JP5988030B2 - 大径Ti3SiC2層状粒子を含む粉体、大径Ti3Si1−xC2ナノシート及びそれらの製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、Ti3SiC2粉末、すなわち、Ti3SiC2層状粒子からナノシートを作製できる。Ti3SiC2層状粒子は、Si層がTi6C八面体に挟まれてなるTi3SiC2結晶構造で構成されたナノオーダーの厚さを有する板状粒子が積層されてなり、これを化学処理かつ解砕することにより、ナノシートを作製できる。
特許文献2には、1000℃〜1800℃に加熱して、M3X1Z2相を有する材料を形成する方法が記載されている。これに基づき、Kanthal社はTi3SiC2セラミックス(粉末と焼結体:商品名Maxthal312)を商品化している。
本発明は、以下の構成を有する。
(2)不純物として含まれるTiC濃度が1重量%以下であることを特徴とする(1)に記載の大径Ti3SiC2層状粒子を含む粉体。
(5)(1)又は(2)に記載の大径Ti3SiC2層状粒子を含む粉体をアルカリ水溶液に浸漬してから、超音波照射することを特徴とする大径Ti3Si1−xC2ナノシートの製造方法
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態である大径Ti3SiC2層状粒子を含む粉体、大径Ti3Si1−xC2ナノシート及びそれらの製造方法について説明する。
図1は、本発明の実施形態である大径Ti3SiC2層状粒子を含む粉体の一例を示す拡大模式図である。
図1に示すように、大径Ti3SiC2層状粒子を含む粉体1は、様々な形状、大きさのTi3SiC2層状粒子を含むが、平面視最大径が150nm超の大径Ti3SiC2層状粒子を含み、粒度分布における累積体積が10%となる粒子径D10%が1.6μm以上、かつ累積体積が50%となる粒子径D50%が2.8μm以上かつ累積体積が90%となる粒子径D90%が5.0μm以上とされている。
このTi3SiC2層状粒子で構成された粉末は、固結凝集がほとんどなく、容易に大径Ti3SiC2層状粒子に解砕できる。さらに、微細層状粒子の含有率を少なくすることにより、安定して、本発明の一つである大径Ti3Si1−xC2ナノシートを製造できる。固結凝集は、それぞれの粒子表面の一部が焼結によって強く結合している状態を示し、固結凝集が強いと容易にそれぞれの層状粒子に解砕できない。
図2(a)に示すように、本発明の実施形態である大径Ti3SiC2層状粒子10は、平面視略多角形状の層状粒子である。平面視略多角形状に限られるものではなく、平面視楕円形状等であってもよい。長径dx、短径dy、厚さdzとされている。
図3は、図2のB部拡大図である。
図3に示すように、板状部21は、Ti3SiC2単一相からなり、Si層がTi6C八面体に挟まれてなるTi3SiC2結晶構造を有している。
不純物として含まれるTiC濃度が1重量%以下であることが好ましい。
図4は、本発明の実施形態である大径Ti3SiC2層状粒子を含む粉体の製造方法の一例を示すフローチャート図である。
図4に示すように、本発明の実施形態である大径Ti3SiC2層状粒子を含む粉体の製造方法は、Ti3SiC2無加圧加熱体粉末作製工程S1と、大径Ti3SiC2層状粒子を含む粉体製造工程S2と、を有する。
この工程では、まず、平均粒子径30μm以上50μm以下のTi粒子と、平均粒子径5μm以上20μm以下のSi粒子、平均粒子径1μm以上5μm以下のTiC粒子、平均粒子径30μm以上50μm以下のAl粒子を、モル比がTiC:Ti:Si:Al=2:2:1.2:0.3となるように混合する。
なお、Al粒子は酸素ゲッターであり、製造工程において、自らが酸化し、Ti3SiC2の酸化を防止して、不純物の発生を抑制する。
解砕又は粉砕により、平均粒子径10μm未満のTi3SiC2無加圧加熱体粉末を作製する。
一方、平均粒子径1.0μm未満では、大径化困難となる。また、平均粒子径3.0μm超では、大径化用混合粉末の均一混合が困難となる。
