<電子機器の外観>
図1は、実施の形態に係る電子機器1の外観を示す前面図である。本実施の形態に係る電子機器1は、例えば、スマートフォン等の携帯電話機である。
図1に示されるように、電子機器1の形状は平面視で略長方形の板状となっている。電子機器1は、透明のカバーパネル2と、カバーパネル2を支持するケース3とを備えている。図2は、カバーパネル2と、後述するパネル支持部材30、表示パネル120およびタッチパネル130の概念的な構成を示す断面図である。この図2は、後に詳述するパネル支持部材30を説明するための図であり、図面を見やすくするために、他の構成については図示を省略している。図2では、長手方向DR1を含む断面における構成が示されている。図2に示すように、カバーパネル2は表示パネル120の表示面120aを覆う。
カバーパネル2は、電子機器1の表面、具体的には電子機器1の前面に設けられている。カバーパネル2は、電子機器1の前面部分における、周端部(周縁部)以外の部分を構成している。
カバーパネル2は、例えば板状であって、平面視において長尺状の形状を成している。図2も参照して、カバーパネル2は、電子機器1の前面の一部を構成する第1主面20と、第1主面20とは反対側に位置し、表示パネル120の表示面120aと対向する第2主面21とを有している。以下では、第1主面20を「外側主面20」と呼び、第2主面21を「内側主面21」と呼ぶことがある。なおカバーパネル2は平面形状を有する平面パネルであってもよいし、湾曲形状を有する曲面パネルであってもよい。
カバーパネル2は、例えばサファイアから成る。ここで、サファイアとは、アルミナ(Al2O3)を主成分とする単結晶のことをいい、本明細書では、Al2O3純度が約90%以上の単結晶のことをいう。傷がよりつき難くなるという点で、Al2O3純度は99%以上であることが好ましい。カバーパネル2の材料としては他に、例えば、ダイヤモンド、ジルコニア、チタニア、水晶、タンタル酸リチウム、酸化窒化アルミニウムなどが挙げられる。これらも、傷がよりつき難くなるという点で、純度が約90%以上の単結晶が好ましい。なお、「サファイアからなるカバーパネル」としては、サファイア単体から構成される以外にも、ガラスパネルとサファイアパネルと貼り合わせて形成されたカバーパネルも含める。
本実施の形態では、カバーパネル2は、電子機器1の表面に設けられたサファイアから成る層を含む一層構造のパネルであるが、当該層を含む複数層構造の複合パネル(積層パネル)であっても良い。例えば、カバーパネル2は、電子機器1の表面に設けられたサファイアから成る層(サファイアパネル)と、当該層に貼り付けられたガラスから成る層(ガラスパネル)とで構成された2層構造の複合パネルであっても良い。また、カバーパネル2は、電子機器1の表面に設けられたサファイアから成る層(サファイアパネル)と、当該層に貼り付けられたガラスから成る層(ガラスパネル)と、当該層に貼り付けられた
サファイアから成る層(サファイアパネル)とで構成された3層構造の複合パネルであっても良い。また、カバーパネル2は、サファイア以外の結晶性材料、例えば、ダイヤモンド、ジルコニア、チタニア、水晶、タンタル酸リチウム、酸化窒化アルミニウムなどから成る層を含んでいても良い。
カバーパネル2には、表示パネル120の表示が透過する透明の表示部分(表示窓とも呼ばれる)2aが設けられている。表示部分2aは例えば平面視で長方形を成している。表示パネル120から出力される可視光は表示部分2aを通って電子機器1の外部に取り出される。使用者は、電子機器1の外部から、表示部分2aを通じて、表示パネル120に表示される情報が視認可能となっている。
カバーパネル2における、表示部分2aを取り囲む周端部(周縁部)2bの大部分は、例えばフィルム等が貼られることによって黒色となっている。これにより、周端部2bの大部分は、表示パネル120の表示が透過しない非表示部分となっている。
ケース3は、1つの主面が部分的に開口した略直方体を成している。ケース3は、電子機器1の前面部分の周端部、側面部分及び裏面部分を構成している。ケース3は、例えば樹脂及び金属の少なくとも一方で形成されている。ケース3を形成する樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂あるいはナイロン系樹脂が採用される。ケース3を形成する金属としては、例えばアルミニウムが採用される。ここでは、ケース3は、複数の部材が組み合わされて構成される。ただし、ケース3が一つの部材のみで構成されても構わない。
図2に示されるように、カバーパネル2の内側主面21にはタッチパネル130が貼り付けられている。そして、表示部である表示パネル120は、タッチパネル130における、内側主面21側の主面とは反対側の主面に貼り付けられている。つまり、表示パネル120は、タッチパネル130を介してカバーパネル2の内側主面21に取り付けられている。カバーパネル2では、表示パネル120と対向している部分が表示部分2aとなる。使用者は、カバーパネル2の表示部分2aを指等で操作することによって、電子機器1に対して各種指示を与えることができる。
ケース3の内部には、複数の操作ボタン201を有する後述の操作部200が設けられている。操作ボタン201の表面は、例えばカバーパネル2よりも下側において露出している。また、ケース3の内部には、後述する、近接センサ140、前面側撮像部160、裏面側撮像部170及び圧電振動素子190が設けられている。図2に示されるように、圧電振動素子190は、カバーパネル2の内側主面21に対して貼付部材によって貼り付けられている。貼付部材として、例えば、両面テープあるいは接着剤が採用される。
操作ボタン201を構成する材料としては、例えば、ガラスあるいは樹脂が採用される。また操作ボタン201を構成する材料としては、サファイア、ダイヤモンド、ジルコニア、チタニア、水晶、タンタル酸リチウム、酸化窒化アルミニウムなどの結晶性材料が採用される。
カバーパネル2の上側端部には、ケース3内の近接センサ140が電子機器1の外部から視認できるための近接センサ用透明部40が設けられている。また、カバーパネル2の上側端部には、ケース3内の前面側撮像部160が有する撮像レンズが電子機器1の外部から視認できるための前面レンズ用透明部50が設けられている。
