JP5995700B2 - ポリメトキシフラボン類の製造方法 - Google Patents

ポリメトキシフラボン類の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、水溶性で保存安定性に優れた高純度のポリメトキシフラボン類を、天然物を原材料として製造する方法に関するものである。
詳しくは、みかん属植物の果皮や種などを原材料とし、超臨界二酸化炭素流体と助溶媒であるエタノール水溶液とを用いて得られた抽出物から、濃縮による溶媒の除去と液液抽出、多孔質素材を用いた精製工程により、保存安定性に優れた水溶性ポリメトキシフラボン類を製造する方法に関する。
従来から下記一般式(I)
Figure 0005995700
(式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は各々独立して水素又はメトキシ基である)
の構造式で表されるポリメトキシフラボン類は、みかん属植物、すなわち柑橘類に多く含まれていることが知られている。
特にノビレチン(上記式(I)でR1、R2、R3、R4、及びR5のすべてがメトキシ基)に関しては、発ガン抑制作用等の生理活性が明らかにされている物質である(非特許文献1参照)。
さらにポリメトキシフラボン類は食品の分野において、呈味改善剤及び呈味改善方法(特許文献1参照)や、香味劣化抑制剤(特許文献2参照)など、様々な有用な効果が見出され注目されている。
みかん属植物の果皮油にはポリメトキシフラボン類以外に、性質が非常に異なる多種多様な数多くの成分が含まれている(非特許文献2、非特許文献3参照)。例えば、テルペン類等の炭化水素化合物、アルデヒド、エステル等のカルボニル化合物、アルコール類等の揮発性成分および通常の条件では揮発しないワックス類、カロテノイド色素等の不揮発性成分が含まれており、簡便な方法でポリメトキシフラボン類を選択的に分離することは困難とされている。
みかん属植物に含まれるポリメトキシフラボン類を精製する従来技術が、前掲の特許文献1及び2に開示されている。
具体的には、みかん属植物の果実、果皮、果皮油、種、葉部等の原料からエタノールやメタノール、クロロホルム等の有機溶剤を用いて加熱抽出する方法や、それらの抽出方法と合成樹脂による精製を組み合わせた方法である。
また超臨界流体と助溶媒を併用して抽出する方法(特許文献3参照)や抽出した果皮油から分子蒸留を用いて分離精製する方法(特許文献4、特許文献5参照)なども知られている。
前掲の特許文献4及び5記載の分子蒸留を用いる方法では、確かにポリメトキシフラボン類を精製する上で有効であると考えられる。しかし、精留及び分子蒸留といった蒸留操作を繰り返し行わなければならず、工程が煩雑で長いため時間あたりの収率が悪く、また長い熱履歴による精油の劣化などが懸念される。さらに原料には精油しか使用できないため、まず精油を得る工程も必要となってくる。
そこで原料の形態にとらわれることなく、短時間で効率良くポリメトキシフラボン類を得る方法として前掲の特許文献3に記載されているような超臨界流体と助溶媒を用いて抽出する方法が挙げられる。当該方法において、超臨界流体として一般的に利用されている二酸化炭素を用いれば、原料に対する熱履歴などの不安も少なく安全且つ省エネルギーで抽出することが可能である。
しかし上記の特許文献3の方法で得られる抽出物は、助溶媒由来のエタノール水溶液と原料由来の炭化水素化合物をはじめとする非極性の油脂成分からなる不均一な液体である。また目的のポリメトキシフラボン類の純度もあまり高いものではなく、そのままでは呈味改善剤や香味劣化抑制剤等の目的で食品等に使用する上で極めて用途が制限されることとなる。
前掲の特許文献3においては、上記のような抽出物を濃縮し、その濃縮物をエタノールに溶解させることで分析サンプルを供する方法が示されている。
しかしながら、この方法で得られる組成物中には原料由来の油脂成分が多く含まれているためポリメトキシフラボン類の純度は低く、食品などに添加物として使用するには不向きである。また濃縮物そのものの極性が低いため、特に水溶性のものが求められる飲料などにはそのまま使用することが出来ない。
特開平6−335362号公報 特開平11−169148号公報 特開2009−67755公報 特開2009−215318公報 特開2010−37317公報
