本発明においては、多孔質板を浴槽内に設けた場合でも浴槽内の空間を広く確保することができ、また、多孔質板の表面から気泡を均一に発生させることができ、さらには、陶製の多孔質板において、きめの細かい気泡を発生させることができる多孔質板を容易に得ることができる浴槽の製造方法を提供するという目的を以下のようにして実現した。
本発明の実施例1に基づく浴槽5は、内底面から気泡を発生させる機能を有する陶製の浴槽であり、図1に示すように構成され、浴槽本体10と、浴槽本体10の内底面に設けられた多孔質板ユニット20とを有している。
ここで、浴槽本体10は、陶製であり、略円形板状の底面部12と、底面部12の周縁から立設した側面部14とを有している。側面部14は、逆円錐台状の筒状を呈し、上側に行くほど径が大きくなる逆テーパ状を呈している。また、側面部14には、外側の面から内側の面まで貫通する貫通孔14aが略水平に形成されている。貫通孔14aの形成位置は、多孔質板ユニット20を浴槽本体10の内底面に設置した際に、空気供給路30の開口部30a−1と一致する位置に設けられている。この浴槽本体10は、既存の浴槽が用いられる。なお、既存の浴槽としての浴槽本体10は陶製であるとしたが、多孔質板ユニット20が設置できればよいので、他の材質(例えば、木製、合成樹脂製)であってもよい。
また、多孔質板ユニット20は、図1、図2に示すように、全体に円板状を呈し(つまり、平面視で円形の外形を有した板状を呈する)、多孔質板ユニット20は、多孔質板保持部22と、多孔質板24とを有している。図2は、多孔質板ユニット20の断面図であり、図1のA−A線の位置と同じ位置の断面を示している。この多孔質板ユニット20は、その側面が浴槽本体10の側面部の内周面に接するように、浴槽本体10の底面部12に載置される。
多孔質板保持部22は、焼き物から成り、板状である。本実施例においては、多孔質板保持部22は、上面に多孔質板24を配置するための凹部22aを有する円板状である(円板状の本体部22Aの周囲からリング状に上方に突出した突状部22Bを形成した形状ともいえる)。また、空気供給路30の供給路端部30aが、多孔質板保持部22の外周面から凹部22aにまで貫通して水平方向に(つまり、多孔質板保持部22の下面や多孔質板24の上面と平行に)形成されている。すなわち、供給路端部30aは、空気供給路30に空気を導入する導入口である。また、供給路端部30aは、断面円形の孔である。なお、多孔質板保持部22の下面の外周の角部には、浴槽本体10の内底面の角部に合わせてアールが形成されている。また、この多孔質板保持部22は通気性がない。ここで、本願において通気性がないとは、JISR2115に準拠して測定し、空気の動粘土をかけていない通気率Pの値が、0.01(cm3)(cm)/(cm2)(sec)(cmH2O)以下であることをいう。具体的には、多孔質板保持部22には、多孔質板24と異なり、可燃の粉末が焼失して形成された微細な孔部Kは設けられておらず、多孔質板保持部22は実質的には多孔質ではない。また、多孔質板保持部22の露出面、つまり、下面22−1と周面22−2とリング状の上面部22−3(上面における凹部22a以外の部分)には、施釉することにより釉薬層を設けるのが好ましい。この釉薬層を設けることにより、多孔質板24の上面以外から気泡が出るのを防止するとともに、浴槽本体10に設置する際に、多孔質板ユニット20の下面等が損傷するのを防止することができる。また、通気性のない多孔質板保持部22の突状部22Bは多孔質板の側面を気密に覆っている。また、多孔質板保持部22の吸水率は3%以下である。
また、多孔質板24は、焼き物から成り、板状であり、多孔質板保持部22の一面と面接合している。本実施例においては、多孔質板24は、円板状を呈する陶製板状部材であり、多孔質板24の上面は、多孔質板保持部22の上面22−3と面一(つまり、同一平面)に形成されている。多孔質板24は多孔質板保持部22の凹部22aに嵌合した状態となっていて、多孔質板24の外周の側面部と多孔質板保持部22の凹部22aの側壁間には、隙間は形成されていない。
多孔質板24の内部には、図3に示すように、多数の空気経路(空気送通経路)が形成され、この空気経路は、多数の孔部Kが不規則に連なって形成されている。このように多数の孔部Kが形成されることにより、多孔質板24は多孔質に形成されている。各孔部Kの径の大きさL1は、50μm〜250μmに形成されている。孔部Kは、多孔質板24を形成する際に、粒径の大きさが好ましくは60〜300メッシュの可燃の粉末を陶土と混練し、後述する焼成工程において、この粉末が焼失することにより形成される。
また、多孔質板ユニット20の内部には、図1及び図2に示すように、空気供給路30が形成されている。つまり、空気供給路30は、多孔質板ユニット20の側面の開口部30a−1から内部に向けて形成され、図1の例では、渦巻き状に平面視において多孔質板ユニット20の中心位置に向けて形成されている。空気供給路30の供給路端部30a以外の部分(空気供給路本体30bとする)は、多孔質板保持部22と多孔質板24の間の位置に設けられている。この空気供給路30の径の大きさ(横断面の径の大きさ)L2は、5〜20mm程度に形成されている。つまり、空気供給路30の径の大きさL2は、孔部Kの径の大きさL1よりも大きく形成されている。また、空気供給路30の径の大きさL2は、多孔質板ユニット20の厚みL3よりも小さく形成されている。さらに、空気供給路30内の気圧を一定に維持するため、空気供給路30は、供給路端部30aから先端に向かって先細に形成されたものであっても良い。また、空気供給路30の端部は、多孔質板ユニット20の表面(つまり、多孔質板保持部22の側面の表面)に形成されている(つまり、多孔質板ユニット20の表面(つまり、多孔質板保持部22の側面の側面)から露出して形成されている)。
空気供給路本体30bの周囲には、複数の孔部Kが隣り合って設けられ、結果として、空気供給路本体30bにおける各箇所から孔部Kによる空気経路を介して多孔質板24の表面にまで空気の送通路が連通している。なお、多孔質板24は多孔質に形成されているので、当然、多孔質板24の表面には多数の孔部Kが表出している。