電子機器1の裏面には、ケース3内の裏面側撮像部170が有する撮像レンズが電子機器1の外部から視認できるための裏面レンズ用透明部(不図示)が設けられている。また
、電子機器1の裏面にはスピーカ穴(不図示)があけられている。
カバーパネル2はケース3に対して貼付部材によって貼り付けられる。この貼付部材としても、例えば、両面テープまたは接着剤が採用される。これにより、カバーパネル2の内側主面21はケース3によって支持される。ここでは、ケース3は複数の部材が組み合わされて構成されており、カバーパネル2は、例えばその一つの部材であるパネル支持部材30(図2)に支持される。
<電子機器の電気的構成>
図3は電子機器1の電気的構成を主に示すブロック図である。図3に示されるように、電子機器1には、制御部100、無線通信部110、表示パネル120、タッチパネル130、近接センサ140及びマイク150が設けられている。さらに電子機器1には、前面側撮像部160、裏面側撮像部170、外部スピーカ180、圧電振動素子190、操作部200及び電池210が設けられている。電子機器1に設けられた、カバーパネル2以外のこれらの構成要素はケース3内に収められている。
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、DSP(Digital Signal Processor)102及び記憶部103等を備えている。制御部100は、電子機器1の
他の構成要素を制御することによって、電子機器1の動作を統括的に管理する。
記憶部103は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の、制御部100(CPU101及びDSP102)が読み取り可能な非一時的な記録媒体で構成されている。記憶部103には、電子機器1を制御するための、具体的には電子機器1が備える無線通信部110、表示パネル120等の各構成要素を制御するための制御プログラムであるメインプログラム及び複数のアプリケーションプログラム等が記憶されている。制御部100の各種機能は、CPU101及びDSP102が記憶部103内の各種プログラムを実行することによって実現される。
なお記憶部103は、ROM及びRAM以外の、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体を備えていても良い。記憶部103は、例えば、小型のハードディスクドライブ及びSSD(Solid State Drive)等を備えていても良い。
無線通信部110は、アンテナ111を有している。無線通信部110は、電子機器1とは別の携帯電話機からの信号、あるいはインターネットに接続されたウェブサーバ等の通信装置からの信号を基地局を介してアンテナ111で受信する。無線通信部110は、受信信号に対して増幅処理及びダウンコンバートを行って制御部100に出力する。制御部100は、入力される受信信号に対して復調処理等を行って、当該受信信号に含まれる、音声や音楽などを示す音信号(音情報)などを取得する。
また無線通信部110は、制御部100で生成された、音信号等を含む送信信号に対して、アップコンバート及び増幅処理を行って、処理後の送信信号をアンテナ111から無線送信する。アンテナ111からの送信信号は、基地局を通じて、電子機器1とは別の携帯電話機あるいはインターネットに接続された通信装置で受信される。
表示パネル120は、例えば、液晶表示パネルあるいは有機ELパネルである。表示パネル120は、制御部100によって制御されることによって、文字、記号、図形などの各種情報を表示する。表示パネル120に表示される情報は、カバーパネル2の表示部分2aを通じて、電子機器1の使用者に視認可能となる。
タッチパネル130は、例えば、投影型静電量容量方式のシート状のタッチパネルであ
る。タッチパネル130は、カバーパネル2の表示部分2aに対する物体の接触を検出し、その検出結果に応じた検出信号を出力する。タッチパネル130は、カバーパネル2の内側主面21に貼り付けられている。制御部100は、タッチパネル130から出力される検出信号に基づいてカバーパネル2の表示部分2aに対して行われた操作の内容を特定し、それに応じた動作を行う。
近接センサ140は、例えば赤外線方式の近接センサである。近接センサ140は、当該近接センサ140に対して物体が所定距離以内に近接すると検出信号を出力する。この検出信号は制御部100に入力される。制御部100は、近接センサ140から検出信号を受け取ると、例えば、タッチパネル130での操作検出機能を停止する。
前面側撮像部160は、撮像レンズ及び撮像素子などで構成されている。前面側撮像部160は、制御部100による制御に基づいて、静止画像及び動画像を撮像する。前面側撮像部160の撮像レンズは、電子機器1の前面に設けられた前面レンズ用透明部50から視認可能となっている。したがって、前面側撮像部160は、電子機器1の前面側(カバーパネル2側)に存在する物体を撮像することが可能である。
裏面側撮像部170は、撮像レンズ及び撮像素子などで構成されている。裏面側撮像部170は、制御部100による制御に基づいて、静止画像及び動画像を撮像する。裏面側撮像部170の撮像レンズは、電子機器1の裏面に設けられた裏面レンズ用透明部から視認可能となっている。したがって、裏面側撮像部170は、電子機器1の裏面側に存在する物体を撮像することが可能である。
マイク150は、電子機器1の外部から入力される音を電気的な音信号に変換して制御部100に出力する。電子機器1の外部からの音は、電子機器1の表面に設けられたマイク穴(図示せず)から電子機器1の内部に取り込まれてマイク150に入力される。
外部スピーカ180は、例えばダイナミックスピーカである。外部スピーカ180は、制御部100からの電気的な音信号を音に変換して出力する。外部スピーカ180から出力される音は、電子機器1の裏面に設けられたスピーカ穴から外部に出力される。スピーカ穴から出力される音については、電子機器1から離れた場所でも聞こえるような音量となっている。
