給圧力)を、現時点における圧力調整弁11の作動圧力の上限として確認する。
つぎに、現時点における圧力調整弁11の作動圧力の下限を確認すべく、圧力タンク22から圧力調整弁11に対する圧縮空気G7の供給圧力を調整する(ステップS110)。ステップS110においては、入口弁25aおよび空気抜き弁25bを適宜用いて、圧力タンク22に対する圧縮空気G7の流入量を調整し、この流入量の調整を通して、圧力調整弁11に対する圧縮空気G7の供給圧力を調整する。具体的には、空気抜き弁25bの開度を徐々に増やすことにより、圧力タンク22に対する圧縮空気G7の流入量を減ずる調整を行い、これにより、圧力調整弁11に対する圧縮空気G7の供給圧力の減少を調整する。また、必要に応じて、入口弁25aの開度を操作することにより、圧力タンク22に対する圧縮空気G7の流入増量を調整する。これにより、圧力調整弁11に対する圧縮空気G7の供給圧力の増加を調整する。この状態において、圧力タンク22は、入口弁25aおよび空気抜き弁25bによって減圧調整されている圧縮空気G7を圧力調整弁11に供給し続ける。これに並行して、アンロード圧力計24は、圧力調整弁11がアンロード状態である旨、すなわち、アンロード状態に要する圧力調整弁11の作動圧力を表示する。圧力タンク22の圧力計23は、この圧縮空気G7の供給圧力を、圧力調整弁11の作動圧力として表示する。このように圧力調整弁11の作動圧力を圧力計23に表示しながら、入口弁25aおよび空気抜き弁25bによって圧縮空気G7の供給圧力を調整し、これにより、圧力調整弁11を作動させる。
この時点において、圧縮空気G7は、圧力タンク22から圧力調整弁11に供給され続けているが、この圧縮空気G7の供給圧力が圧力調整弁11の作動圧力を超過している場合、圧力調整弁11のアンロード状態は解除されない。この場合、圧力計23およびアンロード圧力計24は、互いに同等の圧力値を表示している。すなわち、アンロード圧力計24は、圧力調整弁11がアンロード状態である旨の表示を終えていない。
アンロード圧力計24が圧力調整弁11のアンロード状態の表示を終えていない場合(ステップS111,No)、上述したステップS110に戻り、このステップS110以降の処理ステップを繰り返す。すなわち、上述したステップS110は、アンロード圧力計24が圧力調整弁11のアンロード状態の表示を終えるまで繰り返し行われる。
一方、圧力タンク22から圧力調整弁11に対する圧縮空気G7の供給圧力が圧力調整弁11の作動圧力以下となった場合、圧力調整弁11は、アンロード状態を解除してアンロード解除状態(図3参照)になる。このように圧縮空気G7の供給圧力に応じて圧力調整弁11がアンロード解除状態に作動した場合、アンロード圧力計24は、圧力調整弁11のアンロード状態の表示を終える(ステップS111,Yes)。この場合、アンロード圧力計24は、例えば、圧力調整弁11の作動圧力の計測結果として零値を表示する。
続いて、アンロード圧力計24がアンロード状態の表示を終えた際の圧力計23の表示圧力を視認して、現時点における圧力調整弁11の作動圧力幅を確認する(ステップS112)。ここで、アンロード状態の表示を終えた際、アンロード圧力計24の表示は、図4に示す圧力調整弁11の排出口14aに接続された配管28bのオリフィス部28cの作用により、アンロード状態の表示(圧縮空気G7の供給圧力と同等の作動圧力の表示)からアンロード解除状態の表示(例えば圧力値「0」の表示)へ徐々に変化する。このため、作業者は、アンロード圧力計24がアンロード状態の表示を終えた際の圧力計23の表示圧力を容易に確認することができる。ステップS112においては、このアンロード圧力計24がアンロード解除状態の表示へ変化し始めた際における圧力計23の表示圧力値(圧縮空気G7の供給圧力)を、圧力調整弁11の作動圧力の下限とする。作業者は、この圧力計23の表示から作動圧力の下限を視認し、上述したステップS109において確認した作動圧力の上限とステップS112における作動圧力の下限との差を、現時点における圧力調整弁11の作動圧力幅として確認する。
つぎに、ステップS112において確認した作動圧力幅が圧力調整弁11に要求される作動圧力幅として適正であるか否かを判断する(ステップS113)。ステップS113においては、圧力調整弁11に要求される作動圧力幅と現時点の圧力調整弁11の作動圧力幅とが各々の最小桁まで同じである場合、現時点の作動圧力幅は適正であると判断される。例えば、圧力調整弁11に対して小数第1位を最小桁とする作動圧力幅(0.5[MPa]等)が要求された場合、現時点の作動圧力幅は、小数第2位以下の数値が異なっていても、最上桁から小数第1位までの数値が同じ(すなわち0.50〜0.59[MPa])であれば、調整結果として適正である。