また、多孔質板ユニット20には、図1に示すように、排水口としての貫通孔Jが上下方向(表裏方向)に形成されている。つまり、貫通孔Jは、多孔質板24の上面から多孔質板保持部22の下面まで貫通して設けられている。なお、浴槽本体10の底面部12においても、貫通孔Jに対応する位置に排水口としての貫通孔が上下方向に形成されている。貫通孔Jには、止水栓が設けられている。
多孔質板ユニット20が浴槽本体10内に取り付けられた状態では、浴槽本体10の内側において貫通孔14aと多孔質板ユニット20の開口部30a−1とは連通している。
また、浴槽本体10と多孔質板ユニット20の側面の間に生じた隙間Pには、上方からコーキング材を埋めるようにしてもよい。
次に、上記構成の浴槽5及び多孔質板ユニット20の製造方法について図4〜図9を使用して説明する。
まず、多孔質板ユニット20を形成(製造)する(S11、多孔質板ユニット形成工程)。多孔質板ユニット20の形成に際しては、図5及び図7に示すように、まず、多孔質板素地24'を成形(製造)する(S21、多孔質板素地の成形工程)。多孔質板素地24'は、焼成される前の状態の多孔質板24であり、可燃の粉末(粉末の粒は球状が好ましい)と粘土を主成分とする陶土を混練して、粉末が均一に分散して混入した陶土を板状(多孔質板24の形状、本実施例では円形板状)に成形して、多孔質板素地24'を成形する。
ここで、可燃の粉末としては、粉の粒径(直径)が60〜300メッシュの大きさ(約50μm〜約250μmの大きさとしてもよい)を有するものが好ましいが限定されない。また、粉末は粉状の植物系研磨材を用いるのが好ましい。この粉状の植物系研磨材としては、くるみ殻(くるみの種の皮)を用いた研磨材が好ましいが、とうもろこし穂芯を用いた研磨材や、杏種を用いた研磨材や、桃種を用いた研磨材であってもよい。また、植物系研磨材のみならず、プラスチック系研磨材(例えば、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリエステル樹脂)を用いてもよい。粉状の植物系研磨材やプラスチック系研磨材は、市販のものを利用することができる。
粉末の混入割合としては、陶土の乾燥重量に対して8〜12重量%(好適には、10重量%)とする。混入割合が8重量%未満の場合には、形成される孔部Kの数が十分ではないという問題があり、また、12重量%を超える場合には、多孔質板素地24'としての形状を保つことが困難になるという問題がある。粉末を陶土に混入する際には、陶土になるべく均一に分散させる。
次に、多孔質板保持部素地22'を成形(製造)する(S22、多孔質板保持部素地の成形工程)。多孔質板保持部素地22'は、焼成前の状態の多孔質板保持部22である。この多孔質板保持部素地22'の成形工程は、粘土を主成分とする陶土を板状(多孔質板保持部22の形状)に成形して、多孔質板保持部素地22'を成形する工程である。本実施例においては、陶土により、上面に多孔質板素地24'を配置するための凹部22a'を有する円板状に成形して、多孔質板保持部素地22'を成形する。なお、多孔質板保持部素地22'の下面の外周の角部には、アールを形成し、突状部22B'には、外周面から凹部22a'にかけて、供給路端部30aを形成するための貫通孔22b'を形成しておく。該貫通孔22b'の上下方向の位置は、貫通孔22b'の軸線の高さ(貫通孔22b'の高さ方向の中心の高さ)が凹部22a'の上面と一致するようにし、その場合には、貫通孔22b'の上半分が凹部22a'に露出していることになる。なお、貫通孔22b'の軸線の高さを凹部22a'の上面よりも上側としてもよく、例えば、貫通孔22b'の上下方向の下端位置が凹部22a'の上面と一致するようにしてもよい。
この多孔質板保持部素地22'には、多孔質板素地24'と異なり、可燃の粉末を混入しない。なお、焼成後の冷却における多孔質保持部22と多孔質板24の収縮率を合わせるため、多孔質板保持部素地22'を構成する陶土は、多孔質板素地24'を構成する陶土と同一とするのが好ましい。
なお、多孔質板保持部素地22'の形状・大きさは、浴槽本体10の内底面に設置可能な形状・大きさに形成する。つまり、本実施例は、既存の浴槽に多孔質板ユニット20を設置する場合の例であるので、既存の浴槽に設置可能な形状・大きさに形成する。
なお、上記の説明では、多孔質板素地24'の成形の後に多孔質板保持部素地22'を成形するとしたが、多孔質板保持部素地22'を成形した後に多孔質板素地24'を成形してもよく、それらを同時に成形してもよい。
次に、図7に示すように、空気供給路30を形成するため、可燃の型取材34を挟んで、多孔質板素地24'と多孔質板保持部素地22'とを層状に重ねる(S23、焼成前多孔質板ユニット形成工程)。本実施例では、多孔質板保持部素地22'の凹部22a'の上面に可燃の型取材34を渦巻き状に配置し、その後、多孔質板素地24'を型取材34の上方から多孔質板保持部素地22'の凹部22a'内に層状に重ねる。
可燃の型取材34は、代表的には、紐状の可燃物を使用する。紐状の可燃物としては、例えばウレタンゴム紐(例えば、断面円形のウレタンゴム紐や断面四角形のウレタンゴム紐)が挙げられる。型取材34を配置する際には、型取材34の端部34aを多孔質板保持部素地22'の貫通孔22b'に挿通して、貫通孔22b'から外部に露出するようにしておく。なお、型取材34の端部34aを貫通孔22b'の内側の端部の位置に配置して、型取材34の端部位置から外部に連通した貫通孔22b'(穴部)が形成された状態としてもよい。
なお、多孔質板素地24'の外周の側面部と多孔質板保持部素地22'の凹部22a'の側壁間には、隙間は形成されず、多孔質板保持部素地22'の凹部22a'に多孔質板素地24'を配置して、多孔質板保持部素地22'と多孔質板素地24'とを重ねて形成するのみで、焼成した際に、多孔質板保持部22と多孔質板24とは一体に形成される。
