JP5984806B2 - 生体活性剤を送達する医療デバイスのための脂質コーティング - Google Patents

生体活性剤を送達する医療デバイスのための脂質コーティング Download PDF

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Description

発明の詳細な説明
[関連出願の相互参照]
この出願は、米国企業であるSurModics, Inc.社と米国市民であるRalph a. Chappa氏およびEmily R. Rolfes Meyering氏の名において、2011年6月30日にPCT国際特許出願として出願されたものであり、米国を除く全指定国についてはSurModics, Inc.社をその出願人とし、米国を指定国とする場合についてはRalph a. Chappa氏およびEmily R. Rolfes Meyering氏をその出願人とする。また、この出願は、米国特許出願第61/360,212号(出願日:2010年6月30日)を基礎出願とするものである。
[技術分野]
本発明は、医療デバイスの拡大および折り畳み可能な構造上の脂質コーティング、並びに、これら脂質コーティングおよび医療デバイスの作製方法および使用方法に関する。一つまたは複数の脂質を含んでいるコーティングは、送達部位における上記デバイスから放出される治療薬の量を増加させることができる。
[背景技術]
埋め込まれている医療デバイスからの薬物の放出は、デバイスの機能および様々な病状の処置として有益であることが示されてきた。例えば、デバイス表面からの薬物の送達によって、上記埋め込み可能なデバイスの存在により生起される細胞応答を抑制することができる。また、上記デバイスから放出された薬物により、埋め込み後の上記デバイスの機能寿命を縮めかねない状態を抑制することができる。さらに、上記デバイスから放出された薬物は、体の罹患部の処置において使用されてもよい。
いくつかの埋め込み可能なデバイスは、デバイス表面に塗布された薬物を単に有する。上記デバイスを挿入する間に上記薬物が簡単に除去され得るので、このような調製は通常望ましくない。加えて、埋め込み後、上記薬物の放出を制御するのは通常困難である。
治療用化合物を含んでいる薄型の高分子コーティングを有する埋め込み可能な医療デバイスは、これまで当該技術分野において開示されており、上記デバイス表面からの薬物放出を保護することおよび制御することにおける改善を提供する。これらのコーティングのいくつかは、薬物を放出し、上記埋め込まれたデバイスの近傍において局所的な治療効果を与えることが可能である。このようなデバイスが、循環系の疾患の処置にとって特に有用であることが示されている。
薬物溶離ステントは、治療用物質の投与部位における局所的な放出を提供することができる。ステント上の高分子コーティングを介する治療薬の局所的な投与によって、再狭窄を低下させるという好ましい結果を示している。高分子化学のいくつかの分類によって、現行技術分野において認められるように、ステントにおける薬物を放出するコーティングの使用が検討されており、上記高分子化学のいくつかの分類は認められ、医療処置に現在利用されている。これらの高分子化学の多くは、疎水性薬物を送達するために有用である。
他の医療の応用においては、上記高分子系が理想的でないこともある。例えば、いくつかの応用例は、体内の標的組織に医療デバイスを一時的に挿入することを含む。上述の高分子系に関しては、そのような高分子系からの薬物の放出速度が、上記標的組織に薬物の治療量を提供できる程度に十分ではない場合がある。
加えて、上記薬物送達コーティングの多くは、静的表面(すなわち、面積が増加しない表面)を有するデバイス用に形成される。典型的には、これら静的表面にとって、耐久性のあるコーティングを形成する高分子系が好適である。しかし、非静的表面(例えば、たわみ曲面)上では、このような耐久性のあるコーティングが常に適切とは限らないこともある。
[発明の概要]
本発明は、拡大および折り畳み可能な構造を含んでいる医療デバイス用の脂質コーティング、並びに、これらの製造方法および使用方法に関する。一つまたは複数の脂質を含むコーティングは、上記送達部位の上記デバイスから放出される治療薬の量を増加させる。
本発明は、脂質層を含んでいる医療デバイスに関する。この医療デバイスはまた、拡大および折り畳み可能な構造と上記拡大および折り畳み可能な構造上の薬剤コーティングを含むことができる。上記薬剤コーティングは、生体活性剤を含む。上記脂質コーティングは、上記薬剤コーティングの上に設けられる。上記脂質コーティングは、室温より高く、対象の体温より低い、融点または軟化点を有することができる。このデバイスは、上記生体活性剤を対象内の部位へ送達するのに効果的である。
実施形態では、上記医療デバイスはバルーンカテーテル(balloon catheter)である。このバルーンカテーテルは、バルーンと当該バルーン上の薬剤コーティングを含む。上記薬剤コーティングは生体活性剤を含む。上記デバイスはまた、上記薬剤コーティング上に脂質コーティングを含む。上記脂質コーティングは、室温より高く、上記対象の体温より低い、融点または軟化点を有することができる。このバルーンカテーテルは、対象内の部位に上記生体活性剤を送達するのに効果的である。
本発明はまた、対象内の部位へ生体活性剤を送達する方法であって、本発明の医療デバイスを用いる方法も含む。上記方法は、本発明の医療デバイスを提供することおよび当該医療デバイスを対象の体内へ挿入することを包含することができる。上記方法はまた、上記対象内の部位において拡大および折り畳み可能な構造を拡大して、上記薬剤コーティング、上記脂質コーティング、またはその両方のコーティングを上記部位の組織に接触させ、上記組織に生体活性剤を放出することができる。
[図面の簡単な説明]
図1は、拡大および折り畳み可能な構造上のコーティングを概略的に示す。
図2は、使用の模擬テストにおいて、本発明の脂質コーティングが、コーティングされたカテーテルバルーン(catheter balloon)から放出される粒子を有意に減少させることを示す。
図3は、エキソビボ試験において、本発明の脂質コーティングにより、組織への薬物の移動が増加し、薬物の損失が減少したことを示す。
[発明を実施するための形態]
本発明は、対象内の部位に生体活性剤を送達する医療デバイスに関する。本発明はまた、本発明のデバイスの作製方法および使用方法に関する。上記医療デバイスの少なくとも一部は、上記対象内に挿入されることができる。上記対象内に挿入されることができる上記医療デバイスの一部は、拡大および折り畳み可能な構造を含む。実施形態では、上記拡大および折り畳み可能な構造は、バルーンカテーテルのバルーンである。上記拡大および折り畳み可能な構造上において、上記デバイスは、生体活性剤を含んでいるコーティング(薬剤コーティング)を含む。また、上記デバイスは、上記生体活性剤を含んでいる上記コーティングの全体または一部の上に脂質コーティングを含む。
上記脂質コーティングは、上記医療デバイスに、いくつかの有利な特徴の内、一つまたは複数を付与することができる。上記脂質コーティングは、例えば、(1)生体活性剤(例えば、薬剤コーティング)を含む下層コーティングを保護することができる;(2)上記デバイスが上記対象の組織に接触するので、上記デバイスの滑剤(例えば犠牲滑剤)としての機能を果たすことができる;(3)疎水性組織またはその表面(例えば血管壁)への送達を更に向上させる変形可能な疎水性マトリックスを提供することができる;(4)コーティングの集合とその下方の生体活性剤との構造統合性を保持する(例えば、コーティングの集合とその下方の生体活性剤とを結合させておく)マトリックス;またはこれらの特徴の一つより多くを提供することができる。
実施形態では、上記脂質コーティングは、室温では固体(例えばワックス)または半固体であり、上記対象の体温では軟質体または液体である。例えば、上記脂質コーティングは、室温では固体であり、37℃で液体であり、そして生体活性剤を含んでいる下層コーティングを保護するコーティングを形成する、脂質または脂質の混合体であることができる。または、上記脂質コーティングは、室温では固体であり、37℃で液体であり、そして生体活性剤を含んでいる下層コーティングを保護するコーティングを形成する、脂質または脂質の混合体を含むことができる。このようなコーティングの組成物は、50重量%のオレイン酸と50重量%のドデカン酸の混合体である。実施形態では、本発明の脂質コーティングは、バルーンカテーテルが蛇行経路内を通過した後に、組織に送達される生体活性剤の量を増加させることができる。
実施形態では、上記脂質コーティングは室温では固体であるが、上記対象の体温に晒されると軟化または融解(例えば液化)する。実施形態では、バリア層は、室温では固体であるが、上記デバイスのコーティングされた部分を生活活性剤が送達される部位(送達部位)に向けて上記対象体内を進むにつれ、軟化または融解する。例えば、上記バリア層は、融点または軟化点が室温より高く上記対象の体温より低い組成物から作製されるか、または、当該組成物を含むことができる。上記軟化または融解は、上記デバイスの上記コーティングされた部分が上記送達部位に向けて進むにつれて起こることができ、上記軟化または融解は、送達部位において起こることができ、または上記軟化または融解は、その両方で起こることができる。軟化している、軟化された、融解しているまたは融解された脂質の組成物は、上記デバイスのコーティングされた部分が送達部位に向けて進むにつれて、または送達部位にて、或いはその両方で、上記医療デバイス、上記生体活性剤を含んでいるコーティングを有する上記医療デバイスの一部、またはその両方から除去されることができる。
実施形態では、上記脂質コーティングは、上記医療デバイスが対象内に挿入された場合に、当該対象内の所望の場所に送達される生体活性剤の量を増加させることができる。例えば、固体または半固体の上記脂質コーティングは、上記医療デバイスが対象体外で取り扱われている間、上記デバイスのコーティングされた部分が、上記生体活性剤が送達される部位に上記対象内を進む間、またはその両方において、上記生体活性剤を含んでいる上記コーティングを保護または分離することができる。すなわち、固体または半固体の上記脂質コーティングは、上記生体活性剤が送達される部位に上記デバイスのコーティングされた部分が到達する前に、上記生体活性剤を含んでいる上記コーティングが空気に触れる度合い、取り扱いにより接触される度合い、ガイドカテーテルまたは他の医療デバイスに触れる度合い、組織に触れる度合い、体液に触れる度合い、または、これら複数に触れる度合いを減少させることができる。この減少された接触によって、所望の部位に送達される生体活性剤の量を増加させることができる。このような脂質コーティングは、下層の上記薬剤コーティングを保護している。
実施形態では、上記脂質コーティングは、上記医療デバイスが(例えば、ガイドカテーテルを介して)上記送達部位に向けて進むことを容易にするか、または、上記医療デバイスが(例えば、ガイドカテーテルを介して)上記送達部位に向けて進む場合の抵抗を減少させる。例えば、上記デバイスが、ガイドカテーテルまたは他のデバイス内に挿入される場合、上記ガイドカテーテルを介して上記デバイスのコーティングされた部分が、上記生体活性剤が送達される部位に進む場合、または、これら両方の場合に、固体また半固体の上記脂質コーティングは、上記デバイスの通過を円滑にする。すなわち、固体または半固体の上記脂質コーティングは、上記デバイスのコーティングされた部分が、上記生体活性剤が送達される部位に到達または配置される前に、上記生体活性剤を含んでいるコーティングが、上記ガイドカテーテル、上記対象の組織、体液、または、これら両方に接触するか、または、擦れる/摩耗する度合いを減少させることができる。固体または半固体の上記脂質コーティングは、上記デバイスまたは上記下層コーティングが、ガイドカテーテル、組織、または、流動体と接触することによる摩擦を低減させることができる。このような円滑にすることの結果、上記所望の部位における送達される生体活性剤の量を増加させることができる。上記脂質コーティングは滑剤として機能してきたので、上記医療デバイスが上記送達部位に進むと、上記デバイスから分離されてもよい。すなわち、上記脂質コーティングを犠牲滑剤とすることができる。
実施形態では、上記脂質コーティングは、上記生体活性剤および上記対象の組織に接触し、上記組織への上記薬剤の送達を促進する。上記対象の組織は、一定の疎水性を有しており、体液または上記薬剤コーティングを構成する上記マトリックスよりも上記脂質コーティングの組成に類似している。上記脂質コーティングの上記疎水性は、上記対象の組織の内部または表面への上記生体活性剤の吸収または吸着を促進する。実施形態では、上記生体活性剤が、上記送達部位に存在する場合、上記脂質の組成物中に含まれて(例えば、上記脂質の組成物中に溶解されて、または分散されて)いてもよい。上記脂質コーティングは、上記対象の組織に付着することができ、また、上記対象の組織に生体活性剤(例えば、微粒子の形態にて)を付着させることもできる。このような吸収、吸着、または、付着の結果、上記所望の部位に送達される生体活性剤の量を増加させることができる。
実施形態では、上記脂質コーティングは、上記デバイス上の上記コーティングおよび上記生体活性剤の構造統合性を増大させることができる。例えば、固体または半固体の脂質コーティングは、上記デバイスが上記送達部位に向けて進むにつれて、または、上記デバイスが医療関係者によって操作されるにつれて、活性剤の微粒子またはその一部が上記デバイスから除去される発生率を抑制または低下することができる。上記脂質コーティングは、例えば、上記医療デバイスが、蛇行経路を介して上記送達部位に向けて進む場合、上記様々なコーティングおよび微粒子を合わせた粘性のあるマトリックスまたは接着性のあるマトリックスとして見なすことができる。上記脂質コーティングは、例えば、上記医療デバイスが上記送達部位に向けて進んでいる間、血管壁または他の組織に接触する場合、上記様々なコーティングおよび微粒子を合わせた粘性のあるマトリックスまたは接着性あるマトリックスとして見なすことができる。上記医療デバイスが、上記対象体内を介して上記送達部位に到達すると、保護としての上記脂質コーティングは、上記デバイスから分離されるようにしてもよい。すなわち、上記脂質コーティングは、犠牲保護剤として機能することができる。
本発明の脂質コーティングを含んでいる医療デバイスは、生体活性剤を含んでいるコーティング(例えば、薬剤コーティング)が配置される構造(例えば、基質)を含むことができる。上記薬剤コーティングは、単に、上記基質上に配置または付着された生体活性剤であることができる。上記薬剤コーティングは、上記生体活性剤を含有している、または固定化している高分子マトリックスであることができる。上記脂質コーティングは、上記薬剤コーティング“上”に存在することができる。すなわち、上記脂質コーティングは、上記薬剤コーティング、および上記薬剤コーティングと上記デバイスの周囲との間とに用いられるまたは接触することができる。上記脂質コーティングは、上記薬剤コーティングの一部または全体の上に存在することができる。
実施形態では、上記脂質コーティングの大部分は、上記医療デバイスが上記送達部位に到達すると、上記生体活性剤を含んでいる上記コーティングが形成された上記医療デバイスの一部から失われる。すなわち、上記生体活性剤を含んでいる上記コーティングを有する上記医療デバイスの一部が、上記送達部位に到達すると、上記医療デバイスの一部は、生体活性剤を上記対象の組織から分離するには不十分な量の上記脂質コーティングの組成物を残す。実施形態では、上記脂質コーティングの大部分は、上記生体活性剤が上記送達部位の対象の組織に送達されると、上記生体活性剤を含んでいる上記コーティングを有する上記医療デバイスの一部から失われる。すなわち、上記生体活性剤の送達において、および上記生体活性剤の送達の間に、上記生体活性剤を上記対象の組織から分離するには不十分な量の上記脂質コーティングの組成物を残す。上記生体活性剤を含んでいる上記コーティングから上記脂質コーティングの組成物の大部分が分離されているので、上記生体活性剤は、上記コーティングから放出されることができ、そして上記送達部位の組織に移送するか、または、上記送達部位の上記対象の組織に取り込ませる(または、移送と取り込みの両方を行う)ことができる。
実施形態では、上記医療デバイスの上記コーティングされた部分を広げることによって、上記デバイスのこの部分の表面積が増大し、そして軟化または融解させた上記脂質コーティングの組成物による上記コーティングの膜厚が減少する(すなわち、薄くなる)。上記医療デバイスからの上記生体活性剤の放出を可能にするために、上記脂質コーティングの膜厚を減少するか、または、上記脂質コーティングを薄膜化すれば十分とすることができる。実施形態では、上記脂質コーティングの組成物の膜厚の減少(例えば、薄膜化)を行い、上記医療デバイスから上記脂質コーティングの組成物を除去した後、上記医療デバイスから効果的な量の生体活性剤を放出することができる。例えば、薄膜化させた上記脂質コーティングの組成物は、ある程度まで、上記組織に吸収されるか、または、上記組織に吸着するようにしてもよい。実施形態では、薄膜化させた上記脂質コーティングの組成物は、生体活性剤を含み、この生体活性剤もまた、上記組織に吸収されるか、または、上記組織に吸着する。例えば、薄膜化させた上記脂質コーティングの組成物は、上記組織に付着してもよい。実施形態では、薄膜化させた上記脂質コーティングの組成物は、上記組織に生体活性剤を付着させることができる。実施形態では、上記コーティングされた部分を広げて上記脂質コーティングの膜厚を減少させることで、上記脂質コーティング組成物を上記拡大および折り畳み可能な構造から効果的に除去することができる。
本発明の医療デバイスの実施形態では、上記医療デバイスから効果的な量の上記生体活性剤の放出が、数秒から数分の間(例えば、5秒から2分の間、または、10秒から1分の間)起こる。
図1は、拡大および折り畳み可能な構造1上のコーティング3、5、7の実施形態を概略的に示す。上記コーティングは、任意の放出コーティング3、薬剤コーティング5の実施形態および脂質コーティング7の実施形態を含む。この実施形態では、任意の放出コーティング3が、上記拡大および折り畳み可能な構造1と上記薬剤コーティング5の間に配置される。任意の放出コーティング3は、上記薬剤コーティング5と上記拡大および折り畳み可能な構造1との間の全領域を占める必要はない。脂質コーティング7は、薬剤コーティング5の全体を覆う必要はない。
(脂質の組成)
本発明の脂質の組成物は、脂質または脂質の混合物を含むことができる。上記脂質または脂質の混合物は、例えば、室温では固体(例えば、ワックス状またはペースト状)または半固体であり、対象の体温では軟質体または液体であることができる。
実施形態では、上記脂質の組成物は、40℃以上の融点を有する脂質および20℃以下の融点を有する脂質を含む。実施形態では、上記脂質の組成物は、37℃以上の融点を有する脂質および30℃以下の融点を有する脂質を含む。実施形態では、上記脂質の組成物は、約35℃〜約45℃の融点を有する脂質および約0℃〜約35℃の融点を有する脂質を含む。
本発明の脂質コーティングに採用できる脂質は、水産油(marine oil)(ニシン、メンハーデン、ピルチャード、サーディン、クジラから得られる油、または、これらの油の混合物);大豆油、綿実油、コーン油、ピーナッツ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、オリーブ油、ヤシ油、または、これらの混合物;或いは、これらの混合物を含む。上記脂質の組成物は、室温で液体の脂質と室温で固体の脂質との混合物であることができる。室温で液体の脂質は、High Oleic CV−65キャノーラ油(Cargill Inc., Minnetonka, MN)という商品名で販売されている。実施形態では、室温で液体の上記油は、水素化されない(例えば、部分的にも全体的にも水素化されない)。実施形態では、室温で固体の上記脂質は、先に列記した油が部分的または完全に水素化されるものであり、例えば、完全に水素化されるものである。室温で液体の脂質は、STABLE FLAKE C(商標登録)(C. & T. Refinery社、リッチモンド、ヴァージニア州)という商品名で販売されており、綿実のステアリン製品である。