日本農芸化学会誌75巻、12号、2001年、1283〜1290貢 香料化学総覧(I)232頁、廣川書店、昭和42年 果実の科学、130頁、朝倉書店、1991年
本発明の目的は、超臨界流体抽出によって得られたみかん属植物の抽出物から、保存安定性と水溶性に優れたポリメトキシフラボン類を高純度で製造する方法を提供することである。
本発明者らは、上記製造方法を確立するために鋭意研究した結果、下記の方法で、水溶性の安定なポリメトキシフラボン類を高い純度で簡便に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の方法では、まず、超臨界流体と助溶媒によって得られた抽出物から濃縮操作に
よりエタノール水溶液を除去しオイル様の濃縮物とする。次いで、得られたオイル様の濃縮物に新たにエタノール水溶液を加えて液液抽出を行い、その後活性炭などの多孔質素材で精製する。そして最後にエタノール濃度及び固形濃度の調整を行う。
本発明は、超臨界流体と助溶媒によって得られた抽出物を濃縮により助溶媒を除去した後、液液抽出と活性炭処理を行うことによって、安定で水溶性のポリメトキシフラボン類を製造する方法である。
すなわち、本発明は、下記の工程:
(A)超臨界流体と助溶媒による抽出操作によって、みかん属植物から抽出液Aを得る工程;
(B)濃縮操作によって、前記抽出液Aから助溶媒を除去した濃縮物Bを得る工程;
(C)エタノール水溶液による抽出操作によって、前記濃縮物Bから抽出液Cを得る工程;
(D)前記抽出液C又は前記抽出液Cにエタノール水溶液を添加した希釈溶液を多孔質素材で精製してポリメトキシフラボン類を得る工程;
を含む、水溶性ポリメトキシフラボン類の製造方法である。
本発明の製造方法によれば、水に対する溶解性が高く、かつ長期間保存した場合に溶解後の沈殿や濁りが生じることのない安定性に優れたポリメトキシフラボン類を簡便で経済的に得ることができる。また、本発明の製造方法によれば、純度が高く異味異臭のないポリメトキシフラボン類を提供することができる。
以下に本発明の実施形態について説明する。
〔1〕ポリメトキシフラボン類およびその原材料
本発明で製造されるポリメトキシフラボン類は、下記一般式(I):
Figure 0005995700
(式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は各々独立して水素又はメトキシ基である)で表される化合物である。
具体的には、ペンタメトキシフラボン(融点179℃)、ノビレチン(融点134℃)、テトラメトキシフラボン(融点128℃)、ヘプタメトキシフラボン(融点129〜131℃)、タンゲレチン(融点154℃)等が該当する。
上記ポリメトキシフラボン類は、みかん属(Citrus)植物の外果皮に含まれる果皮油中に多く含有されている。中でも、入手の容易さの観点から特にシイクワシャー(Citrus depressa Hayata)、スイートオレンジ(Citrus sinensis)、サワーオレンジ(Citrus aurantium)、タンジェリン(Citrus reticlata Blanco var. tangerine)、マンダリン(Citrus reticlata Blanco var. mandarin)の果皮を原材料として用いることが好ましい。
果皮の形態は特に限定されるものではないが、例えば、果汁を搾汁した後の残渣を生の
ままもしくは乾燥したものを使用する方法が挙げられる。
〔2〕超臨界流体による抽出工程(工程A)
本工程で使用する超臨界流体としては、例えば、その圧力が7.4〜60MPa、好ましくは15〜40MPa、その温度が32〜100℃、好ましくは35〜70℃の領域における超臨界状態の二酸化炭素が挙げられる。また使用する超臨界流体の使用量は原料のみかん属植物の1〜3倍容量、好ましくは1.7〜2.5倍容量であり、その抽出時間は、2〜6時間、好ましくは2.5〜4時間である。
さらに本発明ではポリメトキシフラボン類の抽出効率を上げるため、上記超臨界流体と共に助溶媒を使用することが好ましい。助溶媒としてはエタノール水溶液が食品に使用できる観点から好適である。そのエタノール濃度は10〜80(w/w)%、好ましくは20〜50(w/w)%である。使用量は原料のみかん属植物の0.1〜2倍、好ましくは0.3〜1倍量である。
〔3〕濃縮工程(工程B)