このようにして、焼成前多孔質板ユニット20'を形成する。つまり、焼成前多孔質板ユニット20'は、多孔質板保持部素地22'と多孔質板素地24'と型取材34とにより構成されている。なお、上側の多孔質板素地24'の上面(露出面)には、入浴者の足が滑らないように凹凸を形成するのが好ましい。また、焼成前多孔質板ユニット20'には、貫通孔Jを形成しておく。焼成前多孔質板ユニット20'を平面視すると、図8に示すように構成される。なお、紐状の型取材34の径(太さ)L4は、多孔質板ユニット20の厚みL3よりも小さく形成され、多孔質板素地24'の厚みや多孔質板保持部24'の本体部22A'(本体部22A'は、焼成される前の状態の本体部22Aである)の厚み(多孔質板保持部24'の下面と凹部22a'の上面間の長さ)よりも小さく形成されている。
次に、焼成前多孔質板ユニット20'を焼成する(S24、焼成工程)。焼成温度は、1200〜1300℃が好ましい。型取材34と粉末が燃焼し、燃焼ガスが外部に放出される。型取材34の配置領域と粉末の配置領域とに空間が形成される。つまり、型取材34の配置領域の空間が空気供給路30となり、粉末の配置領域の空間が孔部Kとなる。そして、空気供給路30と孔部Kが導通する。さらに、燃焼ガスの放出経路である互いに隣り合う複数の孔部Kが連通して、一面から他面にかけて連通する空気経路が多孔質板24に形成される。以上のようにして、多孔質板ユニット20が製造される。
焼成工程は、素焼工程、釉薬塗布工程、及び本焼工程を含むものであっても良い。すなわち、焼成前多孔質板ユニット20'を素焼し、素焼した焼成前多孔質板ユニット20'の多孔質板保持部素地22'の露出面(下面と周面と上面)に釉薬を塗布し、この焼成前多孔質板ユニット20'を本焼しても良い。素焼温度は700〜800℃、本焼温度は1200〜1300℃が好ましい。なお、素焼工程を省略しても良い。
一方、多孔質板ユニット20を配置する浴槽本体10を用意するが、浴槽本体10に既存の浴槽を用いる場合には貫通孔14aが形成されていないので、側面部14に貫通孔14aを形成しておく。
多孔質板ユニット20と浴槽本体10とが準備できたら、図9に示すように、多孔質板ユニット20を浴槽本体10に取り付ける(S12、多孔質板ユニット取付け工程(図4))。すなわち、多孔質板24の露出面を浴槽本体10の開口に向けて、浴槽本体10の内底面に多孔質板ユニット20を配置する。この場合、多孔質板ユニット20を浴槽本体10内に配置すればよく、例えば、多孔質板ユニット20と浴槽本体10の内底面とを固着する必要はない。なお、多孔質板ユニット20の配置に際しては、浴槽本体10の内側において、貫通孔14aと開口部30a−1が互いに向き合って連通するようにする。以上のようにして、浴槽5が製造される。
なお、多孔質板ユニット20と浴槽本体10の内底面とを固着したり、浴槽本体10と多孔質板ユニット20の側面の間に生じた隙間Pにコーキング材を埋めて隙間を塞ぐようにしてもよい。
なお、浴槽本体10について既存の浴槽を用いるのではなく別途製造する場合には、以下のようにする。
すなわち、図6に示すように、粘土を主成分とする陶土を槽状(浴槽本体10の形状)に成形して(これを「浴槽本体素地」とする)(S31、浴槽本体素地の成形工程)、その後、浴槽本体素地を焼成する(S32、焼成工程)ことにより、浴槽本体10を製造する。なお、焼成の際の焼成温度は、1200〜1300℃が好ましい。なお、浴槽本体素地の形成に際しては、貫通孔14aや多孔質板ユニット20の貫通孔Jに対応する貫通孔も形成しておく。
焼成工程は、素焼工程、釉薬塗布工程、及び本焼工程を含んでも良い。すなわち、浴槽本体素地の素焼を行い(素焼した浴槽本体素地を「浴槽本体素焼き素地」とする)、その後、該浴槽本体素焼き素地に釉薬を塗布して、その後、施釉を塗布した浴槽本体素焼き素地を本焼する(本焼工程)ことにより、浴槽本体10を製造する。素焼温度は700〜800℃、本焼温度は1200〜1300℃が好ましい。なお、素焼工程を省略しても良い。
上記のように製造された浴槽5の使用方法について説明する。浴槽5を使用するには、図10に示すように、圧縮空気を出力するためのコンプレッサー40と、コンプレッサー40に圧縮空気供給管42を接続して設け、該圧縮空気供給管42の端部を貫通孔14aに貫通させるとともに、空気供給路30の端部(多孔質板ユニット20の開口部30a−1)に差し込んで、コンプレッサー40から多孔質板ユニット20に圧縮空気を供給できるようにする。
この状態で、コンプレッサー40から圧縮空気を供給することにより、多孔質板ユニット20の空気供給路30に圧縮空気が送られ、さらに、空気供給路30から連通した孔部Kに送られて、多孔質板24の上面(露出面)から気泡が発生する。多孔質板24は、孔部Kの大きさが50μm〜250μmに形成されている。このため、多孔質板ユニット20は、極めて小さな気泡Wを発生させることができ、極めて小さな気泡Wが入浴者の肌に当たることにより入浴者を快適にさせることができる。
本実施例の浴槽5及び多孔質板ユニット20によれば、多孔質板ユニット20において、多孔質板保持部22と多孔質板24とが面接合した構成となっていて、空気供給路30は、多孔質板ユニット20の内部に通路状に形成されているので、多孔質板24の板面に垂直にかかる荷重が多孔質板保持部22に分散される。このため、多孔質板24の耐荷重性に優れている。また、本実施例のように、浴槽本体の内底面の全体にわたって広い面積の多孔質板を設置することができる。
また、本実施例の多孔質板ユニット20によれば、既存の浴槽に設置して使用することができる。
また、多孔質板ユニット20の下側に空気を送るための空間を設ける必要がないので、浴槽内の空間を広く確保することができる。
