JP5985770B2 - 燃料電池のスタック構造体 - Google Patents
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Description
本発明は、燃料電池のスタック構造体に関する。
従来より、「それぞれが、長手方向を有し且つその内部に前記長手方向に沿う燃料ガス流路が形成された支持基板を含む、複数の燃料電池セル」と、「燃料ガスが導入される内部空間を有するマニホールドであって、前記長手方向が上下方向と一致するように前記各セルがマニホールドの上壁から上方に向けてそれぞれ突出し、且つ、前記複数のセルがスタック状に整列し、且つ、前記内部空間と前記各セルの前記燃料ガス流路とが連通するように、前記各セルの前記支持基板の燃料ガス流入側端部を前記上壁にて接合材を用いて接合・支持するマニホールド」と、を備えた固体酸化物形燃料電池(以下、「SOFC」と呼ぶ)のスタック構造体が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
この構造体では、前記マニホールドの上壁には、1つ又は複数の孔が形成されている。前記接合材が、前記各支持基板の燃料ガス流入側端部が対応する前記孔に対応して位置付けられた状態にて前記1つ又は複数の孔を塞ぐように、且つ、前記上壁の上面、及び、前記セルの燃料ガス流入側端部の側面に連続的に接触するように、充填されることによって、前記上壁と前記各支持基板の燃料ガス流入側端部とが接合されている。換言すれば、前記接合材は、マニホールドの内部空間(燃料ガスに曝される空間)と、スタック構造体の外部(空気に曝される空間、以下、単に「外部」と呼ぶ)と、を区画することによって、燃料ガスと空気との混合を防止する機能(以下、「シール機能」と呼ぶ)を果たす。この構造体では、各セルの燃料ガス排出側端(上端)が自由端となっている。従って、この構造体は、「片持ちスタック構造体」とも呼ばれる。
ところで、上述したスタック構造体が熱応力的に過酷な環境下で稼働されると、「前記接合材における外部に面する表面を起点とする、前記接合材の内部に向かうクラック」が発生する場合がある。これは、前記接合材における外部に面する表面に応力が集中し易いことに起因する、と考えられる。このクラックの成長によって、このクラックが「前記接合材における外部に面する表面」から「前記接合材におけるマニホールドの内部空間に面する表面」まで貫通する場合がある。以下、このように貫通するクラックを「貫通クラック」と呼ぶ。
この「貫通クラック」が形成されると、前記接合材による上記「シール機能」が維持され得なくなり、前記接合材における「外部に面する表面」から燃料ガスが漏れ出る現象(以下、「ガスリーク」と呼ぶ)が発生する場合がある。
上述したスタック構造体が通常の環境下で稼働される場合と異なり、上述したスタック構造体が熱応力的に過酷な環境下で稼働される場合には、上述したクラックの発生を確実に回避することは非常に困難である。しかしながら、上述したクラックの僅かな発生が許容されたとしても、このクラックの成長によって形成され得る上記「貫通クラック」に起因する「ガスリーク」が発生する頻度を低減することは重要である、と考えられる。
以上より、本発明は、上述したスタック構造体であって、接合材における「ガスリーク」が発生し難いものを提供することを目的とする。
本発明の第1側面に係る燃料電池のスタック構造体は、上述と同じ複数のセルと、上述と同じマニホールドと、を備える。即ち、前記マニホールドの上壁には、1つ又は複数の孔が形成され、前記接合材が、前記各セルの燃料ガス流入側端部が対応する前記孔に対応して位置付けられた状態にて前記1つ又は複数の孔を塞ぐように、且つ、前記上壁の上面、及び、前記セルの燃料ガス流入側端部の側面に接触するように、充填されることによって、前記マニホールドの上壁と前記各セルの燃料ガス流入側端部とが接合されている。
本発明に係るスタック構造体の特徴は、前記接合材が、その内部に複数の気孔を含み、前記セルの燃料ガス流入側端部の側面に垂直、且つ上下方向に沿う、前記接合材の断面について、前記断面に存在する前記複数の気孔の気孔径のうちの最大値(以下、「最大気孔径」と呼ぶ)をaとし、前記接合材と前記セルの燃料ガス流入側端部の側面とが(連続的に)接触する接合部における上下方向の長さ(以下、「第1接合部長さ」と呼ぶ)をbとし、前記接合材と前記上壁の上面とが(連続的に)接触する接合部における前記セルの燃料ガス流入側端部の側面から最も離れた端と、前記セルの燃料ガス流入側端部の側面と、の間の距離(以下、「第2接合部長さ」と呼ぶ)をcとしたとき、0.10mm≦a≦0.47mmであり、0.14≦a/b≦0.36であり、0.12≦a/c≦0.35である、ことにある。