圧電振動素子190は、上述のように、電子機器1の前面に設けられたカバーパネル2の内側主面21に対して貼付部材によって貼り付けられている。圧電振動素子190は、制御部100から与えられる駆動電圧によって振動させられる。制御部100は、音信号に基づいて駆動電圧を生成し、当該駆動電圧を圧電振動素子190に与える。圧電振動素子190が、制御部100によって音信号に基づいて振動させられることによって、カバーパネル2が音信号に基づいて振動する。その結果、カバーパネル2から使用者に受話音が伝達される。この受話音の音量は、使用者がカバーパネル2に耳を近づけた際に適切に聞こえる程度の音量となっている。圧電振動素子190の具体的な構造の一例および受話音の伝達については後に詳述する。
なお本実施の形態において、通話音声を伝えるために、圧電振動素子190は必須ではなく、これに替えて、通常のダイナミックレシーバが設けられてもよい。
操作部200は、操作ボタン201と、スイッチ(不図示)とを備えており、操作ボタン201に対する操作を検出する。操作部200では、操作ボタン201が押下(操作)されると、スイッチがオン状態となる。操作部200は、スイッチがオン状態となると、操作ボタン201が操作されたことを示すオン信号を制御部100に出力する。一方で、
操作部200は、操作ボタン201が操作されておらず、スイッチがオフ状態の場合には、操作ボタン201が操作されていないことを示すオフ信号を制御部100に出力する。制御部100は、操作部200から入力されるオン信号及びオフ信号に基づいて操作ボタン201に対する操作の有無を判定し、その判定結果に応じた動作を行う。
電池210は、電子機器1の電源を出力する。電池210から出力された電源は、電子機器1が備える制御部100及び無線通信部110など、各電子部品に対して供給される。
<パネル支持部材>
さて、電子機器1はパネル支持部材30を有している。図4,5は、パネル支持部材30の概念的な構成の一例を示す図である。図4は平面図を示し、図5は、図4の断面X−Xにおける構造を示している。なお図4では、パネル支持部材30の下方側の一部が示され、図5では、カバーパネル2、タッチパネル130および表示パネル120も示されている。このパネル支持部材30はカバーパネル2の周縁部分を支持する部材である。図4の例示では、パネル支持部材30は、板部31と、支持部32と、ボタン配置部33と、側面部34とを備えている。
側面部34はパネル支持部材30において短手方向DR2の両側にそれぞれ設けられている。この側面部34は電子機器1の側面部分301(図1参照)であり、ケース3の一部である。なお、必ずしもパネル支持部材30が電子機器1の側面部分301を形成する必要はない。例えばパネル支持部材30が電子機器1の外部に露出することなく、内部に収納されてもよい。この場合、パネル支持部材30は、ケース3に直接に固定されてもよく、他の部材(例えばカバーパネル2)に直接に固定され、当該他の部材を介してケース3に固定されてもよい。
板部31は板状の形状を有しており、カバーパネル2と向かい合って配置される。カバーパネル2と板部31との間には、タッチパネル130および表示パネル120が位置する。つまり板部31はタッチパネル130および表示パネル120を介してカバーパネル2と対向する。板部31は平面視で略長方形状の形状を有している。板部31は、電子機器1の厚みを低減すべく、薄く形成されることが望ましい。例えば板部31の厚みは表示パネル120と同程度か、それよりも薄い。
図5を参照して、支持部32は、板部31の、短手方向DR2における両側の周縁部に立設されており、カバーパネル2側に突出している。支持部32は、平面視においてタッチパネル130および表示パネル120よりも外側に位置しているので、タッチパネル130および表示パネル120を避けてカバーパネル2側に突出することができる。一方、カバーパネル2はタッチパネル130および表示パネル120よりも外側に張り出しており、支持部32はその先端(板部31とは反対側の端部)においてカバーパネル2の周縁部(張り出した部分)と当接する。これにより、支持部32はカバーパネル2の周縁部を支持する。なお、支持部32は例えば両面テープまたは接着剤などにより、カバーパネル2の周縁部に固定される。なお、支持部32によるカバーパネル2の固定の手法はこれに限定されない。たとえば、カバーパネル2の側面に、ビス穴が設けられた別部品が設けられて、支持部32にもビス穴が設けられていた場合、前記ビス穴同士をビスで固定することで、カバーパネル2を固定してもよい。
図2の例示では、支持部32は板部31の短手方向DR2における両側のみならず、長手方向DR1における両側の周縁部にも立設されている。例えば支持部32は全周に渡って板部31の周縁部に設けられる。これにより、支持部32はカバーパネル2の周縁部を全周に渡って支持することができる。
なお、支持部32が圧電振動素子190側(ここでは上側)においてカバーパネル2を支持する場合(図2)には、カバーパネル2のうち圧電振動素子190の周囲の部分は、支持部32に固定されないことが望ましい。これにより、圧電振動素子190による振動をカバーパネル2へと効果的に伝達することができる。つまり、カバーパネル2が支持部32によって変位を妨げられないので、圧電振動素子190の振動に応じた振動を行いやすいのである。
また、板部31の短手方向DR2の両側に設けられた支持部32は、それぞれ側面部34とも連結する。側面部34は、支持部32よりも外側に位置している。また側面部34は支持部32の先端よりもカバーパネル2の外側主面20側に突出しており、支持部32とともに段差形状を形成する。側面部34は短手方向DR2においてカバーパネル2の側面と対向し、カバーパネル2の短手方向DR2における位置決め部として機能することができる。
ボタン配置部33は板部31と連結しており、板部31に対して長手方向DR1における下側に位置している。例えば図2を参照して、ボタン配置部33は下側の支持部32と連結しており、この下側の支持部32を介して板部31に連結されることとなる。このボタン配置部33は、図2に例示するように、下側の支持部32の先端よりも外側主面20側に突出して、下側の支持部32とともに段差を形成してもよい。これにより、ボタン配置部33は、カバーパネル2の長手方向DR1における位置決め部として機能することができる。