また、多孔質板ユニット20の側方から空気を供給した場合でも、空気供給路30が形成されているので、空気供給路30を多孔質板ユニット20内に広く形成しておくことにより、空気供給路30により多孔質板ユニット20全体に偏りなく空気を供給でき、空気供給路30から連通した孔部Kにより多孔質板24の上部に空気が送られるので、気泡を多孔質板24の上面から偏りなく均一に発生させることができる。つまり、仮に、空気供給路30が設けられず、圧縮空気を多孔質板24の側方の1カ所から供給するのみでは、該側方の1カ所の周囲からは気泡が多く発生するものの、該側方の1カ所から遠ざかるほど多孔質板24の上面から出る気泡が少なくなってしまうが、空気供給路30が設けられていることにより、気泡を多孔質板24の上面から均一に発生させることができる。
また、60〜300メッシュの粒径を有する焼失性の粉末を陶土に混ぜて焼成することにより多孔質板24を形成するので、きめの細かい気泡を発生させる多孔質板を容易に形成することができる。特に、粒が球状の粉末を用いて孔部Kを形成すると、孔部Kの形状を球形又は球形に近似した形状とすることができ、空気供給路30から多孔質板24の表面に向けて孔部Kを連通させやすくすることができる。例えば、糸を切断したような細長い可燃物を使用した場合には、細長い可燃物が燃焼する際に、該可燃物の周囲の陶土に対して均等に圧力が掛からないため、細長い可燃物の形状がそのまま孔部の形状とはならず、孔部が潰れた形状になる可能性があるが、粉末の粒が球状の場合には、粉末が燃焼する際に、可燃物の周囲の陶土に均等に圧力が掛かるため、粉末の粒の形状がそのまま孔部の形状となり、潰れない孔部とすることができる。
また、孔部Kの形状をなるべく潰れのない形状とするには、硬度の大きい粒の粉末とするのが好ましい。この粉末としては例えば植物系研磨材を使用することが好ましい。植物系研磨材においては、くるみ殻(くるみの種の皮)を用いた研磨材の硬度が約3.0モースで、とうもろこし穂芯を用いた研磨材の硬度が約2.0モースであり、杏種を用いた研磨材の硬度が約3.5モースであり、桃種を用いた研磨材の硬度が約4.0モースであり、メラミン樹脂の研磨材の硬度は約4.0であり、ユリア樹脂の研磨材の硬度は約3.5であり、ポリエステル樹脂の研磨材の硬度は約3.0であるので、いずれも潰れのない孔部Kを形成するのに適している。特に、硬度が低いと、陶土が焼成する際に陶土も膨張することから、孔部Kの形状が潰れた形状となる可能性があるが、上記のように、硬度の大きい可燃物とすることにより、孔部Kの潰れを小さくすることができる。
また、粉末として、市販の研磨材を利用できるので、その点でも、きめの細かい気泡を発生させる多孔質板を容易に形成することができる。
また、型取材34を挟んで多孔質板素地24'を多孔質板保持部素地22'に層状に重ねるので、型取材34の外形に沿って多孔質板素地24'が変形する。そして、多孔質板素地24'の焼成と共に型取材34が焼失して空気供給路30が形成される。このように、空気供給路30を容易に形成することができる。また、型取材34の形状を変えることで様々な空気供給路30の経路を形成することができる。
なお、上記の説明において、多孔質板ユニット20の空気供給路30の供給路端部30aと貫通孔14aを連通させるものとして説明したが、浴槽本体10に貫通孔14aを設けずに、コンプレッサー40に接続された圧縮空気供給管42を側面部14の上端から側面部14の内側の面に沿って導き、供給路端部30aに接続するようにしてもよい。この場合には、供給路端部30aに挿通した圧縮空気供給管42を上方に導くために、突出部22Bの一部に上方に導かれた圧縮空気供給管42を案内するための切欠きを形成する。
また、上記の説明においては、多孔質板保持部22は、上面に凹部を有する板状であるとしたが、図16に示すように、多孔質板24と同大同形状の板状(つまり、凹部が形成されていない円板状とする)とし、多孔質板保持部22と多孔質板24とが層状に重なった構成としてもよい。その場合には、当然、多孔質板保持部素地22'も凹部が形成されていない円板状となる。
また、上記の説明では、多孔質板ユニット20は、平面視で円形の外形を有した板状で有るとしたが、平面視の外形は他の形状でもよく、例えば、浴槽5の内底面の形状が四角形状である場合には、多孔質板ユニット20の外形も四角形状であり、多孔質板保持部22や多孔質板24の外形も四角形状となる。
実施例2の浴槽105は、図11に示すように、浴槽本体10と、浴槽本体10の内底面に設けられた多孔質板24とを有し、浴槽本体10と多孔質板24とが共に焼成されて一体となる。
浴槽本体10は、陶製等の焼き物から成り、通気性を有さない板状の底面部12と、底面部12の周縁から立設した側面部とを有している。
本実施例の底面部12は、略円形板状の底面部12の上側に多孔質板24を設置するための凹部(円形板状の凹部)12aを設けた構成となっている。また、底面部12には、底面部12の側面から該凹部12aにまで連通する貫通孔12bが略水平に形成されている。
なお、実施例2では、空気供給路30は、凹部12aの内底面と多孔質板24の下面の間(境界部)に形成されるので、貫通孔12bは、高さ方向には貫通孔12bの軸線の高さ(貫通孔12bの上下方向の中心位置の高さ)が凹部12aの内底面と略一致するように形成する。よって、貫通孔12bの奥側の端部は、上半分が凹部12a内に開口しているといえる。
また、多孔質板24は、実施例1の多孔質板20と略同様の構成であるが、実施例1のように多孔質板ユニット20の一部として構成されているのではなく、浴槽本体10の内底面に直接設けられる。
すなわち、多孔質板24は、図3に示すように、内部に多数の空気経路が形成された陶製板状部材であり、この空気経路は、多数の孔部Kが不規則に連なって形成されている。このように多数の孔部Kが形成されることにより、多孔質板24は多孔質に形成されている。各孔部Kの径の大きさは、50μm〜250μmに形成されている。これは、多孔質板24を形成する際に、粒径の大きさが好ましくは60〜300メッシュの可燃の粉末を陶土と混練し、後述する焼成工程において、この粉末が焼失することにより形成される。
