JP5978801B2 - 手動変速機搭載車の発進制御装置 - Google Patents
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このとき、クラッチペダルの釈放操作(クラッチの締結進行)に対してアクセルペダルを踏み込むアクセル操作が適切なタイミングでないと滑らかな発進は望み得ず、アクセル操作が遅れると、エンジンが停止(エンスト)し、アクセル操作が早過ぎるとエンジンが空吹ける。
この提案技術は、運転者がクラッチペダルの釈放操作によりクラッチを締結進行させる間、エンジンを電子制御スロットルの開度制御により、実エンジン回転数が発進時目標エンジン回転数になるよう回転数フィードバック制御するというものである。
そして特許文献1には更に、当該エンジンの回転数フィードバック制御により、低下していた実エンジン回転数が発進時目標エンジン回転数に向け上昇し始めたとき(谷底を通過したとき)以降、実エンジン回転数と発進時目標エンジン回転数との偏差が所定値よりも小さくなるとき、上記エンジンの回転数フィードバック制御を終了する技術も提案されている。
かかるクラッチの急締結は、実エンジン回転数を急低下させると共に実エンジン回転数の低下量も大きくし、エンジン回転数の谷底が深くなる。
しかし、上記の通りエンジン回転数の谷底が深いことによって、実エンジン回転数および発進時目標エンジン回転数間の偏差が大きくなり、この偏差に基づくエンジンの回転数フィードバック制御量も大きくなる。
その結果エンジンの回転数フィードバック制御中、実エンジン回転数が発進時目標エンジン回転数に滑らかに収束し得ず、発進時目標エンジン回転数を一旦オーバーシュートし、エンジン回転が吹け上がるという問題を生ずる。
運転者がクラッチペダルを急速に釈放してクラッチを急締結させた場合は、エンジン回転数の谷底が深くて回転数フィードバック制御によるエンジン回転数の上昇速度が高くなるため、従来のように実エンジン回転数および発進時目標エンジン回転数間の偏差が小さくなってからエンジン回転数上昇速度の上記低下が行われるというのでは、エンジン回転数の上昇速度の当該低下が遅れ気味となって、エンジン回転が吹け上がるという上記の問題を避けられない。
エンジン、クラッチ、手動変速機および駆動車輪を伝動経路の配列順とし、運転者が前記クラッチを解放、締結操作して前記エンジンおよび手動変速機間を遮断、結合可能な手動変速機搭載車に用いる発進制御装置である。
前者のエンジン制御手段は、前記クラッチの解放から締結への切り替え操作時に前記エンジンをエンジン回転数が発進時目標エンジン回転数となるようフィードバック制御するものである。
また後者の回転数フィードバック制御制限手段は、上記エンジン制御手段によるエンジンの回転数フィードバック制御中、エンジン回転数の変化が低下から上昇に転じたとき以後、前記回転数フィードバック制御の制御量に上限値を設定し、該制御量が該上限値を超えないようにして前記回転数フィードバック制御の効きを低下させるものである。
クラッチの解放から締結への切り替え操作時にエンジン回転数が発進時目標エンジン回転数となるよう行うエンジンの回転数フィードバック制御中、エンジン回転数の変化が低下から上昇に転じたとき以後、当該回転数フィードバック制御の効きを低下させるため、
クラッチの急締結に呼応してエンジン回転数の谷底が深くて回転数フィードバック制御によるエンジン回転数の上昇速度が高くなる場合であっても、当該エンジン回転数の上昇速度を、エンジン回転数が発進時目標エンジン回転数をオーバーシュートすることのないよう遅滞なく低下させ得ることとなって、エンジン回転が吹け上がるという前記の問題を回避することができる。
<第1実施例の構成>
図1は、本発明の第1実施例になる発進制御装置を具えた手動変速機搭載車のパワートレーンを、その制御系とともに示す。
図1の車両は、エンジン1、クラッチ2、手動変速機3および駆動車輪4を伝動経路の配列順とし、運転者がクラッチペダル5の踏み込みによりクラッチ2を解放してエンジン1および手動変速機3間を適宜遮断可能なものである。
手動変速機3はシフトレバー3aを具え、このシフトレバー3aを運転者がシフト操作して、手動変速機3を動力伝達不能なニュートラル状態と、任意の変速段に投入された状態との間で状態切り替えし得るものとする。
このためエンジンコントローラ11(発進操作アシスト制御部11a)に、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転センサ12からの信号と、アクセルペダル7の踏み込み量(アクセル開度)APOを検出するアクセル開度センサ13からの信号と、車速VSPを検出する車速センサ14からの信号と、シフトレバー3aによる手動変速機3の操作位置(手動変速機3のニュートラル状態や、変速段選択状態)に係わる信号とを入力する。
上記はエンジンコントローラ11(発進操作アシスト制御部11a)による通常の制御であるが、本実施例においては当該エンジンコントローラ11(発進操作アシスト制御部11a)が、図2の発進操作アシスト制御プログラムを実行して以下のように車両の発進制御を行うものとする。