上述したステップS112における作動圧力幅が適正ではない場合(ステップS113,No)、圧力調整弁11の作動圧力幅を調整する(ステップS114)。ステップS114において、圧力調整弁11の作動圧力幅を調整するためには、圧力調整弁11における圧力幅調整部16のねじ込み量を調整する。具体的には、図6に示す圧力調整弁11のナット19aを緩めて、圧力幅調整部16を回転可能な状態にする。続いて、図6における矢印Y1に示されるように、圧力幅調整部16をその長手方向を中心にして回転し、これによって、上側筒体13の内部に対する圧力幅調整部16のねじ込み量を調整する。圧力幅調整部16は、このねじ込み量の調整を通して、弁体15のリフト量を調整し、これにより、圧力調整弁11の作動圧力幅を調整する。例えば、上側筒体13に向かって圧力幅調整部16を、その長手方向中心軸を中心として右廻しすれば、圧力幅調整部16のねじ込み量が増加し、これに伴い、弁体15のリフト量が減少する。この結果、圧力調整弁11の作動圧力幅は、狭く調整される。一方、上述した調整とは逆に上側筒体13に向かって圧力幅調整部16を左廻しすれば、圧力幅調整部16のねじ込み量が減少し、これに伴い、弁体15のリフト量が増加する。この結果、圧力調整弁11の作動圧力幅は、広く調整される。このように作動圧力幅を調整後、下側筒体14の下端部側からシール部材18b,18cを介して上側筒体13と下側筒体14とを強固に接続するように、ナット19aを圧力幅調整部16の外壁に締結する。以上のステップS114を行った後、上述したステップS102に戻り、このステップS102以降の処理ステップを繰り返す。すなわち、ステップS112における作動圧力幅が圧力調整弁11に要求される作動圧力幅として適正となるまで、ステップS114に至る各種処理ステップを繰り返し行う。
一方、上述したステップS112における作動圧力幅が適正である場合(ステップS113,Yes)、ステップS109、S112において確認した作動圧力の上下限が圧力調整弁11に要求される作動圧力の上下限として適正であるか否かを判断する(ステップS115)。ステップS115においては、圧力調整弁11に要求される作動圧力の上下限と現時点の圧力調整弁11の作動圧力の上下限とが各々の最小桁まで同じである場合、現時点の作動圧力幅は適正であると判断される。例えば、圧力調整弁11に対して小数第1位を最小桁とする作動圧力の下限(7.5[MPa]等)が要求された場合、現時点の作動圧力の下限は、小数第2位以下の数値が異なっていても、最上桁から小数第1位までの数値が同じ(すなわち7.50〜7.59[MPa])であれば、調整結果として適正である。このことは、作動圧力の上限についても同様である。
上述したステップS115における作動圧力の上下限が適正ではない場合(ステップS115,No)、圧力調整弁11の作動圧力の上下限を調整する(ステップS116)。ステップS116において、圧力調整弁11の作動圧力の上下限を調整するためには、圧力調整弁11における作動圧力調整部17のねじ込み量を調整する。具体的には、図6に示す圧力調整弁11のナット19bを緩めて、作動圧力調整部17の軸受け部17cを回転可能な状態にする。続いて、図6における矢印Y2に示されるように、軸受け部17cをその長手方向を中心にして回転し、これによって、圧力幅調整部16の内部に対する軸受け部17cのねじ込み量を調整する。作動圧力調整部17は、この軸受け部17cのねじ込み量の調整を通して、ばね17bの付勢力を調整し、これにより、弁体15の押圧力を増減して作動圧力の上下限を調整する。例えば、圧力幅調整部16に向かって軸受け部17cを、その長手方向中心軸を中心として右廻しすれば、軸受け部17cのねじ込み量が増加し、これに伴い、ばね17bの付勢力に基づく弁体15の押圧力が増加する。この結果、圧力調整弁11の作動圧力の上下限は、増圧の方向にシフトするよう調整される。一方、上述した調整とは逆に圧力幅調整部16に向かって軸受け部17cを左廻しすれば、軸受け部17cのねじ込み量が減少し、これに伴い、ばね17bの付勢力に基づく弁体15の押圧力が減少する。この結果、圧力調整弁11の作動圧力の上下限は、減圧の方向にシフトするよう調整される。このように作動圧力の上下限を調整後、圧力幅調整部16と作動圧力調整部17の軸受け部17cとを強固に接続するように、ナット19bを軸受け部17cの外壁に締結する。以上のステップS116を行った後、上述したステップS102に戻り、このステップS102以降の処理ステップを繰り返す。すなわち、ステップS109,S112における作動圧力の上下限が圧力調整弁11に要求される作動圧力の上下限として適正となるまで、ステップS116に至る各種処理ステップを繰り返し行う。
