JP5987277B2 - 液体噴射装置用制御装置及び液体噴射装置 - Google Patents

液体噴射装置用制御装置及び液体噴射装置 Download PDF

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Description

本発明は、噴射口から液体を噴射する技術に関する。
近年では、手術の際に水や生理食塩水などの液体を加圧して術部に噴きつけることにより、液体の圧力によって生物組織を切除する手術手法が開発されている。こうした手術に用いる液体噴射装置では、ノズルの先端に設けられた噴射口から液体が噴射されるようになっており、操作者はノズルの噴射口を術部に向けて液体を噴射させることで、術部の生物組織を切除することが可能である。
また、噴射口から噴射した液体が術部の周囲に溜まると、例えば術部が見え難くなって生物組織を所望の位置で切除することが困難となったり、あるいは噴射した液体の勢いが術部に溜まった液体や切除によって術部に溜まる血液などによって弱められて、切除力が弱められたりする。さらには、切除された生物組織(切除組織)が噴射した液体によって飛散し、例えば切除された悪性腫瘍が術部以外の他の生物組織に到達し悪影響を及ぼすなどの弊害が生じ得る。そこで、噴射口の近傍に吸引ポンプに接続した吸引口を設けておき、噴射口を術部に近づけた際に術部に溜まった液体や切除組織や血液を吸引口から吸引することで、このような弊害が生じることを回避する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平6−90957号公報
しかし、提案されている技術では、術部の状況によっては、術部の周囲に溜まった液体や血液、あるいは切除組織とともに、術部の切除されていない生物組織を吸いこむことで、生物組織を傷つけてしまう虞がある。かといって、生物組織の損傷を避けるべく吸引量を抑えたのでは、噴射口から噴射した液体や切除組織を十分に吸引することができず、上述した弊害が生じ得る。
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、噴射口から噴射した液体や術部に溜まった血液、及び切除された生物組織を吸引するに際して、必要な吸引量を確保しながら、切除されていない生物組織を吸引して損傷させることを低減可能な技術の提供を目的とする。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]本適用例に係る液体噴射装置は、噴射口から生物組織に向けて液体を噴射することで、該生物組織の切除を行う液体噴射装置であって、前記液体を前記噴射口から噴射する液体噴射手段と、吸引負圧を周期的に変動させて、前記噴射された液体及び前記切除された生物組織の少なくともいずれかを吸引する吸引手段と、を備え、前記吸引手段は、前記噴射が開始する一定時間の経過後に前記吸引を開始し、前記噴射が継続している間は第1の吸引負圧で前記吸引を維持し、前記噴射が終了してから一定時間の経過後に第2の吸引負圧で所定の時間前記吸引することを特徴とする。
本適用例によれば、噴射口から噴射される液体の圧力によって術部の生物組織を切除する。また、こうして噴射されることで術部に溜まった液体や、切除された生物組織は、吸引手段によって吸引される。そして、吸引手段は、術部の液体を吸引するに際して、吸引負圧を周期的に変動させることができるようになっている。さらに、噴射後に第1の吸引負圧(例えば、ゆっくりと吸引を上げ、弱いレベルを維持)、噴射停止に第2の吸引負圧(例えば、徐々に吸引負圧を上げ、一定時間後に吸引を停止させる)で制御できるようになっている。
尚、本適用例において、吸引負圧を「周期的に変動させる」とは、周期的に高い負圧と低い負圧とが繰り返される態様によって吸引負圧を変動させることを意味している。したがって、吸引負圧を「周期的に変動させる」態様としては、単に高い負圧値と低い負圧値とを交互に繰り返す態様に限らず、高い負圧値と低い負圧値との間で、負圧値が連続的に変動する態様も含まれる。