通常、スタック構造体の組立時に使用される前記接合材用のペースト(熱処理前)に不可避的に含まれる気泡等に起因して、前記接合材(熱処理後)の内部には、複数の気孔が形成される。
本発明者は、接合材について、「最大気孔径a」、「第1接合部長さb」、及び、「第2接合部長さc」の組み合わせを、上述のように調整することによって、上述したスタック構造体が熱応力的に過酷な環境下で稼働された場合であっても、上述した「貫通クラック」が発生し難いこと、従って、上述した「ガスリーク」が発生し難いこと、を見出した(詳細は後述する)。
本発明の第2側面に係る燃料電池のスタック構造体は、マニホールドと、燃料電池セルと、接合材とを備えている。マニホールドは、挿入孔を含む上壁を有する。燃料電池セルは、挿入孔に挿入される。接合材は、挿入孔を塞ぐように、上壁と燃料電池セルとを接合する。接合材は、上壁の上面、及び、燃料電池セルの側面に接触している。接合材は、複数の気孔を内部に含んでいる。燃料電池セルの側面に垂直、且つ上下方向に沿う、接合材の断面について、断面に存在する前記複数の気孔の気孔径のうちの最大値をaとする。また、前記接合材の断面について、接合材と燃料電池セルの側面とが接触する接合部における上下方向の長さをbとする。また、前記接合材の断面について、接合材と上壁の上面とが接触する接合部における燃料電池セルの側面から最も離れた端と、燃料電池セルの側面と、の間の距離をcとする。このとき、0.10mm≦a≦0.47mmであり、0.14≦a/b≦0.36であり、0.12≦a/c≦0.35である。
接合材は、挿入孔の内壁面に接触していてもよいし、接触していなくてもよい。
(スタック構造体に使用されるセルの構成の一例)
先ず、本発明に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)のスタック構造体の実施形態に使用されるセル100の一例について、図1〜図2を参照しながら説明する。
先ず、本発明に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)のスタック構造体の実施形態に使用されるセル100の一例について、図1〜図2を参照しながら説明する。
図1に示すセル100は、長手方向(x軸方向)を有する平板状の支持基板10の上下面(互いに平行な両側の主面(平面))のそれぞれに、電気的に直列に接続された複数(本例では、4つ)の発電素子部Aが長手方向において所定の間隔をおいて配置された、所謂「横縞型」と呼ばれる構成を有する。
このセル100の全体を上方からみた形状は、例えば、長手方向(x軸方向)の辺の長さL1が50〜500mmで長手方向に直交する幅方向(y軸方向)の長さL2が10〜100mmの長方形である(L1>L2)。このセル100の厚さL3(z軸方向の距離)は、1〜5mmである(L2>L3)。
このセル100は支持基板10を備える。支持基板10は、電子伝導性を有さない多孔質の材料からなる平板状の焼成体である。支持基板10の内部には、長手方向に延びる複数(本例では、6本)の燃料ガス流路11(貫通孔)が幅方向において所定の間隔をおいて形成されている。支持基板10は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)で構成され得る。
支持基板10の上下面のそれぞれに配置された各発電素子部Aは、燃料極、固体電解質膜、及び空気極が少なくともこの順に積層された積層焼成体である。燃料極は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とで構成され得る。固体電解質膜は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)で構成され得る。空気極は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)で構成され得る。
SOFCの作動温度(600〜800℃)に維持された図1に示す「横縞型」のセル100に対して、図2に示すように、支持基板10の燃料ガス流路11内に燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板10の上下面に沿って酸素を含むガス(空気等)を流すことにより、各発電素子部Aにおいて、固体電解質膜の表裏面間に生じる酸素分圧差によって起電力が発生する。更に、セル100を外部の負荷に電気的に接続すると、下記(1)、(2)式に示す化学反応が起こり、セル100内にて電流が流れる(発電状態)。この発電状態にて、セル100から電力が取り出される。