なお図2の例示では、上側の支持部32よりも上側において、位置決め部321が設けられている。位置決め部321は上側の支持部32の先端よりも外側主面20へと突出して、上側の支持部32と段差を形成している。位置決め部321は、カバーパネル2の長手方向DR1の位置を規定することができる。
ボタン配置部33は例えばカバーパネル2に略平行な略板状の形状を有している。ボタン配置部33には、短手方向DR2に沿って複数(ここでは3個)の貫通穴331が形成されている。これらの貫通穴331は法線方向DR3においてボタン配置部33を貫通する。この貫通穴331には操作ボタン201が貫通して配置される。貫通穴331は操作ボタン201の位置決め部として機能することができる。
板部31のうち、主として表示パネル120と対面する部分は、金属部分(例えばステンレス鋼またはアルミニウムなど)によって形成されてもよい。この金属板は例えば長手方向DR1に長い長尺状の形状を有し、表示パネル120とほぼ全領域で対向できる程度の大きさを有している。かかる金属板は例えばタッチパネル130または表示パネル120からの電磁波(電界および磁界)を遮断するシールドとして機能できる。
支持部32、ボタン配置部33、および側面部34(あるいは、さらに板部31のうち金属板ではない部分)は、例えば樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂あるいはナイロン系樹脂など)で形成されてもよい。これらは例えば一体で成形される。これにより、複雑な形状を有する部分を容易に製造することができる。
また、このようなパネル支持部材30は、金属板と樹脂とのいわゆる二色成形によって一体的に成形されてもよい。
<補強部>
上述のように、パネル支持部材30において、短手方向DR2に沿って複数の貫通穴3
31が形成されている。よってボタン配置部33は撓みやすい。すなわち、ボタン配置部33の短手方向DR2における一端側を支持し、他端側に法線方向DR3の力を加えると、ボタン配置部33は、貫通穴331が形成されていない構造に比して撓みやすい。以下では、短手方向DR2における一端を支持して他端に法線方向DR3の力を加えたときの撓みを、短手方向DR2における撓みと呼ぶ。長手方向DR1における撓みについても同様である。
さて、板部31はボタン配置部33と長手方向DR1において連結しているので、もしボタン配置部33が撓まなければ、板部31は、ボタン配置部33に近い位置において撓みが抑制される。しかるに本実施の形態では、ボタン配置部33が比較的撓みやすいので、板部31の撓みを抑制する効果が低減する。
また、支持部32はカバーパネル2に固定されているので、電子機器1が短手方向DR2において撓むように力を加えると、カバーパネル2とパネル支持部材30とが略一体で撓む。そしてカバーパネル2が撓みに耐えきれなくなると、カバーパネル2に割れが生じる。
このようにパネル支持部材30とカバーパネル2とが一体で撓むことから、パネル支持部材30の撓み量を低減することが、カバーパネル2の撓み量を低減するために有効である。そこで、板部31において、短手方向DR2に延在する補強部35を形成する。この補強部35はボタン配置部33の近くに設けられる。より具体的には、板部31の中心よりも、ボタン配置部33に近い位置に設けられる。
この補強部35は板部31の強度を向上する。例えば補強部35は板部31から突出する突形状を有している。このような補強部35は短手方向DR2に長いリブ構造を有することとなり、板部31の短手方向DR2における撓み量を低減することができる。よってパネル支持部材30と一体で撓むカバーパネル2の撓み量も低減することができる。したがってカバーパネル2の割れの発生を抑制できる。
板部31が金属板で形成されているときには、補強部35としては、この金属板に対する絞り加工によって形成される凹凸形状を採用することができる。例えば、補強部35を形成するためのパンチを金属板に押し込んで(プレスして)、金属板を凹ませる。なお反対側から見れば、このプレスによって金属板は突出することとなる。この凹凸が補強部35として機能する。このような金属板に対する絞り加工は簡単に行うことができるので、製造が容易である。
また補強部35は、例えば板部31の短手方向DR2における幅の半値よりも広い幅を有していてもよい。これにより、板部31の短手方向DR2における撓みを効果的に低減することができる。
なお板部31には、適宜に貫通穴が設けられてもよい。この貫通穴は板部31を法線方向DR3において貫通する。この貫通穴には、例えばパネル支持部材30とケース3とを固定するビスなどの締結部材、または、パネル支持部材30を隔てて配置される電気装置(例えば表示パネル120および制御部100)同士を接続するためのハーネスまたはプリント配線板などが貫通する。なお、これら貫通穴の各々の断面積は例えば貫通穴331の断面積よりも小さくてもよい。この場合、比較的断面積が大きい貫通穴331の複数が配置される方向(ここでは短手方向DR2)において、パネル支持部材30がより撓みやすくなるので、補強部35がこの方向において板部31の強度を向上している、とも説明できる。
図4の例示では、補強部35は、電子機器1の長手方向DR1ではなく短手方向DR2に沿って延在しており、これにより短手方向DR2における撓みを低減している。ここで、簡単な構造として1本の梁で撓み量を考慮すると、梁が長いほど、撓み量の最大値は大きくなる。よって長尺状の構造において、長手方向における撓み量の最大値は短手方向における撓み量の最大値よりも大きくなる。したがって、貫通穴331という観点なしに補強部35を設けようとすれば、補強部35は長手方向DR1に沿って延在するように設けられることとなる。しかるに、本実施の形態では、ボタン配置部33において、短手方向DR2に沿って複数の貫通穴331が設けられているので、長手方向DR1ではなく短手方向DR2に沿って延在する補強部35を設けているのである。