吸引負圧を周期的に変動させることとすれば、吸引負圧の値や、吸引負圧の変動周期などの吸引条件を変更することができるので、たとえ、ある吸引条件では液体と一緒に生物組織を吸い込みそうになったとしても、吸引条件を変更することで、必要な吸引量を確保しながらも生物組織を吸い込む恐れのない適切な条件で吸引することが可能となる。特に、液体が噴射される術部の状況は一様ではなく、最適な吸引条件は様々に異なっているものと考えられる。したがって、吸引負圧を周期的に変動させながら吸引することで、吸引条件の選択自由度を大幅に増やすことが可能となり、その結果、術部に応じた最適な吸引条件を選択することが可能となる。
また、術部の液体を吸引するにあたり、液体を吸引するか、あるいは吸引を停止するかを、周期的に繰り返す制御を行うだけでよいので、複数の吸引負圧によって負圧を変動させる場合と比較して、吸引負圧を変動させる制御や機構を簡単にすることができる。また、生物組織が吸い込まれ易い状況では、吸引負圧を弱めるだけでは生物組織の損傷を十分に回避できない場合がある。例えば、術部が複雑に入り組んで生物組織に吸引負圧が作用しやすい状況では、吸引負圧を弱めただけでは生物組織の吸い込みを回避できない場合もおこり得る。このような状況では、吸引状態と、吸引しない状態とを繰り返しながら液体を吸引することで、生物組織の吸い込みを回避することが可能となる。
さらに、一連の切除処理の間を適切に確保することで、吐射開始の前後において、不用意な吸引負圧が働かないため、狙い通りの切除を実現できる。また、切除作業の直後に適度な間を置いて自動的に吸引モードとなるため、余分な液体の吸引作業を効率的に行うことができ、切除作業の時間短縮を実現できる。
吸引は、液体が噴射された少し後に吸引を開始することとする。具体的には、液体が噴射され、生体組織が破断された後に吸引を開始することとする。液体噴射と同時あるいは噴射前に吸引を開始した場合は、生体組織が吸引手段に吸い寄せられ、変形するため、所望の部位を切除することができなくなる虞があるためである。また、吸引は、液体が噴射された少し前に吸引を終了することとする。液体噴射と同時あるいは噴射後に吸引を終了した場合は、生体組織が吸引手段に吸い寄せられ、変形するため、所望の部位を切除することができなくなる虞があるためである。
[適用例2]上記適用例に記載の液体噴射装置において、前記第1の吸引負圧は、前記第2の吸引負圧よりも小さく、前記第1の吸引負圧は、前記噴射された液体及び前記切除された生物組織の少なくともいずれかを前記吸引することができる最小の吸引負圧であり、前記第2の吸引負圧は、前記噴射された液体及び前記切除された生物組織の少なくともいずれかを前記吸引する所定の吸引負圧であることを特徴とする。
本適用例によれば、噴射後にゆっくりと吸引を上げ、弱いレベルを維持、噴射停止に徐々に吸引負圧を上げ、一定時間後に吸引を停止させることができる。
[適用例3]上記適用例に記載の液体噴射装置において、前記吸引手段の吸引負圧は、前記吸引の開始から前記第1の吸引負圧の前記吸引に向かって徐々に大きくなることを特徴とする。
本適用例によれば、噴射後にゆっくりと吸引を上げ、弱いレベルを維持することができる。
[適用例4]本適用例に係る液体噴射方法は、噴射口から生物組織に向けて液体を噴射することで、該生物組織の切除を行う液体噴射方法であって、前記液体を前記噴射口から噴射する噴射工程と、吸引負圧を周期的に変動させて、前記噴射された液体及び前記切除された生物組織の少なくともいずれかを吸引する吸引工程と、を備え、前記吸引工程は、前記噴射が開始する一定時間の経過後に前記吸引を開始し、前記噴射が継続している間は第1の吸引負圧で前記吸引を維持し、前記噴射が終了してから一定時間の経過後に第2の吸引負圧で所定の時間をかけて前記吸引することを特徴とする。
本適用例によれば、噴射口から噴射される液体の圧力によって術部の生物組織を切除する。また、こうして噴射されることで術部に溜まった液体や、切除された生物組織は、吸引工程によって吸引される。そして、吸引工程は、術部の液体を吸引するに際して、吸引負圧を周期的に変動させることができるようになっている。さらに、噴射後に第1の吸引負圧(例えば、ゆっくりと吸引を上げ、弱いレベルを維持)、噴射停止に第2の吸引負圧(例えば、徐々に吸引負圧を上げ、一定時間後に吸引を停止させる)で制御できるようになっている。