(1/2)・O2+2e−→O2 − (於:空気極) …(1)
H2+O2 −→H2O+2e− (於:燃料極) …(2)
(1/2)・O2+2e−→O2 − (於:空気極) …(1)
H2+O2 −→H2O+2e− (於:燃料極) …(2)
(スタック構造体の全体構成の一例)
次に、上述したセル100を用いた本発明に係るSOFCのスタック構造体の実施形態(以下、「本実施形態」とも呼ぶ)について説明する。図3に示すように、本実施形態は、多数のセル100と、多数のセル100のそれぞれに燃料ガスを供給するためのマニホールド200と、を備えている。マニホールド200は、長手方向(z軸方向)を有する直方体状の筐体である。
次に、上述したセル100を用いた本発明に係るSOFCのスタック構造体の実施形態(以下、「本実施形態」とも呼ぶ)について説明する。図3に示すように、本実施形態は、多数のセル100と、多数のセル100のそれぞれに燃料ガスを供給するためのマニホールド200と、を備えている。マニホールド200は、長手方向(z軸方向)を有する直方体状の筐体である。
マニホールド200は、例えば、「底壁と側壁とを備え且つ上方に向けて開口する基部210」と、「基部210の上に配置され且つ前記開口を塞ぐ平板状の支持板(上壁)220」と、で構成される。支持板220は、多数のセル100を支持する機能を備える。マニホールド200(=基部210+支持板220)は、例えば、ステンレス鋼等で構成されている。
図3、及び図4に示すように、マニホールド200には、外部からマニホールド200の内部空間に燃料ガスを導入するための導入管230が設けられている。図3、及び図4に示す例では、導入管230は、支持板220の四隅部の1つから上方(x軸正方向)に向けて突出するように、支持板220に対して接合・固定されている。導入管230も、例えば、ステンレス鋼等で構成されている。この導入管230は、例えば、支持板220に形成された貫通孔に挿入された状態にて溶接されることによって、支持板220に接合・固定されている。
各セル100が、支持板220から上方(x軸正方向)に向けてそれぞれ突出するように、且つ、複数のセル100がマニホールド200の長手方向(z軸方向)に沿って互いに離れてスタック状に整列するように、各セル100における支持基板10の長手方向(x軸方向)の燃料ガス流入側の端部(以下、「流入側端部」と呼ぶ)が、支持板220に対して接合材を用いて接合・支持されている。各セル100における支持基板10の長手方向(x軸方向)の燃料ガス排出側の端部(以下、「排出側端部」と呼ぶ)は、自由端となっている。従って、このスタック構造は、「片持ちスタック構造」と表現することができる。
図4に示すように、支持板220(マニホールド200の上壁)には、マニホールド200の内部空間と連通する多数の挿入孔221が、z軸方向において同じ間隔をおいて形成されている。各挿入孔221には、対応するセル100(より具体的には、支持基板10)の流入側端部がそれぞれ挿入されている。
図5に示すように、各挿入孔221の形状は、長さL4、幅L5のy軸方向に延在する長円形状(L4>L5)を呈している。挿入孔221の長さL4は、セル100の流入側端部の側面の長さL2(図1を参照)より0.2〜3mm大きい。同様に、挿入孔221の幅L5は、セル100の流入側端部の側面の幅L3(図1を参照)より0.2〜3mm大きい。即ち、図6、及び図7に示すように、セル100(支持基板10)の流入側端部が挿入孔221に挿入された状態では、挿入孔221の内壁とセル100(支持基板10)の流入側端部の外壁との間に隙間が形成される。なお、図6、及び図7(特に、図6)では、前記隙間が誇張して描かれている。
図6、及び図7に示すように、挿入孔221とセル100(支持基板10)の流入側端部との接合部のそれぞれにおいて、固化された接合材300が前記隙間に充填されるように(即ち、挿入孔221を塞ぐように)設けられている。これにより、各挿入孔221と対応するセル100の流入側端部とがそれぞれ接合・固定される。加えて、接合材300は、マニホールド200の内部空間(燃料ガスに曝される空間)と、スタック構造体の外部(空気に曝される空間、以下、単に「外部」と呼ぶ)と、を区画することによって、燃料ガスと空気との混合を防止する機能(上記「シール機能」)を果たしている。図7に示すように、各セル100のガス流路11の流入側端部は、マニホールド200の内部空間と連通している。