なお図1,2の例示では、複数の操作ボタン201はカバーパネル2よりも下側に配置されている。言い換えれば、平面視において、操作ボタン201はカバーパネル2とは異なる位置に設けられており、カバーパネル2と対向しない。これによれば、カバーパネル2に操作ボタン201を貫通させるための穴を設ける必要がない。これは、上述のようにサファイア、ダイヤモンド、ジルコニア、チタニア、水晶、タンタル酸リチウム、酸化窒化アルミニウムなどの硬度が高い材質を用いてカバーパネル2を採用する場合に、特に有益である。なぜなら、硬度が高いカバーパネル2に対して貫通穴を設けることは、容易ではないからである。例えばカバーパネル2を削って貫通穴を空ける場合には、カバーパネル2を削るための工具が摩耗しやすい。よって工具の交換を頻繁に行う必要があり、これは製造コストの増大を招く。
ただし、ボタン配置部33は必ずしもカバーパネル2と異なる位置に設けられる必要はない。例えばカバーパネル2がより下方まで延在し、複数の操作ボタン201を貫通させるための貫通穴が形成されていてもよい。これによれば、硬度の高いカバーパネル2がボタン配置部33を保護できる。
また、操作ボタン201は複数設けられている必要はなく、一つの操作ボタン201が設けられていればよい。この場合、操作ボタン201用の貫通穴202も一つ設けられる。このとき、補強部35の延在方向は貫通穴202の存在に依存しない。ただし、図4に例示するように、貫通穴202がパネル支持部30の長手方向DR1の端部付近に設けられる場合には、パネル支持部30は短手方向DR2において撓みやすくなる。よってこの場合、補強部35は短手方向DR2に沿って延在していてもよい。これにより、パネル支持部30の短手方向DR2における撓みを抑制できる。
図6は電子機器1の外観を示す前面図である。図6の例示では、操作ボタン201が一つ設けられ、カバーパネル2に操作ボタン20用の貫通穴202が一つ形成されている。この場合、図7,8に示すように、パネル支持部材30に貫通穴を設けなくてもよい。よってこの場合、パネル支持部材30はボタン配置部33を有していなくてもよい。この場合であっても、カバーパネル2は、特に貫通穴202が設けられた領域において、撓みやすい。そこで、図7,8に例示するように、板部31において、補強部35を設けている。また図6の例示では、操作ボタン201が平面視においてカバーパネル2の中心よりも一方側(例えば下方側)に設けられているので、貫通穴201も 当該中心よりも一方
側に位置する。この場合、補強部35も平面視において当該中心よりも一方側に設けられるとよい。これにより、板部31の撓みを抑制でき、ひいては、板部31と一体で撓むカバーパネル2の撓みも抑制できる。補強部35は、貫通穴202の近傍に設けられることが好適である。なお、当該中心は、パネル支持部材30の中心と把握することができる。
また図6の例示では、貫通穴202はカバーパネル2の長手方向DR1の端部付近に設けられている。よって、カバーパネル2は当該端部付近において短手方向DR2に撓みやすい。そこで、図8に例示するように、補強部35は短手方向DR2に沿って延在してい
てもよい。これによれば、板部31と一体で撓むカバーパネル2の短手方向DR2における撓みも抑制できる。
なお、図6の態様であっても、複数の操作ボタン201と、これに対応する複数の貫通穴202とが所定方向(例えば短手方向DR2)に沿って並んで設けられてもよい。この場合、補強部35は当該所定方向(例えば短手方向DR2)に沿って延在すればよい。
補強部35は板部31の中心よりも貫通穴202に近い位置に形成されてもよい。さらには例えば貫通穴202と向かい合う位置に形成されてもよい。これにより、補強部35は、より短手方向DR2に撓みやすい領域に対応して設けられることとなり、効果的にカバーパネル2の短手方向DR2の撓みを抑制することができる。
また上述の例では、支持部32がカバーパネル2に直接に接触しているものの、必ずしもこれに限らない。カバーパネル2の周縁部分に他の部材が設けられる場合には、支持部32は当該他の部材を介してカバーパネル2を支持してもよい。
また図7の例示では、補強部35は絞り加工によって凹凸形状を有しており、カバーパネル2とは反対側に向けて突出している。よって、カバーパネル2側から見ると、板部31は補強部35において凹んでおり、カバーパネル2とは反対側から見ると、板部31は補強部35において突出している。したがって、板部31のうち補強部35が設けられた部分と補強部35が設けられない部分とは、段差を形成することとなる。
そこで図9に例示するように、樹脂部36,37が設けられてもよい。樹脂部36は板部31に対してカバーパネル2とは反対側に設けられており、板部31の段差を埋める。つまり、樹脂部36は補強部35が設けられていない位置において板部31に設けられており、カバーパネル2に平行な方向において、補強部35と隣り合っている。樹脂部37は板部31に対してカバーパネル2側に設けられており、板部31の段差を埋める。つまり樹脂部37は補強部35が設けられている位置において板部31に設けられ、カバーパネル2に平行な方向において、補強部35と隣り合っている。
これらの樹脂部36,37としては、例えばポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ナイロン系樹脂あるいはポリエチレンテレフタレートなどが採用される。またこれらの樹脂部36,37は例えば板部31に密接して設けられている。例えば樹脂部36,37およびパネル支持部材30は一体で成形される。
これら樹脂部36,37によって、板部31の強度を向上することができる。これにより、板部31の撓み量を低減することができ、ひいてはカバーパネル2の割れを抑制することができる。
なお図9の例示では、樹脂部36,37の両方が設けられているものの、いずれか一方のみが設けられてもよい。
図10の例示では、部品220,230が示されている。部品220は例えば電池210である。部品230は例えば外部の端子が接続される接続部などであって、例えばヘッドホン用のコネクタなどである。部品220,230は、板部31に対して補強部35の突出側(ここではカバーパネル2とは反対側)に設けられており、例えば互いに隣り合って設けられる。より具体的には、方向DR1において部品220,230は互いに間隔を空けて隣り合って設けられている。また部品220,230の間には、補強部35が介在している。言い換えれば、補強部35は部品220,230の間の領域まで突出している。