一方、上述したステップS115における作動圧力の上下限が適正である場合(ステップS115,Yes)、圧力調整弁11の作動圧力調整および機能点検、すなわち、圧力調整弁11の整備が完了する。その後、弁整備設備21から整備完了後の圧力調整弁11を取り外し(ステップS117)、本処理を終了する。ステップS117において、整備完了後の圧力調整弁11からは、各配管27a,28a,28bおよび固定部30が取り外される。その際、弁整備設備21の入口弁25a、空気抜き弁25b、第1エアー元弁29a、第2エアー元弁29b、および連通弁29d,29eは閉状態にされる。弁整備設備21のブロー弁29c,29g,29hは開状態にされる。なお、この整備完了後の圧力調整弁11は、弁整備設備21から取り外された後、同じく整備が完了した状態の往復圧縮機1に取り付けられる。
ここで、上述したステップS114において圧力調整弁11の作動圧力幅を調整する際、図6に示したようにナット19aを緩めて圧力幅調整部16を回転させる。このナット19aの緩め作業に伴い、シール部材18b,18cを介した上側筒体13と下側筒体14との接続ロックが解除される。この場合、シール部材18b,18cが緩んでしまい、これにより、上側筒体13および下側筒体14の少なくとも一方とシール部材18b,18cとの間に隙間が生じて、整備中の圧力調整弁11にガス漏れが発生する。
往復圧縮機1に圧力調整弁11を取り付けた状態において実ガス(コークス炉ガスまたは窒素ガスなど)を用いて圧力調整弁11の整備を行う従来の弁整備方法では、上述したように作動圧力幅を調整中の圧力調整弁11にガス漏れが発生した場合、この圧力調整弁11から実ガスが漏れてしまう。このため、作業者は、圧力調整弁11を整備する際、一酸化炭素中毒または酸欠状態に陥ることを防止するという観点から、送気マスク等の防護具の着用を余儀なくされる。
これに対し、本発明の実施の形態にかかる弁整備方法では、往復圧縮機1とは別体の弁整備設備21に圧力調整弁11を取り付け、実ガスの代わりに圧縮空気を用いて圧力調整弁11を整備している。このため、たとえ作動圧力幅を調整中の圧力調整弁11にガス漏れが発生しても、この圧力調整弁11から漏れるガスは、作業者に一酸化炭素中毒または酸欠状態を起こさせない圧縮空気である。したがって、作業者は、送気マスク等の防護具を着用しなくとも、一酸化炭素中毒または酸欠状態に陥ることなく安全に、圧力調整弁11を整備することができる。
なお、上述したステップS116において圧力調整弁11の作動圧力の上下限を調整する際、図6に示したようにナット19bを緩めて作動圧力調整部17を回転させる。しかし、作動圧力調整部17の外壁と圧力幅調整部16の内壁との間の気密性は、Oリング18aによって確保されている。したがって、作動圧力の上下限を調整中に圧力調整弁11にガス漏れが発生する可能性は極めて低い。
以上、説明したように、本発明の実施の形態では、圧縮機の負荷制御弁を、前記圧縮機から取り外して前記圧縮機とは別の圧力タンクに配管を通じて接続し、前記圧縮機による圧縮ガスを貯えて吐出する吐出側圧力タンクを模擬して、前記圧力タンクから前記負荷制御弁に圧縮空気を供給し、前記負荷制御弁に対する前記圧縮空気の供給圧力を前記圧力タンクの圧力計に表示しながら、圧力調整手段によって前記圧縮空気の供給圧力を調整している。また、前記圧縮空気の供給圧力に応じて前記負荷制御弁がアンロード状態に作動した場合、このアンロード状態の旨を表示計に表示し、このアンロード状態の旨を前記表示計に表示する期間、前記圧力タンクの圧力計に、前記圧縮空気の供給圧力を前記負荷制御弁の作動圧力として表示している。
このため、圧縮機における負荷制御弁の作動状態を、圧縮機から取り外した負荷制御弁に再現させながら、負荷制御弁に対する圧縮空気の供給圧力に基づいて、現状の負荷制御弁の作動圧力幅および作動圧力の上下限を容易に確認することができる。この作動圧力に関する確認結果に基づいて簡易に、負荷制御弁の作動圧力幅および作動圧力の上下限を要求の圧力範囲に合致するよう調整できるとともに、圧縮機の整備と並行して負荷制御弁の整備を同時に進行することができる。これにより、圧縮機を停止してから負荷制御弁の整備作業を完了して圧縮機の操業を再開するまでの時間を可能な限り短縮することができる。さらには、実ガスの代わりに圧縮空気を用いて負荷制御弁を整備しているため、たとえ整備中の負荷制御弁にガス漏れが発生しても、漏れるガスを圧縮空気とすることができる。したがって、作業者は、送気マスク等の防護具を着用しなくとも一酸化炭素中毒または酸欠状態に陥ることなく、負荷制御弁を整備することができる。以上の結果、負荷制御弁を整備する際の圧縮機の停止期間を可能な限り短縮できるとともに、作業者の負担を軽減して安全に負荷制御弁を整備することができる。