接合材300は、例えば、結晶化ガラスで構成される。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO2−B2O3系、SiO2−CaO系、MgO−B2O3系が採用され得るが、SiO2−MgO系のものが最も好ましい。なお、本明細書では、結晶化ガラスとは、全体積に対する「結晶相が占める体積」の割合(結晶化度)が60%以上であり、全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラスを指す。なお、接合材300の材料として、非晶質ガラス、ろう材、セラミックス等が採用されてもよい。
また、図7に示すように、隣接するセル100、100の間には、隣接するセル100、100の間(より詳細には、一方のセル100の燃料極と他方のセル100の空気極)を電気的に直列に接続するための集電部材400が介在している。集電部材400は、例えば、金属メッシュ等で構成される。加えて、各セル100について表側と裏側とを電気的に直列に接続するための集電部材500も設けられている。
以上、説明した本実施形態(片持ちスタック構造)を作動させる際には、SOFCの作動温度に維持された本実施形態に対して、図8に示すように、高温(例えば、600〜800℃)の燃料ガス(水素等)及び「酸素を含むガス(空気等)」を流通させる。導入管230から導入された燃料ガスは、マニホールド200の内部空間へと移動し、その後、各挿入孔221を介して対応するセル100のガス流路11にそれぞれ導入される。各ガス流路11を通過した燃料ガスは、その後、各ガス流路11の排出側端(排出口)から外部に排出される。空気は、スタック構造の内部における隣接するセル100間の空間を、セル100の幅方向(y軸方向)に沿って流される。この結果、各セル100が上述した発電状態となり、各セル100(従って、スタック構造体)から電力が取り出される。
上述した本実施形態は、例えば、以下の手順で組み立てられる。先ず、必要な枚数の完成したセル100、並びに、完成したマニホールド200が準備される。次いで、所定の治具等を用いて、複数のセル100がスタック状に整列・固定される。次に、複数のセル100がスタック状に整列・固定された状態が維持されながら、複数のセル100のそれぞれの流入側端部が、支持板220の対応する挿入孔221に一度に挿入される。次いで、接合材300用の非晶質材料(非晶質ガラス)のペーストが、挿入孔221とセル100の流入側端部との接合部のそれぞれの隙間に充填される。
次に、上記のように充填された接合材300用の非晶質材料ペーストに熱処理(結晶化処理)が加えられる。この熱処理によって前記非晶質材料の温度がその結晶化温度まで到達すると、結晶化温度下にて、材料の内部で結晶相が生成されて、結晶化が進行していく。この結果、非晶質材料が固化・セラミックス化されて、結晶化ガラスとなる。これにより、結晶化ガラスで構成される接合材300が上記「シール機能」を発揮するとともに、各セル100の流入側端部が対応する挿入孔221にそれぞれ接合・固定される。換言すれば、各セル100の流入側端部が接合材300を用いて支持板220にそれぞれ接合・支持される。その後、前記所定の治具が複数のセル100から取り外されて、上記本実施形態(片持ちスタック構造体)が完成する。
(接合材におけるガスリークの抑制)
上記本実施形態に係るスタック構造体が、通常の環境下とは異なり、熱応力的に過酷な環境下で稼働されると、「接合材300における外部に面する表面を起点とする、接合材300の内部に向かうクラック」が発生する場合がある。これは、接合材300における外部に面する表面に応力が集中し易いことに起因する、と考えられる。このクラックの成長によって、このクラックが「接合材300における外部に面する表面」から「接合材300におけるマニホールド200の内部空間に面する表面」まで貫通する場合がある。以下、このように貫通するクラックを「貫通クラック」と呼ぶ。
上記本実施形態に係るスタック構造体が、通常の環境下とは異なり、熱応力的に過酷な環境下で稼働されると、「接合材300における外部に面する表面を起点とする、接合材300の内部に向かうクラック」が発生する場合がある。これは、接合材300における外部に面する表面に応力が集中し易いことに起因する、と考えられる。このクラックの成長によって、このクラックが「接合材300における外部に面する表面」から「接合材300におけるマニホールド200の内部空間に面する表面」まで貫通する場合がある。以下、このように貫通するクラックを「貫通クラック」と呼ぶ。