また、一連の切除処理の間を適切に確保することで、吐射開始の前後において、不用意な吸引負圧が働かないため、狙い通りの切除を実現できる。また、切除作業の直後に適度な間を置いて自動的に吸引モードとなるため、余分な液体の吸引作業を効率的に行うことができ、切除作業の時間短縮を実現できる。
本実施例の液体噴射装置の大まかな構成を示した説明図。 本実施例の液体噴射装置に設けられた噴射機構の詳細な構成を示した説明図。 本実施例の液体噴射装置が液体等の吸引を行うための構成を示した説明図。 本実施例の吸引制御部が実行する吸引機構駆動処理を示したフローチャート。 本実施例の吸引機構駆動処理を行った結果、吸引口に負圧が付与される様子を示した説明図。 本実施例の吸引機構駆動処理を行った結果、吸引口に負圧が付与される様子を示した説明図。 本実施例の吸引機構駆動処理を行った結果、吸引口に負圧が付与される様子を示した説明図。 本実施例の液体噴射装置を用いて術部の液体を吸引する際に、生物組織の損傷が抑えられる様子を例示した説明図。 本変形例の液体噴射装置の大まかな構成を示した説明図。
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.装置構成
B.本実施例の吸引機構駆動処理
C.変形例
A.装置構成
図1は、本実施例の液体噴射装置の大まかな構成を示した説明図である。図示されているように、本実施例の液体噴射装置10は、生理食塩水や薬液などの液体が貯められた液体タンク140や、液体タンク140から液体を吸い上げる吸上ポンプ130や、吸上ポンプ130が吸い上げた液体を加圧して流路管120に送り出す噴射機構(液体噴射手段)100や、液体噴射装置10によって噴射された液体などを吸引するための吸引機構(吸引手段)150や、液体噴射装置10の動作を制御する制御部160などから構成されている。
噴射機構100によって加圧された液体は、流路管120を通って流路管120の先端に設けられた噴射口122から生体の術部へと噴射され、液体の圧力によって術部の生物組織を切除することができるようになっている。また、噴射した液体等をそのままにしておくと切除や術部の視認性に支障をきたすので、噴射口122の近傍には図示しない吸引口が設けられている。吸引口は上述した吸引機構150に接続されており、吸引機構150を駆動して吸引口に負圧を作用させることで、噴射口122から術部に噴射された液体や、生物組織を切除した際に出た血液、切除された生物組織(切除組織)などを吸引口から吸引することが可能となっている。
液体噴射装置10が液体を噴射する動作、あるいは液体を吸引する動作は、制御部160によって制御されている。図1に示されているように、本実施例の制御部160には、液体噴射装置10が液体を噴射する動作を制御する噴射制御部161と、液体噴射装置10が液体を吸引する動作を制御する吸引制御部165とが設けられており、噴射制御部161は吸上ポンプ130と噴射機構100とに接続され、吸引制御部165は、吸引機構150に接続されている。
噴射制御部161は、吸上ポンプ130を制御して噴射機構100に供給する液体の量を変化させるとともに、噴射機構100を制御して噴射機構100が液体を噴射する条件を変化させている。また、噴射機構100は、液体を間欠的に(あるいは強弱をつけて)噴射する。
また、吸引機構150は、吸引口から液体を間欠的に(あるいは強弱をつけて)吸引しており、吸引制御部165は、吸引時の負圧の大きさや、吸引の周期や、吸引を継続する時間(吸引時間)を制御している。
吸引機構150は、噴射が開始する一定時間の経過後に吸引を開始する。吸引機構150は、噴射が継続している間は第1の吸引負圧で吸引を維持する。吸引機構150は、噴射が終了してから一定時間の経過後に第2の吸引負圧で所定の時間吸引する。
第1の吸引負圧は、第2の吸引負圧よりも小さい。第1の吸引負圧は、噴射された液体及び切除された生物組織の少なくともいずれかを吸引することができる最小の吸引負圧である。第2の吸引負圧は、噴射された液体及び切除された生物組織を吸引する所定の吸引負圧である。
吸引機構150の吸引負圧は、吸引の開始から第1の吸引負圧の吸引に向かって徐々に大きくなる。