また、浴槽本体10の底面部12と多孔質板24の間の位置には、空気供給路30が形成されている。つまり、空気供給路30は、多孔質板24の側面と下面の間の角部の位置から多孔質板24と底面部12間の内部(中心)に向けて形成され、図11の例では、渦巻き状に平面視において多孔質板24の中心位置に向けて形成されている。この空気供給路30の径の大きさ(横断面の径の大きさ)L5は、5〜20mm程度に形成されている。つまり、空気供給路30の径の大きさL5は、孔部Kの径の大きさL1よりも大きく形成されている。さらに、空気供給路30内の気圧を一定に維持するため、空気供給路30は、供給路端部30aから先端に向かって先細に形成されたものであっても良い。
この空気供給路30の周囲には、複数の孔部Kが隣り合って設けられ、結果として、空気供給路30における各箇所から孔部Kを介して多孔質板24の表面にまで空気の送通路が連通している。なお、多孔質板24は多孔質に形成されているので、当然、多孔質板24の表面には多数の孔部Kが表出している。
また、浴槽本体10の内側において、浴槽本体10の貫通孔12bと空気供給路30の端部30cは連通している。
また、図11に示すように、多孔質板24には、排水口としての貫通孔Jが上下方向(表裏方向)に形成されている。なお、浴槽本体10の底面部12においても、貫通孔Jに対応する位置に排水口としての貫通孔が上下方向に形成されている。貫通孔Jには、止水栓が設けられる。
次に、上記構成の浴槽105の製造方法について図12〜図13を使用して説明する。まず、粘土を主成分とする陶土を槽状に(浴槽本体10の形状、ただし、空気供給路30の下側部分に対応する溝部は設けられていない形状)に成形して、浴槽本体素地10'を成形(製造)する(S41、浴槽本体素地の成形工程)。本実施例においては、浴槽本体素地10'の成形に際して、底面部12'に多孔質板素地24'を収納する凹部12a'を形成するとともに、貫通孔12bや多孔質板24の貫通孔Jに対応する貫通孔も形成しておく。
また、板状の多孔質板素地24'を成形(製造)する(S42、多孔質板素地の成形工程)。すなわち、可燃の粉末(粉末の粒は球状が好ましい)と粘土を主成分とする陶土を混練して、粉末が均一に分散して混入した陶土を板状(例えば円板状)に成形する。ここで、可燃の粉末については、実施例1の場合と同様であるので、詳しい説明を省略する。粉末の混入割合としては、実施例1の場合と同様に、陶土の乾燥重量に対して8〜12重量%(好適には、10重量%)とする。なお、粉末を陶土に混入する際には、陶土になるべく均一に分散させる。多孔質板素地24'を構成する陶土は、浴槽本体10を構成する陶土と同一とするのが好ましい。なお、多孔質板素地24'は、浴槽本体素地10'の底面部12'の凹部12a'と同大同形状(つまり、該凹部と同一の径で、同一の厚みとする)とし、多孔質板素地24'を該凹部12a'に配置した際に、多孔質板素地24'の外周と凹部12a'の内周との間に隙間がないようにする。また、多孔質板素地24'の上面は、入浴者の足が滑らないように凹凸に形成するのが好ましい。また、多孔質板素地24'を構成する陶土は、浴槽本体素地10'を構成する陶土と同じか同系のものとするのが好ましい。
その後、浴槽本体素地10'の底面部12'の上面(つまり、凹部12a'の内底面)に可燃の型取材34を渦巻き状に配置(載置でもよい)する(S43、可燃物配置工程)。なお、型取材34の外側の端部34aは、底面部12'の凹部12a'の周壁(つまり、凹部12a'の周端)で、貫通孔12bの内側の端部位置に配置する(つまり、端部34aが貫通孔12bの内側の端部に接するようにする)。このようにすることにより、貫通孔12bと空気供給路30とは連通することになる。なお、型取材34を浴槽本体素地10'の底面部12'の上面に配置した状態では、貫通孔12bの内側の端部と型取材34の外側の端部34aとは高さ方向において上下方向に若干ずれている(つまり、型取材34の端部34aの下端の高さが貫通孔12bの軸線と略同一高さとなっていて、型取材34の端部34aの高さ方向の中心は、貫通孔12bの高さ方向の中心よりも高くなっている)が、多孔質板素地配置工程において、多孔質板素地24'を凹部12a'に配置することにより、型取材34の下側半分が凹部12a'内に沈み込むので、貫通孔12bの内側の端部と型取材34の外側の端部34aとは高さ方向において略一致することになる。
なお、浴槽本体10'の内側において、型取材34の端部34aを貫通孔12bに挿入した状態としてもよい。その場合には、貫通孔12bを貫通させて浴槽本体10'の外側に型取材34の端部34aを露出させてもよい。また、型取材34の端部34aを貫通孔12b内に配置してもよい。
可燃の型取材34としては、紐状の可燃物を使用する。紐状の可燃物としては、例えば、ウレタンゴム紐(例えば、断面円形のウレタンゴム紐や断面四角形のウレタンゴム紐)が挙げられる。
その後、型取材34が配置された浴槽本体素地10'の底面部12'の凹部12a'に多孔質板素地24'を配置する(S44、多孔質板素地配置工程)。つまり、底面部12'と多孔質板素地24'とにより型取材34を挟んだ状態とする。これにより、型取材34を配置した箇所は、型取材34の焼失後に、底面部12'の上面に溝部が形成されるとともに、多孔質板素地24'の下面には溝部が形成された構成となり、2つの溝部により空気供給路30が形成される。また、多孔質板素地24'が底面部12'に重ねて配置され、多孔質板素地24'の外周と浴槽本体素地10'の底面部12'の凹部12a'間には隙間が形成されていないので、焼成した際に、浴槽本体素地10'と多孔質板素地24'とは隙間なく一体に形成される。
以上のようにして、浴槽本体素地10'と型取材34と多孔質板素地24'とにより、焼成前浴槽105'が形成される。