本工程は、先の超臨界流体抽出によって得られた抽出物中の助溶媒、例えばエタノール水溶液を、エバポレーター等を用いた濃縮操作によって除去する工程である。
みかん属植物の果皮等から超臨界二酸化炭素流体と助溶媒であるエタノール水溶液で抽出物を得た場合、その抽出物は、水溶性ポリメトキシフラボン類が多量に存在する含水エタノール抽出液とみかん属植物の果皮由来のオイル抽出液の不均一な溶液となる。ここで抽出液中のエタノール水溶液のみを分離、精製することでポリメトキシフラボン類の液体製剤とすることも可能であるが、不要な非極性成分を多く含むため飲料などに添加する際、沈殿や濁りなどを生じてしまい安定な水溶性製剤であるとは言えない。
また、分離した含水エタノール抽出液は高アルコール濃度であるため、水を加えて低アルコール濃度に調整して不要成分を除去し精製する方法も考えられる。しかし、この方法による調整液は白濁化しているため、活性炭処理などで清澄化することは可能であるが、その際ポリメトキシフラボン類も多く失われるため有効な方法とは言えない(後記の比較例1を参照)。
そこで含水エタノール抽出液中の各成分を一旦オイル抽出液に移行させ、改めてポリメトキシフラボン類を含む成分を精製抽出する必要がある。すなわちエタノール及び水を濃縮操作により除去することで、次工程でのポリメトキシフラボン類の精製抽出を可能とするものである。
また、濃縮後の助溶媒の濃度は、例えば助溶媒がエタノールである場合は、濃縮物中に0〜10(w/w)%が好ましく、特に好ましくは0〜5(w/w)%である。
〔4〕液液抽出工程(工程C)
上記濃縮物からポリメトキシフラボン類を効率よく精製抽出する簡便な方法としてエタノール水溶液を用いた液液抽出が挙げられる。
その際、エタノール濃度はなるべく低い方が不要な油溶成分を抽出することなくポリメトキシフラボン類を抽出することができるが、あまり低すぎるとポリメトキシフラボン類の抽出効率を損なうこととなる。そのため抽出に使用するエタノール水溶液の濃度は10〜80(w/w)%、好ましくは20〜40(w/w)%である。
使用量は濃縮物の2〜40倍、好ましくは5〜20倍量である。また抽出時の温度は、10〜90℃、好ましくは40〜80℃である。
〔5〕濃度調整工程(工程C1)
上記液液抽出によって得られた抽出液は、そのまま次の工程Dに付することができるが、濃度調整の観点から、次工程Dの実施前に、エバポレーター等で、水及びエタノールを
除去して濃縮し、エタノール濃度調整を行うことが好ましい。調整後のエタノール濃度は、40〜90(w/w)%が好ましく、特に好ましくは50〜80(w/w)%である。
〔6〕精製工程(工程D)
工程C1を省略する場合は、工程Cで得られた抽出液をそのまま、或いは工程Cの抽出液にエタノール水溶液を添加することにより希釈した希釈溶液を精製処理に付する。
工程C1を実施する場合は、工程C1で得られた溶液にエタノール水溶液を添加して希釈した後、当該希釈溶液を精製処理に付する。
多孔質素材による精製処理に付す際の溶液濃度は、ポリメトキシフラボン濃度が0.1〜20質量%、特に5質量%程度が好ましく、また、エタノール濃度が20〜100質量%、特に70質量%程度に調整しておくことが好適である。
必要に応じて上記の濃度の調整を行った後、当該溶液を多孔質素材によって精製し、より安定なポリメトキシフラボン類を得ることができる。
多孔質素材による精製は、通常行われている方法で行えば良く、例えば、カラムに充填された多孔質素材に前記抽出物を含む溶液を一定流量で接触させる方法や、該抽出物に多孔質素材を投入し、一定時間撹拌後に多孔質素材を分離する方法がある。その方法に格別の制約はなく、目的により選択することができる。
使用できる多孔質素材は、活性炭もしくは非イオン性多孔性樹脂吸着剤が安価で簡便に使用できる点で好ましい。
樹脂吸着剤は、一般に不溶性の三次元架橋構造ポリマーであってイオン交換基のような官能基を実質的に持たないものであり、例えば、その母体がスチレン系である「アンバーライト(登録商標)XAD−16」(オルガノ株式会社製)、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体系である「セパビーズSP70(商品名)」(三菱化学株式会社製)あるいは「ダイヤイオンHP20(商品名)」(三菱化学株式会社製)等を使用できるが、これらに限るものではない。