また、以上のような本実施例の液体噴射装置10では、高い圧力で液体を噴射して大きな切除力が得られるように、次のような噴射機構100を採用している。
図2は、本実施例の液体噴射装置10に設けられた噴射機構100の構成を示した説明図である。図2(A)に示されているように、噴射機構100は、吸上ポンプ130によって液体が供給される供給流路102と、吸上ポンプ130から供給された液体が充填される加圧室104と、加圧室104から流路管120に向かって液体が押し出される噴射流路106などから構成されている。加圧室104には、ピエゾ素子110が膜部材(いわゆるダイアフラム)112を介して接続されており、ピエゾ素子110に電圧を印加してピエゾ素子110を伸縮させることにより、膜部材112を駆動して加圧室104内の容積を変化させることが可能となっている。
液体を噴射する際には、まず、図2(A)に示されているように、ピエゾ素子110に電圧を印加してピエゾ素子110を収縮させ、加圧室104の容積を広げる。このとき、吸上ポンプ130によって加圧室104に液体が供給されるので、加圧室104の容積を広げると加圧室104が液体で満たされる。続いて、図2(B)に示されているように、ピエゾ素子110を伸長させて加圧室104を圧縮する。このとき、加圧室104には噴射流路106と供給流路102との2つの流路が接続されているが、これらの流路は狭く形成されているので、ピエゾ素子110で加圧室104を圧縮することで加圧室104内の流体の圧力を十分に高めることができる。この圧力により、加圧室104内の液体は噴射流路106の方向に強く押し出され、その結果、噴射流路106に接続された噴射口122から液体を勢いよく噴射することが可能となる。尚、加圧室104内の液体は噴射流路106だけでなく供給流路102にも押し出されるが、各流路への液体の流れ込み易さ(いわゆるイナータンス)は流路の長さや流路の断面積等によって定まるので、供給流路102及び噴射流路106の長さや断面積を適切に設定すれば、供給流路102に流れ込む液体の量を噴射流路106に流れ込む液体の量よりも少なく抑えることができる。これにより、加圧室104内の液体の大半を噴射流路106に押し出して、噴射流路106に接続された噴射口122から高い速度で噴射することが可能となる。
こうして液体を噴射した後は、再びピエゾ素子110を収縮させ(図2(A)を参照)、その後にピエゾ素子110を伸長させれば(図2(B)を参照)、液体を再び噴射することができる。こうした動作を繰り返すことにより、本実施例の液体噴射装置10では、液体滴を繰り返し、勢いよく噴射することが可能となっており、勢いよく噴射された液体滴が対象に衝突する時の高い圧力を利用して、生物組織を切除する能力を高めている。
また、こうして液体を噴射することで術部の生物組織を切除すると、液体や血液、及び切除組織などが術部に溜まることで術部が見え難くなってしまったり、あるいは術部に溜まった液体等が邪魔になって生物組織の切除能力が低下したりする虞がある。そこで、本実施例の液体噴射装置10では、次のような構成によって、術部に溜まった液体等を吸引する。
図3は、本実施例の液体噴射装置10が液体等の吸引を行うための構成を示した説明図である。図3(A)に示されているように、流路管120の先端に設けられた噴射口122の近傍には複数の吸引口124が設けられており、これら複数の吸引口124は、噴射口122を中心として噴射口122を取り巻くように配置されている(図3(B)を参照)。また、複数の吸引口124は、流路管120の側面にかかるように、噴射口122から噴射機構100側に離れて配置されている。さらに、本実施例の流路管120は二重管構造に形成されており、内側の管の内部は噴射機構100と噴射口122とを接続する噴射流路106となっているが、内側の管と外側の管とによって挟まれた領域は、吸引口124と吸引機構150とを接続する吸引流路126となっている。
また、吸引流路126は、吸引機構150の中で開閉バルブ152を介して吸引ポンプ154に接続されており、吸引ポンプ154を作動させた状態で開閉バルブ152を開け閉めすることで、吸引ポンプ154で発生させた負圧を吸引口124に付与するか否かを切り替えることができるようになっている。