その後、焼成前浴槽105'を焼成する(S45、焼成工程)。焼成温度は、1200〜1300℃が好ましい。浴槽本体素地10'と多孔質板素地24'とが焼成され、また、可燃の型取材34と粉末が焼成して外部に放出されることにより、可燃の型取材34の配置領域間と粉末の配置領域とに空間が形成される。つまり、可燃の型取材34の配置領域の空間が空気供給路30となり、粉末の配置領域の空間が孔部Kとなる。そして、空気供給路30と、これに隣り合う孔部Kが導通する。さらに互いに隣り合う複数の孔部Kが連通して、一面から他面にかけて連通する空気経路が多孔質板24に形成される。また、ステップS43で型取材34を配置する際に、浴槽本体素地10'の内側において、型取材34の端部34aを貫通孔12bに挿入するので、貫通孔12bと空気供給路30が連通することとなる。浴槽本体素地10'を焼成することにより浴槽本体10が形成され、多孔質板素地24'を焼成することにより多孔質板24が形成される。なお、多孔質板24の外周と浴槽本体10の底面部12の凹部12aの内周間の境界Qに隙間が形成されている場合には、該隙間にコーキング材を埋め込んでおく、以上のようにして、浴槽105が製造される。
上記の浴槽105の製造方法の焼成工程において、素焼を行い(素焼工程)、その後、釉薬を塗布して本焼(本焼工程)を行うようにしても良い。具体的には、焼成前浴槽105'を素焼する。そして、素焼された焼成前浴槽の浴槽本体素地10'の露出した表面(多孔質板素地24'に接している領域以外の表面)に釉薬を塗布する。なお、露出した表面であっても、浴槽本体素地10'における底面の領域については釉薬を塗布しなくてもよい。その後、釉薬が塗布された焼成前浴槽を本焼する。素焼温度は700〜800℃、本焼温度は1200〜1300℃が好ましい。なお、素焼工程を省略しても良い。
上記のように製造された浴槽105の使用方法について説明する。浴槽105の使用方法は、上記実施例1の浴槽5と同様である。
すなわち、浴槽105を使用するには、図14に示すように、圧縮空気を出力するためのコンプレッサー40と、コンプレッサー40から出力された圧縮空気供給管42を設け、該圧縮空気供給管42の端部を貫通孔12bに貫通させるとともに、空気供給路30の端部30cに差し込んで、コンプレッサー40から多孔質板24に圧縮空気を供給できるようにする。
この状態で、コンプレッサー40から圧縮空気を供給することにより、多孔質板24と底面部12間に設けられた空気供給路30に圧縮空気が送られ、さらに、空気供給路30から連通した孔部Kに送られて、多孔質板24の上面から気泡が発生する。多孔質板24は、孔部Kの大きさが50μm〜250μmに形成されているの。このため、本発明の浴槽105は、極めて小さな気泡Wを発生させることができ、極めて小さな気泡Wが入浴者の肌に当たることにより入浴者を快適にさせることができる。
本実施例の浴槽105によれば、多孔質板24の一面が浴槽本体10の内底面と面接合した構成となっていて、空気供給路30は、多孔質板24と底面部12の間に通路状に形成されているので、多孔質板24の板面に垂直にかかる荷重が浴槽本体10の底面部12に分散される。よって、多孔質板24の耐荷重性に優れている。また、本実施例のように、浴槽本体10の内底面の全体にわたって広い面積の多孔質板24を設置することができる。
本実施例の浴槽105によれば、浴槽本体10の底面部12の上面(内底面)に接して多孔質板24が設けられ、底面部12と多孔質板24間の境界位置に空気供給路30が設けられているので、多孔質板24の下側に空気を送るための空間を広く設ける必要がないので、浴槽内の空間を広く確保することができる。
また、多孔質板24の側方から空気を供給した場合でも、空気供給路30が形成されているので、空気供給路30を多孔質板24と底面部12の間に広く形成しておくことにより、空気供給路30により多孔質板24の全体に偏りなく空気を供給でき、空気供給路30から連通した孔部Kにより多孔質板24の上部に空気が送られるので、気泡を多孔質板24の上面から均一に発生させることができる。つまり、仮に、空気供給路30が設けられず、圧縮空気を多孔質板24の側方の1カ所から供給するのみでは、該側方の1カ所の周囲からは気泡が多く発生するものの、該側方の1カ所から遠ざかるほど多孔質板24の上面から出る気泡が少なくなってしまうが、空気供給路30が設けられていることにより、気泡を多孔質板24の上面から均一に発生させることができる。
また、60〜300メッシュの粒径を有する粉末を陶土に混ぜて焼成することにより多孔質板24を形成するので、きめの細かい気泡を発生させる多孔質板24を容易に形成することができる。特に、球状の粒の粉末を用いて孔部Kを形成すると、孔部Kの形状を球形又は球形に近似した形状とすることができ、空気供給路30から多孔質板24の表面に向けて孔部Kを連通させやすくすることができる。例えば、糸を切断したような細長い可燃物を使用した場合には、細長い可燃物が燃焼する際に、該可燃物の周囲の陶土に対して均等に圧力が掛からないため、細長い可燃物の形状がそのまま孔部の形状とはならず、孔部が潰れた形状になる可能性があるが、粉末の粒が球状の場合には、粉末が燃焼する際に、粉末の周囲の陶土に均等に圧力が掛かるため、粉末の形状がそのまま孔部の形状となり、潰れのない孔部とすることができる。
また、孔部Kの形状をなるべく潰れのない形状とするには、硬度の大きい粉末とするのが好ましい。この粉末としては植物系研磨材を用いることが好ましい。植物系研磨材においては、くるみ殻(くるみの種の皮)を用いた研磨材の硬度が約3.0モースで、とうもろこし穂芯を用いた研磨材の硬度が約2.0モースであり、杏種を用いた研磨材の硬度が約3.5モースであり、桃種を用いた研磨材の硬度が約4.0モースであり、メラミン樹脂の研磨材の硬度は約4.0であり、ユリア樹脂の研磨材の硬度は約3.5であり、ポリエステル樹脂の研磨材の硬度は約3.0であるので、いずれも潰れのない孔部Kを形成するのに適している。特に、硬度が低いと、陶土が焼成する際に陶土も膨張することから、孔部Kの形状が潰れた形状となる可能性があるが、上記のように、硬度の大きい粉末とすることにより、孔部Kの潰れを小さくすることができる。
また、粉末として、市販の研磨材を利用できるので、その点でも、きめの細かい気泡を発生させる多孔質板を容易に形成することができる。
また、実施例1と異なり、浴槽本体と多孔質板とをそれぞれ別々に製造する必要がなく(既存の浴槽に多孔質板ユニットを取り付ける場合でも、結果的には、浴槽と多孔質板ユニットを別々に製造している)、多孔質板を備えた浴槽を一度に製造することができる。