ある実施形態では、上記脂質の組成物は、以下を含むことができる:植物油、花精油、動物油、水産油(例えば、魚油)、熱帯植物油(例えば、ココナッツ油またはヤシ油)、オリーブ油、ピーナッツ油などの油;ラード、乳脂肪;飽和脂肪酸(例えば、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、または、これらの混合物);不飽和脂肪酸(例えば、オクタデカトリエン酸、エイコサン酸、エイコセン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、アルファーリノレン酸、ガンマーリノレン酸、ベヘン酸、エルカ酸、リグノセリン酸;天然または合成リン脂質(例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルコリン、カルジオリピン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ジミストイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン;モノ、ジ、または、トリアシルグリセロール;または、これらの混合物。ラードは、精製化および清澄化されたブタの脂肪であり、華氏86度(摂氏30度)付近で融解する。
実施形態では本発明の脂質の組成物は、以下の一つまたは複数を含むことができる;脂肪、ワックス、ステロール、リン脂質;モノ、ジ、または、トリグリセリド;脂肪酸アシル、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴリピド(例えば、スフィンゴミエリン)、サッカロ脂質、ポリケチド、ステロール脂質、プレノール脂質、または、これらの混合物。さらに好適な脂質は、16個〜26個の炭素原子からなる鎖長を有する飽和または単不飽和の脂肪部分を含むことができる、セラミド、スフィンゴリン脂質、グリコスフィンゴ脂質を含む。
本発明の脂質の組成物の融点は、当該技術分野に認められた多様な方法のうち任意の一方法によって決定することができる。好適な方法は、メットラー滴点試験(Mettler drop point test)(例えば、ASTM D 3954を参照)を含む。簡単に説明すると、この試験では、測定対象のサンプルは、カップ内に配置され、所定の加熱速度で加熱される。そして、溶融物質の滴が標準オリフィスを通過する温度が記録される。他の方法は、AOCS方法Cc 2-38(ウィリー融点(the Wiley melting point))、解放毛細管のスリップ点、および軟化点を含む。
室温で固体であるか、または、固体であるようにみえる脂質の組成物およびこれらの組成物の構成要素を作製する有用な方法としては、米国特許第6,544,579号明細書に開示されている方法が挙げられる。上記米国特許を本明細書に引用することにより、その開示内容を本願に援用する。上記脂質の組成物は、周囲温度で冷却されるか、または、過冷却され、上記脂質コーティングを形成することができる。
実施形態では、上記脂質の組成物は、一つまたは複数の脂質から本質的に構成される。実施形態では、上記脂質の組成物は、一つまたは複数の脂質から構成される。上記脂質は一般的には活性剤でない。
(脂肪酸)
本発明の脂質の組成物は、一つまたは複数の脂肪酸を含むことができ、遊離脂肪酸がエステル化されたものでなく、または誘導体化脂肪酸を意味する。上記脂肪酸は、カルボン酸塩(例えば、脂肪酸塩)を含むことができるか、または、カルボン酸塩(例えば、脂肪酸塩)とすることができる。好適な脂肪酸として、飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸が挙げられる。好適な不飽和脂肪酸として、単不飽和脂肪酸および多価不飽和脂肪酸が挙げられる。実施形態では、上記脂肪酸の組成物は、単不飽和脂肪酸を含む。実施形態では、上記脂肪酸の組成物が飽和脂肪酸を含む。実施形態では、上記脂肪酸の組成物が飽和脂肪酸および単不飽和脂肪酸を含む。
好適な飽和脂肪酸は、6〜28個の炭素原子を有する飽和脂肪酸を含む。実施形態では、上記飽和脂肪酸は、化学式「CH(CHCOOH」で表され、当該化学式中のnは4≦n≦18である。ある実施形態では、nは4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、または、18である。ある実施形態では、nは、6≦n≦18、8≦n≦16、または、10≦n≦14である。他の実施形態では、nは10である。
好適な不飽和脂肪酸は、8〜24個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸を含む。実施形態では、上記不飽和脂肪酸は、化学式「CH(CHC=CH(CHCOOH」で表され、当該化学式中のmとoはそれぞれ独立して2以上、18以下である。ある実施形態では、mは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、または、18である。ある実施形態では、oは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、または、18である。ある実施形態では、mは、4≦m≦18、6≦m≦14、または、6≦m≦8である。ある実施形態では、oは、4≦o≦18、6≦o≦14、または、6≦o≦8である。他の実施形態では、mは7であり、oは11であり、二重結合はシスである。他の実施形態では、上記不飽和脂肪酸が化学式「CH=CH(CHCOOH」で表され、当該化学式中のpは3≦p≦21である。
実施形態では、上記不飽和脂肪酸は、C:Dで記載されることができ、当該Cは炭素原子数を示し、当該Dは二重結合数を示す。Cは6〜24とし、Dは2〜6とすることができる。CおよびDは整数である。実施形態では、Dを1とし、Cを6〜24とすることができる。上記二重結合の位置および立体化学はまた、規定されることができる。
実施形態では、上記脂肪酸の組成物は、30℃以上の融点を有する飽和脂肪酸および20℃以下の融点を有する不飽和脂肪酸を含む。他の実施形態では、上記脂肪酸の組成物は、35℃以上の融点を有する飽和脂肪酸および35℃以下の融点を有する不飽和脂肪酸を含む。他の実施形態では、上記脂肪酸の組成物が、約30℃〜約45℃の融点を有する飽和脂肪酸および約0℃〜約35℃の融点を有する不飽和脂肪酸を含む。
実施形態では、上記脂質コーティングは、複数の脂肪酸を含むか、または、複数の脂肪酸から作製される。上記複数の脂肪酸は、二つの脂肪酸とすることができる。上記脂質コーティングは、脂肪酸または(例えば二つの)脂肪酸の混合物とすることができる。上記脂肪酸または上記複数の脂肪酸は、上記バリア層である組成物とすることができ、または上記バリア層を構成する組成物とすることができる。上記複数の脂肪酸は、室温で固体であり、上記対象の体温で軟質体または液体である脂肪酸の混合物とすることができる。上記複数の脂肪酸は、室温より高く、上記対象の体温より低い軟化温度を有する脂肪酸の混合物とすることができる。上記複数の脂肪酸は、室温より高く、上記対象の体温より低い融点を有する脂肪酸の混合物とすることができる。
実施形態では、本発明は拡大および折り畳み可能な構造を含んでいる医療デバイスに関する。この実施形態は、上記拡大および折り畳み可能な構造上に薬剤コーティングを含み、当該薬剤コーティングは生体活性剤を含む。この実施形態は、上記薬剤コーティング上に脂質コーティングを含む。この実施形態では、上記脂質コーティングは、二つの脂肪酸の混合物を含む。上記二つの脂肪酸の混合物は、室温より高く、上記対象の体温より低い融点を有する。このデバイスは、上記生体活性剤を対象体内部位へ送達するのに効果的である。
実施形態では、本発明はバルーンカテーテルに関する。上記バルーンカテーテルは、バルーンを含む。このカテーテルは、上記バルーン上に薬剤コーティングを含み、上記薬剤コーティングは、生体活性剤を含む。このカテーテルは、上記薬剤コーティング上に脂質コーティングを含み、当該脂質コーティングは脂肪酸を含む。このバルーンカテーテルは、上記生体活性剤を対象体内部位に送達するのに効果的である。
(リン脂質)
実施形態では、上記脂質の組成物は、リン脂質を含む。好適なリン脂質としては、例えば、ホスファチジン酸、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、または、その混合物が挙げられる。
好適なホスファチジルコリンとしては、例えば、1,2−ジデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(CAS no.3436−44−0)、1,2−ジエルコイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(CAS no.56649−39−9)、1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(CAS no.998−06−1)、1,2−ジラウリル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(CAS no.18194−25−7)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(CAS no.18194−24−6)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(CAS no.4235−95−4)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(CAS no.63−89−8)、卵から精製したホスファチジルコリン、大豆から精製したホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、1−ミリストイル−2−パルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1−ミリストイル−2−ステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1−パルミトイル−2−ミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(CAS no.26853−31−6)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(CAS no.816−94−4)、1−パルミトイル−2−ステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1−ステアロイル−2−ミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1−ステアロイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1−ステアロイル−2−パルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、または、これらの混合物が挙げられる。
好適なリゾホスファチジルコリンとしては、例えば、1−ミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(CAS no.18194−24−6)、1−パルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(CAS no.17364−16−8)、1−ステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(CAS no.19420−57−6)、または、その混合物が挙げられる。
好適なホスファチジン酸としては、例えば、1,2−ジエルコイル−sn−グリセロ−3−ホスフェイト(ナトリウム塩)(CAS no.80724−31−8)、1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスフェイト(ナトリウム塩)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスフェイト(ナトリウム塩)(CAS no.80724−3)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフェイト(ナトリウム塩)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスフェイト(ナトリウム塩)(CAS no.71065−87−7)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスフェイト(ナトリウム塩)(CAS no.108321−18−2)、または、これらの混合物が挙げられる。
好適なホスファチジルエタノールアミンとしては、例えば、1,2−ジエルコイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(CAS no.988−07−2)、1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(CAS no.988−07−2)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(CAS no.923−61−5)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(CAS no.1069−79−0)、または、これらの混合物が挙げられる。
好適なホスファチジルセリンとしては、例えば、1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホセリン(ナトリウム塩)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホセリン(ナトリウム塩)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホセリン(ナトリウム塩)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホセリン(ナトリウム塩)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホセリン(ナトリウム塩)(CAS no.70614−14−1),または、これらの混合物が挙げられる。
(本発明の脂質コーティングを含んでいるデバイスの利用方法)
本発明はまた、本発明のデバイスを利用して、対象に生体活性剤を送達する方法も含む。本発明の方法は、本発明の医療デバイスを提供することを含むことができる。また、上記方法は、上記医療デバイスを対象に挿入すること、次いで拡大および折り畳み可能な構造を当該対象内で拡大することを包含することができる。拡大直後または拡大後、上記生体活性剤の有効量が上記対象の組織へ向けて放出される。
上記デバイスの一部を拡大させることにより、上記コーティングを上記対象の組織と接触させる。上記対象の組織を上記デバイスのコーティングされた部分と接触させることによって、上記デバイスから脂質コーティングを除去することができる。例えば、軟化または溶解されている(例えば液体の)上記脂質コーティングの組成物は、上記対象の組織の内部または表面にある程度吸収されるか、または、吸着されることができる。実施形態では、軟化または溶解されている上記脂質コーティングの組成物は、生体活性剤を含み、当該生体活性剤はまた、上記対象組織の内部または表面に吸収されるか、または、吸着される。例えば、軟化または溶解されている(例えば液体の)脂質コーティングの組成物は、上記組織に付着することができる。実施形態では、軟化または溶解されている上記脂質コーティングの組成物は、上記組織に生体活性剤を付着させることができる。軟化または溶解されている上記脂質コーティングの組成物は、上記デバイスを拡大させるにつれて、狭くなる上記デバイスと上記組織との間の隙間から絞り出されてもよい。上記デバイスが上記送達部位近傍の組織の一部に擦りつけられた場合、この擦りつけによっても、軟化または溶解されている脂質コーティングの組成物が上記デバイスから除去されてよい。
実施形態では、上記デバイスが上記送達部位から除去される前に、上記医療デバイスの拡大された一部分は、収縮されるか、または、折り畳まれることができる。拡大された一部分は、バルーンカテーテルのバルーンと同様に伸び縮みすることができる。上記医療デバイスの拡大された一部を収縮することまたは折り畳むことは、上記送達部位で上記生体活性剤の効果的な量が放出された後に行うことができる。ある実施形態では、上記医療デバイスの拡大された一部を収縮することまたは折り畳むことに加えるまたは代えることで、上記医療デバイスの拡大された一部は、縮小、凝縮、圧縮、収縮、または、これらの複数を行うことができる。
実施形態では、本発明の方法は、対象体内の部位へ生体活性剤を送達する。この実施形態では、本発明の医療デバイスを提供することを包含することができる。提供された上記デバイスは、拡大および折り畳み可能な構造および当該拡大および折り畳み可能な構造上に薬剤コーティングを含む。上記薬剤コーティングは、生体活性剤を含むことができる。また、上記デバイスは、上記塗膜コーティング上に脂質コーティングを含むことができる。上記脂質コーティングは、脂肪酸を含むことができる。この方法は、上記医療デバイスを上記対象内へ挿入することを包含する。この方法はまた、上記拡大および折り畳み可能な構造を上記対象体内の上記部位で拡大させて、上記部位の組織を上記薬剤コーティングおよび上記生体活性剤に接触させ、当該組織に向けて上記生体活性剤を放出することを包含する。この方法は、上記部位で上記薬剤コーティングの一部を放出することを包含することができる。
実施形態では、本発明の方法は、拡大および折り畳み可能な構造および当該拡大および折り畳み可能な構造上の薬剤コーティングを含んでいるデバイスを利用する。上記薬剤コーティングは、非結晶質の生体活性剤およびマトリックスを含むことができる。上記マトリックスは、両親媒性コポリマー、低分子量の疎水性ポリマー、オルガノゲル、または、変形可能なヒドロゲルを含むことができる。上記デバイスはまた、上記薬剤コーティング上に接着コーティングを含む。上記接着コーティングは、陽イオン成分または接着タンパク質を含む。
実施形態では、本発明の方法は、一つまたは複数の本発明のコーティングを含んでいるバルーンカテーテルを血管形成術用バルーンに使用する。血管形成術用バルーンは、アテローム狭窄を減少させるため、または閉塞した動脈を再開通するために病的動脈を処置するために行われることができる。このような処置法では、閉塞した部位で上記バルーンを膨張させることによって、閉塞した管腔内路の閉塞部位でバルーンを膨張させて、塞がれている腔内の経路が再び開かれるまたは広げられる。本発明によれば、本発明のコーティングを一つまたは複数含んでいるバルーンカテーテルは、患者の管腔路(例えば、動脈、静脈、または、気道)内に経皮的に挿入される。挿入後、上記バルーンは、所望の処置部位に進められる。上記所望の処置部位では、上記バルーンを膨張させて上記管腔路を広げる。
(コーティング)
本発明の医療デバイスは、生体活性剤を含んでいる多様なコーティングのうち任意のコーティングを含むことができる。多数の好適なコーティングおよびそのようなコーティングに有用なポリマーは、本明細書中に記載されている。上記拡大および折り畳み可能な構造から生体活性剤を放出することに好適なある実施形態では、数秒から数分の間に上記送達部位で上記生体活性剤の効果的な量を放出することができる。上記生体活性剤は、上記コーティングまたは上記コーティングのポリマーマトリックスに取り込まれた非結晶の形態とすることができる。
上記生体活性剤を含んでいる上記コーティングは、上記拡大および折り畳み可能な構造の一部分または複数部分上、例えば、外面の一部分または複数部分の上、に存在することができる。上記生体活性剤を含んでいる上記コーティングは、バルーンカテーテルのバルーン部分の全体の表面を覆うことができる。この様式により、上記バルーンがインサイチュで拡大された場合、上記生体活性剤は、上記動脈の内腔の周囲に輸送されることができる。