エンジン回転数Neの時間変化率ΔNeを算出するに当たっては、図3の参考例に示すように例えば10msecの時間間隔(一定周期)でエンジン回転数Neをサンプリングし、これに基づくエンジン回転数Neの加重平均値からエンジン回転変化率ΔNeを求めることが考えられる。
この場合、エンジン回転変化率ΔNeの算出タイミングがエンジン回転数Neの算出タイミング(クランク角周期REF)と一致するため、エンジン回転数Neが低いときもエンジン回転変化率ΔNeの算出値が安定し、エンジン回転変化率ΔNeの算出精度が悪くならないと共に、荷重平均のような平均化処理も不要になって演算負荷の低減も図り得る。
この発進時目標エンジン回転数Nidlは、車両の発進時に先ず行うクラッチペダル5の釈放操作(クラッチ2の締結進行)によってもエンジン回転数Neを、大きく低下することなく発進加速要求に応じた速度で上昇させるための発進時エンジン回転目標値で、予めマップとして用意しておき、検索により求める。
本実施例においてはエンジンコントローラ11(発進操作アシスト制御部11a)が、スロットルバルブ6の目標スロットル開度tTVOを上記のエンジン回転偏差(Nidl−Ne)に応じ操作して当該回転数フィードバック制御を行うこととする。
ステップS15で上記2条件のいずかか1つでも欠けていると判定する場合は、発進操作アシスト制御を実行すべきでないため、制御をそのまま終了して図2のループから抜ける。
この発進操作アシスト制御に際しては、発進時目標エンジン回転数Nidlおよびエンジン回転数Ne間の回転偏差(Nidl−Ne)に応じ、エンジン回転数Neを発進時目標エンジン回転数Nidlに向かわせるためのエンジン1の回転数フィードバック制御量(本実施例では目標スロットル開度tTVOの補正量ΔTVO)を算出し、
このΔTVOだけ補正させた後の目標スロットル開度tTVOにスロットルバルブ6のスロットル開度TVOを向かわせる。
従ってステップS16が、本発明におけるエンジン制御手段に相当する。
ステップS17でエンジン回転数Neが低下中(Neが低下から上昇に転じる前)判定する間は、制御をそのまま終了して図2のループから抜けることにより、ステップS16で行う記エンジン1の回転数フィードバック制御を継続する。
この回転数フィードバック制御量上限値ΔTVO_LMTは、車両の発進に際して行うクラッチペダル5の釈放操作が急速でクラッチ2が急締結される場合であっても、エンジン1の回転数フィードバック制御中にエンジン回転数Neが発進時目標エンジン回転数Nidlを超えてオーバーシュートすることのないようにするための回転数フィードバック制御量ΔTVOの限界値であり、エンジン回転偏差(Nidl−Ne)が小さくなるにつれて低い値とする。
従ってステップS18が、本発明における回転数フィードバック制御制限手段に相当する。
ステップS19でVSP≦VSPs、且つ、(Nidl−Ne)≧ΔNesと判定する発進操作アシスト制御許可時は、制御をそのまま終了して、ステップS18での制限されたフィードバック制御量ΔTVOに対応する制限済目標スロットル開度tTVOに基づきスロットルバルブ6を、スロットル開度TVOが制限済目標スロットル開度tTVOに向かうよう電子制御する。
かかるΔTVO=0により、目標スロットル開度tTVOはアクセル開度APOに対応した開度から変更されることがないためアクセル開度対応開度となり、スロットルバルブ6を、スロットル開度TVOが目標スロットル開度tTVOに向かうよう電子制御するとき、スロットル開度TVOはアクセル開度APOのみに依存した開度となる。
上記した第1実施例の発進制御(発進操作アシスト制御)による効果を、図5の動作タイムチャートに基づき以下に説明する。
図5は、アクセル開度APO=0のまま、運転者がクラッチペダル5を急速に釈放したことでクラッチ2が急締結される場合の動作タイムチャートである。
これにより発進時目標エンジン回転数Nidlに対する実エンジン回転数Neの乖離であるエンジン回転偏差(Nidl−Ne)が発進操作アシスト制御開始回転偏差ΔNes以上となる(ステップS15)瞬時t1に、車速VSPが発進操作アシスト制御許可判定車速VSPs以下(ステップS15)の0であることとも相俟って、発進操作アシスト制御が開始される(ステップS16)。
つまり、これらNe,Nidl間のエンジン回転偏差(Nidl−Ne)に応じた微分項成分ΔTVOdおよび積分項成分ΔTVOiの合算値である回転数フィードバック制御量ΔTVO(=ΔTVOd+ΔTVOi)だけ、スロットルバルブ6の目標スロットル開度tTVOを補正し、スロットルバルブ6をそのスロットル開度TVOが目標スロットル開度tTVOとなるよう電子制御することでエンジン回転数Neを発進時目標アイドル回転数Nidlに向かわせる。
かかるクラッチ2の急締結は図5のように、実エンジン回転数Neを急低下させると共に実エンジン回転数Neの低下量も大きくし、瞬時t2に見られるようにエンジン回転数Neの谷底を深くする。