さらに、型取材を挟んで多孔質板素地24'を浴槽本体素地10'の内底面に層状に重ねるので、型取材の外形に沿って多孔質板素地24'が変形する。そして、多孔質板素地24'の焼成と共に型取材が焼失して空気供給路30が形成される。このように、空気供給路30を容易に形成することができる。また、型取材の形状を変えることで様々な空気供給路30の経路を形成することができる。
なお、上記各実施例において、紐状の型取材として、ウレタンゴム紐を例に挙げたが、他の紐状の可燃物でもよい。他の紐状の型取材としては、例えば、可燃性のローブ(化学繊維製ロープ又は天然繊維製ロープ)や、てぐす等が挙げられる。
また、上記各実施例において、可燃の型取材34により形成される空気供給路30の形状を平面視において渦巻き状としたが、他の形状でもよく、例えば、放射状の形状としてもよい。すなわち、実施例1の多孔質板ユニット20における空気供給路30を放射状とする場合には、図15に示すように、開口部30a−1から供給された空気が多孔質板24の中央に至り、その後、放射状に設けられた空気供給路に供給され、その後、多孔質板20に設けられた孔部を介して多孔質板24の表面から気泡として排出されるのである。実施例2の多孔質板24における空気供給路30を放射状とする場合にも、同様に、空気供給路30を図15に示すような放射状の形状とすることができる。
以上、本発明の多孔質板ユニット、浴槽、及びこれらの製造方法について説明したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。
例えば、実施例1において、多孔質板保持部22に一体に形成された突状部22B(図2)は、多孔質板24の側面を気密に覆うものであるが、この突状部22Bは多孔質板保持部22に一体に形成されたものに限定されない。多孔質板24の側面を気密に覆い、多孔質板保持部22とは別体の被覆部であっても良い。この被覆部は、例えば、粘土を主成分とする陶土を多孔質板素地24'と共に焼成して形成される。他には、被覆部は、焼成された多孔質板ユニット20の多孔質板24の側面に貼り付けられ、多孔質板24の側面を気密に覆うテープであっても良い。また、多孔質板24の側面に形成された塗料の塗膜であっても良い。
また、実施例1の多孔質板ユニット20から発生する気泡は空気以外の気体であっても良い。すなわち、空気経路及び空気供給路30は空気を流すための一例を示したものであり、酸素等の空気以外の気体を流しても良い。例えば、空気経路は空気以外の気体も流す連通孔であっても良い。この連通孔は、複数の孔部Kが多孔質板24の一面から他面にかけて連通して形成されたものである。また、空気供給路本体30bは、空気以外の気体も流す通気路30Bであり、空気供給路30の供給路端部30aは、通気路30Bに気体を導入する導入口30Aであっても良い。通気路30Bは、連通孔と導通する長孔状のものであり、図17に示すように、多孔質板52,62の内部、又は多孔質板52,62と多孔質板保持部54,64との境界部に形成される。
図17(a)に示す多孔質板ユニット50は、通気路30Bが多孔質板52の境界面に形成されたものである。
図17(a)に示す多孔質板ユニット50は、多孔質板素地の成形工程と、多孔質板保持部素地の成形工程と、素焼工程と、本焼前多孔質板ユニットの形成工程と、本焼工程により製造される。
多孔質板素地の成形工程は、粘土を主成分とする陶土に可燃の粉末を混練し、板状に成形する工程である。この工程により多孔質板52の素地(以下、多孔質板素地という)が得られる。
多孔質板保持部素地の成形工程は、粘土を主成分とする陶土を板状に成形する工程である。具体的には、浴槽の内底部に嵌まる板状に成形する。また、多孔質板素地が載置される載置面を凹状に成形してもよい。この工程により多孔質板保持部54の素地(以下、多孔質保持部素地という)が得られる。載置面を凹状に形成した場合には、導入口30Aを形成するため、突状部54Bの外周面から内周面に貫通する貫通孔を形成する。
素焼工程は、多孔質板保持部素地を素焼する工程である。素焼温度は700〜800℃が好ましい。この工程により、素焼された多孔質板保持部素地が得られる。
本焼前多孔質板ユニットの形成工程は、可燃の型取材を、素焼された多孔質板保持部素地と多孔質板素地の間に配置して、多孔質板保持部素地と多孔質板素地を層状に重ねる工程である。この型取材は例えば紐体であり、任意のパターンで配線される。この工程により、本焼前多孔質板ユニットが形成される。
本焼工程は、本焼前多孔質板ユニットを本焼する工程である。本焼温度は1200〜1300℃が好ましい。
上記の工程により、多孔質板52の境界面52aに溝状の通気路30Bが形成された多孔質板ユニット50が製造される。
また、図17(b)に示す多孔質板ユニット60は、多孔質板62の内部に、通気路30Bが形成されている。具体的には、多孔質板ユニット60の多孔質板62は、一面が多孔質板保持部54と面接合する一の多孔質板62aと、この一の多孔質板62aの他面と面接合する他の多孔質板62bとから構成されており、通気路30Bは一の多孔質板62aと他の多孔質板62bとの境界部に形成されている。
図17(b)に示す多孔質板ユニット60の製造方法は、複数の多孔質板素地の成形工程、上記の多孔質板保持部素地の成形工程、本焼前多孔質板ユニットの形成工程、及び本焼工程を有する。
複数の多孔質板素地の成形工程は、粘土を主成分とする陶土と粉末を混練し、板状に成形し、複数の多孔質板の素地を得る工程である。本工程では一の多孔質板62aの素地(以下、一の多孔質板素地)および他の多孔質板62bの素地(他の多孔質板素地)を成形する。
本焼前多孔質板ユニットの形成工程は、多孔質板保持部素地に一の多孔質板素地を層状に重ねて、さらに型取材を挟んで一の多孔質板素地に他の多孔質板素地を層状に重ねる。この工程により、本焼前多孔質板ユニットが形成される。この工程は、先に、型取材を挟んで一の多孔質板素地と他の多孔質板素地を層状に重ね、これらを多孔質板保持部素地に層状に重ねる工程であっても良い。