この工程では、平均粒子径が30μm以上50μm以下のTi粒子と、平均粒子径が5μm以上20μm以下のSi粒子と、平均粒子径が1.0μm以上5.0μm以下のTiC粒子を、モル比がTiC:Ti:Si=2:2:1.2となるように混合した大径化用混合粉末を、前記Ti3SiC2無加圧加熱体粉末に対して10重量部以上50重量部以下の範囲で混合後、不活性ガス雰囲気中、1300℃以上1400℃以下の温度範囲で無加圧加熱してから、解砕又は粉砕して、大径Ti3SiC2層状粒子を含む粉体を製造する。
図5は、本発明の実施形態である大径Ti3Si1−xC2ナノシートの一例を示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は(a)のD−D’線における断面図である。
図5(a)に示すように、本発明の実施形態である大径Ti3Si1−xC2ナノシート30は、平面視略多角形状のシート状材料である。平面視略多角形状に限られるものではなく、平面視楕円形状等であってもよい。長径dx、短径dy、厚さdzとされている。
平面視最大径dxが150nm超で、厚さdzが150nm以下である。
均一なナノシートとするためには、平面視最大径dxは、150nm超5μm以下とし、厚さdzは、50nm以上100nm以下とすることがより好ましい。
図6に示すように、大径Ti3Si1−xC2ナノシート30は、化学式Ti3Si1−xC2(0<x<1)単一相からなり、Si層がTi6C八面体に挟まれてなるTi3SiC2結晶構造を有している。Si欠陥を有している。
不純物として含まれるTiC濃度が1重量%以下であることが好ましい。
本発明の実施形態である大径Ti3Si1−xC2ナノシートの製造方法は、アルカリ水溶液浸漬工程と、超音波照射工程と、を有する。
この工程では、本発明の実施形態である大径Ti3SiC2層状粒子を含む粉体1をアルカリ水溶液に浸漬する。
アルカリ水溶液としては、例えば、5モル%水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を用いる。水酸化ナトリウムにより、Ti−Si結合の弱い部分が切断され、大径Ti3SiC2層状粒子のSi層からSiイオンが溶出され、Si層に欠陥が生じる。
浸漬後、例えば、6時間撹拌してから、12時間放置する。
攪拌時間、放置時間はこれに限られるものではないが、一定の大きさのナノシートを剥離させるためには、6時間以上撹拌することが好ましく、10時間以上攪拌することがより好ましい。また、12時間以上放置することが好ましく、20時間以上放置することがより好ましい。
放置後、蒸留水でpH6〜8の範囲になるまで洗浄する。
この工程では、Ti−Si結合の弱い部分が切断された後、超音波照射を行う。
超音波照射時間は、層分離を十分行うためには、1時間以上とすることが好ましく、製造工程を短時間にして、層分離をより十分行うためには、3時間以上10時間以下とすることがより好ましい。
例えば、超音波照射を45分、蒸留水で洗浄、を所定の累積照射時間に到達するまで繰り返す。
剥離はすべてのSi層で生じる可能性があるが、層状分子を構成する板状部ごとに、まず、剥離が生ずると考えられる。板状部それぞれが、ナノシートを形成する。例えば、平面視最大径dxが150nm超で、厚さdzが150nm以下の板状部21が、大径Ti3Si1−xC2ナノシート30とされる。
まず、TiC(3μm、高純度化学)、Ti(35μm、高純度化学)、Si(5μm、No.600、山石金属)、Al(30μm、高純度化学)の混合粉末(TiC:Ti:Si:Al=2:1:1.2:0.3、モル比)をAr気流中、1200℃で焼成し、Al2O3乳鉢で解砕して、混合粉末(TSC粉末)を得た。
XRDの結果から、得られた粉末は、Ti3SiC2単一相であることを確認した。
図7は、実施例1の第1の粉末(大径Ti3SiC2層状粒子)の電子顕微鏡写真(二次電子像)である。層状に著しく成長した大径Ti3SiC2層状粒子を観察できた。