しかし、上記の通りエンジン回転数Neの瞬時t2における谷底が深いことによって、エンジン回転偏差(Nidl−Ne)が大きくなり、このエンジン回転偏差(Nidl−Ne)に応じた積分項成分ΔTVOiも大きくなり、これに伴って回転数フィードバック制御量ΔTVO(=ΔTVOd+ΔTVOi)も、図5では瞬時t3以後の波形を示さなかったが、積分項成分ΔTVOiの波形に沿うように大きくなる。
その結果エンジン1の回転数フィードバック制御中、実エンジン回転数Neが発進時目標エンジン回転数Nidlに滑らかに収束し得ず、発進時目標エンジン回転数Nidlを一旦オーバーシュートし、エンジン回転が吹け上がるという問題を生ずる。
クラッチ2を急締結させた場合は、エンジン回転数Neの谷底が深くて回転数フィードバック制御によるエンジン回転数Neの上昇速度が高くなるため、エンジン回転偏差(Nidl−Ne)が小さくなってからエンジン回転数上昇速度の上記低下が行われるというのでは、エンジン回転数Neの上昇速度の当該低下が遅れ気味となって、エンジン回転が吹け上がる上記の問題を避けられない。
上記の効果を確実に達成し得るのに加えて、エンジン回転数Neを発進時目標エンジン回転数Nidlまで持ち上げるのに必要な回転数フィードバック制御量ΔTVOとしつつ、エンジン回転数Neのオーバーシュート防止を実現することができる。
図6は、本発明の第2実施例になる発進制御装置の動作タイムチャートであり、図5の場合と同様、アクセル開度APO=0のまま、運転者がクラッチペダル5を急速に釈放したことでクラッチ2が急締結される場合の発進操作アシスト制御を示す。
本実施例においても、制御システムは図1におけると同様なものとし、図1におけるエンジンコントローラ11(発進操作アシスト制御部11a)が、図2のステップS18を以下のごときものとした発進操作アシスト制御プログラムを実行して、第1実施例と略同様な車両の発進制御を行うものとする。
当該回転数フィードバック制御量ΔTVOの上限値ΔTVO_LMTを、本実施例においては図6に示すごとく、エンジン回転数Neが低下から上昇に転じた瞬時t2からの経過時間が長くなるにつれて低くなり、好ましくは、エンジン回転数Neが発進時目標エンジン回転数Nidl
に略一致する時に0となるような値に定める。
かかる第2実施例の発進制御(発進操作アシスト制御)による効果を、図6の動作タイムチャートに基づき以下に説明する。
本実施例においても、クラッチ2の急締結により低下するエンジン回転数Neと発進時目標エンジン回転数Nidlとの間のエンジン回転偏差(Nidl−Ne)が発進操作アシスト制御開始回転偏差ΔNes以上となる(ステップS15)瞬時t1より開始された発進操作アシスト制御中(ステップS16)、エンジン回転数Neが低下から上昇に転ずる(ステップS17)瞬時t2より、回転数フィードバック制御量ΔTVOに上限値ΔTVO_LMTを設定し(ステップS18)、回転数フィードバック制御量ΔTVOが図6に示すごとく上限値ΔTVO_LMTを超えることのないようにしたため、第1実施例と同様な効果を奏し得る。
2 クラッチ
3 手動変速機
4 駆動車輪
5 クラッチペダル
6 電子制御スロットルバルブ
7 アクセルペダル
11 エンジンコントローラ
11a 発進操作制御部
12 エンジン回転センサ
13 アクセル開度センサ
14 車速センサ
Claims (3)
- エンジン、クラッチ、手動変速機および駆動車輪を伝動経路の配列順とし、運転者が前記クラッチを解放、締結操作して前記エンジンおよび手動変速機間を遮断、結合可能な手動変速機搭載車に用いる発進制御装置において、
前記クラッチの解放から締結への切り替え操作時に前記エンジンをエンジン回転数が発進時目標エンジン回転数となるようフィードバック制御するエンジン制御手段と、
該手段によるエンジンの回転数フィードバック制御中、エンジン回転数の変化が低下から上昇に転じたとき以後、前記回転数フィードバック制御の制御量に上限値を設定し、該制御量が該上限値を超えないようにして前記回転数フィードバック制御の効きを低下させる回転数フィードバック制御制限手段と
を設けて構成したことを特徴とする手動変速機搭載車の発進制御装置。 - 請求項1に記載された、手動変速機搭載車の発進制御装置において、
前記回転数フィードバック制御量の上限値は、前記エンジン回転数および発進時目標エンジン回転数間の偏差が小さくなるほど低い値であることを特徴とする手動変速機搭載車の発進制御装置。 - 請求項1に記載された、手動変速機搭載車の発進制御装置において、
前記回転数フィードバック制御量の上限値は、前記エンジン制御手段によるエンジンの回転数フィードバック制御中、前記エンジン回転数の変化が低下から上昇に転じたときからの経過時間が長くなるほど低い値であることを特徴とする手動変速機搭載車の発進制御装置。
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