これによれば、電子機器1内の空間を有効に活用することができる。例えば図10の例示とは異なって、部品220,230が方向DR1において連続しており、これが補強部35と干渉しないように配置されると、部品220,230が板部31に対して、補強部35の突出側に退いて配置されることになる。この場合、部品220,230と板部31との間には不要な空間が生じる。一方で、図10の例示では、部品220,230が互いに離間しており、この間に補強部35が介在する。この構造では、部品220,230は補強部35とは干渉しないので、板部31に近づけて配置することができる。よって不要な空間を減らすことができ、電子機器1の小型化に資する。
しかも、部品220と板部31との間の空間が狭ければ、板部31が撓んだときに小さい撓み量で板部31が部品220に当接する。これによって、板部31が部品220によって支持されることとなり、板部31のこれ以上の撓みを低減することができる。これはカバーパネル2の割れの抑制にも資する。部品230についても同様である。
なお図10の例示では、部品220,230は方向DR1において対向して配置されているものの、これらが方向DR2にずれて配置されていても構わない。この場合であっても、部品220は補強部35に対して方向DR1の一方側(上側)に位置し、部品230は補強部35に対して方向DR2の他方側(下側)に位置する。よって、方向DR2に沿って見れば、部品220,230の間に補強部35が介在することとなる。
以下では、圧電振動素子190とカバーパネル2と補強部35との関連について述べる。まず圧電振動素子190について詳述する。
<圧電振動素子の詳細>
図11,12は、それぞれ、圧電振動素子190の構造を示す上面図及び側面図である。図7,8に示されるように、圧電振動素子190は一方向に長い形状を成している。具体的には、圧電振動素子190は、平面視で長方形の細長い板状を成している。圧電振動素子190は、例えばバイモルフ構造を有している。圧電振動素子190は、シム材190cを介して互いに貼り合わされた第1圧電セラミック板190a及び第2圧電セラミック板190bを備えている。
圧電振動素子190では、第1圧電セラミック板190aに対して正の電圧を印加し、第2圧電セラミック板190bに対して負の電圧を印加すると、第1圧電セラミック板190aは長手方向DR4に沿って伸び、第2圧電セラミック板190bは長手方向DR4に沿って縮むようになる。なお、長手方向DR4とは圧電振動素子190についての長手方向である。ここでは、長手方向DR4を短手方向DR2に沿わせた姿勢で圧電振動素子190を配置するので、長手方向DR4は短手方向DR2と一致する。
このような第1圧電セラミック板190aおよび第2圧電セラミック板190bの動作によって、圧電振動素子190は、図13に示されるように、第1圧電セラミック板190aを外側にして山状に撓むようになる。
一方で、圧電振動素子190では、第1圧電セラミック板190aに対して負の電圧を印加し、第2圧電セラミック板190bに対して正の電圧を印加すると、第1圧電セラミック板190aは長手方向DR4に沿って縮み、第2圧電セラミック板190bは長手方向DR4に沿って伸びるようになる。これにより、図14に示されるように、圧電振動素子190は、第2圧電セラミック板190bを外側にして山状に撓むようになる。
圧電振動素子190は、図13の状態と図14の状態とを交互にとることによって、長
手方向DR4に沿って撓み振動を行う。制御部100は、第1圧電セラミック板190aと第2圧電セラミック板190bとの間に、正の電圧と負の電圧とが交互に現れる交流電圧を印加することによって、圧電振動素子190を長手方向に沿って撓み振動させる。
なお、図11〜14に示される圧電振動素子190では、シム材190cを間に挟んで貼り合わされた第1圧電セラミック板190a及び第2圧電セラミック板190bから成る構造が1つだけ設けられていたが、複数の当該構造を積層させても良い。
このような構造を有する圧電振動素子190は、図1,2に示されるように、カバーパネル2の内側主面21の周端部に配置される。具体的には、圧電振動素子190は、カバーパネル2の内側主面21の上側端部における、短手方向DR2の中央部に配置される。また、圧電振動素子190は、その長手方向DR4が、カバーパネル2の短手方向DR2に沿うように配置される。これにより、圧電振動素子190は、カバーパネル2の短手方向DR2に沿って撓み振動を行う。そして、圧電振動素子190の長手方向DR4の中心は、カバーパネル2の内側主面21の上側端部における短手方向DR2の中心と一致している。
ここで、上述の図13,14に示されるように、撓み振動を行う圧電振動素子190では、その長手方向DR4の中心が最も変位量が大きくなる。したがって、圧電振動素子190の長手方向DR4の中心が、カバーパネル2の内側主面21の上側端部における短手方向DR2の中心と一致することによって、圧電振動素子190における、撓み振動での変位量が最大となる箇所が、カバーパネル2の内側主面21の上側端部における短手方向DR2の中心に一致するようになる。
なお、図11〜14に示される圧電振動素子190では、シム材190cを間に挟んで貼り合わされた第1圧電セラミック板190a及び第2圧電セラミック板190bから成る構造が1つだけ設けられていたが、複数の当該構造を積層させても良い。積層構造としては、十分な振動をカバーパネル2に伝達できることから、28層以上が好ましく、44層以上がさらに好ましい。
また圧電振動素子190としては、圧電セラミックス材料の他に、ポリフッ化ビニリデン、ポリ乳酸などの有機圧電材料などから構成されてもよい。具体的には、例えば、ポリ乳酸フィルムを第1圧電板および第2圧電板として用い、それらが積層することで構成されている。なお、電極も例えばITO(Indium−Tin−Oxide、すなわちインジウム錫酸化物)など透明電極が用いられることも可能である。
<受話音の発生について>
本実施の形態に係る電子機器1では、カバーパネル2のうち、長手方向DR1(課題を解決するための手段の欄における垂直方向の一例)の一方側(上側)において、圧電振動素子190が設けられる。この圧電振動素子190がカバーパネル2を振動させることによって、当該カバーパネル2から気導音及び伝導音が使用者に伝達される。言い換えれば、圧電振動素子190自身の振動がカバーパネル2に伝わることにより、当該カバーパネル2から気導音及び伝導音が使用者に伝達される。