この「貫通クラック」が形成されると、接合材300による上記「シール機能」が維持され得なくなり、接合材300における「外部に面する表面」から燃料ガスが漏れ出る現象(上記「ガスリーク」)が発生する場合がある。
上記スタック構造体が、通常の環境下で稼働される場合と異なり、熱応力的に過酷な環境下で稼働される場合には、上述したクラックの発生を確実に回避することは非常に困難である。しかしながら、上述したクラックの僅かな発生が許容されたとしても、このクラックの成長によって形成され得る上記「貫通クラック」に起因する上記「ガスリーク」が発生する頻度を低減することは重要である。
通常、上述した接合材300用の非晶質材料ペースト(熱処理前)に不可避的に含まれる気泡等に起因して、接合材300(熱処理後)の内部には、複数の気孔が含まれる。ここで、接合材300の内部に含まれる気孔の気孔径は、前記ペーストに造孔材を含ませるとともに、その造孔材の量及び径を調整することによって、容易に調整することができる。接合材300の内部において、複数の気孔は、概ね均一に分布していることが好適である。なお、或る断面上に存在する気孔の径とは、「その断面上にてその気孔が占める面積と同じ面積を有する等価円の直径」と定義される。
図9は、スタック構造体における1つのセル100の燃料ガス流入側端部の側面に垂直、且つ、上下方向(x軸方向)に沿う、接合材300の断面の一例を示す。図9に示すように、この断面において、「接合材300とセル100の燃料ガス流入側端部の側面とが連続的に接触する接合部における上下方向(x軸方向)の長さ」(第1接合部長さ)を「b」とし、「接合材300と支持板(上壁)220の上面とが連続的に接触する接合部におけるセル100の燃料ガス流入側端部の側面から最も離れた端と、セル100の燃料ガス流入側端部の側面と、の間の距離」(第2接合部長さ)を「c」と定義する。
また、「この断面に存在する複数の気孔の気孔径のうちの最大値」(最大気孔径)を「a」と定義する。ここで、「最大気孔径a」に着目したのは、成長していくクラックの先端が気孔に到達する際、その気孔の気孔径が大きいほど、そのクラックの成長が止まり易いからである。気孔径が大きいほど、クラックの成長が止まり易いのは、気孔径が大きいほど、気孔の内壁の曲率半径が大きいことによって応力が集中し難くなることに起因する、と考えられる。
本発明者は、「最大気孔径a」、「第1接合部長さb」、及び、「第2接合部長さc」の組み合わせに関し、接合材300において上述した「貫通クラック」が発生し難い条件(従って、上述した「ガスリーク」が発生し難い条件)を見出した。以下、このことを確認した試験について説明する。
(試験)
この試験では、図3に示したスタック構造体について、「最大気孔径a」、「第1接合部長さb」、及び、「第2接合部長さc」(従って、a/b、及び、a/c)の組み合わせが異なる複数のサンプルが作製された。具体的には、表1に示すように、20種類の水準(組み合わせ)が準備された。各水準に対して、「スタック数(セル100の数)=10」の1つのサンプル(スタック構造体)が作製された。サンプル毎に(従って、各サンプルに含まれる10個のセル100に関して)、a/b、及び、a/cの組み合わせが同じとされた。各セル100について、a/b、及び、a/cの測定に使用された上記「断面」(セル100の燃料ガス流入側端部の側面に垂直、且つ、上下方向に沿う接合材300の断面)としては、支持基板10の燃料ガス流入側端部における主面に垂直、且つ、上下方向に沿う接合材300の1つの断面が使用された。
この試験では、図3に示したスタック構造体について、「最大気孔径a」、「第1接合部長さb」、及び、「第2接合部長さc」(従って、a/b、及び、a/c)の組み合わせが異なる複数のサンプルが作製された。具体的には、表1に示すように、20種類の水準(組み合わせ)が準備された。各水準に対して、「スタック数(セル100の数)=10」の1つのサンプル(スタック構造体)が作製された。サンプル毎に(従って、各サンプルに含まれる10個のセル100に関して)、a/b、及び、a/cの組み合わせが同じとされた。各セル100について、a/b、及び、a/cの測定に使用された上記「断面」(セル100の燃料ガス流入側端部の側面に垂直、且つ、上下方向に沿う接合材300の断面)としては、支持基板10の燃料ガス流入側端部における主面に垂直、且つ、上下方向に沿う接合材300の1つの断面が使用された。