本焼工程は、本焼前多孔質板ユニットを本焼する工程である。本焼温度は1200〜1300℃が好ましい。
上記の工程により、多孔質板62の内部に通気路30Bが形成された多孔質板ユニット60が製造される。
また、実施例2の浴槽105から発生する気泡は空気以外の気体であっても良い。すなわち、空気経路及び空気供給路30は空気を流すための一例を示したものであり、酸素等の空気以外の気体を流しても良い。例えば、空気経路は空気以外の気体も流す連通孔であっても良い。この連通孔は、多孔質板の一面から他面にかけて連通する孔である。また、空気供給路本体30bは、空気以外の気体も流す通気路30Bであり、空気供給路30の供給路端部30aは、通気路30Bに気体を導入する導入口30Aであっても良い。通気路30Bは、多孔質板の面方向に延出して分岐又は曲行し、連通孔と導通する長孔状のものであり、図18に示すように、多孔質板の内部、又は多孔質板と浴槽の底部との境界部に形成される。
図18(a)に示す浴槽70は、通気路30Bが多孔質板72の境界面に72a形成されている。
図18(a)に示す浴槽70は、上記の多孔質板素地の成形工程と、浴槽本体素地の成形工程と、素焼工程と、本焼前浴槽の形成工程と、本焼工程とから製造される。
浴槽本体素地の成形工程は、粘土を主成分とする陶土を槽状に成形する工程である。具体的には、板状の底部74と、この底部74の周縁から立設した側壁76を陶土で成形する。この工程により、浴槽本体71の素地(以下、浴槽本体素地)が得られる。また、多孔質板素地を載置する底部74の内底面74aを凹状に形成しても良い。また、排水口を形成するために、底部74の内外を貫通する貫通孔を設けてもよい。また、側壁76の内外を貫通し、導入口30Aに連通する貫通孔78を設けても良い。
素焼工程は、浴槽本体素地を素焼する工程である。素焼温度は700〜800℃が好ましい。この工程により、素焼された浴槽本体素地が得られる。
本焼前浴槽の形成工程は、可燃の型取材を挟んで素焼された浴槽本体素地の内底面74aに多孔質板素地を層状に重ねる工程である。この工程により、本焼前浴槽が形成される。
本焼工程は、本焼前浴槽を本焼する工程である。本焼温度は1200〜1300℃が好ましい。
上記の工程により、多孔質板72の境界面72aに溝状の通気路30Bが形成された浴槽70が製造される。なお、排水口及び導入口30Aの形成工程は上記の浴槽本体素地の形成工程に限定されない。例えば、素焼工程又は焼成工程において、浴槽本体素地に排水口及び導入口30Aを形成しても良い。また、本焼で得た浴槽70に排水口及び導入口30Aを形成しても良い。
図18(b)に示す浴槽80は、多孔質板82の内部に通気路30Bが形成されている。具体的には、多孔質板82は、一面が浴槽80の内底面74aと面接合する一の多孔質板82aと、この一の多孔質板82aの他面に面接合する他の多孔質板82bとから構成されており、通気路30Bは一の多孔質板82aと他の多孔質板82bとの境界部に形成されている。
図18(b)に示す浴槽80の製造方法は、複数の多孔質板素地の成形工程、上記の浴槽本体素地の形成工程、本焼前浴槽の形成工程、及び本焼工程を有する。
複数の多孔質板素地の成形工程は、粘土を主成分とする陶土と可燃の粉末を混練し、板状に成形して複数の多孔質板の素地を得る工程である。本工程では一の多孔質板82aの素地(以下、一の多孔質板素地という)および他の多孔質板82bの素地(以下、他の多孔質板素地という)を成形する。
本焼前浴槽の形成工程は、浴槽本体素地の内底面74aに一の多孔質板素地を層状に重ねて、さらに型取材を挟んで一の多孔質板素地に他の多孔質板素地を層状に重ねる。この工程により、本焼前多孔質板ユニットが形成される。
本焼工程は、本焼前多孔質板ユニットを本焼する工程である。本焼温度は1200〜1300℃が好ましい。
上記の工程により、多孔質板82の内部に通気路30Bが形成された浴槽80が製造される。
また、本発明の多孔質板ユニット及び浴槽の通気路30Bは、多孔質板24の面方向に延出して分岐又は曲行して形成される。この通気路30Bは、上記実施例で示した渦巻き状及び放射状の他、例えば、図19(a)に示すように、碁盤の目状に形成された通気路90であっても良い。この通気路90は、本焼前多孔質ユニットの形成工程や本焼前浴槽の形成工程において、厚さが5mm〜20mm程度の紙を碁盤の目状に切り抜いて形成された型取材を用い、本焼工程において、この型取材が焼失することにより形成される。なお、導入口30Aは、焼成工程後に多孔質板ユニットの側面から通気路30Bの一部に向かって貫通する孔を設けることにより形成される。また、導入口30Aは、一か所に限られず、複数個所に設けても良い。
また、図19(b)に示すように、多孔質板24の面方向に蛇行して形成された通気路92であっても良い。この通気路92は、本発明の本焼前多孔質ユニット形成工程や本焼前浴槽の形成工程において、紐状の型取材を多孔質板24の面方向に蛇行させて多孔質板保持部22上に配線し、本焼工程において、この型取材が焼失することにより形成される。また、導入口30Aは通気路92の一端に限られず、他端側に形成されても良い。
さらに、本発明の多孔質板ユニットは、浴槽の内底面に載置される使用態様に限定されない。例えば、図20に示すように、本発明の多孔質板ユニットは寝湯装置200に用いることができる。この寝湯装置200は、寝台202と、この寝台202の天板204表面に温水を供給する温水供給装置206とを備えた寝湯装置200であって、寝台202は、多孔質板を天板204とする本発明の多孔質板ユニットであり、多孔質板ユニットの導入口30Aに接続された気体供給管42を介して多孔質板ユニット20に気体を供給する気体供給装置40を備えたものである。
本発明の寝湯装置200は、気体供給装置40から供給された気体が、通気路30B及び連通孔を通じて天板204表面に排出される際に、天板204表面から細かな気泡が発生する。この細かな気泡及び気泡が弾けた飛沫が入浴者の肌に当たることで、入浴者を快適にさせる。