このような構成を備えた本実施例の液体噴射装置10では、術部に溜まった液体等を吸引する際、術部に噴射口122を接近させた状態で吸引機構150の吸引ポンプ154を作動させる。すると、噴射口122の周囲に配置された吸引口124(図3(B)を参照)に負圧が付与されることで、噴射口122の周囲(すなわち術部)に溜まった液体等が吸引される。
ここで、術部の周囲に液体等が溜まることを避けるためには、噴射した分の液体や、生物組織を切除した際に出た血液、さらには切除組織を吸引する必要があり、このためには液体等の吸引時に十分な吸引量を確保することが求められる。かといって、液体等を吸引する力が強すぎると、術部の周囲に溜まった液体等とともに切除されていない生物組織を吸いこんで生物組織を傷つけてしまう虞がある。こうした事態を避けるためには、液体等の吸引負圧を抑えて生物組織を吸い込み難くすることも考えられるが、これでは術部に噴射した液体等を十分に吸引することができなくなり、結局は、術部に液体等が溜まって術部が見え難くなってしまったり、液体噴射装置10の切除能力が低下したりするといった弊害が生じうる。そこで、本実施例の液体噴射装置10では、上述した2つの問題を回避するために、以下のような方法によって術部に溜まった液体等を吸引している。
B.本実施例の吸引機構駆動処理
図4は、本実施例の吸引制御部165が実行する吸引機構駆動処理を示したフローチャートである。前述したように、本実施例の吸引制御部165は噴射制御部161に接続されており(図1を参照)、吸引制御部165は、噴射制御部161を介して液体の噴射が開始されたことを把握することにより、以下に示す吸引機構駆動処理を開始する。
先ず、術部に液体が溜まることを防ぐには、噴射した分の液体を吸引するとともに、液体を噴射して生物組織を切除した際に出た血液、さらには切除組織などを吸引すればよい。したがって、一定時間内の液体の噴射量が決まることで、液体の噴射量に連動して一定時間内に吸引すべき液体等の量も決定される。一定時間内に吸引すべき液体等の量は、一定時間の液体の噴射量から導き出すことができる。また、切除組織の量や切除によって出る血液量は術部の状態によっても変化するため、一定時間内に吸引すべき液体等の量は、操作者が調整できることが望ましい。
先ず、吸引機構150を駆動し、液体噴射装置10が液体の噴射を開始したか否かを判断する(ステップS100)。本実施例の液体噴射装置10では、液体の噴射を開始すると一定時間経過後に液体の吸引を開始するようになっている。したがって、ステップS100では、液体の噴射を制御する噴射制御部161を介して、液体の噴射が開始したか否かを把握することで液体の噴射が開始したか否かを判断する(ステップS100)。
そして、未だ液体の噴射が開始しない場合には、液体の噴射が開始しないと判断して(ステップS100:No)、再び吸引機構駆動処理のステップS100に戻って上述した処理を行う。こうした処理を繰り返しているうちに、やがて操作者が液体の噴射を開始すると、噴射を開始したと判断して(ステップS100:Yes)、ステップS110に進む。
次に、噴射を開始してから一定時間が経過したか否かを判断する(ステップS110)。
そして、未だ一定時間が経過しない場合には、一定時間が経過しないと判断して(ステップS110:No)、再び吸引機構駆動処理のステップS110に戻って上述した処理を行う。こうした処理を繰り返しているうちに、やがて一定時間が経過すると、一定時間を経過したと判断して(ステップS110:Yes)、ステップS120に進む。
次に、液体の吸引を開始し、吸引負圧を徐々に大きくする(ステップS120)。
次に、第1の吸引負圧を維持する(ステップS130)。
次に、液体噴射装置10が液体の噴射を終了するか否かを判断する(ステップS140)。本実施例の液体噴射装置10では、液体の噴射を終了すると所定の時間経過後に液体の吸引負圧を第2の吸引負圧に維持するようになっている。したがって、ステップS140では、液体の噴射を制御する噴射制御部161を介して、液体の噴射が終了したか否かを把握することで液体の噴射が終了したか否かを判断する(ステップS140)。