ここで、気導音とは、外耳道孔(いわゆる「耳の穴」)に入った音波(空気振動)が鼓膜を振動させることによって、人の脳で認識される音である。一方で、伝導音とは、耳介が振動させられ、その耳介の振動が鼓膜に伝わって当該鼓膜が振動することによって、人の脳で認識される音である。以下に、気導音及び伝導音について詳細に説明する。
図15は気導音及び伝導音を説明するための図である。図15には、電子機器1の使用
者の耳の構造が示されている。図15においては、波線400は気道音が脳で認識される際の音信号(音情報)の伝導経路を示している。実線410は伝導音が脳で認識される際の音信号の伝導経路を示している。
カバーパネル2に取り付けられた圧電振動素子190が、受話音を示す電気的な音信号に基づいて振動させられると、カバーパネル2が振動して、当該カバーパネル2から音波が出力される。使用者が、電子機器1を手に持って、当該電子機器1のカバーパネル2を当該使用者の耳介300に近づけると、あるいは当該電子機器1のカバーパネル2を当該使用者の耳介300に当てると(接触させると)、当該カバーパネル2から出力される音波が外耳道孔310に入る。カバーパネル2からの音波は、外耳道孔310内を進み、鼓膜320を振動させる。鼓膜320の振動は耳小骨330に伝わり、耳小骨330が振動する。そして、耳小骨330の振動は蝸牛340に伝わって、蝸牛340において電気信号に変換される。この電気信号は、聴神経350を通って脳に伝達され、脳において受話音が認識される。このようにして、カバーパネル2から使用者に対して気導音が伝達される。
また、使用者が、電子機器1を手に持って、当該電子機器1のカバーパネル2を当該使用者の耳介300に当てると、耳介300が、圧電振動素子190によって振動させられているカバーパネル2によって振動させられる。耳介300の振動は鼓膜320に伝わり、鼓膜320が振動する。鼓膜320の振動は耳小骨330に伝わり、耳小骨330が振動する。そして、耳小骨330の振動は蝸牛340に伝わり、蝸牛340において電気信号に変換される。この電気信号は、聴神経350を通って脳に伝達され、脳において受話音が認識される。このようにして、カバーパネル2から使用者に対して伝導音が伝達される。図15では、耳介300内部の耳介軟骨300aも示されている。
骨導音は、頭蓋骨を振動させて、頭蓋骨の振動が直接蝸牛などの内耳を刺激することによって、人の脳で認識される音である。図15においては、例えば下顎骨500を振動させた場合において、骨伝導音が脳で認識される際の音信号の伝達経路を複数の円弧420で示している。
このように、本実施の形態では、圧電振動素子190が前面のカバーパネル2を適切に振動させることによって、カバーパネル2から電子機器1の使用者に対して気導音及び伝導音を伝えることができる。使用者は、カバーパネル2に耳(耳介)を近づけることによって当該カバーパネル2からの気導音を聞くことができる。また使用者は、カバーパネル2に耳(耳介)を接触させることによって当該カバーパネル2からの気導音及び伝導音を聞くことができる。本実施の形態に係る圧電振動素子190では、使用者に対して適切に気導音及び伝導音を伝達できるように、その構造が工夫されている。使用者に対して気導音及び伝導音を伝えることができるように電子機器1を構成することによって様々メリットが発生する。
例えば、使用者は、カバーパネル2を耳に当てれば音が聞こえることから、電子機器1において耳を当てる位置をそれほど気にすることなく通話を行うことができる。
また、使用者は、周囲の騒音が大きい場合には、耳をカバーパネル2に強く押し当てることによって、伝導音の音量を大きくしつつ、周囲の騒音を聞こえにくくすることができる。よって、使用者は、周囲の騒音が大きい場合であっても、適切に通話を行うことができる。
また、使用者は、耳栓やイヤホンを耳に取り付けた状態であっても、カバーパネル2を耳(より詳細には耳介)に当てることによって、電子機器1からの受話音を認識すること
ができる。また、使用者は、耳にヘッドホンを取り付けた状態であっても、当該ヘッドホンにカバーパネル2を当てることによって、電子機器1からの受話音を認識することができる。
なお、カバーパネル2のうち、圧電振動素子190が取り付けられている部分が比較的振動し易くなる。したがって、使用者は、カバーパネル2のうち圧電振動素子190が取り付けられている上側端部(特に上側端部の短手方向DR2の中央部)に対して、耳を近づけたり、耳を押し当てたりすると、カバーパネル2からの音が聞こえ易くなる。
<カバーパネル>
次に、長手方向DR4(短手方向DR2)に沿って撓み振動を行う圧電振動素子190に適したカバーパネル2について説明する。本実施の形態では、カバーパネル2の第1主面(内側主面)20及び第2主面(外側主面)21は、サファイアのa面に平行である。また、カバーパネル2の長手方向DR1はサファイアのc軸に平行である。そして、カバーパネル2の長手方向DR1はサファイアのm軸に平行である。m軸はa面に平行であって、かつc軸と垂直を成している。
ここで、サファイアの結晶構造は異方性を有している。a面に平行な主面を有するサファイアでは、その結晶構造の異方性により、c軸に平行な方向よりもm軸に平行な方向に撓み易い。
本実施の形態では、カバーパネル2の第1主面20及び第2主面21はサファイアのa面に平行であり、かつカバーパネル2の長手方向DR1はサファイアのc軸に平行であることから、カバーパネル2は、サファイアの結晶構造の異方性の観点からは、長手方向DR1よりも短手方向DR2に撓み易くなっている(曲がり易くなっている)。図16は、カバーパネル2が長手方向DR1に撓む様子を示す図である。図17は、カバーパネル2が短手方向DR2に撓む様子を示す図である。以下に、サファイアの撓み易さを確認する試験を行った結果について説明する。
図18はサファイアから成る試料パネル600の撓み易さを確認する試験(以後、「撓み確認試験」と呼ぶ)を行った結果を示すグラフである。図19は撓み確認試験の方法を説明するための図である。図20は試料パネル600を示す平面図である。
