JP5995700B2 - ポリメトキシフラボン類の製造方法 - Google Patents
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Description
詳しくは、みかん属植物の果皮や種などを原材料とし、超臨界二酸化炭素流体と助溶媒であるエタノール水溶液とを用いて得られた抽出物から、濃縮による溶媒の除去と液液抽出、多孔質素材を用いた精製工程により、保存安定性に優れた水溶性ポリメトキシフラボン類を製造する方法に関する。
の構造式で表されるポリメトキシフラボン類は、みかん属植物、すなわち柑橘類に多く含まれていることが知られている。
特にノビレチン(上記式(I)でR1、R2、R3、R4、及びR5のすべてがメトキシ基)に関しては、発ガン抑制作用等の生理活性が明らかにされている物質である(非特許文献1参照)。
具体的には、みかん属植物の果実、果皮、果皮油、種、葉部等の原料からエタノールやメタノール、クロロホルム等の有機溶剤を用いて加熱抽出する方法や、それらの抽出方法と合成樹脂による精製を組み合わせた方法である。
しかしながら、この方法で得られる組成物中には原料由来の油脂成分が多く含まれているためポリメトキシフラボン類の純度は低く、食品などに添加物として使用するには不向きである。また濃縮物そのものの極性が低いため、特に水溶性のものが求められる飲料などにはそのまま使用することが出来ない。
本発明の方法では、まず、超臨界流体と助溶媒によって得られた抽出物から濃縮操作に
よりエタノール水溶液を除去しオイル様の濃縮物とする。次いで、得られたオイル様の濃縮物に新たにエタノール水溶液を加えて液液抽出を行い、その後活性炭などの多孔質素材で精製する。そして最後にエタノール濃度及び固形濃度の調整を行う。
すなわち、本発明は、下記の工程:
(A)超臨界流体と助溶媒による抽出操作によって、みかん属植物から抽出液Aを得る工程;
(B)濃縮操作によって、前記抽出液Aから助溶媒を除去した濃縮物Bを得る工程;
(C)エタノール水溶液による抽出操作によって、前記濃縮物Bから抽出液Cを得る工程;
(D)前記抽出液C又は前記抽出液Cにエタノール水溶液を添加した希釈溶液を多孔質素材で精製してポリメトキシフラボン類を得る工程;
を含む、水溶性ポリメトキシフラボン類の製造方法である。
〔1〕ポリメトキシフラボン類およびその原材料
本発明で製造されるポリメトキシフラボン類は、下記一般式(I):
具体的には、ペンタメトキシフラボン(融点179℃)、ノビレチン(融点134℃)、テトラメトキシフラボン(融点128℃)、ヘプタメトキシフラボン(融点129〜131℃)、タンゲレチン(融点154℃)等が該当する。
果皮の形態は特に限定されるものではないが、例えば、果汁を搾汁した後の残渣を生の
ままもしくは乾燥したものを使用する方法が挙げられる。
本工程で使用する超臨界流体としては、例えば、その圧力が7.4〜60MPa、好ましくは15〜40MPa、その温度が32〜100℃、好ましくは35〜70℃の領域における超臨界状態の二酸化炭素が挙げられる。また使用する超臨界流体の使用量は原料のみかん属植物の1〜3倍容量、好ましくは1.7〜2.5倍容量であり、その抽出時間は、2〜6時間、好ましくは2.5〜4時間である。
本工程は、先の超臨界流体抽出によって得られた抽出物中の助溶媒、例えばエタノール水溶液を、エバポレーター等を用いた濃縮操作によって除去する工程である。
みかん属植物の果皮等から超臨界二酸化炭素流体と助溶媒であるエタノール水溶液で抽出物を得た場合、その抽出物は、水溶性ポリメトキシフラボン類が多量に存在する含水エタノール抽出液とみかん属植物の果皮由来のオイル抽出液の不均一な溶液となる。ここで抽出液中のエタノール水溶液のみを分離、精製することでポリメトキシフラボン類の液体製剤とすることも可能であるが、不要な非極性成分を多く含むため飲料などに添加する際、沈殿や濁りなどを生じてしまい安定な水溶性製剤であるとは言えない。