次に、前記粒子の半径Rを用いて、V=(4πR3)/3から、500個の粒子それぞれの体積(容量)Vnを(n=1〜500、自然数)算出した。
次に、500個の粒子の体積の合計VSUMを算出した。
次に、500個の粒子それぞれについて、(Vn/VSUM)(%)を算出した。
次に、xとして粒子径R、yとして累積体積分布(Vn/VSUM)(%)(0〜100%)として、xyプロットして、容量の累積分布曲線を作成した。
次に、容量の累積分布曲線から、累積体積分布(Vn/VSUM)(%)=90%のときの粒子径を90%累積径(D90%)とし、累積体積分布(Vn/VSUM)(%)=50%のときの粒子径を50%累積径(D50%)とし、累積体積分布(Vn/VSUM)(%)=10%のときの粒子径を10%累積径(D10%)として算出した。
その後、乾燥して、実施例1の第2の粉末(大径Ti3Si1−xC2ナノシートを含む粉体)が得られた。
図8は、実施例1の第2の粉末(大径Ti3Si1−xC2ナノシートを含む粉体)の電子顕微鏡写真である。実施例1の粉末はナノシートの凝集物であった。厚さ約100〜130nmのナノシートを確認できた。
図9は、実施例1の第2の粉末(大径Ti3Si1−xC2ナノシートを含む粉体)の透過型電子顕微鏡写真である。層状に著しく成長し、平面視径が1μm以上の大きさのナノシートを観測できている。
焼成温度を1350℃とした他は実施例1と同様にして、実施例2の第1の粉末(大径Ti3SiC2層状粒子を含む粉体)を得た。
実施例1と同様にして、容量の累積分布曲線を作成し、90%累積径(D90%)、50%累積径(D50%)、10%累積径(D10%)を算出した。
焼成温度を1300℃とした他は実施例1と同様にして、実施例3の第1の粉末(大径Ti3SiC2層状粒子を含む粉体)を得た。
実施例1と同様にして、90%累積径(D90%)、50%累積径(D50%)、10%累積径(D10%)を算出した。結果を表1に示した。
60重量部の混合粉末(TSC粉末)と40重量部のSP粉末を用い、焼成温度を1300℃とした他は実施例1と同様にして、実施例4の第1の粉末(大径Ti3SiC2層状粒子を含む粉体)を得た。
XRDで、得られた粉末は、Ti3SiC2単一相であることを確認した。
図12は、実施例4の第1の粉末(大径Ti3SiC2層状粒子を含む粉体)の電子顕微鏡写真(二次電子像)である。層状に成長した粒子であることを確認した。
実施例1と同様にして、90%累積径(D90%)、50%累積径(D50%)、10%累積径(D10%)を算出した。
70重量部の混合粉末(TSC粉末)と30重量部のSP粉末を用い、焼成温度を1300℃とした他は実施例1と同様にして、実施例5の第1の粉末(大径Ti3SiC2層状粒子を含む粉体)を得た。
XRDで、得られた粉末は、Ti3SiC2単一相であることを確認した。
実施例1と同様にして、90%累積径(D90%)、50%累積径(D50%)、10%累積径(D10%)を算出した。
90重量部の混合粉末(TSC粉末)と10重量部のSP粉末を用い、焼成温度を1300℃とした他は実施例1と同様にして、実施例6の第1の粉末(大径Ti3SiC2層状粒子を含む粉体)を得た。
XRDで、得られた粉末は、Ti3SiC2単一相であることを確認した。
実施例1と同様にして、90%累積径(D90%)、50%累積径(D50%)、10%累積径(D10%)を算出した。
TiC(3μm、高純度化学)、Ti(35μm、高純度化学)、Si(5μm、山石金属)、Al(38μm、高純度化学)の混合粉末(TiC:Ti:Si:Al=2:1:1.2:0.3、モル比)をAr気流中、1200℃で焼成し、Al2O3乳鉢で解砕して、比較例1の第1の粉末(Ti3SiC2粉末)を得た。
これは、公知の方法で作製した粉末である。
図13は、比較例1の第1の粉末の電子顕微鏡写真(二次電子像)である。
実施例1と同様にして、90%累積径(D90%)、50%累積径(D50%)、10%累積径(D10%)を算出した。
