JP5990066B2 - 空間用常温揮散性有害生物防除剤、有害生物防除方法、防カビ効力増強剤 - Google Patents
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Description
このような要望に応えるため、種々の技術が検討されてきたが、繊維製品や毛皮製品の保管に適した使用形態とするため、例えば、チモール、イソプロピルメチルフェノール等のフェノール系化合物(例えば特許文献2)やN−n−ブチルカルバミン酸3−ヨード−2−プロピニルエステル(例えば特許文献3)などの揮散性をもつ防カビ剤が用いられている。
本発明におけるジチオール系化合物は、従来、工業用水のスライムコントロール剤などとして用いられており、水溶液として化合物自体がカビと直接接触することで防カビ効果を奏することは知られていたが(例えば特開昭50−125025号公報、特開昭56−86106号公報)、本発明において、新たに特定の化合物と組み合わせて揮散させて使用することにより所期の空間において十分な防カビ効果を発揮させることが可能となり、新規な用途、使用方法が見出された。
(1)ピレスロイド系化合物、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル及びジカルボン酸ジアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種並びにジチオール系化合物を有効成分として含有することを特徴とする空間用常温揮散性有害生物防除剤。
(2)前記ジチオール系化合物が、下記一般式(I)で表される(1)の空間用常温揮散性有害生物防除剤。
(3)前記ジチオール系化合物が、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンであり、前記ピレスロイド系化合物が、エンペントリン、プロフルトリン、トランスフルトリン、メトフルトリンから選ばれる1種又は2種以上である(1)又は(2)の空間用常温揮散性有害生物防除剤。
(4)(1)〜(3)のいずれかの空間用常温揮散性有害生物防除剤を、空間において常温で揮散させることを特徴とする有害生物防除方法。
(5)ピレスロイド系化合物、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル及びジカルボン酸ジアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分としたことを特徴とするジチオール系化合物の防カビ効力増強剤。
さらに、本発明の防カビ効力増強剤によれば、ジチオール系化合物による防カビ効力を所期の空間内において発揮させその効果を増強することができる。また、増強剤として作用するピレスロイド系化合物、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル及びジカルボン酸ジアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種は、それ自体で防虫効果を有するため、防虫効果と防カビ効果とを同時に満足させることができる。
本発明の第一の態様である空間用常温揮散性有害生物防除剤は、ピレスロイド系化合物、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル及びジカルボン酸ジアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種並びにジチオール系化合物を有効成分として含有するものであって、両者を組み合わせて用いることでいずれの化合物も常温において良好に揮散して、ジチオール系化合物による防カビ効果と、ピレスロイド系化合物、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル及びジカルボン酸ジアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種による防虫効果とを効果的に発揮することで、カビや害虫を総合的に防除することができる。
本発明の空間用常温揮散性有害生物防除剤を揮散、拡散させうる手段としては、自然条件下に放置しておくことに限られず、送風機などを利用してもよい。
上述のように適用できることから、害虫やカビへの直接噴射、塗布、又は、加温や加圧などを行わなくても、簡便に有効成分を所期の空間内に揮散、拡散することができる。
R1、R2のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
R1、R2の置換基を有していてもよいフェニル基における置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基が挙げられる。フェニル基の置換基としてのハロゲン原子としては、上記R1、R2のハロゲン原子と同様のものが挙げられ、フェニル基の置換基としてのアルキル基としては、後述するR1、R2のアルキル基と同様のものが挙げられる。
R1、R2の置換基を有していてもよいアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれのアルキル基であってもよいが、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso-プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基等が挙げられる。アルキル基は置換されていてもよく、アルキル基の置換基としては、上述したハロゲン原子が挙げられる。
なかでも、R1、R2としては、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基又はフェニル基が好ましく、塩素原子同士の組み合わせ、臭素原子同士の組み合わせ、水素原子同士の組み合わせ、塩素原子と水素原子との組み合わせ、臭素原子と水素原子との組み合わせ、メチル基と水素原子との組み合わせ、又は塩素原子とフェニル基との組み合わせが好ましい。