また、分離した含水エタノール抽出液は高アルコール濃度であるため、水を加えて低アルコール濃度に調整して不要成分を除去し精製する方法も考えられる。しかし、この方法による調整液は白濁化しているため、活性炭処理などで清澄化することは可能であるが、その際ポリメトキシフラボン類も多く失われるため有効な方法とは言えない(後記の比較例1を参照)。
また、濃縮後の助溶媒の濃度は、例えば助溶媒がエタノールである場合は、濃縮物中に0〜10(w/w)%が好ましく、特に好ましくは0〜5(w/w)%である。
上記濃縮物からポリメトキシフラボン類を効率よく精製抽出する簡便な方法としてエタノール水溶液を用いた液液抽出が挙げられる。
その際、エタノール濃度はなるべく低い方が不要な油溶成分を抽出することなくポリメトキシフラボン類を抽出することができるが、あまり低すぎるとポリメトキシフラボン類の抽出効率を損なうこととなる。そのため抽出に使用するエタノール水溶液の濃度は10〜80(w/w)%、好ましくは20〜40(w/w)%である。
使用量は濃縮物の2〜40倍、好ましくは5〜20倍量である。また抽出時の温度は、10〜90℃、好ましくは40〜80℃である。
上記液液抽出によって得られた抽出液は、そのまま次の工程Dに付することができるが、濃度調整の観点から、次工程Dの実施前に、エバポレーター等で、水及びエタノールを
除去して濃縮し、エタノール濃度調整を行うことが好ましい。調整後のエタノール濃度は、40〜90(w/w)%が好ましく、特に好ましくは50〜80(w/w)%である。
工程C1を省略する場合は、工程Cで得られた抽出液をそのまま、或いは工程Cの抽出液にエタノール水溶液を添加することにより希釈した希釈溶液を精製処理に付する。
工程C1を実施する場合は、工程C1で得られた溶液にエタノール水溶液を添加して希釈した後、当該希釈溶液を精製処理に付する。
多孔質素材による精製処理に付す際の溶液濃度は、ポリメトキシフラボン濃度が0.1〜20質量%、特に5質量%程度が好ましく、また、エタノール濃度が20〜100質量%、特に70質量%程度に調整しておくことが好適である。
必要に応じて上記の濃度の調整を行った後、当該溶液を多孔質素材によって精製し、より安定なポリメトキシフラボン類を得ることができる。
多孔質素材による精製は、通常行われている方法で行えば良く、例えば、カラムに充填された多孔質素材に前記抽出物を含む溶液を一定流量で接触させる方法や、該抽出物に多孔質素材を投入し、一定時間撹拌後に多孔質素材を分離する方法がある。その方法に格別の制約はなく、目的により選択することができる。
樹脂吸着剤は、一般に不溶性の三次元架橋構造ポリマーであってイオン交換基のような官能基を実質的に持たないものであり、例えば、その母体がスチレン系である「アンバーライト(登録商標)XAD−16」(オルガノ株式会社製)、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体系である「セパビーズSP70(商品名)」(三菱化学株式会社製)あるいは「ダイヤイオンHP20(商品名)」(三菱化学株式会社製)等を使用できるが、これらに限るものではない。
なお、抽出液に多孔質素材を投入した場合は、処理後にメッシュろ過、ろ紙ろ過又は珪藻土ろ過など一般的なろ過方法によって使用した多孔質素材を除去することが出来る。
得られたポリメトキシフラボン類は、高純度のペンタメトキシフラボン、ノビレチン、テトラメトキシフラボン、ヘプタメトキシフラボン及びタンゲレチンから成るので、そのままでも飲食品などに添加して使用できるが、必要に応じて、公知の製剤添加剤などと混合して、カプセル、顆粒状、錠剤、ペースト状又は飲料の形態に製剤化することができる。
、明日葉、ホップ、菊の花、ガジュツ、サフラン、ニンニク、発芽玄米、ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10、ローヤルゼリー、プロポリス、コラーゲン、植物ステロール、植物性油脂類(オリーブ油、大豆油など)、不飽和脂肪酸、ミツロウ、亜鉛酵母、セレン酵母等を配合してもよい。