上記生体活性剤を含んでいる上記コーティングは、上記拡大および折り畳み可能な構造の表面全域より狭い範囲で(例えば、不連続なパターンで)覆うことができる。“不連続的な”コーティングとは、上記構造(例えば、上記バルーンの表面全域)を覆うのではなく、上記表面全域の一部分または複数部分に形成される材料をコーティングすることをいう。不連続的なコーティングのパターンは、上記拡大および折り畳み可能な構造が拡大された場合、上記拡大および折り畳み可能な表面から生分解性のコーティングされた材料を薄い層状に剥がすことを容易にする。ある様態では、不連続的な生分解性コーティングは、上記表面から薄層状に剥がされる前に、ほとんどまたは全く割裂していなくてもよい。他の実施形態では、不連続的な生分解性コーティングは、割裂の生じやすいパターンを有することができる。これにより、当該コーティングを薄膜状に剥がすことが容易になる。膨張の圧力に関して言えば、不連続的な生分解性コーティングは、薄膜状に裂くための力をほとんど必要としなくてよい。
不連続パターンを有する生分解性コーティングは、上記バルーンの拡大および折り畳み可能な表面上に直接形成されることができる。または、不連続パターンを有する生分解性コーティングは、可塑性ヒドロゲル層などの他のコーティングされた材料と組み合わせて形成されることができる。ドット状およびストライプ状のパターンなどの不連続的パターンは、スプレーコーティング装置を用いることで形成されることができる。
上記生体活性剤を含んでいる上記コーティングは、可塑性ヒドロゲルマトリックスであることができる。上記可塑性ヒドロゲルマトリックスは、生体安定的な親水性ポリマーから作製されることができる。上記ポリマーは、上記拡大および折り畳み可能な構造と共有結合されることができ、上記ポリマーは、上記マトリックス中の他の親水性ポリマーと共有結合されることができ、または、上記ポリマーは、両方されることができる。ある所望様態では、上記生体安定的な親水性ポリマーは、反応性の光官能基(photogroups)を介して上記基質の表面に結合されている。
上記生体活性剤を含んでいる上記コーティングは、例えばポリ(ビニルピロリドン)などの水溶性ポリマーを含むことができる。ある場合では、上記コーティングは、反応性の光官能基を介して拡大および折り畳み可能な構造の表面と共有結合するポリマーを含む。また、上記コーティングは、マクロマーの形態の上記水溶性ポリマーを含む組成物から形成されることができる。
実施形態では、上記生体活性剤を含んでいる上記コーティングの少なくとも一部は、上記拡大および折り畳み可能な構造が上記対象の体内で拡大されると、薄膜状に裂けることができる。薄膜状に裂かれた生体活性剤を有する上記生分解性ポリマーマトリックスは、例えば、上記標的組織に付着することができる。薄膜状に裂けた上記ポリマーマトリックスの分解および上記生体活性剤の放出は、上記標的部位で発生させることができる。上記生分解性ポリマーマトリックスは、上記可塑性ヒドロゲルマトリックスと組み合わせて使用されることができる。上記可塑性ヒドロゲルマトリックスは、上記放出コーティングとすることができる。上記生分解性ポリマーマトリックスは、上記生体活性剤を含むことができる。
実施形態では、上記生体活性剤は、上記拡大および折り畳み可能な構造上に存在する破損可能な生分解性コーティングに埋め込まれること、付着すること、または、埋め込まれ、且つ、付着することができる。非拡大状態では、上記生体活性剤は、上記コーティングに実質的または完全に取り込まれている、あるいは、コーティングされた層に実質的または完全に付着している、あるいは、上記コーティングに実質的または完全に取り込まれるとともに、上記コーティングされた層に実質的または完全に付着している。上記基板を拡大させると、上記コーティングが破損し、上記拡大および折り畳み可能な表面から薄膜状に裂ける。したがって、上記コーティングは、剛性特性および脆弱性特性を有することができる。上記標的部位では、上記コーティングの一部が、取り込まれた上記生体活性剤と共に組織へ輸送される。ある場合では、輸送される上記コーティングの一部が、上記組織に付着し、障壁または膜を供給することで、上記組織を固定化することができる。上記生分解性コーティング剤の分解とともに、生体活性剤は、放出され、治療効果をもたらすことができる。
本発明の医療デバイスはまた、生体活性剤の送達を促進する多様なコーティングのうち任意のコーティングを含むことができる。このようなコーティングは、放出コーティングおよび接着コーティングを含む。多数の好適なコーティングおよび当該コーティングに有用なポリマーを本明細書中に記載する。
実施形態では、本発明の医療デバイスは放出コーティングを含む。上記放出コーティングは、上記拡大および折り畳み可能な構造の表面上に存在することができ、上記送達部位の上記構造から上記生体活性剤(上記薬剤コーティング)を含んでいる上記コーティングの放出を促進することができる。上記放出コーティングは、上記薬剤コーティングと上記拡大および折り畳み可能な構造との間に存在することができる。上記放出コーティングは、上記対象体内の上記部位における上記薬剤コーティングの放出を促進するように構成されることができる。例えば、上記放出コーティングは、膨張して、上記薬物含有コーティングを押すことができる。実施形態では、上記放出コーティングが上記薬物含有コーティングを押し、これを破損させる。実施形態では、上記放出コーティングは、水を急速に吸収する水膨潤性ポリマーを含むことができる、または当該水膨潤性ポリマーから構成されることができる。血液に晒されると、水が上記層内に浸潤し、上記放出層と上記薬剤コーティングとの間の付着を低減させる。
実施形態では、本発明の医療デバイスは、接着コーティングを含む。上記接着コーティングは、上記拡大および折り畳み可能な構造上に存在することができ、そして上記送達部位の上記対象の組織への上記薬剤コーティングの付着を促進することができる。例えば、上記接着コーティングは、上記薬剤コーティング上に存在することができる。例えば、接着成分は、上記薬剤コーティング中に含めることができる。上記接着コーティングは、陽イオン成分または接着タンパク質を含むことができる。上記接着タンパク質は、コラーゲン、ヘパリン、ラミニン、または、これらの混合物とすることができ、あるいは、コラーゲン、ヘパリン、ラミニン、または、これらの混合物を含むことができる。実施形態では、上記接着コーティングは、血管の損傷などの損傷に結合する接着剤を提供することができる。接着される上記損傷の要素は、細胞、コラーゲン、コレステロール、リポタンパク質、または、石灰化を含む。
上記デバイスは、上記生体活性剤を含有する上記コーティングと上記拡大および折り畳み可能な構造との間に存在する分解性のコーティングされた層を含むことができる。例えば、上記分解性の層は、上記拡大および折り畳み可能な構造の表面上の下地コーティングとして存在することができる。
(コーティングポリマー)
上記コーティングは、非拡大状態において、上記生体活性剤の固定化を可能にするポリマー材料(一つまたは複数のポリマー)から形成されることができる。上記ポリマー材料は、上記マトリックスの形成に有用な、一つまたは複数のホモポリマー、コポリマー、これらの組み合わせ、または、これらの混合物を含むことができる。一様態では、上記ポリマー材料は、上記コーティングとして可塑性ヒドロゲルマトリックスを形成するために用いられる。
調製のある様式では、一つまたは複数のマトリックスを形成しているポリマーおよび生体活性剤を含むコーティングの組成物が形成される。通常、上記コーティング材料は、上記生体活性剤を有するマトリックスを形成するために好適な組成で選択および使用される。一実施様式では、親水性ポリマーは、上記生体活性剤も含む水性の組成物を調製するために用いられる。上記生体活性剤は、不水溶性とするこができ、これは、上記生体活性剤が容易に水に溶解しないことを意味する。
他の場合では、生体活性剤は、上記一つまたは複数のマトリックスを形成しているポリマーを有するコーティングの組成に含まれない。このようなコーティングプロセスでは、上記生体活性剤は、上記コーティングされたポリマーマトリックスと組み合わせる後段のコーティング工程で用いられる。
通常、コーティングの組成物は、好適な物理的特性(例えば、弾性および生体活性剤の保持力など)を提供できるポリマーの量および種類を含む。ある様態では、上記マトリックスを形成するために用いられる上記組成物中の上記ポリマー材料の量は、約5mg/mL〜約50mg/mLの範囲の濃度、約10mg/mL〜約40mg/mLの範囲の濃度、または、約10mg/mL〜約20mg/mLの範囲の濃度である。実施様式の例では、上記ポリマー材料は、上記コーティングの組成物中に約15mg/mLの濃度で存在する。
また、上記ポリマー材料は、ポリマーの架橋マトリックスを形成するために活性化されることができる光反応性のペンダント基または重合可能なペンダント基を含むことができる。また、これらの基の誘導体化のレベルに応じて、上記組成物中のポリマーの量は、選択されることができる。
マトリックス形態のポリマー材料として有用な親水性ポリマーの一分類は、合成の親水性ポリマーである。生体安定性を有する(すなわち、インビボにて顕著な分解を示さない)合成の親水性ポリマーは、アクリル単量体、ビニル単量体、エーテル単量体、または、これら種類の単量体のうち任意の一つまたは複数の組み合わせを含んでいる好適な単量体から調製されることができる。アクリル単量体としては、例えば、メタクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、グリセロールアクリレート、グリセロールメタクリレート、アクリルアミド、メタアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド(DMA)、および、これらの任意の誘導体と混合体の一方または両方が挙げられる。ビニル単量体としては、例えば、ビニルアセテート、ビニルピロリドン、ビニルアルコール、および、これらの任意の誘導体が挙げられる。エーテル単量体としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、および、これらの任意の誘導体が挙げられる。
これら単量体から形成されることができるポリマーの例としては、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メタアクリルアミド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)およびポリ(HEMA)が挙げられる。親水性ポリマーの例としては、例えば、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸のコポリマーおよびビニルピロリドン/(メタ)アクリルアミドのコポリマーが挙げられる。ホモポリマーの混合体、コポリマー、またはホモポリマーおよびコポリマーも用いられることができる。
ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド−co−アミノプロピルメタクリルアミド)およびポリ(アクリルアミド−co−N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド)などの一部のアクリルアミド系ポリマーの例は、米国特許第2006/0030669号(出願日:2004年9月17日(Taton et al.))公開公報の実施例2に記載されている。上記米国特許公開公報を本明細書に引用することにより、その開示内容を本願に援用する。
ある実施形態では、上記親水性ポリマーは、ビニルピロリドンポリマー、または、ポリ(ビニルピロリドン−co−メタアクリルアミド)などのビニルピロリドン/(メタ)アクリルアミドコポリマーである。PVPコポリマーが使用される場合、当該PVPコポリマーは、ビニルピロリドンとアクリルアミド単量体から成る一群から選択される単量体とのコポリマーとすることができる。アクリルアミド単量体の例としては、ジメチルアクリルアミドに例示されるようなアルキル(メタ)アクリルアミド、アミノプロピルメタクリルアミドおよびジメチルアミノプロピルメタクリルアミドに例示されるようなアミノアルキル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミドおよび(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられる。例えば、ポリ(ビニルピロリドン−co−N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド)は、米国特許第2006/0030669号(Taton et al.)公開公報の実施例2に記載されている。
一実施形態では、上述したポリマーおよびコポリマーは、一つまたは複数の光活性化可能な基から誘導体化される。生体安定性を有する親水性ポリマーからのペンダントであることができる光反応基の例としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン、キノン、アントロンのようなヘテロ環などのアリールケトンが挙げられる。これにより、ペンダント活性光官能基(pendent activatable photogroup)を有している親水性ポリマーが提供される。上記親水性ポリマーは、上記拡大および折り畳み可能な構造に用いられることができ、その後、処理されることができる。上記光官能基の活性化および標的(上記拡大および折り畳み可能な構造の材料など)への共有結合を引き起こすのに十分な化学線で処理されることができる。光親水性ポリマーの使用により、上記親水性ポリマー材料が上記拡大および折り畳み構造の上記材料に共有結合された、可塑性ヒドロゲルマトリックスの耐久性コーティングを提供することができる。
ペンダント光反応基を有する親水性ポリマーは、上記可塑性ヒドロゲルコーティングを調製するために用いられることができる。光反応基を有する親水性ポリマーを調製する方法は、当該技術分野に公知である。例えば、光PVPの調製方法は、米国特許第5,414,075号明細書にて開示されており、上記米国特許を本明細書中に引用することにより、その開示内容を本願に援用する。光ポリアクリルアミドの調製方法は、米国特許第6,007,833号明細書にて開示されており、当該米国特許を本明細書に引用することにより、その開示内容を本願に援用する。
他の実施形態では、一つまたは複数の重合可能な基により、上述したポリマーおよびコポリマーを誘導体化している。重合可能なペンダント基を有するポリマーは、一般にマクロマーという。上記重合可能な基は、上記ポリマー鎖の末端部分(末端)に存在することができる、または、上記ポリマーの長さに沿って存在することができる。一実施形態では、重合可能な基は、上記ポリマーの長さに沿って不規則に位置している。重合可能な基は、上記生体活性剤が固定化された架橋マトリクスから活性化されることができる。
適宜、上記コーティングは、架橋剤を含むことができる。架橋剤は、上記コーティング内のポリマーの結合性を促進することができる、または、ポリマーと上記コーティングされた表面との結合を促進することができる。上記コーティングの組成物の成分に応じて、特定の架橋剤の選択を行うことができる。
好適な架橋剤は、上記組成物中の上記ポリマーと反応可能な二つまたは複数の活性化可能な基を含む。好適な活性化可能な基としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン、キノン、および、アントロンのようなヘテロ環などのアリールケトンのような本明細書中に記載されている光反応基が挙げられる。
光活性可能な上記架橋剤は、イオンであることができ、そして水性組成物中における良質な溶解性を有することができる。よって、ある実施形態では、少なくとも一つのイオン性の光活性可能な架橋剤は、上記コーティングを形成するために用いられる。上記イオン性の架橋剤は、スルホン酸、カルボン酸、ホスホン酸、これらの塩から選択される、酸性基またはその塩を含むことができる。対イオンの例としては、アルカリ、アルカリ土類金属、アンモニウム、および、プロトン化アミンなどが挙げられる。
イオン性の光活性可能な架橋剤の例としては、4,5−ビス(4−ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン−1,3−ジスルホン酸またはその塩;2,5−ビス(4−ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン−1,4−ジスルホン酸またはその塩;2,5−ビス(4−ベンゾイルメチレンオキシ)ベンゼン−1−スルホン酸またはその塩;N,N−ビス[2−(4−ベンゾイルベンジルオキシ)エチル]−2−アミノエタンスルホン酸またはその塩などが挙げられる。米国特許第6,278,018号明細書を参照。上記米国特許を本明細書に引用することにより、その開示内容を本願に援用する。
天然のポリマーはまた、上記マトリックスを形成するために用いられることができる。天然のポリマーは、ポリサッカリド(例えばポリデキストラン、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシメチルセルロース);グリコサミノグリカン(例えばヒアルロン酸);ポリペプチド(例えば、可溶性タンパク(コラーゲン、ルブミン、アビジンなど));および、これらの天然のポリマーの組み合わせが挙げられる。天然のポリマーと合成のポリマーとの組み合わせもまた用いられることができる。
一実施様式では、上記生体活性剤が、第2ポリマーより低いTgを有する第1ポリマーを含む。より高い硬質性を有する上記第2ポリマーは、上記マトリックスから放出される上記生体活性剤の放出速度を低下させることができる。例えば、PLGAなどの適切な第1ポリマーの上記Tgが約45℃であり、PLLAなどの適切な第2ポリマーのTgが約55℃である。ある様態では、上記第1ポリマーのTgと上記第2ポリマーのTgの差が約5℃以上である。より特定の様態では、上記第1ポリマーのTgと上記第2ポリマーのTgとの差が約10℃以上である。ある様態では、上記第1ポリマーと上記第2ポリマーが約35℃以上のTgを有する。より特定の様態では、上記第1ポリマーと上記第2ポリマーが約35℃〜約65℃の範囲のTgを有する。
上記第1ポリマーおよび上記第2ポリマーの選択は、分子量、溶解性および流動学などのこれらポリマーの他の特性に基づくことができる。
ある実施形態では、上記ポリマーマトリックスは、両親媒性コポリマー、低分子量の疎水性ポリマー、オルガノゲル、変形可能なヒドロゲル、これらの複数、または、これらの混合体を含む。実施形態では、生体活性剤を含んでいる上記コーティングは、両親媒性コポリマーを含むか、または、両親媒性コポリマーから構成される。適切な両親媒性コポリマーは、ラクチド/グリコリド/カプロラクトン/ポリエチレングリコールのコポリマーを含む。このようなコポリマーは、ポリエチレングリコールのブロックを含むことができる。本発明に限定されないが、両親媒性コポリマーは、疎水性薬物の溶解性を促進する疎水性ドメインを含み、親水性ドメインは水を吸収して、血液に晒された場合に上記コーティングが膨張できるようにすると考えられている。
実施形態では、生体活性剤を含んでいる上記コーティングが、平均分子量の低い疎水性ポリマーを含むか、または、当該疎水性ポリマーから成る。適切な低分子量の疎水性ポリマーは、ポリラクチド/グリコリド/カプロラクトンコポリマーを含む。
実施形態では、上記薬剤コーティングは、一つまたは複数の溶媒および上記生体活性剤を含む。他の実施形態では、上記薬剤コーティングはオルガノゲルを含む。他の実施形態では、上記薬剤コーティングは、変形可能なヒドロゲルを含む。
実施形態では、上記薬剤コーティングが脂質を含む。本発明に限定されないが、上記脂質は、組織内の薬物の接着および浸透を促進することができると考えられている。薬物は、脂質キャリア中で乳化されることができる。
実施形態では、上記薬物は、変形可能なポリマー層(例えば、疎水性ポリマー、オルガノゲル、または、変形可能なヒドロゲル)中に溶解または分散される。実施形態では、このようなコーティングは、上記バルーンの表面から流れ出るか、または、漏れ出て、上記バルーンが膨張するときに上記組織に同化または付着する。
(生分解性ポリマー)