ジチオール系化合物としては1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ピレスロイド系化合物としては、常温で揮散させた場合の殺虫効力に優れる点から常温揮散性ピレスロイド系化合物が好ましい。本発明において「常温揮散性ピレスロイド系化合物」とは、常温(5〜35℃)において有効に揮散しうるピレスロイド系化合物をいい、具体的には、25℃における蒸気圧が1.0×10−3Pa以上であるピレスロイド系化合物をいう。なかでも、常温での揮散性に優れ、人体における安全性及び殺虫効力に優れることから、エンペントリン、プロフルトリン、トランスフルトリン、メトフルトリンが好ましい。
本発明におけるピレスロイド系化合物としては1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
該分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が3〜10であることが好ましく、5〜10がより好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられ、2−エチルヘキシル基であることが好ましい。
防カビ剤・殺菌剤としては、例えば、フェノール系化合物、ベンズイミダゾール系化合物、ベンズチアゾール系化合物、スルファミド系化合物、イソチアゾリン系化合物、ピリジン系化合物、フタルイミド系化合物、トリアジン系化合物、ヨード系化合物;安息香酸、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、パラヒドロキシ安息香酸、これらの塩、酸、エステル等の防カビ剤が挙げられる。
これら溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも溶剤としては、ジチオール系化合物との相性がよく、保存安定性がよく、他の成分との混和しやすいことから、ポリエチレングリコールエーテルが好ましい。
本発明の第二の態様である有害生物防除方法は、上述した本発明の空間用常温揮散性有害生物防除剤を、常温において揮散させる方法である。本発明の空間用常温揮散性有害生物防除剤を揮散させることにより、アオカビ(Penicillium属)、クロカビ(Aspergillus属、Cladosporium属等)等のカビ類、並びに、ヒメカツオブシムシ、ヒメマルカツオブシムシ、コイガ、イガに代表される衣類害虫等の害虫による被害を防止することができる。具体的には、本発明の空間用常温揮散性有害生物防除剤を用いた有害生物防除方法によれば、カビ類の発芽及び菌糸成長の阻害、並びに、害虫の殺虫、殺卵、産卵阻害及び忌避をすることができる。
なかでも、タンス、クローゼット等の、衣類等の収納場所内に設置しやすく、使用時の揮散量を調節しやすいことから、空間用常温揮散性有害生物防除剤を担体に担持又は含浸させて該担持体から揮散させる方法が好ましい。また、製造適性、含浸量の点から、担体として紙、パルプ成型体又は不織布を用いることが好ましい。
本発明の第三の態様であるジチオール系化合物の防カビ効力増強剤は、ピレスロイド系化合物、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル及びジカルボン酸ジアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種
を有効成分として含有するものである。本発明の防カビ効力増強剤において、ジチオール系化合物は上述した第一の態様のジチオール系化合物と同様であり、ピレスロイド系化合物及び、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル及びジカルボン酸ジアルキルエステルは上述した第一の態様のピレスロイド系化合物と同様である。
また、本発明の防カビ効力増強剤は、ピレスロイド系化合物、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル及びジカルボン酸ジアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種以外の成分を含有していてもよく、該成分としては第一の態様において上述した、防虫剤・殺虫剤、防カビ剤・殺菌剤、溶剤、香料、着色料、共力剤、界面活性剤、分散剤、安定剤、酸化防止剤等が挙げられる。
本発明の防カビ効力増強剤が効力を増強するジチオール系化合物は、本発明の防カビ効力増強剤であるピレスロイド系化合物、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル及びジカルボン酸ジアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種と混和して用いることで、良好に揮散することができる。例えば、本発明の防カビ効力増強剤は、予めジチオール系防カビ剤と混和して防除剤とした後、共に揮散させて防カビ効力を発揮させることが好ましい。該防除剤を揮散させる方法は、上記第二の態様と同様にして行うことができる。
アオカビを用いて、本発明の空間用常温揮散性有害生物防除剤の常温での揮散による空間内の防カビ効果について検討した。
まず、PDA(ポテトデキストロース寒天)15mLを用いて、φ70mmの滅菌シャーレ内にPDA平板培地を作製した。その後、PDA培地上にアオカビ(Penicillium citrinum)の胞子懸濁液を10μL接種した。
次に、有蓋有底筒状のプラスチック製カップ(約φ130mm、高さ100mm、容量860ml)を用意し、カップの底部にPDA平板培地含有シャーレを設置し、空間用常温揮散性有害生物防除剤の揮散による効果を確認する為、カップ内の天井部(蓋の内側)に検体を貼り付けた。なお、PDA平板培地と検体とが気相で接する様にシャーレの蓋を外した。検体は、表1〜8中に示す担体に、表1〜8中に示す成分を含有する薬剤組成物を含浸させたものを用いた。担体全体に薬剤を均一に含浸させるために、担体への薬剤組成物の含浸には表1〜8中の10倍量もしくは100倍量を秤量し、アセトンを用いてそれぞれ5ml、50mlとした希釈溶液を用いた。それぞれの希釈溶液500μlを担体に含浸させた後に、20〜30分間風乾し、アセトンを揮散させたものを検体とした。表1の担体がパルプ粒の場合は、φ約3〜5mmの粒状のパルプ粒1.3gに、表1の薬剤組成物を含浸させ、不織布の袋に収納して天井部に貼り付けた。表2〜8の担体がろ紙の場合は、φ70mmの円形のろ紙に表2〜8の薬剤組成物を含浸させ、そのまま天井部に張り付けた。