各サンプル(図3に示すSOFCのスタック構造体)について、各セル100は、長さ(x軸方向)が50〜500mm、幅(y軸方向)が10〜100mm、厚さ(z軸方向)が1〜5mmの薄板状を呈していた。各セル100の支持基板100の材質は、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)等であった。各セル100の支持基板100について、焼成温度は1300〜1600℃、焼成時間は1〜20時間であった。各セル100には、1〜20本のガス流路11が形成されていた。マニホールド200(=基部210+支持板220)の材質は、ステンレス鋼であった。支持板220の挿入孔221に挿入された各セル100の流入側端部の外壁と挿入孔221の内壁との間に形成される隙間(L4−L2、L5−L3、図6を参照)は、0.2〜3mmであった。接合材300の材質は、SiO2−B2O3系、SiO2−CaO系、MgO−B2O3系の結晶化ガラス、又は、非晶質ガラス、ろう材、セラミックスであった。
各サンプルについて、接合材300(熱処理後)に含まれる複数の気孔の気孔径の調整(従って、最大気孔径aの調整)は、上述した接合材300用のペーストに含まれる造孔材の量及び径を調整することによってなされた。前記ペーストに対する熱処理は、700〜1000℃にて、1〜10時間に亘って行われた。各セル100について、前記「断面」において、接合材300に含まれる複数の気孔の気孔径は、0.01〜0.47mmであった。また、前記「断面」において、最大気孔径aは、0.10〜0.47mmであった。接合材300の気孔率(前記「断面」において、接合材300の全領域の面積に対する、接合材300内における気孔に対応する領域の面積の総和の割合)は3.1〜10面積%であった。
この試験では、各サンプルについて、「各燃料流路に還元性の燃料ガスを流通させながら、雰囲気温度を常温から750℃まで2時間で上げた後に750℃から常温まで4時間で下げるパターン」を10回繰り返す熱サイクル試験を行った。そして、各サンプルについて、上記「ガスリーク」の発生の有無が確認された。この確認は、各サンプル(スタック構造体、図3を参照)について、各セル100の燃料ガス流路11における燃料ガス排出側端部の開口をゴムキャップ等の封止材を用いてそれぞれ封止した状態にて、導入管230から加圧したガスを流した際に、接合材300から前記ガスの漏れが発生するか否かを確認することによって行われた。前記ガスの漏れが発生するか否かの確認は、サンプルを液体中に浸漬させた状態にて気泡が発生するか否かを目視で観察することによって行われた。この結果は表1に示すとおりである。
表1から理解できるように、a/bが0.14未満又は0.36より大きい、又は、a/cが0.12未満又は0.35より大きいと、接合材300における「ガスリーク」が発生し易い。これは、理由は不明であるが、これらの条件が成立する場合、接合材300にて上述した「貫通クラック」が発生し易いことに基づく、と考えられる。
以上、表1の結果より、0.10mm≦a≦0.47mmであり、0.14≦a/b≦0.36であり、且つ、0.12≦a/c≦0.35であると、上述したスタック構造体が熱応力的に過酷な環境下で稼働された場合においても、接合材300における「ガスリーク」が発生し難くなる、ということができる。
なお、本発明者は、通常の条件・環境下(定常運転状態、燃料利用率が一定の運転状態)にて上述したスタック構造体が使用される場合、a/bが0.14未満又は0.36より大きい、又は、a/cが0.12未満又は0.35より大きくても、接合材300における「ガスリーク」が発生し難いことを別途確認している。
本発明は上記本実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記本実施形態では、隣り合う発電素子部の間が電気的に接続された所謂「横縞型」のセルが採用されているが、支持基板の表面に発電素子部が1つのみ設けられたセルが採用されてもよい。
また、上記本実施形態では、支持板220に形成された1つの挿入孔221に1つのセル100の流入側端部が挿入されているが、支持板220に形成された1つの挿入孔221に2つ以上のセル100の流入側端部が挿入されていてもよい。
更には、図6及び図7にそれぞれ対応する図10及び図11に示すように、支持板220に形成された1つの(唯一の)挿入孔221に複数のセル100の流入側端部の全てが挿入されていてもよい。この場合、少なくとも、接合材300における「挿入孔211の内壁とセル100の流入側端部の外壁との間に充填された部分」について、上述した「0.10mm≦a≦0.47mmであり、0.14≦a/b≦0.36であり、且つ、0.12≦a/c≦0.35」という条件が成立していれば、上述したスタック構造体が熱応力的に過酷な環境下で稼働された場合においても、接合材300における「ガスリーク」が発生し難いことを別途確認している。