次に、超音波照射を45分行い、蒸留水で洗浄することをpH7になるまで繰り返した。
その後、乾燥して、比較例1の第2の粉末が得られた。
乾燥後の粉末を用いて、透過型電子顕微鏡観察を行った。
図14は、比較例1の第2の粉末の透過型電子顕微鏡写真である。
また、得られた粉末は、電子線回折分析からTiCであることを確認した。
比較例1における焼成温度を1300℃とした以外は、比較例1と同様に作製した。これは公知の方法で作製した粉末である。比較例1で得た粉末に比べて、わずかに大径化しているが、十分ではない。さらに、比較例1で得た粉末に比べて、固結凝集が進行し、解砕が比較的困難であった。
比較例1における焼成温度を1400℃とした以外は、比較例1と同様に作製した。これは公知の方法で作製した粉末である。比較例1で得た粉末に比べて、わずかに大径化しているが、十分ではない。さらに、比較例1で得た粉末に比べて、固結凝集が進行し、解砕が困難であった。
焼成温度を1200℃とした他は実施例1と同様にして、比較例4の第1の粉末を得た。
XRDで、得られた粉末は、Ti3SiC2単一相であることを確認した。
実施例1と同様にして、90%累積径(D90%)、50%累積径(D50%)、10%累積径(D10%)を算出した。
95重量部の混合粉末(TSC粉末)と5重量部のSP粉末を用い、焼成温度を1300℃とした他は実施例1と同様にして、比較例5の第1の粉末(大径Ti3SiC2層状粒子を含む粉体)を得た。
XRDで、得られた粉末は、Ti3SiC2単一相であることを確認した。
実施例1と同様にして、90%累積径(D90%)、50%累積径(D50%)、10%累積径(D10%)を算出した。
Claims (4)
- 平均粒子径30μm以上50μm以下のTi粒子と、平均粒子径5μm以上20μm以下のSi粒子と、平均粒子径1μm以上5μm以下のTiC粒子と、平均粒子径30μm以上50μm以下のAl粒子を、モル比がTiC:Ti:Si:Al=2:2:1.2:0.3となるように混合後、不活性ガス雰囲気中、1100℃以上1300℃以下の温度範囲で無加圧加熱してから、解砕又は粉砕して、Ti3SiC2無加圧加熱体粉末を作製する工程と、
平均粒子径が30μm以上50μm以下のTi粒子と、平均粒子径が5μm以上20μm以下のSi粒子と、平均粒子径が1μm以上5μm以下のTiC粒子を、モル比がTiC:Ti:Si=2:2:1.2となるように混合した大径化用混合粉末を、前記Ti3SiC2無加圧加熱体粉末に対して10重量部以上50重量部以下の範囲で混合後、不活性ガス雰囲気中、1300℃以上1400℃以下の温度範囲で無加圧加熱してから、解砕又は粉砕して、大径Ti3SiC2層状粒子を含む粉体を製造する工程と、を有することを特徴とする大径Ti3SiC2層状粒子を含む粉体の製造方法。 - 化学式Ti3Si1−xC2(0<x<1)で表される材料からなり、
平面視最大径が150nm超で、厚さが150nm以下であることを特徴とする大径Ti3Si1−xC2ナノシート。 - 大径Ti3SiC2層状粒子を含む粉体であって、粒度分布における累積体積が10%となる粒子径D10%が1.6μm以上、かつ累積体積が50%となる粒子径D50%が2.8μm以上かつ累積体積が90%となる粒子径D90%が5.0μm以上である粉体をアルカリ水溶液に浸漬する工程と、
前記粉体を浸漬したアルカリ水溶液に超音波照射する工程と
を包含し、
前記アルカリ水溶液に浸漬する工程は、5時間以上24時間以下前記粉体を前記アルカリ水溶液に浸漬し、次いで、6時間以上撹拌し、12時間以上放置した後、前記粉体を浸漬したアルカリ水溶液のpHを6〜8の範囲に調整し、
前記超音波照射する工程は、1時間以上10時間以下の累積照射時間となるよう前記粉体を浸漬したアルカリ水溶液に超音波照射することを特徴とする大径Ti3Si1−xC2ナノシートの製造方法。 - 前記アルカリ水溶液は、水酸化ナトリウム水溶液である、請求項3に記載の方法。
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