(1)試料
シイクワシャーの果皮及び種を熱風機械乾燥し、ハンマーミルで粉砕したものを試料とした。
試料約250gに50(w/w)%エタノールを180g添加し、混合したものを抽出槽に仕込み、圧力25MPa、温度40℃の超臨界二酸化炭素を連続的に4時間供給して抽出を行った。
抽出槽から流出する抽出物含有超臨界二酸化炭素は、圧力4MPa、温度25℃に保った分離槽に移し、抽出物を二酸化炭素から分離し、100gの抽出物を得た。得られた抽出物はエタノール水溶液層とオイル層の2層に分離していた。
ロータリーエバポレーターで、上記で得られた抽出物から水及びアルコールを除去し、ほぼオイル層のみになるまで濃縮し、30gの濃縮物を得た。
上記オイル状の濃縮物に30(w/w)%エタノールを300g添加し40℃で2時間攪拌した後、全量を分液ロートに移した。分液ロート中で2時間静置して上下2層に分離させ、下層のエタノール溶液層約300gを抽出液として回収した。回収した抽出液は薄く黄色がかった白濁液の外観を呈していた。
上記で得られた抽出液は−15℃で一晩静置し、その後珪藻土ろ過を行った。得られたろ液は清澄化され黄色透明の溶液であった。
清澄化されたろ液をロータリーエバポレーターで濃縮し3gの濃縮液を得た。
得られた濃縮液に95(v/v)%エタノールを9.5g、蒸留水を1.5g添加し、ポリメトキシフラボン類を6.5(w/w)%含有する70(w/w)%エタノール溶液に調整した。
この調整液に活性炭を0.3g添加し、65℃で2時間攪拌して精製した後、珪藻土ろ過で活性炭を除去した。その後、水を加えてポリメトキシフラボン類の濃度が5.1(w/w)%になるように調整し、ポリメトキシフラボン類含有液を得た。
各種ポリメトキシフラボンの測定は、得られた水溶性ポリメトキシフラボン類を99.
5%エタノールで1000倍希釈し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用いて以下の条件で行った。
装置:アジレント・テクノロジー株式会社製「Agilent 1100 HPLC システム」
カラム:株式会社資生堂製「CAPCELL PAK C18MG」
カラム温度:40℃
溶離液:A.アセトニトリル
B.10%アセトニトリル水溶液(pH2.5 H3PO4)
グラジエント条件: 0分 → 25分
A.アセトニトリル 0% 100%
B.10%アセトニトリル水溶液 100% 0%
(pH2.5 H3PO4)
流速:1ml/分間
検出波長:325nm
表1の総ポリメトキシフラボン濃度はノビレチンとタンゲレチンの含有濃度の和を示す。また、総固形濃度は、蒸発皿に海砂と水溶性ポリメトキシフラボン類を入れて均一に混合させた後、105℃の恒温槽に2時間入れ、その前後の質量変化で固形量を求めることで算出した。ポリメトキシフラボン純度は、総ポリメトキシフラボン濃度を総固形濃度で除した値を百分率で示した。
比濁度はハック社製の比濁計「2100AN型ラボ用濁度計」(ホルマジン標準液)を使用して測定した。
目視評価は、ポリメトキシフラボン類含有液を添加する前の水(透明)を基準に評価した。
この結果からも分かるように、本発明で製造されたポリメトキシフラボン類は水溶性に優れる。
この結果からも分かるように、本発明方法で製造されたポリメトキシフラボン類は高い保存安定性を持つものであった。
工程Bの濃縮操作の有効性を確認するため、以下の対比実験を行った。
実施例1の「(2)超臨界流体による抽出」で得られた粗抽出物を濃縮せずにエタノール水溶液層のみを分液ロートにて分離し70gの溶液を得た。得られた溶液の組成は、エタノールが84(w/w)%、水が13(w/w)%、そして固形が3(w/w)%であった。
この溶液に95(v/v)%エタノールを33.1g、水を196.9g添加することで300gに調整した。この調整液は実施例1の「(4)液液抽出」で得られた抽出液と同様に薄く黄色がかった白濁色の外観を呈していた。
その後実施例1の「(5)ろ過」と同様に冷却後、珪藻土ろ過を行ったが溶液は清澄化されず白濁したままだった。