上記生分解性ポリマーは、インビボにおいてインプラントの形態にて用いられる、一つまたは複数(例えば、一つ、二つ、三つ、または、四つ)の特定の生分解性ポリマーを含むことができる。適切なポリマーは、生分解性となり、生体適合性溶媒系中で実質的に溶解可能となる。特に、上記生分解性ポリマーは、上記生体適合性溶媒系中において、25℃、1atmの条件下で少なくとも約50g/Lの溶解性を有することができる。一実施形態では、上記生分解性ポリマーは、上記生体適合性溶媒系中では実質的に不溶性のポリマーを含まない。実施形態では、上記生分解性ポリマーは、水または体液に対して実質的に不溶性の生分解性ポリマーを含まない。
ポリマーの適切な特定分類としては、例えば、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリアンヒドリド、ポリアミン、ポリウレタン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、コハク酸塩、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、ポリサッカリド、キチン、キトサン、および、コポリマー、ブロックコポリマー、マルチブロックコポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)を有するマルチブロックコポリマー、ポリオール、ターポリマー、および、これらの混合体が挙げられる。
一実施形態では、上記生分解性ポリマーは熱可塑性ポリマーである。
一実施形態では、上記生分解性ポリマーは、37℃で少なくとも約100cPの粘度を有する。他の実施形態では、上記生分解性ポリマーは、37℃で少なくとも約1,000cP〜約30,000cP、37℃で約5,000cP〜約25,000cP、または、37℃で約10,000cP〜約20,000cPの粘度を有する。
一実施形態では、上記生分解性ポリマーは疎水性である。
一実施形態では、上記生分解性ポリマーはブロックポリマーを含む。実施形態では、上記生分解性ポリマーは、トリブロックポリマーを含有するポリエチレングリコール(PEG)である。
一実施形態では、上記ポリマーは機能性の側鎖基を有する。
上記生分解性ポリマーは、上記溶媒系において実質的に溶解可能であり、上記溶媒系と組み合わせることによって、インビボにてインプラントの形態である場合、任意の適切および効果的な量で存在することができる。一実施形態では、上記生分解性ポリマーは、製剤の約10重量%〜約40重量%にて存在する。実施形態では、上記生分解性ポリマーは、製剤の約40重量%〜約90重量%にて存在する。
一実施形態では、上記生分解性ポリマーは、例えば商品名“SynBiosys(商標)”で販売されているポリ(エーテルエステル)マルチブロックコポリマーを含むことができる。実施形態では、上記生分解性ポリマーは、ポリグリセロール脂肪酸エステルを含むことができる。実施形態では、上記生分解性ポリマーは、PEG−PBTポリマーを含むことができる。実施形態では、上記生分解性ポリマーは、ポリ(エステルアミド)ポリマー(PEA)を含むことができる。
(ポリ(エーテルエステル)マルチブロックコポリマー)
本発明に有用な生分解性ポリマーの好適な一分類は、ポリ(エーテルエステル)マルチブロックコポリマーを含む。これらマルチブロックコポリマーは、DL−ラクチド、グリコリド、e−カプロラクトン、およびポリエチレングリコールの異なる組み合わせの多様なプレポリマー構築ブロックから構成されている。上記分子の組成、分子量(Mw1,200〜6,000)、および、上記プレポリマーのブロックの比率を変化させることによって、上記最終ポリマーに異なる機能性を取り入れることができる。そして、これにより、多様な生理化学的性質を有するポリマーを作製することができる。疎水性ポリマーおよび親水性/膨潤性ポリマーと緩徐分解性ポリマーおよび急速分解性ポリマーとの両方を設計することができる。
上記ポリ(エーテルエステル)マルチブロックコポリマーは、以下(式(III))に示すようなポリマーを含むことができる:
Figure 0005984806
ここで、mおよびpのそれぞれは互いに独立してグリコリドであり;
nはMwが300〜1,000のポリエチレングリコールであり;
oはe−カプロラクトンであり;および、
qはDL−ラクチドである。
生理学的条件下では、このようなポリ(エーテルエステル)マルチブロックコポリマーは、加水分解により完全に分解されることで、代謝、尿経路を介して排出され、または代謝されて尿経路を介して排出される非毒性分解生成物になることができる。その結果、生体材料が蓄積されることがなくなり、長期異物反応の可能性が減少する。
上記ポリ(エーテルエステル)マルチブロックコポリマーの他の特徴または説明は、例えば、PCT特許出願第WO 2005/068533号の公開公報および当該公開公報内に引用された参照文献に記載されている。これらの要約を以下に示す。
上記マルチブロックコポリマーは、具体的には、多機能の、具体的には脂肪族の鎖の延長剤によって結合されている、異なる組成を有する二つの加水分解性部分を含み、そして特に本質的には、生理学的状態(湿潤環境、体温(ヒトの場合は約37℃))下では完全に非晶質である。
この結果得られるマルチブロックコポリマーは、具体的には、以下の式(1)〜(3)の何れかにより示される構造を有することができる:
Figure 0005984806
ここで、RおよびRは、非晶性ポリエステル、非晶性ポリエーテルエステル、または、非晶性ポリカーボネート;または、エステル基、エーテル基、および、カーボネート基の一つまたは全ての組み合わせから得られる非晶性のプレポリマーとすることができる。RおよびRは、ポリエーテル基を含むことができ、このことは、これらの化合物を重合開始剤として使用することに起因することができる。上記ポリエーテルは、室温では非晶質または結晶質である。しかし、このように導入した上記ポリエーテルは、生理学的条件下では非晶質となる。RおよびRは、非晶性プレポリマーまたは非晶性ブロックAおよびBにそれぞれ由来するので、RおよびRは互いに同一ではない。RおよびRは、同時にポリエーテル基を含むことができる。特定実施形態では、RおよびRの一方のみがポリエーテル基を含有する;
zはゼロまたは正の整数である;
は、ポリ(エチレングリコール)などのポリエーテルであり、存在(z≠0)していてもよく、欠如(z=0)していてもよい。Rは生理学的条件下では非晶質になる;
は、脂肪族のC〜Cアルキレン基であり、C〜C10アルキレンによって適宜置換され、直鎖状のまたは環状の脂肪族基であり、ここでRは具体的にはブチレン、−(CH−基であり、C〜C10アルキレン側基は保護されたS、N、P、または、O部位を含むことができる;
xおよびyの両方は正の整数であり、ともに少なくとも1とすることができ、xとyの合計(x+y)が具体的には最大で1,000であり、より具体的には最大で500であり、または、最大で100とすることができる。Q1〜Q6は、上記プレポリマーと上記多機能の鎖の延長剤との反応によって得られる結合ユニットである。Q1〜Q6は互いに独立してアミン、ウレタン、アミド、カーボネート、エステル、または、無水物である。全結合基(linking groups)Qが異なる事態は稀であり、好ましいものではない。
典型的には、1種類の鎖の延長剤は同一の末端基を有する三つのプレポリマーと共に用いられることができ、これにより六つの同様の結合基を有する式(1)のコポリマーが得られる。プレポリマーRおよびRの末端が異なる場合、2種類の基Qが存在することになる;例えば、Q1およびQ2は、二つの結合されたプレポリマー部分Rの間では同一であるが、RとRが結合されている場合には異なる。明らかに、Q1およびQ2が同一である場合は、これらは互いに同一種の基であり、互いに鏡像的である。
上記式(2)および(3)で表されるコポリマーでは、上記基Q1およびQ2は、同一の末端基(通常はヒドロキシル基)を有する二つのプレポリマーが存在する場合、互いに同一の基であるが、それぞれ末端の異なるプレポリマー(例えば、ジオール末端と二塩基酸末端の‘トリブロック’プレポリマーであるPEG)が存在する場合は互いに異なる基である。上記トリブロックプレポリマー(RおよびR)の場合、外側のセグメントは、原則的にPEGを含まないようにすべきである。これは、当該外側のセグメントがPEGを含まないようにしなければ、開環によるカップリング反応を首尾よく行うことができないためである。内側ブロックのみがPEG分子によって開始されることができる。
上記式(1)、(2)、および(3)で表す例は、二官能性の鎖の延長剤と二官能性のプレポリマーとの反応結果を示す。
上記式(1)を参照すると、セグメントaとセグメントbが交互に配置された構造(ab)n、またはセグメントaとセグメントbがランダムに分布された構造(ab)rを有し、(z=0の場合について)‘a’はプレポリマー(A)に由来する上記セグメントRに対応し、‘b’はプレポリマー(B)に由来する上記セグメントRに対応するマルチブロックコポリマーまたは分節コポリマーとしても、上記ポリエステルを表すことができる。上記構造(ab)rの場合、‘a’/‘b’の比率(上記式(1)中の‘x’/‘y’の比率に対応)が一致していてもよいし、一致からは遠い状態であってもよい。上記プレポリマーを任意の所望量で混合することができ、多機能鎖延長剤(すなわち、少なくとも二つの官能基を有しているので、上記プレポリマーを化学的に結び付けるために使用することができる化合物)によってカップリングすることができる。具体的には、上記多機能鎖延長剤は二官能性鎖延長剤である。z≠0の場合、全セグメントのランダム分布は、三つの異なるプレポリマー(そのうちの一つは、例えば、ポリエチレングリコール)を可能性のある全比率でランダムに分布させた構造(abc)rによって提示することができる。各セグメントの交互の分布は、構造(abc)nによって提示する。この特定の場合では、終端が同等の二つのプレポリマー(aおよびc、または、bおよびc)と終端の異なるプレポリマーbまたはaを同等の量(a+c=b、または、b+c=a)でそれぞれ交互に配置する。上記式(2)または(3)で表されるコポリマーは、構造(aba)nおよび(bab)nを有し、abaトリブロックプレポリマーおよびbabトリブロックコポリマーは二官能性分子によって鎖延長されている。
aとb(および、aとbに加えて適宜c)をランダムに有するコポリマーを取得する方法は、プレポリマーaおよびbの比率が1となるように(ab)nのようなコポリマーにおいて、交互に配置されている場合と比較して、はるかに有利な方法である。その後、上記プレポリマーの長さを調整することによってのみ、上記コポリマーの組成を決定することができる。一般に、(ab)nが交互のコポリマーにおいて、上記セグメントaおよびbの長さは、構造ABAまたはABを有するブロックコポリマーのブロックよりも小さい。
上記セグメントaおよびb(適宜、上記セグメントaおよびbに加えてセグメントc)が(ab)r、(abc)r、(ab)n、および、(abc)nで形成された上記プレポリマーは、上記二官能性の鎖の延長剤によって結び付けられている。この鎖の延長剤は、具体的にはジイソシアン酸塩の鎖の延長剤とすることができるが、二価酸化合物またはジオール化合物とすることもできる。全てのプレポリマーがヒドロキシル末端基を有する場合、結合ユニットとしてウレタン基とする。(一つの)上記プレポリマーの末端がカルボン酸の場合、上記結合ユニットとしてアミド基とする。構造(ab)rおよび(abc)rを有するマルチブロックコポリマーは、エステル結合を形成しているDCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)のようなカップリング剤を使用して、ジカルボン酸末端のプレポリマーとジオール鎖延長剤との反応、または、その逆(ジオール末端プレポリマーと二塩基酸鎖延長剤との反応)によって調製されることができる。(aba)nおよび(bab)nではまた、abaプレポリマーおよびbabプレポリマーは、具体的には脂肪族の二官能性鎖延長剤、より具体的にはジイソシアン酸塩鎖延長剤、により結合されている。
用語“ランダムにセグメント化された”コポリマーは、セグメントaおよびb:(ab)r、または、a、bおよびc:(abc)rがランダムに分布した(すなわち、交互でない)コポリマーをいう。
(PEG−PBTポリマー)
本発明に有用な生分解性ポリマーの適切な一分類は、ポリ(エチレングリコール)(PEDG)およびポリ(ブチレンテレフタラート)(PBT)に基づいた上記ポリ(エーテルエステル)マルチブロックコポリマーを含み、当該ポリ(エーテルエステル)マルチブロックコポリマーは以下の一般式(IV)で表すことができる:
Figure 0005984806
はテレフタル酸の各エステル化された分子からの芳香族環の残基を示し、
nは各親水性PEGブロックのエチレンオキシド単位の数を示し、
xは上記コポリマーの親水性ブロックの数を示し、
yは上記コポリマーの疎水性ブロックの数を示す。
特定の実施形態では、上記PEGブロックの分子量が約300から約4,000の間に収まるようにnを選択することができる。特定の実施形態では、上記マルチブロックコポリマーが約55重量%から最大で約80重量%のPEGを含むようにxおよびyのそれぞれを互いに独立して選択することができる。
上記コポリマー構造におけるn、x、および、yの値を変更することで、上記ブロックコポリマーは、設計され、多様な物理的特性(例えば、親水性、接着力、強度、可鍛性、分解性、耐久性、柔軟性)および生体活性剤の放出特性(例えば、ポリマーの分解および膨潤の制御)を得るようにすることができる。
(ポリエステルアミド)
本発明に有用な生分解性ポリマーの適切な一分類として、下記式(V)のサブユニットを有するポリエステルアミドポリマーを含む:
Figure 0005984806
ここで、xはC〜C12であり、
yはC〜C12であり、そして、
Rは、−CH(CH、−CHCH(CH、−CH(CH)CHCH、−CH(CHCH、−CH、−CH(CHSCH、または、アミノ酸の一部を示す。
特定の実施形態では、上記C〜C12をC〜C12のアルキルとすることができる。他の実施形態では、上記C〜C12を、適宜置換されているC〜C12のアルキルとすることができる。
このようなポリマーは、例えば、米国特許第6,703,040号明細書に記載されている。この性質のポリマーは、用語“x−aa−y”を用いて記述することができ、当該用語“x−aa−y”中、“x”は、x個の炭素原子を有するアルキルジオールを示し、“aa”は、ロイシンまたはフェニルアラニンなどのアミノ酸を示し、“y”は、y個の炭素原子を有するアルキルジカルボン酸を示し、当該ポリマーは、当該ジオール、当該ジカルボン酸、および当該アミノ酸を重合したものである。この種のポリマーの例は、4−Leu−4である。
(ポリ(エステルアミド)ポリマー(PEA))
本発明に有用な生分解性ポリマーの適切な一分類として、上記ポリ(エステルアミド)ポリマーを含む。このようなポリマーは、ジオールと、ジカルボン酸と、α−アミノ酸とをエステル結合およびアミド結合によって(DACA)の形態で重合させることにより、調製することができる。(DACA)ポリマーの例を下記の式(VI)に示す。適切なアミノ酸としては、任意の天然または合成α−アミノ酸、特に中性アミノ酸が挙げられる。
任意の脂肪族ジオールをジオールとして使用することができ、当該脂肪族ジオールとして、HO−(CH−OH(すなわち、非分岐状)、分岐状ジオール(例えば、プロピレングリコール)、環状ジオール(例えば、ジアンヒドロヘキシトールおよびシクロヘキサンジオール)、または、エチレングリコール(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、または、ポリ(エチレングリコール))に基づいたオリゴマージオールのようなアルキレンジオールを挙げることができる。芳香族ジオール(例えば、ビス−フェノール)はより毒性が強く、また、芳香族ジオール系のポリマーの鎖は硬くて生体分解され難いため、これらの目的に対する当該芳香族ジオールの有用性は低い。
ジカルボン酸は、α−ω−ジカルボン酸(すなわち、非分岐状)、分岐状のジカルボン酸、環状ジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸)などの任意の脂肪族ジカルボン酸とすることができる。(フタル酸などのような)芳香族の二価酸は、より毒性が強いため、これらの目的に関しては有用性がより低い。上記芳香族の二価酸に基づいたポリマーは、硬い鎖状構造を有し、膜形成特性が低く、生体分解する傾向が一層低い。
特定のPEAポリマーは、以下の式(VI)を有する:
Figure 0005984806
ここで、kは2〜12(例えば、2、3、4、または、6)であり;
mは2〜12(例えば、4または8)であり;そして、
Rは−CH(CH、−CHCH(CH、−CH(CH)CHCH、−CH(CHCH、−CH(C)、または、CH(CH)SCHである。
特定の実施形態では、AはL−フェニルアラニン(Phe−PEA)であり、AはL−ロイシン(Leu−PEA)である。特定の実施形態では、Leu−PEAに対するPhe−PEAの比率は、10:1〜1:1の範囲である。他の特定の実施形態では、Leu−PEAに対するPhe−PEAの比率は、5:1〜2.5:1の範囲である。
上記ポリ(エステルアミド)ポリマー(PEA)の他の特徴および説明は、例えば、米国特許第6,703,040号明細書の再発行である米国再公表特許第40,359号明細書に記載されている。
(天然の生分解性ポリサッカリドの疎水性誘導体)
本発明に有用な生分解性のポリマーに好適な一分類は、Eureka(商標)SOLO polymerの商品名で販売されているものなどの天然の生分解性ポリサッカリドの疎水性誘導体を含む。天然の生分解性ポリサッカリドの疎水性誘導体は、ポリサッカリドに付着した一つまたは複数の疎水性ペンダント基を有する天然の生分解性ポリサッカリドをいう。多くの場合、上記疎水性誘導体は、上記ポリサッカリドに付着した炭化水素のセグメントを含む複数の基を含む。炭化水素のセグメントを含んでいる複数の基が付着している場合、当該複数の基は、上記疎水性誘導体の“疎水性部分”と総称する。したがって、上記疎水性誘導体は疎水性部分とポリサッカリド部分とを含む。
上記ポリサッカリド部分は天然の生分解性ポリサッカリドを含む。上記天然の生分解性ポリサッカリドは、酵素的に分解可能な非合成ポリサッカリドをいう。天然の生分解性ポリサッカリドは、植物または動物などの天然源から得られるポリサッカリドおよびポリサッカリド誘導体の一方または両方を含む。天然の生分解性ポリサッカリドは、天然の生分解性ポリサッカリドを加工または修飾した任意のポリサッカリド(例えば、マルトデキストリンは、スターチを加工した天然の生分解性ポリサッカリドである)を含む。天然の生分解性ポリサッカリドの例としては、マルトデキストリン、アミロース、シクロデキストリン、ポリアルジトール、ヒアルロン酸、デキストラン、ヘパリン、コンドロイチンサルフェート、デルマタンサルフェート、ヘパランサルフェート、ケラタンサルフェート、デキストラン、デキストランサルフェート、ポリ硫酸ペントサン、および、キトサンが挙げられる。特定のポリサッカリドは、分岐構造を僅かに有するか、または、有さない低分子量のポリマーである。上記低分子量のポリマー(例えばマルトデキストリン、アミロースおよびシクロデキストリン)は、スターチの調製から作製される、スターチの調製時に見出される、またはその両方である。よって、上記天然の生分解性ポリサッカリドは、実質的に非分岐状のポリ(グルコピラノース)ポリマーまたは完全に非分岐状のポリ(グルコピラノース)ポリマーとすることができる。
“アミロース”または“アミロースポリマー”は、α−1,4結合によって接合されたグルコピラノースの繰り返し単位を有する直鎖状のポリマーをいう。一部のアミロースポリマーは、α−1,6結合を介して非常に少量(当該α−1,6結合の約0.5%未満)の分岐を有することができるが、それでもやはり直鎖状(非分岐状)のアミロースポリマーが示す物理的特性と同一の物理的特性を示す。通常、植物源由来のアミロースポリマーは、約1×10Da以下の分子量を有する。対照的に、アミロペクチンは、α−1,4結合により連結されて直鎖状の部分を構成するグルコピラノース単位の繰り返しを有する分岐状のポリマーであり、当該直鎖状の部分はα−1,6結合を介して互いに結び付けられている。分岐箇所の結合は、通常は全結合の1%より大きく、一般的には当該全結合の4%〜5%より大きい。通常、植物源由来のアミロペクチンは、1×10Da以上の分子量を有する。