このカップを25℃で48時間静置し、アオカビを培養し、PDA平板培地上のアオカビのコロニー数を数え、コントロール(500μlのアセトンを含浸させた後に風乾させ、アセトンを揮散させたもの)に対する菌体数抑制率を算出した。また、コロニーの直径を複数測定して、平均値を求めた。結果を表1〜5に示す。
表1〜8中、ジチオール系化合物である4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンは固体のため、薬剤組成物の調製には、ポリエチレングリコールアルキルエーテルに溶解させた4%溶液を用いた。表中の4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンの質量は、担体中の該4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オン自体の質量である。
さらに、上記の結果から、ピレスロイド系化合物、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル及びジカルボン酸ジアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有する本発明の防カビ効力増強剤は、効果的にジチオール系化合物の防カビ効力を増強することが確認できた。
実施例1と同様の方法で、アオカビを用いて、4,5−ジクロロ−2−オクチル−4−イソチアゾロン−3−オンの空間用常温揮散性有害生物防除剤の常温での揮散による空間内の防カビ効果について検討した。その結果を表9に示す。4,5−ジクロロ−2−オクチル−4−イソチアゾロン−3−オンは固体のため、薬剤組成物の調製にはポリエチレングリコールアルキルエーテルに溶解させた5%溶液を用いた。表中の4,5−ジクロロ−2−オクチル−4−イソチアゾロン−3−オンの質量は、担体中の該4,5−ジクロロ−2−オクチル−4−イソチアゾロン−3−オン自体の質量である。
アオカビを用いて、本発明の空間用常温揮散性有害生物防除剤及び他の防カビ剤の防カビ効果について検討した。
表10に示す薬剤組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、コロニー数、コロニー数抑制率、コロニー直径を測定した。なお、担体は実施例1と同様のパルプ粒を用いた。ただし、市販品Aは、市販の引き出し用の防カビ防虫剤であり、製品そのものを使用した。結果を表10に示す。
なお、表10中の略号や商品名はそれぞれ以下のものを示し、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンは前記同様である。
「ビオゾール」:商品名、大阪化成株式会社製、有効成分:3−メチル−4−イソプロピルフェノール。
「ビオサイト800S」:商品名、株式会社タイショーテクノス製、有効成分:有機窒素硫黄系化合物、有機窒素硫黄ハロゲン系化合物。
「IPBC」:3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメイト。
「市販品A」:エンペントリン、スルファミド系防カビ剤、フェノキシエタノールを有効成分として含む市販の防カビ防虫剤製品。
イガ幼虫を用いて、本発明の空間用常温揮散性有害生物防除剤の防虫効果について検討した。
まず、約4cm×4cmのナイロン製のメッシュ袋に、2cm×2cmの羊毛布片とイガ幼虫(約30日齢のイガ幼虫10頭)を入れて、上記メッシュ袋をイガ幼虫が逃げないように閉じた。
次に、有蓋有底筒状のプラスチック製カップ(約φ130mm、高さ100mm、容量860ml)を用意し、カップの底部に上記の羊毛布片とイガ幼虫を入れたメッシュ袋を設置し、カップ内の天井部(蓋の内側)に検体を貼り付けた。検体は、φ70mmの円形のろ紙に、表11に示す成分を含有する薬剤組成物を含浸させ、そのまま天井部に張り付けた。
このカップを25℃の室内で保管し、48時間にイガ幼虫の致死数を数え、供試虫数(10頭)を基準に致死率を算出した。結果を表11に示す。
表11中の4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンは前記同様である。
Claims (3)
- 所期の空間において常温で揮散させて用いる有害生物防除剤であって、
エンペントリン、プロフルトリン、トランスフルトリン、ペルメトリン、ビフェントリン、エトフェンプロックス、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル及びアジピン酸ジブチルからなる群から選ばれる少なくとも1種、並びに4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンを有効成分として含有することを特徴とする有害生物防除剤。 - 請求項1に記載の有害生物防除剤を、空間において常温で揮散させることを特徴とする有害生物防除方法。
- 所期の空間において常温で揮散させて用いる4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンを含有する有害生物防除剤の前記4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンの防カビ効力増強剤であって、
エンペントリン、プロフルトリン、トランスフルトリン、ペルメトリン、ビフェントリン、エトフェンプロックス、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル及びアジピン酸ジブチルからなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分としたことを特徴とする4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンの防カビ効力増強剤。
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