多孔質素材の使用量はその種類によっても異なるが、処理液中の固形に対して、5〜100(w/w)%量、好ましくは10〜50(w/w)%量である。また処理時の温度は、0〜90℃、好ましくは20〜70℃である。さらに処理時間は、0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間である。
なお、抽出液に多孔質素材を投入した場合は、処理後にメッシュろ過、ろ紙ろ過又は珪藻土ろ過など一般的なろ過方法によって使用した多孔質素材を除去することが出来る。
〔7〕ポリメトキシフラボン類の製剤化
得られたポリメトキシフラボン類は、高純度のペンタメトキシフラボン、ノビレチン、テトラメトキシフラボン、ヘプタメトキシフラボン及びタンゲレチンから成るので、そのままでも飲食品などに添加して使用できるが、必要に応じて、公知の製剤添加剤などと混合して、カプセル、顆粒状、錠剤、ペースト状又は飲料の形態に製剤化することができる。
公知の製剤添加剤としては、賦形剤、基剤、結合剤、崩壊剤、崩壊補助剤、滑沢剤、流動化剤、コーティング剤、可塑剤、消泡剤、糖衣剤、剤皮、光沢化剤、発泡剤、防湿剤、界面活性剤、可溶化剤、緩衝剤、溶解剤、溶解補助剤、溶剤、安定化剤、乳化剤、懸濁剤、分散剤、抗酸化剤、充填剤、粘稠剤、粘稠化剤、pH調整剤、防腐剤、保存剤、甘味剤、矯味剤、清涼化剤、着香剤・香料、芳香剤、着色剤などが挙げられる。
また、その他、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、大豆レシチン、卵黄レシチン、トコトリエノール、GABA(γ−アミノ酪酸)、テアニン、リコピン、ヤマブシタケ、イチョウ葉
、明日葉、ホップ、菊の花、ガジュツ、サフラン、ニンニク、発芽玄米、ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10、ローヤルゼリー、プロポリス、コラーゲン、植物ステロール、植物性油脂類(オリーブ油、大豆油など)、不飽和脂肪酸、ミツロウ、亜鉛酵母、セレン酵母等を配合してもよい。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例の記載に限定されるものではない。
〔実施例1〕
(1)試料
シイクワシャーの果皮及び種を熱風機械乾燥し、ハンマーミルで粉砕したものを試料とした。
(2)超臨界流体による抽出
試料約250gに50(w/w)%エタノールを180g添加し、混合したものを抽出槽に仕込み、圧力25MPa、温度40℃の超臨界二酸化炭素を連続的に4時間供給して抽出を行った。
抽出槽から流出する抽出物含有超臨界二酸化炭素は、圧力4MPa、温度25℃に保った分離槽に移し、抽出物を二酸化炭素から分離し、100gの抽出物を得た。得られた抽出物はエタノール水溶液層とオイル層の2層に分離していた。
(3)濃縮
ロータリーエバポレーターで、上記で得られた抽出物から水及びアルコールを除去し、ほぼオイル層のみになるまで濃縮し、30gの濃縮物を得た。
(4)液液抽出
上記オイル状の濃縮物に30(w/w)%エタノールを300g添加し40℃で2時間攪拌した後、全量を分液ロートに移した。分液ロート中で2時間静置して上下2層に分離させ、下層のエタノール溶液層約300gを抽出液として回収した。回収した抽出液は薄く黄色がかった白濁液の外観を呈していた。
(5)ろ過
上記で得られた抽出液は−15℃で一晩静置し、その後珪藻土ろ過を行った。得られたろ液は清澄化され黄色透明の溶液であった。
(6)濃度調整及び精製
清澄化されたろ液をロータリーエバポレーターで濃縮し3gの濃縮液を得た。
得られた濃縮液に95(v/v)%エタノールを9.5g、蒸留水を1.5g添加し、ポリメトキシフラボン類を6.5(w/w)%含有する70(w/w)%エタノール溶液に調整した。
この調整液に活性炭を0.3g添加し、65℃で2時間攪拌して精製した後、珪藻土ろ過で活性炭を除去した。その後、水を加えてポリメトキシフラボン類の濃度が5.1(w/w)%になるように調整し、ポリメトキシフラボン類含有液を得た。
こうして製造されたポリメトキシフラボン類含有液は表1に示すように、高純度の各種ポリメトキシフラボンを含んでいた。
〔ポリメトキシフラボンの測定〕
各種ポリメトキシフラボンの測定は、得られた水溶性ポリメトキシフラボン類を99.