例えば、一部様態では、高アミロース含有量のスターチ調合液、精製アミロース調合液、合成調製アミロース調合液、または、濃縮アミロース調合液をアミロースの疎水性誘導体の調製に使用することができる。スターチ源では、アミロースは、一般的には、分岐状のポリサッカリドであるアミロペクチンとともに存在している。アミロースと高分子量前駆体(アミロペクチンなど)の混合物を使用した場合、上記組成物中のアミロースの含有量を当該高分子量前駆体の含有量よりも大きくすることがきる。例えば、一部様態では、アミロースポリマーの疎水性誘導体の調製に高アミロース含有量のスターチ調合液、精製アミロース調合液、合成調製アミロース調合液、または、濃縮アミロース調合液を使用することができる。一部実施形態では、上記組成物が、アミロースを含むポリサッカリドの混合物を含み、当該ポリサッカリドの混合物中のアミロース含有量が50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、85重量%以上である。他の実施形態では、上記組成物が、アミロースとアミロペクチンを含むポリサッカリドの混合物を含み、当該ポリサッカリドの混合物中のアミロース含有量は30重量%以下または15重量%以下である。
スターチ中に存在するアミロペクチンの量はまた、α−1,6結合を開裂する結果、当該アミロペクチンを脱分岐してアミロースとするアミロペクチナーゼで当該スターチを処理することで、減少されることができる。
炭化水素セグメントを有するペンダント基で上記アミロースポリマーの誘導体化のプロセスの前、最中、および、後のうち一つ以上の段階で、上記アミロースの量を濃縮するか、または、上記アミロースを精製する工程が行われてもよい。
特定の分子量のアミロースは、市販のものを購入することができる。または、特定の分子量のアミロースは、調製することができる。例えば、平均分子量がそれぞれ70kDa、110kDa、および、320kDaの合成アミロースは、株式会社中埜酢店(愛知県、日本)から得ることができる。特定のサイズ範囲のアミロースの使用は、上記組成物の物理的特性(例えば、粘度)、インプラントの所望の分解率、および、医薬品有効成分(API)の性質および量などの要因によって決定され得る。
精製されたまたは濃縮されたアミロースの調合物は市販されているが、クロマトグラフィなどの標準的な生化学的手法を使用して調製することもできる。一部様態では、高アミロースコーンスターチを使用して上記疎水性誘導体を調製することができる。
マルトデキストリンは、一般的に、(i)加水分解が所望の程度に到達するまで、熱安定性のα−アミラーゼでスターチスラリーを85℃〜90℃の温度で加水分解し、(ii)第2加熱処理を行って当該α−アミラーゼを不活性化することで、生成される。上記マルトデキストリンを濾過して精製した後、噴霧乾燥させて最終生成物とすることができる。マルトデキストリンは、一般的には、そのデキストロース当量(DE)値により特徴付けられ、上記デキストロース当量(DE)値は、「DE=Mw デキストロース/数平均Mw スターチ加水分解物×100」により定義される加水分解度に関連する。通常、マルトデキストリンは、アミロース分子より小さな分子量を有すると考えられている。
完全に加水分解されてデキストロース(グルコース)となったスターチ調合物のDE値は100であり、スターチのDE値は約0である。0より大きく100未満の値のDEにより、スターチ加水分解物の平均分子量(mean-average molecular weight)が特徴付けられ、マルトデキストリンは20未満のDE値を有すると考えられている。多様な分子量のマルトデキストリン(例えば、分子量が約500Da〜約5,000Daの範囲のマルトデキストリン)は市販されている(例えば、CarboMer社(サンディエゴ、カリフォルニア州)製)。
天然の生分解性ポリサッカリドの意図される他の分類は、天然の生分解性非還元ポリサッカリドである。非還元ポリサッカリドにより不活性マトリックスを提供することができ、これによりタンパク質および酵素などの医薬品有効成分(APIs)の安定性が向上する。非還元ポリサッカリドは、トレハロース(α−D−グルコピラノシル α−D−グルコピラノシド)およびスクロース(β−D−フルクトフラノシル α−D−グルコピラノシド)などの非還元ジサッカリド(アノマー中心を介して互いに結び付いた二つのモノサッカリド)をいう。非還元ポリサッカリドの例としては、GPC(マスカティーン、アイオワ州)から入手可能なポリアルジトールが挙げられる。他の様態では、上記ポリサッカリドは、繰り返し(1→3)O−β−D−グルコピラノシル単位を含むポリマーなどのグルコピラノシルポリマーである。
デキストランは、側鎖1−3がデキストラン生体高分子の骨格単位に結合しているα−D−1,6−グルコース結合グルカンである。デキストランは、グルコピラノース単量体単位の2位、3位、4位にヒドロキシル基を含む。デキストランは、リューコノストック メゼンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)B512Fによるスクロース含有媒体の発酵から得ることができる。
デキストランは、低分子量調合物で得ることができる。ペニシリウム属およびバーティシリウム属などの菌から得られる酵素(デキストラナーゼ)は、デキストランを分解することが示されてきた。同様に多くの細菌が、デキストランを低分子量の糖類に分ける細胞外デキストラナーゼを生成する。
コンドロイチンサルフェートは、D−ガラクトサミンおよびD−グルクロン酸の上記繰り返しジサッカリド単位を含み、一般的には15個〜150個のこれら繰り返し単位を含む。コンドロイチナーゼACは、コンドロイチンサルフェートAおよびC、ならびにコンドロイチンを開裂する。
ヒアルロン酸(HA)は、β−1,4−グルクロン酸単位とβ−1,3−N−アセチル−D−グルコサミン単位を交互に含む天然由来の直鎖状のポリマーである。HAは、結合組織液中の主要なグリコサミノグリカンである。HAは、ヒアルロニダーゼの存在下で断片化されることができる。
多くの様態では、上記ポリサッカリド部分と上記疎水性部分が、上記天然の生分解性ポリサッカリドの上記疎水性誘導体の上記主要部分を含む。重量パーセントに基づいて、上記ポリサッカリド部分は上記疎水性誘導体の約25重量%以上、約25重量%〜約75重量%の範囲、約30重量%〜約70重量%の範囲、約35重量%〜約65重量%の範囲、約40重量%〜約60重量%の範囲、または、約45重量%〜約55重量%の範囲とすることができる。同様に、疎水性誘導体全体の重量パーセントに基づくと、上記疎水性部分の重量パーセントは、上記疎水性誘導体の約25%重量以上とすることができ、約25重量%〜約75重量%の範囲、約30重量%〜約70重量%の範囲、約35重量%〜約65重量%の範囲、約40重量%〜約60重量%の範囲、または、約45重量%〜約55重量%の範囲とすることができる。様態例では、上記疎水性誘導体の重量の約50重量%は上記ポリサッカリド部分に起因し、約50重量%が疎水性部分に起因する。
上記疎水性誘導体は、水に不溶性の特性を有している。不溶性を表す用語は、当該技術分野で使用される標準用語であり、10,000部またはそれ以上の溶媒当たりに含まれる1部の溶質を意味する(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th ed. (2000), Lippincott Williams & Wilkins, Baltimore Md.を参照)。
疎水性誘導体は、一つまたは複数の疎水性化合物と天然の生分解性ポリサッカリドポリマーを結合させることで調製することができる。天然の生分解性ポリサッカリドの疎水性誘導体の調製方法を本明細書中に記載する。
上記天然の生分解性ポリサッカリドの上記疎水性誘導体の平均分子量は、特に、最大で約1,000,000Da、最大で約300,000Da、または、最大で約100,000Daである。これらの分子量の誘導体を使用することにより、所望の物理的特性および薬物放出特性を有するインプラントを提供することができる。一部様態では、上記疎水性誘導体の分子量は、約250,000Da以下、約100,000Da以下、約50,000Da以下、または、約25,000Da以下である。上記天然の生分解性ポリサッカリドのサイズの特に具体的な範囲は、約2,000Da〜約20,000Daまたは約4,000Da〜約10,000Daである。
上記ポリマーの上記分子量を“重量平均分子量”またはMwとしてより正確に規定する。Mwは、分子量を測定する絶対方法であり、ポリマー(調合物)の分子量を測定するのに特に有用である。ポリマーの調合物は、一般的には、個々の分子量に僅かなバラつきが見られるポリマーを含んでいる。ポリマーは、分子量が比較的大きな分子であり、上記ポリマーの調合物のこのような僅かなバラつきが上記ポリマーの調合物の全体的な特性に影響を及ぼすことはない。上記Mwは、光散乱法または超遠心分離法などの一般的な技法を使用して測定することができる。ポリマーの調合物の分子量を定義するために使用される用語“Mw”および他の用語については、例えば、Allcock, H. R. and Lampe, F. W. (1990) Contemporary Polymer Chemistry; pg 271に記載されている。
疎水性部分の添加により、通常、上記サッカリドの分子量は、非誘導体化時の開始分子量から増加する。分子量の増加量を一つまたは複数の要因に応じて決定することができ、当該要因としては、ポリサッカリド誘導体の種類、誘導体化のレベル、および、例えばポリサッカリドに付着して上記疎水性部分を提供する基の種類などが挙げられる。
一部様態では、疎水性部分の添加により、上記ポリサッカリドの分子量は、非誘導体化形態の上記ポリサッカリドと比較して約20%以上、約50%以上、約75%以上、約100%以上、または、約125%以上増加する。
例として、開始重量が約3,000Daのマルトデキストリンを誘導体化して、上記ポリサッカリドとエステル結合により結合したヘキサン酸塩のペンダント基を提供し、得られる置換度(DS)は2.5である。これにより、理論分子量が約8,400Daの疎水性ポリサッカリドを提供する。
上記天然の生分解性ポリサッカリドの上記疎水性誘導体を形成する場合、例として、炭化水素セグメントを有する化合物を上記ポリサッカリドの一つまたは複数の部分と共有結合させることができる。例えば、上記ポリサッカリドの長さに沿って、上記化合物を単量体単位と結合させることができる。これにより、一つまたは複数のペンダント基を有するポリサッカリド誘導体を提供する。各化学基は炭化水素セグメントを含む。上記炭化水素セグメントは、上述の全ペンダント化学基を構成することができるか、または、上記炭化水素セグメントは、上述のペンダント化学基の一部分を構成することができる。例えば、上記疎水性ポリサッカリドの一部分は、以下の構造式(I)で表される構造を有することができる:
Figure 0005984806
ここで、Mは独立してモノサッカリド単位を示し、各Lは独立して適切な結合基または直接結合を示し、各PGは独立してペンダント基を示し、各xは独立して0〜約3の値を示し、xが0である場合、LとMの結合が欠如し、yは3以上の値を示す。
加えて、上記構造式(I)で表される単位を含む上記ポリサッカリドを式(II)で表す化合物とすることができる:
Figure 0005984806
ここで、Mは独立してモノサッカリド単位を示し、各Lは独立して適切な結合基または直接結合を示し、各PGは独立してペンダント基を示し、各xは独立して0〜約3の値を示し、xは0の場合、LとMの間の結合が欠如しており、yは約3〜約5,000の値を示し、ZおよびZは、それぞれ独立して水素、OR、OC(=O)R、CHOR、SiR、または、CHOC(=0)Rを示す。各Rは独立して水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロシクリル、または、ヘテロアリールを示す。アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロ環、および、ヘテロアリールは、それぞれ適宜置換されており、アルキル、シクロアルキル、および、ヘテロ環は、それぞれ適宜部分的に不飽和である。
上記式(I)および(II)によって表される上記化合物に関しては、上記モノサッカリド単位(M)がD−グルコピラノース(例えば、α−D−グルコピラノース)を含むことができる。加えて、上記モノサッカリド単位(M)は、非大環状ポリ−α(1→4)グルコピラノース、非大環状ポリ−α(1→6)グルコピラノース、または、非大環状ポリ−α(1→4)グルコピラノースと非大環状ポリ−α(1→6)グルコピラノースの混合物または組み合わせを含むことができる。例えば、上記モノサッカリド単位(M)は、少なくとも90%がα−(1→4)グリコシド結合により結合されたグルコピラノース単位を含むことができる。または、上記モノサッカリド単位(M)は、少なくとも90%がα−(1→6)グリコシド結合により結合されたグルコピラノース単位を含むことができる。加えて、上記ポリサッカリドの各モノサッカリドを同一種類にすることができる(ホモポリサッカリド)。または、上記ポリサッカリドの各モノサッカリドは異なることができる(ヘテロポリサッカリド)。
上記ポリサッカリドが、最大で約5,000までのモノサッカリド単位を含むことができる(すなわち、上記式(I)または(II)中のyが最大で5,000となる)。特に、上記モノサッカリド単位をグルコピラノース単位(例えば、α−D−グルコピラノース単位)にすることができる。加えて、上記式(I)または(II)中のyを特に約3〜5,000、または約3〜4,000、あるいは、100〜4,000の範囲にすることができる。
特定の実施形態では、上記ポリサッカリドは非大環状である。他の特定の実施形態では、上記ポリサッカリドは直鎖状である。他の特定実施形態では、上記ポリサッカリドは分岐状である。更に他の特定の実施形態では、上記ポリサッカリドは天然のポリサッカリド(PS)である。
上記ポリサッカリドは、適切なガラス転移温度(Tg)を有する。一実施形態では、上記ポリサッカリドは、少なくとも約35℃(例えば、約40℃〜約150℃)のガラス転移温度(Tg)を有する。実施形態では、上記ポリサッカリドは、−30℃〜約0℃のガラス転移温度(Tg)を有する。
“ペンダント基”は、化学式「(CH」を有する共有結合された炭素原子の基をいい、当該化学式中のmは2以上の値を示し、nは独立して2または1の値を示す。炭化水素セグメントは飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基を含むことができ、当該飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基の例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、環状アルキル基、環状アルケニル基、芳香族炭化水素基、および、アラルキル基が挙げられる。特に、上記ペンダント基は、直鎖状の、直鎖、または、分岐状のC〜C20アルキル基;アミン末端炭化水素またはヒドロキシル末端炭化水素を含む。実施形態では、上記ペンダント基が、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)コポリマー、ポリカプロラクトン、ポリ(ラクチド−co−グリコリド−co−カプロラクトン)のターポリマー、または、これらの組み合わせなどのポリエステルを含む。
本明細書に記載の上記疎水性ポリサッカリドの上記単量体単位は、一般的に、一つまたは複数の反応基を有する環状構造の単量体単位を含む。これらの反応基を、グルコピラノース系の単量体単位(例えば、アミロースまたはマルトデキストリンの単量体単位)上に存在するヒドロキシル基などのヒドロキシル基で例示する。これらのヒドロキシル基は、炭化水素セグメントおよび上記ヒドロキシル基と反応する基(ヒドロキシル反応基)を含む化合物と反応させることができる。
ヒドロキシル反応基の例として、アセタール、カルボキシル、アンヒドリド、および、酸ハロゲン化物などが挙げられる。これらの基を使用して、加水分解により開裂可能な共有結合を上記炭化水素セグメントと上記ポリサッカリド骨格の間に形成することができる。例えば、上記方法により、炭化水素セグメントを有するペンダント基を提供することができ、当該ペンダント基は開裂可能なエステル結合により上記ポリサッカリド骨格と結び付いている。これらの様態では、上記天然の生分解性ポリサッカリドの合成された上記疎水性誘導体は、酵素的に開裂可能(ポリマー体骨格)であるとともに、非酵素的、加水分解的に開裂可能(上記ペンダント基と上記ポリマー骨格の間の結合)な化学結合を含むことができる。
上記ペンダント基を上記ポリサッカリドに結合するために使用することができる他の開裂可能な化学結合(例えば、代謝的に開裂可能な共有結合)としては、カルボン酸エステル、炭酸塩、ホウ酸塩、シリルエーテル、ペルオキシエステル基、ジスルフィド基、および、ヒドラゾン基が挙げられる。
一部の場合では、上記ヒドロキシル反応基が、イソシアン酸およびエポキシなどの反応基を含む。これらの反応基を使用して、開裂不可能な共有結合を上記ペンダント基と上記ポリサッカリド骨格の間に形成することができる。これらの様態では、上記天然の生分解性ポリサッカリドの合成された上記疎水性誘導体が、酵素的に開裂可能な化学結合を含む。
カルボキシル基、アセチル基、または、サルフェート基などの他の反応基は、コンドロチンまたはヒアルロン酸などの他の天然の生分解性ポリサッカリドの単量体単位の環状構造に存在する。これらの基についても、上記ポリサッカリド骨格と結合させる炭化水素セグメントを有する化合物との反応の標的にすることができる。
上記天然の生分解性ポリサッカリドの上記疎水性誘導体を合成するうえで、多様な要因を考慮に入れることができる。これら要因として、上記天然の生分解性ポリサッカリドの物理的特性および化学的特性と、上記炭化水素セグメントを有する上記化合物の物理的特性および化学的特性とが挙げられる。上記天然の生分解性ポリサッカリドの物理的特性および化学的特性として、サイズ、上記ポリサッカリド上の反応基の数および存在、および、溶解度が挙げられる。上記化合物の物理的特性および化学的特性として、サイズおよび溶解度、および、上記ポリサッカリドとの反応度が挙げられる。
上記天然の生分解性ポリサッカリドの上記疎水性誘導体を調製する場合、任意の適切な合成手段を行うことができる。合成を行って、上記ポリサッカリド骨格からのペンダントである炭化水素セグメントを有する所望の数の基を得ることができる。例えば、上記ポリサッカリド上の利用可能な反応基(例えば、ヒドロキシル基)に対する、上記炭化水素セグメントを有する上記化合物の相対濃度を制御することで、上記ペンダント基の数と密度の一方または両方を制御することができる。
上記ポリサッカリドからのペンダントである上記炭化水素セグメントを有する基の種類および量は、上記疎水性ポリサッカリドが水に対して不溶性となるのに十分なものである。これを達成するために、一般的方法として、疎水性ポリサッカリドは、上記ポリサッカリド骨格からのペンダントである炭化水素セグメントを含む上記基は、重量比で0.25(ペンダント基):1(ポリサッカリド単量体)の範囲となるような量で得られるか、または調製される。
グルコピラノースユニットとペンダント基の重量比は変化させることができるが、一般的には、約1:1から約100:1である。特に、グルコピラノースユニットとペンダント基の重量比は、約1:1から約75:1または約1:1から約50:1の範囲とすることができる。加えて、上記ペンダント基の性質および量により、上記ポリサッカリドにおいて適切な置換度を提供することができる。一般的には、上記置換度は、約0.1〜5の範囲または約0.5〜2の範囲となる。
これらの誘導レベルを例示するために、分子量の極めて低い(10,000Da未満)グルコピラノースポリマーに上記炭化水素セグメントを有している化合物を反応させて、低分子量の疎水性グルコピラノースポリマーを調製した。実践の一様式では、10gの天然の生分解性ポリサッカリドマルトデキストリン(Mw3,000−5,000Da;〜3ミリモル)をテトラヒドロフランなどの適切な溶媒中で溶解する。次に、上記マルトデキストリン溶液に対して、18g(0.11モル)の無水酪酸を含有する溶液を添加する。反応を進めさせ、ペンダントの酪酸塩基が上記マルトデキストリンポリマーのピラノース環上に効果的に形成される。この誘導レベルによって、上記マルトデキストリン上の上記ヒドロキシル基の酪酸塩基の置換度(DS)が約1となる。