更には、上記本実施形態では、マニホールド200の天板が多数のセル100を支持するための支持板220を兼ねているが(即ち、支持板220がマニホールド200と一体で構成されているが)、マニホールドの内部空間と複数のセルのガス流路とが連通する限りにおいて、支持板がマニホールドとは別体で構成されていてもよい。
また、上記本実施形態では、支持基板10が平板状を呈しているが、支持基板が円筒状を呈していても良い。この場合、円筒状の支持基板の内側空間がガス流路として機能する。
また、上記実施形態では、接合材300は、支持板220の上面と燃料電池セル100の側面のみに接触しているが、接合材300の構成は特にこれに限定されない。例えば、図12に示すように、接合材300は、支持板220の上面と燃料電池セル100の側面に加えて、挿入孔221の内壁面に接触していてもよい。
10…支持基板、11…燃料ガス流路、100…セル、200…マニホールド、210…基部、220…支持板、221…挿入孔、300…接合材、A…発電素子部
Claims (4)
- それぞれが、長手方向を有し且つその内部に前記長手方向に沿う燃料ガス流路が形成された支持基板と、前記支持基板の表面に設けられ且つ少なくとも燃料極、固体電解質、及び空気極がこの順で積層された発電素子部と、を含む、複数の燃料電池セルと、
燃料ガスが導入される内部空間を有するマニホールドであって、前記長手方向が上下方向と一致するように前記各セルがマニホールドの上壁から上方に向けてそれぞれ突出し、且つ、前記複数のセルがスタック状に整列し、且つ、前記内部空間と前記各セルの前記燃料ガス流路とが連通するように、前記各セルの燃料ガス流入側端部を前記上壁にて接合材を用いて接合・支持するマニホールドと、
を備えた燃料電池のスタック構造体であって、
前記マニホールドの上壁には、1つ又は複数の孔が形成され、
前記接合材が、前記各セルの燃料ガス流入側端部が対応する前記孔に対応して位置付けられた状態にて前記1つ又は複数の孔を塞ぐように、且つ、前記上壁の上面、及び、前記セルの燃料ガス流入側端部の側面に接触するように、充填されることによって、前記上壁と前記各セルの燃料ガス流入側端部とが接合され、
前記接合材は、その内部に複数の気孔を含み、
前記セルの燃料ガス流入側端部の側面に垂直、且つ上下方向に沿う、前記接合材の断面について、
前記断面に存在する前記複数の気孔の気孔径のうちの最大値をaとし、
前記接合材と前記セルの燃料ガス流入側端部の側面とが接触する接合部における上下方向の長さをbとし、
前記接合材と前記上壁の上面とが接触する接合部における前記セルの燃料ガス流入側端部の側面から最も離れた端と、前記セルの燃料ガス流入側端部の側面と、の間の距離をcとしたとき、
0.10mm≦a≦0.47mmであり、0.14≦a/b≦0.36であり、0.12≦a/c≦0.35である、燃料電池のスタック構造体。 - 挿入孔を含む上壁を有するマニホールドと、
前記挿入孔に挿入され、前記マニホールドから上方に延びる燃料電池セルと、
前記挿入孔を塞ぐように、前記上壁と前記燃料電池セルとを接合する接合材と、
を備え、
前記接合材は、前記上壁の上面、及び、前記燃料電池セルの側面に接触しており、
前記接合材は、複数の気孔を内部に含み、
前記燃料電池セルの側面に垂直、且つ上下方向に沿う、前記接合材の断面について、
前記断面に存在する前記複数の気孔の気孔径のうちの最大値をaとし、
前記接合材と前記燃料電池セルの側面とが接触する接合部における上下方向の長さをbとし、
前記接合材と前記上壁の上面とが接触する接合部における前記燃料電池セルの側面から最も離れた端と、前記燃料電池セルの側面と、の間の距離をcとしたとき、
0.10mm≦a≦0.47mmであり、0.14≦a/b≦0.36であり、0.12≦a/c≦0.35である、
燃料電池のスタック構造体。 - 前記接合材は、前記挿入孔の内壁面に接触する、
請求項1又は2に記載の燃料電池のスタック構造体。 - 前記接合材は、SiO 2 −B 2 O 3 系の結晶化ガラス、SiO 2 −CaO系の結晶化ガラス、MgO−B 2 O 3 系の結晶化ガラス、非晶質ガラス、ろう材、又はセラミックスからなる、
請求項1から3のいずれかに記載の燃料電池のスタック構造体。
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