5%エタノールで1000倍希釈し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用いて以下の条件で行った。
装置:アジレント・テクノロジー株式会社製「Agilent 1100 HPLC システム」
カラム:株式会社資生堂製「CAPCELL PAK C18MG」
カラム温度:40℃
溶離液:A.アセトニトリル
B.10%アセトニトリル水溶液(pH2.5 H3PO4
グラジエント条件: 0分 → 25分
A.アセトニトリル 0% 100%
B.10%アセトニトリル水溶液 100% 0%
(pH2.5 H3PO4
流速:1ml/分間
検出波長:325nm
ポリメトキシフラボンの含有量は、予め単離した純品で作成した検量線を用いて算出した。
表1の総ポリメトキシフラボン濃度はノビレチンとタンゲレチンの含有濃度の和を示す。また、総固形濃度は、蒸発皿に海砂と水溶性ポリメトキシフラボン類を入れて均一に混合させた後、105℃の恒温槽に2時間入れ、その前後の質量変化で固形量を求めることで算出した。ポリメトキシフラボン純度は、総ポリメトキシフラボン濃度を総固形濃度で除した値を百分率で示した。
Figure 0005995700
実施例1で製造したポリメトキシフラボン類含有液を水に0〜1.0g添加した時のポリメトキシフラボン濃度と比濁度、そして目視で濁っているかを確認した結果を表2に示す。
比濁度はハック社製の比濁計「2100AN型ラボ用濁度計」(ホルマジン標準液)を使用して測定した。
目視評価は、ポリメトキシフラボン類含有液を添加する前の水(透明)を基準に評価した。
この結果からも分かるように、本発明で製造されたポリメトキシフラボン類は水溶性に優れる。
Figure 0005995700
実施例1で製造したポリメトキシフラボン類含有液を5℃、25℃、40℃で、2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月間保管した後のポリメトキシフラボン濃度の変化や沈殿の発生の有無、異味異臭の発生の有無を確認した結果を表3に示す。表中「0月」は製造直後のポリメトキシフラボン類含有液の状態を示したものである。
この結果からも分かるように、本発明方法で製造されたポリメトキシフラボン類は高い保存安定性を持つものであった。
Figure 0005995700
〔比較例1〕
工程Bの濃縮操作の有効性を確認するため、以下の対比実験を行った。
実施例1の「(2)超臨界流体による抽出」で得られた粗抽出物を濃縮せずにエタノール水溶液層のみを分液ロートにて分離し70gの溶液を得た。得られた溶液の組成は、エタノールが84(w/w)%、水が13(w/w)%、そして固形が3(w/w)%であった。
この溶液に95(v/v)%エタノールを33.1g、水を196.9g添加することで300gに調整した。この調整液は実施例1の「(4)液液抽出」で得られた抽出液と同様に薄く黄色がかった白濁色の外観を呈していた。
その後実施例1の「(5)ろ過」と同様に冷却後、珪藻土ろ過を行ったが溶液は清澄化されず白濁したままだった。
そこで濁りを除去するために活性炭を2g添加し、65℃で2時間攪拌した後、珪藻土ろ過により活性炭を除去した。こうして得られた溶液は黄色透明な外観を呈していた。
この比較例1で得られたポリメトキシフラボン類含有液と実施例1の「(5)ろ過」で得られたポリメトキシフラボン類含有液のそれぞれのポリメトキシフラボン類の濃度及び全固形の濃度、ポリメトキシフラボン類の純度、そしてポリメトキシフラボン濃度が約50ppmとなるように水に添加した時の濁りの有無(目視評価)について表4に示した。
Figure 0005995700
表4から明らかなように、ポリメトキシフラボン類を効率よく精製抽出し、且つ飲料に添加した際に濁りを生じないようにするためには、実施例1のように超臨界抽出物中のエタノール溶液を一旦濃縮により除去し、その濃縮物を改めて含水エタノールで液液抽出する方が有利であることが明らかとなった。
〔比較例2〕
工程Dの精製操作の有効性を確認するため、以下の対比実験を行った。