単量体単位毎に三つのヒドロキシル基を有するマルトデキストリンおよび他のポリサッカリドに関して、平均して、各グリコピラナーゼの単量体単位毎に含まれる当該三つのヒドロキシル基の一つが酪酸塩基と置換される。この置換度を有するマルトデキストリンポリマーを本明細書中ではマルトデキストリン−ブチラートDS1と称す。本明細書に記載するように、上記DSは、単量体単位毎に含まれる、炭化水素セグメントを有するペンダント基で置換された反応基(ヒドロキシル基および他の反応基など)の平均数をいう。
上記ポリサッカリドに上記炭化水素セグメントを提供する化合物の量を徐々に増加させることで、上記DSの増加を実現することができる。他の例として、10gのマルトデキストリン(Mw3,000−5,000Da;〜3ミリモル)を0.32モルの無水酪酸と反応させて、DSの値が2.5のブチリル化マルトデキストリンが調製される。
上記置換度は、上記ポリサッカリドの上記疎水特性に影響を及ぼすことができる。よって、上記ポリサッカリド骨格に結合した炭化水素セグメントを有する相当量の(高DSで例示したような)基を含む疎水性誘導体から構成されているインプラントは、通常、より疎水性が強く、分解に対してより強い耐性を有することができる。例えば、マルトデキストリン−ブチラートDS1から構成したインプラントの溶解速度は、マルトデキストリン−ブチラートDS2から構成したインプラントの溶解速度よりも速い。
上記ポリサッカリド骨格からのペンダントである上記官能基中に存在する炭化水素セグメントの種類は、上記ポリマーの疎水特性に影響を及ぼすこともできる。一様態では、炭化水素セグメントが短鎖の分岐状のアルキル基であるペンダント基を有する疎水性ポリサッカリドを使用して、上記インプラントが形成される。短鎖の分岐状のアルキル基の例は、分岐状のC−C10基である。これらの種類のペンダント基を有する疎水性ポリマーの調製は、マルトデキストリンを有するバルプロ酸/無水物(MD−val)とマルトデキストリンの反応で例示する。上記反応を行い、0.5〜1.5の範囲内のような比較的低度のヒドロキシル基の置換を提供することができる。これらのポリサッカリドの置換度は低いが、上記短鎖の分岐状のアルキル基により上記ポリサッカリドに著しい疎水特性が与えられる。
これら低置換度の場合でも、上記MD−valは、弾性および耐久性が極めて高いコーティングを形成する。上記置換度が低いため、上記分岐状のCセグメントを有する上記ペンダント基を上記ポリサッカリドの骨格から比較的速い速度で加水分解することができるので、分解速度が比較的速い生分解性コーティングが作製される。
炭化水素セグメントを有する加水分解的に開裂可能なペンダント基を有するポリサッカリドに関しては、水溶液による浸透によって、上記ポリサッカリド骨格からペンダントしている基の加水分解および損失を促進することができる。これにより、上記インプラントの特性を変化させることができるとともに、上記天然の生分解性ポリサッカリドの分解を促進する酵素へのアクセスの増加を引き起こすことができる。
天然の生分解性ポリサッカリドの疎水性誘導体を調製するために、多様な合成スキームを使用することができる。調製の一部様式では、ペンダントであるポリサッカリドヒドロキシル基を、炭化水素セグメントと当該ヒドロキシル基に反応する基とを有する化合物に反応させる。この反応により、炭化水素セグメントを含んでいるペンダント基を有するポリサッカリドを提供することができる。
任意の適切な化学基を上記ポリサッカリドの骨格に結合させて、上記ポリサッカリドに疎水特性をもたらすことができ、当該ポリサッカリドが水に対して不溶性になる。具体的には、上記ペンダント基が、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、窒素(N)、および、硫黄(S)から選択される一つまたは複数の原子を有することができる。
一部様態では、上記ペンダント基が、直鎖状、分岐状、または、環状のC〜C18基である炭化水素セグメントを含む。より具体的には、上記炭化水素セグメントがC〜C10、C〜Cの直鎖状、分岐状、または、環状の基を含む。上記炭化水素セグメントを飽和または不飽和とすることができ、それぞれアルキル基または芳香族基を有することができる。上記炭化水素セグメントを加水分解性の結合または非加水分解性の結合により上記ポリサッカリド鎖と結合させることができる。
一部様態では、上記ポリサッカリド骨格と反応させる炭化水素セグメントを有する上記化合物は天然化合物に由来する。炭化水素セグメントを有する天然化合物は、脂肪酸、脂肪、オイル、ワックス、リン脂質、プロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエン、テルペン、ステロイド、脂溶性ビタミンを含む。
炭化水素セグメントを有する天然化合物の例は、脂肪酸およびその誘導体(例えば、脂肪酸無水物および脂肪酸ハロゲン化物)を含む。脂肪酸および無水物の例として、酢酸およびその無水物、プロピオン酸およびその無水物、酪酸およびその無水物、イソ酪酸およびその無水物、バレリアン酸およびその無水物、カプロン酸およびその無水物、カプリル酸およびその無水物、カプリン酸およびその無水物、ラウリン酸およびその無水物が挙げられる。ポリサッカリドの上記ヒドロキシル基を脂肪酸または無水物と反応させて、上記化合物の上記炭化水素セグメントを、エステル基を介して上記ポリサッカリドに結合させることができる。
また、ポリサッカリドの上記ヒドロキシル基によって、ラクトンを開環させ、ペンダントである開鎖ヒドロキシエステルを提供することもできる。上記ポリサッカリドと反応可能なラクトンの例として、カプロラクトンおよびグリコリドを挙げることができる。
通常、大きな炭化水素セグメントを有する化合物を上記疎水性誘導体の合成に使用する場合、合成に必要とされる当該化合物の量は少量である。例えば、一般規則として、アルキル鎖の長さがCの炭化水素セグメントを有する化合物を使用して、DSが1となるように疎水性誘導体を調製する場合、アルキル鎖の長さがC(x×2)の炭化水素セグメントを有する化合物を、DSが0.5の疎水性誘導体を作製する量で反応させる。
二つのまたは複数の異なる炭化水素セグメントを有するペンダント基の組み合わせを有する、上記天然の生分解性ポリサッカリドの上記疎水性誘導体は合成することができる。例えば、アルキル鎖の長さの異なる炭化水素セグメントを有する化合物を使用して、上記疎水性誘導体は合成することができる。実施場面での一様式では、ポリサッカリドを、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、バレリアン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、および、ラウリン酸から成る一群から選択される二つまたは複数の脂肪酸(またはその誘導体)の混合物と反応させて、上記疎水性誘導体を生成する。
他の場合では、上記炭化水素セグメントを上記ポリサッカリドの骨格に結び付ける加水分解不可能な結合を有する上記疎水性誘導体が合成される。非加水分解性の結合の例としては、ウレタン結合が挙げられる。
炭化水素セグメントが加水分解性結合および非加水分解性結合の両方を介して個別に上記ポリサッカリド骨格に結合するため、上記天然の生分解性ポリサッカリドの上記疎水性誘導体はまた、合成することができる。他の例として、酪酸無水物とブチルイソシアネートとの混合物をマルトデキストリンと反応させることで、疎水性誘導体を調製する。これにより、加水分解性エステル結合および非加水分解性ウレタン結合によって上記マルトデキストリン骨格と個別に共有結合しているペンダント酪酸基を有するマルトデキストリン疎水性誘導体を生成する。この種類の疎水性誘導体を有するコーティングの分解は、上記エステル結合の加水分解による上記酪酸基の損失を発生させることができる。しかし、上記ポリサッカリド骨格が酵素分解される前、酪酸基の一部(上記ウレタン基を介して結合している酪酸基)は上記ポリサッカリド骨格から分離されないので、上記天然の生分解性ポリサッカリドは所望の程度の疎水性を保持することができる。
一部様態では、上記ポリサッカリドの骨格からのペンダントである上記反応基は、医薬品有効成分(API)の特性を有している。この点で、上記インプラントは、APIと結合しているポリサッカリドを含む。一部様態では、炭化水素セグメントを有するAPIは、上記天然の生分解性ポリマーから加水分解され、上記マトリックスから放出され、治療効果を提供することができる。炭化水素セグメントを有する治療上有用な化合物の一例は、酪酸である。酪酸は、腫瘍細胞の分化およびアポトーシスを引き起こすことが示されており、癌および他の血液の疾患の処置に有用であると考えられている。
炭化水素セグメントを有する他の化合物の実例は、バルプロ酸とレチノイン酸を含む。これらの化合物をポリサッカリドの骨格に結合させてペンダント基を提供することができ、その後、上記インプラントをインビボで分解した直後に上記ポリサッカリドの骨格から開裂することができる。レチノイン酸は、増殖抑制効果を有することが知られており、増殖性硝子体網膜症(PVR)の治療に有用であると考えられる。また、治療効果をもたらす上記ペンダント基はまた、天然化合物(酪酸、バルプロ酸、および、レチノイン酸など)とすることもできる。
上記ポリサッカリド骨格にカップリング可能な化合物の他の例示的な分類は、コルチコステロイドである。コルチコステロイドの例は、トリアムシノロンである。トリアムシノロンを天然の生分解性ポリマーにカップリングさせる一方法では、Generation of an Auto-anti-idiotypic Antibody that Binds to Glucocorticoid Receptor, The Journal of Biol. Chem., 261(11): 5094-5103 (Cayanis, E. et al., 1986) に記載された方法に変更を加えた方法を採用する。トリアムシノロンをケトヘキサン酸と反応させて、トリアムシノロンヘキサン酸を調製し;その結果得られる当該トリアムシノロンヘキサン酸の酸塩化物を形成することができ、マルトデキストリンまたはポリアルジトールなどの上記天然の生分解性ポリマーと反応させることができる。この結果、上記天然の生分解性ポリマーにエステル結合を介してカップリングしているペンダントトリアムシノロン基が得られる。
二つまたは複数の異なるペンダント基を有し、当該二つまたは複数の異なるペンダント基のうち少なくとも一つがAPIを有する上記天然の生分解性天然の生分解性ポリサッカリドの疎水性誘導体は、合成することができる。上記ポリサッカリドから放出され、上記対象に治療効果を提供する、上記APIを含んでいるペンダント基の量を有する、上記疎水性ポリサッカリドは、合成することができる。このような疎水性誘導体の例は、マルトデキストリン−カプロン酸塩−トリアムシノロンである。この疎水性誘導体は、トリアムシノロンヘキサン酸と過剰のカプロン無水物(n−ヘキサン無水物)を含む混合物とマルトデキストリンとを反応させてDS値が2.5の誘導体を提供することで、調製することができる。
一部様態では、上記ポリサッカリドからのペンダントである上記反応基が、フェニル基などの芳香族基である炭化水素セグメントを含む。一例として、o−アセチルサリチル酸は、マルトデキストリンなどのポリサッカリドと反応されて、フェニル基である炭化水素セグメントとアセテート基である非炭化水素セグメントとを有するペンダント化学基であり、エステル結合により上記ポリサッカリドに結び付いたペンダント化学基を提供する。
天然の生分解性ポリサッカリドの上記疎水性誘導体を有する上記生分解性ポリマーEureka((商標)、SOLO polymerと称される)の更なる特徴および説明は、例えば、米国特許公開第2007/0218102号明細書、米国特許公開第2007/0260054号明細書、米国特許公開第2007/0224247号明細書、および、これらに引用された文献に記載されている。
(コーティングの応用)
例として、生分解性のマルチブロックコポリマー(グリコール酸、カプロラクトン、および、PEGポリマーブロックを含むマルチブロックコポリマー)を含むコーティングの組成物を30mg/mLの濃度でアセトンに溶解し、(ヒドロゲルの下地塗りを行った、または行っていない)拡大および折り畳み可能な構造(例えば、バルーン)上に溶液を噴射して調製することで、当該構造上の生分解性コーティングを作製することができる。生体活性剤(例えば、生体活性剤の形態)は、上記コーティング溶液に(1重量%〜50重量%の割合で)溶解させるか、または、上記生分解性コーティングが形成された後に用いられることができる。例えば、上記生分解性コーティングに対して、(メタノールに溶解しているか、または、水中の生体活性剤として存在している)パクリタキセルを用いることができる。
上記生分解性コーティングを形成するために使用する上記コーティングの組成物は、一つまたは複数のさらなる生体適合性ポリマーを含むことができる。例えば、上記コーティングの組成物に二次または三次の生体適合性ポリマーなどを含めることで、所望の特性を有するコーティングが形成されるようにすることができる。上記一つまたは複数のさらなるポリマーにより、上記コーティングの分解を増加することができる。ある態様では、上記生分解性ポリマーは、生分解性ポリマー(ポリラクチドなど)および生体適合性ポリマー(ポリ(エチレングリコール)(PEG)と、ポリ(エチレンオキシド)と、ポリ(酸化プロピレン)とから成る一群から選択される一つなど)から形成することができる。
多様な方法を行って、上記ポリマー材料および上記生体活性剤を上記拡大および折り畳み可能な構造の表面に結合させることができる。実施の多くの様式では、ポリマー材料と生体活性剤とを含んでいるコーティングの組成物が調製され、上記拡大および折り畳み可能な構造の表面に用いられる。実施の一様式では、生体活性剤を約10mg/mL〜約50mg/mLの範囲の濃度で含んでいるコーティングの組成物を使用する。
しかし、一部の場合では、ポリマー材料は、上記生体活性剤と独立して上記表面に用いることができる。例えば、第1工程では上記表面にポリマー組成物を用いることができ、その後、第2工程では、事前にコーティングされたポリマーに、生体活性剤を含有する組成物(ポリマーコーティング材料は含まない)が用いられる。実践の一様式では、生体活性剤の濃度が約10mg/mL〜約50mg/mLの範囲であるコーティングの組成物(ポリマーコーティング材料は含まない)が使用される。他の任意の工程を行って、トップコートとして同一または異なるポリマー材料を上記生体活性剤上に用いることができる。
好ましい一様態では、スプレーコーティングプロセスを使用して、上記拡大および折り畳み可能な構造の表面上にコーティングが形成される。実践の特定様式では、スプレー堆積プロセスを使用するコーティングのためにバルーンを操作することができる装置上にバルーンカテーテルを実装する。
更に、バルーンコーティング用の上記装置および上記方法の様態および詳細については、公共の仮出願第61/188,929号明細書(出願日:2008年8月14日,発明の名称“METHOD AND APPARATUS FOR COATING BALLOON CATHETERS”(Chappa et al.))に記載されている。上記仮出願を本明細書に引用することにより、その開示内容を本願に援用する。
代わりに、コーティング表面を形成するために、上記拡大および折り畳み可能な構造の表面上にコーティングの組成物が浸漬コーティングされる。更に他の方法では、上記拡大および折り畳み可能な構造の表面上に上記組成物をブラシで塗る。一部応用例では、上記基板に対して、ポリマー材料と生体活性剤との混合物を使用してコーティングする二つ以上の工程を行って、上記基板の表面上に多層膜を形成することができる。
一部様態では、コーティングは、上記拡大および折り畳み可能な構造上に堆積させたコーティング材料を処理して、調製される。例えば、上記コーティングの組成物は、活性化された場合にポリマー材料の架橋および上記コーティングの形態を引き起こす反応基を含むことができる。上記コーティングを形成するために使用される上記ポリマー材料は、アクリレート基などのペンダント型重合基を含むことができる。重合開始剤である光活性試薬を活性化させることで、上記重合基のフリーラジカル重合を引き起こすことができる。用いられた組成物は、UV光で処理され、上記重合開始剤を活性化することができる。
生体活性剤の粒子を上記コーティングに結び付けることで、部分的に埋め込まれた粒子を多様な技法を使用して提供することができる。一技法では、上記拡大および折り畳み可能な構造の表面上に可塑性ヒドロゲル層を形成する。次に、上記可塑性ヒドロゲル層の表面上に生体活性剤を含む水性組成物を堆積させる。上記水性組成物中の水によって、上記可塑性ヒドロゲル層の少なくとも表面の膨張が引き起こされる。この膨張により、上記可塑性ヒドロゲル層は、その表面上に堆積された上記生体活性剤に対して少なくとも部分的に透過性になるので、上記生体活性剤は上記可塑性ヒドロゲル層の上記ポリマー材料の内部へ移動する。上記生体活性剤を部分的に上記可塑性ヒドロゲル層の内部に移動させるのに十分な時間の経過後、蒸発法、加熱法、または、真空法などにより水を除去する。水を除去することによって、上記可塑性ヒドロゲル層が膨張状態から縮み、上記生体活性剤を物理的に押さえる結果、上記可塑性ヒドロゲル層の表面上に堆積された上記生体活性剤の相当量が部分的に埋め込まれる。
(医療デバイス)
本発明は、標的組織に生体活性剤を送達するための方法およびデバイスを提供する。本発明では、生体活性剤を放出することのできる拡大および折り畳み可能な構造を備える多様な種類の医療デバイスを意図している。一実施形態では、上記挿入可能な医療デバイスはバルーンカテーテルである。上記生体活性剤は、挿入可能な医療デバイスの拡大および折り畳み可能な表面とコーティング剤により結び付いている。上記デバイスを対象内に挿入し、上記生体活性剤が送達されることができる部分と標的組織とが接触する位置に上記拡大および折り畳み可能な表面を配置することができる。上記拡大および折り畳み可能な表面を拡大させることができ、これにより、その拡大および折り畳み可能な構造の表面上のコーティングから上記生体活性剤を(例えば、微粒子形態で)放出または分離させる。代わりに、上記拡大および折り畳み可能な表面が、生分解性のコーティング剤を含むことができ、当該生分解性コーティング剤が、上記拡大および折り畳み可能な構造の拡大時に上記拡大および折り畳み可能な構造から放出される結果、(例えば、微粒子形態の)当該生体活性剤と共に輸送される。
拡大可能で、対象体内の使用に適した任意の材料またはその組み合わせから、上記デバイスの上記拡大および折り畳み可能な構造を形成することができる。上記デバイスの使用に応じて、一つまたは複数の上記材料を決定することができる。多くの様態では、上記拡大および折り畳み可能な材料は、エラストマー(弾性特性を有するポリマー)などの弾力性および可塑性を有する材料である。エラストマーは、一般的には熱可塑性ポリマーである。エラストマーの例は、ポリウレタンおよびポリウレタンコポリマー、ポリエチレン、スチレンブタジエンコポリマー、ポリイソプレン、ハロゲン化ブチルゴムなどのイソブチレンイソプレンコポリマー(ブチルゴム)、ブタジエン−スチレン−アクリロニトリルコポリマー、シリコーンポリマー、フルオロシリコーンコポリマー、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエーテル−ポリエステルコポリマー、および、ポリエーテル−ポリアミドコポリマーを含む多様なポリマーから形成することができる。
上記拡大および折り畳み可能な構造を単一のエラストマー材料またはエラストマー材料の組み合わせで作製することができる。上記拡大および折り畳み可能な構造を押し出し法によって作製することができるので、上記伸張構造が材料の単一層となるか、または、共押出されて多層材料を形成する。
上記伸張性構造の厚さは、上記所望の適用およびデバイスに好適な厚さにすることができる。例えば、伸張性構造の上記厚さを約5μm〜約100μmの範囲にすることができる。
拡大および折り畳み可能な構造の製造は当該技術分野に公知である。任意の好適な処理法を行って、本明細書に記載の挿し込み可能な医療デバイスの上記拡大および折り畳み可能な部分を提供することができる。