そこで濁りを除去するために活性炭を2g添加し、65℃で2時間攪拌した後、珪藻土ろ過により活性炭を除去した。こうして得られた溶液は黄色透明な外観を呈していた。
この比較例1で得られたポリメトキシフラボン類含有液と実施例1の「(5)ろ過」で得られたポリメトキシフラボン類含有液のそれぞれのポリメトキシフラボン類の濃度及び全固形の濃度、ポリメトキシフラボン類の純度、そしてポリメトキシフラボン濃度が約50ppmとなるように水に添加した時の濁りの有無(目視評価)について表4に示した。
工程Dの精製操作の有効性を確認するため、以下の対比実験を行った。
実施例1の「(5)ろ過」までと同様にポリメトキシフラボン類溶液を製造し、その後の「(6)濃度調整及び精製」において活性炭処理を行わずに5.1(w/w)%ポリメトキシフラボン類含有液を製造した。
この比較例2で製造したポリメトキシフラボン類含有液と、実施例1で製造したポリメトキシフラボン類含有液をそれぞれ常温で60日間保管し、経時的な沈殿発生の有無(目視評価)を観察して表5に示した。表中「0日」は製造直後のポリメトキシフラボン類含有液の状態を示したものである。
以下の表6の処方に従ってオレンジ飲料を調製した。
試飲したところ、異味異臭がなくオレンジの自然な風味が感じられた。
Claims (8)
- 下記の工程:
(A)超臨界流体と助溶媒による抽出操作によって、みかん属植物から抽出液Aを得る工程;
(B)濃縮操作によって、前記抽出液Aから助溶媒を除去した濃縮物Bを得る工程;
(C)エタノール水溶液による抽出操作によって、前記濃縮物Bから抽出液Cを得る工程;
(D)前記抽出液C又は前記抽出液Cにエタノール水溶液を添加した希釈溶液を多孔質素材で精製してポリメトキシフラボン類を得る工程;
を含む、水溶性ポリメトキシフラボン類の製造方法。 - 下記の工程:
(A)超臨界流体と助溶媒による抽出操作によって、みかん属植物から抽出液Aを得る工程;
(B)濃縮操作によって、前記抽出液Aから助溶媒を除去した濃縮物Bを得る工程;
(C)エタノール水溶液による抽出操作によって、前記濃縮物Bから抽出液Cを得る工程;
(C1)濃縮操作によって、抽出液Cからエタノール及び水を除去した濃縮物C1を得る工程;
(D)前記濃縮物C1にエタノール水溶液を添加して希釈溶液を得た後、当該希釈溶液を多孔質素材で精製してポリメトキシフラボン類を得る工程;
を含む、水溶性ポリメトキシフラボン類の製造方法。 - みかん属植物が、スイートオレンジ(Citrus sinensis)、サワーオレンジ(Citrus aurantium)、タンジェリン(Citrus reticlata Blanco var. tangerine)、マンダリン(Citrus reticlata Blanco var. mandarin)、シイクワシャー(Citrus depressa Hayata)から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。
- ポリメトキシフラボン類が、ペンタメトキシフラボン、ノビレチン、テトラメトキシフラボン、タンゲレチン、ヘプタメトキシフラボンからなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかの項に記載の製造方法。
- 工程(A)の助溶媒が、水、エタノール又はエタノール水溶液である請求項1〜4のいずれかの項に記載の製造方法。
- 工程(B)の濃縮物B中の助溶媒濃度が、0〜10(w/w)%である請求項1〜5のいずれかの項に記載の製造方法。
- 工程(C)の抽出に用いるエタノール水溶液のエタノール濃度が、10〜80(w/w)%である請求項1〜6のいずれかの項に記載の製造方法。
- 工程(D)の多孔質素材が、活性炭又は非イオン性多孔性樹脂吸着剤である請求項1〜7のいずれかの項に記載の製造方法。
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