実施例1の「(5)ろ過」までと同様にポリメトキシフラボン類溶液を製造し、その後の「(6)濃度調整及び精製」において活性炭処理を行わずに5.1(w/w)%ポリメトキシフラボン類含有液を製造した。
この比較例2で製造したポリメトキシフラボン類含有液と、実施例1で製造したポリメトキシフラボン類含有液をそれぞれ常温で60日間保管し、経時的な沈殿発生の有無(目視評価)を観察して表5に示した。表中「0日」は製造直後のポリメトキシフラボン類含有液の状態を示したものである。
Figure 0005995700
表5から明らかなように、活性炭処理を行わない比較例2のポリメトキシフラボン類含有液では製造後5日目から沈殿の発生が見られた。安定なポリメトキシフラボン類含有液を製造するには活性炭処理の工程を設けることが有効であることが確認された。
〔実施例2〕
以下の表6の処方に従ってオレンジ飲料を調製した。
試飲したところ、異味異臭がなくオレンジの自然な風味が感じられた。
Figure 0005995700
本発明の製造方法によれば、保存時の安定性が高く、また水への溶解性に優れたポリメトキシフラボン類をみかん属植物から効率よく且つ安価に得ることができる。

Claims (8)

  1. 下記の工程:
    (A)超臨界流体と助溶媒による抽出操作によって、みかん属植物から抽出液Aを得る工程;
    (B)濃縮操作によって、前記抽出液Aから助溶媒を除去した濃縮物Bを得る工程;
    (C)エタノール水溶液による抽出操作によって、前記濃縮物Bから抽出液Cを得る工程;
    (D)前記抽出液C又は前記抽出液Cにエタノール水溶液を添加した希釈溶液を多孔質素材で精製してポリメトキシフラボン類を得る工程;
    を含む、水溶性ポリメトキシフラボン類の製造方法。
  2. 下記の工程:
    (A)超臨界流体と助溶媒による抽出操作によって、みかん属植物から抽出液Aを得る工程;
    (B)濃縮操作によって、前記抽出液Aから助溶媒を除去した濃縮物Bを得る工程;
    (C)エタノール水溶液による抽出操作によって、前記濃縮物Bから抽出液Cを得る工程;
    (C1)濃縮操作によって、抽出液Cからエタノール及び水を除去した濃縮物C1を得る工程;
    (D)前記濃縮物C1にエタノール水溶液を添加して希釈溶液を得た後、当該希釈溶液を多孔質素材で精製してポリメトキシフラボン類を得る工程;
    を含む、水溶性ポリメトキシフラボン類の製造方法。
  3. みかん属植物が、スイートオレンジ(Citrus sinensis)、サワーオレンジ(Citrus aurantium)、タンジェリン(Citrus reticlata Blanco var. tangerine)、マンダリン(Citrus reticlata Blanco var. mandarin)、シイクワシャー(Citrus depressa Hayata)から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。
  4. ポリメトキシフラボン類が、ペンタメトキシフラボン、ノビレチン、テトラメトキシフラボン、タンゲレチン、ヘプタメトキシフラボンからなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかの項に記載の製造方法。
  5. 工程(A)の助溶媒が、水、エタノール又はエタノール水溶液である請求項1〜4のいずれかの項に記載の製造方法。
  6. 工程(B)の濃縮物B中の助溶媒濃度が、0〜10(w/w)%である請求項1〜5のいずれかの項に記載の製造方法。
  7. 工程(C)の抽出に用いるエタノール水溶液のエタノール濃度が、10〜80(w/w)%である請求項1〜6のいずれかの項に記載の製造方法。
  8. 工程(D)の多孔質素材が、活性炭又は非イオン性多孔性樹脂吸着剤である請求項1〜7のいずれかの項に記載の製造方法。
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