そして、未だ液体の噴射が終了しない場合には、液体の噴射が終了しないと判断して(ステップS140:No)、再び吸引機構駆動処理のステップS130に戻って上述した処理を行う。こうした処理を繰り返しているうちに、やがて操作者が液体の噴射を終了すると、噴射を終了したと判断して(ステップS140:Yes)、ステップS150に進む。
次に、噴射を終了してから一定時間が経過したか否かを判断する(ステップS150)。
そして、未だ一定時間が経過しない場合には、一定時間が経過しないと判断して(ステップS150:No)、再び吸引機構駆動処理のステップS150に戻って上述した処理を行う。こうした処理を繰り返しているうちに、やがて一定時間が経過すると、一定時間を経過したと判断して(ステップS150:Yes)、ステップS160に進む。
次に、吸引負圧を第1の吸引負圧から第2の吸引負圧に上昇し、第2の吸引負圧を維持する(ステップS160)。これにより、吸引負圧が2段階になり、常に大きな第2の吸引負圧で吸引できる為、効率の良い吸引ができる。また、最初に小さな第1の吸引負圧で吸引するので、術部の切除されていない生物組織を吸いこむことで、生物組織を傷つけてしまう虞が少なくなる。
次に、第2の吸引負圧を開始してから所定の時間が経過したか否かを判断する(ステップS170)。
そして、未だ所定の時間が経過しない場合には、所定の時間が経過しないと判断して(ステップS170:No)、再び吸引機構駆動処理のステップS160に戻って上述した処理を行う。こうした処理を繰り返しているうちに、やがて所定の時間が経過すると、所定の時間を経過したと判断して(ステップS170:Yes)、吸引機構駆動処理を終了する。
図5は、本実施例の吸引機構駆動処理を行った結果、吸引口124に負圧が付与される様子を示した説明図である。尚、初期状態では噴射を制御する制御スイッチはOFFであり、噴射及び吸引は停止している状態である。
「第1の吸引負圧」
まず、操作者が制御スイッチをONにすると、制御遅延t1の経過後に噴射口122から流体噴射を開始する。噴射が開始した一定時間(遅延t2)の経過後に第1の吸引負圧で吸引を開始する。制御遅延t1は制御スイッチをONにしてから液体の噴射が開始するまでの遅延時間である。遅延t2は噴射が開始してから吸引が開始するまでの遅延時間である。これにより遅延時間を確保することで正確な箇所を吸引できる。
「第2の吸引負圧」
次に、操作者が制御スイッチをOFFにすると、制御遅延t3の経過後に噴射口122からの噴射は停止する。噴射が停止した一定時間(遅延t4)の経過後に第2の吸引負圧で所定の時間t5吸引を継続する。制御遅延t3は制御スイッチをOFFしてから液体の噴射が停止するまでの遅延時間である。遅延t4は噴射が停止してから第1の吸引負圧が第2の吸引負圧に増大するまでの遅延時間である。これにより遅延時間を確保することで正確な箇所を吸引できる。
尚、図中の斜線によって示された部分A、Bの面積は、液体等の噴射量に相当し、流体噴射は、一定間隔での液体の噴射やある期間噴射した後少しの間休止を繰り返す噴射パターンなど、特定の噴射パターンに限定はしない。図中の斜線によって示された部分A´、B´の面積は、液体等の吸引量に相当する。また、吸引量A及び噴射量A´、吸引量B及び噴射量B´はそれぞれ略同じ量であってもよい。
また、吸引開始から第1の吸引負圧まではゆっくり上昇してもよい。さらに、第1吸引負圧から第2の吸引負圧までは速やかに上昇してもよい。
次に、噴射量とその時の吸引量とが異なる例を示す。
図6は、本実施例の吸引機構駆動処理を行った結果、吸引口に負圧が付与される様子を示した説明図である。
図6の矢印Cで示すように、第2の吸引負圧で吸引中に操作者が制御スイッチをONにすると、現在の吸引が終了し、新たな吸引待ち状態になる。この場合、現在の吸引で不足の吸引量を新たな吸引の吸引量に充当する。図6では不足の吸引量sを以降の吸引に充当する様子を示している。
次に、制御スイッチで噴射と吸引とを制御する例を示す。
図7は、本実施例の吸引機構駆動処理を行った結果、吸引口に負圧が付与される様子を示した説明図である。