(バルーンカテーテル)
実施形態では、挿入可能な上記医療デバイスは拡大および折り畳み可能な構造を備え、当該拡大および折り畳み可能な構造はバルーン(例えば、血管形成術用バルーン)を備えるか、または、バルーン(例えば、血管形成術用バルーン)そのものである。このようなデバイスを疾患している脈管構造の処置に使用することができる。上記脈管構造に放出することができる好適な生体活性剤として、抗増殖剤、抗炎症剤、抗血小板剤、または、これらの複数が挙げられる。好適な抗増殖剤として、パクリタキセルが挙げられる。疾患している動脈の処置のための血管形成において、バルーンカテーテルが一般に使用されている。バルーン血管形成は、一般的に、管腔内の詰まった経路の膨張または再開口を起こす。
バルーンカテーテルの製造は当該技術分野に公知であり、例えば下記文献のような多様な文献に記載されている:米国特許第4,195,637号明細書、米国特許第5,041,089号明細書、米国特許第5,087,246号明細書、米国特許第5,318,587号明細書、米国特許第5,382,234号明細書、米国特許第5,571,089号明細書、米国特許第5,776,101号明細書、米国特許第5,807,331号明細書、米国特許第5,882,336号明細書、米国特許第6,394,995号明細書、米国特許第6,517,515号明細書、米国特許第6,623,504号明細書、米国特許第6,896,842号明細書、および、米国特許第7,163,523号明細書。バルーンカテーテルは、通常、バルーン、カテーテルシャフト、誘導線、および、多岐管からなる四つの部分を含む。バルーンカテーテルは、通常、伸張したカテーテルシャフトを備え、当該カテーテルシャフトの先端部には可膨張式バルーンが取り付けられている。上記カテーテルシャフトの近接端部においては、一般的には、多岐管が設けられている。上記多岐管の端部では、誘導線を使用することで上記カテーテルの配置を容易にすることができる。誘導線はサイズが小さいうえ、動脈内に挿入した場合に操作しやすい。上記誘導線を上記標的箇所に移動させると、上記カテーテルに設けたバルーン部分が上記血管内の上記標的箇所に到達するまで、上記バルーン部分を有するカテーテルが上記誘導線上に供給される。その後、上記カテーテルが上記標的の圧縮された部分に到達すると、バルーンを膨張させて、血管の拡張に必要な機械力を印加する。また、上記多岐管により、上記バルーンを膨張させるための上記シャフト内への流体の導入を制御することができる。上記バルーンは、一般的には、患者体内の動脈内腔に挿入され、非膨張状態で当該動脈内腔内を進められる。
膨張前、上記バルーンを折り畳み、標的部位への送達用のコンパクトな構成にすることができる。折り畳みプロセスは、上記バルーン材の“アーム”を形成し、当該“アーム”を内側(上記カテーテルの軸側)に折ることで、上記バルーン材をコンパクト化することを備えてもよい。このような折り畳みパターンを使用すると、上記バルーン材の内向き部分(上記バルーンを折り畳み、コンパクトした場合に内側を向く部分)と外向き部分が形成され、当該内向き部分は“保護”表面を示している。これに従い、および、他のコーティング実施形態では、上記バルーン材の上記内向き表面が本発明のコーティングを含む。
一般的には、上記バルーンの膨張化には流体を使用し、当該流体は膨張口を介して注入される。上記流体の移送メカニズムおよびバルーン内での導入メカニズムは、上記カテーテルの特定の設計に応じて変化するが、当該技術分野において周知のメカニズムである。
上記カテーテルバルーンの壁の厚さの例は、約5μm〜約20μmの範囲内である。上記バルーン壁の実際の厚さは、上記バルーンの所望の柔軟性、上記カテーテル上の上記バルーンの全体特性(低プロファイルデバイスは、薄壁のバルーンを使用することがある)、上記バルーン壁の圧力定格、または、上記バルーンの拡大特性などの一つまたは複数の要因に応じて決定されてもよい。一部様態では、壁厚の薄いバルーンを使用して、コーティングが表面上に形成された場合の厚さの増大に対応している。
カテーテルバルーンの製造は、例えば下記文献のような多様な参照文献に記載されている:米国特許第4,490,421号明細書、米国特許第5,556,383号明細書、米国特許第6,210,364明細書、米国特許第6,168,748号明細書、米国特許第6,328,710号明細書、および、米国特許第6,482,348号明細書。上記カテーテルバルーンの製造には、一般的に成型処理が行われる。このような処理により作製したバルーンは、本発明に係るコーティング用の基板として好適である。成型処理の例では、上記バルーンの所望の形状の鋳型内の押し出し重合体チューブを高温で急激に軸方向に拡大させる。上記成型処理後、上記バルーンに更なる処理を行うことができる。例えば、成型した上記バルーンに、上記バルーンの縮みを緩和する更なる加熱工程を行うことができる。
ヒドロゲルコーティングと脂質コーティングを有するパクリタキセル微粒子がコーティングされたバルーンからの生体活性剤の移送は、シリコーン管モデル内で試験することができる。シリコーン管類(内径0.12インチ;外径0.188インチ;壁0.0315インチ;Cole-Parmer Instrument Co.社)を入手し、1.5インチの長さに切断した。その後、水槽内で37℃に予熱し、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)(pH:7.4)で満たした4mLの琥珀ガラス瓶の内に上記シリコーン管の断片を移した。コーティングされたバルーン(例えば、実施例を参照)、収縮されたバルーン、折り畳みを行ったバルーンを(水槽で37℃まで予熱し、pHが7.4のリン酸緩衝生理食塩水を8mL入れた)8mLの瓶内に配置し、当該リン酸緩衝生理食塩水に4分間浸した。その後、上記バルーンを(4mL瓶内に沈ませた)上記シリコーン管の内腔中に移し、4気圧で30秒間膨らませた。その後、圧力を解除し、上記シリコーン管から上記バルーンを除去した。上記シリコーン管の内腔壁に移動したパクリタキセルの量を決定するために、メタノールに0.1%氷酢酸を混ぜた4mLの混合液中に上記シリコーン管を24時間浸した。その後、UV(232nm)による薬物含量測定のために、上記抽出媒体の350μLのアリコートを96ウェルプレートに移動した。
カテーテルバルーン上にヒドロゲルのコーティング層を形成するためのコーティングの組成を以下のようにすることができる。ヒドロゲルコーティング溶液を、5mg/mLの感光性ポリアクリルアミドと、25mg/mLの感光性ポリ(ビニルピロリドン)(米国特許第5,414,075号明細書内の実施例4に記載)と、10mg/mLのポリ(ビニルピロリドン)K90(BASF)と、0.25mg/mLの4,5−ビス(4−ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン−1,3−ジスルホン酸(米国特許第6,278,018号明細書(実施例1)に記載)とを使用して調製し、IPAと水との混合液(15%IPA/85%水)中に溶解させる。
(生体活性剤)
用語“生体活性剤”は、合成または天然とすることができ、動物(鳥類およびヒトを含む哺乳類を含むが、これに限定されない)にインビボで投与される場合に生物学的作用を引き起こす無機または有機分子をいう。生体活性剤の一部リストを以下に示す。以下に挙げる生体活性剤の一つを任意に選択して、単独で含めてもよいが、任意の他の生体活性剤と組み合わせて含めてもよい。生体活性剤の包括的リストは、当該生体活性剤の水溶性に関する情報と併せて、The Merck Index, Thirteenth Edition(Merck & Co.社)(2001年)に記載されている。
上記生体活性剤として、例えば、以下の薬剤類の一つまたは複数を使用することができる:ACE阻害剤、アクチン阻害剤、鎮痛剤、麻酔剤、降圧剤、抗ポリメラーゼ剤、抗分泌剤、抗生物質、抗癌性物質、抗コリン作用薬、抗凝血剤、抗痙攣剤、抗うつ剤、制吐剤、抗真菌剤、抗緑内障溶質、抗ヒスタミン剤、血圧降下剤、抗炎症剤(NSAIDなど)、代謝拮抗物質、抗有糸分裂剤、酸化防止剤、抗寄生虫物質および抗パーキンソン物質の一方または両方、(血管新生阻害剤を含む)抗増殖性物質、抗原虫溶質、抗精神病物質、解熱剤、消毒剤、鎮痙薬、抗ウイルス剤、カルシウムチャンネル遮断薬、細胞反応修飾因子、キレート化剤、化学療法剤、ドーパミン作動薬、細胞外基質成分、線維素溶解剤、フリーラジカル捕捉剤、成長ホルモン抑制因子、睡眠薬、免疫抑制剤、抗毒素、表面糖タンパク質受容体の阻害剤、微小管阻害剤、縮瞳薬、筋収縮剤、筋肉弛緩剤、神経毒、神経伝達物質、ポリヌクレオチドおよびその誘導体、オピオイド、プロスタグランジン、再形成阻害剤、スタチン、ステロイド、血栓溶解剤、鎮静剤、血管拡張剤、および、血管痙攣阻害剤。
一部様態では、上記微粒子が抗増殖剤を含む。上記抗増殖剤を抗血管形成剤とすることができる。
一部様態では、上記微粒子が抗炎症薬を含む。
一部様態では、上記微粒子が細胞反応修飾因子を含む。
一部様態では、上記微粒子が抗血栓剤を含む。
一部様態では、上記微粒子が免疫抑制剤を含む。
細胞反応修飾因子が、血小板由来増殖因子(pDGF)などの化学走化性因子を含む。他の化学走化性因子は、好中球活性化タンパク質、単球走化性タンパク質、マクロファージ炎症性タンパク質、SISタンパク質(誘導分泌小(small inducible secreted)タンパク質)、血小板因子、血小板塩基性タンパク、メラノーマ増殖刺激活性(melanoma growth stimulating activity)、上皮細胞増殖因子、形質転換増殖因子(α)、線維芽細胞増殖因子、血小板由来内皮細胞成長因子、インスリン様増殖因子、神経成長因子、血管内皮増殖因子、骨形態形成タンパク質、および、骨増殖/軟骨誘導因子(bone growth/cartilage-inducing factor)(αおよびβ)を含む。
他の細胞反応修飾因子は、インターロイキン1〜10を含むインターロイキンインヒビタまたはインターロイキン受容体;α、β、およびγを含むインターフェロン;エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、および、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を含む造血因子;αおよびβを含む腫瘍壊死因子;β1、β2、β3を含む形質転換増殖因子(β)、インヒビン、アクチビン、および、これらタンパク質の任意の生成をコーティングするDNAである。
スタチンの例は、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、アトラバスタチン、セリバスタチン、ロスバスタチン、および、スーパースタチンを含む。
ステロイドの例として、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、βメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、フルドロコルチゾン、およびアルドステロンなどのグルココルチコイド;テストステロン、ジヒドロテストステロン、エストラジオール、ジエチルスチルベストロール、プロゲステロン、および、プロゲスチンなどの性ステロイドが挙げられる。
上記生体活性剤は、増殖抑制効果、抗血小板効果、および、抗血栓効果の一つまたは複数などの抗再狭窄効果を提供することができる。一部様態では、上記生体活性剤は、抗炎症剤、免疫抑制剤、細胞接着因子、受容体、リガンド、増殖因子、抗生物質、酵素、および、核酸などから選択されることができる。増殖抑制効果を有する化合物として、例えば、アクチノマイシンD、アンジオペプチン、c−mycアンチセンス、パクリタキセル、および、タキサンなどが挙げられる。
抗血栓作用を有する生体活性剤の代表例としては、ヘパリン、ヘパリン誘導体、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヒルジン、リジン、プロスタグランジン、アルガトロバン、ホルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリンおよびプロスタサイクリン類似体、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成アンチトロンビン)、ジピリダモール、糖タンパク質Iib/IIIa血小板細胞膜受容体抗体、共タンパク質Iib/IIIa血小板細胞膜受容体抗体、組み換えヒルジン、トロンビンインヒビタ(Biogen社製の市販のトロンビンインヒビタなど)、コンドロイチンサルフェート、修飾デキストラン、アルブミン、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、ウロキナーゼ、および、酸化窒素阻害因子などが挙げられる。
上記生体活性剤はまた、GPIIb−IIIa血小板受容体複合体のインヒビタとすることができ、当該GPIIb−IIIa血小板受容体複合体のインヒビタは、血小板凝集を媒介する。GPIIb/IIIaインヒビタとしては、アブシキマブ(ReoPro(商標))としても知られるモノクローナル抗体Fab断片c7E3、および、エプチフィバチド(Integrilin(商標))またはチロフィバン(Agrastat(商標))などの合成ペプチドまたはペプチド模倣薬が挙げられる。
上記生体活性剤は、免疫抑制剤とすることができ、例えば、シクロスポリン、CD−34抗体、エベロリムス、ミコフェノール酸、シロリムス、および、タクロリムスなどである。
更に、上記生体活性剤は、表面付着分子または細胞−細胞付着分子とすることができる。細胞付着分子の例または細胞外基質タンパク質などの付着タンパク質の例としては、フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン、エラスチン、ビトロネクチン、テネイシン、フィブリノゲン、トロンボスポンジン、オステオポンチン、フォンビルブラント因子、骨シアロタンパク質(およびその活性ドメイン)、ならびに、親水性ポリマー(ヒアルロン酸、キトサンおよびメチルセルロース、ならびに、他のタンパク質、炭水化物、脂肪酸など)が挙げられる。他の細胞−細胞付着分子としては、N−カドヘリンおよびP−カドヘリンとそれらの活性ドメインが挙げられる。
シロリムスまたはパクリタキセルなどの抗増殖剤は、拡張部位の新生内膜増殖を阻害することができる。ヘパリンなどの抗血栓剤は、凝固を阻止することができる。
本発明のデバイスおよび方法は、効果的な量の上記生体活性剤を上記所望の部位で放出することができる。ある実施形態では、上記方法および上記デバイスは、上記デバイスに最初に付着している上記生体活性剤の約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、または、約90%以上を放出することができる。一部様態では、送達する上記生体活性剤の量は、約30%〜約90%の範囲内である。
(追加成分)
上記生体活性剤は、賦形剤と共に処方されることができる。上記賦形剤は、コーティング内での上記生体活性剤の安定性を向上させることができるか、または、上記生体活性剤の物理的特性を変化させることができる。上記賦形剤の例としては、グリセロール、ジエチレングリコール、ソルビトール、ソルビトールエステル、マルチトール、スクロース、フルクトース、転化糖、コーンシロップ、および、これらの組み合わせが挙げられる。上記賦形剤の量および種類は、公知の基準および技法に応じることができる。上記賦形剤は、抗酸化剤とすることができる。
上記コーティングは造影成分を含むことができる。造影成分は、一般的な造影技法を使用して検出可能であり、本発明の方法での使用に好適である。これらの薬剤は、体内の所望部位(例えば、血管内の標的部位)の造影を可能にすることができる。造影剤の例としては、インビボにて検出可能な標識を有する物質(蛍光標識と、酸化鉄、Gd、または、Mnなどの常磁性体と、放射性同位体との何れかに付着している抗体)が挙げられる。造影要素は、常磁性共鳴イメージング法、超音波イメージング法、または、他の適切な検出法により検出されることができる。
(微粒子)
上記生体活性剤は、微粒子形態にすることができる。上記微粒子は、コーティング剤により上記基板と結び付き、その後当該基板を拡大させたときに当該基板から分離するのに十分なサイズおよび形状を有する三次元の任意の粒子にすることができる。
上記微粒子は、合成ポリマー材料から構成される形状などの球状または実質的に球状の形状を有することができる。多くの様態では、上記デバイスの上記弾性構造は、球状または実質的に球状の微粒子に結び付いている。ここで、球状または実質的に球状の上記微粒子を本明細書では“ミクロスフェア”という。
しかし、(例えば、顕微鏡で観察した場合に)著しく非球状な形状または不揃いの形状を有する微粒子は、使用することができる。例えば、上記微粒子は、曲面、平面、または、これらの組み合わせを有することができる。所望の場合には、上記拡大および折り畳み可能な構造は、異なるサイズおよび形状の一方または両方を組み合わせた複数の微粒子に結び付けられることができる。
上記微粒子は、さもなければ結晶形状または結晶構成を有する微結晶または粒子の形態とすることができる。結晶形状を有する微粒子は、三つ全ての空間次元方向に延伸している規則的な繰り返しパターン状で上記微粒子中に配列された生体活性剤分子から構成されてもよい。結晶形状は、一般的に、顕微鏡下で観察することができる。微粒子は、ロッド状、フィラメント状、スライバー状、または、針状の形状を有するものとして観察されることがある。
上記基板上の上記コーティングとの結び付きにおいて、微粒子は団粒構造またはクランプ構造として観察されること(または、存在すること)もある。例えば、ロッド状、フィラメント状、スライバー状、または、針状の微粒子の凝集体を上記コーティング材料に結び付けることができる。
多くの様態では、上記拡大および折り畳み可能な構造に結び付けた微粒子は、最大でも約50μm未満の平均寸法を有する。例えば、微粒子の形状は、伸張軸に沿った長さが約50μm未満の伸張形状とすることができる。顕微鏡検査などによる粒径分析法は、不規則形状の微粒子または微結晶を評価するために用いることができる。一部の場合では、上記微粒子の最大平均寸法は、約100nm〜約50μmの範囲内、約100nm〜約25μmの範囲内、約100nm〜約20μmの範囲内、または、約100μm〜約10μmの範囲内である。
また、多くの様態では、上記微粒子は、平均直径が約100nm以上の球状または実質的に球状の形状を有する。例えば、上記拡大および折り畳み可能な構造に結び付いた上記微粒子の平均直径は、約100nm〜約50μmの範囲内、約150nm〜約25μmの範囲内、約200nm〜約20μmの範囲内、または、約0.3μm〜約10μmの範囲内である。
多くの様態では、上記拡大および折り畳み可能な構造に結び付いた微粒子は、約50μm未満の平均直径(“dn”、数平均)を有する。また、多くの様態では、上記微粒子は、約100nm以上の平均直径を有することができる。例えば、上記拡大および折り畳み可能な構造の微粒子の平均直径は、約100nm〜約50μmの範囲内、約150nm〜約25μmの範囲内、約200nm〜約20μmの範囲内、または、約0.3μm〜約10μmの範囲内である。
上記微粒子を上記拡大および折り畳み可能な構造に結び付ける方法に基づいて、特定のサイズ範囲に収まる微粒子を使用することが望ましいとすることができる。例えば、上記微粒子が上記弾性構造の表面上のコーティング中に固定される場合、平均直径が当該コーティングの厚さより小さい平均直径を有する微粒子を用いることが通常望ましい。
一部様態では、上記たわみ曲面に結び付けられた上記微粒子はまた、低サイズ多分散性を有することができる。低サイズ多分散性は、微粒子の個体群中における上記微粒子のサイズのバラつきが((微粒子の個体群のサイズにおいてバラつきが著しいことを意味する)高サイズ多分散性と比較して)小さいことを意味している。
ある実施形態では、上記微粒子は、状態の処置または予防用に選択される生体活性剤から完全にまたは実質的に形成することができる。他の実施形態では、上記微粒子は、生体活性剤の組み合わせ(例えば、二つまたは複数の異なる生体活性剤)から形成することができる。他の実施形態では、上記微粒子は、生体活性剤および上記対象に治療効果をもたらすことが意図されない他の成分(上記微粒子からの上記生体活性剤の放出を調整することができるポリマーなど)から形成することができる。他の実施形態では、上記微粒子は、二つまたは複数の要素(上記微粒子からの上記生体活性剤の放出を調整することができる二つまたは複数のポリマーなど)を含む。