図19,20に示されるように、試料パネル600は、第1主面601と、それとは反対側の第2主面602とを有し、正方形を成している。試料パネル600の一辺の長さAは62mmであって、試料パネル600の厚みTは0.475mmである。
第1主面601及び第2主面602はサファイアのa面に平行である。試料パネル600が有する、互いに平行な一対の辺610,611は、サファイアのc軸に平行である。そして、試料パネル600が有する、互いに平行な一対の辺612,613は、c軸に垂直なm軸に平行である。
撓み確認試験では、図19に示されるように、試料パネル600が鉄製の台座700の上に設置される。このとき、試料パネル600は台座700に置かれるだけであって固定されない。そして、台座700上の試料パネル600の中心部620に対して押し込み力Fが与えられたときの当該中心部620の変位量が測定される。押し込み力Fは、試料パネル600の中心部620に棒状部材が押し付けされることによって当該中央部620に与えられる。撓み確認試験では、押し込み力Fが一定速度で変化し、各押し込み力Fでの試料パネル600の中心部620変位量が測定される。押し込み力Fの変化速度は5N/秒である。以後、当該中心部620の変位量を単に「変位量」と呼ぶ。
撓み確認試験では、試料パネル600がm軸に平行な方向に撓む場合の変位量(以後、第1変位量」と呼ぶ)と、試料パネル600がc軸に平行な方向に撓む場合の変位量(以後、「第2変位量」と呼ぶ)とが測定される。第1変位量が測定される場合には、試料パネル600における、辺610を含む幅Bの端部630と、試料パネル600における、辺611を含む幅Bの端部631とが台座700で支持された状態で、試料パネル600の中央部620に押し込み力Fが加えられる。幅Bは12.5mmに設定される。また、第2変位量が測定される場合には、試料パネル600における、辺612を含む幅Bの端部632と、試料パネル600における、辺613を含む幅Bの端部633とが台座700で支持された状態で、試料パネル600の中央部620に押し込み力Fが加えられる。
図18には、押し込み力Fが10N〜50Nまで変化する場合の第1及び第2変位量が示されている。図18の横軸は押し込み力Fを示しており、図18の縦軸は押し込み力Fが10Nのときの値を基準とした第1及び第2変位量を示している。図18に示されるグラフG11,G12,G13は、第1変位量の1回目、2回目及び3回目の測定結果の近似直線をそれぞれ示している。またグラフG21,G22,G23は、第2変位量の1回目、2回目及び3回目の測定結果の近似直線をそれぞれ示している。
図18に示されるように、第1変位量を示すグラフG11,G12,G13の傾きは、第2変位量を示すグラフG21,G22,G23の傾きよりも大きくなっている。このことは、正方形の試料パネル600が、c軸に平行な方向よりもm軸に平行な方向に撓み易いことを意味している。これにより、a面に平行な主面を有するサファイアでは、その結晶構造の異方性により、c軸に平行な方向よりもm軸に平行な方向に撓み易いと言える。
このように、本実施の形態に係るカバーパネル2は、サファイアの結晶構造の異方性の観点からは、長手方向DR1よりも短手方向DR2に撓み易くなっている。言い換えれば、カバーパネル2は、その結晶構造的には、長手方向DR1よりも短手方向DR2に撓み易くなっている。そして、圧電振動素子190は、上述のように、カバーパネル2の短手方向DR2に沿って撓み振動を行う。したがって、カバーパネル2は圧電振動素子190の撓み振動によって振動し易くなる。その結果、使用者に対して気導音及び伝導音(受話音)が伝達され易くなる。
なお、カバーパネル2が、サファイアの結晶構造の異方性の観点からは、長手方向DR1よりも短手方向DR2に撓み易くなっているからといって、客観的に長手方向DR1よりも短手方向DR2に撓み易くなっているとは限らない。同様に、カバーパネル2が、その形状の観点から、短手方向DR2よりも長手方向DR1に撓み易くなっているからといって、客観的に短手方向DR2よりも長手方向DR1に撓み易くなっているとは限らない。
また、上記の例では、圧電振動素子190は1つだけ設けられているが、カバーパネル2の内側主面21上に複数の圧電振動素子190を設けても良い。例えば複数の圧電振動素子190がカバーパネル2の短手方向DR2に沿って並べられている。また、各圧電振動素子190は、その長手方向DR4がカバーパネル2の短手方向DR2に沿うように並べられている。
<補強部>
上述の例では、圧電振動素子190はカバーパネル2の長手方向DR1における一方側(上側)の部分に設けられる。ここでいう一方側の部分とは、カバーパネル2の中心に対して一方側の部分である。他方、補強部35は、カバーパネル2の他方側(下側)の部分に対向する位置に設けられている。また補強部35は、カバーパネル2が結晶構造の異方
性の観点において撓みやすい短手方向DR2に沿って延在している。
要するに、結晶構造的に短手方向DR2において撓みやすいカバーパネル2を採用することで、圧電振動素子190側の部分が撓み振動をしやすくなるとともに、カバーパネル2の下側(圧電振動素子190とは反対側)の部分に対応して、補強部35を設けることで、カバーパネル2の割れを抑制しているのである。
この観点では、板部31の中心よりも圧電振動素子190側にも補強部35を設ける場合には、その補強部35の短手方向DR2の長さを、ボタン配置部33側に設けられる補強部35の短手方向DR2の長さよりも短くしてもよい。これにより、より短手方向DR2における撓みを抑制すべき部分(ボタン配置部33側の部分)において、短手方向DR2における撓みを抑制できる。
また、上記の例では、本願発明を携帯電話機に適用する場合を例にあげて説明したが、本願発明は、カバー部材を振動部により撓み振動させる機能を有するものであれば適用することができる。スマートフォン等の携帯電話機以外にも、例えば、タブレット端末、腕時計、メガネ、ヘッドホン、かつら、ベルト、ポータブルレコーダ、ポータブルプレイヤーなどにも本願発明を適用することができる。
以上のように、電子機器1は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。また、上述した各種実施の形態および変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。