図7の矢印Dに示すように、液体の制御スイッチの反応を鈍く(ある一定時間以上押された時だけ噴射開始)しておくと、1つのスイッチだけで、液体の噴射と吸引(所定の時間t6の吸引)とを制御できるので、スイッチを間違えて押すミスを防ぐことができる。
以上のように、本実施例の液体噴射装置10では、液体等の吸引量は同じであっても、吸引負圧を変化させることが可能となっている。そして、このことは、生物組織を切除する手術を行うに際して、極めて大きな効果を発揮させることとなる。以下ではこの点について説明する。
先ず、生物組織を切除する手術を行うに際しては、様々な術部の状況が想定される。例えば、術部の生物組織の強度に着目すれば、硬い組織もあれば柔らかい組織もあり、また術部の広さに着目すれば、術部の組織がそれほど入り組んでいないような広い術部もあれば、組織が複雑に入り組んだ狭い術部もある。このように術部の状況は様々であり、術部に溜まった液体等を吸引する際に、術部を傷つけずに吸引可能な吸引条件も種々に変化すると考えられる。この点で、本実施例の液体噴射装置10では、術部の液体等を吸引する吸引負圧を変更可能であるため、術部の状況に応じた最適な吸引条件を選択することができる。その結果、術部の切除されていない生物組織を極力傷つけることなく、術部に溜まった液体等を吸引することが可能となる。
図8は、本実施例の液体噴射装置10を用いて術部の液体を吸引する際に、生物組織の損傷が抑えられる様子を例示した説明図である。尚、図8に示した例は、生物組織が複雑に込み入っている部分などの、術部が比較的狭い場合に該当する。
術部の生物組織を切除すべく噴射口122から液体を噴射すると、図8(A)に示されるように術部の周囲に液体が溜まっていくので、液体の噴射を開始すると一定時間経過後に吸引口124から液体等を吸引する動作を行う。このとき、術部が狭く、吸引口124のすぐそばまで生物組織が迫っているような状態では、図8(B)に示されるように、術部の液体等だけでなく、吸引口124の近くの生物組織が吸引口124に吸い寄せられることとなる。このような状況で、例えば、噴射後にゆっくりと吸引を上げ、弱いレベルを維持するので、図8(C)に示されているように、生物組織は吸引口124から離れる。したがって、生物組織が吸引口124に吸い込まれて損傷してしまう事態を回避することができる。
以上に説明したように、本実施例の液体噴射装置10では、噴射後にゆっくりと吸引を上げ、弱いレベルを維持、噴射停止に徐々に吸引負圧を上げ、一定時間後に吸引を停止させることで、術部の切除されていない生物組織を極力傷つけることなく術部に溜まった液体等を吸引することができる。また、吸引側のパラメーターを変更して吸引条件を変えた場合であっても、液体等の吸引量は維持されるので、噴射した液体などが術部に溜まることで術部が見え難くなってしまったり、あるいは術部に溜まった液体等が障壁となって生物組織の切除能力が低下したりするといった弊害が生ずることもない。
C.変形例
上述した実施例には、いくつかの変形例が考えられる。以下では、これらの変形例について簡単に説明する。尚、以下の変形例では、上述した実施例と同様の構成部分については実施例と同様の符号を付し、また、同様の構成部分については詳細な説明を省略する。
前述した実施例の液体噴射装置10では、流路管120は二重管構造となっており、流路管120の先端に吸引口124を設けておくとともに、流路管120の内側の管と外側の管との間の領域を吸引流路126として利用することで、流路管120に液体の噴射機能と液体の吸引機能の両方を持たせるものと説明した。しかし、流路管120は専ら液体を噴射するために利用することとし、流路管120とは別に、液体の吸引するための吸引管を設けることとしてもよい。
図9は、本変形例の液体噴射装置10の大まかな構成を示した説明図である。図示されているように、本変形例の液体噴射装置10では、流路管120とは別に、液体を吸引するための吸引管128が設けられており、吸引管128の先端付近の側面には吸引口124が設けられている。そして、吸引口124は、吸引管128の内部に設けられた図示しない吸引流路126を介して吸引機構150へと接続されている。尚、吸引口124の設けられる位置は上記に限定されない。