上記微粒子の一部または全体において、上記微粒子の構成要素は、互いに混合することができる。また、その代わりに、上記微粒子中において、上記構成要素は、互いから全体的または実質的に分離されることもできる。例えば、生体活性剤および放出調整ポリマーの実質的に均一な混合体を含んでいる上記微粒子を、形成することができる。他の例としては、生体活性剤のコアおよび当該コア周辺の放出調整ポリマーのシェルを含んでいる上記微粒子を形成することができる。パクリタキセル微粒子の調製については、米国特許第6,610,317号明細書に記載されている。
微粒子の調製用の他の技法は当該技術分野に公知であり、当該技法として沈殿法および結晶化法が挙げられる。例えば、溶媒(例えば、有機溶媒)内の生体活性剤の液組成物においては、非溶媒物質(例えば、水または水性組成物)を過剰に添加することにより沈殿させることができる。上記液組成物から、相分離法またはこれに類似の技法により上記溶媒を回収することができる。その後、沈殿化させた上記液組成物に粉砕プロセスを行うことができる。ここでいう粉砕プロセスとは、沈殿微粒子のサイズを減少させることが可能な機械的プロセスをいう。例えば、湿式粉砕法を使用して、液組成物中の粒子サイズを減少させ、微粒子を作製することができる。その後、沈殿化させた上記生体活性剤を濾過し、上記非溶媒体で洗浄することができる。
微粒子の調製に使用可能な他の処理は噴霧乾燥法である。上記生体活性剤の液組成物と溶媒を霧化し、基板上に噴射析出させることができ、当該処理中に当該溶媒を液滴から蒸発させる。上記生体活性剤の濃度、液滴直径、および、上記溶媒の蒸発は、所望の微粒子形成が行われるように決定することができる。
上記コーティングを調製する一部様式では、上記生体活性剤の液組成物を上記デバイスのコーティング層(例えば、可塑性のある上記ヒドロゲル層または生分解性材料層)に直接噴射することで、噴霧乾燥法を行うことができる。このプロセスでは、上記液滴の溶媒が蒸発するにつれ、上記微粒子が上記コーティング層上に形成される。噴射させた上記液組成物は、上記ヒドロゲル層の膨張を引き起こす液体を含んでいてもよい。これにより、上記微粒子は、形成されるにつれ、上記ヒドロゲル材料の内部へと移動する。上記溶媒以外の物質が蒸発するにつれ、上記ヒドロゲルが縮むので、上記ヒドロゲル材料により上記微粒子が抑制されるとともに、可塑性のある上記ヒドロゲルコーティングの内部に少なくとも部分的に埋め込まれる。
他の例として、治療用Fab(抗体)断片ミクロスフェアが、同一出願人(Slager, et al.)による同時係属の米国特許出願第60/937,492号(出願日:2007年6月28日)明細書に記載されている。よって、本発明の他の様態では、上記微粒子は、ポリペプチドなどのより高分子量の生体活性剤から構成されている。
例えば、溶媒蒸発法などの確立された技法により、多様な生理活性物質を取り込むように分解性微粒子を調製することができる(例えば、Wiehert, B. and Rohdewald, P. J Microencapsul. (1993) 10:195を参照)。
一部様態では、上記微粒子は生体活性剤とポリマーとを含み、上記微粒子は、上記生体活性剤を含む内部と、ポリマーを含む外部とを有する構造を備える。例えば、上記微粒子は、生体活性剤から成るコアと、ポリマーからなるシェルとを有することができる。
一部様態では、上記微粒子のコアは、生体活性剤から実質的または完全に形成され、上記微粒子のシェルは生分解性ポリマーを含む。
一部様態では、上記微粒子のコアは生体活性剤と第1ポリマーを含み、上記シェルは生分解性ポリマーなどの第2ポリマーを含む。例えば、上記第1ポリマーおよび上記第2ポリマーは、生分解性の合成ポリマーから選択される。
上記微粒子の上記内部(例えば、コア)は、上記微粒子中に存在する生体活性剤の全体ではないが、少なくともその大部分を含む。多様な技法を使用して、内部および外部を有する微粒子を調製することができる(例えば、Pekarek, KJ. (1994) Nature 367:258-60を参照)。一部技法はポリマー混合物の相分離に基づいている。また、多くの相分離技法は、溶媒蒸発法を含んでいる。
内部および外部を有する微粒子は、以下の手順で調製する。最初に、第1ポリマーと生体活性剤を含む第1組成物を調製する。上記第1組成物に処理を行って、上記第1ポリマーと上記生体活性剤の均一な懸濁液を得ることができる。その後、均一化を行った上記第1組成物に対して、上記第2ポリマーを含む第2組成物を混合することができる。その後、上記第1組成物と上記第2組成物の混合を均一化することができる。これら工程の後、ポリビニルアルコール含有溶液などの上記微粒子の形成を促進する溶液を上記組成物に混合することで、微粒子を形成することができる。一実施様式では、その後、例えば遠心分離によって上記微粒子を回収することができ、回収後、適宜洗浄および冷凍または凍結乾燥することができる。
一部様態では、上記微粒子の内部がポリ(ラクチド−co−グリコリド)などの生分解性の合成コポリマーを含み、上記微粒子の外部がポリ(ラクチド)などの生分解性の合成ホモポリマーを含む。
また、上記微粒子は、上記生体活性剤の放出を制御する一つまたは複数の非ポリマー化合物も含むことができる。例えば、上記微粒子は、上記生体活性剤の放出を制御する溶解性金属またはその塩を含むことができる。金属塩の例として、無機性の金属塩化物、金属フッ化物、および、金属酸化物が挙げられる。上記金属塩は、水に溶けにくい。金属塩によって、上記微粒子を部分的にまたは全体的にコーティングすることができる。
一部様態では、上記たわみ曲面に2セット以上の微粒子が結び付けられている。2セット以上の微粒子の使用により、組織に送達された特定の生体活性剤が異なる速度で放出できるようにしてもよいし、または、異なる二種類の生体活性剤を対象に放出できるようにしてもよい。例えば、第1生体活性剤を第1セットの微粒子から放出でき、第2生体活性剤を第2セットの微粒子から放出できる。
特定の環境において互いに混合不可能な二種類の生体活性剤(例えば、疎水性薬物と親水性薬物は、極性または非極性溶媒中では互いに混合不可能である)を送達することが望まれる場合、2セットの微粒子を使用することができる。例えば、上記第1生体活性剤を第1セットの微粒子中に存在する疎水性薬物とすることができ、上記第2生体活性剤を第2セットの微粒子中に存在する親水性薬物とすることができる。疎水性薬物に有用な分解性ポリマーまたは分解性コポリマーは、高ラクチド成分または高カプロラクトン成分を有する一方、親水性薬物に有用な分解性コポリマーは、高グリコリド成分を有する。
以下の実施例を参照すれば、本発明をより良く理解されるであろう。これら実施例は、本発明の特定実施形態を説明するものと意図され、本発明の範囲を限定するものとは何ら意図されていない。
[実施例]
[実施例1]本発明のバリア層による、組織への薬物送達の増加
50重量%のドデカン酸および50重量%のオレイン酸のコーティングの組成物である、本発明のバリア層の実施形態では、エキソビボモデルにおける上記バルーンカテーテルから動脈組織へのパクリタキセルの移送が増大した。
(材料および方法)
(カテーテルのコーティング)
上記バルーンカテーテルの上記バルーンの上記拡大および折り畳み可能な表面に、パクリタキセル微粒子を結合させた可塑性のヒドロゲルコーティングを設けた。上記バルーンカテーテルをMinnesota Medtec社(Maple Grove, MN)から購入した。上記バルーンの壁厚が5μm〜10μmの上記バルーンの上記拡大および折り畳み可能な構造をナイロンから作製した。
ヒドロゲルコーティング溶液を、光ポリアクリルアミドを使用して調製した(この光ポリアクリルアミドは、米国特許第6,007,833号明細書に記載されているように、重さを量り、IPAと水の混合液(50%のIPA/50%の水(v/v))中に10mg/mLの濃度で溶解させた)。上記光ポリアクリルアミドのコーティング溶液中、引き戻し速度が0.5cm/sの浸漬プロセスを使用して、上記バルーンにコーティングをした。上記バルーンに上記ヒドロゲルコーティング溶液を塗布した後、UV硬化を行った。コーティングさせた上記バルーンを400ワットの金属ハロゲン電球を備えたDymax 2000-EC Series UV Floodlambの前に光源から約20cm離して置き、3分間照射した後、回収した。
次に、湿式粉砕プロセスを用いてパクリタキセル微粒子を調製した。簡潔に説明すると、原薬物をDI水に20mg/mLの割合で直接添加した。その後、沈殿したパクリタキセル微粒子を水中で粉砕し、粒径を〜1μmから3μmに縮小した。セラミックビーズを有するガラスジャーの中で、上記薬物/水の懸濁をタンブルミルにかけた。上記懸濁液を約100rpmの速度で16時間(一晩)粉砕した。この結果得られた懸濁液をピペットにより公知の薬物の懸濁液量(一般的には20μL)取り、表面がコーティングされた上記感光性ポリマーに塗布した。このように塗布された溶液が目視上、乾くまで上記バルーンを回転させることで、上記ピペットにより塗布した液滴を上記バルーンの表面全域に均一に分散させた。その後、上記バルーンを折り畳んだ。
その後、このように折り畳み、コーティングを行ったパクリタキセルを担持するカテーテルバルーンを40℃で0.5cm/秒から1cm/秒の速度で溶解させた脂質コーティングの溶融組成物に浸漬することで、本実施例の脂質コーティングを塗布した。ディップ後、コーティングされた上記バルーンを室温で1時間から4時間静置した。その後、コーティングした上記バルーンを−20℃で冷却し、保護的な鞘を上記コーティング上に設けた。
(エキソビボ試験)
採取されたブタ動脈を取得し、長さ1.5インチとなるようにカットした。その後、上記ブタ動脈の断片を、事前に水槽内で37℃まで予熱した4mLのPBS(リン酸緩衝生理食塩水)(pH値:7.4)で満たした琥珀ガラス(容量4mL)瓶内に移した。
8mLのPBS(pH値:7.4)で満たしておいた瓶(容量:8mL)を水槽内で37℃まで予熱し、当該瓶の中に収縮し、折り畳まれたバルーンを移し、4分間含浸した。上記バルーンを7 Frenchガイドカテーテル内に通した。上記バルーンが上記7 Frenchガイドカテーテルから抜け出ると、上記動脈内へ挿し込んだ。上記バルーンを(上記瓶(容量:4mL)中に沈めた)上記ブタ動脈の内腔までスライドさせ、4atmで30秒間拡大させた。その後、圧力を放出し、上記ブタ動脈から上記バルーンを回収した。
上記ブタ動脈の内腔壁に送達されたパクリタキセルの量を決定するために、メタノールに0.1%の氷酢酸を混合した4mLの混合液に24時間浸した。その後、1mLアリコートの抽出培地をUV薬物含量測定用の96ウェルプレートに移した。上記ブタ動脈に送達されたパクリタキセルの量を測定し、報告した。
(結果および結論)
本実施例の脂質コーティングは、模擬使用試験のコーティングカテーテルからの粒子の放出を著しく減少させた(図2を参照)。上記カテーテルを、蛇行した経路内を通し、膨張させ、収縮させ、回収した。データセット1は、粒子をヒドロゲルコーティング内部に埋め込んだ場合、本実施例の脂質コーティング不在化での当該粒子の放出を示す。データセット2は、薬剤粒子を含む上記ヒドロゲルコーティングを本実施例の脂質コーティングの組成物(50重量%のドデカン酸と50重量%のオレイン酸)の実施形態で覆っていた場合に放出された粒子の著しい減少を示している。データセット3および4は、上記ヒドロゲルコーティングまたは上記脂質コーティングの不在時に第1および第2カテーテル系から放出される粒子を示している。得られた結果を3.5mm×15mmのバルーンサイズで標準化した。
図3は、本発明の脂質コーティングが、エキソビボ試験において組織へ送達される薬剤を増加させるとともに、薬剤の損失を減少させたことを示す。各セットの中間バーは、本発明の脂質コーティング(50重量%のドデカン酸と50重量%のオレイン酸)の実施形態でコーティングしたカテーテルを使用した場合にその場所で確認された薬剤の量を示す。上記カテーテルが上記ヒドロゲルコーティングを含むが、脂肪酸コーティングを含まない場合の薬剤の位置を各データセットの左のバーで示す。上記脂肪酸の組成が100重量%のドデカン酸である場合の薬剤の位置を各データセットの右のバーで示す。上記データは、本発明の脂質コーティング組成物を使用した場合、より多くの薬剤が上記組織へ送達されるとともに、送達中の薬剤損失または行方不明となる薬剤の量がより少なくなることを示している。
なお、内容から複数形の意味だけが意図されていない限り、本明細書および添付の請求項に使用される単数形(「a」、「an」、「the」)は複数形の意味も含む。よって、例えば、「化合物」を含む組成物への言及は、二つまたは複数の化合物の混合物を含む。なお、用語「または」は、通常、「または」と「および」の両方をいう用語として使用されているが、内容から判断してこの意味での使用が明らかに不適当な場合にはこれに限らない。
なお、本明細書および添付の請求項で使用される用語「構成される」は、特定の課題を実行するように構築または構成されるか、または、特定の構成を採用するように構築または構成されるシステム、デバイス、または、それ以外の構造を記述する。上記用語「構成される」を他の類似語句と互換可能に使用することができ、「配置される」と「構成される」、「構築される」と「配置される」、「適合させる」と「構成される」、および、「適合させる」と、「構築させる」、「製造する」、「配置させる」などは互換可能に使用することができる。
本明細書内に引用した全ての文献および特許出願は、本発明の技術分野における通常の技量レベルを示している。このように引用されることにより上記全ての文献および特許出願の開示内容を本願に援用するが、この援用の度合いは、個々の文献または特許出願を特定して個別に引用した場合に援用される度合いと同じである。
多様な特定実施形態および好適な実施形態と技法を参照して、本発明の説明を行った。しかし、本発明の精神と範囲内で多くの変形および変更を行えることは明らかであろう。
拡大および折り畳み可能な構造上のコーティングを概略的に示す。 使用の模擬テストにおいて、本発明の脂質コーティングが、コーティングされたカテーテルバルーン(catheter balloon)から放出される粒子を有意に減少させることを示す。 エキソビボ試験において、本発明の脂質コーティングにより、組織への薬物の移動が増加し、薬物の損失が減少したことを示す。

Claims (25)

  1. 拡大および折り畳み可能な構造、
    可塑性ヒドロゲルマトリックスと、生体活性剤を含んでいる微粒子とを含んでいる、上記拡大および折り畳み可能な構造上の薬剤コーティング、および、
    室温より高く、対象の体温より低い融点または軟化点を有する、上記薬剤コーティング上の脂質コーティングを含んでおり、
    上記脂質コーティングは、(a)30℃以上の融点を有する第一の脂肪酸および20℃以下の融点を有する第二の脂肪酸、または(b)35℃を超える融点を有する第一の脂肪酸および35℃未満の融点を有する第二の脂肪酸を含んでおり、
    上記生体活性剤を対象体内の部位へ送達することに効果的である、医療デバイス。
  2. 上記脂質コーティングが、室温では固体であり、そして上記対象の体温では軟質体または液体である、請求項1に記載の医療デバイス。
  3. 上記脂質コーティングが、室温より高く、上記対象の体温より低い軟化温度を有する、請求項1に記載の医療デバイス。
  4. 上記脂質コーティングが、室温より高く、上記対象の体温より低い融点を有する、請求項3に記載の医療デバイス。
  5. 上記第二の脂肪酸が、オレイン酸またはその塩であり、上記第一の脂肪酸が、ドデカン酸またはその塩である、請求項1に記載の医療デバイス。
  6. 上記第一の脂肪酸が、式「CH(CHCOOH」で表され、当該式中のnが4≦n≦20である飽和脂肪酸、またはその塩であり、かつ、
    上記第二の脂肪酸が、式「CH(CHC=C(CHCOOH」で表され、当該式中のmおよびoが互いに独立して2以上、20以下である不飽和脂肪酸、またはその塩である、請求項2に記載の医療デバイス。
  7. 上記薬剤コーティングが、一つまたは複数の溶媒および上記生体活性剤を含む、請求項1に記載の医療デバイス。
  8. 上記拡大および折り畳み可能な構造が、バルーンの全体または一部である、請求項1に記載の医療デバイス。
  9. 上記バルーンが血管形成術用バルーンである、請求項8に記載の医療デバイス。
  10. 上記生体活性剤が、抗増殖剤、抗炎症剤、または、抗血小板剤を含む、請求項1に記載の医療デバイス。
  11. 上記生体活性剤がパクリタキセルを含む、請求項10に記載の医療デバイス。
  12. 上記微粒子の大部分が、上記可塑性ヒドロゲルマトリックスの内部に不均一に分散されており、上記可塑性ヒドロゲルマトリックスの表面に部分的に埋め込まれている、請求項1に記載の医療デバイス。
  13. 上記微粒子が上記生体活性剤から成る、請求項1に記載の医療デバイス。
  14. 伸縮性構造の拡張において、上記拡大および折り畳み可能な構造またはコーティングと結び付いた上記微粒子の10%〜100%が、上記医療デバイスから放出される、請求項1に記載の医療デバイス。
  15. 上記薬剤コーティングが、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(HEMA)、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸のコポリマー、ビニルピロリドン/(メタ)アクリルアミドのコポリマー、または、これらの混合物を含む、請求項1に記載の医療デバイス。
  16. 上記薬剤コーティングが、ペンダント型の反応性の光官能基を有するポリマーを含み、当該ポリマーが、当該ペンダント型の反応光官能基によって上記コーティング内の他のポリマーまたは上記拡大および折り畳み可能な構造の表面と共有結合されていることを特徴とする請求項1に記載の医療デバイス。
  17. 上記薬剤コーティングが、5μm〜100μmの厚さを有する、請求項1に記載の医療デバイス。
  18. 微粒子が生体活性剤を含み、当該微粒子の最大径の平均が0.1μm〜10μmである、請求項1に記載の医療デバイス。
  19. 上記薬剤コーティングが生分解性ポリマーを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
  20. 上記生分解性ポリマーが、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリジオキサノン、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(グリコリド−co−ポリジオキサノン)、ポリアンヒドリド、ポリ(グリコリド−co−トリメチレンカーボネート)、および、ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)、生分解性ポリ(エステル−アミド)、生分解性ポリエーテルエステルコポリマー、生分解性エステル含有ブロックコポリマー、分解性デキストラン系ポリマー、分解性マルトデキストリン系ポリマー、これらのコポリマー、または、これらの混合物を含む、請求項19に記載の医療デバイス。
  21. 上記生分解性ポリマーが、上記生分解性ポリマーと架橋するペンダント重合基を含む、請求項19に記載の医療デバイス。
  22. 上記薬剤コーティングが、5μm〜100μmの厚さを有する、請求項19に記載の医療デバイス。
  23. 上記生分解性ポリマーが、分解性マルトデキストリン系ポリマーを含む、請求項19に記載の医療デバイス。
  24. 上記対象の体内で上記拡大および折り畳み可能な構造を拡張させると、上記薬剤コーティングが、粉砕され、上記拡大および折り畳み可能な構造から薄い層状に剥がれることができる、請求項19に記載の医療デバイス。
  25. 生分解性コーティングが不連続である、請求項19に記載の医療デバイス。
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