また、本発明の実施の形態では、負荷制御弁がアンロード状態である旨を表示する表示計として、アンロード状態に要する負荷制御弁の作動圧力を計測して表示するアンロード圧力計を用いている。このため、上述した圧力タンクの圧力計の表示内容とアンロード圧力計の表示内容とを見比べることにより、負荷制御弁がアンロード状態であるか否か、負荷制御弁にガス漏れが発生しているか否か、負荷制御弁がアンロード状態を解除したか否か等の負荷制御弁の現状を詳細且つ簡易に確認することができる。この結果、負荷制御弁の作動圧力調整を精度よく行えるとともに、負荷制御弁の状況に応じて適切に負荷制御弁を整備することができる。
さらに、本発明の実施の形態では、圧力調整手段としてニードル弁を用いているため、負荷制御弁に対する圧縮空気の供給圧力を容易に微調整することができる。この結果、負荷制御弁の作動圧力調整を微細且つ高精度に行うことができる。
また、本発明の実施の形態では、負荷制御弁内への洗浄液の噴射を許容する洗浄液弁を設けたので、この洗浄液弁を通じて負荷制御弁内に洗浄液を噴射して、負荷制御弁内を適宜洗浄することができる。この結果、負荷制御弁に対する圧縮空気の供給圧力が過剰に増大する事態と、油分等の異物付着に起因して負荷制御弁の作動が阻害される事態とを容易に解消することができる。
さらに、本発明の実施の形態では、負荷制御弁の排出口に接続する配管(排出管)にオリフィス部を設け、負荷制御弁がアンロード状態を解除した際、負荷制御弁から排出管を通じて圧縮空気を微量ずつ排出するように構成している。このため、アンロード状態の表示からアンロード解除状態の表示へ表示変化を徐々に進めることができ、これにより、アンロード状態の表示が終了した際の圧力タンクの圧力計による表示圧力を容易に確認することができる。この結果、負荷制御弁の作動圧力の下限を精度よく見極めることができ、このことから、負荷制御弁の作動圧力の幅および上下限を一層容易且つ高精度に調整することができる。
なお、上述した実施の形態では、負荷制御弁(圧力調整弁11)がアンロード状態である旨を表示する表示計としてアンロード圧力計24を用いていたが、本発明は、これに限定されない。すなわち、負荷制御弁の作動圧力を計測し表示する圧力計の代わりに、負荷制御弁がアンロード状態であるか否かを示す情報を表示または指し示す表示計を用いて、負荷制御弁のアンロード状態の旨を表示してもよい。
また、上述した実施の形態では、負荷制御弁に対する圧縮空気の供給圧力が過剰である場合に負荷制御弁内を洗浄していたが、これに限らず、この圧縮空気の供給圧力が過剰である場合、負荷制御弁の作動圧力を減ずるように負荷制御弁の調整を行ってもよいし、この負荷制御弁の調整と負荷制御弁内の洗浄とを併用してもよい。
さらに、上述した実施の形態では、負荷制御弁の作動圧力幅を調整した後に作動圧力の上下限を調整していたが、これに限らず、負荷制御弁の作動圧力の上下限を調整した後に作動圧力幅を調整してもよい。
また、上述した実施の形態では、負荷制御弁に供給する圧縮空気として、エアーボンベの圧縮空気によって圧力を増強した圧縮空気を用いていたが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、工場の圧縮機によって供給される圧縮空気の圧力が負荷制御弁に対する圧縮空気の供給圧力として必要十分であれば、この工場からの圧縮空気を、その圧力を増強せずに負荷制御弁に供給してもよい。この場合、エアーボンベと、それに通じる配管および第2エアー元弁とを本発明にかかる弁整備設備に設けなくてもよい。
さらに、上述した実施の形態では、ガス圧力によって作動する圧力調整弁11を整備対象の負荷制御弁として説明していたが、これに限らず、本発明における整備対象の負荷制御弁は、電動弁であってもよい。また、本発明における整備対象の負荷制御弁は、往復圧縮機の負荷制御弁に限らず、スクリュー圧縮機またはスクロール圧縮機等、往復圧縮機以外の圧縮機の負荷制御弁であってもよい。
また、上述した実施の形態により本発明が限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例および運用技術等は全て本発明に含まれる。