このような本変形例の液体噴射装置10では、操作者は、流路管120の先端を一定方向に向けて術部の生物組織を切除している間にも、吸引管128を自由に移動させることができる。したがって、術部に溜まった液体等を吸引するに際しては、様々な角度から吸引口124を術部に臨ませることが可能となる。その結果、例えば、生物組織が複雑に入り組んだ術部などでは、吸引口124をより適切な角度で術部に臨ませることにより、吸い込みにくいような領域に溜まった液体等についても効率よく吸引することができる。また、術部の生物組織を切除している最中に切除されていない生物組織を吸いこんでしまった場合であっても、吸引管128のみを術部から遠ざければよいので、現在行っている手術を途中で中断する必要がなく、したがって手術時間にロスが生ずることを回避することが可能である。
以上、本実施例の液体噴射装置について説明したが、本発明は上記すべての実施例及び変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。本実施例では、噴射機構によって液体をパルス状に噴射するものとして説明したが、液体を噴射する態様はパルス状に限られず、どのような態様で噴射してもよい。
10…液体噴射装置 100…噴射機構(液体噴射手段) 102…供給流路 104…加圧室 106…噴射流路 110…ピエゾ素子 112…膜部材 120…流路管 122…噴射口 124…吸引口 126…吸引流路 128…吸引管 130…吸上ポンプ 140…液体タンク 150…吸引機構(吸引手段) 152…開閉バルブ 154…吸引ポンプ 160…制御部 161…噴射制御部 165…吸引制御部。

Claims (6)

  1. 液体を噴射口から噴射することで生物組織の切除を行う液体噴射手段と、前記噴射口から噴射された液体及び切除された前記生物組織のうち少なくともいずれかを吸引する吸引手段と、を有する液体噴射装置に電気的に接続され、該液体噴射装置を制御することが可能な液体噴射装置用制御装置であって、
    前記吸引手段に、
    前記液体噴射手段による噴射が開始されてから一定時間の経過後に吸引を開始させた後に、第1の吸引負圧で吸引させ、
    前記噴射が終了してから一定時間の経過後に、前記第1の吸引負圧よりも大きい第2の吸引負圧で吸引させる、ことを特徴とする液体噴射装置用制御装置。
  2. 請求項1に記載の液体噴射装置用制御装置であって、
    吸引を開始させてから前記第1の吸引負圧に達するまでの負圧の上昇速度が、前記第1の吸引負圧から前記第2の吸引負圧に達するまでの負圧の上昇速度に比べて遅い、液体噴射装置用制御装置。
  3. 請求項1又は2に記載の液体噴射装置用制御装置において、
    前記第1の吸引負圧は、噴射された前記液体を吸引することができる最小の吸引負圧である、液体噴射装置用制御装置。
  4. 液体を噴射口から噴射することで生物組織の切除を行う液体噴射手段と、
    前記噴射口から噴射された液体及び切除された前記生物組織のうち少なくともいずれかを吸引する吸引手段と、
    前記液体噴射手段及び前記吸引手段を制御するための制御部と、を備え、
    前記制御部は、前記吸引手段に、
    前記液体噴射手段による噴射が開始されてから一定時間の経過後に吸引を開始させた後に、第1の吸引負圧で吸引させ、
    前記噴射が終了してから一定時間の経過後に、前記第1の吸引負圧よりも大きい第2の吸引負圧で吸引させる、液体噴射装置。
  5. 請求項4に記載の液体噴射装置において、
    吸引を開始させてから前記第1の吸引負圧に達するまでの負圧の上昇速度が、前記第1の吸引負圧から前記第2の吸引負圧に達するまでの負圧の上昇速度に比べて遅い、液体噴射装置。
  6. 請求項4又は5に記載の液体噴射装置において、
    前記制御部は、前記液体噴射手段による液体の噴射の開始及び停止を制御するためのスイッチを有し、
    前記第2の吸引負圧で吸引中に前記スイッチがONされた場合、吸引を終了し、前記液体噴射手段による液体の噴射を開始する、液体噴射装置。
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